物性なんでもQ&Aメインテキストに戻る

「物性なんでもQ&A」更新記録 (300-699)


最新のQ&A(#1300-) Q&A(1)#1-#299 Q&A(3)#700-#999 Q&A(4)#1000-#1299 「50音順キーワード索引」

アップした日付
質問項目
分類
質問者
2005.12.19699. 真空にするわけ真空工学広島大学大野さん
2005.12.19698. 半導体における非線形電流電圧特性半導体物性O大学Mさん
2005.12.15697. ルチルとアナターゼのマイクロ波特性のちがい誘電物性S学校Hさん
2005.12.15696. なんでもQ&Aのファイルサイズを縮小して欲しい一般阪大小林さん
2005.12.14695. 薄膜の誘電率の光学的決定法光物性N大Wさん
2005.12.12694. シリコンと酸化チタンのマイクロ波誘電率と誘電損失誘電物性S学校Hさん
2005.12.12693. Fe-Ni合金の飽和磁束密度磁性A大Kさん
2005.12.12692. ITOとAgペーストの界面の不具合光デバイスS社Uさん
2005.12.07691. 遷移金属錯体の磁化率への軌道角運動量の寄与について磁性H大Sさん
2005.12.07690. シリコン酸化厚膜の用途セラミクス材料O大学Yさん
2005.12.06689. CrとITOの熱膨張係数熱物性N社Kさん
2005.12.06688. Si-Alコンタクト半導体デバイスD大学Mさん
2005.12.06687. Niの透磁率の周波数特性磁性材料C大Wさん
2005.12.1686. 閃亜鉛鉱型GaNの熱膨張係数半導体物性M大Aさん
2005.12.1685. 金メッキ端子と半田(錫)メッキ端子の接続部は腐食するか金属物性O社Mさん
2005.12.1684. スズの高温でのふるまい金属物性T社Mさん
2005.12.1683. サイズモ式ピックアップ計測学北九州工大瀬戸口さん
2005.11.21682. ニッケル酸化膜の用途セラミクスB社Bさん
2005.11.21681. デバイ温度と物理量の関係物性基礎名大Mさん
2005.11.21680. 水の誘電率はなぜ大きいか誘電性京都工繊大大場さん
2005.11.21679. 多結晶シリコンの抵抗率のばらつき結晶工学A社Aさん
2005.11.21678. 半田の融点における抵抗率変化金属物性T大Kさん
2005.11.21677. マイカから発生する、白色の煙と、刺激臭の気体が何であるかセラミクス会社顧問Aさん
2005.11.09676. 吸収性物質における多重干渉光物性立命大長瀬さん
2005.11.09675. 電磁波中の磁場の大きさ電磁気学D社Fさん
2005.11.09674. 無機材料の通電性 電気物性日大石井さん
2005.11.08673. 原子と分子の電子状態の記号の見方物性基礎A社Yさん
2005.11.08672. 貴金属の色光物性Y社Sさん
2005.11.08671. 渦電流による電磁制動電磁気学会社員矢野さん
2005.11.07670. FDTD法によるフォトニック結晶の解析光物性T大N君
2005.11.02669. SiO2へのSbの拡散結晶工学T社Hさん
2005.11.02668. ランダウ準位から電子を取り出すエネルギー半導体物性K大伊藤さん
2005.10.31667. 界面電荷の発生原因半導体物性都立大Oさん
2005.10.31666. 水の粘性の温度変化レオロジー臨床工学技師江嶋さん
2005.10.26665. ITOにおける格子定数のスズ濃度依存性結晶工学T大学Rさん
2005.10.26664. シロキサンの金属・樹脂に対する吸着率表面化学P社Iさん
2005.10.26663. 田んぼのひび割れ土壌学N社Sさん
2005.10.26662. シリコンインゴットのρb値の計算法結晶工学A社Yさん
2005.10.25661. ドルーデ則、バンド間遷移と貴金属の色光物性Y社Sさん
2005.10.24660. 熱電対による温度測定のデータのばらつき計測工学T高校Bさん
2005.10.24659. 金属表面の酸化による変化金属物性K大学Sさん
2005.10.24658. 金属の誘電率の温度依存性光物性N社Oさん
2005.10.20657. 炭素繊維の繊維方向と垂直の物性値材料物性J機構Aさん
2005.10.20656. ITOの可視光の透過性について光物性U機構Kさん
2005.10.20655. コランダムのヤング率の温度依存性機械的性質T大Nさん
2005.10.13654. 超伝導体の永久磁石上における浮上超伝導東理大工藤さん
2005.10.13653. 鉱物の発光の温度依存性光物性O大Nさん
2005.10.4マイクロ波誘電率の温度係数誘電物性M大学Kさん
2005.10.4651. ウィレマイトの結晶構造結晶工学山口東京理科大Hさん
2005.10.4650. 円偏光フォトンと直線偏光フォトン光物性A社Kさん
2005.10.4649. アルマイト加工したアルミ板のマイクロ波反射率電磁気学N社Tさん
2005.09.21648. 高反射率の金属が太陽光を吸収して熱くなる訳光物性L社Fさん
2005.09.21647. 高圧円筒容器の軸方向ののび力学I社Mさん
2005.09.16646. 金、銀、Ni、Al、Cuの反射率光物性O社Hさん
2005.09.16645. X線回折でシリコンの200禁制反射が観測される理由結晶工学F県工業試験場Kさん
2005.09.13644. 金属とITOの密着性セラミクスT大学Yさん
2005.09.13643. 高電圧電流導入端子における金属の異常蒸発金属物性S社Hさん
2005.09.13642. 光吸収による熱発生光物性M社山田 さん
2005.09.13641. モワレ縞光物性T大Kさん
2005.09.07640. 格子面間隔結晶工学名城大Kさん
2005.09.06639. 重金属の汗への排出金属物性B社Kさん
2005.09.06638. 酸の水溶液の誘電率誘電物性H社Yさん
2005.09.05637. シリコーンゴムの屈折率分散光物性S社Aさん
2005.08.31636. マイカの熱不安定性素材セラミクスN社Sさん
2005.08.31635. 磁気光学効果の測定磁気光学A社Kさん
2005.08.31634. 金属電極と半導体の合金化の結合エネルギー金属工学Tさん
2005.08.31633. 力のモーメントの問題力学基礎主婦Sさん
2005.08.31632. 液晶の交流駆動光物性A社Mさん
2005.08.29631. サファイアの1850℃までの高温特性素材セラミクスP社佐藤さん
2005.08.29630. シリコン研削粉のpn分離半導体プロセスエムセデック齊藤さん
2005.08.29629. カーボンブラックの濡れ性物性基礎N社Aさん
2005.08.29628. 10円銅貨の汚れ落とし化学中学3年生関山さん
2005.08.22627. トンボの眼の紫外線視感度光物性磐田南高佐藤さん
2005.08.15626. 導波管にTEM波を入射するとどうなるか 電磁気学S社Nさん
2005.08.12625. 電子レンジによる水の加熱の原理誘電体物性電通大村田さん
2005.08.04624. 有機溶媒の誘電率の周波数分散誘電体物性C社Nさん
2005.08.04623. ダイヤモンドとグラファイトの違い固体物性Aさん
2005.08.04622. モル吸光度から屈折率を求めるには光物性F社Uさん
2005.08.04621. TEM 波と静電磁界電磁気学S社Nさん
2005.07.29620. スピン演算子の固有値問題物性基礎X大学Yさん
2005.07.27619. ステンレスにおけるマルテンサイト量の評価金属物性A社O様
2005.07.27618. グラファイトの誘電率(εr)と損失角(tanδ)誘電物性R大Oさん
2005.07.27617. 回折格子と近接場光物性M社Fさん
2005.07.25616. 誘電損失はなぜ生まれるか誘電体物性R大学Oさん
2005.07.25615. 単結晶Siの線膨張係数半導体熱物性三菱電機柳澤さん
2005.07.25614. AlGaN/GaN HEMTの抵抗率異方性半導体物性N大学Hさん
2005.07.20613. 金属水酸化物金属物性Mさん
2005.07.18612. ZnSと[CuInS2]2の占有軌道数電子物性T大Tさん
2005.07.18611. 分子軌道法物性基礎S大学坂口さん
2005.07.18610. 誘電加熱誘電性K社Yさん
2005.07.13609. ITOの電気分解による導電性の劣化電子材料物性H社Sさん
2005.07.11608. NaのD線のゼーマンスペクトル光物性T大学Aさん
2005.07.11607. プラチナ・パラジウムの分離法金属物性T社Tさん
2005.07.11606. チタン・ニッケル合金の機械的強度金属物性T社Tさん
2005.07.11605. LEDにおける波長と光度の関係光物性T大学Yさん
2005.07.07604. ひずんだシリコンのバンド構造と有効質量半導体物性農工大七条さん
2005.07.06603. 二酸化珪素の熱伝導率の温度変化 熱物性名大田中さん
2005.07.05602. 炭素繊維の構造結晶工学東洋大浜野さん
2005.07.05601. エチレングリコールとトリエチレングリコールの粘度と表面張力流体物性K社Yさん
2005.07.01600. 厚底鍋のIH加熱電磁気学M社Mさん
2005.07.01599. 磁性ナノビーズの磁束観察磁性A社Oさん
2005.06.30598. 水素化アモルファスシリコンの電子移動度と正孔移動度の差はなぜか半導体物性S社Hさん
2005.06.30597. 遷移金属酸化物のバンドギャップと移動度光物性S社Mさん
2005.06.28596. TiO2とUO2の結晶構造結晶物性神戸大Hさん
2005.06.27595. マイクロ波を用いたセラミックスの焼結セラミクスK大学大学院A
2005.06.27594. ユーイングのたわみ法と引っ張り試験で得られるヤング率機械特性D大Yさん
2005.06.27593. 2D, 1D, 0D 量子構造における発光光物性T大Tさん
2005.06.27592. TFEのp-h線図熱物性W大Nさん
2005.06.23591. 金属の赤外反射・吸収特性光物性T社Oさん
2005.06.23590. アルミニウムの塗装と接着性金属加工電線会社池田さん
2005.06.23589. シリンダー内のピストンのロック金属工学S社Kさん
2005.06.23588. 一般的な無機物の熱伝導率と硬さのデータ熱物性M社草間さん
2005.06.23587. 鉛フリーハンダの銅食われ金属物性N社Uさん
2005.06.23586. 浮力に関する入試過去問物理基礎主婦Sさん
2005.06.22585. GaAsにドープしたMn中性アクセプターの光遷移の選択則光物性K大Hさん
2005.06.22584. 磁流と導磁率電磁気学S社Nさん
2005.06.22583. 金属表面への吸着金属物性S社Uさん
2005.06.22582. 2次元フォトニックバンドギャップ光物性大学院生Tさん
2005.06.21581. 水の解離定数と電気化学反応電気化学T大Mさん
2005.06.21580. ステンレスのヤング率金属物性 園部さん
2005.06.21579. YIGのディスアコモデーーション磁性久武さん
2005.06.21578. 拡散反射を高くするには光物性F社Mさん
2005.06.21577. メッキの素過程における結晶成長電気化学ICメーカ松永さん
2005.06.14576. 不純物半導体のフェルミ準位の決定法半導体物性W大学Sさん
2005.06.14575. 超伝導体への電場の侵入長超伝導物性M社Yさん
2005.06.10574. コランダムの熱膨張係数の方位依存性熱物性Y専O.M.君
2005.06.10573. "42合金"の光吸収係数光物性X高専Hさん
2005.06.10572. 温泉水の冷却熱物性S社Kさん
2005.06.10571. バンドギャップボーイングの起源半導体物性N社Tさん
2005.06.10570. LEDの通電劣化の原因光デバイスT社Zさん
2005.05.30569. 水の最大密度物性基礎N社Sさん
2005.05.30568. 樹脂の硬さ測定法 機械的性質N社Sさん
2005.05.27567. シリコンの熱酸化膜形成によるシリコンの消費半導体プロセスT大Tさん
2005.05.26566. 異種金属間における電位差と腐食速度金属物性船舶修理技師村上さん
2005.05.23565. Geの仕事関数と電子親和力半導体物性S大学Nさん
2005.05.23564. 光導電材料の感度光物性T大Kさん
2005.05.19563. 低抵抗液体の誘電率測定法電気化学S大学Sさん
2005.05.16562. Rayleighの分解能の式光物性早大斉藤さん
2005.05.13561. 圧着端子の加熱による強度変化金属物性J社Rさん
2005.05.13560. 化学処理後の高濃度ドープシリコンに見られる不動態膜半導体プロセスS電機Tさん
2005.05.12559. フェライトによるインダクタンス増大の理由電磁気学成蹊大藤田さん
2005.05.12558. ステンレスの赤外領域における反射率の温度依存性光物性サーモエレクトロン社牛場さん
2005.05.10557. 半導体の光学定数の温度依存性光物性N社Tさん
2005.05.10556. ダイヤモンドの熱膨張係数熱物性Y大学Yさん
2005.05.06555.カーボンブラックの誘電特性誘電性Kさん
2005.04.28554.X線と光の透過について光物性放射線技術者Hさん
2005.04.21553.シャフトの輸送中の磁化磁気物性TセンターKさん
2005.04.21552.フォトダイオードの量子効率光デバイスE社Mさん
2005.04.21551. バンドギャップの温度依存性光物性N社Tさん
2005.04.21550. 金属酸化物薄膜の熱膨張係数 熱物性H社Hさん
2005.04.16549. 直交するレーザ光の干渉光物性A社Mさん
2005.04.16548. 微小ビーズの銀メッキの色光物性PB社赤沼さん
2005.04.16547. 電子回路の問題回答電気工学M大学Kさん
2005.04.16546. 電気回路の問題回答電気工学A社Nさん
2005.04.11545. ポリエチレンの誘電率(2)電気物性H社Nさん
2005.04.11544. 消光係数の意味光物性化学会社Mさん
2005.03.28543. シリコーンの気体透過性化学W社Kさん
2005.03.25542. ドープされたシリコンの赤外吸収光物性H社Kさん
2005.03.25541. 高圧ガス配管の伸び金属物性J社Oさん
2005.03.18540. ニオブ酸リチウムの物性値機械物性F社Sさん
2005.03.18539. 薄膜の誘電率薄膜物性O大学Dさん
2005.03.16538. 陰極蛍光管の暗黒効果光物性T社Sさん
2005.03.15537. 表皮効果のシミュレーション電磁気学P社Sさん
2005.03.14536. 1000℃におけるシリコンの物性値 半導体物性日清紡竹崎さん
2005.03.14535. 黒クロムの反射率光物性O社Mさん
2005.03.3534. シリコンの熱処理 半導体物性M社山田さん
2005.03.3533. 真空の導電率光物性ダイキン工業池田さん
2005.02.23532. αスズの屈折率スペクトル光物性N社Sさん
2005.02.23531. 高温におけるシリコンの比抵抗半導体物性M社Sさん
2005.02.23530. ガラス転移温度の低い高分子有機化学D社Sさん
2005.02.22529. "7075"アルミニウム合金の焼鈍後の腐食金属物性茨城大雲さん
2005.02.22528. 材料工学科vs物理工学科一般的質問T大Nさん
2005.02.17527. アモルファスカーボンの評価物性一般R社Iさん
2005.02.15526. X線領域での屈折率光物性T大学Zさん
2005.02.14525. 初透磁率と分子場近似磁性H社西尾さん
2005.02.14524. ブリルアン散乱と偏光面の回転 光物性X大学Sさん
2005.02.14523. 水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムの熱伝導率熱物性N社Kさん
2005.02.10522. 光と磁気p.48の質問光物性筑波大菅野さん
2005.02.08521. 反射を用いた食塩の同定光物性N大Yさん
2005.02.04520. 表面プラズモン共鳴センサー光物性阪大川住さん
2005.01.27519. 金属の誘電率のシミュレーション光物性N社Sさん
2005.01.24518. レーザパワーの計測法光物性A社Nさん
2005.1.24517. ポリシリコン、銅の赤外での光学定数光物性もと半導体材料会社員山本さん
2005.1.24516. ナイトライドのエピ成長における問題点と解決法結晶成長Y大学Sさん
2005.1.24515. 微結晶シリコンの核生成結晶成長A高専Kさん
2005.01.19514. 高周波回路と誘電率 電子物性N大学Kさん
2005.01.17513. 電子の利用電子物性九州東海大尾崎さん
2005.01.17512. 原子中の電子物性基礎熊本大学Oさん
2005.01.13511. 金属の電気抵抗の起源 電子物性K高専Sさん
2005.01.13510. 真空中の導電体の誘電率光物性T社Uさん
2005.01.13509. 圧延後と低温焼鈍による伸び率の変化金属物性T社Mさん
2005.01.12508. アルミと銀のスキンデプス光物性阪大Tさん
2005.01.12507. ITOの熱物性熱物性名大Aさん
2005.01.12506. 周期表の原子の並べ方物性基礎樟蔭大小野田さん
2005.01.12505. 金属混合による発色金属物性A社Mさん
2005.01.12504. 全反射と屈折率光物性高専学生
2005.01.12503. 鉄イオンの拡散について物性基礎アドテック半井さん
2005.01.12502. アルミ合金とステンレスのポワソン比金属物性シンコー佛円さん
2005.01.04501. X線結晶解析結晶学M大学Tさん
2004.12.29500. バンド理論について物性基礎阪市大Nさん
2004.12.29499. 液晶の表面電位電子物性KS大Fさん
2004.12.24498. ショットキー障壁と整流性電子物性W大学Kさん
2004.12.24497. バンド励起後の電子緩和光物性大阪市大Nさん
2004.12.22496. パラジウムの表面の曇り金属物性S社Kさん
2004.12.22495. レジスト回転塗布と広がり方プロセスN社Nさん
2004.12.20494. モリブデン焼結体の粒径結晶成長K大学Mさん
2004.12.20493. 光学異方性とスネルの法則光物性岐阜大望月さん
2004.12.20492. X線吸収端の定義光物性東大伊藤さん
2004.12.16491. モリブデンの反射率光物性M大学Oさん
2004.12.16490. 色覚について光物性キャノン長谷川さん
2004.12.13489. タンタルの仕事関数 金属物性名大佐々野さん
2004.12.13488. 方向性鋼板の磁区観察 磁性H大Fさん
2004.12.13487. オーステナイトステンレス鋼の脆性金属物性石川島播磨豊嶌さん
2004.12.08486. チタン・クロム・アンチモン系の顔料光物性S社Tさん
2004.12.07485. 高屈折率透明物質光物性帝京平成大阿部さん
2004.11.30484. 混相のX線回折材料評価M大学Tさん
2004.11.30483. カーボンマトリックスとグラニュラー磁性体磁性材料某大学Nさん
2004.11.30482. ステンレスの屈折率金属物性N大Tさん
2004.11.30481. Si/SiO2/air構造におけるSi発光の反射光物性N大Tさん
2004.11.25480. 金属反射率の温度変化光物性K社Oさん
2004.11.24479. 電界によるバンド間励起は可能か電子物性T大Oさん
2004.11.24478. アモルファスシリコンの光化学光物性T大Sさん
2004.11.24477. 1/4波長板の偏光状態光物性W大Kさん
2004.11.22476. 光吸収による汗の分析光物性A高専Tさん
2004.11.22475. YIGの放射率熱物性F社Sさん
2004.11.22474. 密度汎関数理論とバンドギャップ物性理論T大Nさん
2004.11.18473. 金属と絶縁体の屈折率光物性京大Iさん
2004.11.18472. 強誘電体の誘電率誘電体物性T社Tさん
2004.11.17471. 電磁波の電界測定電気通信電通大笹川さん
2004.11.17470. 銀薄膜の酸素透過率金属物性三社電機寺本様
2004.11.16469. 一般炭素鋼での高温でのヤング率金属物性会社員Nさん
2004.11.12468. プラズモン励起について光物性北陸先端大岩井さん
2004.11.12467. 反磁性の磁化率磁性京大Kさん
2004.11.11466. 金属の粘性係数と表面張力金属物性D社Kさん
2004.11.11465. 「光と磁気(改訂版)」付録Cの式の導出」磁気光学関西大小川さん
2004.11.09464. チタンの屈折率金属物性T高専K
2004.11.09463. 半導体金属複合材料の光吸収光物性T大Nさん
2004.11.09462. スーパーボールがドアの動きを止める物性基礎K 高校2年Hさん
2004.11.08461. 異方性結晶中の光の伝播光物性岐阜大1年望月さん
2004.11.02460. 円二色性のミュラー行列光学農工大小川さん
2004.11.01459. エアロゲルの熱輸送について熱的性質K社Yさん
2004.11.01458. 反射スペクトルと屈折率光物性日大Hさん
2004.11.01457. 配管リークの許容値へのコメントプロセスS社Kさん
2004.10.28456. めっき材と被めっき材の抵抗金属物性C社Kさん
2004.10.28455. ステンレスの不動態の抵抗金属物性Y社Oさん
2004.10.27454. Bi2Te3の誘電率誘電性R大Mさん
2004.10.25453. グラファイトの抵抗率電気的性質茨城高専内藤さん
2004.10.25452. 光の屈折とダイヤモンドの輝き光物性中1土井さん
2004.10.25451. 配管リークの許容値プロセスE社Oさん
2004.10.22450. シリコンと同等の熱膨張をもつ金属熱的性質プロブエース社木本さん
2004.10.22449. 示温塗料熱的性質川村さん
2004.10.22448. 金属の接触電位差電子物性筑波大大場さん
2004.10.22447. 磁気テープの層厚と入出力特性磁性埼玉大浜田さん
2004.10.20446. 接地用のSUS板電気特性ミズノ金型石黒さん
2004.10.20445. 分散と群速度光物性/td>京大Yさん
2004.10.20444. 回折格子とプリズム光物性大学2年佐々木さん
2004.10.20443. Mie散乱と表面プラズモン共鳴光物性Oさん
2004.10.19442. 銀パラジウムの物性値金属物性C社Kさん
2004.10.18441. 表皮効果とリアクタンス電磁気学O大学Iさん
2004.10.14440. 小孔からの空気のリーク物性基礎M社Oさん
2004.10.13439. 光ファイバーのレーリー散乱を減らすには回答せず電機大4年斎藤さん
2004.10.13438. 常磁性極限から導いた磁気光学効果のスペクトルのちがい磁気光学東大大学院嶋田さん
2004.10.12437. 光のエネルギーの吸収・損失光物性A社Kさん
2004.10.12436. 音響的に優れた金属の加工法金属物性K大学Kさん
2004.10.12435. 光の全反射について光物性化学工業協会高橋さん
2004.10.12434. カーボンの付着と剥離機械的性質O大学Nさん
2004.10.08433. ナノ粒子の光反射光物性F社Nさん
2004.10.07432. 高分子と金属の物性比較物性一般早大YTさん
2004.10.07431. 水銀の光吸収係数光物性光関連企業Oさん
2004.10.06430. 半導体エピ層における圧電効果半導体物性東京工科大大平さん
2004.10.04429. フォトリフレクタンス光物性K大学Sさん
2004.10.04428. コイルの磁界電磁気学花田さん
2004.09.24427. 回転磁界電磁気学技術者汐崎さん
2004.09.22426. 水晶の転位点での熱膨張係数熱的性質K社Sさん
2004.09.15425. 注射器の中の空気の膨張物性基礎S社Kさん
2004.09.15424. MOSキャパシター半導体デバイス東北大小林さん
2004.09.15423. 吸収端決定のための吸収スペクトルの式光物性B社Hさん
2004.09.15422. 変圧器の等価回路電気回路神戸大鈴木さん
2004.09.07421. プラズモン増強とエネルギー保存則光物性M社Oさん
2004.09.07420. プラズモンとエバネセント波光物性R社Yさん
2004.08.31419. 電子部品の硫化による断線(8/7質問:up忘れ)金属化学電機メーカーHさん
2004.08.30418. プラズモン振動数について光物性R大Tさん
2004.08.27417. 炭素繊維複合材料の透磁率磁気的性質素材関係 Aさん
2004.08.27416. IH加熱に適した鍋材電気物性金属会社鈴木さん。
2004.08.27415. 合金の仕事関数金属物性N社のOさん
2004.08.25414. 1次元の箱に閉じこめられた質量mの粒子の運動量物性基礎社会人学生中島さん
2004.08.25413. 自然酸化膜につて半導体プロセスG社上山さん
2004.08.24412. アルゴンガスの飽和水蒸気量物理化学基礎C社Hさん
2004.08.24411. シリコンウェハーの赤外線スペクトル半導体光物性K大学Tさん
2004.08.17401. フロロシリコン化学A社Nさん
2004.08.17409. 鉄、アルミ、ステンレスの熱膨張金属熱的性質建築金物業寺西さん
2004.08.17408. 拡散反射を用いたバンドギャップ算出光物性K大KSさん
2004.08.17407. 金属はなぜさびる金属化学美容学校生山田さん
2004.08.06406. ITOの密着度(質問者の希望により削除しました)  
2004.08.06405. 42合金への銀メッキ金属工学R社Kさん
2004.08.04404. 表皮効果と金属の反射電磁気学A社Kさん
2004.07.30403. アッベの屈折計光学装置フィルムメーカーのAさん
2004.07.29402. バイポーラトランジスタのhFE(=Ic/Ib)の温度依存性半導体デバイスM社山田さん
2004.07.26401. 金属の反射(ZnとAl)金属光物性M社Wさん
2004.07.24400. 酒石酸単結晶結晶成長都立大Iさん
2004.07.23399. 誘電損失と結晶性誘電特性K大学Yさん
2004.07.21398. 空気は積もらないか物理基礎金沢大持田さん
2004.07.21397. Siにショットキー障壁を作る金属半導体デバイスG社上山さん
2004.07.20396. 逆バイアスでのトランジスタの破壊半導体デバイス立命館大岡本さん
2004.07.20395. 石英ガラスの低温特性セラミクス熱的特性N社Sさん
2004.07.15394. 金属による光吸収金属光学的性質M社Wさん
2004.07.15393. Pd/Geはショットキーダイオードになるか半導体物性Y大学Mさん
2004.07.14392. 透明電磁波シールドフィルムの電気抵抗電子材料A社Kさん
2004.07.13391. アナログ電子回路の現状と課題電子回路広島工大Tさん
2004.07.12390. 真性半導体の活性化エネルギー半導体物性群馬高専亀谷さん
2004.07.12389. ハイブリッドICの熱設計半導体デバイスM社Kさん
2004.07.12388.半導体素子の温度依存性半導体物性M社山田さん
2004.07.08387. シンチレーションカウンタ用のオプティカルセメント光学岐阜大学杉原さん
2004.07.05386. トムスン四面体結晶学K大学四年Oさん
2004.07.05385. シリコンの曲げ応力機械的性質R社Fさん
2004.07.05384. MOSFETのフラットバンド電圧の評価法半導体デバイス法政大Tさん
2004.07.02 383. 空気/金/ガラスの反射率光物性M社Oさん
2004.07.02382. 冷却したときのセラミクス箱の内部圧力物性基礎R社Fさん
2004.06.29381. 回折限界の式の係数は0.5か0.82か光学基礎会社員Kさん
2004.06.28380. 化学実験における誤差の考察物性基礎高校生Kさん
2004.06.28379. FeとAlの沈降速度の計算物性基礎M社Yさん
2004.06.25378. 偏光板の金属微粒子光物性K大学Mさん
2004.06.25377. 金属材料の線膨張係数金属物性N社Kさん
2004.06.25376. 超格子のサテライト回折線結晶物性O大学M2Oさん
2004.06.24375. モース硬度をショアー硬度に換算出来るか機械的性質会社員山口さん
2004.06.24374. 間接遷移がわからない物性基礎化学系Oさん
2004.06.22373. ITOの特性改善電子材料 N社Iさん
2004.06.22372. エチレンプロピレンゴムの誘電率絶縁材料豊橋技科大田中さん
2004.06.22371. アルミ板の反り金属材料O社和佐さん
2004.06.21370. 光の屈折光物性中学1年山田さん
2004.06.18369. パソコンのモジュラージャックの材料金属材料豊橋技科大 藤森さん
2004.06.18368. 高温での銀ペースト金属材料M社Mさん
2004.06.17367. ロッド形微粒子分散系の表面プラズモン共鳴光物性F社Nさん
2004.06.10366. 縮退半導体の静電遮蔽効果半導体物性F社Oさん
2004.06.07365. 偏光板とヨウ素光物性 道立理科教育セ前田さん
2004.06.07364. 非線形光学特性の評価法光物性I大学Dさん
2004.05.26363. IH鍋と銀ペースト金属・電気的性質M電機Mさん
2004.05.24362. 樹脂封止での金属の強度材料T社Fさん
2004.05.24361. 光の伝搬光物性X教育大学Iさん
2004.05.20360. キャリア濃度の評価半導体物性T大学Mさん
2004.05.20359. カーボンブラックと黒鉛の違い材料物性M社のSさん
2004.05.20358. 金属表面処理金属物性N大学Tさん
2004.05.20357. 縦波弾性率とヤング率音波物性医用機器メーカMさん
2004.05.20356. 逆圧電効果と電気歪誘電体物性M大学Tさん
2004.05.20355. ガラスの赤外特性光物性K社Kさん
2004.05.20354. 金属の近赤外反射特性光物性K社Kさん
2004.05.10353. 鉄心材料磁性M大学Tさん
2004.05.10352. 空気のヤング率材料物性R社Fさん
2004.05.10351. カーボンブラック中の金属の除去法材料物性S社Kさん
2004.05.10350. 石英ファイバーとシリカファイバーの違い光デバイスJ社堀内さん
2004.05.06349.人間の血液での732nm励起生体光物性A社小澤さん
2004.05.06348. 酸化スズの熱伝導率熱的性質グローリー工業上山さん
2004.04.26347bis. ペロブスカイト型強誘電体の圧電性誘電体阪府大Oさん
2004.04.26347. 鉛の密度金属核燃料メーカ高橋さん
2004.04.26346. アルミニウムの反射率金属広島大高瀬
2004.04.12345. ポリエチレンの比誘電率有機材料M社Oさん
2004.04.09344. 青色波長でのアイソレータ材料磁気光学T社Mさん
2004.04.04343. フォトダイオードの低温特性光デバイス金沢工大中村さん
2004.04.07342.バーベキューで日焼けするか光物性S社Kさん
2004.03.26341. フォトニック結晶のlight lineとlight cone光物性奈良先端大Tさん
2004.03.16340. 薄いファラデー回転子Q&Aへのコメント磁気光学東北大Kさん
2004.03.16339. 導体の誘電損失誘電率K社中堀さん
2004.03.16338. 薄いファラデー回転子磁気光学N社中村さん
2004.03.15337. 複合誘電体の誘電率誘電体D社Oさん
2004.03.15336. アモルファスカーボンの電気特性電気伝導K大学Hさん
2004.03.10335. ZnOの赤外吸収光物性イビデン玉木さん
2004.03.04334.「光と磁気」誤植p206磁気光学千歳科学技術大川辺さん
2004.03.03333.「光と磁気」誤植p147磁気光学阪大山内さん
2004.03.03332. サファイアの放射率光物性A社Sさん
2004.03.01331. 高圧ケーブルの劣化電気材料S電機Kさん
2004.02.24321b. ZnOのフォトルミネッセンス(2/2質問の続き)光物性S大Hさん
2004.02.23272b. スピン依存散乱の起源(10/27質問のつづき)磁性H大Wさん
2004.02.19330. 物質中の光速の波長依存性光物性高校教員古家さん
2004.02.19329. ZnOの圧電性について半導体/物性京都工繊大Mさん
2004.02.17328. もろみの比熱熱的性質O社藤沢さん
2004.02.10327. 磁気光学効果の測定法について磁気光学群馬大米山さん
2004.02.06326. クロムの降伏応力 金属/物性Y大Kさん
2004.02.05325. 表面プラズモンとエバネッセント波の結合光物性O大学Nさん
2004.02.04324. 酸化しない金属ってあるの金属N社Sさん
2004.02.04 323. 薄膜における干渉と膜厚光物性K大学Mさん
2004.02.02 322. 導体の誘電率電磁気A社Bambooさん
2004.02.02 321. ZnOのフォトルミネッセンス光物性 S大学Hさん
2004.01.30 320. 紫外線340nmのLED光物性/デバイス T大学山本さん
2004.01.29 319. 二次非線形分極率と2光子吸収との関係光物性 K社Mさん
2004.01.22 318. 光の散乱と吸収光物性 T社内田さん
2004.01.22 317. 酸化ゲルマニウム中のエルビウムの発光機構光物性 某大学SKさん
2004.01.22 316. 太陽電池におけるジュール発熱光電変換 M高専Oさん
2004.01.22 315. ポリ塩化アルミニウム化学 まさひろさん
2004.01.22 314. 水の非線形屈折率光物性早大川口さん
2004.01.22 313. アゾベンゼンの光異性化現象光化学N大学Kさん(コメント追加1/29)
2004.01.13 312. InGaAs薄膜のクロスハッチの観察電気化学S大Hさん
2004.01.13 311. 標準電極電位電気化学S大Hさん
2004.01.13 310. 無機砒素の定量分析化学味の素㈱武藤さん
2004.01.09 309. Feスパッタ膜磁性 江原さん
2004.01.09 308. ゼロ次回折効率を上げるには光物性 F社Sさん
2004.01.09 307. 光学フィルタ膜をコートした水晶板光物性 半導体メーカKさん
2004.01.06 306. ニッケル亜鉛フェライトの飽和磁化磁性 早大TMさん
2004.01.06 305. アーンショウの定理電磁気 
2004.01.06 304. 偏光板の劣化について光物性 S社Sさん
2003.12.26 303. 金属の吸収係数、反射率金属/光物性 T社Fさん
2003.12.25 302. 有機物の光学定数光物性 K社Aさん
2003.12.25 301. 表面プラズモンのエバネセント波金属/光物性 社会人1年生平井さん
2003.12.18 300. 超硬合金の英訳金属 翻訳家小泉さん


300. 超硬合金の英訳

Date: Thu, 18 Dec 2003 12:44:36 +0900
Q: 佐藤勝昭 様
技術文献の英訳をしている小泉と申します。
現在超硬合金の英訳について悩んでおります。
超硬合金の英訳としては、一般的にcemented carbideが使われておりますが、 sintered hard alloyと使った例が日本の文献に出てきます。
インターネットで検索したところ、物理システム工学科2年次「材料物性工学概論」 (92教室)第4回講義 1999.5.13 のなかでsintered hard alloyと使われておりまし た。
お忙しい所申し訳ありませんが、cemented carbideと全く同じ意味と考えてよいの か、もし違うのであればその違いを教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 18 Dec 2003 18:43:46 +0900
A: 小泉様、佐藤勝昭です。
 機械工学の堤先生にお伺いしましたところ、金属工学では炭化物に限らず硬い合金を一 般的にsintered hard alloyといっているが、切削用の刃など工作機械用工具の分野では、 炭化タングステン系が使われているのでそちらでは、超硬合金をcemented carbideという ようであるとのことでした。したがって、sintered hard alloyは、cemented carbideを 含む広い意味での超硬合金をさすのではないでしょうか。
 因みに、打越二弥「機械材料」では、工具用の超硬合金をsintered hard alloyとよん でいます。業界でも統一されていないのではないでしょうか。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 19 Dec 2003 09:34:23 +0900
AA: 佐藤勝昭 様
早速ご回答いただきありがとうございます。
できるだけ正確に訳したいと思い問い合わせをさせていただきましたが、このように ご返事を頂き本当にありがとうございました。
炭化タングステン系の超硬合金にはcemented carbideが使われ、広く超硬合金という 場合にはsintered hard alloyと使い分けるようにしたいと思います。
ありがとうございました。
-----------------------------------------------------------------------------

301. 表面プラズモンのエバネセント波

Date: Thu, 18 Dec 2003 09:31:17 +0900
Q:お世話になります。
入社して1年目の社会人の平井です。
学生のときとちがう分野を担当することになり、テンテコマイになっています。
表面プラズモンのエバネッセント波について教えてください。
金属膜とプリズムの間で全反射をさせて、エバネッセント波が金属膜表面に染み出るわけですが、染み出たエバネッセント 波は金属膜の吸収、損失などの妨害は受けないのでしょうか。
もし、金属膜が特に影響をあたえないとすれば、その染み出る深さはどのように計算するのかお聞きしたく思っております。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 22 Dec 2003 20:30:54 +0900
A: 平井様、佐藤勝昭です。
 ご質問の金属表面のエバネセント波の問題については、私にはあまり得意な分野ではな いので、近接場に詳しい本学機械システムの梅田先生にお尋ねしましたところ、
=================================================
表面プラズモンのエバネッセント波に関する資料ですが、 下記のものがあげられます。
1.大津、河田、堀編、ナノ光工学ハンドブック(朝倉書店)、林真至p.86-101
2.S. Kawata ed., Near-field optics and surface plasmon polaritons, Springer, 2001
この他にも解説記事はあると思いますが、今すぐには分かりません。わかり次 第お知らせします。
なお、最近、プラズモニクス研究会なるものが立ち上がりました。そのURL は下記の通りです。ご参考にしてただければ幸いです。
http://www.plasmon.jp/index.html
==================================================
という返事をいただきました。
 なお、表面プラズモンを励起するには、プリズム/金属膜において、光はKretschmann配 置という配置にしなければなりません。
=================================================================
The Kretschmann Geometry については、
http://aigproducts.com/surface_plasmon_ resonance/spr_kretschmann.htmに以下のように書かれています。
表面プラズモンは金属表面に沿って伝搬する電荷疎密波である。通常、波数k=0において 光を表面プラズモンと結合するのはむずかしいがクレッチマン配置ではこのことが可能に なる。光はプリズムを通り抜け、ある入射角を以て金属薄膜に入射する。エバネセント光 が金属内に生じ、液体に浸漬された反対側の表面上に表面プラズモンを励起する。この状 態を「表面プラズモン共鳴」という。光が吸収され、表面プラズモンが生成される。プラ ズモンと結合するのは、TM偏光(電界が入射面内にある場合)のみである。表面プラズモ ン共鳴は、光の波動ベクトルの面内成分が表面プラズモンの波動ベクトルと整合する場合 に起きる。
表面プラズモン共鳴を得るには、光の周波数を変化させるか、入射角を変化させるかして 波動ベクトルの整合をとらねばならない。どちらのやり方でも、ある点で共鳴現象が起き、 プリズムからの全反射光は劇的に低下する。共鳴の起きるところは、液体試料の屈折率に 敏感で、このため、屈折率を正確に決めるための優れた技術であるといわれている。
=========================================================================-
また、http://www.fys.sdu.dk/Fys72/html/F72proj6.htmlによれば、
表面プラズモンと結合させる方法として、Otto配置とKretschmann-Raether配置があって、 Otto配置では、プリズムと金属膜の間に真空ギャップがおかれるので、表面プラズモンが プリズムによって乱されないと利点があるが、実験的に難しいので、Kretschmann- Raether配置がよく用いられる。反射の極小値(膜と光の結合の強さ)は、膜厚で決定され る。なぜなら、入射光・反射光の減衰の程度は、金属の膜厚、および、プリズム/金属、 金属/真空界面に生成された部分波の位相関係によって決まるからである。Ag薄膜の場合、 波長500nmにおいて、反射率の極小は膜厚が55nmのときに起きる。
==========================================================================
となっていますので、あとは、ご自身でお調べ下さい。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 24 Dec 2003 09:12:30 +0900
AA: 佐藤勝昭様

お忙しいところご回答をいただきまして誠にありがとう ございました。
このような掲示板にあることで、新しい情報を得ることが でき、助けられ、本当に感謝を申し上げます。

ご回答していただいた情報をもとに、勉強してみたいと 思います。
誠に有難うございました。
-------------------------------------------------------------------

302. 有機物の光学定数

Date: Thu, 25 Dec 2003 13:50:13 +0900
Q: 東京農工大学工学部 佐藤勝昭先生

No259で表面プラズモンについて質問させていただいた K社のAと申します。
その節は、大変お世話になりました。 先生にご紹介頂いた書籍を元に、少しずつではありますが理論の勉強を進めております。
(化学屋の頭には難解ですが・・・)

さて、今回ご相談させて頂きたいのは、有機物の光学定数についてです。
弊社で行っているスペクトルシミュレーションでは、「Handbook of optical constants in solids」 に記載されている光学定数を使用しています。
しかし、この文献にはポリエチレンの光学定数しか記載されておらず、他の有機物を含む系を扱うことができません。

有機物の光学定数を記載したハンドブックのようなものは存在するのでしょうか。
お心当たりございましたら、御教示頂ければ幸いです。

また、分光エリプソメトリー測定にて光学定数を求める事ができると聞いたことがあるのですが、 どの波長領域での値が求まるものなのでしょうか。求まった光学定数の信憑性はどの程度あるのでしょうか。

以上、お忙しいところ恐縮ですが宜しくお願い致します。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 25 Dec 2003 21:29:21 +0900
A: A様、佐藤勝昭です。
 私は、ポリマーについてのデータを持ち合わせていません。
静岡大学電子工学研究所の山口十六夫教授がFLARE、HOSPなどのポリマーの光学定数を分 光エリプソでデータをとっておられますので、そちらにお尋ねになってはいかがでしょう か。山口先生のメールはrstyama@rie.shizuoka.ac.jpです。
Kamil Postava and T. Yamaguchi, T. Nakano, Characterization of organic low- dielectric-constant materials using optical spectroscopy; Optics Express Vol. 9, No. 3 July 30, 2001 Page: 141 - 151
フルテキストは
http://www.opticsexpress.org/view_file.cfm?doc=%23%29%2CK%2E%0A&id=%24%28%2C%2B% 2FJ0%20%20%0A
からダウンロードして下さい。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 26 Dec 2003 14:37:18 +0900
A2: A社K様、佐藤勝昭です。
 有機高分子材料の非線形光学をやっておられる本学有機材料化学科の渡辺先生に伺った ところ、下記のようなお返事でした。
===========================================================-
高分子の屈折率のデータですが、波長分散まで考慮して測定した
ものはほとんどありません。

データは以下の文献およびデータベースから、集めることができます。
Polymer Handbook, John Wiely & Sons
Polyinfo (Webベースの無料データベース、登録すれば誰でも使用できる

高分子の屈折率は温度や、フィルムの作製条件によって変わる場合があります。
(特に複屈折性が大きい試料)

参考までに
Polyinfoより
PEO, PEG(同じ試料です)1.454 nD (結晶性の高分子なので、正確な測定は不可能)
PVA 1.52 nD

住友ベークライトのWebページより
PES 1.65 nD

PMMA 1.492 nD
1.494 ne
1.502 ng
Abbe数 58.0
PMMAだけは、波長分散がでています。
nDとか、neが波長に対応しています。
  =============================================================-

303. 金属の吸収係数、反射率

Date: Thu, 25 Dec 2003 22:33:18 +0900
Q:T㈱ Fです。
先日(12/17)の
先端技術普及セミナーではどうも有難うございました。 大変興味深い講演で誠に参考になりました。

絵も拝見させて頂きました。セミナーでは「?級」と言われていたので、 どんなもんかと思っていましたが、しっかりプロ級で驚きました(凄いですね)。 また、度々ホームページにアクセスし拝見させて頂きます。

ところで、先日質問させてもらった金属の反射についてもう少し教えてください。
①先生のお話では、光の深さ(金属の必要厚み)は Io=Ij*e-αd より200Å位
  ということでしたが、もう少しはっきり教えてください。
   EX.計算式の意味やαの値。
   できればAg、Au、Cu、Ni、Pdについてご教授ください。
   またそれは、金属の状態によって(バルクやめっき等)どの程度影響を受けますか?

②弊社のデーター(積分球での測定)では、金属の光沢があがると全反射率が上がる
傾向にありますが、その場合、自由電子の挙動はどうなっていると考えれば良いのですか?
 先生の言われた測定機の問題もあるとは思いますが、お客様の実装評価でも光沢と
反射率は比例関係にあり、どう考えればよいか悩んでいます(単に正反射と拡散反射の
割合が変化するだけではないと思います)。
 それと、ムラ(光沢ムラ)と反射の関係についても意見をお聞かせください。

③セミナーで合金の場合、自由電子によらないとのことでしたが、合金の反射につい
ても教えてください。
 ・金属中に何%以上異金属が入った場合、それに相当するのか?
 ・それはどういう原理による反射?なのか
 ・合金の種類によるのか? 
  EX.2相分離型、固溶体、金属間化合物、アモルファス等 

大変、不躾な質問で申し訳ありませんがよろしくお願いします。
それとWebにアップされる場合、匿名でお願いします。
----------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 26 Dec 2003 12:25:45 +0900
F様、佐藤勝昭です。
メールありがとうございました。
下記のご質問にわかる範囲でお答えします。
①計算式の意味、αの値
 物質の吸収の強さを表すパラメータとして吸収係数αが用いられます。これは、単位長 さあたりの吸収の程度を表す係数で単位はcm^-1です。
 吸収係数の考え方を説明しましょう。物質中の位置xにおける光の強度の減衰率-dI(x)/ dxは、その位置での光の強度I(x)に比例します。この比例係数がαです。すると、
-dI(x)/dx=αI(x) (1)
という微分方程式が成立します。式(1)を解くと、
 I(x)=A exp(-αx)
となります。x=0における光の強度I(0)をIiとすると
 I(x)=Ii exp(-αx) (2)
長さdの距離進んだ後の光の強度Ioとすると、
 Io=Ii exp(-αd)
となります。これが、お示しした式です。
 次に、このαが光学定数n, κのうちの消光係数κとどのような関係にあるかを説明し ましょう。消光係数は、光の強度(パワー)Iではなく光の電界Eについて定義されています。
 x=0における電界をEi, 距離xにおける電界をE(x)とすると、
 E(x)=Ei exp(-κωx/c) (3)
となります。
パワーと電界の関係は
 I=(1/2ε)|E|2 (4)
と与えられるので、
 I(x)=(Ei2/2ε)exp(-2κωx/c)=Ii exp(-2κωx/c) (5)
式(2)と比較して、
 α=2κω/c=4πκν/c=4πκ/λ (6)
が得られます。tableに波長と消光係数が載っていれば、吸収係数はすぐ計算できます。

今、青色477nm(2.6eV)において
Agのκ=2.726→α=4π×2.726/(477×10-7cm)=7.18×105cm-1
 従って、光強度1/eになる距離dはd0=1/α=1.39×10-6cm=139Å
同様に
Auでは、κ=1.72 → α=4.5×105cm-1 → d0=221Å
Cuでは、κ=2.50 → α=6.58×105cm-1→ d0=152Å
Niでは、κ=3.04 → α=8.00×105cm-1→ d0=125Å
Pdは手元にデータがありません。

金属のκの値は、Landolt-Boernsteinを見ても、著者によってかなり違った値が報告され ていますが、これは、試料の作製法によるちがいと思われます。おそらく、表面の状態 (汚染、酸化など)やモルフォロジー、金属組織の緻密さなどによっても変化すると思わ れます。バルク研磨面とスパッタ膜、めっき膜では、表面状態、モルフォロジーがすっか り違うので、何ともいえませんが、上の例にあるように、種々の金属中で477nmの光は100 -200Å進むと1/eとなりますから、裏面で反射されて戻ってきたら、裏面の反射率を100%、 表面の透過率100%としても、入射光の1/e2=1/7.38=0.135=13.5%しか戻ってきませんので、 作り方によらず200Å程度あれば十分と思います。

② 光沢と自由電子状態
 光沢が高いということは、表面の粗さが光の波長に比べ十分平坦ということです。平均 粗さが50nm(RMS)程度なら、このような取り扱いが可能です。光沢が低い荒れた面という のは、結晶粒(グレイン)が発達して波長程度になり散乱が大きい場合です。
 たしかに反射率にはDrudeの式を通じて自由電子の密度や電子の散乱の緩和時間が影響 しますが、波長程度に発達した結晶粒の場合には、ほぼバルクと同程度のキャリア密度、 電子散乱確率であると考えられますので、これによる反射率のちがいは考えられません。  もし散漫反射率に差があるとしたら、荒れた面での酸化などを考えるべきではないかと 存じます。それは、反射スペクトルにちがいとなって反映するはずですので、特定の波長 の反射率だけでなく、波長依存性を測定されることをお勧めします。

③ 合金の反射率
 私は、合金の反射について系統的に調べた経験がないので、このご質問には十分お答え できません。金、銀、銅の反射にしても、色を決定しているのは、Drude項のみではなく、 バンド間遷移が始まることによりハイブリッドプラズマ周波数が変化することによってい ます。(詳細は、D.Pines: Elementary Excitation in Solidsをお読み下さい)
 金属間化合物、規則合金の場合は、母体金属のバンド構造が変化して、強い光学遷移の 起きる波長が変化することによって、(途中のプロセスは省略しますが・・)色が変化し ます。一方、スピノーダル分解が起きるような系では、それぞれの金属のバンド構造は保 たれ、もし、そのドメインが波長より小さければ、重み付き平均したような光学誘電率を 使って、反射スペクトルが説明できますし、グレインが波長より大きければ、それぞれの 金属での反射光が合成されたような色になります。また、縞状の相分離が起きると、回折 格子のようになって、複雑なirridescenceを示す場合があります。アモルファス合金は、 独特のバンド構造をもつので、金属間化合物のような扱いでよいと思います。
------------------------------------------------------------------------------

304. 偏光板の劣化について

Date: Mon, 5 Jan 2004 15:26:14 +0900
Q: S社のSと申します。
突然のメールで失礼します。HPを拝見させて頂きました。
WEB上には、匿名でお願いします。

偏光板をもちいて、センサーに応用してみたいと考えていますが、 偏光板には斑があったり、経時劣化があったりすると聞いた事があります。
どのような斑であるのか、また、経時劣化で偏光板の能力がどのように 変わっていくのか、教えてください。
また、劣化度合いのグラフ等、定量的な記載されている文献でも良いので ご教授頂けたら幸いです。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 6 Jan 2004 10:54:46 +0900
A: S社S様、佐藤勝昭です。
 偏光板の劣化について、液晶ディスプレイの専門家である本学電気電子工学科の飯村靖 文助教授にお伺いしましたところ、偏光板はPVAにヨウ化物系の色素を混入して延伸して 作るのですが、PVAは吸湿性があり水分の混入があると、配向性が劣化して偏光性を悪く するのではないかということでした。
 また、私の個人的経験ですが、偏光板が剥離しているのを見たことがあります。液晶デ ィスプレイ用の偏光フィルムは、偏光板、移相板、輝度向上膜から構成されているので、 粘着性がわるいと剥離するようです。
 日東電工から出ている日東技報2000年2月号に
「軽剥離粘着偏光板」についての論文がでておりますのでご参照されてはいかがでしょうか。
 劣化特性などの技術データは、各社独自に測定していると思いますが、表には出ていな いようです。サンリツなり日東電工なりの研究者に直接アクセスされてはいかがでしょうか。
----------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 6 Jan 2004 13:14:06 +0900
AA: ご多忙の中、ご丁寧な回答を戴き、ありがとうございました。
メーカーに確認してみます。
----------------------------------------------------------------------------------

305. アーンショウの定理

 
鉄球の磁気浮上に関連して、それに対する見解を問うご質問が多く寄せられていますが、学術論文が発表される前に報道が先行しており、実験条件についての十分な情報がない段階ではお答えできません。ここではアーンショウの定理に関する質問にのみお答えしておきます。
----------------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 04 Jan 2004
Q: 鉄球の磁気浮上の報道で有名になったアーンショウの定理とは何ですか。
----------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 04 Jan 2004
A: アーンショーの定理(Earnshaw's theorem)は、「固定した磁石と電荷のいかなる組み合わせによっても静的な浮上を達成できない」という理論です。(1842年)
「重力、静電力、静磁力のようなinverse square lawに従う力では、divF=0となるので、dF/dx+dF/dy+dF/dz=0となり、復元力は互いに直交する3軸について同符号になることはあり得ない。従って、inverse square lawに対してlocal minimum はあり得ない。」というのが証明になっています。
例外としては、反磁性体、超伝導体、回転するコマ(ハリガンのLevitronというおもちゃ)等があげられます。
LevitronについてはYale大のJ. M. McBrideのわかりやすいOHPがWebで見られます。
-----------------------------------------------------------------------------------------

306. ニッケル亜鉛フェライトの飽和磁化

Date: Tue, 6 Jan 2004 16:02:34 +0900
Q: 質問内容:ニッケル亜鉛フェライトについて、ニッケルと亜鉛の比を亜鉛が増える方向へ変化させていくと飽和磁化は上昇していきますよね?しかし、ある程度までいくと極端に下がっていきますよね?この現象の理由を教えてください!!よろしくお願いします。TM (早稲田大学応用物理学科三年), 匿名でお願いします★なにせ、ものすごく基礎的な質問のような感じなので・・・
------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 6 Jan 2004 20:39:52 +0900
A: TM様、佐藤勝昭です。
 学部3年生には難しい内容です。匿名にしなければならないほどつまらない質問ではあ りませんよ。昔から、議論されている問題なのです。
フェライトには、Aサイト(四面体配位)とBサイト(八面体配位)の2つのカチオンサイトが あることはご存じですね。
亜鉛フェライトZnFe2O4においては、Zn2+がAサイト、Fe3+がBサイトを占める正スピネル構造をとります。BサイトのFe3+同士は反強磁性的に結合するので、全体として自発磁化をもちません。ネール温度は15Kです。
NiFe2O4は、逆スピネルといって、AサイトにはFe3+が入り、Bサイトの半分をNi2+が占め、残りをFe3+が占めます。飽和磁化は0.38T、キュリー温度は585Kです。
NiFe2O4の場合、BサイトのNi2+とFe3+は強磁性結合、AサイトのFe3+とBサイトのFe3+は反強磁性結合です。
亜鉛フェライトをニッケルフェライトに固溶させた場合、Zn2+はAサイトを占めようとす るので、その分だけAサイトのFe3+イオンがBサイトに入り、飽和磁化が増加します。半分 入ったところで最大値をとります。さらにZnが増えるとキュリー温度が低下します。(Ni: Zn=0.75のときTc=725K, 0.5のとき550K, 0.75のとき375Kです。) これによっても室温での 飽和磁化が低下します。また、Zn:Niが1:1を超えると、A, B, Bが平行・半平行ではなく 互いに角度をなして配列するので、かなりやっかいな話になります。Zn100%では、上に述 べたように反強磁性になってしまいます。
 このあたりのことは、磁性体ハンドブック(朝倉書店、1975)のp.607-624あたりに出て いますので図書館でじっくり読んで下さい。
---------------------------------------------------------------------------------

307. 光学フィルタ膜をコートした水晶板

Date: Wed, 7 Jan 2004 15:33:31 +0900
Q1: はじめまして佐藤勝昭先生。私は半導体メーカーでで製造工程を担当しているもので す。
物性なんでもQ&Aを見て是非お力を貸願いたいと思いましてメールした次第です。 物理学的な知識に乏しいためわかり易くご回答いただければ幸いに思います。

複屈折板(人工水晶)に光学フィルターとなる膜をコーティングし400nm 以下の光は99%以上遮光する仕様の部品を使用しておりますが。
透過率測定試験をしていったところ、400nm以下の紫外光を鉛直方向で当てると前記 仕様通りの性能を示すのですが、入射角を傾けていくにつれ透過率が上昇し45° で最大値となります。参考までに入射エネルギーに対し約40%の透過率が得られ ました。偏光による現象だと思うのですが自分の力では具体に説明できません。

この現象についての理論的な説明に力をお貸しいただけないでしょうか?

よろしくお願いいたします。
-------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 7 Jan 2004 17:35:02 +0900
A1: K様、佐藤勝昭です。
 その光学部品の具体的な仕様がわからないので明確にお答えできません。
光学フィルター膜に偏光性のあるものを用いているのか、単なる干渉フィルターなのか、 それとも、400nmに吸収端のある膜(たとえばTiO2やSrTiO3)なのか,そのような情報をいた だきたいと存じます。斜めにすると光路長が伸びたことが影響する場合が多いですが、と きには、複屈折の量が変わる場合もあります。具体的なケースによって話が異なると存じ ます。
---------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 7 Jan 2004 18:18:01 +0900
Q2:Kです。佐藤勝昭先生ご回答ありがとうございます。
光学部品の具体的な仕様ですが、上面にIRカット用コート膜(赤外線カット) 、下面にARコート膜(低反射防止膜)が形成されているものです。
尚、意図的に400nm以下の光を除去するために製造したものでは無く結果的にこの仕 様になってしまった部品です。IR、ARコート材質については現時点では確認しており ません。
コート前の複屈折版は人工水晶のため400nm以下(~200nm付近迄)の光は 約90%以上の透過率を有するものになります。

以上の情報を追加いたします。宜しくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 08 Jan 2004 00:11:38 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 了解しました。IRカットフィルタは、添付図のように、バンドパスフィルタに なっております。これは、誘電体の多層膜を用い、干渉の効果である波長領域の み透過するように設計されています。帯域透過特性をもつことも、範囲外で不透 過になっているのも多層膜における多重反射干渉によるものです。従って、この 特性が出るのは垂直入射の場合のみで、入射角が45°になると光路長が増えるこ とによって多重反射干渉の条件が変化します。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 8 Jan 2004 10:25:35 +0900
Q3: Kです。佐藤勝昭先生、ご回答ありがとうございます。概ね理解 する事が出来ました。自分なりに今回の現象を下記のようにまとめ て見ましたが光学的な知識にも乏しいせいか未だ完全に理解出来 ていないように思えます。
大変あつかましく思うのですが垂直入射の場合と45°入射の場合 の光の干渉のごく簡単なモデル図なぞ提示していただければ 幸いです。あまりにお手数であれば再度文章にご説明いただければ と思います。

1.垂直入射の場合
多層膜の中で繰り返し反射が発生する。繰り返し反射しやすい 波長帯の400nm以下と700nm以上の光は繰り返し反射により 減衰し透過率が低下する。可視光域の光は多層膜内部で反射し にくいため透過する。

2.入射角45°の場合
光路長が増えることにより多重反射の効率が低下するため 設計波長領域外の光を透過する。

3.不明な点
入射角45°の場合に光路長が増える理由としては屈折率が 大きくなるからと考えてよいのでしょうか?

以上よろしくお願いいたします。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 8 Jan 2004 21:40:22 +0900
A3: K様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。返事が遅くなり申し訳ありません。
再度のご質問を受けてもう一度考え直してみました。
 入射角が45°で、多層膜の屈折率を1.5と仮定しますと、スネルの法則により、膜中 の屈折角θは、sin(π/4)/sinθ=1.5よりsinθ=0.707/1.5=0.47なのでθ=28.1°となりま す。すると光路長はd/cosθ=1.14dとなります。すなわち、光は垂直入射に比べ14%程度長 い距離を進みます。しかしこの程度では、40%になるような大きな変化は望めませんね。

 やはり、最初にK様がご指摘のように、偏光が関係するかもしれません。屈折率を1. 52としたとき、入射角45°で入射するときのS偏光の反射率は17.7%であるのに対し、P偏 光の反射率は1.8%に過ぎません。つまり、膜内に入った屈折光は強くP偏光しているわけ です。おそらく、膜から出射するときも同様でしょうから、P偏光になって水晶板に入射 します。水晶は複屈折がありますから、P偏光とS偏光とでは反射率が異なります。こうし て、多重干渉の条件が変化して、非偏光では干渉条件が成立していたものが、P偏光にな ったため干渉条件が変わってしまったということは十分考えられます。

 具体的な屈折率や厚みをきちんと入れて、薄膜の多重干渉の計算をしてみる必要があり そうです。古い本ですが、藤原史郎編「光学薄膜」(共立出版1985)に干渉 のことや、斜め入射の偏光のことなどが載っておりますので、図書館で探され、ご自分で 計算されてはいかがでしょうか。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 9 Jan 2004 18:49:02 +0900
AA: 先生、ご回答ありがとうございました。
今回でいっそうクリアになりましたので、これ以降は自分で調べてみます。
お手数かけました。又何かあればご質問させていただきます。
--------------------------------------------------------------------------

308. ゼロ次回折効率を上げるには

Date: Wed, 7 Jan 2004 16:01:13 +0900
Q: 佐藤勝昭様
Web上で検索中、「物性なんでもQ&A」を偶然見つけました。楽しく拝見させていただ きました。F社のS(所属・氏名は匿名でお願い致します。)と申します。
ご教授いただきたくメール致しました。
小生は、磁気光学素子の製作から応用を職としております。素子の磁区を制御するた め、光学面に碁盤の目状に傷を付けたところ、回折に悩まされています。傷の形状、 深さを管理して、0次回折効率を向上させたいと希望します。そこで0次回折効率の 導き方をご教授ください。
例えば、溝の幅をW、溝のピッチをd、溝の深さをDとし、x方向,y方向ともにM個 が二次元に配列しています。溝の形状は矩形で近似してください。さらに、波長λの レーザーを屈折率nの素子に、法線からθの方向から透過させます。ただし、ビーム の有効径を溝格子のエリアにマッチングさせます。簡単ではありますが、ポンチ絵を ご参照ください。
フラウンホーファー回折扱いでかまいませんので、お知恵を拝借願います。

> Date: Thu, 8 Jan 2004 18:44:16 +0900
A: F社S様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。お返事が遅くなってすみません。
ご質問の趣旨は理解しました。私は、回折については専門外なので、間違っているかもし れませんが、ちょっと調べてみた範囲のことでお答えします。
 x方向に一定間隔dで並んだ多数のスリットのフラウンホーファー回折像については、山 口一郎「応用光学」(オーム社1998)のp172-174に載っています。
結果のみを示しますと、
I(lx,ly)=(sin2(Mkdlx/2)/sin2(kdlx/2))Ie(lx, ly)
ここにMはスリットの個数、k=ω/c=2π/λ、dはスリット間隔、lx, lyは規格化された観 測点の座標です。
Ie(lx,ly)=|Ue(lx,ly)|2は要素スリットの回折像で、Ie=Io sinc2(kalx)sinc2(kbly) となっています。aはスリットの幅、bはスリットの長さです。ここにsinc(x)=sin(x)/xで す。
全体の回折像Iに生じる鋭いピークの位置はlx=mλ/dで与えられ、ピークの幅は2λ/Mdと なります。mは整数で回折次数と呼ばれます。ly=0として、m次の回折強度は
Im=Io(sin2(πMm)/sin2(πm))sinc2(2πma/d)=Iosinc2(2πma/d)
 =Io (sin(2πma/d)/(2πma/d))2
となりますから、a/d=1/2にすれば、I1, I2,・・は0になるのではないかと思うのですが、 間違っているかもしれません。
上記教科書や、それに挙げられている参考文献をご自分で調べてご覧になってはいかがで しょうか。
 なお、斜め入射の場合や、溝の深さを考慮するとどうなるかは、調べた範囲ではわかり ませんでした。
-------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 13 Jan 2004 09:32:02 +0900
AA: 佐藤勝昭様
敏速なご返事、ありがとうございました。
---------------------------------------------------------------------------------

309. Feスパッタ膜

Date: Thu, 08 Jan 2004 19:00:36 +0900
佐藤 勝昭 様
明けましておめでとうございます。
昨年は、
「物性なんでもQ&A」で貴重なご意見を頂き、大変お世話になりました。
今回は、またお聞きしたい事があり、メールを送らせてもらいました。
現在、スパッタ法を用いて単体元素(NiやFe)の磁性膜堆積を試みているのですが 、これについてお聞きしたいことがあります。
(ⅰ)堆積させた磁性体は、XRDパターンにおいてピークがみられないことから、
  結晶でない(アモルファス)であると考えています。
   単体元素の磁性体(膜)は、アモルファスでも磁化されるのでしょうか?
(ⅱ)私の狙いとしては、堆積させた磁性膜を結晶化させたいと考えているので
  すが、実際はアモルファス状態になります。現在、基板温度を室温(実際は、
  プラズマの影響により100~200℃であると思われます)で磁性膜を堆積させ
  ているのですが、結晶化させるためにはやはり基板温度を上げなければなら
  ないのでしょうか?
 ご回答の程、宜しくお願いいたします。
------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 8 Jan 2004 20:50:38 +0900
A:江原様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。
(1)XRDで明確なピークにならないからといって、アモルファスと断言することはでき ません。粒径の非常に小さい「ナノ粒子」であれば、回折線は非常にブロードになること が知られています。
 通常はFe単体ではアモルファスにならないので、Fe-Si-Bなどの合金にしてアモルファ ス化させます。Si, Bなどはglass forming atomと呼ばれ、大きさの異なる元素を複数混 ぜることで結晶化を防ぎアモルファスにしています。微結晶ができておれば、当然磁化を 示します。
(2) 上に述べたことが正しければ微結晶粒を成長させればよいわけで、成長中に基板 温度を上げるのではなく、堆積後アニール処理をすればよいのではないでしょうか。ただ、 ゆっくりアニールすると酸化膜になる心配があるので、ランプ加熱によるRTA(rapid thermal annealing)や、レーザアニールなどの短時間プロセスを考える必要があるかもし れません。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 14 Jan 2004 18:11:03 +0900
AA: 佐藤勝昭 様
先日質問メールを送らせて頂いた江原です。お礼の返事が遅れてしまい申し訳 ありません。

 丁寧なアドバイスをして頂き有難うございました。自分が誤解していた事がわ かり、大変勉強になりました。先生がおっしゃられた事を参考にして、更に研究 を進めていきたい思います。
 今後も質問をさせて頂く事があると思いますが、その時もまた宜しくお願い致 します。

 ご多忙の中、時間を割いて頂き、誠に有難うございました。
--------------------------------------------------------------------------

310. 無機砒素の定量分析

Date: Fri, 9 Jan 2004 17:01:10 +0900
佐藤様、こんにちは。

 突然のメール、失礼致します。
私は味の素株式会社で、品質管理業務に携わっております 武藤と申します。よろしくお願い致します。

 さて、首題の件について佐藤様の知識をお借りしたく メール致しました。ご多忙の所、恐縮ではありますが、 よろしくご教授ください。。。

 詳細ですが、当社では食品の安全性確認の為、 『砒素含有量』の検査項目があります。
食品中の砒素の定量の為、前処理で試料を硫・硝酸により 有機物分解した後、その希釈液を原子吸光計により分析、 定量しております。
 この分析法での『砒素含有量』は有機物分解を行なっている為、 全砒素(有機・無機全て)を現しています。

 先日、ある試料を検査依頼された際、「無機砒素の定量をしてほしい」 ということで、弊社では「塩酸分解法」による無機砒素の定量をしましたが、 以前、この「塩酸分解法では無機砒素は定量できない」というような話題を 耳にしました。

 無機砒素の定量方法について、文献の紹介など、参考になるお話を頂けると 大変ありがたく思います。

 どうぞ、重ね重ねよろしくお願い致します。。。
---------------------------------------------------------------
Date: Fri, 9 Jan 2004 18:40:15 +0900
A: 武藤様、佐藤勝昭です。
 私は、化学分析の専門家ではないので、もと筑波の環境研におられ、現在、本学化学シ ステム工学科の細見教授に電話しましたところ、ふさわしい方を知っておられるというこ とでした。それで、恐れ入りますが、細見教授にメールをして頂けないでしょう か。メールアドレスは(hosomi@cc.tuat.ac.jp)です。よろしくお願いします。
----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 13 Jan 2004 07:37:07 +0900
AA: 佐藤様
私は、味の素㈱の武藤です。
 親切にありがとうございました。丁寧なご配慮に感謝しています。。。
 早速、紹介されました細見教授へ、メールを致します。

 このようなサイトは私の周りの方々にも是非とも 活用して頂きたいと思っていますので、佐藤様のご負担にも なると思いますが、どうぞよろしくお願い致します。。。
---------------------------------------------------------------------

311. 標準電極電位

Date: Tue, 13 Jan 2004 02:06:31 +0900
Q: こんにちは.S大 Yです。
早速質問なのですが,
各金属、標準電極電位というものがありますが, 合金の標準電極はどのようになるのでしょうか?
標準電極電位の高い金属と低い金属の 金属間化合物の場合、例えば1対1であればトータルで見れば 高くも低くもない合金となるのでしょうか?
また、上の質問とほぼ同じ内容の質問となるのですが, ある合金に対し,第三元素としてベースの金属より標準電極電位の高い金属(例えば Cu等)を 添加した場合,その3元系合金の電位は貴の方へシフトするのでしょうか?

よろしくおねがいします
---------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 13 Jan 2004 11:58:14 +0900
A:S大H様、佐藤勝昭です。
 金属の標準電極電位は、化学便覧等に掲載されていますが、大部分が計算によって求め たものです。実際には、あの数字通りにはならないようです。合金や金属間化合物となる と、もっと複雑で、シンプルな話ではないと思います。
 本学の応用分子化学科の直井教授が電池の専門家なので、そちらにメールを転送してお きました。
直井勝彦教授の話では、「それほど簡単な話ではない。合金の場合の一般論はなく、個々のケースについて調べないといけない。できる範囲で調べてみる」ということでした。
----------------------------------------------------------------------

312. InGaAs薄膜のクロスハッチの観察

Date: Mon, 12 Jan 2004 06:01:42 +0000
Q: 私、千葉大学工学部4年、小菅 学と申します。
質問がありましてメールさせていただきました。
私どもの研究室ではInGaAs系薄膜をMBEで成長しております。
臨界膜厚を超えて成長しているはずなのなのですが、 クロスハッチの確認がなかなかできておりません。
InP(001)を基板としてInGaAs/InAlAs/MQWのような構造でも バルクのような単純な構造でもどちらでもクロスハッチの確認にいたっていません。
なにか表面の欠陥を見えるようにするエッチャントか何かありましたら 教えていただきたくメールさせていただきました。
宜しくお願いいたします。
----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 13 Jan 2004 11:25:51 +0900
A: 小菅様、佐藤勝昭です。
 どのような観測をしておられるのですか?クロスハッチはノマルスキー(微分干渉) 顕微鏡を用いれば、エッチングしなくても見えるはずです・・。 (本学応用分子化学科纐纈研寒川助手談)
 いずれにせよ、クロスハッチの基礎を勉強しておかれてはいかがでしょうか。
たとえば
S. Y. Shiryaev, F. Jensen, and J. W. Petersen, Appl. Phys. Lett. 64, 3305 (1994).
R. Beanland, M. Aindow, T. B. Joyce, P. Kidd, M. Lourenco, and P. J. Goodhew, J. Crystal Growth 149, 1 (1995).
を読んでおいて下さい。
---------------------------------------------------------------------------------
佐藤勝昭様 小菅です。
メールありがとうございました。
メールのように微分干渉顕微鏡を用いてクロスハッチを確認しようとしているのですが、 なかなか確認にいたらずに恥ずかしながら質問のメールをしてしまった次第です。

AFMなどの装置を用いなくてもクロスハッチの確認ができることがわかりましたので、 私の技術不足なのだと思います。研究としては「InGaAs系における、歪、緩和、 ミッスフィット転位」関係の研究をしています。
参考文献まで教えていただきありがとうございました。
--------------------------------------------------------------------------------

313. アゾベンゼンの光異性化現象

Date: Sun, 18 Jan 2004 02:57:37 +0900
Q:N大学大学院2年に所属するKと申します。(所属、名前は匿 名でお願いします)先程ネットサーフィンをしていたところこちらのHPにめぐり合え ることが出来、その情報量の多さに驚いています。そこで3つ程質問させていただき ます。
 質問1;私は現在光記録情報などに使用されるアゾ色素の光異性化について研究し ております。アゾベンゼンに紫外光を照射するとトランスからシスへ、可視光を照射 するとシスからトランス型へ異性化することが知られていますが、波長550nmの光を 照射しているにもかかわらずトランスからシスへの異性化が顕著に表れているようで す。理由を教えてください。(ちなみに波長550nmというのは吸収スペクトルのピー クが存在する波長帯です。)
 質問2;その光異性化前後のアゾ色素(薄膜)の誘電率と吸収スペクトルを測定し たところ吸収スペクトルは光照射とともにピークが減少し、誘電率も実数部、虚数部 とともに減少していきました。この2つの特性の変化についてどのような関係がある のでしょうか?(なお光照射によりアゾ色素は色素分解されて白くなっています。)
 質問3;さらに光を偏向板を通して照射し、それについてP偏向、s偏向かけて吸収 スペクトルの変化をそれぞれ測ったところp偏向かけたものは大きく吸収スペクトル が変化し、s偏向かけたものは非常に小さい変化にとどまりました。この現象につい て理由等を教えてください。
 以上3つ質問をさせていただきました。大変恐縮ですがなにとぞご教授の程お願い いたします。
-------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 21 Jan 2004 20:53:05 +0900
A:N大学K様、佐藤勝昭です。
 メールありがとう。出張していて返事が遅くなり申し訳ありません。
私は、有機化学の専門家ではないので、十分にお答えできません。それで、この方面の専 門家である本学の有機材料化学科の堀江教授(horiek@cc.tuat.ac.jp)にあなたのメールを転送しておきましたので、 来週には、教えて頂けると思います。
 私が答えられる範囲は、下記の通りです。
(1)550nmでtrans->CISが起きるのは普通に考えるとおかしいことです。この点は、堀 江先生から答えて頂けると思います。
(2)光照射とともに吸収が減少するのは、色素が分解されたのだから当然です。
吸収スペクトル(誘電率の虚数部に対応)と誘電率の実数部のスペクトルはクラマースク ローニヒの関係で結ばれていて、虚数部のピーク位置と実数部の分散の中心が一致します。 実数部のpeak-to-peakの大きさはほぼ虚数部のpeak値に一致します。色素の分解で虚数部 のピークが小さくなったので、実数部の分散波形も小さくなったのです。
(3)光吸収の異方性は、色素の構造と関係があります。この点も、堀江先生から答えて 頂けるでしょう。
------------------------------------------------------------------------------
堀江先生からの回答
Date: Wed, 28 Jan 2004 15:23:47 +0900
A2: K君、佐藤勝昭先生からご依頼がありましたので返事をします。

1. アゾベンゼンは、2つのベンゼン環に置換基がついていない通常アゾベンゼンと言われているものは、トランス型が安定で360 nmあたりに吸収があり、シス型は440 nmあたりに吸収があります。
しかし、パラの位置に置換基がつくと吸収はさまざまにシフトし、非線形光学材料として知られているアゾ色素と呼ばれている化合物類は電子供与基と電子吸引基がひとつずつ置換基として入って、550 nmあたりにトランス型の吸収があるものもあります。
もうひとつ、トランス型からシス型へ光異性化したあとのトランス型への熱戻りの緩和時間も置換基の種類によって大きく変わり、非置換のアゾベンゼンが2週間であるのに対し、550 nmにトランス型の吸収があるアゾ色素類はシス型は不安定で瞬時に熱戻りするものもあります。

2. は、佐藤先生の解答のとおりです。薄い膜では、レーザーを当てると、レーザーや光の強度によっては酸化あるいは分解反応することはよくあります。

3. p偏光・s偏光という以上は、レーザー光をフィルムに対し斜めから当てて、それぞれ面外配向・面内配向している分子を励起しているのだと思います。
光を吸収するのは、光の電場ベクトルの方向と分子の吸収の遷移双極子モーメントの方向が一致したときに起こる現象ですから、p偏光とs偏光で反応性が違うということは、アゾ色素の配向の様子が面外方向と面内方向で異方性があることを意味しています。

なお、アゾベンゼンの異性化やアゾ色素に関する参考書をあげておきます。
図書館で見てください。
1. 堀江一之, 牛木秀治著「光機能分子の科学」講談社 (1992)
2. 笹部雀之編「有機フォトニクス」アグネ承風社(1995)

とりえあえず、ご返事まで。
堀江 一之 E-mail: horiek@cc.tuat.ac.jp
--------------------------------------------------------------------------

314. 水の非線形屈折率

Date: Sun, 18 Jan 2004 13:24:38 +0900
Q: 私、早稲田大学理工学部応用物理学科4年理工総合研究センター所属の川口と申しま す。私の現在の卒業研究としてパルスラジオリシスをやっているのですが、そのプ ローブ光として白色光を用いています。私たちの研究室では水にNd;YLFレーザーを集 光して白色光を生成しています。
白色光生成の原理は論文などで調べた結果だいたい わかってきました。しかし、ある論文で自己集束力が起きるレーザーパワーの閾値を 与える式があったのですが、その中で非線形屈折率n2が含まれていました。そこで水 の非線形屈折率をweb上で探したのですが、どこにも無いようです。これ自体測定す るか計算しなければならないのでしょうか?なにぶん専門が違う(専門は放射線です) もので資料もどのようなものからとっていいのか誰もわかりません。私自身興味を 持った問題なのでぜひ教えていただければ幸いです。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 21 Jan 2004 21:20:03 +0900
A: 川口君、佐藤勝昭です。
 出張のため、返事が遅くなりました。
レーザ物理や非線形光学がご専門の物理システム工学科の三沢和彦助教授に伺いましたと ころ、下記の返事をいただきました。参考にして下さい。
==================================================================
高強度のレーザーを透明物質に集光して、白色光を生成した最初の論文は
R. R. Alfano and S. L. Shapiro, Phys. Rev. Lett. 24, 584 (1970)
です。ただし、これにはn2の値は直接載っていません。

下記のサイトには水の非線形屈折率としてn2~1 X 10-13 esuという値が載っています。 これは水以外にも白色光生成に使われる透明液体の典型的な数値と考えてよいでしょう。 ちなみにシリカファイバーのn2も 同程度です。このesuという単位はなじみがないかもし れませんが、1 X 10-13 esu~3X10-16 cm2/Wぐらいです。
http://www.uah.edu/LSEG/past1.htm
=====================================================================
参考になれば幸いです。
-------------------------------------------------------------------------------

315. ポリ塩化アルミニウム

Date: Mon, 19 Jan 2004 13:52:52 +0900
Q: ポリ塩化アルミニュウムの性質についてお聞きしたいのですが? 毒性とか洗浄・中 和等についてもお願いします。まさひろ
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 21 Jan 2004 13:00:52 +0900
A: まさひろ様、佐藤勝昭です。
 私は、化学の専門家ではないので、別のサイトでお尋ね下さい。
なお、Aluminium polychloride[Al2(OH)n Cl6-n.xH2O]mの簡単な性質については、
http://www.znminmet.com/Al_Polychloride.htmlのサイトを参照して下さい。
アルミニウムはアルツハイマー病に関係するといわれていますが、
http://www.grippa.org/html/cd10_english.htmというサイト によれば、下記のように、飲料水の不純物の凝固のためにAlminium polychlorideを用い ることはダメだと書いてあります。
NO:to the use of aluminium polychloride for accelerating the coagulation of impurities in drinking water production with water purified by inverse osmosis.
住友化学ではSumixという商品名でAluminium polychlorideを販売していますので、そち らにお問い合わせになってはいかがでしょうか。

なお、このなんでもQ&Aは、原則として、所属、氏名の明確でないご質問にはお答えしないこと になっています。匿名希望のときはその旨書いて下さい。
---------------------------------------------------------------------------

316. 太陽電池におけるジュール発熱

Date: Tue, 20 Jan 2004 10:31:52 +0900
Q: M高専専攻科二年のOです。匿名でお願いします。
前回のお返事ありがとうございました。大変勉強になりました。
太陽電池のジュール熱による発熱は無視できる値だと考えますが、実際に計算で正確にジュール熱による温度上昇率を求めるにはどのような式が用いられますか?温度上昇の要因には幅射熱が大体をしめますがジュール熱による温度上昇はどのくらいでしょうか?
お忙しいところすいません。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 21 Jan 2004 02:37:52 +0900
A: O君、佐藤勝昭です。
 太陽電池では、p側に+、n側に-が生じます。光発電した電流がpn接合を逆方向に 流れるときには直列抵抗損失が生じます。直列抵抗Rsは0.5Ω以下(濱川他編太陽エネル ギー工学p27)です。この本の図2.11によれば、Rs=0のときの太陽電池の変換効率を12.2 %とすると、Rs=1Ωのときの変換効率は11.5%になります。即ち、太陽光のエネルギーの約 0.7%がジュール熱として発生したことになります。単純には太陽光のエネルギーのうち 電気に変換されなかった分が輻射による加熱となったとしますと、変換効率11.5%なら、 太陽光の88.5%が輻射熱と言えます。一方、直列抵抗による加熱は太陽光のエネルギーの 0.7%ですから、輻射熱による加熱の0.7/88.5×100%=0.79%程度であると言えましょう。
----------------------------------------------------------------------------

317. 酸化ゲルマニウム中のエルビウムの発光機構

Date: Tue, 20 Jan 2004 22:10:40 +0900
Q:佐藤勝昭 先生
ホームページを見てメールをしています。私は某大学、電子工学科、修士1年のSK です。修士に与えられたテーマが酸化ゲルマニウムに希土類Erをドープした場合の発 光特性ですが、シリコン中にエルビウムをドープした文献はたくさんあるんですが、 当然ながら物性的な特性が酸化ゲルマニウムの場合と違うため、いろいろと苦戦して います。去年卒業した、先輩が酸化ゲルマニウムの方が、シリコンよりも適した母材 であり、発光強度が上がると立証したのですが、いくつか納得いかない点がありま す。測定方法はカソードルミネッセンスによって、エルビウムの不完全内核4f電子 において反転分布を形成して1.5μmで発光させています。先輩は、考察の部分で、酸 化ゲルマニウムの伝導帯から価電子帯に電子がオージェー再結合することによって、 エルビウムにエネルギーが移動し、反転分布を形成し強く発光したとゆう結論になっ ているんですが、そもそもスパッタで作成した絶縁物のアモルファス上の酸化ゲルマ ニウムにバンド理論は適用できるのでしょうか?また、修士論文のアイデアとして は、発光層の周りに誘電体多層膜を作成して微小共振器をスパッタで作成しようかと 思うのですが、半導体レーザーなどに使用されている共振器(ファブリーペロー形共 振器など)の理論は適用できるのでしょうか?
----------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 21 Jan 2004 01:45:36 +0900
A: SK様、佐藤勝昭です。
 私は、酸化ゲルマニウムを研究したことがありません。従って、十分なアドバイスが できるかどうかわかりませんが、私の考えたことをコメントします。
 「そもそもスパッタで作成した絶縁物のアモルファス上の酸化ゲルマニウムにバンド 理論は適用できるのでしょうか?」というご質問ですが、
 もし、酸化ゲルマニウムのナノ粒子ができていたとすると、量子サイズ効果によっ て、量子井戸準位が可視光領域にあって、何らかの共鳴減少によってエルビウムにエネ ルギー伝達が起きて、強く発光することは十分考えられます。
 つぎに、「発光層の周りに誘電体多層膜を作成して微小共振器をスパッタで作成しよ うかと思うのですが、半導体レーザーなどに使用されている共振器(ファブリーペロー 形共振器など)の理論は適用できるのでしょうか?」というご質問ですが、可能である と思います。農工大の越田信義先生は、ポーラスシリコンを用いて、ファブリペロー共 振器を作っています。T. Nakagawa, H. Sugiyama and N. Koshida:"Fabrication of Periodic Si Nanostructure by Controlled Anodization",Jpn. J. Appl. Phys. 37 (Part 1, No. 12B) (1998) 7186-7189をご参照下さい。
 酸化ゲルマニウムについては、慶応大学の中嶋敦先生のサイト
(http://sepia.chem.keio.ac.jp/Nakalab/mirai.html)によれば、「純粋なゲルマニウム クラスターのバンドギャップは、赤外領域の光のエネルギーであり、ナノサイズによっ ても可視発光しないことがわかった。一方、酸化ゲルマニウムクラスターでは、特に原 子数比1:1のクラスターで、そのバンドギャップが可視光のエネルギーであることを 見い出した。そこで、酸化ゲルマニウムクラスターを気相中で生成させ、これをシリコ ン基板上に蒸着して325 nm光励起の発光スペクトルを測定したところ、400-600nmの領 域に可視発光を観測することに成功した。」とあります。
また、立命館大学の小島一男先生は、Er添加GeO2ガラスをアップコンバージョン発光に用いておられます。 "Up-Conversion Fluorescence and Electron Spin Resonance in Er3+-Doped GeO2 Heated Gel Prepared via a Sol Gel Process" J. Mater. Sci. Lett., 14, 813, 1995 を publishしておられます。参考にされては如何でしょうか。
 なお、修士の研究は基本的にはあなたの指導教員と相談すべきもので、指導教員をさ ておいて、他大学の教員にアドバイスを求めるのは、ルール違反です。指導教員とよく 話し合われるようお勧めします。
--------------------------------------------------------------------------

318. 光の散乱と吸収

Date: Wed, 21 Jan 2004 20:37:38 +0900
Q1: 東京農工大 佐藤勝昭教授様
はじめまして。
T社(化学系メーカーです)の内田と申します。
先生のHPを拝見してその内容の豊富さ、素晴らしさに感嘆しました。
そこで不躾ではありますが、質問させてください。

光の散乱について、
1.光の波長や散乱体の大きさなどで散乱の様子(強度や方向性)が
  違うのはどのように理解すればよいのでしょうか?例えばレイリー
  散乱とミー散乱は”散乱”という意味では同じと思うのですが、
  この2種類のの散乱は、散乱体の大きさ、波長に対してどのように
  繋がっていくのでしょうか?任意の大きさの散乱体、任意の波長の
  光に対する散乱を表したものは何かありますでしょうか?
  また、レイリー散乱では波長の4乗に反比例して強度が増すと
  いうことですが、X線のように波長が短いのに物質(例えば人体)
  を透過してしまう電磁波もあり、どのように理解したらよいか
  悩んでおります。

2.入射光の波長が散乱体に比べて大きいと散乱されずに透過してしまう
  ということも良く理解できないのですが、どう理解すればよいの
  でしょうか?(1.と関連すると思いますが。。。)

3.光の吸収と散乱はどちらが優先しますでしょうか?光の吸収は
  光の振動数と物質の固有振動数(例えば電子や原子間振動の振動数)
  が等しいときに起きる(E=hν)ことは知っているつもりですが、
  このようなときは散乱は生じずに吸収が優先して生じると理解して
  よろしいでしょうか(吸収したあと、熱となって失活したりする)?

光のことをもっとよく勉強しなくては行けないのは重々承知しておりますが、
お時間のあるときで構いませんのでご回答頂ければ幸いです。

(HP掲載時には、社名は匿名でお願いします。。。)
---------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 21 Jan 2004 21:33:35 +0900
A1: 内田様、佐藤勝昭です。
1.ミー散乱 は、波長と同程度の散乱体を含む媒質を光が進む場合に起きる散乱で、レ イリー散乱は散乱体の寸法が波長の1/10以下である場合です。いずれも、入射光と散乱光 のエネルギーが変わらないで進行方向だけがかわる弾性散乱です。これらの場合は、媒体 による吸収のプロセスを考えないので、純粋に散乱体の誘電率を使ってマクスウェルの方 程式で記述できるはずです。
X線の場合は、エネルギーが高く、X線のエネルギーに対しては物質の誘電率はほとんど1 (少しだけ1より小さい)なのでほとんど散乱を受けません。また、電子殻(K殻とかL殻) のエネルギーと共鳴しない限り吸収はおきず透過します。
2.水の上の波を考えても同じです。波長の大きな波が来たとき、小さな杭があっても、 それによる散乱は、杭のすぐそばだけで、少し離れると波は何もなかったように進みます ね。あれと同じことです。電磁波でも微小散乱体のすぐそばには、電気双極子によるロー カルな乱れ(近接場)が存在しますが、遠隔波はほとんど影響を受けません。
3.吸収と散乱は同時に起きます。金属や半導体の粒子を分散した系では、どちらも観測 されます。また、フォノンなどの吸収があるとラマン散乱のようにエネルギーを保存しな い非弾性散乱が付け加わります。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 22 Jan 2004 12:55:04 +0900
Q2: 佐藤先生
丁寧なご回答、どうも有り難うございました。

1.の後半部分は、比誘電率は入射光の波長に依存していてX線のような短い波長 の光の時はεが1に近いこと、またそのため電子分極がほとんど起きないため 散乱されずに透過するということでよろしいでしょうか?

2.は、お陰様で、もやもやしていた疑問が晴れました。

3.は、吸収も散乱も分けて考えては行けないと言うことですね。それと、 吸収が起きるかどうかは振動子強度から確率的に求められますでしょうか?
それが求められるとして、その確率から洩れたフォトンが散乱を起こす、と 考えてもよろしいでしょうか(結果的に吸収と散乱が同時に観測される)?

再度の質問で申し訳ありません。またお時間のあるときにでもご回答頂ければ と思いますので、宜しくお願い致します。
---------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 22 Jan 2004 21:01:51 +0900
A2: 内田様、佐藤勝昭です。
1.お考えの通りです。
3.吸収は遷移確率に対応する振動子強度fiとエネルギー分母[1/(ω2 -ωi2)]とから 決まります。fiはi番目の電気双極子遷移の振動子強度、ωは光の角振動数、ωiはi番目 の遷移の角振動数です。ω=ωiのとき共鳴的に物質は光を吸収します。
吸収するといっても、表面で周波数ωのフォトンが全て吸収されるわけではありません。 吸収によってできた電気双極子はレイリー散乱やミー散乱などの弾性散乱に寄与します。
共鳴しない角周波数の光でも量子力学的にはvirtualな遷移が起きて電気双極子を生じ、 弾性散乱に寄与します。
もっと周波数の低い励起ωpを起こしたとすると、その分のエネルギーに相当する分だけ 異なる周波数ω±ωpの散乱光が生じることがあります。これがラマン散乱です。負号の 場合がStokes Raman, 正号のときがAnti-Stokes Ramanといいます。
共鳴した場合でも、励起エネルギーωpを失っただけで、出てくる場合があり、これ を共鳴ラマン散乱といいます。これは、フォトルミネセンスと見間違いやすいので要注意 です。
 このようにミクロに見ると、散乱も吸収も電気双極子を通じて起きるので、一体のもの として、電磁気と組み合わせて考えるべきでしょう。しかし、マクロな現象まで量子力学 で扱うと大変なので、弾性散乱は電磁気学で、吸収や非弾性散乱は量子力学で考えるとい う棲み分けをしているわけです。
------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 23 Jan 2004 12:48:00 +0900
Q3: 佐藤先生
丁寧なご回答どうも有り難うございます。

3.で、光を吸収することで弾性散乱の要因ともなり得るとの理由で 吸収も散乱も同時に観測されることがあるとのこと、何となく理解で きたように思います。

そのあとの、”virtualな遷移”ですが、これは、実際に遷移(=吸収) が起きているわけではないけど、起きたと考えれば、その現象が説明 つく、ということなのか、あるいはバンド準位間のエネルギー差より 小さい振動数の光であっても瞬間的な吸収がある(不純物準位とか そういう準位があるわけでなく)、ということでしょうか? (量子力学的、ということですから、何か物理的に意味のある過程で、 前者よりも後者に近いかもしれませんが。。。)

ラマン散乱の説明で、仮想的に光励起(吸収)があって、その励起が 緩和するとき、ωpだけ±された光がラマン散乱光だという説明を他で も読んだことがあります(ωp=0のときがレイリー散乱)。

私も学生時代に量子化学を通じて量子力学を多少は学びましたが、光の 吸収はエネルギー準位間の差に等しい光のみが吸収され、それ以外は 吸収されないと学びました。 もちろんvirtual=仮想的であることは存じておりますし、量子化学でも virtual orbital(HF法で計算された結果得られる空軌道(伝導帯)) というものがありますので、”virtualな遷移”も、電磁波の散乱過程 を量子力学的に計算すると出てくるもので、物理的に意味合いはないけど その表式が光学遷移と同じ表式のためそのように呼ばれているのかなぁと 思ったりもするのですが、どうなのでしょうか?(きっとそうではない と思いますが...)
共鳴ラマン散乱とフォトルミネセンスに関する注意事項、どうもありがとう ございました。
かつて、無機蛍光材料の開発に携わったこともありましたので、こういう こともあるんだなと思いました。
(実際に励起波長付近に発光が観測された経験はありません-通常の蛍光 光度計では検出されないかも知れませんが-)
また何度も質問をしてしまって申し訳ありません。
お時間のあるときで結構ですので、ご回答頂けたらと思います。
宜しくお願い致します。
---------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 23 Jan 2004 19:12:04 +0900
A3: 内田様、佐藤勝昭です。
 virtualな遷移についてご説明します。
ちょっと回りくどくなりますが、我慢してつきあってください。
ガラスは無色透明ですよね。無色透明ということは可視域のすべての波長の光を 吸収しないことを意味します。即ち、可視光によっては基底状態から励起状態に 遷移することがないのです。
 それでは、ガラスと光の間には全く何の相互作用もないのでしょうか?そんな ことはありません。ご存じのとおりガラスに入った光は屈折します。屈折するの は、光速が空気中より小さくなるためです。屈折率nは、光の速度が光速cからど れくらい減速しているかを示す尺度です。ガラス中の光の速度はc/nです。な ぜ、光はガラス中で遅くなるのでしょうか。光はガラス中では純粋の電磁波では なく、物質中の電子分極の波を引きずって進むのです。電子分極の起きやすさを 表すのが誘電率です。(誘電率にイオン分極も関与しますが、ここでは簡単のた め電子分極に話を限ります。)
 電子分極を量子力学的に考えてみましょう。電子分極が起きるとは、もともと 一致していた負の電荷の中心と正の電荷の中心の位置がずれることを意味しま す。すなわち、電子雲の形状(電子の波動関数)が歪むのです。どんな形状の関数 も、正規直交系の関数のセットによってフーリエ級数展開できますから、歪んだ 波動関数φをもとの対称的な波動関数ψ0+励起状態の波動関数に係数をかけたも のciψiの総和で表すことができます。すなわちφ=ψ0 + Σciψi。この係数ciは、振動子強度fiとエネルギー分母で表されるのです。ci=fi/(ω2i2)
ここにfi∽|<ψ0|qr|ψi>|2/ωのように、遷移行列の二乗によって表されます。言い換えれば、光の電界による摂動によって、基底状態ψ0に励起状態ψiが 「virtualに」混じって、波動関数が歪むことによって電気双極子、従って、電子分極が生じているのです。
 すなわち、共鳴吸収は起きなくても、光の摂動で基底状態にバーチャルに励起 状態が混じり物質に電子分極が生じ屈折率が1ではなくなり、光の速度が落ちる のです。
私の慶応義塾大学での大学院講義の
パワーポイントファイルを参考にして下さい。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 24 Jan 2004 01:03:11 +0900
Q3: 佐藤先生
T社の内田です。
(自宅からお返事させて頂いております)
早速のご回答本当にどうも有り難うございます。
ご説明も、全く回りくどいものではありませんでした。

電磁波と媒質の相互作用を摂動的に取り扱ったときのシュレディンガー の波動方程式を解いていくと、摂動波動関数には無摂動時の励起状態 が混じってくることが、先生の講義ノートを見て何となく理解できま した(そういう気になりました)。

この混ざってくることを、「virtualな遷移がある」と表現されたと いうことでよろしいでしょうか?(混ざってくると言うことは、励起 状態にも電子がしみ出すことを意味しますから”遷移”という言葉が 使える?)

この意味では、昨日私が読んだと書いたラマン散乱の説明に関しては 私の理解が必ずしも正しいものではなかったように思います。

先生のお陰で光の散乱についていろんな事が少しずつ見えてきたよう に思います。
私の拙問におつきあい頂き、本当にどうも有り難うございました。
---------------------------------------------------------------------------
Date: 16:11 04/01/25 +0900
A3: U様、佐藤勝昭です。
>この混ざってくることを、「virtualな遷移がある」と表現されたと
>いうことでよろしいでしょうか?(混ざってくると言うことは、励起
>状態にも電子がしみ出すことを意味しますから”遷移”という言葉が
>使える?)

そのようにお考え頂いて結構です。摂動があると、基底状態に部分的に励起状態が 混成することですから、逆に励起状態にも基底状態が混成します。このことを遷移とい っています。
-------------------------------------------------------------------
 なお、「realな遷移ではエネルギーの散逸を伴うが、virtualな遷移ではエネル ギーの散逸は伴わず分極のみが形成され屈折現象にのみ寄与する」ということを電気工学 の言葉で説明しましょう。
電力密度WはW=J*Eであらわされます(*は共役複素数)。電流密度Jには伝導電流と 分極電流とがあります。誘電体では伝導電流を考える必要がないので、分極電流(変位 電流)だけが寄与しますが、分極電流密度はJ=∂P/∂tで表されます。
 いま、E,Pともにexp(-iωt)で振動しているとしましょう。すると、∂P/∂tよ り、J=-iωPとなりますから、電力密度W=J*Eは-iωP*Eとなります。
 ここで、電気感受率をχとしましょう。すると、P=ε0χEと書けます。virtual な遷移ではχは実数部のみですが、realな遷移があるとχは虚数部を持ちます(=χ'+iχ")。も しχが実数部のみなら、PとEがin phaseとなり、電力密度は虚数となってエネルギー 散逸を伴いません。電気工学ではこれを無効電力と呼びます。
 一方、もし、realな遷移があるとχが虚数部をもち、分極Pと電界Eはout of phaseとなり、電力密度はJ*E=-iωP*E=-iωε0(χ'+iχ")|E|^2=-iωε0χ'|E|^2+ωε0χ"|E|^2と表され、実数の電力密度が生じ、エネルギー散逸を起こします。
 要するに、分極が電界の変化について来るかぎり吸収はおきません。共鳴が起きる と、分極が電界についていけなくなり、損失すなわち吸収が起きるのです。
----------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Jan 2004 19:07:01 +0900
Q4: 佐藤先生

「realな遷移、virtualな遷移」の解説どうもありがとうございました。

本質的なことは電気工学をちゃんと勉強しないと理解できない のだと思いますが、電気感受率χが複素数となるとき、実の電力 密度Wを生じることが即ち吸収(散逸)であること言うことは( このときの虚数部は電力密度Wの位相の変化に対応?)、別の見 方をすれば、χ=1+εの関係から誘電率が複素数となり、その ことにより複素屈折率Nの虚数部である消光係数が有限の値を持つ ことになるので、ここからもrealな遷移ではエネルギーの減衰 (散逸、吸収)を表現していると理解できるのではないかと思 います。(但しこれも教科書の表面的な理解ですので、本質は もっと複雑なのだと思います)

ここで1つ教えて頂きたいのですが(何度も質問してしまって 済みません。おそらくこれが最後の質問になると思います)、 電気感受率や誘電率に虚数項が存在すること(即ちエネルギー 吸収があること)と、共鳴吸収とはどのようにつながると理解 すればよいのでしょうか?
共鳴吸収はバンド間遷移に対応しますが、消光係数の存在は、 その振動数の光に対して、バンド間遷移の存在を示すと考えて よろしいのでしょうか?

エネルギーの減衰は状態間の遷移だけではなく熱として減衰す ることもありますので、必ずしもバンド間遷移だけではないと 思いますが、いかがでしょうか?

しつこく質問してしまって申し訳ありません。もう少しだけ私 の拙問にお付き合いください。お返事もお時間のあるときで結 構ですので、宜しくお願い致します。
---------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Jan 2004 20:02:59 +0900
A4: 内田様、佐藤勝昭です。
 複素数の感受率についての理解は、内田様の理解でよいと思います。 ご質問の虚数項と吸収の関係ですが、
もし散逸を考えないと遷移がω=ωiに存在すれば、誘電率は実部のみで ε'=1+(Nq2/mε0)Σfi/(ωi22)
と書けます。この形はω=ωiで発散します。
これをKramers-Kronig変換すると虚数部が次のように求まります。
ε"=(Nq2/mε0)Σfi(π/ω)[δ(ω-ωi)+δ(ω+ωi)]
つまり吸収スペクトルはδ関数になります。
ω-->ω+iγに置き換え、γ-->0とするとδ関数を置き換えることができます。
すなわち複素誘電率は
 ε=1+lim(γ→0) (Nq2/mε0)Σfi/{ωi2-(ω+iγ)2}
ここでγを有限の値にとどめると、εの発散は抑えられ、虚数部ε"(吸収)スペクトルは ベル型(γは半値幅を与えます)、実数部ε'(誘電)スペクトルは分散型になります。
 γは、状態iのlifetimeτの逆数を表しています。バンドを形成すると、各準位の lifetimeは無限大ではなくなり、吸収スペクトルはδ関数でなくベル型の重ね合わせにな り、共鳴吸収はあるエネルギー幅をもちます。γが0でない(τが無限大でない)というこ とはi準位に励起されてもτ=1/γの時間で基底状態に戻るということを意味します。光を 連続的に当てていると、ある速度で励起されながら、ある速度で緩和していて、バランス しているのです。基底準位に戻るときそのエネルギー差を光として放出するとき発光現象 がおきます。もし、何らかの理由で光らないで戻るときを非輻射遷移(最近は非発光遷移 ということが多いようで)とよびます。そのとき、エネルギーは格子に伝達されて熱に変 わります。それがご質問の「状態間の遷移だけではなく熱として減衰することもあります ので、必ずしもバンド間遷移だけではないと思いますが、いかがでしょうか?」への回答 です。熱になる場合も、遷移はきちんと起きているのです。
 光と物質の相互作用をミクロに考えるには、いろんな知識が必要になります。ご興味が おありでしたら、いくつかの書物を芋蔓式に読んでいくほかないと思います。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Jan 2004 20:46:05 +0900
AA:佐藤先生

早速のお返事どうも有り難うございました。
先生のご回答で、消光係数にも状態間の遷移がしっかり入っている ことが分かりました(クラマースクローニッヒ変換の導出などは 理解していませんが。。。)

前のメールでも書いたかと思いますが、先生のお陰で光の散乱や 吸収のことが少しずつ見えてきましたように思います。
今後少しずつでも時間を見つけて光の散乱や吸収について勉強を したいと思います。
もし良ければ参考書など教えて頂ければ幸いです。

これまで、私の拙問に長々とお付き合い頂き誠に有り難うござい ました。
------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 08 Apr 2004 09:04:16 +0900
Q5:東京農工大学 教授
佐藤勝昭 様
おはようございます。
T社の内田と申します。

今年の1月に、標記タイトルでいろいろと質問させて頂きました。 そのときの先生のご回答中、「吸収と散乱は同時に起きます。金属や 半導体の粒子を分散した系では、どちらも観測されます。」という コメントがあります(下記、項目3の回答です)

これは、粒径などにも依存する話だと思いますが、この話について 参考となる文献(論文でも単行本でもいいです)を教えて頂けない でしょうか?

宜しくお願い致します。

先生からいろいろ教えて頂いて以来、少しずつですが光について 勉強しております。多少理解が深まってきているようにも感じますが、 まだまだです。今後とも少しずつでも理解できるようにしていきたい と思っております。
---------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 16 Apr 2004 15:56:26 +0900
A6:内田様、佐藤勝昭です。
東工大の阿部先生にお伺いしたところ、次の本が最適であると推奨されました。
U. Kreibig and M. Vollmer: Optical Properties of Metal Clusters (Springer, 1995) かなりがっちりと書いてあるので読み応えのある本だと言うことです。
------------------------------------------------------------------------

319. 二次非線形分極率と2光子吸収との関係

Date: Thu, 29 Jan 2004 17:35:31 +0900
Q: 佐藤先生
化学会社のMです。ご無沙汰しておりますがお元気でしょうか。ひさしぶりに物性なんでもQ&Aに 質問させていただきます。
最近、光導波路材料の調査をはじめました。
目下、ある有機ポリマーにレーザー光を照射した時、2光子吸収が起こり やすいのかどうかの判定はどうやるかを問題にしております。これは二次 の非線形分極率βによって可能なのでしょうか。βは第二高調波の発生を 規定するものとのことですが、第二高調波は分子がまず2光子吸収し、そ れが”落ちるとき”に発生するのではないかと思いますので、βが大きい ものほど2光子吸収が起こりやすい、と言えるのではないかと思うのですが。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 29 Jan 2004 18:38:53 +0900
M様、佐藤勝昭です。
 第2高調波発生は、リアルプロセスとして2光子吸収が起きなくても、バーチャルに遷 移すれば発生します。たとえば、KTPに1060nmのレーザ光を入れて530nmのSHGが発生しま すが、530nmに吸収があるわけではありません。(もし吸収があると、せっかくできたSH 光が吸収されて出てこられなくなります。)
 一方、2光子吸収は、リアルプロセスですから、入射光の振動数をωoとするとω=2ωo に吸収がなければなりません。
Y.R. Shenの有名な"The Principles of Nonlinear Optics"の12章によれば、 2光子吸収係数γは、3次の非線形感受率χ(3)の虚数部に比例すると書かれています。 一方、第2高調波発生の変換効率は同書の7章にあるようにχ(2)に比例します。
従って、β~χ(2)を使って2光子吸収の効率を判断できないと存じます。
(レーザ光学の専門家である学科の同僚のT教授にも伺って確認しました。)
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 3 Feb 2004 13:03:58 +0900
AA: 佐藤先生
ご回答ありがとうございました。なるほど3次の非線形感受率がポイントだったのですか。
また、「遷移」と言ってもリアルプロセスとバーチャルプロセスとに区別しなければならない ことも新鮮な知見です。おかげで今後勉強すべきことのポイントが分かりした。
-------------------------------------------------------------------------

320. 紫外線340nmのLED

Date: Fri, 30 Jan 2004 09:19:16 +0900
T大学S研究室 山本 茂 です。
最近は340nm帯のUV-LEDが研究されていますが高効率で取り出し実用化するには至っ ていないと本でみたりいたします。どうして実用化されていないのでしょうか?
あと自分はCL法について勉強しているのですが、加速電圧を上げると深度方向の分析 に向いているというのは分かるのですが、必ずしも上げていったからといってピーク の位置が規則性がないようなのでもし理由がおわかりでありましたら教えていただけ ると幸いです。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 30 Jan 2004 13:21:45 +0900
山本様、佐藤勝昭です。
 なんでもQ&Aへのご質問をお受けしました。
(1)340nmの高出力LEDですか?GaNだけではLEDを作れないのでヘテロ接合にしなければ なりません。さらに効率を上げるには、発光層をバンドギャップの高いGaAlNではさんだ GaAlN/GaN/GaAlNのDH(ダブルヘテロ)構造にしなければなりませんが、GaAlNの研究の歴史 が浅いため、膜質の改善が十分されていないのではないでしょうか。また、マーケットが 十分に見通せないので、会社も熱心に実用化研究をしていないということもあるのではな いでしょうか。
 その辺の事情は、S先生がむしろお詳しいのではないかと思いますので、直接聞かれ てはいかがでしょう。それとも、ゼミでの課題として与えられたのですか?

(2)CLで加速電圧を上げたときに深さ方向に電子ビームが侵入して深いところからの発 光が見られるようになるというのが普通に起きることですが、絶縁性の高い試料に強い電 子ビームをあてると、帯電して測定が難しくなると聞いたことがあります。そのあたりを 注意されてはいかがでしょうか。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 01 Feb 2004 15:33:29 +0900
AA:ご返答有り難うございました。参考にさしていただけます。S先生なのですが春ご ろに過労のため入院され10月ごろ復帰されたのですが、なかなか学校で教えるという のには至っていないようで静養しながら学校には少し顔をだされているようです。私 自身本や先輩、先生に質問したりするのですがうまく答えてもらえず理解するのが大 変であったので佐藤先生のような方が質問に答えていただけるということで私自身大 変光栄です。これからも何かありましたらよろしくお願いいたします。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 01 Feb 2004 17:52:42 +0900
AAA:山本様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。S先生が体調を悪くされたということを存 じませんでした。事情がわかりました。状況が状況ですから、どうぞ、遠慮なく 何なりとご質問下さい。私のお答えできる範囲でお答えします。S先生には、どうか ご無理をなさらないで、お体をお大事にされますようお伝え下さい。
---------------------------------------------------------------------------

321. ZnOのフォトルミネッセンス

Date: Sun, 1 Feb 2004 13:50:03 +0900
佐藤先生、こんにちは。S大学修士学生Hと申します。
かなり以前に一度メールにて、質問をさせていただきました。
私は、修士のテーマがかわり、フォトルミネッセンス測定をすることになりました。 材料はZnOバルク焼結体について行なっています。
現在フォトルミネッセンス測定の詳しい解析が出来ずに困っています。
バンド端近くに、ZnO不純物無添加試料では酸素空孔によるものと思われる、ブロー ドの発光を確認しています。Al2O3添加(3,5,10wt%)で、ブロードのスペクトル、空孔による発光が無添加試料より もかなり大きく出ました。
Alが亜鉛位置を置換して、ドナー準位を形成、酸素空孔は、深いドナー準位を形成 していると言われていますが、キャリア(電子)の増大、このキャリアが光励起によって遷移し、発光に関与するので しょうか。発光強度が大きくなる理由が良くわからないでいます。

また、束縛励起子はフォノンを放出する過程フォノンレプリカをもつのでしょうか。(測定温度77K)

酸化亜鉛の場合、ドナー準位に束縛された励起子発光をとらえていると私は考えているのですが考察に苦しんでいる状況です。
幾分、参考になるものが少なく、もし良い参考書があれば教えていただきたいと思います。
よろしく御願いします。
名前と大学名はふせておいてください。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 01 Feb 2004 20:47:04 +0900
A: H君、佐藤勝昭です。
 ZnOの発光についてのお尋ねですが、発光のメカニズムは必ずしも明らかに なっていないようです。
Y.G. Wang et al., J.Cryst. Growth 259 (2003)335-342によると、MBEで成膜したZnO薄膜の発光は、NBE(near band-edge emission)発光 (3.3eV付近)と、DLE(deep level emission)のブロード発光(1.8eV, 2.3-2.4eV) からなります。
NBEは自由励起子発光、DLEは欠陥に関連した発光にアサインされ ています。NBEは900℃1時間半のアニールによってエンハンスされ,さらにアニー ルを続けるとNBE発光が弱くなるということが書かれています。DLEのオレンジ発 光(1.85eV)はアニールによって減少するが、緑色発光(2.3-2.4eV)はアニールで エンハンスすると言うことです。この緑色発光帯のメカニズムが酸素空孔による か亜鉛空孔によるか、あるいは、両空孔が関与するかについては論争があり、決 着が付いていないようです。この論文では、アニールによって発光が強くなる理 由について、非発光中心の密度が減少したことによると述べています。

 あなたの試料は、バルク焼結体なので、MBE薄膜に比べ、欠陥が多いものと考 えられます。あなたのおっしゃる「バンド端近くの酸素空孔によるものと思われ るブロードの発光」のエネルギー位置はどのあたりですか。「酸素空孔による」 ということは、上の論文のNBE発光ではなくDLE発光なのでしょうか。
 あなたの試料では、Al2O3を添加することによるキャリア密度の増大が発光の 増大の原因ではないかと考えておられるようですが、フォトルミネセンス(PL)に おいては、自由キャリアの励起が発光に結びつくことはありません。もし、Zn空 孔が非発光再結合に関与しているならば、AlがZnを置換することによって、非発 光再結合が減少して、よく光るようになったと考えられませんか。
 次に、束縛励起子発光ですが、どのエネルギー位置にでる発光を指しているの ですか。束縛励起子発光は線幅が狭いのでフォノンレプリカが明確に分離して見 えると思います。(77Kでは、ややブロードになると思いますが・・)
 いずれにせよ、データをお見せ頂かないと、判断のしようがありません。スペ クトルのデータをjpgファイルなどの電子ファイルでお送り下さい。
--------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 3 Feb 2004 20:30:11 +0900
Q2: 夜分すいません、S大学 H です。
丁寧なご指導ありがとう御座いました。 大変参考になりました。

おっしゃるとおり、空孔による深い準位による発光をとらえたものであると おもいます。
前日、先生のHPを拝見いたしました。やはり、自分のデータについては、 指導教官との話し合うべきものと私自身も思いました。
お恥ずかしい次第です。

しかし疑問は尽きないもので、勉強不足を露呈するものですが 再度、質問を2,3さて頂きたいと思います。
 空孔はどのような発光過程を持つのでしょうか、
例えば酸素空孔であれば、酸素が抜けドナーの振る舞いをしていることが予測できま す が、深い準位を形成すると、この準位に励起子が束縛されて、発光が起こるのでしょ うか。

 バンド端の発光についてですが、先生から頂いた論文では、室温での測定でした が、 なぜ、自由励起子は室温でも存在できるのでしょうか。自由励起子は、並進による運 動エネルギー を持つと言われていますが、そのために、室温でも存在できるのでしょうか。

 最後に、PLスペクトルにおいて測定温度が低温から高温に変化するにつれて、 スペクトルが低エネルギー側にシフトしますが、その理由がよく分かりません。

お忙しいところ申し訳御座いません、 ご指導よろしく御願い致します。
--------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 3 Feb 2004 23:06:51 +0900
A2: S大学H様
(1)空孔はどのような発光過程を持つのでしょうか。
あなたが観測したブロードな発光は励起子発光ではありません。DLEはDAP(donaor- acceptor pair)発光ではないかと存じます。この場合、Znを置換したAlドナーに捉えら れた電子とZn空孔のアクセプタに捕まったホールの間の発光遷移が考えられます。ある いは酸素空孔(ドナー)に捕まった電子と、亜鉛空孔(アクセプタ)に捉えられたホールの 再結合かもしれません。DAP発光であれば、PLスペクトルの励起強度依存性をとると、発 光ピークの高エネルギーシフト(blue shift)が起きます。いっぽう、時間分解スペクト ルをとると、励起終了後時間とともに発光ピークは低エネルギーへシフトします。

(2)自由励起子は室温でも存在できるのでしょうか。
ZnOの励起子束縛エネルギーは60meVもあります。室温のkT=25meVなので、室温でも電子 とホールの束縛は解けず、自由励起子は解離しないのです。大きな束縛エネルギーは大 きな有効質量と小さな比誘電率のせいです。

(3)測定温度が低温から高温に変化するにつれてスペクトルが低エネルギー側にシフトしますが、その理由がよく分かりません。
一般に、半導体のバンドギャップは温度を上昇すると小さくなります。従って、半導体 の発光も、バンド間発光も、励起子発光も、バンドー束縛準位間発光も、DAP発光も、バ ンドギャップが小さくなれば、低エネルギー側にシフトします。

参考書としては、
佐藤勝昭編「応用物性」(オーム社, 1991)
励起子吸収 p.114
半導体の発光 p.124
山田・佐藤他著「機能材料のための量子工学」(講談社, 1995)
ドナーアクセプタ対発光 p.182
-----------------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 22 Feb 2004 21:14:07 +0900
Q3:S大学 Hといいます。

(図をクリックすると拡大します)
酸化亜鉛のバンド端近くのスペクトルの解析についての質問です。
JPEGにてスペクトル結果を送らせて頂きました。
私は、DAP(ドナーアクセプター対)発光であると考えているのですが、 右から二番目の大きなピークの解釈が出来ずにこまっています。
もし、DAPであれば、アクセプターとなる不純物をドーピングしていなければ、起こ らないのでしょうか。
フォノン線と考えられるピークがあることからDAP発光考えました。
無添加のZnO焼結体です。(24時間1000℃で焼成したものをZnによって熱処理したも >のです。)
自分での解釈を試みましたが、理解に苦しんでいます。
何度も先生にご質問をさせていただき恐縮ですが、よろしく御願いします。

Date: Mon, 23 Feb 2004 23:39:16 +0900
A3: H様、佐藤勝昭です。
 添付の図を見ました。
まず、フォノンレプリカのアサインメントについて考察しました。
ZnOのフォノンのエネルギーは
 N. Ashkenov et al.: JAP 93 (2003) 126 
に出ています。
それによれば、LO phononのエネルギーは、E1 590cm-1(=73meV), A1 574cm-1(71meV) となっています。あなたは、3.318eVをDAPと見ましたが、私は、自由励起子FEを3.391eV として、3.318eVをFE-1LO, 3.241eVをFE-2LO, 3.169eVをFE-3LOと見るのが自然でしょ う。そうすると、3.366eVのピークはFEから25meVの差であり、浅いドナーに束縛された 束縛励起子D0Xと見てよいでしょう。
古い論文ですが、ZnO結晶のPLについては、
S. Miyamoto: JJAP 17 (1978) 1129
を参照して下さい。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 24 Feb 2004 11:27:38 +0900
A3':H様、佐藤勝昭です。
 S.Miyamoto: JJAP 17 (1978) [6] 1129-1130
のFig.1を添付します。

(図をクリックすると拡大します)
この論文は、私がNHK基礎研に勤めていた時代の物性研究部の先輩である宮本重弘氏が測定 したものです。ZnOは、亜鉛を酸素中で焼成して作製したと書かれていますから単結晶では ありません。超高圧水銀灯で励起、Corning 7-54 filterで発光波長付近を選択、3/4mの Czerny-Turner型分光器とtrialkali陰極のフォトマルを使い測定しています。
 論文によれば、1.5Kでは束縛励起子線I(369nm=3.36eV)とそのLOフォノンレプリカ(I-LO, I-2LO・・)が支配的であると書かれています。[束縛励起子線Iについては、D.C. Reynolds et al.: Phys. REv. 140 (1965) A1726 を調べて下さい。]
また、374.6nm(3.31eV)と383nm(3.23eV)にはそれぞれEx-1LO、Ex-2LOのフォノンレプリカも同時に見えてい ると書かれています。Ex-1LO発光線の強度は温度を上げると弱くなり(77Kのグラフに× 9と書かれているのはもとのグラフを9倍して示してあるということです)、Ex-2LOの相 対強度が上がってくると書かれています。フォノンレプリカに関する限り、H様の図は、 宮本氏のデータの120Kのグラフに似ていますね。(ただし、束縛励起子線IはH様のデ ータの方が顕著です。この論文ではI線は温度とともに急速に減衰すると書かれています) 。参考になれば幸いです。
-----------------------------------------------------------------------

322. 導体の誘電率

Date: Sun, 01 Feb 2004 11:23:57 +0900
佐藤研究室のみなさまへ

   電磁気の教科書の最初に書いてある事で素朴な疑問がありまして、色々調べ、Webの質問コーナーにアップしたところ、このHPを紹介されましたので、「最後のすがり」のつもりで質問させて下さい。
 紹介が遅れましたが、私は、神奈川県相模原市に住むBambooという者で(HPにアップする場合、ペンネーム:Bambooを希望します)、A社に勤めています。学生時代は、電気を専攻していましたので、当時は電磁気も勉強したハズですが、その時にはなんら疑問にも感じず通り過ごしましたが、とある事で電磁気をやり直すといきなりつまずきました。

 お聞きしたいことは、導体の誘電率にどうして真空の誘電率ε0が使えるか?ってことです。
 電磁気の教科書には、先ず、「静磁界の電界」が出てきまして、真空の電界は、E=Q/4πε0r2...と書いてある。これは、納得するとして、教科書のページが進んで、導体球内の電界...となった場合も、全く同じε0が使われているのが納得できません。もう電磁気の教科書を何十冊も見ましたが、全て何の説明もなく、すんなりと導体の誘電率をε0として解説に入っています。真空と導体の誘電率って全く同じなのでしょうか? 「誘電体の電界」に進むとεなの比誘電率εsか何かがでてきて「真空とは違う」事を表現しだしてくる。
 真空と導体...電気を通す、通さないでは天と地の差があるのに「誘電率が同じ」とは...。
どうか私の勘違いをご説明下さい。
------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 01 Feb 2004 23:27:32 +0900
Bamboo様、佐藤勝昭です。
誘電率を表すのに、SI単位系では、物質の誘電率εは、真空の誘電率をε0と単位 として比誘電率εrをかけたものを用いています。ε=εrε0(cgsでは、物質の誘電 率はεr、真空の誘電率は1です。)
 あなたの問題にしておられるのは「導体球内の電界」ですが、ここでいう「導 体球」は「導体で囲まれた中空の球」のことです。中空の球内の電界ですから、 当然真空の誘電率を使うことができます。「導体がぎっしり詰まった球」なら ば、当然、球内に電界は存在せず、球の表面に電荷が存在し、その電荷から面に 垂直な電界が存在するのみです。
 一例として東工大のHPにある
電磁気学演習のpdfを添付します。問題1では、 明確に「同心球」と言っていますが、問題2では単に「半径aの導体球」と書か れているので、一瞬、むくの導体かと思ってしまいます。しかし、次を読むと 「中心よりbなる位置に点電荷を置いたとき」と書かれていますが、むくの導体 の内部に点電荷を置くことは不可能です。当然「中空の球」だと気付くはずで す。さらに読み進むと「導体内面の最大電荷密度」という言葉が出てきます。こ れで、導体は薄皮だけであったことがわかるはずです。
 問題を出す人は、導体内部に(直流の)電界が存在しないことは自明なので、ま さかあなたのような誤解をする人がいるとは、考えなかったのでしょう。
 なお、ωが0でないときは、金属には自由電子プラズマによるDrudeの法則が成 り立つので、(バンド間遷移を考えないと)
 ε=ε00ωp2/ω(ω+i/τ) (SI);
 εr=1-ωp2/ω(ω+i/τ) (cgs)
と表されます。ここにωpはプラズマ周波数、τは電子の散乱緩和時間です。
従って、導体の"中の"誘電率は、直流では(ω→0として)εr→-∞となります。一 方、高周波(光を含む)では、誘電率は有限の値をもちます。ここでも決してε0 (cgsでは1)ではありません。
---------------------------------------------------------------
Date: Tue, 03 Feb 2004 00:04:49 +0900
A: 佐藤勝昭さま
誘電率の愚問をさせていただきましたBambooです。明快な解説で一気に氷解しました。 ありがとうございました。「私の勘違いをご説明してください」と書いておいたこと だけが救いでしょうか(^^)
このような勘違いであろうとは想像していましたが、こんな回答を大学の大先生に 解説していただいて感謝やら恥ずかしいやらの気持ちでいっぱいです。
> あなたの問題にしておられるのは「導体球内の電界」ですが、ここでいう「導
> 体球」は「導体で囲まれた中空の球」のことです。中空の球内の電界ですから、
> 当然真空の誘電率を使うことができます。「導体がぎっしり詰まった球」なら
> ば、当然、球内に電界は存在せず、球の表面に電荷が存在し、その電荷から面に
> 垂直な電界が存在するのみです。
>  問題を出す人は、導体内部に(直流の)電界が存在しないことは自明なので、ま
> さかあなたのような誤解をする人がいるとは、考えなかったのでしょう。

ここまで書いていただきますと、さすがに恥ずかしいですが、強力な説得、解説で あるのは間違いありません。
電磁気の教科書を今一度読み返してみると、同軸円筒導体の静電容量を求め る問題など、「パイプ」の絵が書いてあるのでそのパイプの肉厚部分が導体と解釈し、 その肉厚部の電解がE=λ/2πε0r .....とあるので、おかしいな~となっていたわけ ですが、これは、「薄い肉厚のパイプの中に中実の円筒導体がある」、あるいは「薄 い肉厚のパイプが同心で二重に配置されている」と解釈し、その間の真空中の電界 がE=...と解釈しなければならないのでしょうね。佐藤さんに解説されたそうとれる ようになりましたが、挿し絵と解説からでは今でもそう見えないのですがね~(^^)

いずれにせよ数週間悩み続けた疑問は、お恥ずかしい誤解、勘違いであることが分 かりました。
学生に説明するときに「こんなとんでもない解釈をする奴がいるので注意するよう に」と言ってもらえると私も光栄です(^^)。
ありがとうございました。感謝しております。
----------------------------------------------------------

323. 薄膜における干渉と膜厚

Date: Tue, 3 Feb 2004 19:54:05 +0900
Q1:東京農工大 佐藤勝昭教授様
始めまして。K大学修士1年のMと申します。
Webで公開されれる場合は匿名(大学名、学科、氏名)を希望します。
質問のファイルを添付しましたのでどうぞよろしくお願いいたします。
図のように、斜め入射させた時の各境界面からの波長λの反射光が同位相で強めあうように干渉する時の、薄膜の膜厚l1、l2を知りたく、以下のように求めたのですが、入射角が、大きくなるとl1の値が虚数となってしまうというおかしな現象が起きてしまいます。どこが間違っているのかどうしても分からないのでご指摘お願いいたします。 各層の屈折率が、n0=1.5、n1=1.0、n2=1.5と与えられている時、 ブルースター条件により、入射角θ0は、
-------------------------------------------------------------
Date: Wed, 4 Feb 2004 00:06:24 +0900
M様、佐藤勝昭です。
 添付文書の図にしたがえば第0層、第1層、第2層の屈折率はn0=1.5, n2=1.5, n1=1.0 となり、第0層と第1層の間は反射が起きません。
n1,l1, n2,l2は逆なのでしょうか。その場合は、図(a)のように上から[n0=1.5]/[n2=1.0]/[n1=1.5] と積層されていることとなりますが、あなたの描かれた図は入射角>屈折角となっていますが、これは違っていて、入射角<屈 折角となるはずです。
このとき、θ0を大きくし、図(b)のように
θ0>sin-1(n2/n0)=sin-1(1/1.5)=41.8°
となるとθ2=90°以上となり全反射がおきます。すると、光は進まず、その伝搬ベクトルは虚数となります。
これは、いわゆるエバネセント波の状態です。ここに無理やりブラッグ条件を当て はめると虚数の膜厚が必要になるのです。
 なお、なぜいきなり、ブリュースター条件がでるのかわかりません。これだと、θoは 固定されてしまうので、入射角が大きくなると・・という話と矛盾します。
 もうすこし、整理して質問して下さい。
----------------------------------------------------------
Date: Wed, 4 Feb 2004 14:58:12 +0900
早速のお返事どうも有り難うございました。
ブリュースター条件を用いた理由は、導波路においてガラスと空気の層で、T EモードとTMモードを分波することが出来るか、確認する準備段階として、導 波路を多層膜に近似し、ガラスと空気の周期構造を用いp偏光とs偏光を分離で きるか確認したかったからです。
また、入射角を変化させてみたのは、層の屈折率が与えられた事により決まるブ リュースター角が、きれいな角度ではなかったので、実際作成した時、理論値か らずれる事が考えられ、その時、どの程度なら理論値からずれても許容範囲であ るのかを調べてみたかったからです。
また、図に関しては間違っていました。先生のおっしゃられた通りです。
お忙しい中、時間を割いていただきありがとうございました。
-------------------------------------------------------------------

324. 酸化しない金属

Date: Wed, 4 Feb 2004 18:39:55 +0900
東京農工大学
佐藤 勝昭 教授殿

はじめまして。私はN(株)総合研究所勤務の Sと申します。

先生のHPは昨年から拝見させて頂きまして、 私が受け持っている分野とは違う事でも、 分かり易いお答えだなぁ~と、大変楽しく 拝見させて頂いてます。

不躾ではありますが、ご質問させてください。 都合のよい質問になるかもしれませんが、 アドバイスを頂ければ幸いです。

質問:酸化雰囲気中で高温状態(600℃~700℃ぐらい)の中でも
酸化されない金属はあるのでしょうか?
ただし、貴金属を除いての話ですが・・・。
合金なら可能だとしたら、どんな材料があるのでしょうか?

材料に関しては全く知見がないので、ご質問させて頂きました。
お忙しいと思いますが、回答の方頂けないでしょうか?
以上、宜しくお願い致します。

P.S.Webへのアップの際は、申し訳ないですが匿名にてお願いします。
------------------------------------------------------------
Date: Wed, 4 Feb 2004 21:46:29 +0900
N社S様、佐藤勝昭です。
 金属が酸化されやすいかどうかを見るには、生成熱heat of formationΔHfを評価すれ ばよいのです。ΔHfは、25℃において、元素の安定な形態から1モルの化合物(今の場合 は酸化物)が形成されるに要するエンタルピー変化に等しいとされます。金属の酸化の生 成熱は負で、exothermal(発熱反応)であることがわかります。つまり、酸化して熱を出す (燃える)のです。マイナスが大きいほど酸化しやすいのです。
一覧表にしますと、
金属酸化物生成熱
(kJ/mol)
AgAg2O-30.6
PdPdO-85
HgHgO-90.7
CuCuO-155.2
CoCoO-239.3
PbPbO-276.6
SnSnO-286.2
ZnZnO-348.0
MnMnO-384.9
BaBaO-558.1
MgMgO-601.8
CaCaO-635.5
FeFe2O3-822.2
CrCr2O3-1128.4
AlAl2O3-1669.8
となり、Cuが比較的酸化しにくいことがわかりますが、いずれにせよ、室温の生成熱は負 ですから、高温で酸化しない金属はないということになります。合金でも変わることはな いと存じます。このようなわけで、Ptなどの貴金属がつかわれます。PtOは触媒に使われ る酸化物ですが、電気化学的な方法を使うと酸化されますが、直接の酸化は難しいようで す。
------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 5 Feb 2004 17:15:52 +0900
AA: 佐藤勝昭教授殿

早速のご回答ありがとうございました。
やはり、そんな都合の良い金属は存在しないですよね・・・。
Pt等の貴金属であれば可能ですが、他の材料で無いのかなと 思いまして質問をさせて頂きました。
また違った方向性で検討してみたいと思います。
ありがとうございました。
-----------------------------------------------------------------------------

325. 表面プラズモンとエバネッセント波の結合

Date: Wed, 4 Feb 2004 19:59:00 +0900
Q: 佐藤先生
O大学、研究員のNといいます。(匿名でお願いします)
表面プラズモン共鳴について質問があります。
全反射によって発生する電界と金属表面の自由電子のカップリング がどのようにして起こるのかが分からず、困っています。
全反射によって発生している電界(エバネッセント波)は金属表面 においては金属と垂直に発生している思っています。
一方、金属表面に発生する表面プラズモン(電子の疎密)は、 金属と平行の方向に発生します。
この考えが正しいとすると、電界の方向と自由電子の運動方向が 90°ずれていることになって、どうしてカップリングが起こるのかが なかなかイメージで理解できません。
金属表面から少し離れればエバネッセント波に金属表面と 平行な成分が存在するので、その電界が自由電子とカップリング しているのかとも考えたのですが、正しいかどうか分かりませんでした。
根本的に間違っている部分があるかもしれませんが、 前からずっと気になっていたことですので、お教えいただけると非常に助かります。
以上、ご多忙の中大変申し訳ありませんが、何卒よろしくお願い致します。
----------------------------------------------------------------
Date: Thu, 05 Feb 2004 01:29:58 +0900
A: O大学Nさん、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。
N様がどのようなセッティングについて述べておられるのかよくわかりませんが、 かりに、添付のクレッチマン配置であるとします。
http://aigproducts.com/surface_plasmon_ resonance/spr_kretschmann.htm によれば 全反射によって発生している電界(エバネッセント波)がプラズモンと結合するのは、 TM偏光(電界が入射面、すなわち、入射光と反射光を含む面内にある場合:p偏光)のみ です。斜めに入射していますから、電界には表面に垂直な成分と平行な成分とがありま す。光の伝搬方向も、表面に平行な成分を持ちます。表面プラズモン共鳴は、光の波動 ベクトルの面内成分が表面プラズモン(電荷の粗密波)の波動ベクトルと整合する場合 に起きます。
S. Kawata ed., Near-field optics and surface plasmon polaritons, Springer, 2001 を読んで勉強して下さい。
---------------------------------------------------------------------

326. クロムの降伏応力

Date: Fri, 6 Feb 2004 15:52:59 +0900
Q: Y大学M2のKと申します。
不躾ではありますが、ご質問させてください。
クロムの降伏応力などの物性値を調べても見つかりません。
教えて下さい。
又、酸化クロム膜となった状態での物性値も知りたいのですが、 お忙しいと思いますが、回答の方頂けないでしょうか?
以上、宜しくお願い致します。
------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 6 Feb 2004 17:25:20 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
ESPI Metalという会社のHPに
クロムのことが詳しく掲載されたpdfがアップされています。
その中にあります。
(クロムの)機械的性質:
引っ張り特性 (再結晶化、スエージ処理、アーク鋳造された電解クロム):
温度(℃)引っ張り力(MPa)比例限界伸び(%)面積減少率(%)体積弾性係数(MPa)
2083--00248
200234--00--
300154(a)11.734290
35019710568168
400225(b)1325189227
500 ----3075--
600242694281200
700203--3385--
800180974792255
注:水素雰囲気1200℃にて再結晶化。テストのひずみ増大率0.017 m/m per min.
注 (a) 降伏応力 131 MPa. (b) 降伏応力 140 MPa.
と書いてあります。
酸化クロム自身は、一種のセラミクスなので、硬いけれど脆く、引っ張り試験などは行わ れていないのではないかと思います。また、クロム表面に酸化クロムができた状態での引 っ張り試験については、膜厚や形成条件に依存するので原著論文などを地道に調べるしかないでしょう。
-------------------------------------------------------------------------

327. 磁気光学効果の測定法について

Date: Tue, 10 Feb 2004 00:41:00 +0900
Q: はじめまして。突然のメール失礼致します。
群馬大学の米山と申します。
インターネットで検索をかけていて、偶然に佐藤様のページを拝見し、参考にさ せて頂いております。
付きましては、お時間があればご質問に回答をお願いしたいのですけれども、佐 藤様のホームページにおきまして、
第5章 磁気光学効果の測定法とその解析
こちらなんですけれども。
本文中に図等の説明があるのですけれども、図の方は掲載しておらず、どちらの 参考書を引用なされたのかをお聞きしたくメール致しました。また佐藤様がお書 きになっていましたら、書名等お教え頂けたら幸いです。

お忙しい中とは存じますが、もしお時間ありましたらご返信宜しくお願い致しま す。では失礼致します。
----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 10 Feb 2004 11:00:14 +0900
A: 米山様、佐藤勝昭です。
 書籍は、佐藤勝昭著「光と磁気(改訂版)」(朝倉書店2001.11)p.90
です。HPにあるのは、慶應義塾大学での授業での配付資料ですが、  図は、慶應義塾大学物性物理学特論第8回講義の図としてWebにあります。
Word file ダウンロード

なお、パワーポイントが アップしてあるので、Internet Explorerでご覧いただけます。
---------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 10 Feb 2004 11:41:33 +0900
AA: 佐藤勝昭 様

群馬大学の米山です。
お忙しい時期に、迅速で丁寧なご回答ありがとうございました。
早速図書館に行き、本を借りようと思っております。

ありがとうございました。
発表が落ち着いたら、ゆっくりホームページの方をうかがわせていただきます。

それでは失礼致します。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 10 Feb 2004 17:30:22 +0900
AA2:群馬大学の米山です。
 図の方お忙しい中お探し頂きありがとうございました。図書館の方に訪れまし たら、貸し出し中でした。助かりました。

ありがとうございました。
---------------------------------------------------------------------------

328. もろみの比熱

Date: Tue, 17 Feb 2004 13:07:46 +0900
Q: はじめまして、私、O社の藤澤と申します。
醤油製造工程における、諸味の加熱設備を計画するに当たり諸味の比熱を調査してお りましたがなかなか見つけることができません。教えて下さるよう御願い申し上げます。 諸味の内訳は、下記のとおりです。

大豆2580kg,小麦1800kg,食塩1570kg,水3029kg 合計8978kg

以上、御忙しい所、恐縮ですがよろしく御願い申し上げます。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 17 Feb 2004 19:36:22 +0900
A: 藤澤様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。私は、食品関係は専門ではないので、本学の農学部応用 生物科学科の高橋幸資教授(食品化学)に問い合わせましたところ、下記のメールをいた だきました。
=============================================================================
 さて、お問い合わせの標記事項についてですが、少々無責任なお応えですが、下記 書籍に詳しいと聞いています。小生持ち合わせがありませんでご希望の内容が書かれ ているか不明ですが、調査する価値はありそうです。

  醸造協会編 「醤油の科学と技術」 Tel 03-3910-3853

 もしこれに記載ない場合は、日本醤油協会(多分そんな名称と思いますが)に照会 するか、ヒゲタ醤油、または、キッコーマンの技術陣に伺うことでしょうか。
 取り急ぎ不完全ではありますが、解る範囲でお応え申し上げました。(高橋幸資)
=============================================================================
ということです。調べてみて下さい。
 お酒の博物史によると「もろみ」は「酵母を純粋培養した「酒母」に麹、水、蒸米を数 回に分けて加え造ります。「もろみ」の中では麹による米のデンプンの「糖化」と、酵母 による糖のアルコール発酵とが同時に進行します。」と書かれていますが、発酵の段階で 成分や、形態が微妙に変化すると思われます。比熱として最も効いてくるのは水(比熱= 1kcal/kg℃)で、他の成分は1桁小さいので、もろみの比熱は、どれくらい水分を含んで いるかでほとんど決まるのではないかと推察します。
 補足しておきますと、もし、大豆2580kg,小麦1800kg,食塩1570kg,水3029kg がただ混ぜ合わさった状態の比熱は、総熱容量を総重量で割ればよいのです。
 白米の比熱は、約0.4kcal/kg℃なので大豆、小麦も同程度でしょう。
 食塩の比熱は、0.2043kcal/kg℃です。
従って、大豆2580kg,小麦1800kg,食塩1570kg,水3029kg の総熱容量は、
 0.4*(2580+1800)+0.2*1570+1*3029=5095kcal/℃
これを総重量で割ると5095/8978=0.56kcal/kg℃
 実際の「もろみ」では、大豆が溶けて発酵して物性が変わってしまうので、ただ混ぜ合 わさったものとは全く違ったものになると思われます。しかし、全体として水の比熱を超 えることはありません。

 なお、
中小企業総合事業団の「省エネルギー指導」のホームページに、エネルギー使用 合理化設備導入促進事業 モデル事例にヤマキ醸造株式会社のことが載っています。
 (ご参考まで)
醤油の製造工程における省エネルギーの詳細は次のサイトに出ています。
  http://www.jasmec.go.jp/info_tech/ene/ene_body/hp6/98/honbun/982001.htm
が、もろみのことは、「旧来のコンクリート製(1本18,000)100本の醗酵タンクは温醸加 温はしていない。屋外の醗酵タンク(容量80kL×30本・容量120kL×6本)は必要な時には 温水(25℃~35℃)の循環により加温されている。」とあるだけで、比熱については載っ ていませんが、参考になるかもしれません。
----------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 18 Feb 2004 11:08:37 +0900
AA: 佐藤先生
専門外でありながらも早速になおかつ丁重に御解答頂き、大変ありがとうございました。
今後とも、難解な事項ございましたら、相談させて頂きたく考えております。
よろしく御願い申し上げます。  
                       O社 藤澤
-----------------------------------------------------------------------------------

329. ZnOの圧電性について

Date: Tue, 17 Feb 2004 23:06:11 +0900
Q: 突然のメール失礼します。佐藤先生のホームページを拝見してメールをさせて頂きました。
私は京都工繊大大学院のMと申します。
匿名希望でお願いします。私は酸化亜鉛ZnOの光物性の研究をしているのですが、 ZnOはc軸配向すると、なぜ極性を帯びて圧電性を持つのでしょうか?
いろいろ手を使って調べたのですが、わかりません。宜しければ、教えてください。
-----------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 18 Feb 2004 00:45:47 +0900
A: Mさん、佐藤勝昭です。
APS(米国物理学会)1995年春の講演会のプログラムに下記の講演の要項が出て います。第1原理計算でZnOの圧電性を説明しています。これによれば、「クラ ンプされたイオン」と「内部ひずみ」という2つの競合するメカニズムがあっ て、ZnOでは両メカニズムの打ち消し合いが最も弱く圧電性が大きいが、ZnSでは 打ち消しが強いため、圧電性が出ないということです。
引用されているPhys. Rev. B 50, 10715 (1994)の論文を読んで見て下さい。
----------------------------------------------------------------------
 Andrea Dal Corso,Michel Posternak,Alfonso Baldereschi
(IRRMA--Lausanne, Switzerland ),Raffaele Resta (U. of Trieste, Italy)
 We demonstrate the feasibility of ab--initio studies of piezoelectricity within an all--electron scheme et al., Phys. Rev. B 50, 10715 (1994).. We focus on wurtzite ZnO; for comparison, results are also presented for the related materials BeO and ZnS. The comparative study is performed in order to understand the microscopic origin of the peculiar behaviour of ZnO, whose piezoelectric response is the strongest among the tetrahedrally bonded semiconductors. In all such materials the piezoelectric effect results from two opposing contributions which are usually referred to as ``clamped--ion'' and ``internal--strain''. Experimental access to each of the two terms separately is difficult; our first principles analysis shows that cancellation is less effective in ZnO, where the dominant effect is due to a rigid--ion--like mechanism. This feature is shared by BeO and seems to be typical of oxide materials with ionic bond and small unit cell. On the contrary, ZnS shows the strong cancellation typical of other II--VI materials studied in the past.
-----------------------------------------------------------------
Date: Fri, 20 Feb 2004 11:43:30 +0900
AA: 佐藤先生へ
先日先生にメールをしたMです。先生のご意見ありがとうございました。非常に参考になりました。
--------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 20 Feb 2004 12:59:37 +0900
A2: M様、佐藤勝昭です。
 先日は、夜中に家からお答えしたので、資料がなく十分なお答えになったかどうか心配 です。
 ZnOは六方晶系、空間群はC6v4(C6mc)です。結晶工学ハンドブック(共立1971)第5章 p1217にある対称性とテンソル要素の表によると、六方晶C6vにおいては、3つの独立な圧 電パラメータ(d31=d32, d33, d15=d24)がゼロにならないということがわかっています。
 従って、ウルツ鉱構造のZnO自身は、圧電性になる能力をもっているのです。
次にWyckoff "Crystal Structures" Vol. 1, p.111のFig. III, 13aにあるZnOの結晶構造 (添付jpgファイル)を見ると、c軸に沿って、Zn面(000;1/3 2/3 1/2)とO面(00u;1/3 2/ 3 u+1/2)があり極性のある結晶であることがわかります(u=0.345)。このため、(001)面に 垂直に(c軸方向に)歪みが加わると電気分極が生じることが理解できるでしょう。
 あとは、同じウルツ鉱構造なのになぜZnSの圧電定数は小さく、ZnOの圧電定数が大きい かという問題に答えるのが、前回のお答えなのです。ご理解頂けたでしょうか。

Date: Sun, 7 Mar 2004 21:58:57 +0900
佐藤先生へ
先日メールした京都工芸繊維大学のMです。匿名希望でお願いします。
返事が非常に遅くなってすみません。わざわざ資料を添付して頂いて有 難うございました。非常に理解しやすかったです。

----------------------------------------------------------------------------

330. 物質中の光速の波長依存性

Date: Wed, 18 Feb 2004 10:39:17 +0000
栃木県立鹿沼東高校の理科の教員です。
物質中の光速はなぜ波長によってわずかに変化するのですか。教えてください。
古家 正夫
-------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 18 Feb 2004 21:50:42 +0900
古家正夫様、佐藤勝昭です。
 物質の可視光領域における屈折率をnとし、電子分極による比誘電率をεeと しますと、マクスウェル方程式を解くことにより、
 εe=n2  (1)
と表されます。
 ω=ωjに局在光学遷移のある場合の比誘電率はεe=1+fj/(ωj22) の形で 表されます。実際には、遷移の緩和時間τのため、比誘電率は複素数となり、
  εe=1+fj/{ωj2-(ω-i/τ)2}   (2)
と表されます。この式はローレンツの分散式と呼ばれています。
 *********************************************
 なぜこのように比誘電率はωに依存するのでしょうか。これをきちんと説明 するには、電磁気学と運動方程式の知識が必要です。古家様は理科の教員なの で、ある程度理解いただけると思いますので、回りくどいですが、つきあって ください。
 光は電磁波なので電界と磁界があります。物質中で電界Eと誘起された電束 密度Dの関係を与えるのが誘電率ε=εeε0です。電束密度は
   D=εE    (3)
ですが、分極Pを使って書き表すと、
   D=ε0E+P   (4)
と表されます。つまり、物質中の電束密度は、真空の電束密度と物質に生じた 分極の総和で表されます。分極Pと電界Eとの間には、P=χε0Eの関係がありま す。χは電気感受率です。χε0は分極率と呼ばれます。(4)をχを使って書き 換えると、
   D=(1+χ)ε0E  (5)
となりますが、(3)と比較して
   εe=1+χ    (6)
つまり比誘電率は、物質に電界が印加されたときの分極のできやすさを表して いるのです。
 *******************************************
つぎに、電子分極 Pとは何かを考えてみましょう。
もともと電子は原子核の正電荷の周りに分布していますが、電子分布の負電荷 の重心と、核の正電荷の重心とが同じ位置にあるので分極はありませんが、電界を印加 すると電子は+側に引き寄せられ、正電荷との間が離れ電子分極が生じます。  古典電子論では、正電荷と負電荷の間はバネで結びついていると考えます。 共振周波数ω0とすると、ω0=(K/m)1/2 で表されます。ここにKはバネ定数です。
変位をuとして、電界Eが加わったときの電子の古典的な運動方程式を書くと、
   md2u/dt2+mω02u=-eE     (7)
と表されます。電界がE=E0 exp(-iωt)、変位がu=u0 exp(-iωt)で表されると すると、(7)は
   -ω2u002u0=-eE0/m     (8)
と書けます。従って、
   u0=eE0/(ω022)      (9)
分極は、電荷×変位で表されるので、振動する分極をP=P0 exp(-iωt)とする と、
P0=(Ne2E0/m)/(ω022)    (10)
従って、
  χ=P0/E0ε0=(Ne2/mε0)/(ω022)   (11)
が得られます。εe=1+χなので、εeは周波数依存性(従って波長依存性)をも つのです。式(1)から屈折率nも波長依存性をもちます。
--------------------------------------------------------------------
 実際には、古典論ではなく量子論で説明しなければなりませんが、ここで は、これでとどめておきます。
--------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 19 Feb 2004 00:14:24 +0000
Q2: 佐藤先生
拝啓
 早々の回答 大変ありがとうございました.
屈折率 比誘電率 電子分極 共振周波数 の関係がおぼろげにわかりました. 波長が大きくなると 比誘電率、屈折率が増加し 光速がわずかに減少する という解釈でよいのでしょうか?
私は 高校で 物理と化学を担当しています.特に高校物理に関しては  教科書に理論の説明が非常に少なく 毎日悩んでいます.今後とも  指導よろしくお願いします.
-------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 19 Feb 2004 12:17:14 +0900
A2: 古家様、佐藤勝昭です。
 紹介しましたように、あの式は周波数ωについて書いてあります。
εe=1+χ=1+(Ne2/mε0)/(ω022)
透明な物質では、ω0は可視光のωより高いところにあるので、ω<ω0です。
従って、ωがω0に近づくにつれて比誘電率が高くなります。
ω=2πc/λなので、波長λが短くなるのに従って比誘電率は大きくなり、これに伴って屈 折率も大きくなります。屈折率が大きくなると光速は減少しますから、
「波長が短くなると光速が減少する」というのが正解です。
 ---------------------------------
なお、教科書に理論的なことが載っていないという点ですが、学習指導要領では、微分方 程式など数学を使って物理を説明することを禁じています。このため、知識の詰め込みに なっており、困った問題だと思っています。
あなたのような高校の先生が増えて、物事の本質をきちんと知るには、理論的な扱いが必 要であることを、より多くの高校生にお伝え頂くことをお願いしたいと存じます。
私たち大学人は、いつでも、そのためのお手伝いをします。
また、応用物理学会の教育企画委員会では、先生方のためのリフレッシュ理科教室などを 開いております。本学でも、東京都の高校理科教員の研修のお手伝いを企画しております。
お近くの大学の物理系学科に、気軽に声をかけて下さい。
また、日本物理教育学会も同様の活動をしていますので、コンタクトして下さい。
---------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 19 Feb 2004 04:42:15 +0000
AA:非常に丁寧な説明 大変ありがとうございました.
何とか生徒に 少し理論的に説明できそうです.
生徒には常に どうしてそうなるのか 考えよと指導しております.
化学は何とか説明できるのですが、物理は何箇所か 非常に 非論理的な個所があるため 必死に調べるのですが、なかなか うまくいきません.偶然 ネットで先生のHPを見つけ 地獄に仏の心境です.
今後とも よろしくご指導のほど お願いいたします.
-----------------------------------------------------------------------

331. 高圧ケーブルの劣化

Date: Wed, 25 Feb 2004 20:35:04 +0900
佐藤先生
はじめまして。HPを見てメールさせて頂きました。
私はS電機のKと申します。(匿名でお願い致します) 教えて頂きたいことがあります。
高圧ケーブルの絶縁皮膜の絶縁劣化についてなのですが、 高電圧(数千V)の電位差のあるケーブルを束ねたような場合、 絶縁被膜の絶縁劣化は、時間とともに進行してしまうのでしょうか?
それとも、閾値があってそれを超えない条件(欠陥等)であれば、 半永久に使うことができるものなのでしょうか?
(耐候性の問題は無いものと仮定した場合)
色々な本を見てもなかなか明快な回答が見つかりません。 良い教科書など併せてご紹介頂けると助かります。
ご多忙の中大変申し訳ありませんが、 何卒よろしくお願い致します。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 26 Feb 2004 20:47:50 +0900
K様、佐藤勝昭です。
 高電圧における絶縁破壊の問題は、古くて新しい問題です。絶縁破壊は、欠陥を見つけ て樹枝上に破壊のパスが広がっていくようですが、破壊の起き方は千差万別です。
お尋ねのケースは、ケーブルに使われている絶縁体の種類や電流の大きさ太さなどいろい ろな要素が絡んできます。また束ねたことにより、単一の場合より実効的に高い電圧がか かる場合も考えられます。また、束ねることで熱の放散が妨げられるということもあるで しょう。
 私は、絶縁破壊の専門家ではないので、この道の専門家である武蔵工業大学の高田達雄 教授(環境情報学部長)にメールを転送しご検討願っています。高田先生から返事をいた だきましたら、K様にお伝えします。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 26 Feb 2004 21:11:56 +0900
佐藤先生へ
 早速のご返信、ありがとうございます。
 しかも、専門の先生まで紹介頂き、大変感謝いたしております。
 色々と勉強させて頂きますので、よろしくご指導・ご教授のほど
 お願い申し上げます。
                           以上
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 28 Feb 2004 23:37:03 +0900
K様、佐藤勝昭です。
 武蔵工業大学横浜キャンパスにある環境情報学部長である高田達雄先生から次のよう なお返事を頂きましたので、転送します。
=============================================================================
K様                     2004/02/28

私は武蔵工業大学の高田達雄と申します。東京農工大学の佐藤勝昭先生から紹介頂きま した。私は電線ケーブル会社で働いた経験はありませんが、高電圧ケーブルに関する基 礎研究をしてきた者ですので、K様の質問にお答えします。

まずは、ご質問に近いことが書かれている参考書を紹介します。
速水敏幸著「CVケーブル」コロナ社
第8章 CVケーブルの寿命推定および劣化診断法

(1) 劣化の概念
一般に、酸素と水および熱が存在していると、有機物も無機物も原子結合が切れて劣化 すると考えてよいと思います。人間の体の細胞も酸素と水および熱で分解されています が、食物からの栄養供給により破壊された細胞は補修されます。若いうちは細胞の増殖 で成長しますが、歳をとるとやがて細胞の増殖より劣化が支配的になると、体は老化し ます。

(2) 電気絶縁材料の劣化
電気絶縁材料の劣化も同様で、酸素と熱が存在すれば、材料の分子結合の切断が起こり 劣化が進展します。水分を含んでいて電圧が加わっていると、水分の存在する部分に電 流が集中しエネルギーも集中するので、分子結合の切断も起こします。従って、ご質問 の高電圧ケーブルは、製造工程において水分や不純物を含まないように絶縁材料の品質 管理を十分に行い、外部から水分や酸素が絶縁層に浸入しないような外部遮蔽構造に設 計されています。電気を沢山使用しているときは、高電圧ケーブルには大きな電流も流 れますので、中心導体の銅線から発熱があり温度が上昇します。電気を使わない夜間に は電流が少ないので温度上昇はありません。従って、絶縁層に温度上昇と降下、さらに は熱膨張による伸縮が起こります。

(3) 質問の解答
以上のことを考えると、電気絶縁材料の劣化は時間とともに進行してしまいます。前述 の劣化条件が少なくなる条件で絶縁層の厚さと電圧を設定し、使用条件の閾値が決めら れています。しかし、実際に高電圧ケーブル地下トンネルに敷設して使用しています と、初期は欠陥に起因する破壊が発生しますが、その後は安定して使用できます。しか し、20年30年と使用していきますと、絶縁性能の劣化が進んでいます。劣化が進ん でもすぐには破壊は起きていません。現実には、どこでどの程度の劣化が進行している のか、いつ破壊が起きるのか、診断できる技術はまだ確立されていません。閾値を超え ない条件で使用しても、半永久に使うことはできないと考えます。
「高圧ケーブル束ねたような場合」との質問からすると、超電圧ケーブルではなく、数 千Vの中電圧ケーブルの場合かと思います。この場合ですと経済的な面から、外部から水 分や酸素が絶縁層に浸入しない、十分な外部遮蔽構造に設計されていない場合もあるか と思います。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 01 Mar 2004 10:55:02 +0900
佐藤様
 S電機Kです。
 大変お世話になっております。
 貴重な情報をありがとうございます。
 高田先生へも感謝の意、お伝え頂きますよう、  よろしくお願い致します。

 長期的な絶縁劣化抑制に関しては、酸素と水の遮断が重要と言う点、  診断する技術は完全には確立されてない点、理解致しました。
 もう一点、質問させてください。
 (3)で「初期は欠陥に起因する破壊が発生」とありますが、  これは(2)の「製造工程において水分や不純物を含まないように  絶縁材料の品質管理」とあるように、水分・不純物は初期絶縁破壊の  原因となる、と考えてよろしいのでしょうか?
 逆に言うと、  「製造工程で水分や不純物」という欠陥が無く「使用条件の閾値」以下の  条件であれば、5-10年程度の耐久性はある、と考えて良いのでしょうか?

お忙しいところ、大変恐縮ですが、よろしくご指導賜りますよう、 お願い申し上げます。
------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 2 Mar 2004 01:18:51 +0900
K様、佐藤勝昭です。
 ご質問の件ですが、お考えのとおりでよいと思います。
------------------------------------------------------------------------

332. サファイアの放射率

Date: Wed, 3 Mar 2004 15:02:10 +0900
Q1:佐藤先生、初めまして。
A電気のSと申します。(所属、名前は匿名でお願いいたします)
先生の「なんでも物性Q&A」を見せていただき、質問させていただきたくmailさせて いただきました。

私は真空装置で酸化亜鉛の薄膜形成を行っています。
サファイア基板を用いているのですが、加熱のため裏面にTi、Moなどの高融点金属 を蒸着して熱吸収させています。

この際、温度をモニターするのに放射温度計を使用しているのですが、 放射率がわからず困っております。
もちろん表面状態等で放射率異なってくるとは思うのですが、まずは文献値を 参考にしたいと思っています。
つきましてはこのようなデータがわかる文献等ございましたらお教えいただけませ んでしょうか?
なお測定波長は、5μmを使用しております。

またその他このような測定を行う際の注意点等ありましたらご教授いただけますよ うお願いいたします。

以上よろしくお願いいたします。
------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 3 Mar 2004 19:22:36 +0900
A1: S様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。私どももBiSrCaCuO/SrTiO3やMnGeP2/GaAsのMBE成長の際 に基板温度の校正のために放射温度計を使っています。低温の場合に、どのくらい正確な 値を示しているのかは問題ですよね。GaNのMOCVDをやっている研究室に聞いたのですが、 最近は使っていなくてサセプタに取り付けた熱電対の温度をたよりに・・というような状 況でした。
 放射率(emissivity)のデータですが、私も手元にないので、Google でemissivity tableと入力したところ、33000件も引っかかってきました。
MONARCH INFORMATION CENTERのsiteに
Table of emissivityのpdfがありました。Omegascopeで測定したとあるだけで何μmのデータであるかわかりませんが、一般 に平坦な金属の放射率は低く0.05-0.1の程度ですが、セラミクスの放射率は大きくwhite alumina(多結晶のAl2O3)で0.94、シリカガラス0.85程度です。サファイア(Al2O3単結晶) のデータはよくわかりませんがアルミナと同程度ではないかと思います。Tiの放射率は0. 08-0.19, Moの放射率は0.08-0.18です。従って、金属からの熱放射は無視して、基板から の放射を考えればよいでしょう。ZnO膜の放射率ですが0.95となっています。
 なお、SVTというMBE装置の会社のHPにProcess monitorのApplication Noteが載って います。ここでは、GaN薄膜の成膜時に正確に透明基板の基板温度を測定するにはという 問題が提起されています。pdfファイルを添付します。この冒頭の部分を引用しておきますと、 「半導体薄膜の堆積の最中に放射温度計で計測するとき、薄膜の屈折率と基板の屈折率が 異なると測定誤差の原因になる。堆積が起きるにともない、時間とともに変化する干渉効 果のために薄膜の透過率が変化し、放射温度計に到達する黒体輻射の量を変えてしまう。 この「変動放射率効果」が放射温度計を用いた基板温度の測定に影響を与える」と書かれ ています。このように単に放射率の問題以外に、干渉縞による放射率変動に気をつけなけ ればいけないようです。
 よけいなことかもしれませんが、英語で検索すると日本語では得られない多くの情報が引っかかってきますので、ぜひご活用 下さい。物理学のtechnical termの英訳は、岩波「理化学辞典」などがご利用になれます。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 4 Mar 2004 13:02:52 +0900
Q2:A電気Sです。
お忙しいところ早速のご返信ありがとうございます。

英語で調べるとかなりの情報が得られることがわかりました。 早速有効に活用させていただきます。ありがとうございます。

ところでサファイアの放射率ですが、アルミナと違いサファイアは 広い範囲で透明であるため放射率は小さいと考えています。
(基板メーカのデータでも0.02以下@2.6-3.7μmと出ています)
ZnOについてはよくわからないのですが、バンドギャップと透明性、成膜中の 放射温度計の読みの変化を見ている限りそれほど影響ない(放射率小さい) と考えています。
これらから放射温度計は裏面の金属膜を基板越しに見ていると考えました。
ただし、サファイアは5μmを吸収するので、吸収率を計算し、 放射率に透過率をかけたものを使用しようと考えております。

このような考え方をしたのですが問題ありますでしょうか?
ご指摘いただけると助かります。

以上よろしくお願いいたします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 4 Mar 2004 14:02:01 +0900
A2: S様、佐藤勝昭です。
 基板は透明なのでアルミナのデータは使えないのですね。こちらが勉強させて頂きまし た。なお、ご質問の件ですが、金属膜のみが発熱しサファイアに伝わっていると考えるな ら金属の放射率に透過率をかけたものでよいと思います。
純粋なサファイアの5μmにおけ る消光係数は0なので、透過率自身は100%あると存じますが、界面での反射の方を考慮し なければならないでしょう。
サファイアの屈折率は(多少の異方性がありますが)1.6程 度です。5μmにおけるTiの屈折率は4.87, Moのそれは3.61です。従って、Tiとサファイア 界面での反射率はR1=(1.6-4.87)^2/(1.6+4.87)^2=0.36, Moとサファイアでは、R1=(1.6-3. 61)^2/(1.6+3.61)^2=0.15, サファイアと空気の間の反射率R2はR2=(1-1.6)^2/(1+1.6)^2= 0.053なので、全体の透過率はT=(1-R1)(1-R2)となり、Ti/sapphire/airではT=0.61、Mo/ sapphire/airでは、T=0.80となります。
Tiの低温でのemissivityを0.08とすると、Ti/sapphire/airを透過した赤外光の emissivityは0.05となり、サファイアのemissivity0.02は無視できなくなりますので注意 が必要です。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 5 Mar 2004 09:19:52 +0900
A電気のSです。
非常に参考になります。

サファイアの透過率ですが、 京セラのHPによると5μm辺りでは、10%以上の吸収があるようです。
このことから5μm付近のサファイアの放射率は0.02よりはもう少し大きくなり 影響が大きくなるように思われます。

先生に頂いたアドバイスをもとに再検討してみたいと思います。
ありがとうございました。
また何かの際にはよろしくお願いいたします。

------------------------------------------------------------------------

333. 光と磁気誤植p147

Date: Wed, 3 Mar 2004 01:35:10 +0900

Q:佐藤先生

お忙しいところ、突然メールを送り失礼致します。
私は阪大でバンド計算から磁気光学効果を計算しようとしている学生で、 先生の著書「光と磁気」を愛読させて頂いております。

ところで、「光と磁気」の147頁に掲載されているFeのカー効果の計算結果で 論文の著者名が間違って引用されています。
"MIYAZAWA, Oguchi" が、"MIYAZAKI, Oguchi" と誤植しているほか、 漢字の方も「宮沢、小口」が「宮崎、小口」と誤植しています。

もう既にご存知であれば大変失礼ですが、 念のためメールさせて頂きました。
---------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 3 Mar 2004 12:37:58 +0900
A:山内様、佐藤勝昭です。
 ご指摘ありがとうございました。
改訂版第2刷の印刷には間に合いませんでしたが、次回の増刷では修正したいと存じます。 こんごともよろしくお願いします。
----------------------------------------------------------------------------------

334. 光と磁気誤植p206

Date: Thu, 4 Mar 2004 11:39:16 +0900
Q: 佐藤勝昭先生

千歳科技大の川辺と申します。初めてメールを差し上げます。 先生の「光と磁気」は講義の参考にさせていただきました。

誤植と思われるところを見つけましたのでお知らせします。
(すでにお気づきであればご容赦ください)
なお、改訂版第1刷を見ています。

p206 7~9行の(8.8)式に関する記述で、
(本文) Pj(2ω) -> Pi(2ω)
(左辺) 同じ
(本文)添え字 j, k, l, m -> i, j, k, l

同じページ (8.9)式 1行5列目の χxxz が6列目に来ています。

あと、誤植というわけではないのですが、p208の表8.1の極Kerr配置の odd 成分のところが気にかかります。注釈に書いてあるようにもともと Shenのグループの計算に間違いがあり、Rasingはそのうち、
χxyz と χyxzの関係(符号)については訂正してますが、χzxy, χzyxについては何も触れていません。 これは本来4回軸の対称性から0になるはずのもです。
Rasingのレビュー(貴書ref. 40 のsummer schoolとは別のもの) では、対称要素のとり方にあやまりがあるようです。
ちなみにHubnerの95年の論文では0になっています。

ご参考までにお知らせいたします。

千歳科学技術大学 川辺豊
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 4 Mar 2004 13:10:19 +0900
A: 川辺様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。丁寧にお読み頂きありがとうございます。
p.206 line 7-9、式(8.9)の誤植はご指摘の通りです。
p.208の表も、ご指摘の通りです。文献34)のTable 3.1では、そのように訂正されていま す。見落としておりました。
 改訂版第3刷では、修正したいと存じます。
-----------------------------------------------------------------------------

335. ZnOの赤外吸収

Date: Tue, 9 Mar 2004 11:29:33 +0900
Q1: 佐藤勝昭様
はじめまして。
酸化亜鉛の光学物性についての疑問を解決すべくサイトを検索中、佐藤様研のHPを拝見し質問させていただきます。 大変基本的な質問で恐縮ですが、酸化亜鉛の赤外域(特に10μm前後)の吸収率が掲載されている文献・本等御存知ありませんでしょうか?
宜しくご教授お願い致します。
イビデン㈱玉木
------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 10 Mar 2004 00:13:51 +0900
A1: イビデン玉木様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。
Palik「Handbook of Optical Constants of Solids I, II」 や工藤恵栄「物性基礎図 表」などを見ましたが、載っておりませんでした。Landolt Boernstein New Seriesの Vol III-17bあたりに出ているのではないかと思うのですが、図書館に行く時間がなく調 べておりません。
 ストイキオメトリ組成の絶縁性ZnOであれば、バンドギャップ以下の光子エネルギーに 対応する波長の吸収はほとんどなく、赤外部にあるLO フォノンによる吸収のみが見られ るはずです。ZnOのLOフォノンのエネルギーは590cm-1(16.9μm), 574cm-1(17.4μm)なの で、10μm付近の吸収係数はほとんどゼロでしょう。(追記:後で調べたところ
下にありますようにゼロではありません
 しかし、ご存じのようにZnOはストイキオメトリからずらすことで透明導電膜として使 える材料です。これは、酸素欠陥がドナーとなって自由電子が伝導帯に供給され、フェ ルミ準位が上がり縮退半導体になるためですが、高密度の自由電子があると、free carrier absorption が起き、波長の増大とともに急激に増加する吸収をもたらします。 従って、10μmにおける吸収係数は、自由電子密度に依存するのです。この場合は、ハン ドブックなどには載っていないので、太陽電池の透明電極の開発などの論文を探せば、 出ていると存じます。
 お役に立たず申しわけありません。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 10 Mar 2004 08:24:17 +0900
Q2: 佐藤勝昭 先生
お世話になっております。
貴重なご教授有難う御座いました。
大変参考になりました。
早速、本や論文あたってみます。
今後もお尋ねする機会があると思います。
その際は、宜しくお願い致します。

絶縁性ZnOのLOフォノンのエネルギーをご教授頂き有難うございました。
しかしながら、恥ずかしいことに、 ZnOのLOフォノンのエネルギー:590cm-1(16.9μm), 574cm-1(17.4μm) がどのような参考書に掲載されているのか知りません。
お忙しい中申し訳御座いませんが、 本名等ご教授頂けませんでしょうか?
宜しくお願い致します。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 10 Mar 2004 17:42:41 +0900
A2: イビデン玉木様、佐藤勝昭です。
 ZnOのフォノンのエネルギーの参考文献ですが、新しいものとしては、
N.Ashkenov et al., J.Appl. Phys. 93 (2003) 126.
があります。これには、過去の文献値もTableの形でリストされていますので 便利かと存じます。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 10 Mar 2004 13:05:59 +0900
A3: イビデン玉木様、佐藤勝昭です。
 昨夜は、家からメールしたので、手元に資料がなく失礼しました。
本日、図書館で、Landolt-Boernstein III 17b (p356, Fig.73, Fig.74)を調べた結果、 10μm付近にもフォノンの吸収があり、10μmにおける吸収係数は、電気ベクトルEがc軸 に垂直な偏光についても平行である偏光についても120 cm-1程度であることがわかりま した。ただし、これは、あくまで、絶縁性のZnOの場合で、導電性の場合には、free carrier absorptionがありますので、注意が必要です。

-------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 10 Mar 2004 13:36:33 +0900
AA: 佐藤勝昭 先生

お世話になっております。
わざわざお調べ頂き、有難う御座いました。
大変参考になりました。
今後とも宜しくお願い致します。
----------------------------------------------------------------------------

336. アモルファスカーボンの電気特性

Date: Thu, 11 Mar 2004 22:37:02 +0900
Q: 佐藤 勝昭先生
はじめまして。K大学大学院博士2年のHと申します。電気伝導度について調べてましたところ、 先生のHPを拝見させていただき連絡させていただきました。
現在、アモルファスカーボンとナノ微結晶ダイヤモンドの混相膜 の電気特性を測定しているのですが、結果として半導体特性 を示し、電気伝導度はダイヤモンドに比べて数倍大きく、 アモルファスカーボンに比べて3桁以上大きい値を示しました。 (温度領域97~500Kです。)
ダイヤモンドとアモルファスカーボン の混相膜ですので電気伝導度がこのようになるのは分かりますが、 半導体特性を示した理由がいまひとつ不明な状況です。
半導体研究室の先生にお聞きしたところ、ホッピング伝導に要する 活性化エネルギーと考えるのが普通だといわれました。
電気特性、半導体物性評価に関しまして、私自身勉強不足 で招いた疑問であることは承知です。お忙しいかと思われますが 「ホッピング伝導に要する活性化エネルギー」について、 および先生のご意見をお聞かせ願いませんでしょうか。
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 13 Mar 2004 10:50:37 +0900
A: H様、佐藤勝昭です。
 いわゆるアモルファスカーボンは、正確には原子レベルでアモルファスではなく、六 方晶のグラファイト結晶の超微粒子がランダムに結合し、全体として長距離規則を失っ ている状態です。グラファイトは、炭素の蜂の巣構造のネットワークで、面内は金属伝 導性を持ち、炭素ネットワーク面間(ファンデアワールス結合)は半導体的です。
 アモルファスカーボンではグラファイト微結晶同士が緩く結合しているので、粒界が 存在します。おそらく粒界には、ダングリングボンドや、不純物の修飾のため、ポテン シャル障壁が存在します。この障壁の高さをΔEとすると、グラファイトの粒子から粒子 に電子が飛び移る(=ホッピングする)確率は、exp(-ΔE/kT)となります。従って電気伝 導率は活性化エネルギーΔEをもつ温度変化を示すのです。
 ダイヤモンド微結晶も、もしドープされておれば、電気伝導に寄与しますが、グラ ファイトに比べれば電気抵抗が高いので、あなたの作られた膜の導電性は、ほとんどア モルファスカーボンから来ているのではないでしょうか。
---------------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 13 Mar 2004 15:16:23 +0900
AA: 佐藤勝昭 先生
早急なご返答ありがとうございます。
大変勉強になりました。 今後ともよろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------------------------------

337. 複合誘電体の誘電率

Date: Fri, 12 Mar 2004 15:41:09 +0900
佐藤先生

Q1:はじめまして。私はD社で材料を研究しているOというものです。
導電体と絶縁体(誘電体)の複合材を検討しているのですが、 そこで「導電体の誘電率とは?」という疑問に突き当たり、 いろいろ調べている内に貴HP「物性何でもQ&A」にたどり着きました。
下記の点につき、ご教示いただければ幸いです。

「誘電体現象論(電気学会大学講座)」という本によると、 誘電体1及び2からなる平行平板型の直列2層誘電体 (それぞれの比誘電率、導電率をそれぞれεr1'、εr2"、σ1、σ2、とし、
誘電体1の厚さが(1-γ)、誘電体2の厚さがγとする)において、複合誘電体としての誘電率は、

εr' = εr∞ + (εr0-εr∞)/(1+ω2)
εr" = σ/ωε0 + ωτ(εr0 - εr∞)/(1+ω2)

ここで、εr0 = {γ εr2' σ2 2 + (1-γ)εr1' σ12}/{γ σ1 +(1-γ)σ22
εr∞ = εr1'・εr2'/(γ εr1'+(1-γ)εr2')
τ = {γ ε0 εr1' + (1-γ)ε0 εr2'}/{γ σ1+(1-γ)σ2

と書かれています。

この場合のεr∞値というのは単純な合成誘電率で、 それに界面分極の寄与が上乗せされた値がεr'になる、と解釈しました。
ただ、例えばこの場合、誘電体2をある抵抗を持つ導電体(カーボン等)として、 複合体としての誘電率を計算する場合に、 εr2'の値はどうなるのか(そもそも導電体の誘電率とは?)という疑問に突き当 たった訳です。

「Q&A」を拝見させていただきましたところ、 金属のεr'について、電子の散乱緩和時間より低周波数側では、 -∞に発散すると書かれていましたが、 それはある程度導電率の低い(カーボンや半導体)についても、 それに相当した周波数(例えば直流)では成り立つのでしょうか。
また、緩和時間より高周波数側では、それら導電体のε'は金属の場合のDrude式のよ うなものに従うのでしょうか。
上記の式では、複合体の界面分極周波数の前後で導電体(誘電体2)のεr2'は変化しな いとしているように思うので 導電体の誘電率としてはどの値を代入すべきなのか気になります。
(私の興味のある周波数領域はGHz前後なのですが。)
また金属で電子の散乱緩和時間というのは、その金属中の電子の移動度に関係するも のなのでしょうか。
そうなると、カーボンや半導体についての緩和時間は、導電体の導電率というより 荷電粒子の移動度に関係(比例?)すると考えてよいのでしょうか。

さらに上記で複合誘電体の τ については、構成誘電体の導電率σの式で表わされて いますが、 それよりも荷電粒子の移動度のほうが感覚的にはしっくりくるように思うのですが。 (周波数増大に荷電粒子の移動が追随できなくなるところで界面分極がなくなる、と いうイメージ)

いろいろ分からないことだらけなので、質問がまとまらず申し訳ありませんが、 もしよろしければご指導ください。よろしくお願い申し上げます。

なお、申し訳ありませんが、WebにUPする際には匿名でお願い致します。 ----------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 13 Mar 2004 01:32:55 +0900
A1: O様、佐藤勝昭です。

Q1) 「Q&A」を拝見させていただきましたところ、 金属のεr'について、電子の散乱緩和時間より低周波数側では、 -∞に発散すると書かれていましたが、 それはある程度導電率の低い(カーボンや半導体)についても、 それに相当した周波数(例えば直流)では成り立つのでしょうか。

A1) 自由キャリアがない半導体ではDrude則は成り立たず、直流では有限の εr'を持ちます。自由キャリア密度の高い半導体では、GHz帯ではDrudeに従う負 の誘電率になります。グラファイト結晶は、網の面内では金属的ですが、網と網 の面間は半導体です。カーボンは、グラファイトの微結晶の集合体なので、半導 体と金属の中間的な性質になり、GHz帯では負の大きな誘電率をとると思います。
Q2)また、緩和時間より高周波数側では、それら導電体のε'は金属の場合の Drude式 のようなものに従うのでしょうか。

A2) 自由キャリアのない半導体はDrude則には従いません。
金属の自由電子の緩和時間は10^-14[sec]のオーダーなので、緩和時間より高周 波数側というのは光の周波数になります。この周波数領域では、バンド間遷移に よるローレンツ型の誘電率スペクトルの重ね合わせで表されます。

Q3)上記の式では、複合体の界面分極周波数の前後で導電体(誘電体2)のεr2' は変化 しないとしているように思うので、導電体の誘電率としてはどの値を代入すべき なのか気になります。 (私の興味のある周波数領域はGHz前後なのですが。)

A3)半導体やカーボンのGHz領域の誘電率に、界面分極の影響もイオン分極の 影響もほとんど考えられないので、電子分極のみによります。金属や自由キャリ ア密度が大きい半導体では、誘電率は負の大きな値をとるはずです。 

Q4) また金属で電子の散乱緩和時間というのは、その金属中の電子の移動度 に関係す るものなのでしょうか。そうなると、カーボンや半導体についての緩和時間は、 導電体 の導電率というより荷電粒子の移動度に関係(比例?)すると考えてよいので しょうか。
A4) 金属の電子の散乱緩和時間をτとすると移動度μは、μ=eτ/mで表されま す。導電率σは、キャリア濃度Nとすると、σ=N(e^2)τ/mで表されます。

Q5) さらに上記で複合誘電体の τ については、構成誘電体の導電率σの式で 表わされ ていますが、それよりも荷電粒子の移動度のほうが感覚的にはしっくりくるよう に思うのですが。
(周波数増大に荷電粒子の移動が追随できなくなるところで界面分極がなくな る、というイメージ)

A5)上の式に使われたτは、この誘電体の時定数です。
 γ=1としてみましょう。面積S,厚さdとすると
 τ=ε0εr1'/σ1=(ε0εr1'S/d)(ρ1d/S)=CR
 となり、時定数であることがわかるでしょう。
----------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 15 Mar 2004 12:14:50 +0900 Q2: 佐藤先生

早速御回答いただきありがとうございました。
丁寧にご説明いただいたにもかかわらず まだ理解不足なのですが、解釈としては、

バンドギャップを持つ一般的な半導体(例えばSiC等)では Drudeの法則に従わない。
(バンドギャップがある=自由キャリアがない)
その場合GHz帯程度の周波数における誘電率は、ほぼ電子分極 (+イオン分極?)による値となる。

というようなところでよろしいのでしょうか。
(自由キャリア密度の「高い」「低い」のレベルが今一つピンとこないのですが。)

あと、Q4の散乱時間と緩和時間の関係でお伺いしたかったのは、 ある本にSiCのホール(電子)移動度は1000cm2/Vsという値があり、 また別の本にCuの自由電子の移動度は0.0044m2/Vsという値があったので
緩和時間が導電率ではなく移動度で決まるなら、 導電率の低いSiCの荷電粒子の緩和時間は 導電率の高い金属よりも大きくなる、と考えたのですが それは間違っていないのでしょうか。

度々雑多な質問で申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 12:39:30 +0900
A2: O様、佐藤勝昭です。

Q6)まだ理解不足なのですが、解釈としては、
「バンドギャップを持つ一般的な半導体(例えばSiC等)では Drudeの法則に従わない。(バンドギャップがある=自由キャリアがない)。その場合GHz 帯程度の周波数における誘電率は、ほぼ電子分極(+イオン分極?)による値となる。」 というようなところでよろしいのでしょうか。
(自由キャリア密度の「高い」「低い」のレベルが今一つピンとこないのですが。)

A6)不純物を非常に濃く(10^18[cm^-3]以上)添加した半導体では、フェルミ準位が伝導 帯または価電子帯の中に入り、金属的な状態になります。これを縮退半導体とよんでいま す。このような半導体では自由電子または自由ホールによるDrude tailが見られます。こ のような場合の、GHz帯での誘電率は、負の値をとります。

Q7)あと、Q4の散乱時間と緩和時間の関係でお伺いしたかったのは、 ある本にSiCのホール(電子)移動度は1000cm2/Vsという値があり、 また別の本にCuの自由電子の移動度は0.0044m2/Vsという値があったので 緩和時間が導電率ではなく移動度で決まるなら、導電率の低いSiCの荷電粒子の緩和時間 は導電率の高い金属よりも大きくなる、と考えたのですがそれは間違っていないのでしょ うか。

A7) 一般に導電率σはキャリア数Nと移動度μを用いて、σ=Neμと表されます。金属の高 い導電率は、キャリア数の多さ(10^22[cm^-3]のオーダー)によっています。μが小さいの はμ=eτ/m*と表したときの緩和時間τが小さいのではなく、有効質量m*がほぼ自由電子 の質量moに等しいからです。半導体の導電率は、高い移動度に支えられていますが、これ は、小さな有効質量m*が原因です。GaAsの電子のm*=0.066moです。
CuのτもGaAsのτも10^-14[s]のオーダーでそれほどちがいはありません。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 14:32:16 +0900
AA:佐藤先生

御回答ありがとうございました。
SiCもキャリアは電子なので、有効質量が違うとは考えていませんでした。
生半可な情報での思い込みは禁物ですね。
大変勉強になりました。
-----------------------------------------------------------------------------

338. 薄いファラデー回転子

Date: Mon, 15 Mar 2004 19:30:04 +0900
Q: 東京農工大学教授 佐藤勝昭先生

突然メールにて質問させて頂くご無礼をお許しください。
先生のホームページでこのような質問が可能であることを知りましてメールさせて いただきました。
N社中村と申します。(ホームページ掲載時には社名は 匿名でお願いします)磁性材料に関しまして全くの素人です。

光アイソレータの必須部材であるファラデー回転子について教えていただきたいと 思います。
極めて安易な発想なのですが、液晶ディスプレイで用いられている偏光フィルムと ファラデー回転子を組み合わせて可視光域で、片側は光を通し、逆方向は遮断する ようなフィルタを、携帯電話くらいのサイズで実現できないものかと考えています。

そこで、このファラデー回転子を

① 可視光全域で使用可能なものが、原理的に作製可能でしょうか?
② 大面積化は可能でしょうか?
③ 比較的うすいガラスもしくはフィルムベースで作製する事は可能でしょうか?
④ 永久磁石を用いずに、磁性膜単体で作製は可能でしょうか?

極めて的外れな質問かもしれませんが、素人ゆえのご無礼と理解頂き、御教授頂け れば幸いです。
少しでも、可能性があれば是非チャレンジしたいと考えています。
全く雲をつかむ様な話なのかもしれませんが、今回だけお付き合いください。

よろしくお願いいたします。
----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 12:09:17 +0900
A: 中村様、佐藤勝昭です。
 おたずねのファラデー回転子ですが、アイソレータとしては45°のファラデー回転が必 要です。可視光全領域でそのような大きなファラデー効果を示す透明な磁性体は現在のと ころ存在しません。従って、大面積もフィルムベースも不可能です。ガラスのファラデー 効果は小さいので、長さ12.5[cm]のクラウンガラスの棒に10^6[A/m]=1.25×10^4[Oe]の磁 界を印加して初めて45°回ります。磁性体単体の膜ではガーネットが赤外線ならファラデ ー回転子として使えますが、可視光では45°回転するだけの厚みにすると光が通りません。
 お役に立てず、申し訳ありません。
:このQ&Aに対する
コメントが寄せられています。
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 13:00:48 +0900
AA: 東京農工大学教授 佐藤先生
 早速のご回答どうもありがとうございました。
 やはり、このような光学部材は現在のところ夢物語であることが良く認識できま した。 もし、可能であればすでに色々なところで応用されていて当然だと、今になって 恥ずかしく思うばかりです。

 このような、全く的外れな質問にも、丁寧にご回答頂き、本当にありがとうござ いました。
 今後とも、よろしくお願いいたします。
--------------------------------------------------------------------------------

339. 導体の誘電損失

  Date: Mon, 15 Mar 2004 13:07:45 +0900
Q1: 初めてメール差し上げます。
K社中堀と申します。
以前より、先生のホームページを拝見させていただいており、今回質問させていただ きます。
(万が一webで公開される場合は「K社」でお願い申し上げます)

過去も金属の誘電率というものがありました。
私の質問は、非常に基礎的なもので恐縮なのですが、
「導体に誘電率・誘電正接というものが存在するのか」というものです。

弊社のなかでも誘電特性に関する仕事に携わっている人間がおります。
彼らからは、導体の誘電率・正接については明確な定義が無いようなことを聞いてい ます。よって、測定を行っても数値が出ることもあるが、それが正しい数値ではないという 理解です。

しかしながら、いろいろ調べますと、導体の誘電率をカタログに載せているメーカー なども有るようです。

とりとめも無い質問で申し訳ございません。
お忙しいとは思いますが、ご教示の程宜しくお願い申し上げます。
-------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 00:31:19 +0900
A1: 中堀様、佐藤勝昭です。
 導体にも誘電率は定義できます。直流では、負の大きな値をとりますが、光の 周波数では極めてリーズナブルな値をとります。通常の誘電率の測定装置で評価 できないだけのことです。
--------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 08:36:30 +0900
Q2:佐藤先生
早速の返答ありがとうございます。
更に質問させてください。

今回の質問の背景は我々が作っているセラミックスにあります。
現在、セラミックス部品の多くが半導体・液晶製造装置(エッチャー、CVD)の絶 縁 部材として使用されています。
それらの装置ではプラズマを発生させるために高周波、マイクロ波を用います。 (具体的には13.56MHz、60MHz、2.45GHzです)

中には耐食性が目的でセラミックスを使用しており、絶縁が不要な部分もあります。 こういった場合、導電性部材を用いる可能性があります。

誘電率、誘電正接があるということは、上記高周波などが透過された場合、その 部材は発熱すると言う理解をしています。

そういった状況があるかわかりませんが、もしあった場合、部材の誘電特性は測定 出来ないが、使用したら予想していなかった温度上昇などがありえるということなの でしょうか。

わかりにくい質問で申し訳ありません。
--------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 11:54:30 +0900
A2: 中堀様、佐藤勝昭です。
 導電性部材の導電率をσ、比誘電率の虚数部をε"としますと、σ>ωε"ε0であれば 損失(発熱)はσから生じ、ε"から生じる分は無視できます。
 金属の誘電損失を普通のブリッジで測定することは不可能に近いと思います。なぜなら、 導電率と区別できないからです。赤外線の周波数については、屈折率nと消光係数κの測 定データが出ているものもありますので、それからε"=2nκとして見積もることができま す。しかし、その値をマイクロ波に適用することはできません。Drudeの式の損失項など 何らかの外挿によって、マイクロ波でのε"を推定するしかないと存じます。
 たとえば、Feの1012Hzにおける比誘電率の虚数部ε"は10^5のオーダーです。この値が マイクロ波2×109Hzにおいても成り立つとすると、ωε"ε0=2π×2×109×105×8.85×10-12=1.11×104[S] 一方、鉄の室温での導電率は1.02×105[S]ですから、ε"による導電性の値は1桁小さいと思われます。
 従って、導電性部材の誘電正接は考えなくてよいでしょう。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 13:19:47 +0900
AA: 佐藤先生
度々のご指導、ありがとうございます。
頂戴したアドバイスを参考に、社内でも打ち合わせを行いたいと思います。
この度は本当に有難うございました。

またご質問させていただくことがあると思います。
その際はよろしくお願いします。
今後も先生のご活躍をお祈り申し上げます。
--------------------------------------------------------------------------

340. 薄いファラデー回転子Q&Aへのコメント

Date: Tue, 16 Mar 2004 18:19:08 +0900
東京農工大学教授 佐藤勝昭先生

東北大学のKと申します。
いつも、物性なんでもQ&Aで勉強しております。

本日は、質問ではないのですが、気になった点をメールにて申し上げます。

本日アップされた
薄いファラデー回転子についてですが、 ベルデ定数は波長に依存するため、可視光全域で使用する際には、 45度の回転角を与えるためにそれぞれの波長で厚みを変える必要があるとおもいます。
そのため、
① 可視光全域で使用可能なものが、原理的に作製可能でしょうか?
という問いについては原理的に不可能だと思いますが、いかがでしょうか??

少し気になったのでコメントをお送りいたしました。
----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 16 Mar 2004 20:50:28 +0900
K様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。ご指摘の通りです。実際には、スペクトルがあります ので、それを補償することを考えない限り、可視全域にわたり45°を保つのは不可能です。
-----------------------------------------------------------------------------------

341. フォトニック結晶のlight lineとlight cone

Date: Fri, 26 Mar 2004 16:57:36 +0900 (JST)
Q: 佐藤先生、はじめまして。
奈良先端科学技術大学院大学、M1のTと申します。(匿名希望)
いつもHPを拝見させて頂いております。

私も一つ質問させてください。
フォトニック結晶について勉強しているのですが、「light-line」「light-cone」というものを理解する ことが出来ません。
学振のHPに簡単な説明もあるのですが、どのようにして導かれたものなのか、物理的にどのような意味があるのか、よくわかりません。

フォトニック結晶については解説書などもほとんどなく、調べる手段さえ思いつかないほどです。

大変恐縮ですが、よろしければ、ご教示いただけないでしょうか?
---------------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 26 Mar 2004 20:24:30 +0900
A: T様、佐藤勝昭です。
イタリアのシンクロトロン施設ElettraのHPにフォトニック結晶についてのすばらしい解 説(Luca Businaro:Fabrication and Characterization of Photonic Band Gap Materials) を見つけました。

その中の2D photonic crystalsという章のPhotonic Crystal Slabsという節にLight Line とLight Coneの説明があります。
 2次元フォトニック結晶スラブというのは平面誘電体導波路を2次元パターンに従って 深くエッチングすることに得られるもので、xy面内では周期的で、垂直方向には階段関 数になっているような2次元パターンです。
このようなパターンでは、light line 問題が起き、ブロッホモードにカットオフが生じ ます。導波路の厚みがあまり薄くなければ、フォトニックバンド図(添付)におけるクラッ ド層のk-ωの分散関係のlight lineより下の部分に導波モード(本当のブロッホ定在波)が 存在し、ロスなしに導波します。このlight lineよりも上では、連続的な状態と共鳴状態 にある「準導波モード」になり、面の上下方向に光を回折するようなleakyな(漏れのあ る)モードになります。このとき、平面導波路のほうは、単一モードになったり多重モー ドになったりします。もし多重モードになると、平面導波路における高次のモードの開始 に対応するカットオフをもつブロッホ波が生じます。
 light lineより上の部分は、2次元のkに対して円錐形になるので、この部分のことを light coneと呼びます。この中の状態の光は、スラブの上下に放射するのです。



---------------------------------------------------------------------------------

342.バーベキューで日焼けするか

Date: Wed, 07 Apr 2004 18:19:07 +0900
Q: はじめまして, S社のKと申します。
佐藤研究室のHP「物性なんでもQ&A」を見て質問いたします。

先日、春の曇った日にバーべキューに行ってきました。
ところが、次の日会社で日焼けしたね、と言われました。
バーベキューの日は曇っていたので日焼けした覚えがなかったので もしかしてバーベキューの炭(黒体放射)で日焼けしたのかと疑い始めました。

バーベキューの炭で日焼けするのでしょうか?

黒体放射のスペクトルを見る限り バーベキュー程度の低い温度で紫外領域の光が出るとは思えないのですが、
ご意見をお伺いいたしたく。よろしくお願いします。
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 7 Apr 2004 21:15:52 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 私は、皮膚科の医師ではないので、的確なお答えができるか不安ですが、 基本的には赤外線で日焼けすることはないと思います。
あなたが日焼けされた 原因は、日頃屋外で過ごしていない方が、長時間屋外で過ごされので、 曇りの日でも一定量の紫外線がありますから、そのトータル照射量のために 日焼けされたものと存じます。
Family ResourceのHP によれば、
Limit sun time during the hours of 10am and 3pm when the sun's rays are strongest. Children can get a sunburn even on cloudy days
と書かれています。
またILRCのHP によれば、
Did you know that you may still a get sunburn on a cloudy or overcast day? Always be sure to apply sun screen if you will be spending a lot of time outdoors - even if it looks a little overcast.
と、曇りの日にも日焼けに注意しろと書かれています。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 08 Apr 2004 09:59:06 +0900
AA: 東京農工大学工学部物理システム工学科
佐藤勝昭先生
S社のKです。
よくよく考えますと、先生にお聞きするレベルの質問でなかったかなと 反省してましたが、丁寧にご返答していただきましてありがとうございました。 よく分かりました。

今度は、先生にお聞きするくらいのレベルの 材料の物性についての難しい疑問が生じましたら またご質問させていただきます。

ありがとうございました。
---------------------------------------------------------------------

343. フォトダイオードの低温特性

Date: Sun, 4 Apr 2004 16:38:47 +0900 (JST)
Q: はじめまして私、金沢工業大学3年の中村和夫と申します。
いつも楽しく先生のホームページを見させていただいております。
早速なのですが、先生に3つ質問があります。
1.低温(10K)における通常のダイオードIV特性
2.仮に片方の層のみに光を照射したときの光電流方程式、
3.フォトダイオードのI-V特性
****************************************************************************
先ず1の質問なのですが、自分の調べた範囲ではどの参考書にも記載されていなかったので 先生に質問してみたいと思いました。
通常のダイオードは低温において、ドーピングされた不純物が活性化されておらず p・n層共に価電子帯・伝導帯にキャリアがいないためIV特性を考えれば立ち上がり電圧が室温に比べて高くなることは予想できます。そこで質問です、もし仮に実験をするとするなら ば約何Kの温度までそのダイオードの特性を得ることができますか。 電圧を無限に印加できるのであれば少し立ち上がり電圧が高くなるが整流性のIV特性 は得られるというのが予想なのですが。
**************************************************************************
2.片方の層のみに光照射しと時(吸収係数を考慮して光進入長と照射したほうの膜厚を 同等した時)そのような状況の場合も通常の光電流の方程式を用いて導出してよろしいのでしょうか?
**************************************************************************
3 フォトダイオードのIV特性
よく暗状態と光照射時のIV特性は参考書に記載されております。
そこで質問があります。
光照射時のIV特性は通常の暗状態のIV特性から光電流分の電流値をマイナス方向にスライド させているように見えるのですが、本当にそれだけでよろしいのでしょうか? 個人的な考えだと光が当たっている分、仮にn層のみ照射したなら(2の質問) 伝導帯にいる電子は増える分、立ち上がり電圧は(開放電圧ではない)低くなるよう な気がするのですが、間違っているのであれば先生の回答を聞きたいです。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 06 Apr 2004 01:40:48 +0900
A: 中村君、佐藤勝昭です。
1.低温(10K)における通常のダイオードIV特性
中村君の予想通り、通常のpn接合ダイオードにおいて低温ではキャリアの活性 化が小さいので、n型側ではドナーが中性でフェルミ準位は伝導帯のすぐ下にあ り、p型側ではアクセプターが中性でフェルミ準位は価電子帯のすぐ上にありま す。従って、拡散電位差は、ほぼバンドギャップの大きさとなります。立ち上が り電圧が高くなるが整流性が得られるという予想は正しいです。ダイオードの式 にはexp(eV/kT)があるので、低温ほどIV特性における電流の立ち上がり方が急に なります。
**********************************************************************
2.片方の層のみに光照射した時の光電流の方程式
太陽電池も一種のフォトダイオードですが、この解析では、表面から距離xの位 置にある電子正孔対の生成レートg(x)がその点での光吸収に比例するとして解析 しています。詳細は、濱川・桑田共編「太陽エネルギー工学」(培風館)p.22の式 (2.9)に詳しく出ています。
***********************************************************************
3 フォトダイオードのIV特性
通常、簡単のために、光照射下でのI-V特性は、暗状態のI-V特性をIscだけシフ トした形で書かれますが、正しくはもっといろいろな効果が加わっています。立 ち上がりの電圧が減少する効果だけでなく、表面層付近での再結合など、複雑な さまざまな効果が加わっているので、等価回路で並列抵抗Rshおよび直列抵抗Rs が加わった形で表します。このあたりのことは、前掲書のp.26 の式(2.20)に示 されています。
-------------------------------------------------------------------------

344. 青色波長でのアイソレータ材料

Date: Thu, 8 Apr 2004 22:01:33 +0900
Q1: 国立大学法人東京農工大学
佐藤先生

T社のMと申します。(Web掲載の際は匿名でお願い致します。)
初めてメールさせて頂きます。
磁性体に関していろいろ調べておりましたら、佐藤先生のホームページに辿り着 き、興味深く拝見させて頂いておりました。
その折に、お忙しいであろう中、幅広い分野から数多くの質問の お答えになっている「物性なんでもQ&A」を見させて頂き、感動致しました。 私も先生のホームページの内容を拝見させて頂きまして、疑問が湧いて参りまし たので、失礼とは存じつつメールさせて頂きました。
私は少しだけアイソレータ材料に携わった事がある者です。(ただし専門家では 御座いません)先生のホームページの中で「佐藤教員の講義」→「平成15年度(2003年度)の講 義」→「
学生によるプレゼンテーション」とたどり、パワーポイントの資料を見させて頂きました所、ガーネット材料のファラデー回転角測定の項目を見つけました。イットリウム鉄ガーネット、ガドリニウム ビスマス 鉄 ガリウムガーネットのファラデー回転角を青色LEDを用いて測定されているという項目です。 学生が実際に膜を作製でき、LEDを使って測定まで行えるということを知 り、少し羨ましく思いました。
ところで質問なのですが、私の記憶ではYIG(特にビスマス鉄ガーネット)は完 全に黒色で可視光は透過しなかったと思います。
学生実験では青色LEDが用いられており、実際にファラデー回転角が測定で きておりますので、光が透過しているということだと思いますが、これは薄膜で測定しているからそうなるのでしょうか?
あるいは私がだいぶ前に見たガーネット材料だけが黒色だったのでしょうか? 専門家ではないため、的外れな質問になっているかもしれませんが、ご教授頂け れば幸いです。
また、アイソレータは光通信用に1~2ミクロン付近で多く用いられていると思 いますが、学生実験で使用しておりました青色LED等の可視光(特に短波長光)の レーザー用のアイソレーターの必要性は今後増してくるのでしょうか?
また、その際の候補材料として挙げられるものがございましたら、 その特性および想定される膜厚と共にご教授頂きたく存じます。
学生実験で使用されておりましたガーネット膜も候補になるのでしょうか?

お忙しい中、このような質問でお手間を取らせてしまうことが非常に心苦しいの ですが、 皆様同様に甘えさせていただきました。
何卒よろしくお願い致します。
今後ともよろしくお願い致します。
----------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 8 Apr 2004 23:04:09 +0900
A1: T社M様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。ご質問にお答えします。
ご指摘のとおりアイソレータとして45度偏光を回転させるためには磁性ガー ネットの厚みは100μm程度必要です。従って、光は透過しません。
 これに対し、私どもの場合、せいぜい1度くらいのファラデー回転なので、 薄くても十分です。実際、膜厚は1回の塗布焼結で40nm程度、学生実験にやら せている5回塗りで200nm程度です。従って青色LEDの光は十分透過します。
実際、学生のプレゼンのパワーポイントにありますように、薄い黄色の膜で す。
------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 8 Apr 2004 23:30:31 +0900
Q2: 東京農工大学
佐藤先生

T社Mです。
遅い時間にも関わらず、さっそくのご返信誠にありがとうございました。
不勉強のため、素人的に質問となり申し訳ございませんでした。
勉強になりました。

そうしますと、青色レーザー用のアイソレーターはいかがでしょうか?
今後必要となる可能性はございますでしょうか?
--------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 9 Apr 2004 09:01:07 +0900
A2: 佐藤勝昭です。
 少なくとも、現在のガーネットでは難しいと存じます。
そのためには、可視透明の磁性体(または磁性半導体)の開発が望まれるのです。
酸化物の磁性半導体が開発されれば、可能性はかなりあると存じます。TiO2系、ZnO系、 GaN系などに遷移元素を添加した磁性半導体の研究が進められているので、そのうち、可 能になるかもしれませんね。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 9 Apr 2004 10:11:17 +0900
AA: 東京農工大学
佐藤先生
T社Mです。お世話になります。
ご返信誠にありがとうございました。大変勉強になりました。
ガーネット以外の酸化物磁性体について、もう少し突き詰めて 調べてみたいと思います。
お忙しいところ、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
----------------------------------------------------------------------------

345. ポリエチレンの比誘電率

Date: Sun, 11 Apr 2004 14:30:13 +0900
Q1: 私はM社のOというものです。
同軸ケーブルの静電容量を計算しようとしてるんですが、 ポリエチレンの比誘電率が2.2~2.4と曖昧な為、 どの値で計算したらいいか分かりません。
ポリエチレンの比誘電率を教えてください。
また、その情報が掲載されてるサイトもあれば教えて下さい。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 11 Apr 2004 15:41:29 +0900
A1: O様、佐藤勝昭です。
 ポリエチレンの誘電率は、密度によって異なるようです。
http://www.sdplastics.com/polyeth.htmlによれば
low densityでは2.25-2.35, high densityでは2.3-2.35
と書かれています。また、ラミネートされた場合に厚くなるほど誘電率が下がる 傾向が知られています。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 11 Apr 2004 16:14:23 +0900
Q2:佐藤勝昭様
返信ありがとうございます。
密度が変化することで、誘電率はどう変化するのか、 誘電率と密度の関係を教えてください。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 12 Apr 2004 20:20:41 +0900
A2:O様、佐藤勝昭です。
 誘電率と密度の関係はたぶん比例するのではないかと存じますが、温度・周波数その他 の因子も大きいようです。また、強度を稼ぐために架橋を進めているものがありますが、 これなどは誘電率を下げている可能性があります。したがって、ケーブルの設計に際して は、実際にお使いになる材料についてメーカーに問い合わされるのがよいのではないかと 存じます。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 12 Apr 2004 20:36:10 +0900
A2-2:O様、佐藤勝昭です。
 有機電子材料が専門の本学有機材料化学科の臼井助教授に問い合わせています。何らか の情報をいただけると存じます。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 16 Apr 2004 14:22:21 +0900
A2-3:O様、佐藤勝昭です。
 本学有機材料化学科の臼井助教授から返事があり、ポリエチレンの誘電率は、物質定数 ではないので、対象とするもの毎に測定しなければならないというお返事を頂きました。  完全にアモルファスの材料なら、誘電率を特定できますが、ポリエチレンはアモルファ スと結晶とが混合した状態であり、混合の程度はものによって異なるので、誘電率もばら ついており、幅のある値を示すのだそうです。
------------------------------------------------------------------------------

346. アルミニウムの反射率

Date: Mon, 26 Apr 2004 02:12:25 +0900
Q: 突然のメールで失礼いたします。
広島大学先端研の修士2年の高瀬と申します。

先生の運営されているサイト、興味深く拝見させていただきました。 大変勉強になりました。
つきましては、お忙しい中申し訳ないのですが、 ひとつ基本的な質問にお答えいただければと存じます。

私は光の研究を行っておりまして、アルミ二ウムをミラーとして用いています。 アルミ二ウムの反射係数を調べていたとき、800nmより少し小さい波長で反射係 数が落ちていることが分かりました。
恐らくアルミ二ウムは、200nmあたりでバンド間の吸収がなくなり反射し始めま す。
また、800nmあたりでプラズマ振動による反射が起こり、反射係数が増えます。 しかし、800nm弱で反射が減少している理由が納得いきません。

もしかすると、物性を理解するうえでまったくエッセンシャルな問題ではないか もしれませんがお教えいただけるとうれしいです。

高瀬 功介
------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Apr 2004 11:41:00 +0900
A: 広島大学高瀬様、佐藤勝昭です。
 お尋ねのようにAlは800 nm付近に反射率のdipがあります。
誘電率ε"の虚数部のスペクトルには800nmにおいてピークが生じますが、これはこの付近 のエネルギー(1.55eV)でバンド間遷移が始まるためです。
 アルミの場合バンド間遷移がなければ、ドルーデの式ε'=1-ωp^2/(ω^2+γ^2)におけ るプラズマ共鳴周波数ωpは(文献にもよりますが)10eV付近にありますから、本来は反射 率は可視全域で100%近いはずです。しかし、バンド間遷移のため、1.5eVで虚数部ε"にピ ークが生じるとそれとKramers-Kronig関係にある実数部ε'には分散型の曲線が重畳し、 これが反射率にdipをもたらします。このように金属では本来のプラズマではなく、バン ド間遷移が重畳することによるハイブリッドプラズマが生じているのです。詳細はPines のElementary Excitation in Solidsをお読みになって下さい。
 言い換えれば、800nmより長波長の反射は自由電子のプラズマ振動による高い反射率を 示すが、それより短波長ではバンド間遷移を引きずったようなハイブリッドプラズマとな っているので反射率が低くなっていると解釈できます。
 おわかりになりましたでしょうか。
-----------------------------------------------------------------------------

347. 鉛の密度

Date: Mon, 26 Apr 2004 10:48:19 +0900
Q: 東京農工大学
佐藤 勝昭 教授殿
ホームページを拝見しました。

某燃料メーカーで遮蔽材料に関する研究もしている高橋という者です。 遮蔽材料としては一般に密度の高い物質を利用します。(但し、ガンマ 線遮蔽の場合)通常、どこの放射性同位元素等を扱うところでも、鉛 ブロックを使用していますが、よく調べると鉛の密度は最大のものに 比べて半分くらいです。同じ周期律のタンタルからチタン(質問者の思い違い:Tiは同じ周期にありませんし、密度4.51の大変軽い金属です!)までが大体 20g/cm3であるのに、鉛、ビスマス、アンチモン(質問者の思い違い:Sbは同じ周期にありません)と小さくなります。原子 核の質量数があまり変わらないと考えると金属での結晶構造の違い または格子間距離の違いが考えられます。また、アクチノイド元素の ように密度の変化する金属がありますが、低温(常温)が一番密度が 高くなっています。
物性物理が専門ではなかったので、どうして鉛の密度が高くならない のか?分かりません。ご質問させて頂きました。
お忙しいと思いますが、回答の方頂けないでしょうか?
以上、宜しくお願い致します。

(遮蔽材料としては、単価が安い、酸化しにくい等で鉛が使われている と理解しています。)
-------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Apr 2004 14:21:55 +0900
A: 高橋様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。ご質問の趣旨がよくわからないのですが、鉛の密度を何 らかの方法で高くできないかという意味でしょうか。それとも、純粋に物理的興味で、鉛 の密度を決めているのは何かということなのでしょうか。
 前者については物理的に不可能なので、ここでは後者の質問であると考えてお答えしま す。
 鉛を同じ4属元素の中で比べてみますと、C 3.513, Si 2.33, Ge 5.323, αSn 5.75で すからPb 11.35は抜群に密度が高い物質です。C→αSnはダイヤモンド構造をとるので、 隙間が多くガサガサですから密度が低くなります。これに対してPbは立方最密構造(fcc) をとるので、遙かに格子定数が小さくなり密度が高くなります。αSnの格子定数は6.49Å であるのに対し、Pbでは4.95Åしかありません。
 今度は、鉛を周期表で同じ段の元素と比べてみましょう。確かに5d遷移金属であるHfは 13.31, Ta 16.65, W 19.3, Re 21.02, Os 22.57, Ir 22.42, Pt 21.45, Au 19.32ですか ら、ご指摘の通りPbの倍近い大きな値を持っています。結晶構造はまちまちで、Hf hcp (a=3.19Å c=5.05Å), Ta bcc (a=3.3), W bcc (a=3.16), Re hcp(a=2.76 c=4.46), Os hcp (a=2.74 c=4.32), Ir fcc (a=3.84), Pt fcc (a=3.92), Au fcc (a=4.08)です。格子 定数は結晶構造が違うと定義が異なるので簡単には比較できませんが、立方晶換算でほぼ 3-4Å程度なので格子の体積はかなり小さく密度が高いのです。なぜ遷移元素は、原子番 号が変わっても格子定数があまり変化しないかというと、5d電子が結合に使われず主とし て6s電子のみが金属結合に寄与しているからです。5d殻が閉じてTl (6s^26p^1), Pb (6s^ 26p^2)、Bi (6s^26p^3)と行くに従い結合に使われる電子数が増え格子定数が大きくなる ので、密度が低下(Tl 11.85, Pb 11.35, Bi 9.74)するのでしょう。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Apr 2004 16:38:38 +0900
AA: 佐藤 勝昭 教授殿、回答ありがとうございました。
温度や圧力で密度が変わらないのかという疑問もありましたが、物理的な説明で分かりました。 もう少し整理した文章にするように努めます。
こんなに早い対応、助かりました。
------------------------------------------------------------------------

347bis. ペロブスカイト型強誘電体の圧電性

Date: Mon, 26 Apr 2004 17:00:48 +0900
Q1: 東京農工大学 佐藤勝昭先生

突然のメールで失礼いたします。 私、大阪府立大学修士2年のOと申します。 (匿名でお願いいたします)

物性なんでもQ&A大変参考にさせていただいています。
さて、私も1つ質問させていただきたいと思いメールさせていただきました。

現在、強誘電体薄膜の研究を行っています。
ペロブスカイト型の結晶構造を持つ強誘電体材料の 圧電性についてはAサイトイオンを重く、Bサイトイオンを 軽くすることにより高い圧電性を示すことが予想されています。 しかし、なぜこのように予想されるのか物理的な根拠はないようで、 フォノンの相関かと予想しかできません。
私は、圧電性に優れた材料の開発を目指していますが、 こういうところが曖昧ですので、就職活動で研究テーマを 述べるのにやや自信に欠いてしまいます。

そこで先生にこの傾向について何かの知見や予想されること、 このようなことを記述する論文等がありましたら ご教授願いますでしょうか?

お忙しいところ誠に申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
---------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 Apr 2004 20:07:08 +0900
A1: O様、佐藤勝昭です。
 定性的にお答えしますと、
ペロブスカイト型強誘電体たとえば、BaTiO3はBaが格子の骨格を作っていて、中に酸素の 8面体がはまっていて、その中心にTiが置かれ、Tiが変位することによって、変位型の強 誘電体となっています。圧電性はこの強誘電性に伴うものです。従って、Aサイトのイオ ンによる骨格はしっかりしていて、Bサイトのイオンが動きやすいことが重要だといえる でしょう。このためにはAサイトは重いイオン、Bサイトは軽いイオンというのが好都合 なのです。ただ圧電性を出すためには他にも条件があると思います。Aサイトイオンを重 く、Bサイトイオンを軽くというのはそのうちの1つの条件といえるでしょう。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 27 Apr 2004 10:29:15 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生
早速のお返事ありがとうございました。
Aサイトイオンを重く、Bサイトイオンを軽くというのが 1つの条件といえるのならば、他にどのような条件が 考えられますでしょうか。
度々申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 27 Apr 2004 19:33:34 +0900
A2: O様、佐藤勝昭です。
 強誘電性をもつものは必ず圧電性がありますが、逆は真ならず、強誘電性のない圧電体 もあります。たとえば、CdS, ZnO, αZnS, GaAsなどがそうです。このことは、圧電性が 必ずしも自発分極を必要としないことを意味します。このことを言いたかっただけです。
 ペロブスカイト型セラミクスにおける圧電性については、B.Jaffe:"Piezoelectric Ceramics"(Academic Press, 1971)に詳しく載っているそうですが、私自身は読んだこと はありません。
日本における圧電セラミクスの開発の歴史や秘話については、村田製作所 編「驚異のチタバリ」(丸善, 1990)という本に、多くの偉い先生方がわかりやすく執筆し ておられますので、一度読んでご覧になるとよいでしょう。ただしこれを見ても、圧電性 を高めるためのポリシーなどは出ていません。多くの文献が紹介されているので、調べる といろいろわかるかもしれませんが・・・。いずれにせよ、ペロブスカイト型強誘電体の 開発は、1970年以前に行われたことなので、必ずしもミクロな物理的描像をきちんと抑え てあるわけではないと思います。新しい視点で捉え直すというのも一興かと存じます。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 27 Apr 2004 19:41:28 +0900
佐藤勝昭先生

度々本当にありがとうございました。
もっと勉強して想像力も豊かにして立派な研究者に なれるように頑張ります。
------------------------------------------------------------------------------

348. 酸化スズの熱伝導率

Date: Wed, 28 Apr 2004 12:07:23 +0900
Q: 佐藤先生

グローリー工業 上山と申します。お世話になります。
物性なんでもQ&Aには色々役立つ情報があり、よく活用させて頂いております。

さて、当方では酸化スズを使ったセンサ開発を行っております。
その中で、酸化スズ薄膜の熱伝導シミュレーションをする必要があるのですが、 酸化スズの熱伝導率、密度、比熱等の情報がなかなか入手できず困っています。 ご存知であれば教えて頂きたく思います。

以上、宜しくお願い申し上げます。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 28 Apr 2004 22:00:20 +0900
A:上山様、佐藤勝昭です。
 SnO2の熱伝導率はP. Tuerkes, Ch. Pluntke, R. Helbig, J. Phys. C: Solid St. Phys. 13, 4941 (1980)に載っています。
Table 1: Thermal conductivity in the (001) direction of SnO2 bulk crystalline
T(K)k(W/m-K)
318.160083.4250
206.2700137.6900
161.7900174.0800
136.5800224.8300
120.3500239.6800
101.6100299.8100
84.8790391.3700
56.2040632.3000
46.9340879.9200
44.5110968.5300
37.16901347.8000
32.75201452.2000
27.95301704.0000
20.40001548.2000
16.54301333.5000

比重は~6.45(http://www.reade.com/Products/Oxides/tin_oxide.html)です。
比熱は手元に資料がありません。
------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 6 May 2004 09:24:53 +0900
AA:佐藤様

早速のご回答有難うございます。
大変助かりました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
上山。
-----------------------------------------------------------------------

349. 人間の血液での732nm励起

Date: Tue, 4 May 2004 02:30:30 +0900
Q: 佐藤勝昭様
「光と磁気」で、勉強させて頂いております。初めてメールいたしますA社の小澤伸次ともうします (社名は隠して下さい)。HPを拝見し、メールさせていただきました。
分光光度計での測定で、人間の血液に732nmで励起モードになるピークがありまし た。血液を構成する生体物質でこの波長で励起モードになる成分はございません。何 らかの金属イオンの励起モードかと推察していますが、どの金属イオンなのか色々と 調べましたが不明です。人間の血液中には微量金属元素として、 Cu,Co,V,Te,Se,Cr,Mo等含まれております。何か想定されうる金属イオンについて御 存知でしたら御教授願いたくお願い致します。

又、人間の血液に3Tの強磁場をかけて血清を分離すると分光光度計での測定で732nm で励起モードのピークが大きくなります。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 04 May 2004 12:19:05 +0900
A: 小澤様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。私は、生体物質関係についてはほとんど研究 したことがなく、そのギョーカイの言葉が通じません。あなたのお使いの「励起 モード」という意味がよくわからないのですが、何か蛍光の励起スペクトルを測 定して励起のピークを見つけられたのでしょうか。それとも単なる「吸収帯」の ことをそちらのギョーカイでは「励起モード」というのでしょうか。













 ヘモグロビンHbと2酸化ヘモグロビンHbO2の光吸収スペクトルは、いろんなと ころに出ているので専門外の私も知っています。
(例えば、
医用物理のHP
Hbのスペクトルの吸収の裾に760nm付近に小さなピークが見られます。

この吸収の起源はFe2+と周りのヘムを含む錯体における電荷移動遷移(a2u->t2g) にアサインされているようです。
小澤様の見出されたのは、732nmということですから、これとは異なるのです ね。760nmの吸収帯に重なって出ているのでしょうか?
 微量金属Co,V,Te,Se,Cr,Moのうち可視-近赤外域に吸収をもたらすのは、Co, V, Cr, Moの可能性があります。一般には吸収は弱く、ヘモグロビンのFe吸収に 隠されてしまうと存じます。
Co2+であれば、米国科学院ProceedingsのHPにありますように、600-800nmにわたるbroadな吸収ですから、732nmのスペクト ルがCoであるとは考えられません。  いずれにせよ、もう少し詳細なスペクトルと測定条件などをお教え頂かないと 判断のしようがありません。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 04 May 2004 13:19:47 +0900
AA: 佐藤 勝昭 教授殿、回答ありがとうございました。
こんなに早い対応にびっくりしています。
732nmのスペクトルがCoであるとは考えられないことに先生の説明で自信がつきまし た。
仕事で再生医療に関する生体物質の分離・精製を行っていますが、 この分野は未開拓の部分が多く、最新の機器での成果は過去に出来なかった事が 出来るようになっております(例えば、m-RNAの磁気による選択分離やレーザーによ るDNAの選択位置の固定等)。あらためて「光と磁気」の重要性を痛感いたしております。
又、本質問ですが先生のWebサイトの主旨と異なりますので、 ヘモグロビンを除去した血清のデータを整理した上で再度御質問させていただきたく 存じます。
回答誠にありがとうございました。
-----------------------------------------------------------------------

350. 石英ファイバーとシリカファイバーの違い

Date: Sat, 8 May 2004 18:43:13 +0900
Q1: HPをみました!
*石英ファイバーとシリカファイバーの違いや特性を教えていただきたいのです が・・・(例えば、レーザー光の伝わる比率・耐久性・構造・メリットデメリット等) できれば、教えていただきたいです。すいません。
J株式会社ファイバー営業部 堀内
------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 08 May 2004 21:58:49 +0900
A1:堀内様、佐藤勝昭です。
 石英ファイバーとシリカファイバーは同じものです。
石英ファイバーに使う石英はSiO2結晶ではなく溶融石英です。溶融石英(fused quartz)は石英ガラス(silica glass)とも言います。
あなたのギョーカイでは、石英とシリカを使い分けているのでしょうか。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 10 May 2004 18:19:30 +0900
Q2:佐藤先生
お返事ありがとうございます。
レーザーに対して接続するファイバーなのですが製品として一つに石英ファイバーの外側 はテフロン樹脂で覆われていまして、二つにシリカファイバーの外側はポリアミドコーテ ィングされています。先生が言われますように、石英ファイバーとシリカファイバーは同 じものであるのならばコーティングの区別によって性能の違いがあるのでしょうか?
堀内
-----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 11 May 2004 20:51:54 +0900
A2:堀内様、佐藤勝昭です。
 石英ファイバーがテフロンコート、シリカファイバーがポリアミドコートということで すが、同じ会社の製品なのでしょうか。会社が異なるので一方では石英とよび他方ではシ リカと呼んでいるのではないかと思いますが。会社が違えば、使っている材料の性質が微 妙に違うので、直接比較はできないと存じます。具体的に、どこのどの製品ということを お教え頂けないでしょうか。
 光ファイバーは、コアとクラッドという屈折率の違う石英ガラスからできていて、レー ザー光はコア内を(コアとクラッドの屈折率差を利用して)全反射しながら伝わるのです が、さらにクラッドの外側に保護のためのプラスチックのコーティングがしてあります。 ファイバー内の伝搬特性はコアとクラッドで決まっているので、外側のコーティングによ って変わることはありませんが、耐久性や耐衝撃性、曲げ耐性などにちがいがあるのでは ないでしょうか。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 12 May 2004 10:02:39 +0900
Q3:佐藤先生
お返事ありがとうございます。
お手数をお掛けしています。
具体的にどこの製品とは限定してないんですが、これから半導体レーザーの開発を行 う予定なのですがそこで試験的・実験的にファイバーの試験を行います。どの種類の ファイバーを使うべきかの判断に迷っています。一つは石英ファイバーのテフロン コート、二つはシリカファイバーのポリアミドコートのどちらが望ましいかになりま す。(先生が言われますように耐久性・曲げ耐性・透過率等の問題が浮上していま す。)
私の方でもっと詳しい情報がわかりましたら再度ご連絡いたします。
------------------------------------------------------------------------------

351. カーボンブラック中の金属の除去法

Date: Sun, 9 May 2004 18:07:24 +0900
Q: 佐藤先生
はじめまして、ホームページを拝見しまして、是非金属のことでご教授いただきたい内容がありましたので メールをさせていただきました。
S社のKと申します。匿名でお願いします。
当社はカーボンブラックを製造するメーカーです。
現在タイヤをはじめ各種のゴム製品の補強材として使用されております。
最近ゴム業界では、ゴムを加硫するのにマイクロウエーブを使用することが多くなってきました。このためカーボンブラック製造時に金属が入ることを避けなければなりません。といっても1ppmもないくらいですが。 金属が発熱することによりゴム製品中に空洞が出来るためです。
現在製造工程では、腐食に強いSUS304やSUS316を使用しています。しかし、カーボンブラック製造時に発生するガス等で実際には腐食が起こっています。この腐食により、カーボンブラック中に数ppmのSUS304やSUS316が認められました。
現在、金属を取除くために、1万5000ガウスのマグネットを取り付けております。このマグネットは、常磁性である、SUS304や316の粉末をくっつけることが出来ます。
前置きが長くなりましたが、ここで質問をさせてください。

① SUS304、316が腐食(SOxガス)した時は、なぜ強力な磁石で 取除くことができなかったのでしょうか。腐食物は、SUS304や 316とは構造が異なり、反磁性になるのでしょうか。 腐食物はどのような構造が考えられるのでしょうか。

② このようなマグネットにつかないものに、磁性を帯びさせ マグネットで除去する方法がありますでしょうか。
  マイクロウエーブをあてるようなことも効果がありますでしょうか。

すみませんがよろしくご教授ください。
--------------------------------------------------------------
Date: Sun, 09 May 2004 23:56:46 +0900
A:K様、佐藤勝昭です。
 ステンレスSUS304, SUS316が腐食したときにどのような物質になるかについて Webで調べたところ、
DOEのM. Ziomek-Morozの論文が引っかかってきました。
これによれば、hematite (alpha-Fe2O3) ができているようです。
 さて、この物質は反強磁性体ですが、Morin temperature(TM)=260K 以上では weak-ferromagnetismを示すということが知られています。(Morin, Phys. Rev. 93, 1195 (1954))Weak-ferroというのは反強磁性モーメントが傾いていて正味の 磁化が生じている磁性とされています。従って、もし、hematiteができているな ら強い磁界で除去できるはずです。ということは、あなたの場合hemaiteではないのでしょ う。何か磁化率の小さな常磁性化合物ができている可能性が高いと思います。も し、腐食でできた化合物がカーボン粒子に含まれているならカーボンの反磁性磁 化率のほうが金属の常磁性磁化率より大きくなり粒子全体としては反磁性になる と存じます。
 腐食でできた化合物が常磁性ならば、室温で磁化率が小さくても液体窒素温度 にすると磁化率が大きくなるので、磁気的に取り除けるのではないかと存じます。  いずれにせよ、ステンレス鋼の腐食によってできた化合物を分析して、何がで きているかを特定しないと除去の方法が見いだせないのではないでしょうか。
----------------------------------------------------------------------

352. 空気のヤング率

Date: Mon, 10 May 2004 15:20:33 +0900
Q:佐藤研究室殿
R社 Fです。
現在、FEM解析で、空気の収縮による材料変形と最大応力値について解析しています。
その際に使用する空気の物性値(ヤング率・ポアソン比・熱膨張係数)をご存知であ れば教えていただきたいのです。
イメージとしては、正方形のセラミックの箱を350℃で製造(密閉)し、 室温での箱の変形(収縮による)をイメージしています。
FEM解析では上記の物性値が必要とツールメーカーに聞いています。
熱膨張係数については、以前アップしてある 2003.11.10 空気の熱膨張係数 でいいでしょうか??
よろしくお願いします。
以上
-------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 10 May 2004 15:45:29 +0900
A: F様、佐藤勝昭です。
 ヤング率、ポワソン比は固体にのみ適用できる物理量で、理想気体においては定義でき ません。ポワソン比は、引っ張り方向に垂直方向の歪みを平行な歪みで割った量ですが、 そもそも流体においては、剪断力が働かないのですから、この量を考えること自体がナン センスです。密閉した容器に入れた場合の圧力と体積の関係は、ボイル・シャルルの法則 に従います。理科の基本に戻って考えて下さい。
膨張係数も結局はボイル・シャルルの法則が基本です)
------------------------------------------------------------------------

353. 鉄心材料

Date: Mon, 10 May 2004 15:23:01 +0900
Q: こんばんは。M大学で電子関係の勉強をしているTです。
突然なのですが、質問に答えて頂けたら幸いです。
鉄心材料として用いるのに適している物質を5つほど調べているのですが、なかなか 調べ切れません。
恐れ入りますが、それぞれの物質の説明をそえてお答え頂けないでしょうか。
よろしくお願いします。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 10 May 2004 15:49:22 +0900
A:T様、佐藤勝昭です。
 このコーナーでは宿題に直接お答えすることはできません。
図書館に行って、磁性体ハンドブック、磁気工学ハンドブックを探して、軟質磁性体の項 目を探しなさい。インターネットで安易に答を教えてもらうというのは、心得違いですよ。
-----------------------------------------------------------------------

354. 金属の近赤外反射特性

Date: Fri, 14 May 2004 14:25:31 +0800
Q1: 拝啓佐藤先生、
初めてメールさせていただきます。マレーシアのK株式会社のKと申します。(できれば匿名でよろ しくお願いします)
現在近赤外、特に780nm~2,500nmまでの範囲における金属微粒子の反射 率を検索しているときに先生のホームページに行き当たりました。
258項の「中赤外における金属の反射」を参考にさせていただいておりますが、当 方の関心あるレンジとずれているため、もし出来れば、上記のレンジにおける金属の 反射率を御教授いただければ幸いです。
また、先生が記述された金属以外の中でももし反射率が高いもの(出来れば80%以 上)がございましたらその点についても御指摘願えますでしょうか。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 14 May 2004 20:38:30 +0900
A1: 加藤様、佐藤勝昭です。
 金属の反射率は分光特性を持っています。780nm~2500nmの広い波長領域では、反射率 は波長によってかなり大きく変化します。(ほとんどはDrude則に従います)
Al, Ag, Au, Cu, Rhの220nm-10μmの反射率スペクトルは理科年表の物理/化学の光学的性 質の項に載っています。
もっと広い波長領域についての金属の屈折率nと消光係数κの値は、Palik "Handbook of Optical Constants of Solids I, IIに掲載されています。
I巻に掲載されている金属は、Al, Cu, Au, Ir, Mo, Ni, Os, Pt, Rh, Ag, Wです。
II巻に掲載されている金属は、Li, Na, K, Cr, Fe, Nb, Ta, Be, Co, Hg, Pd, Vです。
反射率RはR={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}の式で計算できます。
LB(Landolt Boernstein) のNew Series III 15 b Optical constants of pure metal には、もっと多くの金属の広い波長域の誘電率の実数部、虚数部、屈折率、消光係数、反 射率が収録されています。
手元の資料では、Al, Cu, Au, Ir, Mo, Ni, Os, Pt, Ag, Wは全て2500nmにて80%以上の反 射率を示しますが、780nmになるとAl86%, Cu98%, Au97%, Ir72%, Mo56%, Ni68%, Os38%, Pt71%, Rh82%, Ag99%, W49%となり、広い範囲で80%をクリアするのは少ないようです。
あとはご自分でお調べ下さい。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 15 May 2004 13:58:55 +0800
拝啓佐藤先生、
K社のKです。
早速の御回答いただき大変有難うございました。これだけ早く御回答いただけるとは うれしい限りです。また先生のお時間を割いていただきましたことにも深く感謝いた します。
さて、今回御教示いただきました点、資料を手に入れ研究していく所存です。マレー シア在住のためなかなか専門書の入手が難しいのが難点ですが。
まだまだ勉強不足を痛感する今日この頃です。また、お世話にならなければならない ことが生ずるかもしれませんが、お邪魔にならない限りお付き合いいただければ幸い です。
どうも有難うございました。
敬具
----------------------------------------------------------------------------

355. ガラスの赤外特性

Date: Fri, 14 May 2004 19:17:22 +0800
Q1: 拝啓佐藤先生、
先生のホームページを赤外光反射物質の検索をかけている際に見つけました、コー ティング剤の研究を始めたK社のKです。(できれば匿名にてお願いいたします。)
先生のホームページ非常に興味深く勉強させていただいています。あまり専門的な部 分についてはわからないところも多いのですが、守備範囲の広さに驚くばかりです。 ところで、コーティング剤の対象物としてさまざまな質問内容を拝見させていただい ている間、質問事項282、「金属微粒子の赤外光物性」で、
「Q: 温室が暖かくなるのは、ガラスが赤外線を吸収し、ガラスが熱くなるからです か?それとも、外からガラスを通過し内部に入った赤外線が、外に出られなくなり、 内部の空気、植物等の水分や有機物に吸収されるからでしょうか?
→ A: 後者が正しいのです。ガラスは可視光線は透過するが赤外線は通しません。ガ ラスを通った可視光線が植物に吸収され、熱(赤外光)に変換されますが、赤外線はガ ラスをから外に逃げないので温かいのです。」
という説明に少し追加事項を加えられればと思いました。
「一般に広く使われている、反射などの機能が付与されていない透明な板ガラス(フ ロート板ガラス)の場合、一般に太陽光の300nm~2,700nmをよく透過す るといわれています。」(旭硝子板ガラス建材総合カタログ、技術資料編2-1、板ガ ラスの特徴の光、熱と板ガラスの項参照)板ガラスの厚みにより、エネルギー透過率 は変化しますが、例えば、3mm厚の場合、300nm~2,700nmの範囲では 平均80%程の透過率が有ります。
それに対し、2,700nm以降になりますと、透過率は30%以下に下がる特性を 持っています。(分光データについては当方も分光器にて実際に測定してみましたが 公表されていたデータに近い数値が出ていました)
ですから、なぜ温室の室温があがるかについて言えば、日射の放射エネルギーは短波 長側にシフトしているためガラスはこの部分のエネルギーは透過させますが、一度、 温室内の植物、室内の壁や、床、家具などに吸収され再放射される際には長波長側に シフトしてしまい、ガラスがより透過させにくい2,700nm以上の長波長側に なっているため、温度が上昇すると思われます。(旭硝子板ガラス建材総合カタロ グ、技術資料編3-1、2日射と室内発熱の項参照)
---------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 14 May 2004 20:40:56 +0900
A1: 加藤様、佐藤勝昭です。
 おっしゃるとおり、2700nm以上の波長の赤外線を透過しないというのが正確でしょう。 ただ、赤外線でも2500nmより短い波長域のものは「熱」としては扱えないと思います。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 15 May 2004 13:52:33 +0800
拝啓佐藤先生、

K社のKです。早速のご回答いただき誠に有難うございます。
先生より御指摘いただきました点、当方勉強中の赤外遮蔽と省エネ、快適な居住空間 の関係において関連がありますので大変興味があります。
先生より御指摘いただきました、2,500nm以下の短波長ものは熱としては扱え ないということでした。

文献によって若干の違いがあるようですが、一般に太陽光の波長を280nm~2, 500nmとしています。(ISO9050:1990等)
建築やガラス業界では省エネを目指す場合、ガラスよりの熱流量を抑えるためにいか に可視光透過率を下げずに近赤外の780nm~2,500nmを遮蔽できるかが競 われています。それで、当方の理解ではこの近赤外の部分も「熱」として理解していた のですが、当方が引用しました旭硝子の資料でも、「室内で発生する放射は、発熱源 が比較的常温に近いために波長が長くなるというように、その波長域が異なるため分 けて考えるのが普通です。」との記述がありました。(旭硝子板ガラス建材総合カタ ログ、技術資料編3-1、2日射と室内発熱の項参照)
先生より御指摘受けましたいわゆる「熱」というのはこの長波長の事を指しておられる と理解してよろしいのでしょうか。

また、人体が感じる快適度という点では、780nm~1,200nm付近(これも 文献により若干の幅あり)を遮蔽することにより皮膚が感じる不快なジリジリ感が押 さえられるとも言われています。近赤外は物質の表面温度を上げる効果があると理解 しているのですが、それとあわせて考えると、当方の考え方は理屈にかなっているよ うに思われるのですが、この場合、体感する「刺激(ジリジリ感)」と「熱」とは必ずし も同一、あるいは一致しないことになります。この考え方は正しいのでしょうか。

舌足らずな説明で申し訳ありません。御意見お聞かせいただければ幸いです。
------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 15 May 2004 16:27:19 +0900
A2: 加藤様、佐藤勝昭です。
 黒体放射(昔は黒体輻射といいました。英語ではどちらもblack body radiation)のことをご存じと思いますが、ある温度の物体が放射している電磁波 の波長分布は、ある波長をピークとして幅の広い波長範囲に広がっています(プ ランクの放射法則)。ピーク波長は温度が低くなると長波長にシフトします (ウィーンの変位則)。室温付近の温度の物体からの黒体放射のピークは中赤外 にあります。ガラスの温室効果においては室温付近の物体からの長波長の電磁波 の放射を外に逃がさないという意味があります。最近、環境問題で温室効果が注 目される2酸化炭素CO2は、分子振動による強い吸収帯が波長10μm付近にある ため、宇宙への熱放射が抑えられるとされています。
 さて、加藤様のご質問は、波長の短い電磁波を物体が受けたときにどれくらい 温度が上がるかというご質問だと理解します。例えば、カーボンにいかなる波長 の電磁波をあてても吸収され熱に変わります。可視ー近赤外線のセンサとして 「真空熱電対」が使われますが、これはカーボン板で光を熱に変え、熱を熱電対 で電気に変換するセンサで、感度に分光特性をもたないので重宝です。  太陽光を分光してこのセンサーで受けたとしますと(分光器の能率が波長に依 存しないなら)500nmにピークをもち、長波長側に長く裾を引いた「分光放射強 度曲線」が得られます。添付図(国際電子技術委員会TC-82) 
 これを見ますと300nm-780nmの可視光積分強度と、780-2500nmの近赤外積分強 度は同程度です。ガラスを通して、350-2500nmの波長範囲の太陽光が入射して、 それが物質に吸収され、すべてが熱に変わるとすれば、可視光の光による物質の 温度上昇と近赤外の光による温度上昇は同程度となります。
 日射熱カットガラスとして市販されているのは、可視域の透明度を保ったま ま、コーティングによってこの近赤外光をカットすることで、日射による温度上 昇を防ぐものです。太陽光の熱をカットするのではなく太陽光のうち可視光以外 の成分をカットして物体が吸収して熱を発生して温度上昇する分を減らすという 意味です。もちろん可視光だって物体が吸収して熱になる(従って皮膚がじりじ りする)のですが、それまでカットすると窓ガラスの意味がありません。目の感 度の低い700-780nm, 380-400nmをカットし、さらにすこし透明度を落とせば、
70%くらいはカットできるでしょう。
----------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 17 May 2004 10:45:57 +0800
拝啓佐藤先生、

K社のKです。大変お世話になり有難うございます。
当方の質問にお付き合いいただき本当に有難うございます。当方まだまだ勉強不足です。 今回の御説明をいただくことにより、今後当方として、「電磁波」「熱」といった基本的 な定義の理解をきっちりすることの大切さや、それによって得られるより正確な研究 の方向付けが出来たような気がします。
先生にお教えいただいた資料については、同僚とも意見交換をして研究に活用させて いただきます。
今後も何かとお世話になることがあると存じますが、お力添えいただければ幸いです。

今回は誠に有難うございました。

敬具
-----------------------------------------------------------------------

356. 逆圧電効果と電気歪

Date: Sat, 15 May 2004 14:11:18 +0900
Q: はじめまして、M大学のTです。
今回研究テーマとして圧電体を取り上げることになりました。
しかし、逆圧電効果と電気歪との違いがわかりません。
歪と電場の関係が線形であるかそうでないかだけなのでしょうか?
違いを決定する要素が何かあるのでしょうか?
------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 15 May 2004 16:54:34 +0900
A1: M様、佐藤勝昭です。
逆圧電効果(reverse piezoelectric effect)と電歪(electrostriction)は同じ現 象です。
コーネル大学の圧電効果に関する講義ノート (http://www.mse.cornell.edu/courses/engri111/piezo.htm) をご覧下さい。和訳しておきますと、
 多くの高分子やセラミクスや水などの分子は永久分極をもっている。すなわち 分子の一部が正に荷電し、他の部分が負に荷電している。これらの物体に電界を 印加すると分極を持つ分子は配向し、分子または結晶に電気双極子を誘起する。  さらに、水晶やチタン酸バリウムのように自発分極をもつ物質では、物体が機 械的な応力を受けて変形するとき電界を発生する。このような物体を圧電体、現 象を圧電効果と呼ぶ。
 逆に、電界を印加することによって圧電体を変形することができる。この現象 は電歪(電気ひずみ)または逆圧電効果として知られている。

私の知る範囲では、一般に圧電定数を逆圧電効果の式にも使うことができます。 ただし、最近話題の巨大電気ひずみ効果は、この圧電定数を用いた線形の解析で は扱えなくなります。これは、応力と歪みの関係が線形から外れてくるためで す。森様のご質問は、このような場合のことではないでしょうか。
例えば、
Lehmann W, Skupin H, Tolksdorf C, Gebhard E, Zentel R, Kruger P, Losche M, Kremer F., "Giant lateral electrostriction in ferroelectric liquid-crystalline elastomers", Nature. 2001 Mar 22;410(6827):447-50.
---------------------------------------------------------------------

357. 縦波弾性率とヤング率

Date: Sun, 16 May 2004 01:20:34 +0900
佐藤様
はじめまして。HPのQ&Aコーナーを見てメールさせていただきました。
私は、医用超音波機器のメーカーに勤めており松本と申します。
入社して3年、まだまだ勉強が足りない未熟者です。

仕事内容は超音波探触子の開発が主で、現在レンズ材料などの検討をしていま す。
その際、カタログスペックから音速や音響インピーダンスといった物性値を算出 する必要があります。
一般に固体の音速は
√(弾性率/密度)といった具合ですが、
縦波の場合、縦波弾性率Mとヤング率Eの2通りが文献により登場し、
√(M/ρ)、√(E/ρ)などとなっています。
また、Mと体積弾性率K、剛性率GからEを求めるといったこともしており MとEの両者に違いがあることは分かっているのですが、
縦波弾性率とヤング率の違いがどこにあるのかをお教えいただけますでしょう か?
特に縦波弾性率の定義が良く分かりません。
どうぞよろしくお願いいたします。
WEBには匿名でお願いいたします
--------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 17 May 2004 23:31:31 +0900
A: M様、佐藤勝昭です。
 超音波工学が専門の中島春彦教授(東京農工大学物理システム工学科)にお伺 いしましたところ、下記のような返事を頂きました。
----------------------------------------------------
円柱を立てて上から押すと縦に縮みますが、その中身は真の体積収縮と脇へのは み出しに別けられます。実用に便利なように両方の効果を区別せずに変形のしに くさをあらわすのがヤング率です。饅頭は体積弾性率が強いが剛性率が液体並み に弱いのであんこがはみ出します。
円柱同士を2次元的に並べて上から押すと互いに押し合いへし合いになってはみ 出せません。また縦波音波のビームのように回折出来ずに進行方向にのみ粒子変 位が許される場合も同様で、このような場合ははみ出しによる逃げは許されず体 積変化と変形に起因する(正方形が菱形になる)剛性率が寄与することになりま す。これが縦波弾性率です。
いずれにしても等方体では基本量は体積弾性率Kと剛性率Gで、あとは変形の仕方 や波動のモードなどによりMやEを使います。
-------------------------------------------------------------------------------

358. 金属表面処理

Date: Tue, 18 May 2004 16:09:59 +0900
Q: 佐藤勝昭教授
お忙しいところすいません。困った時によくこのHPを見て参考にさせて頂いております。
私、N大工学部4年生のTといいます。
いま、カーボン(粉末)を用いた金属表面処理を考えています。私が調べた結果、金属表面内に異種元素を熱によって拡散浸透させる拡散浸透法、金属塩の水溶液や有機溶液中に担体粉末を含浸し、乾燥した後、空気中で焼成してさらに水素やCOにより還元することにより担体上に金属微粒子を得る方法の含浸法が考えられました。この両者の方法ともカーボンの金属(特にCuやAl)への表面処理には有効なのか? また有効であったとしたら、カーボンとアルミニウムの間にはどのような化学反応が起こったのかを知りたいと思っております。また、粉末を用いての表面処理において、処理後の表面層の厚さの制御方法をお聞きしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
学科、研究室名、名前とも匿名でお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。
Date: Wed, 19 May 2004 00:03:30 +0900
---------------------------------------------------------------------
T君、佐藤勝昭です。
 金属の表面処理の有効性に関するご質問ですが、あなたの指導教員がそのテー マを与えているので、私がとやかくいうのは越権行為になりますので、直接お答 えすることを控えさせて頂きます。ここでは、研究を進める上の指針を差し上げ ましょう。
 拡散浸透法、含浸焼結還元法が、それぞれどのような物理的なプロセスなのか を自分できちんと理解してください。
元素の拡散が起きるには、結晶の格子欠陥を介することが必要です。その元素が 母体と合金や化合物(カーバイド)を作るかどうかによっても、拡散の仕方は変 わります。Hansenの平衡状態図などを参考にする必要があるでしょう。
一方、化学的な処理方法ではどのような反応を考えているのでしょうか。また、 「有効」というのは、「何に対して有効なのか」を考えなければならないでしょう。 耐食性の向上に有効なのか、強度の向上に有効なのか、電気伝導性の向上に有効な のか・・それを明確にしなければなりません。それによって、処理法は異なって くるはずです。いずれにしても、金属材料学・無機化学・物性物理学などについて の幅広い知識とものの考え方が必要でしょう。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 19 May 2004 09:47:28 +0900
AA: 佐藤勝昭教授
為になるお言葉ありがとうございました。

精一杯頑張ります。
-----------------------------------------------------------------------

359. カーボンブラックと黒鉛の違い

Date: Tue, 18 May 2004 11:10:41 +0900
Q1: 佐藤勝昭 様
はじめまして。
M社のSと申します。匿名でお願いします。
時々、Q&Aを拝見しております。

さて、基本的なことだと思うのですが、カーボンブラックと黒鉛の違いは何でしょ うか?
プラスチックへの充填材を検討中ですが、物性でかなり差があるものがあります。 HPやフィラー総覧等をみても、基本的すぎるためか、説明がありません。
理系出身で(数学系)、恥ずかしい質問ですが、よろしくお願い申し上げます。
------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 18 May 2004 23:28:15 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 ご質問の件ですが、基本的には、黒鉛(グラファイト)は網目構造をもつ結晶 であるのに対しカーボンブラックは非晶質(アモルファス)です。アモルファス といっても原子が完全にランダムに配列しているのではなく、網目構造を折り曲 げてごちゃごちゃにしたようなもののようです。例えば、ウイスコンシン大学化 学科のHPの中の
カーボンに関する授業のテキストの3.8節に出ています。HPをご覧になって下さい。
----------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 19 May 2004 09:08:22 +0900
AA:佐藤勝昭 様、わかり易いご説明と、テキストのご紹介、誠にありがとうございます。
テキストについては、これから読みます。
ありがとうございました。
これからもお世話になることがあるかと思いますが、今後ともよろしくお願いします。
------------------------------------------------------------------------

360. キャリア濃度の評価

Date: Wed, 19 May 2004 18:13:12 +0900 (JST)
Q: はじめまして!
T大学のMと申します。
大学の講義のレポートが出て、「キャリア濃度の評価方法」と は?という出題が出ました。
文献やインターネットについて見ているのですが、なかなか探 せずにここに辿り着きました。
ここの質問に対する答えもわかりやすくとても勉強になりまし た。
簡潔と言っては失礼なのですが、もし気に止めて頂いたらお返 事ください。
------------------------------------------------------------------------
A: M君、佐藤勝昭です。
 大学の講義レポート(宿題)については直接詳しくお答えすることはできませ ん。カンニングと同じことです。私がキミの先生なら0点をつけます。
 キャリア濃度の評価は半導体工学の基本ですから、半導体関係のどの本にも出 ています。ヒントは「ホール効果」です。図書館に行って自分で勉強しなさい。
-------------------------------------------------------------------------

361. 光の伝搬

Date: Fri, 21 May 2004 20:54:36 +0900
Q: 今晩は。X教育大学3年理科専攻のIと言います。
質問は、横波である光が、縦波ではないのに、固体以外の水や空気中に伝達されるのは なぜかということです。物理をまったくやってなかったので、まだ調べている途中ですが、 どのような本やホームページを見たらいいかもわからないので、助言でもけっこうですの で、よろしくお願いします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 21 May 2004 23:51:16 +0900
I君、佐藤勝昭です。
A: X教育大学で理科専攻ということですが、物理を全くやってこなくて理科 の先生になれるのですか?そのような先生に理科を学んだ学生が大学に入ってく ることを考えると、物理系教員としては大変頭の痛い問題です。もし、あなた が、理科の先生になるには化学または生物だけを学んでおきさえすれば十分だと 考えているとしたら間違いです。化学における元素の周期表を理解するには、元 素における電子の働きを知ることが必要です。化学の結合を理解するには、量子 力学の知識が必要になります。生物において遺伝子のことをきちんと理解するに は生物物理の知識が必要です。生徒が好奇心をもち、不思議に思ったことを教師 に質問したときにきちんと答えてあげるためにも、ぜひ物理を基礎からきちんと 勉強して下さい。初等中等教育の先生自身の物理離れが、生徒の物理離れを起こ しています。科学技術立国をめざす我が国にとってゆゆしきことです。どうか、 教員になるつもりの学生さんが物理をきちんと学んで頂くようお願いします。
 さて、ご質問の件ですが、光は電磁波です。光(電磁波)の振動電界と振動磁 界をマクスウェルの方程式に従って扱うと、波動ベクトルと電界ベクトルとが直 交する(すなわち横波である)ことが導かれます。
 重要なことは、電磁波は媒体がなくても(真空中でも)伝搬します。電磁波は 音波のような媒体の変形を伴うものではないのです。真空中でも伝わるのは時間 と空間の変形を考えなければなりません。これは相対性理論によって説明できる のです。しかし、そこまであなたに要求するのは無理でしょうから、少なくとも 電磁気学だけはきちんと学んで下さい。
---------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 22 May 2004 20:04:35 +0900
AA: X教育大学のIです。質問についての答えと私の物理の取り組みの甘さに対す る助言、ありがとうございました。苦手ややっていないことを理由にせずに基礎から 物理を勉強していきたいと思います。今後何かあったら、また質問させて下さい。で は、失礼します。
---------------------------------------------------------------------

362. 樹脂封止での金属の強度

Date: Sun, 23 May 2004 01:13:02 +0900 Q: お世話になっております。先端技術普及セミナーで(このQ&Aでも)お世話になった T(株)Fです。
今回もすいませんが匿名でお願いします。
ちょっと教授の専門違いかもわかりませんが、他に頼れる人がおりません。専門書等 も探していますがあまり良いもの(具体的に書かれているもの)が見つかりません。
よろしくお願いします。
今回教えて頂きたいのは、金属と樹脂の接合についてです。
半導体の実装において(プレス⇒鍍金⇒ダイボンディング⇒ワイヤーボンディング⇒ 樹脂封止)、現在、樹脂封止での金属(素材or鍍金)と樹脂の接合強度向上を検討しております。

そこで
 ・金属と樹脂接合のメカニズム(水素結合、アンカー効果等)
 ・接合強度UPへの考え方・・・特に金属側で
等、意見をお聞かせ下さい。

ここでの金属は、主としてAu、Ag、Cu、Ni、Pdであり、また樹脂は液晶ポリマー、ポ リフタルアミド等です。
また、一部で熱硬化性樹脂を使う製品もあります。

以上、よろしくお願いします。
-------------------------------------------------
Date: Sun, 23 May 2004 17:07:32 +0900
A:F様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。
ご推察のとおり全く畑違いのご質問で戸惑っています。
樹脂封止の際の強度の問題を「接合強度」という言葉で表しておられますが、 「強度」にもいろんな定義があります。
------------------------------------------------------------------------
パーツのスチフネスは加重をかけたときの曲がりから評価されます。これは部品 の幾何学的配置と特定方向への材料の弾性率に依存する。
強度は静的力学テストにおける部品の破壊点または降伏点における応力で定義 されます。
衝撃強度は部品が降伏するまでに部品に吸収される最大エネルギーで定義さ れます。
疲労強度は繰り返される加重における降伏応力として定義されます。
寸法の安定性は樹脂封止された部品の形状と、経時後に封止除去したときの形 状の比較によって定義されます。
---------------------------------------------------------------------
モールディングの手法とメカニズム、その問題点の説明については ミシガン州立大学の知能システム研究室のHPの中の
Tutorial on Polymer Composite Moldingのサイト にやさしい説明があります。
モールドされたパーツの強度は、封止樹脂と埋め込まれるパーツとの結合の問題 でなく、樹脂が硬化する際の形状変化による応力にパーツがどれくらい耐えられ るかにもよります。熱膨張係数の違いにもよります。樹脂の延性と金属の延性の バランスにもよります。
もうすこし、問題点を整理されては如何でしょうか。
---------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 29 May 2004 23:07:47 +0900
AA: 佐藤教授様
専門違いなのに回答頂き有難うございます。
私は耐湿性向上について検討しています。
でも、何を質問して良いか理解できていないようなので、 もう少し勉強してから、また質問するようにします。
どうもすいませんでした。
----------------------------------------------------------------------

363. IH鍋と銀ペースト

Date: Wed, 26 May 2004 18:29:29 +0900
Q: はじめましてMのMです。
「物性なんでもQ&A」を拝見しましてメールさせて頂きました。
公開はできれば匿名でお願いします。

どう調べてもわからないもので、御専門外かもしれませんが よろしくお願いします。
銀の特性についてなのですが、IH調理器に陶器やガラスを使用可能に しようと底に銀ペーストが焼き付けて市販されています。一般的にIH調理器は鉄鍋 を基準に設計していると思いますが、銀はなぜ電気抵抗が少ないのに鉄鍋と同じよう に反応して消費電力もほとんど変わらないものなのでしょうか。
電気抵抗が少ない他の材質、アルミや銅はIH調理器には かからないはずなのに。最新のオールメタル方式は自動的に周波数を 変えてかかりにくい材質をかかるようにしているものは特別ですが。
あと有磁性も関係してくるのでしょうか。そうなるとステンレスの304は 有磁性はないですが、鉄鍋と同じように反応しますし・・・
いろいろ調べているうちに、なおさらわからなくなってきました。
内容はお分かりになりましたでしょうか、文章もどう表現いいかも悩みましたが。 どうかよろしくお願いいたします。
---------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 26 May 2004 20:36:01 +0900
A: M様、佐藤勝昭です。
 IHの原理は、交流の磁界を加えたときの渦電流を利用しています。
どのような金属でも十分な電力を加えることができれば発熱します。実際、金属工業では 高周波の誘導加熱で金属を融かして精製することが行われています。
 電磁調理器の場合、高周波電流は表皮効果により鍋の表面に集中して流れる為、鍋は大 きな抵抗を示し、その表面で発生するジュール熱により鍋自体が発熱します。周波数が高 いほどskin depthが短くなり抵抗は断面積に反比例するので、抵抗が高くなってジュール 熱が多く発生します。磁性体の鍋の場合、磁力線が突き抜けないでなべを伝って環流する ので磁力線の垂直成分が狭い範囲に限られ渦電流が発生する領域が狭く、かつ抵抗率も大 きいので発熱しやすいのです。
 銀ペーストは、銀をバインダーに溶かしたものを加熱して固めます。バインダーが残る ので銀そのものではなく抵抗率は5×10-5Ωcm程度もありますから、銀の抵抗率2×10-6 Ωcm(100℃)より1桁高く、鉄(鋼)の抵抗率2×10-5Ωcm(室温)よりも高いのです。
 SUS304は磁性がないので磁力線の垂直成分を表面付近に閉じこめる働きはありませんが、 この合金の電気抵抗率は7×10-5Ωcmと鉄(鋼)よりも大きいので、よく発熱するのでしょう。
-----------------------------------------------------------------
Date: Thu, 27 May 2004 08:32:54 +0900
AA: 佐藤勝昭教授さま
早速のご返事、たいへん感謝しております。ありがとうございました。
またお聞きすることがありましたらよろしくおねがいします。
--------------------------------------------------------------------

364. 非線形光学特性の評価法

Date: Thu, 3 Jun 2004 17:11:55 +0900
Q: 東京農工大学
佐藤 勝昭先生
前略 はじめまして、I大学応用化学科のDという者です。突然の質 問をお許し下さい。
 当研究室で、今年度から、非線形材料開発に関する研究として、ホストにゲストを 配向させ非線形光学特性を得ることを目指し研究をはじめました。その中で、大きな 単結晶の作製に取り組む前に、小さな結晶粉体の特性を調べたいと思っております。
これは、生成した結晶が、非線形光学特性をもっているかどうか分からないためで す。今のところ、スクリーニングをしている状態です。文献や参考図書を調べ、粉体 法により非線形光学特性を調べ特性があったとする旨の記述が多くありましたが、そ の具体的なノウハウ(装置や測定法)については、探す事が出来ず、時間だけが立っ てしまいました。その最中、先生のホームページにたどり着き、教授をお願いしたい と考え、メールを致しました。  質問が、非常に素人的でありますが、お教え頂けると、非常に嬉しいです。  今後とも、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。  (匿名匿所属でよろしくお願い致します。) 草々
--------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 3 Jun 2004 20:47:31 +0900
A: D様、佐藤勝昭です。(旅先なので資料がないので、取り急ぎお答えしてお きます。)
 有機化合物粉体の非線形光学特性の評価としては、3次の非線形感受率の測 定が行われているようです。モードロックしたフェムト秒またはピコ秒のパル ス幅をもつレーザ(通常チタンサファイアレーザが用いられる)を粉体にあて て,出てきた3次光をフィルタなどでとりだしフォトマルで受けて、フォトン カウンティング法で強度を測定します。あらかじめ非線形感受率がわかってい る材料と比較してその物質の非線形感受率の大きさを校正します。本学有機材 料化学科の渡辺先生がお詳しいので、大学に戻りましたら適当な参考書を渡辺 先生に聞いておきます。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 4 Jun 2004 08:55:22 +0900
Q2:東京農工大学
佐藤 勝昭先生
前略 I大学のDです。
 お忙しい中、質問にお答えいただき、ありがとうございました。
 参考書等が分かりましたら、先生のお時間のあるときに、教えていただけると、非 常に助かります。
 もうひとつだけ、質問をさせてください。この装置を、購入するとなると、おおよ そどの位の値段になるのでしょうか?当研究室では、分光措置としては、UV-vis、 FT-IR、ラマン分光装置しかありませんので、購入を考えています。
 この度は、誠に丁寧な対応をしていただいたことに感謝いたします。
 今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
                        草々
--------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 7 Jun 2004 10:58:42 +0900
A2: D様、佐藤勝昭です。
 有機材料化学科の渡辺教授に伺ったところ、非線形光学効果の評価について化学系初学 者向けのよい書物はなく、物理的な基本をきちんと学んで勉強する必要があるだろうとの ことでした。後ほど、参考書をメールしてくださるそうですので、少々お待ち下さい。
 装置ですが、私どもは、C社のモードロックレーザ を用いていますが、最近の価格は存じませんが2千5百万円のオーダーです。あと、光学 防振台、レンズ系、試料ホルダー、偏光子、1次光遮断ハイパスフィルタ、フォトマル、 フォトンカウンティング装置、制御用パソコン+インターフェースなど一式で500万円 程度でしょう。従って、3千万円程度で、一応の測定はできると存じます。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 7 Jun 2004 11:10:05 +0900
Q3:東京農工大学
佐藤 勝昭先生
 おはようございます、I大学のDです。
 早速の御回答、誠にありがとうございます。先生のご丁寧な説明に、大変感謝して おります。現在、私も基本を勉強しなければいけないと考え、勉強しているところで す。
 今後とも、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 8 Jun 2004 15:48:20 +0900
A3: D様、佐藤勝昭です。
 本学の渡辺先生から非線形光学の参考書について次のような回答がありましたので 転送します。
-------------------------------------------------------------
佐藤先生
昨日のお問い合わせに関する参考文献のリストをお送りします。
この解析法を完全に理解するためには、電磁気学と光学の知識が 必要となります。それゆえ、化学者にはかなり敷居が高いかも 知れません。

測定用の試料の調整が一番大変かもしれません。
測定には試料の面出しが必要なうえ、試料の 屈折率波長分散および試料の絶対膜厚(誤差0.1ミクロン以下)
が必要になります。

日本語の参考書
光エレクトロニクスの基礎第5版応用編、A. Yariv著、神谷武志訳、丸善

日本語の文献
新材料開発過程における非線形光学材料の評価 有機材料 結晶状態での評価
著者名:森田隆二, 近藤高志, 小笠原長篤, 伊藤良一 (東大 工), 梅垣真祐 (東京工 大)
資料名:応用物理 JST資料番号:F0252A ISSN:0369-8009 CODEN:OYBSA
巻号ページ(発行年月日):Vol.57, No.9, Page1431-1432 (1988.09)
抄録:有機物質は結晶成長が困難で,大きなバルク結晶が得られにくいために,薄膜状 態の単結晶における二次の光学的非線形性の評価について述べた。光第二高調波発生 に寄与する二次の非線形光学定数dの測定法として回転式メーカ・フリンジ法とウェッ ジ法を紹介し,dの評価のための屈折率分散について述べた

英語の文献
Warren N. Herman, L. Michael Hayden
Maker fringes revisited: second-harmonic generation from birefringent or absorbing materials
J. Opt. Soc. Am. B., 12(3), p.416-427(1995).

その他の参考書
なお、非線形光学材料に関してはデーターが少々古いですが、
非線形光学のための有機材料/日本化学会編、学会出版センター
季刊化学総説No.15
が入手しやすいと思います。
--------------------------------------------------------------------

365. 偏光板とヨウ素

Date: Thu, 3 Jun 2004 14:49:20 +0900 (JST)
Q: 佐 藤 勝 昭 様
 はじめまして。北海道立理科教育センター@前田昭彦といいます。
 教育研究施設で化学を担当しているものです。
 佐藤先生のHPを、興味深く拝見させていただきました。
 ひとつ教えていただきたいことがあるのですが、  偏光板をつくるとき(市販のものでも結構ですが),PVAを着色するのに、ヨウ素を用いるのはどのような理由からなのでしょうか?
 円二色性や呈色がよいとは書かれているのですが、ヨウ素のどのような(もしくはPVAとの相性)性質が適しているのかがわかりません。
 お答えいただくことができれば幸いです。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 3 Jun 2004 21:36:01 +0900
A: 前田様、佐藤勝昭です。
旅先なので資料が手元にないので、正確にお答えできるか心配ですが、知って いる範囲でお答えします。
PVAフィルム偏光子ですが、PVAを引っ張ってPVA分子を1方向に並 べ、その分子と分子のすき間にヨウ素系の色素結晶が埋め込まれています。光 の電界には、分子の長軸に平行な成分と垂直な成分がありますが、平行な成分 は長軸に沿った振動分極をもたらし、これが、ヨウ素系色素に直ちにトランス ファーされて、エネルギーが消費され、熱に変わります。一方、長軸に垂直な 電界はそれほど大きな分極を引き起こさず、ヨウ素にエネルギーが伝わりませ ん。これが、PVAフィルム偏光板の原理です。ヨウ素系色素の光吸収帯が可 視域全般にわたっているので、効率よく一方の電界を吸収して他方の電界を透 過するのです。ヨウ素はもともとアルコール類と相性がよいので分子の隙間を うまく埋めるという性質も利用していると思います。
--------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 4 Jun 2004 09:35:44 +0900 (JST)
AA: 東京農工大学
教授 佐藤勝昭 様
 おはようございます。北海道立理科教育センター@前田です。
 出張中にもかかわらず、早速回答していただきありがとうございました。理解し易く教えていただき、ヨウ素系色素の面白さを知りました。
 実は、当センターの「高校理科総合A」講座で、「プラスチックの化学」の単元で、スーパーの袋を縦方向と横方向に短冊を切り取り、それぞれの引っ張り強度や、伸ばした部分と伸ばさない部分を自作のPVA偏光板にはさんで、分子の方向を確認したりする実験を行う予定ですが、そのときに、ヨウ素を用いることが理解できなく困っておりました。
 お忙しいところ、丁寧な回答をいただき、感謝申し上げます。今後も、教えていただくことがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
-------------------------------------------------------------------

366. 縮退半導体の静電遮蔽効果

Date: Tue, 8 Jun 2004 17:06:16 +0900
Q: 佐藤勝昭様
ホームページを拝見しての質問です。
F社で半導体デバイスの開発・設計を行っているOといいます。
ちなみに小生、東京農工大のOBです。貴職の講義を受けたことも有ります。
半導体に高濃度の不純物をドープするとフェルミ準位が伝導体に入り込んで、 金属に近い性質を示すようになることは良く知られている話ですが、物性的に どこまで金属に近づくのでしょうか。
例えば金属でみられる静電シールド効果は縮退半導体でも見られるのでしょうか。 またn型、p型不純物で違いはあるのでしょうか。
お答え頂けたら幸いです。
(すみませんがWeb掲載の際は匿名でお願いします)
--------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 10 Jun 2004 02:07:47 +0900
A: O様、佐藤勝昭です。お久しぶりです。卒業後も忘れないで私にご質問いただきあ りがとうございます。
 縮退半導体がどの程度金属に近いかというご質問ですが、
まず金属と半導体の電気伝導率の違いを考えましょう。
 電気伝導率はσ=neμで与えられます。
金属では、キャリア密度nは5×10^22cm^-3のオーダーです。移動度μは10cm2/Vsのオー ダーです。σは10^5 S/cm程度となります。
一方、縮退半導体のキャリア密度はせいぜい10^20cm^-3ですが、移動度は10^3 cm2/Vsの 程度ですからσは10^4 S/cm程度となります。
シールド効果は電磁界がどの程度浸入できるかを表すskin depth δが尺度ですが、 δ=(2/ωσμo)^1/2 で表されます。μoは真空の透磁率です。σが小さければ、skin depth δが大きくなり、遮蔽効果は少ないと言うことになります。
 これに対し、光学的な効果については自由キャリアプラズマによる反射を考える場合 はキャリア密度だけが効いてきます。金属ではプラズマ角周波数ωpは可視光ー紫外領域 にありますが、半導体の場合は赤外になります。なぜなら、ωp^2=ne^2/mεoだからで す。従って、縮退半導体では自由キャリアによる金属光沢はありません。
また、自由キャリア吸収はωp^2に比例し、ω^2に反比例します。ITOは一種の縮退半導 体です。電気伝導率は金属並みですが、自由キャリア吸収は赤外領域にあるので可視の 透過性が保証されています。
------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 12 Jun 2004 12:58:33 +0900
AA: 佐藤勝昭様
解答ありがとうございました。
シールド性は金属・半導体に依らず基本的に 伝導率で決まるということですか。
移動度の低いa-SiやPoly-Siは更に厳しくなる ということですね。
光学的な違いはなるほどその通りですね。
--------------------------------------------------------------------------

367. ロッド形微粒子分散系のプラズモン共鳴

Date: Wed, 16 Jun 2004 11:39:45 +0900
Q: 佐藤勝昭様
 F社Nです。ホームページ拝見させていただいております。
先生の非常に広い範囲での知識の深さ、豊富さにいつも感激しております。

私どもは、基本的に記録材料を開発しております。(主に色変化の機能重視) 本題ですが、
材料の色に関して、吸収や反射率に関して金属粒子の粒子径が10nm程度の 粒子の場合(たとえばAu)500nm付近に表面プラズモンの吸収があり、赤色に 溶液の色は見えます。この粒子をロッドの形(アスペクト比)を変化させていくと 吸収が長波に移行していくことが以下に計算で示されております。
(2つの吸収極大が出現する)
S.Link,M.A.El-Sayed J.Phys Chem.B,103,8410(1999)
O.Wilson,G.J.Wilson,P.Mulvaney:Adv.Mater.,14,1000(2002)
そこで質問なのですが、
1)分極の縦モード及び横モード(2つの吸収極大)というのはどういうことでしょう か?  イメージがわきません。
 (粒子表面はつながっているので表面プラズモンに縦、横が生じる理由が良くわか りません。)
2)計算では出ていますが、実際このような波長シフトは起こるのでしょうか?
ご多忙のところ申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
匿名希望です。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 16 Jun 2004 14:21:17 +0900
A: N様、佐藤勝昭です。
 微粒子分散系の光学的性質の研究は古く、Maxell-Garnetの式にさかのぼります。金を 分散したガラスにおいて、金の誘電率スペクトルとそのサイズ、媒体の誘電率があれば、 実効的な誘電率スペクトルで、赤色の起源がわかります。(金の500nm付近の誘電率の変 化はプラズモンによりますが、そのような説明がある前からわかっている現象です。)
1) ご紹介のO.Wilson,G.J.Wilson,P.Mulvaney:Adv.Mater.,14,1000(2002)によれば、 Gansが1911年, 1915年に金属の楕円体の強い光学異方性を計算したとあります。ここでも 誘電率の異方性があれば、楕円体の対称軸方向の偏光と、直角方向の偏光に応答性のちが いが生じることを述べているようです。おそらくアスペクト比と誘電率の異方性の関係が 報告されているのではないかと存じます。このことは私は初めて知ったのですが、この誘 電率の異方性によってプラズモンのピークの分裂が説明出来るのではないかと存じます。
金属のプラズマ周波数をωpとすると、表面プラズマ周波数ωsp
ωspp/(1+εm)1/2
で与えられます。よく知られたようにバルクのプラズマ周波数ωpは ωp=(Nq2/mε0)1/2で与えられますが、実際に誘電率がゼロを横切る周波数ωp'(これ はハイブリッドプラズマと呼ばれる)は高い周波数における誘電率をεとして εp2ωp'2=0より、ωp'=(Nq2/mεε0)^1/2となり、εに関係します。
楕円体では長軸方向と短軸方向では誘電率εが異なるので、楕円の長軸方向の偏光に 対するハイブリッドプラズマと短軸方向のハイブリッドプラズマの周波数が異なってくる のでしょう。このことを縦の分極と横の分極と表現したのではないかと存じます。
2) O.Wilson,G.J.Wilson,P.Mulvaney:Adv.Mater.,14,1000(2002)によれば、実際に引 き延ばすことによって劇的な色の変化が見られたとありますから、実験的に確認されてい るのではないでしょうか。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 16 Jun 2004 16:18:36 +0900
AA: 佐藤勝昭様
 早速のご回答ありがとうございます。本当に早くて、明確で恐れ入ります。
先生の説明、理解できました。
今回は棒状粒子のことでしたが、さまざまな粒子形状に対しても応用していこうか と思います。(分裂が3つの素材とかです。)
また、よろしくお願い致します。
----------------------------------------------------------------------------

368. 高温での銀ペースト

Date: Mon, 14 Jun 2004 19:01:08 +0900
Q1: 以前に
IH鍋と銀ペーストの件で教えて頂いた者です。
また教えてほしい事があります。
公開はできれば匿名でお願いします。
土鍋に銀ペーストを800℃位の温度で焼き付けていますが 酸化するものですか。メーカーは酸化するのでガラスコーティング すると言っていますが。前出の質問で(酸化しない金属ってあるの)先生のお答えを 拝見しますと銀は酸化しにくい方になっていますが、この場合も あてはまりますか。
宜しくお願いします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 17 Jun 2004 22:22:47 +0900
A1:M様、佐藤勝昭です。
 お返事が遅くなりました。銀が酸化しにくいと言っても室温での話で、「酸化しない金属ってあるの?」にも書きましたように、高温では保証の限りではありません。
SPIのHP によれば、
High temperature limits:
Although the melting point of silver metal is reported to be 961.78degC (1763. 2degF), from a practical standpoint, one never comes close to this temperature in terms of use, because in addition to the well known oxidation and sulfiding that occurs when heated in air, what is not generally known is that even in vacuum, the metal starts to sublime on the order of 400degC (752degF) and by 500degC (932degF), the sublimation rate is sufficiently great that one can not go higher without running the risk of causing problems to their vacuum system (some would say this critical temperature is lower). If you have the need for this type of product at higher temperatures, we refer you to SPI Platinum Paint. Just remember that the price per gram of Pt is roughly 100 times that of Ag, so don't be too shocked at the high price of the equivalent kind of product in platinum!
と書かれています。要約すると、「そもそも融点が961.78℃なので、この近くの温度にすべきでない。空 気中で温度を上げると酸化や硫化が起きるだけでなく、真空でも400℃以上にすると昇華 も起きるから、温度は上げられないと書かれています。温度を上げるときは白金ペースト がよい」と書いてあります。英語のホームページも検索されると多くの情報が得られますよ。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 21 Jun 2004 19:55:41 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生

こんばんは、先回、高温での銀ペーストの質問をさせて頂きまして 御礼が遅くなって申し訳ありませんでした。(ルーターの調子が悪い為に)
それで、こちらの書き方がいけなかったのですが高温で焼付けした後の、 常温でのことをお聞きしたかったのです。すみませんでした。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 21 Jun 2004 20:07:10 +0900
A2: M様、佐藤勝昭です。
 高温で焼きつける際に銀粒子が酸化や昇華する可能性があり、常温にしたときに期待さ れる特性が出ないことがありますというのが、銀ペースト業界の説明のようです。
-------------------------------------------------------------------------

369. パソコンのモジュラージャックの材料


Date: Thu, 17 Jun 2004 18:28:11 +0900 (JST)
Q: 藤森 勝彦  豊橋技術科学大学 機械システム工学科 4年

パソコンの電話線挿入口の部分の端子の材料(銅?)と,それのさまざまな物性値を教えてください. 疲労破壊についてのレポートに使用したいので,お願いします. 
--------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 17 Jun 2004 22:03:57 +0900
A: 藤森君、佐藤勝昭です。
 レポートのための質問は原則としてお答えしていません。
電話線挿入口の部分の端子の材料の物性を調べることも課題を解くプロセスの1つだから です。ヒントだけお教えします。
 調べ方をお教えしましょう。
電話挿入口は「モジュラージャック」といいます。Google 検索を英語でかけなさい。検索BOXに
  telephone modular jack contact metal
といれて検索をかけてご覧なさい。たくさん出てきます。
その中で、たとえば、http://www.singatron.com/eng_pdf/3001.pdfには、
Contact: 0.35mm Thickness Phosphor Bronze(日本語では燐青銅)
と書かれています。
これは、バネ材として有名なものです。(もちろん、メッキが施してあります。)
あとは、機械材料のハンドブックや金属のハンドブックで燐青銅を調べてご覧なさい。
------------------------------------------------------------------------------

370. 光の屈折

Date: Sun, 20 Jun 2004 16:22:08 +0900
Q: 中学1年生なのですが、テスト前に勉強しようと思い、 やっていると、空気(入射角)から水中に光が進む場合、 水中に光が入ると、入射角より大きくなると習ったのですが、 今考えると、よくわかりません。
大きくって言われても、右のほうが大きいとか左の方が大きいとか わからないのですが、入射角より大きいってどういうことですか? 
        --------------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 20 Jun 2004 18:11:12 +0900
A: 山田君、佐藤勝昭です。
 添付の図(refraction.jpg)のように、入射角θ1は水の表面に垂直な直線(法 線)から測った角です。屈折角θ2も法線に対して測った角です。
空気の屈折率を1,水の屈折率をn=1.33とすると、スネルの法則sinθ1/sinθ2=n が成り立つので、sinθ2=sinθ1/nとなるので、θ2はθ1より小さくなります。  おそらく、あなたが習った先生は入射角として水面から測った角度を使われた のではないでしょうか。光の分野での定義とは違っています。X線回折の分野で は入射角としてそのような定義が使われますので、混同されたのではないでしょ うか。






------------------------------------------------------------------------------

371. アルミ板の反り

Date: Mon, 21 Jun 2004 20:32:56 +0900
Q:佐藤研究室殿
はじめてメールをさせて頂きます。
HPをいつも拝見しており、何か回答のきっかけになればと思いメール をさせて頂きます。

私は、O社の 和佐と申します。
今、アルミのソリと言う部分の対応に非常に困っています。
アルミの形状
板厚み 1.5㎜ × 18㎜ × 103㎜のサイズのアルミです。
基準のソリを、幅103㎜に対して両端が浮くソリは0.1㎜以下
中央が浮く逆ソリはNGと言う規格です。
順送金型で製作しています。

前回、客先が工場監査にきて、サンプルを確認したところ、両端が 浮いているソリ(正)であったが、持ち帰ってみたら平行であった。
その前に納入しているものは、逆ソリであったと言うことより、
プレス後は、正しいソリ
プレス時の応力で形状が変化する可能性はあるのでしょうか?
またその後、苛性処理をするのですが、そのような温度をかける 液槽にいれると更に変化する可能性があるのでしょうか?

質問がわかりにくいかも知れませんが、もし宜しければ教えて下さい。
----------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 10:33:50 +0900
A: 和佐様、佐藤勝昭です。
 軽金属のプレス加工については全くの専門外です。
 機械システム工学科で塑性加工を専門としておられる桑原教授にお伺いしましたところ、 下記のようなご返答を頂きましたので転送します。
========================================================================
 板のそりは板材内部に発生する曲げ応力で生じます.
 プレス成形の結果,なんらかの原因で曲げ応力が発生すれば,当然そりは発生するはずです.
 苛性処理の件ですが,温度上昇の程度にもよるかと思いますが,転位の運動を活性化させる
 程度の温度上昇があれば,応力も変化することが考えられ,その結果として,そりが変化する
 可能性はあると思います.
==========================================================================
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 15:05:49 +0900
AA: O社 和佐です。
この度は、本当にご丁寧にありがとうございました。
-------------------------------------------------------------------------------

372. エチレンプロピレンゴムの誘電率

Date: Tue, 22 Jun 2004 15:43:27 +0900
Q: 佐藤 勝昭様
豊橋技術科学大学 修士2年 田中 友之
初めまして、こんにちは。
私は、今「絶縁体に囲まれた微小空隙における部分放電開始電圧」の研究をしてます。
絶縁体の材料については、ホウケイ酸硝子150μmを用い、また、半導電テープ、ステンレスを 用いテーマに沿って実験を行ってます。硝子の誘電率は、本など調べれば載っているのですが 半導電テープ、ステンレスについては、誘電率が載ってなくわかりません。
半導電テープは、半導電性テープナンバー13というもので、エチレンプロピレンゴムをベースにしたものです。 値が小さすぎて測れないのではという意見も聞けば、すごく小さいけどあるとの意見もききました。
もしわかるものなら教えて頂きたく、メールさせて頂きました。
お忙しい中、本当に申し訳ありませんがよろしくお願いします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 16:48:39 +0900
A: 田中君、佐藤勝昭です。
エチレンプロピレンゴムですが、
ethylene propylene dielectricを入れてGoogle検索したところ、
http://www.goodfellow.com/csp/active/gfMaterialInfo.csp?text=*F&MATID=FP34& material=1
には、
Electrical Properties として
 Dielectric constant @1MHz 2.1
 Dielectric strength ( kV mm-1 ) 20 @ 3.2mm
 Dissipation factor @ 1MHz 0.0007
 Surface resistivity ( Ohm/sq ) 10^16
 Volume resistivity ( Ohmcm ) 10^18
http://www.rehau.de/wys/de/de_container.nsf/files/AV%200130E.pdf/$FILE/AV% 200130E.pdf
にEtylene-propylene-ter rubber
として、Dielectric number (DIN 53483): 3.0
と書かれています。
おそらく誘電率はものによって異なり、2-3の値であると思います。
ステンレスは金属ですから絶縁性はないでしょう。誘電率は-∞としてよいと思います。
---------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 18:12:20 +0900
AA: 佐藤 勝昭様
お忙しい中、本当にすいませんでした。
また、材料においてわからない事があれば質問を させてもらうことがあるかもしれませんが その時もよろしくお願いします。
本当にありがとうございました。
------------------------------------------------------------------------------

373. ITOの特性改善

Date: Tue, 22 Jun 2004 18:38:03 +0900
東京農工大
佐藤勝昭先生

Q1: はじめまして。
N社のIと申します。(匿名でお願いします)
遠い昔に応物学会主催の「結晶工学スクール」で バンド理論に関する講義を拝聴させていただいたことがあります。
とてもわかりやすい講義内容が印象的で、 半導体に関する理解をかなり深められた記憶があります。
今では先生のHPで様々な分野の知識を吸収させていただいております。
今回はITOについてご質問させていただきたいと思います。
ご多忙のことと思いますが、よろしくお願いいたします。

1.スパッタなどにおいて高い基板温度で成膜すると、 500℃程度の高温大気雰囲気に曝されても安定した 抵抗率を示すと聞いています。この成膜温度による 耐熱性の違いは、どこからくるものなのでしょうか?
結晶構造が立方晶から変化しているということなのでしょうか?

2.ITO(6%)の室温における抵抗率は1e-4 ohm-cm程度と 聞いておりますが、もっと抵抗率をさげることは可能でしょうか?
Snがドナーとして機能していることから、Si中のドナーと同様に Snの濃度を高くすれば、抵抗率は下がるのでしょうか?
ちなみに透明度は問いません。
また、Sn以外のドーパントを入れることにより 抵抗率が下がる、などの報告はありますでしょうか?

3.ITOに限らず、500℃程度で使用可能な良電体 材料を探しています。ふさわしい材料をご存知でしたら、 ご紹介いただけないでしょうか?

以上、よろしくお願い申し上げます。

----------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 19:26:25 +0900
A1:I様、佐藤勝昭です。
 私は、ITOを実際に作製した経験はなく、きちんとしたお答えができるかどうか心配 です。特に高温スパッタ時にどうなるかよくわかりません。
1.英文による検索で、
CERAC社のHP が引っかかって来ました。このHP によれば、添付のファイル(ito.gif)のように基板温度が高くなるに従って抵抗率が低下 し、かつキャリア濃度が上がるということです。図の説明は間違っていますね。実線がア ニール後の抵抗率でかなり低くできるようです。
HPの説明では、透明度を犠牲にすれば、抵抗が減少できる。これは酸化の程度のちがい によると書かれています。
詳細は、引用してある文献
Ray Swati, R. Banerjee, N. Basu, A. K. Batabyal, and A. K. Barua, J. Appl. Phys. 54(6), 3497 (1983).
をお読み下さい。
2.添加物によってキャリアを増加出来るかはよくわかりません。そもそも、ITO自身が Sn添加のIn2O3なのですから・・。
3.ZnOはMOCVDなどで作製すると大変よい特性を示すと言われています。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 19:32:06 +0900
Q2: 東京農工大
佐藤勝昭先生
さっそくのご回答、誠にありがとうございます。
「透明度を犠牲にすれば・・・」ということは、 なんらかの欠陥準位が形成されるということでしょうか。
さっそくご教示いただいた論文を読んでみたいと思います。
ご多忙中のところ、ご丁寧にご回答いただきまして ありがとうございました。
今後とも、よろしくお願いいたします。
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 19:46:04 +0900
A2: I様、佐藤勝昭です。
 十分ご理解だと思って、説明をしなかったのですが、
キャリア数が増加しますと、free carrier absorptionが増加して透明度が悪くなるので す。自由キャリア吸収については山田・佐藤他共著「機能材料のための量子工学」第4章 p.160をご覧下さい。
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 22 Jun 2004 19:53:58 +0900
AA: M東京農工大
佐藤勝昭先生

度重なるご指導を賜りまして、誠にありがとうございます。
教科書までご紹介いただき、大変恐縮しております。
しっかり勉強したいと思います。
お手数をおかけして申し訳ありませんでした。
今後ともよろしくお願いいたします。
--------------------------------------------------------------------------------

374. 間接遷移がわからない

Date: Thu, 24 Jun 2004 03:14:19 +0900
Q: 佐藤先生
 HP大変興味深く拝見しております。
 私,化学系卒のO(匿名でお願い致します)と申します。
卒業後,必要にせまられ,固体物理を勉強することになりましたが, 化学と物理の考え方や言葉の定義の違いに戸惑っております。例えば, 化学では光学遷移において,電子とエネルギー準位だけを考え,ホー ルという考えはありません。よって,励起子という考えも一部を除き 用いません。
 そういう背景のもと,間接遷移をどうしても理解できません。学生 時には,例えばSiは間接遷移だという(本質の理解のない)知識(う る覚え)はありましたが,いざ勉強しだすと不思議でなりません。ま た,フォノンサイドバンドというものもありますが,光学遷移にフォ ノンがカップリングすること(ポラリトン)も理解できません。とい うのも,化学(分子)では,断熱近似(ボルン-オッペンハイマー近似 )により,基底状態の電子は励起状態へ直接的に遷移すると習いました ので,基底状態と励起状態のエネルギー差を考えれば,どのエネルギー の光を吸収するかは歪みの座標Qで一義的に決まると考えてしまいます。  おそらく,この誤解には,
1)(分子で用いる)断熱ポテンシャルと(結晶で用いる)E-k曲線を 混同している。
2)化学(溶液化学)では,分子振動は扱うが,格子振動は扱わないた めの理解不足。
などが関わっているのかなと思いますが,いずれにせよ,現状では何が 理解できていないのかすらよく分かりません。
 間接遷移が上記の断熱近似に矛盾しないのかについても,御教授いた だけませんでしょうか?
 よろしくお願い致します。
-----------------------------------------------------------
Date: Thu, 24 Jun 2004 11:27:40 +0900
A: O様、佐藤勝昭です。
 今は物理と化学の境界がなくなっているので、互いのことばが通じ合うように努力する 必要がありますね。共通のことばは量子力学です。量子力学では電子は波で表されます。
 間接遷移がわからないということですが、あなたの理解に欠けているのは、価電子帯の 状態も、伝導帯の状態もどちらもその固有関数はブロッホの波動関数で表される波の状態 だと言うことです。ブロッホ関数というのはu(r)exp(-ikr)のように平面波が結晶格子の 周期をもつ関数u(r)で振幅変調された波動関数です。この波動関数は結晶全体に広がって いますから、化学における分子の励起のように局在した波動関数を扱っているわけではな いのです。
 exp(-ikr)で表現される平面波は、波数k=2π/λで表現される空間周波数を持ちますが、 この平面波のもつ運動量pは(h/2π)kという値を持ちます。
シリコンにおいては、価電子帯(化学の言葉で言うとHOMOに相当するのですが)の頂にあ る電子の波数は0です。これは波長λが∞であることを意味し、結晶全体全体に一様に存 在する状態なので、運動量pがゼロなのです。一方、伝導帯(LUMO)の底の電子状態はk~π /a (aは格子定数)という波数をもっているのでp=(h/2π)(π/a)=h/2aという大きさの運動 量を持ち、ある特定の方向に進行する波です。
 従って、電子が価電子帯から、伝導帯に遷移するためには、Δp=h/2aだけの運動量のち がいを何らかの方法で埋め合わせしなければなりません。この運動量を格子振動(フォノ ン)からもらうのが間接遷移なのです。
 化学のHOMO→LUMO遷移の考えでは、格子の周期関数を考えるような広がった波動関数を 扱いませんから、運動量保存を考える必要がないのです。(その代わり、局在遷移におい ては原子の軌道角運動量についての選択則が有効になります。一方、シリコンの遷移を考 えるときには、価電子帯も伝導帯も原子の軌道の角運動量はよい量子数ではなくなってい て、空間群の既約表現で表されるような選択則が有効になります。)
 断熱近似と矛盾しないかということですが、配位座標モデルが成立するのは、あくまで 励起が局所的に起きる場合であって、結晶全体に広がった価電子帯の電子状態から、やは り結晶全体に広がった伝導帯の電子状態への遷移に、その考えを適用するのはむずかしい かと存じます。それらの波動関数は局所的な格子の変位Qを平均的に感じるだけだからで す。
-------------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 24 Jun 2004 23:29:44 +0900
佐藤先生
 早速の御返信ありがとうございます。
 自分の理解に欠けている点が分かってまいりました。
化学と物理の定義や言葉の違いに戸惑いながらも,ひとつひとつ解消していくことは, 非常に爽快であります。歩みは遅くとも,疑問をひとつひとつ解消できたらと思いま す。
------------------------------------------------------------------------------

375. モース硬度をショアー硬度に換算出来るか

Date: Thu, 24 Jun 2004 11:05:31 +0900
Q: HPを拝見させていただいた会社員の山口と申します。モース硬度と ショアー硬度についてお聞きしたくメールをさせていただきました。

モース硬度をショアー硬度に置き換えるとしたら、1モース何ショアーになるので しょうか?ぜひ教えて下さい。もし置き換えられないとしたら、その理由も教えて下 さい。

お願いいたします。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 24 Jun 2004 11:53:43 +0900
山口様、佐藤勝昭です。
 Rockwell硬度とVickers硬度等の換算表は
http://www.corrosionsource.com/handbook/mat_hard.htm

http://www.admiralsteel.com/reference/hardness.html
に載っていますが、
Morse hardnessを他の硬度と比較した表は見られません。
Morse硬度は、基準となる鉱物とこすり合わせて傷が付くかどうかで決めた硬度なので、 数値自身に物理的意味がありません。これに対して、Shore硬度は落下物の跳ね返り、 Vickers硬度はダイヤモンドの「めりこみ」などの物理量として計測されるものです。 従って、単純な換算をすることができません。
> 基準になっている(1)滑石、(2)石膏,(3)方解石・・・(10)ダイヤモンド についてそれぞれShore硬度をしらべ、それを目安にするしかないでしょう。
硬さについては、寺沢正男 著 「硬さのお話」(日本規格協会) が参考になるのではないかと存じます。
-----------------------------------------------------------------------------

376. 超格子のサテライト回折線

Date: Fri, 25 Jun 2004 13:36:43 +0900
Q1: 東京農工大学佐藤先生

O大学M2のOと申します。(大学名と名前は匿名でお願いします)
HPを見てのご質問です。
一度ご質問させていただいたことがあるのですが、 今回も質問させていただきたくメールいたしました。

さて、超格子構造のX線回折(θ-2θ)測定では サテライトピークが見られるとのことですが、 これはなぜでしょうか?
その逆もいえるようでサテライトピークを示しているならば 超格子構造を有するということになるようです。
お手数をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 25 Jun 2004 14:54:02 +0900
A1:O君、佐藤勝昭です。
 超格子というのは、新しい結晶が、元の結晶の周期の2倍とか4倍とか整数倍の周期で 繰り返される原子配列を持つと言うことです。仮に2倍としましょう。もとの格子定数を aとすると、超格子の格子定数は2aです。
Braggの回折条件は、2d sinθ=nλです。
回折を考えますと、元の格子d=aではsinθ=nλ/2aが成り立つθ0で回折ピークがあるのに 対し、超格子ではsinθ1=nλ/4aに回折ピークが現れます。同じ回折次数nで見るとθ0よ りθ1は小さいので、普通現れない位置にピークがでるのです。これをサテライトピークと いうのです。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 28 Jun 2004 17:06:17 +0900
Q2:佐藤勝昭先生

早速のお返事ありがとうございました。
まだ少しお聞きしたいことがあるのですが、 2倍や4倍周期で繰り返されると回折が新たに生じることがピンときません。

また、超格子の論文を見ているとメインピークの両側にサテライトピークが 生じるようなのですが、これについてもわかりません。
サテライトピークの間隔が超格子の周期と関係があるようなのですが・・・。

お忙しいところ誠に恐縮ですがご教授願いますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 28 Jun 2004 18:09:55 +0900 A2:O君、佐藤勝昭です。  2倍や4倍周期で繰り返されると回折が新たに生じるのがわからないと言うことですが、 超格子になったとたんに、原子の配列の仕方が元の周期では繰り返されなくて、2倍の周 期で繰り返されるようになるのです。
 たとえば、ジンクブレンド構造のZnSの周期とカルコパイライト構造の周期を比べてみ ましょう。CuAlS2はZnS(a=5.41Å)を2つc軸方向に積み重ねた結晶構造(a=5.31Å、c=10. 42Å)ですが、ZnサイトのCuとAlが規則的に並ぶのでカルコパイライト構造のc軸方向の 原子配列の繰り返し周期は2倍になります。従って、2d sinθ=nλにおいて、ZnSよりか なり低角にc軸の周期に対応するピークがでます。その偶数倍の回折もでますが、それら は、元のジンクブレンドの位置になります。一方奇数倍はジンクブレンドの回折線の間に 来ることとなります。 原子の配列の周期が長周期になったのですから、小さな回折角の ピークがでて当たり前と思いますが、どこがわからないのでしょうか。

 人工超格子による回折については、藤森、新庄、山本、前川、松井編:新素材を拓く金 属人工格子(アグネ技術センター1995)の第3章(p.77)に詳しく記述されていますから、 図書館で調べて下さい。(この本は、主な大学の図書館にはあるはずです)隣り合う2つ のサテライトピークの位置2θn、2θn+1から、配向原子面の面間隔Λは
  1/Λ=2sinθn+1/λー2sinθn
から求めることができます。
-----------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 12:06:52 +0900
Q3:佐藤勝昭先生
丁寧にご指導いただき、自分でも勉強したのですが、 まだわからないことがあるのでご教授願いますでしょうか。
超格子で周期が変わることによってX線回折測定での回折位置が 新たに現れることはわかりました。
わからないことは、例えばペロブスカイトの超格子(BaTiO3/SrTiO3など)を 作製したときのX線回折パターンはメインピークをはさんで両側に 1st, 2nd, 3rd・・・といった風にサテライトピークが見られるのですが、 なぜそのピーク位置になるのかがわかりません。
例えば002面のメインピークが2θ=44.5°で-1stが42.2°、+1stが45.9°付近に あるとします。1stピークの位置は何に起因しているものなのでしょうか。

また、各ピーク位置から算出できる1/Λ=2sinθn+1/λー2sinθn/λはどのように 算出されるのでしょうか。よろしくお願いします。
-------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 15:20:00 +0900
A3:O様、佐藤勝昭です。
メインピークとサテライトピークの関係は、前に紹介した藤森、新庄、山本、前川、松井 編:新素材を拓く「金属人工格子」(アグネ技術センター1995)の第3章のp.86付近に出 ています。
人工格子を界面拡散を無視した「ステップモデル」で扱ったとき、人工格子からの散乱振 幅は
A(Q)=√IeΣ[Fa(Q)+Fb(Q)exp(iQDa)]exp(iQ kΛ)
Fa(Q),Fb(Q)は、a層、b層の層構造因子である。
散乱強度は
 I(Q)=|A(Q)|2=Ie|Fa(Q)+Fb(Q)exp(iQDa)|2・|Σk exp(iQ kΛ)|2
となる。kに関する和Σkを含む項は、ラウエ関数
 L(Q)=|Σk exp(iQ kΛ)|2=sin2(NQΛ/2)/sin2(QΛ/2)
となり、ラウエの回折条件QΛ=2mπを与える。また回折条件を満たすQに対してL(Q)=N^2 となる。
Fa(Q)+Fb(Q)exp(iQDa)は人工格子の構造因子F(Q)である。
回折ピーク強度は|F(Q)|2に比例し
|F(Q)|2=|Fa(Q)|2+|Fb(Q)|2+Fa(Q)Fb*(Q)exp(-iQDa)+Fa*(Q)Fb(Q)wxp(iQDa)
となる。
第1項、第2項はそれぞれa層、b層からの寄与であり、第3項、第4項はA,b層により散 乱されたX線の干渉項である。
 以上の式は、a層、b層の構造がいかなる場合にも成り立つ。つまり、アモルファスでも 単結晶でもよい。

ラウエ関数は、Q=2π/Λの間隔でピークが並ぶ櫛の波状の関数なので、回折ピーク強度の Q依存性は、L(Q)が、構造因子の絶対値の2乗|F(Q)|2で変調を受けた形になっている。

理想的な人工格子のX線回折パターンには、小角域から高角域までQ=2mπ/Λに回折ピーク だ現れる。X線強度は、小角付近とa,b層の配向原子面に対応したQ値(Qa=2π/da, Qb=2π/ db)の近傍が強い。

たとえば、a層がAuで4原子層、b層がNiで5原子層からなり、どちらの層も[111]配向し ており、これが10層積層されていたとすると、試料中の平均面間隔dav=(na・da+nb・db)/ (na+nb)に対応する回折ピークが、Q=2.885Å-1および1.443Å-1に現れる。これらは対 応する格子面の面指数を用いて、(111)0 および (222)0 基本反射と標記される。このピ ークはL(Q)のラウエ関数でいえば、9次と18次のピークに相当する。ラウエ関数で8次 のピークを(111)-1、10次のピークを(111)+1と記する。つまり、たくさんの超格子回折 のうち強く出るのは、層の平均面間隔からくるラウエピーク付近なので、それを基本反射、 その隣のピークを±1次の衛星反射というのである。
--------------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 15:42:31 +0900
A4:O様、佐藤勝昭です。
 各ピーク位置から算出できる1/Λ=2sinθn+1/λー2sinθn/λはどのように 算出されるのでしょうか。
にお答えしていませんでした。
 2Λ sinθn=nλ (1)
 2Λ sinθn+1=(n+1)λ (2)
(1)-(2)より、
2Λ(sinθn+1-sinθn)=λ
両辺をλΛで割ると、
2sinθn+1/λ-2sinθn/λ=1/Λ
となります。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 16:31:59 +0900
AA: 佐藤勝昭先生

大変丁寧なご説明ありがとうございました。
ようやく理解できそうです。
参考図書は以前から借りていましたが、 後ろの方を読んでいませんでした。
そのために先生にお手数をおかけしたことをお詫び致します。

後は教科書を参考に理解を深めたいと思います。
この度は本当にありがとうございました。
また機会がありましたらよろしくおねがいいたします。
-------------------------------------------------------------------------------

377. 金属材料の線膨張係数

Date: Thu, 24 Jun 2004 20:29:21 +0900
HPを見ました。御回答宜しくお願いします。
N社技術者K(匿名でねがいます)です。
質問:次の5金属材料の線膨張係数を教えてください。
   SUJ2,S50C,S55C,SCM445,SK5
宜しくお願いします。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 24 Jun 2004 20:50:23 +0900
K様、佐藤勝昭です。
 下記の金属材料は日新製鋼の鋼材で、
熱間圧延特殊鋼 のpdfに記載されています。
そのp22に焼き戻しの際の伸びの温度変化が出ていますが、それ以上のデータは持ち合わせていませんし、一般性がない特定の会社の製品の線膨張係数についてお答えするのは本HPのミッションからはずれますので、会社に直接尋ねて頂くしか仕方がないと思われます。
------------------------------------------------------------------------------

378. 偏光板の金属微粒子

Date: Fri, 25 Jun 2004 04:30:47 +0900

Q1:はじめまして。私はK大学工学部4回生のMと申します。

物性について色々調べているうちにここにたどり着きました。

今、自主ゼミで偏光フィルムを使用しているのですが、どういう原理なのかを 調べていて、この偏光フィルムは透明な物質の中に細長い金属の微粒子を埋め 込んだ構造になっていて「微粒子の長軸方向と短軸方向の自由電子の光への 応答が異なる」ために偏光特性が現れると知りました。
ところで、金属の微粒子の場合なぜ、方向によって電子の応答に異方性が出るの でしょうか?
(匿名を希望いたします)
--------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 25 Jun 2004 13:00:49 +0900
A1:M様、佐藤勝昭です。
「ロッド形微粒子分散系のプラズモン共鳴」と同趣旨の質問だと思います。
下記論文には、金属の回転楕円体が強い異方的光学特性を示すことが計算されているとい うことです。(Ann.Phys.=Annalen der Physikドイツ起源の雑誌です。現在は英語で出版 されていますが、昔の論文はドイツ語でしたから、たぶん下記論文もドイツ語ではないで しょうか。)
R. Gans, Ann. Phys. vol.37, p.881 (1911)
R. Gans, Ann. Phys. vol.47, p.270 (1915)
私の手元にはこの論文がないのですが、K大であれば古い文献も入手可能でしょうから、 上記論文をコピーしてFAXまたはpdfメール添付で送ってくれませんか。論文の骨子を解説 して差し上げます。
---------------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 30 Jun 2004 00:02:19 +0900
Q2:佐藤さま
物性なんでもQ&Aで質問したMです。
お返事が遅れてもうしわけありません。

ご紹介いただいた文献の方が手に入らなかったのですが、 自分で色々調べているうちに 金のコロイドがバルクの状態とは違う色になるという話を聞きました。
ソースは
http://www.grn.mmtr.or.jp/~noriko/GoldColloid/explanation.html
なのですが、ここの「超微粒子の場合」に書かれているように 基本的には反分極電場が長軸方向と短軸方向で異なるために 共鳴周波数が変わり、光の吸収に異方性がでるという認識で正しいのでしょうか?
-------------------------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 30 Jun 2004 19:19:22 +0900
A2:M様、佐藤勝昭です。
 金属分散偏光子の原理はワイヤグリッド偏光子の原理と同じではないかと思います。 ワイヤグリッド偏光子は、基板上に無数の金属細線を蒸着した構造をもっています。もし、 光の波長λが細線の間隔dよりも長ければ、光の電界ベクトルのうち、細線の長手方向に 平行な成分は吸収され、垂直な成分のみが吸収されずに透過するので、偏光するのです。 通常の蒸着技術では1μm間隔くらいが作りやすいので、ワイヤグリッド偏光子はλ>1μm の赤外線用の偏光子として市販されています。
 細長い金属微粒子をプラスチックフィルムに分散し引き延ばすと、金属微粒子の長軸方 向が延伸方向に配向した構造を作ることができます。その平均間隔dも数百ナノメートル 程度に分散できるでしょうから、可視域においてワイヤグリッド偏光子として働くのでし ょう。
-----------------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 01 Jul 2004 00:23:08 +0900
Q3:佐藤様
Mです。たびたびすみません。
ワイヤグリッド偏光子や、細長い金属ナノ粒子において、 金属の長手方向に平行な成分のみが吸収され、垂直成分が 吸収されないのはどういう原理なのでしょうか?

反電場係数が関係しているのでしょうか?
---------------------------------------------------------------------------------
Date: Thu, 1 Jul 2004 12:40:47 +0900
A3:M様、佐藤勝昭です。
 一般的に受け入れられている説明は、細線の長手方向には電子の集団運動(プラズマ振 動)がおき、振動電流が流れます。電子が格子振動や不純物と衝突すると減衰するし、衝 突しないとこの電流によって逆向きの電子分極が起きて、後方に反射も起きるが、細線に 垂直な短軸方向では、電子が動いてもすぐに壁に当たってしまうために集団運動が起きな いので、その方向の電磁波に影響を与えないというものです。従って、前に前田さんが指 摘したようにプラズマ共鳴周波数が縦と横とで非常に異なるためと解釈出来るかもしれま せん。
(これを誘電率で説明するとどのように解釈出来るのでしょうか。電磁気学の反電界の概 念は絶縁性の誘電体には適用出来ますが、少なくともDC(ω=0)においては導体に適用 出来ません。なぜならDCでは導体中に電界は存在しないのですから。光の周波数なら電 界は入りますから、電子分極による反電界の概念が適用出来るのでしょうが、Drudeの式 の議論の際に誘電体で使うEeff=Eext-NP/εo(Nは反電界係数)と記述される有効電界を 使って説明することは行われていません。D=εoE+PのEはEextを使いEeffは使っていませ ん。しかし、反電界係数Nは純粋に電荷が回転楕円体の面上に分布するときの形状による 反電界を計算しただけの式なので、上に述べたような、電子の集団運動が起きるかどうか は問うていません。従って、反電界係数の考えでは誘電率の異方性は説明出来ないと思い ます。)
参考までに、海外のサイトで、wire grid polarizerのprincipleをどう扱っているか調べ てみました。
AustineのHPによれば、
 細線の中の電子に働く力は、細線に平行(縦方向)に振動する力と細線に直角に横方向 に振動する力とに分解できる。縦方向の成分は細線内で電子を上下に移動させることがで き、このために、この方向の偏光成分の一部は反射され一部は細線内で熱に変わる。光の もう一つの偏光成分は電子に横方向の力を与えるが電子は細線内に閉じこめられているの で横方向に動くことができない。その結果横方向の成分はワイヤグリッドを通り抜け、偏 光子をでた光は(グリッドと垂直な)横方向に偏光している。これがワイヤグリッド偏光 子の原理である。
 と書かれています。
 一方、 Rochester Institute of TechnologyのマイクロエレクトロニクスのHP(pdf)では、
 ワイヤグリッド偏光子の原理は次の通りである。TE偏光の電界(注:電気工学では、垂 直方向に電界がある電磁波をTE=transverse electricと呼んでいます)は、細線に平行な 電流を誘起する。前方に進む光波の位相は入射TE波とは out of phase(位相が90°ずれている)ので強度が非常に減衰し、後方に進む波は反射光 として測られる。一方、TM偏光(垂直方向に磁界成分がある波transverse magnetic)の 電界は細線に垂直である。細線はこの方向に非常に狭いので、電子は非常にわずかな空間 しか動けない。従って、TM波のほとんどは影響を受けない。
 と書かれています。
------------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 04 Jul 2004 20:55:56 +0900
A4:前田様、佐藤勝昭です。
 前回のお答えで反電場係数では説明できないと書いたのですが、そののち、 Stephan Link and Mostafa A. El-Sayed: Spectral properties and relaxation dynamics of surface plasmon electronic oscillations in gold and silver nanodots and nanorods; J. Phys. Chem. B 103 (1999) 8410-8426.
を入手して読みました。この2.3節を引用しておきます。
「ナノ粒子の形状は表面プラズモンに非常に大きな影響を与える。金のナノロッ ドではプラズモン吸収が2つの吸収帯に分裂する。この2つの吸収帯は、粒子の 自由電子の長軸方向に平行および垂直の運動に対応する。横方向の振動の共鳴は 520nmに現れるが、これは球状粒子のプラズモン周波数に相当する。一方、縦方 向のモードは赤色移行して、その位置はナノロッドのアスペクト比に依存する。 (中略)ランダム配向したアスペクト比Rをもつナノロッドの集合の光吸収スペ クトルはMieの理論の拡張によってモデル化される。Gansによれば、体積VのN個 の粒子の消光係数κは双極子近似の範囲で次式で当てられる。
κ={(2πNVεm3/2)/3λ}Σ(1/Pj22/{(ε1+(1-Pjm/Pj)222} (5)
ここにPjの値は、ナノロッドの3つの軸に対する反電場係数(depolarization coefficient)で、A>B=Cとしている。
 PA={(1-e2)/e2}[(1/2e)ln((1+e)/(1-e))2] (6)
 PB=PC=(1-PA)/2                (7)
 e=√{1-(B/A)2}=√(1-1/R2)          (8)
・・・・・」
と書かれています。さらに
「長軸方向のプラズモンバンドの極大値λmaxは λmax=33.34εmR-46.31+472.31          (9)」
のようにλmaxはRに比例すると書かれています。
-----------------------------------------------------------------
R=4としますと、e=(√15)/4=0.968
PA=0.143, PB=PC=0.428
ε1とε2にDrudeの式の実数部と虚数部を入れます。これによってκは2つのピーク を示すことになります。従って、ピークのシフトに反電場係数が重要な働きをし ていることになります。
 なお、前回、述べたように長軸方向に比べ短軸方向ではキャリアの移動距離が 短いということも、重要です。これはDrudeの式εD(ω)=1-ωp2/(ω2+iγω)におい てダンピング定数γがサイズ依存性をもつことにより説明されます。
-------------------------------------------------------------------

379. FeとAlの沈降速度の計算

Date: Sat, 26 Jun 2004 18:44:19 +0900
Q: 粒子の落下速度を教えて下さい。
・粒子径は1μm、10、20、50、100、200、500
・材質はFe、Alの金属

※出来ればグラフが有れば分かり易いのですが・・・。
以上宜しくお願い致します。

匿名 M社の会社員Yより
---------------------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 26 Jun 2004 20:30:01 +0900
A: Y様、佐藤勝昭です。
新潟大学の化学工学科のHPに終末速度の簡単な求め方が出ていますから、ご利用されては如何でしょうか。粒径と密度を入れるだけで計算出来ます。 Feの密度は7860kg/m3, Alの密度は2690kg/m3を使って下さい。
---------------------------------------------------------------------------------------

380. 実験誤差の考察

Date: Sun, 27 Jun 2004 00:25:03 +0900
Q: はじめまして。
M高校普通科二年生のKと申します(匿名希望です。)
ネットで探し物しててたどり着きました。
探し物とはmol質量の実験の授業で「ブタンの分子量」というブタンガスの実験を 行っていまして、その考察が解らなくて書き込みをしてみました。
実は教授のサイトを見ていません(というか見れませんでした) なんでどういう方針でサイト運営をしているのか自分はぜんぜんしらないので、 多分こんな高校レベルの質問に応対してくれるのか、と少し不安です。
でも、別に無理にじゃないのでよかったら返事を下さい。

解らなくて詰まっているところは、
ブタンの分子量が(理想値)が58g
実験値との比較、誤差は実験値60,7gで誤差は約1.05%でした。
そこで理想値と実験値が上記の場合その原因について述べなくてはいけないのです が、
①分子量(実験値<理想値)のときの誤差の原因で考えられること
②分子量(実験値>理想値)     〃

の答え方に困っています・詳細を述べよって言われてて、でも参考書やネットで調べ ても解りません。
まだ沢山わからない問題があるのですが、まずはこの問題を聞いて教授が助けてくれ るのならもっと聞きたいんです!
実験の内容等は気体ボンベを使用しています。
------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 27 Jun 2004 01:28:34 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 サイトの運営方針は、http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/nandemoQ&A.html に出ています。
 ------------------------------------------------------------------
 高校の化学の実験の考察は自分で考えなければ意味がありません。
ヒントだけ上げましょう。
どんな実験でも誤差を伴います。誤差には系統誤差といって実験のシステムや実 験方法そのものに起因する誤差と、偶然誤差といって目盛りの読みとりのばらつ きやノイズによる誤差があります。偶然誤差は何回も実験をして平均すれば小さ くなりますが、系統誤差は実験方法によるので何回やっても同じ結果が出ます。  具体的な実験方法が記述されてないのであなたの実験結果の誤差約1%が、読 みとりのばらつきによる偶然誤差の範囲内かどうかわかりません。
 系統誤差としては、化学実験にありがちですが、測定対象が実験中に失われる 場合です。液体の場合は容器についてしまったり、気体の場合は逃がしてしまっ たりです。また、容器の体積を測定する(あるいは、推定する)のが正確でな かった場合などです。
 まずは、あなたの実験誤差が偶然誤差かどうかを推定して下さい。(目盛りの 読みとり誤差はどの程度かなど)偶然誤差なら何度も測定すれば、真の値に近づ きます。
 次に実験誤差が偶然誤差の範囲を超えている場合には、実験を振り返って、ど の部分で、実験値が理想値より大きくなるような誤差を生じる過程が入り込んだ かを振り返ってみましょう。
-----------------------------------------------------------------------

381. 回折限界の式の係数は0.5か0.82か

Date: Tue, 29 Jun 2004 00:05:04 +0900
Q: はじめまして。
私は東北大OBの会社員Kです。
公開講座
「次世代フォトニクスの新展開」の論文について質問させてください。
「3.光ディスクの高密度化」の項にて、d=0.5λ/NAと記載されています。
参考書(コンパクトディスク読本)によっては、d=0.82λ/NAと記載されています。
λ/NAに掛けてある係数(0.5or0.82)は、どのように求まるのでしょうか?
実際の系(DVD)では、どちらが近いのでしょうか?
お答え頂けると幸いです。
宜しくお願い致します。
(申し訳ありませんが、Web記載の際は匿名でお願い致します。)
-----------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 29 Jun 2004 13:43:46 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 ご質問有り難うございます。回折限界の決め方にはかなりの任意性があります。そのこ とは、Born-Wolfの有名な教科書Principles of Opticsでも8.6.2節で、
The limit down to which the eye can detect the two objects is, of course, to some extent a matter of practical experience. With a photographic plate contrast may be enhanced and so the limit of resolution decreased by suitable development.
(2つの物体を目で識別できる限界はある程度実際の経験による。写真乾板のコントラス トは強調出来るので解像限界は適当な現像の仕方によって減少させることができる)と書か れています。
 Born-Wolfの教科書では、先の文に続いて、次のように書かれています。
Nevertheless it is desirable to have some simple criterion which permits a rough comparison of the relative efficiency of different systems, and for this purpose Rayleigh's criterion may again be employed.
(そうはいっても、様々なシステムの効率を大まかに比較することのできる単純な判定基 準があると望ましい。このために(前に述べた)レイリーの判定基準が適用出来る。)
レイリーの基準というのは、7.6.3節によれば、次のように記述されてます。
Two components of equal intensity should be considered to be just resolved when the principal intensity maximum of one coincides with the first intensity minimum of the other; in the combined distribution, the ratio of the intensity at the mid-point to that at the maxima is then 8/π2=0.811.
(同じ光強度の2つの成分が丁度分解されるには、一方の0次回折光強度の最大の位置が、 他方の回折パターンの最初の極小の位置と一致する場合である。この場合、2つのスポッ トの中点での強度は最大値の81%になる)つまり、回折パターンの最初の極小値をとる位 置をスポットサイズとしているのです。
 8.6.3節では、顕微鏡の結像について述べており、
(a) インコヒーレント照明の場合
 として、|Y|~0.61λ0/n sinθ (32式)
(b) コヒーレント照明の場合(Abbeの式)
 として、|Y|=0.82λ0/n sinθ (55式)
を与えています。
 光ディスクはレーザ(コヒーレント光)を使うので0.82を使うのが正しいのです。
しかし、最初に述べたように、写真の現像の仕方[現在の場合電子的な信号処理]で解像出 来るスポットをかなり小さくできるということですので、実用的に0.6あるいは0.5が使わ れることが多いのです。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Sun, 11 Jul 2004 22:40:52 +0900 (JST)
AA: 早急にご回答頂き、ありがとうございました。
とても分かり易く、理解の助けとなりました。
現在、光ディスクについて勉強しており、 また質問させて頂く事もあるかと思いますが、 宜しくお願い致します。

ありがとうございました。
-------------------------------------------------------

382. 冷却したときのセラミクス箱の内部圧力

Date: Tue, 29 Jun 2004 18:45:08 +0900
Q:佐藤研究室 殿
R社 F と申します。
350℃で完全密封したセラミック(壁厚1mm)の箱を、-70℃に冷却した時の、内部圧 (気圧)を知りたく 質問させてもらいました。完全密封のため体積変化はありません。
内部の気体の体積は35.4mm3(10.5×7.5×0.45mmt)となっています。
よろしくお願いします。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 29 Jun 2004 19:18:56 +0900
A:F様、佐藤勝昭です。
ご質問の件ですが、単にBoyleの法則を当てはめるだけでよいのではないでしょうか。
圧力p、体積Vとしますと、pV=RTです。
350℃で密封するときの圧力は1気圧であるとします。すると
 V=R(350+273)・・・(1)
となります。
一方、-70℃における圧力pは, 体積変化がないと仮定しているので、同じVを使って
 pV=R(-70+273)・・・(2)
で与えられるので、両式から
 p=(-70+273)/(350+273)=203/623=0.326気圧
ということになります。
-----------------------------------------------------------------------------

383. 空気/金/ガラスの反射

Date: Fri, 02 Jul 2004 11:08:30 +0900
Q1: 佐藤教授殿
M社のOと申します。(匿名でお願いします)
貴HPを拝見して初めてメールいたします。

現在100nm程度の段差形状を持った材料(例えばガラス)に アルミか金の反射膜を蒸着しようと思っております。
対象が100nm程度の段差ですので、あまり厚く蒸着するわけに はいかず、薄く蒸着しようと考えております。

そこで質問ですが、波長850nmの光を垂直に入射させる場合、アルミや金の反射率を80%以上確保しようとすると 最低何nmの薄膜を蒸着すればよいでしょうか?(ガラスは鏡面) 御存知でしたら是非御教示いただきたく存じます。
30nm程度あれば良いでしょうか?

以上、宜しくお願いいたします。
---------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 2 Jul 2004 20:53:04 +0900
A1:O様、佐藤勝昭です。
 空気/Au/ガラスの構造における
反射率のスペクトルの計算法を添付します。
ExcelなのでAuの膜厚をnm単位で入力すると反射率がわかります。
(複素数の計算なのでExcelのオプションで分析ツールをonにして下さい。)
ガラスのkは波長350 nm以下で0ではありませんが、データがないので0としてあります。
これでみると、λ=700nmにおいて、膜厚1000nm(十分厚い)場合と比較して100nmではほと んどちがいがなくR=96%ですが、70nmでは95%、50nmでは92%、30nmでは79%です。
従って、80%でよければ、30nmでよいことになります。
 Alもほぼ同様と考えてよいでしょう。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 05 Jul 2004 09:47:59 +0900
Q2:佐藤教授殿
M社のOです。
ご親切な御回答有難うございました。 もう一点だけ教えてください。
この金属反射率に関る光学パラメータの データベースはどこ(どの文献)で知ることが出来ますか。
適切なものがございましたら御教示いただきたくぞんじます。
以上、よろしくお願いします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 10:34:42 +0900
A2:O様、佐藤勝昭です。
 なんでもQ&Aの質問回答に何度(No.5, No.23, No.38, No.49, No.165, No.176, No.178, No.204, No.269, No. 295, No.335, No.354)も出てきていますように、金属など固体の 反射率のデータは、Palik:Handbook of Optical Constants of Solids (Academic) I, II にあります。
金属だけですが、Landolt-Boernstein のNew Series III-15bにもあります。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 05 Jul 2004 11:09:24 +0900
AA: 佐藤教授殿
M社のOです。
御回答有難うございました。
以前に同様の質問があったのは見落としておりました。
参考にさせていただきます。
有難うございました。
-----------------------------------------------------------------------------

384MOSFETのフラットバンド電圧の評価法

Date: Wed, 30 Jun 2004 16:47:08 +0900
Q: 法政大学のTです。
HPを見て質問させていただきました。
現在ゼミでMOSFETについて研究しているんですが、 フラットバンド電圧の測定方法は具体的にどのようなものがありますか?
金属と半導体の仕事関数差等の式の計算からではなく、 実用的な測定方法について知りたいです。
よろしくお願いします。
Webにアップする場合に匿名を希望します。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 11:36:57 +0900
A: T君、佐藤勝昭です。
 返事が遅くなりました。電気電子工学専攻の須田良幸教授がご専門ですので、お伺いし ましたとこと、下記のお返事を頂きました。
 「基本的にはC-V特性を測れば、C-Vg(ゲート電圧)曲線のシフト量から、 フラットバンド電圧を評価できます。例えば、Vg=0Vで半導体のバンドがフラッ トな理想的なnチャネルMOSの場合、Vgの電圧を+側に増加していくと空乏層が 発生し、Cが減少始めます。Vg=0Vで既にバンドが曲がっている場合は、フラッ トバンドを与えるVg近傍からCが減少始めます。即ち、バンドが曲がっていた分、 このC-Vg曲線がシフトしますので、このシフト量からフラットバンド電圧を評価 できます。」
---------------------------------------
なお、Sze: Semiconductor Devices(和訳 ジー:半導体デバイス(南日、川辺、長谷川 訳))の第5章 5.4節(和訳p.206)に詳しく載っていますのでご参照下さい。
----------------------------------------------------------------------------

385. シリコンの曲げ応力

Date: Fri, 2 Jul 2004 13:03:27 +0900
Q: 佐藤研究室 殿
R社 F と申します。
先日はありごとうございました。
半導体のチップに使用されている、シリコン材(Si、ケイ素)ですが、 これの、曲げ応力(破壊応力)について教えてもらえないでしょうか?
よろしくお願いします。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 3 Jul 2004 00:57:30 +0900
A: F様、佐藤勝昭です。
 シリコンの力学的性質はMEMS(マイクロマシン)関係の論文で調べることができ ます。Bending stress(曲げ応力)に関しては、
JOURNAL OF MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS, VOL. 12, NO. 6, DECEMBER 2003 779 を勉強して下さい。http://ultra.bu.edu/papers/srikarJMEMS.pdfをクリックしてダウ ンロードして下さい。
Siの降伏応力については、
J. Vac. Sci. Technol. B 19(5O), 1870, (2001)
Notch formation by stress enhanced spontaneous etching of polysilicon
に45MPaとでています。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 5 Jul 2004 10:07:28 +0900
AA: 佐藤勝昭殿
対応ありがとうございます。
上記の論文を参考させていただき勉強します。
------------------------------------------------------------------------------

386. トムスン四面体

Date: Fri, 02 Jul 2004 07:40:27 +0000
Q: K大学四年物資科学工学科Oです。
匿名でお願いします。
すべり面と、トムソンの四面体について教えてください。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Fri, 2 Jul 2004 21:45:15 +0900
A:O君、佐藤勝昭です。
 私は、Thomson tetrahedronという用語を知りませんでした。
英文のWeb検索の結果、次のことがわかりました。
 CuをRu(0001)の上にデポしたときや、GaAsの(111)面とエピ層の格子不整合があるとピ ラミッド状の欠陥ができますが、そのような正四面体(tetrahedron)状にできる積層欠陥 (stacking fault)のことをいうようです。結晶成長ハンドブックなどを見たのですが、四 面体状の積層欠陥のことは出ているのですが、Thomson tetrahedronという用語は出てい ませんでした。また転位との関係などは、詳しくは下記の書物を勉強して下さい。
J. P. Hirth and J. Lothe, Theory of Dislocations (1992).
私は、手元にないのですが、九大なら図書館にあるでしょう。
あなたの所属する物質科学工学科のほうがこの分野に詳しい専門の先生がおられると思い ます。そちらにお尋ね下さい。
----------------------------------------------------------------------------

387. シンチレーションカウンタ用のオプティカルセメント

Date: Tue, 06 Jul 2004 10:51:23 +0900
Q: こんにちは、突然のメールで失礼いたします。
私、岐阜大学教育学部の学部学生で杉原と申します。
インターネットホームページの「物性なんでもQアンドA」を拝見いたしました。

ぜひともご教授いただきたいことがございまして、ご連絡させていただいた次第です。 この度、光電子増倍管およびシンチレーターを用いた宇宙線の検出という学生実験を 行うことになりまして、現在下調べをしているのですが、シンチレーターとライドガ イドを「オプティカルセメント」というもので接着する、ということがわかりました。 ところがどの専門書を見ても、シンチレーションの説明、ライトガイドを使用する理 由、光電子増倍管の原理等は載っているのですが、それらの接合面に使用する真空グ リース、オプティカルセメント等に関する詳しい記述が見つかりませんでした。
そこでインターネット上で情報を得るべく検索しておりましたところ、「物性なんで もQアンドA」を見つけまして、ご助言をいただけないかと存じまして今回メールをお 送りさせていただきました。
ぶしつけとは存じますが、どういうものを使用すればよいのかご教授いただけません でしょうか。
----------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 6 Jul 2004 11:19:39 +0900
A1: 杉原様、佐藤勝昭です。
 Googleでoptical cementと入れますと、127,000も引っかかってきます。Summers Optical、Saint Gobainなどで販売しているようです。
 一般にoptical cementというのは光学素子用の接着剤で、光学的に透明で光学素子と屈 折率が近いものが使われます。たとえば、プリズム偏光子では、結晶方位の異なる2つの 方解石プリズムをoptical cementで接着しているようです。
 シンチレーションカウンタの場合、波長の短い青、紫、紫外線に対して透過率の高いも のが必要です。
 Googleでoptical cement scintillationと入れたら、 Saint GobainのBC-600のことがトップで引っかかってきました。
シンチレータ用に開発されたもののようです。
いま入手方法を、高エネルギー粒子計測の専門家に伺っていますので、返 事があればお答えします。
--------------------------------------------------------------------------
Date: Tue, 6 Jul 2004 13:08:46 +0900
A2: 杉原様、佐藤勝昭です。
 高エネルギー物理学を専攻しておられる本学の仁藤助教授にお伺いしました。
----------------------------------------------------------
「仁藤です。シンチレーターとライトガイド、光電子増倍管の接着ですが、 以前は自分たちでやっていましたが、最近は業者に発注した方が確実と言う ことで埼玉の以下の業者に頼んでいます。そこに聞いてみるのが一番早くて 間違いないと思います。
■社名   株式会社 シーアイ工業
■代表者  山品 恒夫
■所在地  〒359-1164 埼玉県所沢市三ヶ島2ー674ー2
■電話番号 (042)948ー1811
■FAX    (042)949ー1395
http://www2.dango.ne.jp/cikogyo/」
というお返事でした。
---------------------------------------------------------------------
Date: Wed, 07 Jul 2004 18:09:50 +0900
AA: 先日オプティカルセメントの件でお尋ねさせていただきました、岐阜大学教育学部の 杉原です。
佐藤先生、親切にご案内いただきましてありがとうございました。
突然の失礼極まりないメールにも関わらず、ご親切に回答をしかも早々といただけま して大変助かりました。
ご教授いただいた内容を踏まえまして、今後の活動を検討したいと存じます。
仁藤先生にもお礼を申し上げたいのですが、残念ながら適いませんので、よろしくお 伝え願えますでしょうか。
どうもありがとうございました。
-----------------------------------------------------------------------

388. 半導体素子の温度依存性

Date: Wed, 7 Jul 2004 00:53:36 +0900
Q: 佐藤教授殿
メーカーM社 山田と申します。
貴HPを拝見し、是非お教え願いたいことがあり、初めてメールさせていただきまし た。
この春からLSI設計にたずさわっておるのですが、半導体素子の温度依存性が本を読 んでもどうもぴんとこないのです。

  • pn接合容量
    逆バイアスに振ると空乏層がのびて容量はちいさくなりますが、温度を低温にして いっても小さくなっていきます。
    温度依存についてはキャリア密度が低温で小さくなるからという理解で良いのでしょ うか?
  • MOSキャパシタ(ポリシリゲート)容量の温度依存性
    これも温度を低温にすると容量がわずかに小さくなります。これもキャリア密度のせ いでしょうか?
  • 抵抗素子の温度依存性
    金属は温度を上げると格子振動散乱をうけるので、抵抗は大きくなる(温度係数 正)。
    真性半導体は温度を上げるとキャリア密度が大きくなって抵抗が下がる(温度係数 負)。
  • と、たぶん本に良く書いてありますが、

    p型、n型ドープシリコンについては温度係数が実際正だったり負だったりします。
    ドープ量と関連しているようなのですが、ここらへんがなんかすっきりしません。

    お忙しいところ申し訳ありませんが、何卒御教授のほど宜しくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 7 Jul 2004 22:06:34 +0900
    A:山田様、佐藤勝昭です。
    メール有り難うございます。
    (1)空乏層の逆バイアスにするのと低温にするのとはどちらも電荷量が少なくなるという 点では同じと考えられます。あなたのお考えの通りでしょう。
    (2)低温ではチャネルの電荷が減少するのでゲート容量も減少すると思います。あなたの 推論でよいと思います。
    (3)高ドープの半導体の場合、縮退しているなら金属と同じですから高温では格子散乱の 効果が効いて温度係数は正になります。縮退する前であれば、温度とともにキャリア数が 増加するので負の温度係数になります。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 8 Jul 2004 00:35:22 +0900
    AA: 佐藤先生

    早速の御返事有難うございました。

    私は設計側の人間ですが、半導体物性についても常に意識しながら仕事ができるよう がんばりたいです。
    ----------------------------------------------------------------------------

    389. ハイブリッドICの熱設計

    Date: Sat, 10 Jul 2004 Q: 佐藤研究所 様
    HPを観ました。M社のKです。
    お手数ですが 標記の件 教えて頂きたく宜しくお願いします。
    (WEBアップ時は 匿名でお願いします。)

    背景
    ハイブリッドICでは 例えば ウェファより切り離したベアトランジスタ(例えば 1mm角)をパッド(例えば1.5mm角)に接着し 更にこのパッドをセラミック基板(例えば10mmX20mmX0.5mm)上の金属パターン(金 等から成る)に接着しています。
    このトランジスタから発生した熱(例えば1Wの熱量)を速やかに放熱しないと熱破 壊に至ります。
    例えば 雰囲気温度50℃にて ジャンクション温度を 180℃に制限したい) セラミック基板は放熱板(アルミニウムで 自然空冷で且つ極力小型化したい)に接 着します。

    教えて頂きたいのは
      1) 共晶半田 並びに 高融点半田 の 熱伝導性、熱抵抗
    2) 上記条件下にて ジャンクション温度を求める計算式
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Jul 2004 01:37:34 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     トランジスタの実装における熱設計は半導体デバイス設計の基本なので、企業 の現場にノウハウが蓄積されていると考えられます。私に聞かれるより御社の社 内のしかるべき設計技術者に聞かれた方がよいと思います。
     (1) 半田の熱抵抗率ですが、シリコンの3倍程度です。
     (2) 一般論ですが、半導体接合から1secに放出される熱量をQ[W}とし、半導体 の熱抵抗θjc[K/W]、リードフレームの熱抵抗θcs[K/W]、放熱器の熱抵抗θsa[K/W] とする。接合部の温度をTj[K]、空気の温度Ta[K]とすると、
      Tj-Ta=Q(θjc + θcs + θsa)
    となります。パッド、半田などの熱抵抗はリードフレームの熱抵抗θcsに押し込 んであります。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Jul 2004 06:53:32 +0900
    AA:有り難うございます。
    社内の人に 確認してみます
    M社K
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Jul 2004 10:36:05 +0900
    A2:K様、佐藤勝昭です。
     参考になる文献を添付します。(注:著作権の問題有り、ネットにはアップ出来ません)
    なお、素人向けの放熱器の設計のためのサイトを見つけました。
    http://www.car-e.net/~dai/emv/hounetu.htm
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Jul 2004 17:10:53 +0900
    AA2:佐藤 勝昭 様
    重ね重ね有り難うございます。
    教えて頂きました文献類を元に計算してみます
    (明日にでも 会社の関係部署に相談も行ってみます)
    実は1mm角程度のベアチップトランジスタに1w強程度消費させ 且つ前述のセラミック基板上に合計8個を搭載する(つまり合計約10w) 事が本当に正しいのか(量産で実用になるのか?)を検証したく 相談申し上げした次第です。
    「熱が逃げるパイプの太さ(熱抵抗)が大元で1mm角程度」がどれだけ 影響するのかを一番懸念しますが 計算方法が判らず相談申し上げした次第です
    --------------------------------------------------------------------------

    390. 真性半導体の活性化エネルギー

    Date: Mon, 12 Jul 2004 00:30:10 +0900
    Q:初めて質問させていただきます。群馬高専専攻科2年 亀谷潤と申します。
    半導体の性質について疑問をもちまして、検索していたところ先生のHPにたどり着き ました。全部ではありませんがHPを拝見させていただきまして、質問をさせていただ いております。
     直接遷移型の真性半導体において熱励起による電気伝導性の活性化エネルギーは、 光吸収によって伝導電子を生成するのに必要な最小エネルギーの半分になるというの ですが、その理由がわかりません。どうぞよろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Jul 2004 01:30:39 +0900
    A: 亀谷潤君、佐藤勝昭です。
     ご質問については、例えば、佐藤勝昭編著「応用物性」第2章、2-1節p.29-33に載っています。
     伝導帯の電子密度nはn=Nc exp{-(Ec-Ef)/kT}で表されます。Ecは伝導帯の底のエネルギー、Ncは伝導帯の電子に対す る実効状態密度でNc=2(me*kT/2πh'2)3/2と表されます。Efはフェルミ準位で す。me*は電子の有効質量、h'はh/2πです。
     一方、価電子帯のホール密度pはp=Nv exp{(Ev-Ef)/kT}で表されます。Evは価電子帯の頂のエネルギー、Nvは価電子帯のホールに対する実効状態密度でNv=2(mh*kT/2πh'2)3/2と表されます。mh*はホールの有効質量です。
     真性半導体の電子密度とホール密度が等しいのでこれをniとすると、n=p=niですか ら、np=ni2
      ni2=Nc exp{-(Ec-Ef)/kT}xNv exp{(Ev-Ef)/kT}=NcNv exp{-(Ec-Ev)/kT}
    両辺の平方根をとって、
      ni=(NcNv)1/2 exp{-(Ec-Ev)/2kT}
    ここでEc-Ev=Egなので
      ni=(NcNv)1/2 exp(-Eg/2kT)
    となり、活性化エネルギーがEg/2となるのです。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Jul 2004 04:55:39 +0900
    AA: 佐藤勝沼先生
     早速のお返事ありがとうございます。お忙しい中ご丁寧な説明をしていただきまし て、どうもありがとうございました。
     自分は現在物質化学を専攻しているのですが、最近半導体やキャパシタなど電気関 係の知識が必要になり理解するのに四苦八苦しております。先生のお書きになった 「応用物性」などを含め、化学系の学生が電気を学ぶにあたって良い教科書があれ ば、いくつかお教えいただけませんでしょうか、よろしくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Jul 2004 14:11:51 +0900
    A2:亀谷君、佐藤勝昭です。
     私の教科書では、佐藤・越田「応用電子物性工学」(コロナ社)がわかりやすいと思い ます。化学の学生にわかりやすいということで、応用分子化学科の教授に伺ったところ、 固体物性関係なら
    坂田:理工学基礎シリーズ「物性科学」(培風館)
    玉井:「固体化学I,II」(朝倉書店)
    がよいだろうと言うことでした。
     電気のことを学ぶ教科書は、やさしいのからむずかしいのまでいろいろ出ているので、 本屋さんで自分でご覧になった方がよいでしょう。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Jul 2004 17:23:43 +0900
    AA2:佐藤勝昭先生
     重ね重ねご丁寧にありがとうございます。ご紹介いただいた本を見て勉強します。 またお手数をかけることもあると思いますが、その時はまたどうぞ宜しくお願いいた します。どうもありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    391. アナログ電子回路の現状と課題

    Date: Mon, 12 Jul 2004 20:53:50 +0900
    Q: HPを拝見しました。
    広島工業大学電子工学専攻1年のTです。
    匿名でお願いします。

    アナログ電子回路を今習っているのですが、アナログ電子回路の現状をしりたいで す。
    また、将来に向けてどのような課題があるのですか。

    宜しくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 13 Jul 2004 11:32:27 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     世の中がディジタルブームで、ディジタル回路さえわかれば、すべてOKのような風潮が あるのは困ったことです。
    アナログの技術はヒューマンインターフェースを考える場合に は重要です。たとえば、イメージなり音なり触覚なり温度なりセンサで検出する量は(最 終的にコンピュータに入力するときはディジタル化されるとはいえ)本質的にアナログ量 です。出力も音であれ、画像であれ、動きであれアナログ量となります。
     ほとんどのアナログ電子回路の基礎は70-80年代に完成したといってもよいでしょう。
     その後、半導体材料の改良、半導体デバイスの技術革新によって、大電力、高速、高感 度など高機能化が進みました。また、オペアンプ、アナログIC等の形で微細化も進み、た とえばTV受像機では、数千あった部品が集積回路化によって数十個の部品ですむようにな るなど、70-80年代には考えられなかったような発展をしました。部品数の減少は、 製造工程での省力化、省資源化を進めただけでなく、製品の低コスト化、省電力化、小型 化、信頼性の向上を実現しました。
     大型薄型ディスプレーにも多くのアナログ技術が使われていますが、大面積化と省電力 化をどのように実現するのかは大きな課題です。
     また、80年当時は、ほとんど一般ユーザに縁のなかったGHz以上の超高周波が、TV, 携帯電話、LANなどに使われるようになり、超高周波のアナログ技術の重要さが認識され ています。また、通信のみならずストレージにおいても微小な高周波信号を扱うことが多 くなったので、如何に低ノイズの初段増幅器を作るかも大きな課題になっています。  日経エレクトロニクスという雑誌にも折に触れてアナログ電子回路の記事がでています。 トランジスタ技術という雑誌ではフレッシュマン向きのアナログ回路講座も出ているよう なので、それらを図書館で調べるとよいでしょう。ネットでは、個別の情報は得られるけ れど、総合的なものは得られないので、できるだけ図書館などで本を調べるようにして下 さい。
     なお、ここに私が書いたことは、私に著作権があります。レポートに書かれるときは、その旨、 引用して下さい。
    ---------------------------------------------------------------------------

    392. 透明電磁波シールドフィルムの電気抵抗

    Date: Wed, 14 Jul 2004 17:22:20 +0900
    Q: 東京農工大工学部
    物理システム工学科教授 佐藤勝昭 様

    A社のKです。
    お世話になっております。

    本日は先生にお尋ねしたいことがあり、御連絡を差し上げた次第です。

    世間一般に用いられている透明電磁波シールドフィルムとして、金属多層スパッタというものがあります。これは、PETフィルム上に銀とITOを交互にスパッタし、積層膜としたものです。例えばPDPでは、銀を4層、ITOを5層、交互に積層した9層膜が使われております。
    家庭用のPDPで必要とされるシールド性能発現には、1.5Ωが必要とされています。銀の単層スパッタでこの値を得ようとすると全く透過率がなくなってしまうため、ITOと積層膜にすることによって反射率を制御、透過率を高めています。
    前置きが長くなり、申し訳ありません。

    ここで1点、よくわからないことがあります。
    それは、銀の積層枚数を増やしていくと、なぜ表面抵抗が下がるのかと言うことです。
    話によると、1.5Ωを実現するには銀が3層では不十分で、4層以上が必要になるそうです。
    銀のスパッタ層はそれぞれが完全に独立しているわけではなく、ITO層を介して導通がとれていると考えればよいのでしょうか。
    ITOスパッタ膜は1.5Ωもの低抵抗値は持ち得ません。
    しかし、あまりに薄膜であるが故に、上下の銀層間の導通を妨げない、つまり、積層膜でありながら銀の厚膜と見なせる状態にあるということでしょうか。

    非常に基本的な質問かもしれませんが、先生の御意見をお聞かせ願えないでしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Jul 2004 18:37:42 +0900
    K様、佐藤勝昭です。
     ガラス上のITOの比抵抗はρ=5×10-4Ωcm程度ありますが、
    株式会社トービのHPによると PET上のITOの比抵抗は膜厚1000Å以上ではρ=40mΩcm程度と言うことです。
     ITOの厚みを仮に1μm=10-4cmとしましょう。このときシート抵抗は確かに高く 400Ω/□程度です。しかし、1cmx1cmのITOの膜厚方向の抵抗値は比抵抗ρ=4×10-2Ωcmとして、
     R=ρd/S=4×10-2×10-4/1×1=5×10-6Ω
    に過ぎません。膜厚方向にはショートしているのと同じなのです。
     従って、AgをITOをはさんで何枚も重ねても面内を電流が流れるときはその並列抵抗にな ると考えてよいのです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Jul 2004 09:12:11 +0900
    Q:東京農工大工学部
    物理システム工学科教授
    佐藤勝昭 様
    A社のKです。
    お世話になっております。

    大変お忙しい中、早速のお返事ありがとうございました。

    わかりやすい御説明、ありがとうございました。
    膜厚方向の抵抗値を基本式に従って計算すれば、理解で きる内容でした。非常に基本的な事項を先生に御説明させ てしまい、大変恐縮です。
    しかし恥ずかしながら、ITO薄膜の厚み方向の抵抗値がそ のように低い値だったとは、想像できませんでした。
    非常に勉強になりました。ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------

    393. Pd/Geはショットキーダイオードになるか

    Date: Thu, 15 Jul 2004 11:58:27 +0900
    私はY大学電気電子工学科4年Mと申します。
    匿名希望です。
    質問なのですが、 ゲルマニウムとパラジウムでショットキーダイオードになるのでしょうか。
    これは講義で出た課題ではなく、 あくまで自分の疑問による質問です。
    どうかよろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Jul 2004 20:43:15 +0900
    A: M君、佐藤勝昭です。
     文献によると、Pdの仕事関数φmはφm=5.12eV , Geの電子親和力χsはχs=4.13です。 GeのバンドギャップはEg=0.66です。n形の場合, 半導体側の仕事関数φsはほぼχsと等 しいですから、φm>φsが成り立ちショットキー接触になります。
     一方、p形の場合、φs~χs+Eg=5.79ですからφm>φsになります。p形の判定基準は n形と逆になりますから、オーム性接触になります。
     判定基準のことは、佐藤勝昭編著「応用物性」第2章2.2節[1]をご参照下さい。(なお、 第2章は名古屋大学竹田先生の執筆です)
    ------------------------------------------------------------------------

    394. 金属による光吸収

    Date: Thu, 15 Jul 2004 15:04:18 +0900
    Q: 佐藤勝昭 先生
    初めてメールさせていただきます。
    私は、M社のWと申します。
    (すいませんが、匿名で、M社のWでお願いします)
    現在、半導体レーザを用いた金属加工システムの 開発に従事しているものです。
    加工用半導体レーザとして、800nm~970nm近くの レーザを扱っているのですが、レーザ波長と金属 あるいは、物質の吸収率との関係を調べようと思い 先生のHPにたどり着くことができました。
    また、先生の Q&Aでは、学生から社会人まで幅広い年齢層の、 非常に多岐に渡る質問分野に対応されており、今回 身勝手なお願いですが、私もご質問させていただこうと 思った次第です。どうぞ、宜しくお願いいたします。
    1.なぜ、物質に光があたると発熱するか?ということに関し、
      
    北大理物のサイト   によると、
      「物質に光をあてると、最初に電子系が励起された後、電子格子相互作用を
       通じて、物質の格子配列に変位が生じる。」
      ここで、電子格子相互作用とは、
      姫路工大のサイト   によると、
      「電子と格子振動(格子歪み)とが相互に影響を及ぼしあうことを電子-格子相互
       作用という。電子-格子相互作用の強い系では電子と格子は独立ではなく、光な
       どにより電子が励起されると格子が移動するここにより系のエネルギーを下げ
       安定化する。」
      つまり、光が当たると、電子が励起される。電子の動きが活性化されると、系の
      エネルギーを下げる為に、格子配列が移動(変位)することになる。光が当た
      り続けるとこの格子の移動も連続的になる。この連続的な格子配列の移動によって
      一種の摩擦熱のようなものが発生し、それが発熱となる。
      と考えました。→考え方としてあっているでしょうか?
    2.レーザ光の波長により、物質の反射率がかわると思いますが、例えば、金属なら
      光が透過することは起こらないと考えていいなら(少し自信がありません。
      金属も原子格子から成り立っているのであれば、極々わずかでも隙間があるように
      思います。この隙間を通じて透過するということも起きるのかな?と疑念が
      あります)反射率(%)を100%から引くと、吸収率(%)が求まる
      思われます。つまり、金属の反射率が分かれば、吸収率が求まり、吸収率が高い
      波長を選択することで、より、金属を発熱させやすいと考えられる。
      →考え方としてあっているでしょうか?
    3.先生のQ&Aを読ませていただき、その中で、各種金属の反射率は、
      ・PalikのHandbook of Optical Constants in Solids
      ・Landolt BoernsteinのニューシリーズのIII-15b
      で調べることができる、ということがわかりました。
      また、反射率RはR={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}の式で計算でき
      (n:屈折率、κ:消光係数)
      LB(Landolt Boernstein) のNew Series III 15 b Optical constants of pure metal
      金属の広い波長域の誘電率の実数部、虚数部、屈折率、消光係数、反射率が収録され
      ている。とありましたが、ここで、反射率も収録されていると書かれているのですが、
      なぜ、屈折率、消光係数から反射率を計算で求める必要があるのでしょうか?
      実際にまだこの本をみていないもので、分からないのですが、一部反射率の記載が
      ない部分があるということなんでしょうか?
    4.上記3の2冊の本と計算力があれば、全ての金属に関して、各波長毎の反射率を
      求めることができると考えてよいのでしょうか?
    5.金属として、はんだのような合金の場合、よく使われる、
      共晶はんだ(63%Sn,37%Pb)の成分比で波長ごとの吸収率を考えても
      いいものでしょうか?もちろん、はんだは温度上昇によって、固体→液体に
      変化し、表面状態も鏡面状態のようなものになるため、そうした状態変化
      によって反射率が変わらない前の状態としてですが。
      逆に、このように、温度上昇とともに、状態が変化するような金属合金の場合の
      吸収率はどのように測定したらよいものなんでしょうか? 
      素人的に考えると、積分球にいれて、反射率を時間変化とともに、測定し、
      吸収率を算出する、というような方法ですが、はたして正確にとれるものなのか
      という不安があります。先生の見解をいただけないでしょうか?
    6.金属のような透過成分がない(かどうかは不明ですが)ものではなく、
      一般的な物質、例えば、多層のプリント基板のレジスト部などの、
      波長毎の光吸収率を考えるには、実測する以外には手はないでしょうか?
      なにか、金属の場合のような、データシートや計算式というのは
      ないものでしょうか?
    以上雑多な質問ばかりで恐縮ですが、どうぞ宜しくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Jul 2004 20:21:04 +0900
    A: W様、佐藤勝昭です。
     ご質問は多岐にわたっており、ご質問の趣旨に全部正確にお答え出来るか不安ですが、 一通りお答えします。
    > 1.なぜ、物質に光があたると発熱するか?ということ、
    金属の場合、ω<ωp'(hybrid plasma frequency)においては、自由電子の集団運動(プ ラズマ振動)が励起されますが、この運動は摩擦項(結晶格子との相互作用)によりダン ピングします。そのとき失われたエネルギーは格子振動となります。一方、ω>ωp'にお いては、バンド間遷移が起き、電子は励起状態になります。これが、基底状態に緩和する とき、金属は発光しないので、励起エネルギーは格子に伝わり最終的に格子振動となりま す。どちらの場合も格子振動になるわけですが、外からの熱で格子が振動することと区別 は付きませんから、格子振動=熱と考えてよいでしょう。

    > 2. →考え方としてあっているでしょうか?
     光は金属の中に入ります。加工用半導体レーザとして800nmの波長のものをお使いであ ったとしましょう。金属としてAlを例にとりますと、Alの消光係数κはλ=800nmにおいて κ=2.8くらいですから、吸収係数α=4πκ/λ=4π2.8/800×10-7cm=4.4×105[cm-1]で す。従って、1/α=2.3×10-6[cm]=230Åくらいは侵入しています。(これは原子の隙間 を透過するのではありません。)ここで発熱し、その熱が全体に伝わって金属が融解した りするのです。
     100%から反射率を引いて吸収率を求めるというのはやや荒っぽい気もしますが、目安に はなると存じます。Alの800nmにおける反射率は約R=85%です。970nmではR=95%ですから 800nmのほうが吸収が大きいといえるでしょう。

    > 3.なぜ、屈折率、消光係数から反射率を計算で求める必要があるのでしょうか?
    質問の意味が不明です。ご質問は「なぜ、屈折率、消光係数から反射率を計算で求めるこ とができるのになぜ反射率まで載っているのでしょうか」と書こうとされたのでしょうか。
    それは、データベースですから親切に記載されているとしかいえないでしょう。
    >   実際にまだこの本をみていないもので、分からないのですが、一部反射率の
    > 記載がない部分があるということなんでしょうか?
    LBの方は、全部反射率が出ています。Palikの方はn, κのみです。

    > 4.上記3の2冊の本と計算力があれば、全ての金属に関して、各波長毎の反射
    > 率を求めることができると考えてよいのでしょうか?
    その通りです。

    > 5.素人的に考えると、積分球にいれて、反射率を時間変化とともに、測定し、
    > 吸収率を算出する、というような方法ですが、はたして正確にとれるものなのか
    > という不安があります。先生の見解をいただけないでしょうか?
    当然合金についても吸収係数のスペクトルを考えることができます。組成比によって異な ることは十分考えられます。
    融解した場合の反射率は当然ながら固体とは異なります。積分球に入れて測定するのも、
    目安を得るにはよいと思いますが、加熱出来る積分球ってあるのでしょうか。

    > 6.多層のプリント基板のレジスト部などの、
    >   波長毎の光吸収率を考えるには、実測する以外には手はないでしょうか?
    >   なにか、金属の場合のような、データシートや計算式というのは
    >   ないものでしょうか?
    レジストなどの吸収スペクトルは、ものによっては、メーカで測定しているのではないか と存じますが、手元にはデータベースは持っておりません。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 17 Jul 2004 08:50:51 +0900
    AA:佐藤先生
    お忙しい中、雑多でまとまりのない質問に答えて下さり、本当にありがとうござ いました。質問の中で意味不明とコメントいただいた箇所については、先生のご 指摘どおりでございます。また、再度質問させていただくことがあろうかとござ いますが、その際はどうぞ宜しくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------

    395. 石英ガラスの低温特性

    Date: Fri, 16 Jul 2004 15:07:03 +0900
    Q: 佐藤様、N社Sです。
    標記の件について質問を下記致します。
    石英ガラス製品を-65℃の環境下で使用したいと考えております。
    当然ですが高温側の熱的特性、機械的・電気的特性については文献があります。
    しかし、低温側の文献がなかなかありません。
    低温側の特性についてご教示願えれば幸いです。
    宜しくお願い致します。

    匿名でお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 16 Jul 2004 19:49:34 +0900
    桜井 誠様、佐藤勝昭です。
     申し訳ありませんが、私も手元に資料がありません。
    以前、クライオスタットの窓材に石英ガラスを使用していましたが、設計の際、室温の熱 膨張係数値を使っていました。
    200K程度の低温での熱膨張係数は室温の値(0.35~0.55×10^-6)と同程度かやや小さい値 であると思います。熱伝導率は室温の値(0.014W/cm・K)の1/2程度と思います。
    お役に立てず申し訳ありません。
     もっと低温になって、1K以下の極低温における様々な材料の物性値は、
    D.V.Lounasmaa:Experimental Principles and Methods below 1K (academic Press 1974) に載っているそうです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 20 Jul 2004 08:17:49 +0900
    AA: 佐藤様
    お世話様です。N社Sです。
    標記に件についてご教示ありがとうございました。
    今後とも宜しくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    396. 逆バイアスでのトランジスタの破壊

    Date: Sat, 17 Jul 2004 17:08:12 +0900
    Q:はじめまして
    立命館大学、2回生、物理科学科の岡本美里と申します。
    ホームページを拝見しました。
    そこでトランジスタについて質問があります。
    実験でエミッタとコレクタを逆に設置し、ベースとコレクタに1.5(v)、ベースとエミッタ間の電圧を 0から変化させたところ、6(v)付近で電流が著しく増加し、12(v)でトランジスタが割れてしまいました。これはエミッタの幅が薄く、6(v)付近でベースとエミッタ間にできる空乏層がエミッタの幅をこえたからと考えてよろしいんですか?この現象を空乏層の破壊と言うんでしょうか?教えて下さい。使用したのはnpn型です。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Jul 2004 00:59:50 +0900
    A:岡本君、佐藤勝昭です。
    「逆に設置」の意味は、本来なら添付図(a)のようにつなぐところを、(b)のようにつ ないだということでしょうか。もしそうしたならば、B-E間は逆バイアスになり ます。普通はカットオフされていますが、VBEが降伏電圧(ツェナー電圧)を超え て逆バイアスされると、EからBにむかって(逆方向の)電流が流れ始めます。これ は、エミッタ側のn層の伝導帯の底のエネルギーが逆バイアスによって下がり、 ベースのp層の価電子帯の頂より低くなったため、空乏層のポテンシャル障壁が 薄くなって、電子がトンネル効果で通り抜けることによって起きます。さらに電 界が強くなると、加速された電子が原子との衝突することによって新たな電子が 放出され、雪崩破壊現象がすすみます。最終的には、発熱により接合が破壊され てしまいます。ツェナー効果と雪崩破壊については、佐藤勝昭編著「応用物性」 2.2節を参照してください。



    -------------------------------------------------------------------------------

    397. Siにショットキー障壁を作る金属

    Date: Tue, 20 Jul 2004 16:31:17 +0900
    Q1: 佐藤先生
    G社上山と申します。お世話になります。
    物性なんでもQ&Aには色々役立つ情報があり、よく活用させて頂いております。
    さて、当方ではショットキーダイオードを用いた特異なセンサ開発を検討しておりま す。
    センサ構成と薄膜プロセス装置の条件等を考慮して、いくつかの材料の組合せを検討 したいと考えております。
    そこで、n型またはp型シリコンとショットキーダイオードを形成可能な金属(また は化合物)の組合せを教えて頂けますでしょか?
    特に、一般的ではない組合せの方が当方の目的に合致する可能性がありますので、 先生のご存知の範囲で結構ですので教えて頂けましたら幸いに存じます。
    以上、宜しくお願い申し上げます。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 20 Jul 2004 21:03:18 +0900
    A1: 上山様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。
    一般論ですが、n形シリコンの場合、
    金属の仕事関数がシリコンの仕事関数より大きければショットキー接触できます。
    シリコンの仕事関数φsはχ+ΔEで表され、ΔE=(Ec-Ef)です。χは電子親和力でSiでは4.01eVです。
    接触電位差から測定した金属の仕事関数は(eV単位)[新版物理定数表(朝倉書店)による]
     Ag 4.21, Al 4.25, Au 4.46, Cd 4.49, Cu 4.46, Fe 4.40, Hg 4.50, Mo 4.08, Ni 4. 96, Pt 5.36, Sb 4.14, Sn 4.64, W 4.38
    これらはいずれもショットキー接合ができると思われます。
    p形シリコンの場合仕事関数φsはほぼχ+Egで表され、5.1eV程度です。
    p形の場合は、φm<φsでショットキー障壁ができるので、上の金属のうち、Pt以外はOKです。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 20 Jul 2004 21:20:40 +0900
    Q2:佐藤先生
    ご回答有難うございます。
    ひとつ気になる事があります。
    たとえば、Alの場合は、n型シリコンとオーム性接触を得やすい材料として使われ ています。実際には、この場合はシンタリング処理が必要になるのだと思いますが。 素子形成後に若干の熱処理工程が入ってもショットキーダイオードを確実に形成する ためには、n型またはp型シリコンとの組合せはどれがよいのかが判りません。
    この点を教えて頂けましたら幸いです。
    以上、宜しくお願い申し上げます。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 21 Jul 2004 00:50:42 +0900
    A2:上山様、佐藤勝昭です。
     私が書いたのは一般論です。
    さまざまな半導体と金属のショットキー障壁の高さは、
    コロラド大学のHPに、添付の表にまとめられています。表に示すように、Alはn形Siともp形Siともショットキー障壁を作ります。
     しかし、金属の仕事関数が4.2eV前後の場合、シリコンのフェルミ準位の位置によって は、φm>φsが成り立たなくなります。
     また、金属とシリコンが合金化する場合もショットキー接触になりません。 合金化 しないかどうかは、Si-Mの2元平衡状態図を見て判断します。Si-Alの状態図は
    マンチェスター科学技術大学材料学科のHPに載っています。これによると、Si-Al系は非固溶系で、SiとAlは合金を作らず相分離します。従っ て、AlはSiと急峻なショットキー接合を作りやすいと考えられます。
     オーミックになるのは、Siが大量の不純物を添加され、n+とかp+になった場合で す。10^18cm^-3位の高濃度ドープされますと、金属的な状態になりますから、オーミッ ク接合になるのです。Alが高濃度添加されるとp+層ができます。
     ほかの金属とSiが合金を作るかどうかはHansenの状態図の書物を参照してください。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 21 Jul 2004 10:46:10 +0900
    AA:佐藤先生
    ご回答有難うございます。
    大変参考になりました。
    今後とも宜しくお願い申し上げます。
    上山。
    ---------------------------------------------------------------------------

    398. 空気は積もらないか

    Date: Wed, 21 Jul 2004 04:05:51 +0900
    Q:初めまして。金沢大学、薬学部、1回生の持田麻里亜と申します。
    ホームページを拝見しました。
    質問なのですが、空気には重さがあるのになぜ積もらないのですか?
    教えてください。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 21 Jul 2004 09:57:17 +0900
    A:持田君、佐藤勝昭です。
     空気は重さがあるので、地上付近にのみ存在し、成層圏にいくとかなり薄くなり、さら に遠く、静止衛星の軌道付近(地上3万5千km)では宇宙空間と同じくらい真空になってい ます。従って、空気は重さがあるので地上付近に積もっているのです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 22 Jul 2004 00:44:44 +0900
    AA:納得いきました。ありがとうございます。
     金沢大学 持田麻里亜
    ------------------------------------------------------------------------------

    399. 誘電損失と結晶性

    Date: Thu, 22 Jul 2004 17:03:49 +0900
    Q: 私、K大学MのYと申します。(できましたら匿名でお願いします。)
    いきなりのメールで失礼致します。
    誘電損失についていくつか質問にお答えいただけると幸いです。
    以前、
    ミリ波帯の誘電損失のところで

    (1)『結晶構造から理論的に予測できるのは、どのような波長に吸収帯が生じるか ということと、その吸収帯が赤外活性かラマン活性かというようなこと』とありますが、ど のようにして結晶構造から吸収帯の波長を予測できるのでしょうか。

    (2)『結晶の品質』という記述がありますが、具体的にはどういったものなので しょうか。

    (3)FTIRを用いれば、吸収が起こっているか、いないかはわかると思いますが、そ こからどのようにして、誘電損失がわかるのでしょうか。

    (4)FTIRを用いれば400cm-1までの吸収はわかると思いますが、GHz帯の誘電損失は どのようにすれば見積もることができるのでしょうか。

    不躾な質問で申し訳ございませんが、御教授お願い申し上げます。
    貴重なお時間を頂くことに恐縮いたします。
    よろしくお願い申し上げます
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 22 Jul 2004 23:56:26 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
    (1)結晶構造がわかると、対称性(点群)からどのようなモードの格子振動があり得るか がわかります。さらに、対応する格子振動に関わっている原子の質量や、有効電荷など を用いて固有振動数が計算で推定出来ます。

    (2)結晶の品質といったのは、結晶の乱れ、結晶欠陥などがどの程度あるかという意味で す。格子振動のスペクトルがブロードになるのは、そのような欠陥との衝突によるから です。

    (3)FTIRを用いて反射スペクトルRを測定し、Kramers-Kronig解析によって、屈折率nと消 光係数κを求めます。κとnからε'=n22, ε"=2nκ が得られます。誘電損失を表 すtanδは、tanδ=ε"/ε'によって表されます。

    (4)FTIRで測定した誘電率のスペクトルをLorentz型の分散曲線で近似します。裾がGHz帯ま で伸びているはずだと思います。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 23 Jul 2004 17:19:36 +0900
    AA: 佐藤先生
    この度はお忙しい中ご教授頂きありがとうございました。
    Yです。とても頭の中がすっきりと致しました。
    まだまだ暑い日が続きますがお体にお気をつけくださいませ。
    これからも先生のご意見を基に勉強します。
    本当にありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------------

    400. 酒石酸単結晶

    Date: Fri, 23 Jul 2004 00:29:14 +0900
    Q: はじめまして東京都立大学のIと申します。
    物性なんでもQ&Aのサイトを拝見して私の疑問も解消していただこうと思いメールい たしました。
    酒石酸の単結晶を作りたいのですがいつも多結晶になってしまいます。どうすればき れいな単結晶が得られるのでしょうか、教えてください。
    HPにアップするときは匿名にしてください
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 23 Jul 2004 21:21:15 +0900
    A1: I様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。私は酒石酸の結晶成長を行ったことがありませんので、 結晶成長の一般論でお答えします。
     多結晶が生じるのは、成長初期に多数の核が発生しそれらが別々に成長するからなので、 1つの核のみが成長するように工夫してやればよいのです。
     たとえば、溶液を冷却していき多数の核が発生したところで一度温度を上げると小さな 核は再溶解して、大きな核のみが残ります。再び冷却してその核を育成します。このプロ セスを繰り返せば、少数の核のみが成長し、大きな単結晶を得ることができます。
     もう一つの方法は、種結晶を用いることです。溶液に種結晶を入れるといったんは表面 が溶解しますが、冷却するとともに、種結晶の表面に溶質が固化堆積し種結晶と方位をそ ろえて成長します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 24 Jul 2004 15:04:26 +0900
    A2: I様、佐藤勝昭です。
     結晶成長ハンドブック(共立出版1995)p1056には、酒石酸そのものではないのですが、 酒石酸ナトリウムカリウム(ロッセル塩)NaKC4H46・4H2Oの結晶成長速度の測定法が載っ ています。
    引用しておきますと「種子結晶をセルのガラス板の間に置き、雑晶の発生を防止するため、 測定温度より約10℃高い溶液を注入した。このようにすると、種子結晶は初め少し溶ける が、しばらくすると外形が整い成長が始まる。・・・」
    前回、お答えした2つの方法が組み合わされていることがわかります。
     なお、同書のp.296には、酒石酸カルシウムのゲル成長のことが記載されています。
    ここではシリカゲルを詰めたU字管を用い、一方の口から酒石酸溶液を、他方の口から塩 化カルシウム溶液を加えることによって、中間点付近に単結晶を作成する方法が記載され ています。「濃度勾配が緩やかなほど過飽和度が緩やかに変わるので大きな結晶が成長す る」と書かれています。参考になれば幸いです。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 25 Jul 2004 13:16:09 +0900
    AA: 東京都立大学のIです。
    大変参考になりました。早速この方法で結晶を作ってみることにします。
    お忙しい中こんなにも早くにお返事を書いていただき本当にありがとうございます
    -----------------------------------------------------------------------------

    401. 金属の反射(ZnとAl)

    Date: Mon, 26 Jul 2004 18:00:50 +0900
    Q:佐藤勝昭 先生
    M社のWです。
    (すいませんが、匿名で、M社のWでお願いします)
    あつかましくも、2度目の質問をさせていただきます。
    前回のメールにて、先生より、
    「PalikのHandbook of Optical Constants in Solids」、
    「Landolt BoernsteinのニューシリーズのIII-15b」
    の2冊と、計算力があれば、反射率RはR={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}の 式で全ての金属に関して、各波長毎の反射率を求めることができると考えて よいとの回答をいただきました。
    実は、漸く「PalikのHandbook of Optical Constants in Solids」、を I~Ⅲまで借りることができ、中身を確認しているのですが、 3点ほど教えていただけないでしょうか?
    1)探し方が悪いのかZnのデータがないようなんですが、この本では   掲載されていないのでしょうか?
    2)アルミのデータとして、1冊目の395~403頁に掲載があるのですが、
      この表では、nが2つ(以降左側からn1、n2)、κが2つ(以降左側か らκ1、κ2)   そしてRが3つ(以降左側からR1、R2、R3)とRhvが掲載されてい ます。
      上記の式にて、算出すると、n1とκ1からはR1が算出され、n2とκ2 からはR3 が算出されることが分かりました。これら、n1、n2、κ1、κ2、R1、R 2、R3、 Rhvの意味を教えていただけないでしょうか?
    また、一般的に反射率というのは、どれを用いればいいのでしょうか?
    3)別のQ&Aの項目で、先生のご回答で、「お望みの波長範囲のデータがない ときは、ローレンツモデルで外挿するとよいでしょう。」との記載が あったのですが、このローレンツモデルでの外挿というのは、 具体的にはどのように行うのでしょうか?
    以上大変基本的な質問ばかりで恐縮ですが、宜しくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 26 Jul 2004 20:15:37 +0900
    W様、佐藤勝昭です。
    1)亜鉛は酸化しやすいので、信頼性のあるデータが得にくいのでしょう。
    可視データは、W.Meier:Ann.Phys.31, 1017 (1910)にのっているそうです。
    工藤恵栄:分光学的性質を主とした基礎物性図表(共立、昭和47)p.10に 再掲されています。
    波長(nm) n κ
    257.30.5540.612
    247.40.4561.167
    298.10.4691.598
    325.50.5992.229
    361.10.7202.610
    398.20.8642.917
    441.30.9343.178
    467.81.0493.485
    508.01.4064.101
    589.31.9324.661
    668.02.6185.083
    ---------------------------
    近赤外データは、R.H.Graves and A.P. Lenham: J.Opt.Soc.Am. 58, 126 (1968) に載っているそうで、前掲書に次のように引用されています。(Meierのデータとつながっ ていません)
    >
    波長(nm) n κ
    7292.445.08
    7742.725.33
    8262.975.45
    8853.135.72
    9532.956.06
    10332.906.66
    11262.917.24
    12403.357.96
    13773.638.79
    15492.929.83
    16522.9010.97
    --------------------------------
    2)n1,k1は文献[7]、n2,k2は文献[55]、Rhvは文献[142]によるものです。
    文献7はp383にありますようにE.Shiles et al., Phys Rev. B22, 1612 (1980)
    文献55はR.W. Ditchburn et al., Proc. R. Soc. London Sec A 294, 20 (1966)
    文献142はD.Y. Smith at al. Argonne National Lab. Report 1983
    です。Rhvはp.379の説明にありますように10-5~10-6Torr の高真空中で蒸着法で作製さ れ、その後空気にさらされたAl薄膜のデータです。
     詳細は引用してある文献を読んで信頼性を判断してください。
    物質定数としては空気にさらさずin-situで測定した値がよいのですが、実際に使う膜の 場合の実測値は空気にさらした値の方が近いでしょう。
    --------------------------------
    - 3)Lorentz modelというのは、古典的な運動方程式に従って誘電率を求めたものです。
    手続は固体物理のどんな本にも書いてあります。
    拙著「光と磁気」(改訂版第2刷)[朝倉2003]p62-66,文章部分は下記のpdfをご覧下さい。
    http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/HikaritoJikiChap4rev.pdf
    あるいは、山田、佐藤ほか著「機能材料のための量子工学」[講談社1995]第4章p.160 を参照下さい。
    Lorentzの式においては、比誘電率の実数部、虚数部がそれぞれ下記の式で書けます。
    ε'=1-(Nq2/mε0)(ω2-ω02)/{(ω202)2+(ω/τ)2}
    ε"=(Nq2/mε0)(ω/τ)/{(ω202)2+(ω/τ)2}
    -------------------------------
    W様にお願いします。すべて、基礎から全部をネットでお教えする余裕がありません ので、基礎的な知識は書物をきちんと基礎から学ばれることをお薦めします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 27 Jul 2004 09:24:49 +0900
    Q2: 佐藤先生
    早速のご回答本当にありがとうございました。
    ご指摘の通り、基礎的な知識もなく、質問してしまい 大変恐縮なんですが、恥のかきついでにもう2点コメント いただけないでしょうか?
    1)金属の反射率データから、真鍮などの合金の反射率を
      成分比率から予測することはナンセンスでしょうか?
      例えば、真鍮の成分比として銅65%:亜鉛35%を
      考えた時、ある波長での銅の反射率をRc,亜鉛の反射率を
      Rzとすると、この波長での、真鍮の反射率は
      近似的に(Rc×0.65+Rz×0.35)とおくことは
      できないでしょうか?
    2)合金として、はんだを考えた場合、よく使われる、
      共晶はんだ(63%Sn,37%Pb)では、温度上昇によって、
      固体→液体に変化し、表面状態も鏡面状態のようなものになりますが、
      そうした状態変化と反射率との関係はどのように考えるべきでしょうか?
      やはり、データからの算出というものでは、対応不可能で実測が必要と
      考えるべきでしょうか?
    以上宜しくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 27 Jul 2004 13:55:06 +0900
    A: W様、佐藤勝昭です。
    1)反射率は物質固有の物理量ではなく、物質と光の相互作用の結果生じる光に対する影 響を表しているに過ぎません。物質を特徴づけるのは誘電率です。非固溶系(相分離をす る)合金では、全体の誘電率は構成元素の誘電率の平均と見ることができますから、合金 比率を求めることができるでしょう。固溶系の場合は、合金を作ることによって電子構造 (バンド構造)が変化するので、誘電率は決して平均にはなりません。真鍮の反射率を 近似的に(Rc×0.65+Rz×0.35)とおくことはできません。
     ただ経験的アプローチとして、比率のわかった合金を作っておき、それらのスペクトル を測定して、未知の合金のスペクトルをそれと比較することは可能でしょう。
    2)半田が溶けたときに鏡面状態になったのは、凹凸のあった固体表面が、液体表面にな ったためにフラットになったことによるもので、固体においても丁寧に研磨すると鏡面状 態が得られます。従って、形状による反射率の変化が関わっているので、定量化はむずか しいでしょう。しかし、経験則として、特定の系において、温度とともに目で見て反射に 変化があるのであれば、レーザを当てて反射率を測定し、それを温度に対してプロットし ておき、反射率から温度を推定することには使えると思います。ただ、物質や、条件が特 定された狭い範囲内での実用性はあると思います。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 27 Jul 2004 18:01:01 +0900
    AA:佐藤先生
    大変お忙しい中、愚問にお答え下さり、本当にありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    402. バイポーラトランジスタのhFE(=Ic/Ib)の温度依存性

    Date: Sun, 29 Aug 2004 00:07:43 +0900
    Q: 佐藤教授殿
    大手メーカーM社 山田と申します。
    (数週間前に
    半導体素子の温度依存性に関する質問をさせていただいたものです。)
    貴HPを拝見し、是非お教え願いたいことがあり、メールさせていただきました。
    この春からLSI設計にたずさわっておるのですが、バイポーラトランジスタの hFE(=Ic/Ib)の温度依存性が、半導体物性の教科書を読んでもどうもぴんときません。
    室温~150℃程度で測定する限りバイポーラトランジスタのhFE(=Ic/Ib)が正の温度依 存性を持ちます。
    これはどう理解すればよいのでしょうか?
    お忙しいところ申し訳ありませんが、何卒御教授のほど宜しくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 29 Jul 2004 13:42:15 +0900
    A: M社山田様、佐藤勝昭です。
    メールありがとうございます。
    hFEの温度変化については半導体の教科書に載っていませんね。
    私なりに考えてみました。
    堀田厚生:半導体の基礎理論(技術評論社2000.11)p.110によると、
    hFE=Ic/Ib~(Dn/Dp)(nP/pN)(Lp/WB)
    であたえられます。
    Dnはコレクタからベースに注入された電子の拡散係数、 Dpはベースからエミッタに注入されたホールの拡散係数、nPはベースに注入された電子の 密度、pNはベースに注入されたホールの密度、Lpはエミッタに注入されたホールの拡散長、 WBはベースの幅です。
    Dn/Dpはあまり大きな温度変化はしないでしょう。Lpは温度とともに散乱によって多少は減少するでしょうが、あまり大きくは変化しないでしょう。
    (nP/pN)において、nPもpNも、 nP=nP0 exp(-ΔEa/kT), pN=pN0 exp(-ΔEd/kT)  のように温度とともに指数関数で増大しますが、(nP/pN)の温度変化はexp{-(ΔEa-ΔEd)/kT}となり、アクセプタ準位の方がドナー準位より深 いため、温度とともに指数関数で増大することになります。
    ドナーがリン(P)で、アクセプタがアルミニウム(Al)ならば、活性化エネルギーはΔEa-ΔEd=67-45= 22meVの程度でしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------

    403. アッベの屈折計

    Date: Thu, 29 Jul 2004 22:04:23 +0900
    はじめましてフイルムメーカーのAです。

    物性なんでもQ&Aのサイトを拝見しました。光学に関する質問についても非常に 丁寧に回答されていますので、 私の疑問に答えていただけるのではと思いメールいたしました。

    (質問)アッベ屈折計ではサンプル中を伝播してきた光のうち、プリズム/サンプ ル界面からフィルム側のどれ位の深さまでの情報を測定していることになるのか?

    例えば100μmのフィルム中をフィルム/プリズム界面に平行に光が伝播している とすると、プリズム近傍を伝播している光はプリズム側へ屈折していくが、フィルム/プリズム界面とは逆側 の面近傍を伝播している光はプリズム側には屈折せずそのまま直進していくように思います。

    プリズム側からフィルム側に臨界屈折角を越えて入射した光は、プリズムからフィ ルム側へ波長のオーダー程度しみ込む(エヴァネッセント波)と、光学の本で読みましたが、逆にフィルムから プリズム側に臨界屈折角で入射できる光も波長オーダーの深さまでということになるのでしょうか?
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 30 Jul 2004 01:01:04 +0900
    クリックすると拡大します
    A様、佐藤勝昭です。
     アッベの屈折計として、添付の図(宇都宮大の物理化学実験室のHP)について
    説明します。図では液体ですが、ご質問はフィルムなので、フィルムとして説明
    します。
     プリズムの屈折率がフィルムの屈折率より大きければ、プリズム内に臨界角が
    生じ、プリズム側からフィルム側に臨界屈折角を越えて入射した光は、エヴァ
    ネッセント波としてプリズムからフィルム側へ波長のオーダー程度しみ込みます
    が、これは伝搬光ではありません。(ここに微小な散乱体があると再び伝搬光に
    なりますが・・。)
     アッベ屈折計では、フィルムの屈折率nはプリズムの屈折率Nより大きい場合し
    か測定できないので、臨界角はフィルム側にあります。このため、プリズムにか
    なり平行に近い光までプリズムに入射できます。フィルム側の臨界角を超えた光
    は当然ながらプリズムに入り込めず、このため明暗の境界ができます。





    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 30 Jul 2004 12:21:39 +0900
    Q2: Aです。
    クリックすると拡大
    佐藤先生、早速のご回答ありがとうございます。

    弊社で使用しているアタゴ(株)製のアッベ屈折計ではフィルムの屈折率nはプリズ
    ムの屈折率Nよりも小さな範囲で測定可能となっているので、プリズム内に臨界角が
    生じると思うのですが、間違っているでしょうか?
    フィルム上に載せるテストピースの屈折率ntもフィルムの屈折率nよりも大きいもの
    を選択するようになっています。
    フィルム中のプリズム/フィルム界面をプリズム/フィルム界面に平行に伝播する
    光(上図の青矢印の光)はプリズム側に屈折するというのは理解できるのですが、
    フィルム中のプリズム/フィルム界面から離れたところをプリズム/フィルム界面
    に平行に伝播する光(上図の赤矢印の光)は、果たしてプリズム側に屈折するの
    か? というのが私の疑問です。
    実際にはフィルム中では様々な角度の光が伝播してますが、臨界角でプリズム側に
    屈折するのはプリズム/フィルム界面に平行に伝播する光のはずですよね。そうすると、
    フィルム中のプリズムから離れたところを伝播している光は、そのまま直進してフィル
    ムを通過してしまうのではないでしょうか。

    結局、入射角が限りなく90°に近い光は(フィルム、プリズムの長さが無限大であれ
    ば)全てプリズムに到達するので、プリズム側に屈折することができることになるので、
    フィルムの厚み方向全体の情報を見ていることになるのでしょうか?
    もし、フィルムの厚み方向で屈折率が異なっている場合には、最も高い屈折率を測
    定していることになるのでしょうか?

    自問自答するようなとりとめのないメールになりましたが、コメント頂ければ助か ります。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 30 Jul 2004 17:10:16 +0900
    A2: A様、佐藤勝昭です。
     うかつにもアタゴの屈折率計のことは存じませんでした。フィルムの屈折率nはプリズム の屈折率Nよりも小さな範囲で測定可能となっているので、プリズム内に臨界角が生じる のは正しいと思います。
     頂いた添付図によれば、フィルムに沿って来た光が臨界角でプリズムに入ります。光源 からの光はいろいろの角度成分がありますから90度よりわずかでも小さな入射角の光は プリズムに入ります。またフィルムは散乱があるでしょうから、プリズムから離れたとこ ろを通過する光も一部は散乱を受け残りは透過する成分もあると思います。散乱された光 は90度より小さい入射角で入射しますから「明部」に寄与すると思います。
     赤で書かれたような屈折は起きないと思います。屈折率に厚さ依存性があると、光は湾 曲して入射します。しかし、あくまで、屈折は境界面で起きますから境界面での屈折率が 全反射を決めることになるのではないでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 30 Jul 2004 17:18:16 +0900
    AA: Aです。
    もやもやしていたことが、かなりすっきりしました。
    ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    404. 表皮効果と金属の反射

    Date: Mon, 2 Aug 2004 18:37:28 +0900
    東京農工大工学部
    物理システム工学科教授
    佐藤勝昭 様
    Q1: A社のKです。
    お世話になっております。
    先日はお忙しい中、質問にお答え頂き、ありがとうございました。
    度々申し訳ない限りですが、本日も御教授を頂けないでしょうか。
    質問366において、 電界遮蔽の効果についての説明を拝見しまし た。ここで述べられていた「表皮効果」と「自由キャリアによる反射」 は、どのような関係にあるのでしょうか。
    金属がプラズマ周波数以下で負の誘電率をもち、それに起因して 大きな反射率を示すことを、教科書や先生のHPから勉強させて頂 きました。これが、自由キャリアによる反射だと認識しております。 表皮効果は、電磁波が金属内を進んで行くにつれ、自由キャリア による反射によってどのように減衰していくのかを表していると考 えればよいのでしょうか。
    一般に電磁波遮蔽効果は、表面抵抗率と関連づけられるかと思い ます。
    自由キャリアによる反射率は導電率ではなくキャリア濃度に依存す るため、一見するとややこの議論とずれている印象を受けます。 しかし、自由キャリアによる反射が最表面で100%起こることはなく、 遮蔽材トータルの遮蔽効果では厚みを考慮しなければならない。そ れが表皮効果であり、キャリア濃度だけでなくキャリア移動度も含め た導電率に依存することになる。
    このように考えればよいのでしょうか。
    それとも、表皮効果は自由キャリア反射だけでなく、摩擦項である自 由キャリア吸収、双極子分散なども含めた、トータルの電磁波の減衰 を表しているのでしょうか。
    あるいは、表皮効果はあくまで吸収に関しての指標であり、自由キャ リア反射とは関係がないのでしょうか。
    先回に続き非常に基本的な事項なのかもしれませんが、御教授を頂 ければ幸いです。
    大変御多忙とは存じますが、どうぞよろしくお願い致します。
    --------------------------------------------------------
    Date: Wed, 4 Aug 2004 11:42:34 +0900
    A1: K様、佐藤勝昭です。
     表皮効果は、純粋に電磁気学的に導出することが出来ます。
    マクスウェル方程式より
     ▽×H=∂D/∂t+σE   (1)
     ▽×E=-μ0∂H/∂t   (2)
    ここで、表皮効果を導くときには、次の仮定をしています。すなわち、  「導体中には電束が存在しない」
    これによって、D=0となります。(D=εEですから、ε=0と考えるのです) すると(1)式は
     ▽×H=σE  (3)
    となります。式(2)のrotationをとると
     ▽×▽×E=-μ0(∂/∂t)▽×H
    右辺に式(3)を代入して
     ▽×▽×E=-μ0 σ∂E/∂t  (4)
    左辺は、▽E=0のもとでは、-▽2Eと書けますから、式(4)は  ▽2E-μ0 σ∂E/∂t=0  (5)
    となります。
    ここで、導体の中(z方向)に向かって進む波を考え
     E=E0exp(-iωt) exp(iKz)  (6)
    とおくと、
     -K2E+iωμ0σE=0  (7)
    となり、Kの固有値として
     K=(iωμ0σ)1/2    (8)
    を得ます。i1/2=(1+i)/21/2を入れると
     K=(ωμ0σ/2)^1/2 +i(ωμ0σ/2)1/2  (9) となるので、式(6)に代入すると、
     E=E0 exp(-iωt) exp{i(ωμ0σ/2)1/2z} exp{-(ωμ0σ/2)1/2z}  (10)
    が得られ、距離とともに振幅がexp{-(ωμ0σ/2)1/2z}で減衰することが
    導かれました。skin depthδは電界が1/eになる距離なので、
     δ=(2/ωμ0σ)1/2  (11)
    が導かれました。
    ==============================================
    それでは、光で考えるときはどうなるのでしょうか。
    導体の光学定数として屈折率をn、消光係数をκで表しますと、導体内部における 波動関数は
     E=E0 exp(-iωt) exp(iωnz/c) exp(-ωκz/c)  (12)
    と表されます。
    光学定数n,κと誘電率の実数部ε'、虚数部ε"の間には
     ε'=ε0(n22)  (13)
     ε"=ε0(2nκ)    (14)
    の関係が成立します。表皮効果を導いたのと同じように導体内で電束(の実数部)が0 としますと、ε'=0となりますから、(13)より、n=κです。すると式(14)は
     ε"=2ε0κ2     (15)
    と書けます。逆に解いて、
     κ=(ε"/2ε0)1/2   (16)
     導電率σとします。誘電率の虚数部ε"との間には、ε"=σ/ωの関係がありますから 式(16)は
     κ=(σ/2ωε0)^1/2   (17)。
    ε0μ0=c2の関係を使い、上に述べたようにn=κであることから、
     n=κ=(1/c)(σμ0/2ω)1/2  (18)
    このようにして求められた屈折率と消光係数を式(12)に代入すると
     E=E0 exp(-iωt) exp{i(σωμ0/2)1/2 z} exp{-(σωμ0/2)1/2 z}  (19)
    となり、式(10)と同じ形が導かれました。
     つまり、n=κの条件の下では、光の電界はz=δ=(2/σωμ0)1/2だけ進むと1/eに減衰します。
    ================================================
     従って、表皮効果は、電磁波がε'=0であるような導体に入ったときに電界が1/eになる距離と考えられます。
    この条件での反射率はどうなるのでしょうか。電界に対する振幅反射率rは
     r=(ε0-ε^1/2)/(ε01/2)  (20)
    ここでε=ε'+iε"=iε"を代入すると、
     r=(ε0-i1/2 ε"1/2)(ε0+i1/2 ε"1/2)={ε0-(1+i)(ε"/2)1/2}/{ε0+(1+i)(ε"/2)1/2}
    光強度反射率はR=|r|2=r* rで与えられるので
     R=[{(ε0-(ε"/2)1/2}2+ε"/2]/[{(ε0+(ε"/2)1/2}2+ε"/2]  (21)
    もし、ε"=0ならR=1 (100%)となります。ε"=σ/ωなので反射率そのものは
    導電率に関係します。
     ここまでの話では、誘電率とか導電率しか出てきません。
    これをキャリア数や移動度に結びつけるのはミクロな考察によるものです。
    Drudeの式においては、
     ε'=ε0{1-ωp2/(ω2+1/τ2)}    (22)
     ε"=ε0 ωp2/ωτ(ω2+1/τ2)    (23)
    ε'=0の条件は、ミクロに(古典電子論的に)見れば、ω=ωp(プラズマ振動数)において成立します。従って、自由電子反射のonsetにはキャリア密度のみが関係します。
    自由キャリア反射の起き始める位置はこのωpですが、
     ωp=(Ne2/mε0)1/2      (24)
    となり、τに関係しません。直流導電率σ0
     σ0=Neμ=Ne×eτ/m=Ne2τ/m  (25)
    なのでωpを使って書くと、
     σ00τωp2 (26) となります。
     従って反射率の値そのものには、導電率が関係し、プラズマ周波数にはキャリア数が関係するとご理解下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 11 Aug 2004 11:54:59 +0900
    佐藤勝昭 様
    Q2: A工業のKです。
    お世話になっております。
    先日は質問に御回答頂き、ありがとうございました。
    お礼が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。
    恥ずかしながら、数式と概念の理解に非常に苦しんでおりました。
    また何点か、お尋ねさせてください。
    (1) 表皮効果を導くときには「導体中には電束が存在しない(ε=0)」との仮定 をするとのことですが、これには妥当性があるのでしょうか。
     論理的には式(1)~(11)の議論の中でこの仮定を用いているのは(1)→ (3)の変形のみであり、「導体については式(1)の第1項の寄与は第2項に比 較して小さい」と考えればよいことはわかります。
     これは、導体に電界が到達した際、そのほとんどは表面で反射され内部に 入り込めない。そのため導体内部の電束は0とみなせるということでしょうか。 だとすれば、導体の場合、表皮深さは反射率が高いことを前提として導か れているのでしょうか。

    (2)式(21)について、導電率が反射率に関係していることはわかります。 この式によれば、導電率が高くなれば(σ→∞)反射率が1に近づきますが、 逆に導電率が0に近づいても反射率は1になってしまいます。「ε"=0ならR=1 (100%)」とはまさにこの状況だと思いますが、これはどう理解すればよいの でしょうか。

    (3) 回答中で用いられていた「ε"=σ/ωの関係」は、一般に成立するのでしょ うか。
    ε'=n^2-κ^2、ε"=2nκ、あるいはα=1/δといった関係式から導かれる のでしょうか。

    非常に基礎的なことばかりお尋ねしてしまい、心苦しい限りです。 理解の進まぬ我が身が情けない限りですが、よろしくお願い致します。

    では、失礼致します。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 11 Aug 2004 14:21:41 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭(ICCG14参加のためGrenoble滞在中)です。
     手元に資料がないので。お答えできる範囲でお答えします。
    (1) 電磁気学で表皮効果を考えているのは、光に比べ周波数の低い範囲で扱っ ています。また、Drudeの式のような電子論に基づいているのではなく、概念 的なものです。電束密度Dが導体中では存在しないとa prioriに仮定している のです。電子論的には、ε'=0は厳密にはω=ωpでしか成り立たないので、ω <ωpではEとは逆符号のDが存在するのですが、「表皮効果」を議論した「高周 波工学」の人々の間では、負の誘電率の概念はなかったのではないかと思いま す。従って、skin depthを吸収係数αの逆数と定義し直せば 正確かもしれま せんが、どのみち、どの程度電磁波が入り込むかの目安なのですから、昔なが らのskin depthの定義でもよいのではないかと思います。
     これ以上つっこまれても、高周波工学と波動光学という別々のアプローチで 進められたものですから、お答えのしようがありません。定義の仕方の問題で あると、思ってください。

    (2)σが大きくても小さくても反射率が100%というのは、インピーダンス マッチングという見方をすれば理解できます。線路インピーダンスZ0の 分布定数回路において、終端を開放しても、短絡しても反射が最大になるのと 同じことです。

    (3) σとεの関係は、Maxwell方程式において、
    ▽×H=∂D/∂t+Jにおいて
    J=0として、伝導電流によるσを誘電率のなかに押し込めたことによるもので す。
    exp(-iωt)の型の電界を考えますと
    上式の右辺を書き直すと、
    ∂D/∂t+J=-iωεE+σE=-iω(ε+iσ/ω)
    と書けますね。ε+iσ/ω=ε'+iε"と書き直し改めてこれをεとおけば、 Maxwell方程式は、▽×H=ε∂E/∂tとなり、簡単になります。
    この概念を拡張し、導電率も複素数にすれば、一般に、複素誘電率との間に ε=ε0+iσ/ω
    が成立します。
    詳しくは、拙著「光と磁気」をご覧ください。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 11 Aug 2004 18:26:00 +0900
    AA: A社Kです。
    お世話になっております。
    外出先より御丁寧なお返事、ありがとうございます。
    これより外出のため、まだ御返答を熟読しておりませんが、 じっくりと勉強させて頂きます。

    取り急ぎ、お礼申し上げます。
    ありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------

    405. 42合金への銀メッキ

    Date: Thu, 05 Aug 2004 13:34:30 +0900
    Q: はじめまして。R社のKと申します。
    下記質問内容に関するヒントをインターネット上で探していて、 “物性なんでもQ&A”のサイトを拝見しました。
    もしかすると弊方の疑問に答えていただけるのではと思いメール いたしました。
    (質問)
     ・約0.2mmの42Alloy材の金属板に銀めっき(めっき厚み約5μm)された
      ものを280℃程度に加熱しながら、SUS304の金属板で両側から挟みこん
      で20秒程度加圧し、挟み込みを開放しようとすると、どちらかのSUS板
      に上記42Alloy板がくっついてしまいある程度の力をかけないと剥がれ
      ない状況があるのですが、その際の密着のメカニズムが知りたいのです
      が?
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 5 Aug 2004 17:42:57 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     金属工学は専門分野ではありません。一般論でお答えします。
    42Alloyは42Ni-58Fe合金、SUS304は(100-x-y)Fe-(x)Cr-(y)Ni(x=18-20,y=8-10)合金です。
    AgはFe, Ni, Cr等とは非固溶ですから、Ag-42Alloy, Ag-SUS304の間には固溶体は作らな いのではないかと思います。Agは軟らかい金属なので、加熱加圧したことにより塑性変形 し、42AlloyやSUSの表面の凹凸にぴったりと入り込んで、機械的に圧着したのではないで しょうか。
    -----------------------------------------------------------------------------

    406. ITOの密着度

    質問者の希望により削除しました。(2007.12.20)
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 9 Aug 2004 02:46:22 +0900

    407. 金属はなぜさびる

    Q: はじめまして!私は、福岡にある美容系の専門学校に通っている山田と申し ます。19才です。
    先生のHPを開いたところきっと素晴らしい回答が聞けるのではないかと思い メール致しました!!
    内容というのは・・・学校も夏休みに入ったのですが、宿題が出されたので す。『身近な問題を考えよう!』というテーマで~金属はなぜさびるのか?~と いうのを考えなければならないのです。。。
    物理的な知識など全くない私にはさっぱりわかりません。お忙しいでしょうが、 《金属はなぜさびるのか》是非教えてください!!お願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 9 Aug 2004 13:25:29
    A: 山田さん、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aは、宿題には直接お答えしないことになっていますが、あなた は、全く勉強してこなかったようなので調べるためのヒントを差し上げましょ う。これは、「物理」の問題ではなく「化学」の問題です。高校の化学の教科 書をお持ちですか。もっていなければ、友達に貸してもらいましょう。
    (1)まず、問題に出た「金属」とはどんな物質でしょう。
     固体の物質を「金属」、「セラミクス」、「有機物」に分けたとしますと、 セラミクス(陶器、石膏、大理石など)や有機物(プラスチックなど)は、さび ないですよね。セラミクスは、主として酸化物(酸素との化合物)です。有機 物は炭素と水素などからなる化合物です。これに対し、金属は、鉄も銅も単体 の元素です。単体の元素の中には炭素のように「非金属元素」がありますが、 酸化すると2酸化炭素ガスになり「さび」になりません。
     鉄や銅のほかに金属に分類されるものがたくさんあります。高校の教科書に 「元素の周期表」が乗っていますから、元素のなかで金属に分類されているも のを調べておきましょう。(なお、周期表はネットでも見ることができま す。Yahooで検索してご覧なさい。)
    (2)次に、「さびる」とはどんなことを指すのでしょう。
     鉄でできた包丁や鉄板がさびると、赤や黒の物質(鉄さび)ができます。こ の物質の正体は、酸化鉄や水酸化鉄です。酸化鉄とは、鉄と酸素が結びついた 化合物です。水酸化鉄は鉄と水酸化物イオン(OH-)が結びついたもので す。OH-は水H2Oに含まれます。単体元素である鉄が、酸素や水と反応してでき たのが鉄さびなのです。
     酸素や水はどこからきたのかは、おわかりですね。
    (3)金属でもさびにくいものがあります。
     金属がすべてさびやすいわけではありません。金や、プラチナはさびないで すね。これらの物質は、酸素とむすびつくのに大きなエネルギーが必要だから です。逆に鉄はさびるときにエネルギーを出します。(ホカロンには鉄粉が含 まれていて、さびるときに熱を出すのです)参考まで。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 11 Aug 2004 02:46:17 +0900
    AA: 佐藤先生こんばんは
    質問に対しての先生からの大ヒントを何度も読み返していくうちに少しずつですが、 答えが出てきそうな気がしています!!!今からヒントを元に調べていきたいと思っ ています。本当にありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------

    408. 拡散反射を用いたバンドギャップ算出

    Date: Wed, 11 Aug 2004 02:41:05 +0900
    Q: 佐藤先生
    K大学M2のKSと申します(専攻は材料系です)。
    先生のHPを拝見し、今回質問させていただきました。
    現在、粉末試料の拡散反射スペクトルから、バンドギャップの算出を試みています。反射スペクトルは積分球を 用いた分光光度計で測定しています。

    測定した反射率Rdから、Kubelka-Munkの式 K/S = (1-Rd)^2/2Rd(K:吸収係数、S:散乱係数)を用いてバンドギャップを算出しよう と思っているのですが、この際の計算法の詳細がわかりません。教科書では、線吸収係数αを用い、直接遷移ならば(αhν)^2 を、 間接遷移ならばα^1/2をhνに対してプロットする、と書かれています。しかし、Kubelka-Munkの式で算出したKは、線吸収係数とは 異なり、長さの情報を含んでいません。αの代わりにK/Sの値を用いて、(K/S・hν)^2、あるいは(K/S)^1/2をhνに対してプロット する方法は原理的に正しいのでしょうか?

    この質問は先生のHPの「積分球を用いた拡散反射」に出ていたものと同じなのですが、ここでの先生の回答は、「積分球を用いて 吸光度を測るのは、粉末試料のときは有効ですが、薄膜についてはお薦めできません。(hνα)^2 vs hνなどのプロットでバンド端 をきめる場合には、吸収係数測定のlinearity が保証されていなければなりませんが、一般には、拡散反射から測定された吸光度 のlinearityは余りよいとは言えないのです。」となっています。これは、「linearityが保証されていて、かつ粉末試料であれば、 αの代わりにK/Sを用いたプロットをしても、原理的にはOK」という解釈でよろしいのでしょうか?
    仮に正しいのであれば、これについて述べられている教科書、あるいは文献をご存知ないでしょうか(私も現在色々と調べているのですが、 手がかりが見つかりません)。
    間違っているのあれば、拡散反射法による粉末試料のバンドギャップ算出について、正しい方法を教えて頂けないでしょうか?
    お忙しいところお手数ですが、なにとぞよろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 12 Aug 2004 04:21:41 +0900
    Q: KS様、佐藤勝昭(ICCG14のためGrenoble滞在中)です。
     光散乱の扱いについてのKubelka-Munkの式は1931年に最初に論文にされたも のです。旅先なので資料がないのですが、もっと厳密にはDORT2002という解析法を使う とよいのです。Kubelka-Munkの式の導出法および、DORT2002の説明と、K-M式の適用範囲 については、Per Edstrom(Mid Sweden University)のWeb siteをご覧になってご自身 でよく考えてください。
    http://home.tnv.mh.se/per-edstrom/research/publications/r_03_46.pdf
     拡散反射のKubelka-Munkの式については、
    http://147.46.41.146/~lii/DRIFT.htm
    を参照してください。適用限界が書いてあり、R<30%では直線性が保証できないと書かれ ています。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 13 Aug 2004 01:16:29 +0900
    AA: 佐藤先生
     出張先からわざわざ回答いただきまして、どうもありがとうございました。
     ご提示いただいたWebsiteを見て、これから検討しようと思います。

     また、質問させていただくかもしれませんが、そのときはよろしくお願い致します。
      -------------------------------------------------------------------------

    409. 鉄、アルミ、ステンレスの熱膨張

    Date: Fri, 13 Aug 2004 08:39:29 +0900
    私は、建築金物の設計、取付作業に従事している者です。
    特にここ最近は手摺に関わることが多くなりました。
    手摺といえども材料は雑多で、取付ける時に、熱膨張によるギャップ をいくらにするかでいつも頭を悩ませています。
    なにか簡単な計算方法等あれば、ご紹介ください。
     私は、以前先輩に聞いた「鉄は気温32度で10mで4mm伸びる」 というのそのまま使用しています。
    鋼材は6m、ステンレスは4mが定尺なのでギャップを2mmにすることが 多いのが現状です。
    寺西 良文
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 13 Aug 2004 14:56:29 +0900
    A: 寺西様、佐藤勝昭(フランス滞在中)です。
    メールありがとうございました。
    熱膨張係数の定義は、1℃あたりの伸びを0℃における長さで割った比率で す。データは、出典によって幅がありますが、次の値が標準的なものです。
    金属名熱膨張係数(E)
    鉄(Fe)11.8×10^-6
    アルミ(AL)23.1×10^-6
    ステンレス12×10^-6
    従って、L[m]の金属(熱膨張係数E)が0℃からT[℃]になったときの伸びは
     E×L×T [m]
    で与えられます。
    10mの鉄やステンレスが0℃から32℃になったときは、
      12×10^-6×10×32=3.8×10^-3[m]=3.8[mm]
    となり、先輩に教わったとおりです。
    アルミであれば、その2倍程度であることがわかります。
    ご理解頂けたでしょうか。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 5 Sep 2004 22:16:08 +0900
    AA: 先日は御親切なメールありがとうございまいした。
    おかげさまで、手摺の施工要領書を完成させることができました。
    千葉市に来秋完成予定の、サッカースタジアムがあります。
    私はその現場で手摺の施工管理をしております。
    本当に、ありがとうございました。
    寺西
    ----------------------------------------------------------------------

    410. フロロシリコン

    Date: Sat, 14 Aug 2004 10:27:28 +0900
    Q: 佐藤 先生
    初めてメールさせて頂いています。HPを見ての質問です。
    弊社は「液体中の微量金属を測定するモニター」を開発しているベンチャー企業で す。
    質問は「フロロシリコン」についてで(<フロロシリコン>と言うキー ワードではInternet検索が出来ませんでした)
    特に、組成、作り方、物性、メーカー等が判れば有難いのですが・・・
    宜しくお願い申し上げます。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 14 Aug 2004 14:24:33 +0900
    A: A社N様、佐藤勝昭@Grenobleです。
     旅先で資料がないのですが、ご質問のフロロシリコンは、フッ化珪素のこと で、英文ではfluorosiliconと綴る化学物質です。
     特に4フッ化珪素(tetrafluorosilicon)SiF4は、光ファイバーの製造、半導 体のプロセス、高圧用絶縁物などとして広く使われていると存じます。商品に ついては三井化学などにおたずねになってはいかがでしょうか。
     化学物質の検索には「化学便覧」を参照されることをおすすめします。特 に、「液体中の微量金属を測定するモニター」を開発しておられる御社なら、 当然手元に置いておかれるべき書物かと存じます。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 14 Aug 2004 23:02:17 +0900
    AA: 東京農工大学共生科学技術研究部ナノ未来科学拠点
    教授 佐藤勝昭 様
    A社のNです。
    旅先から早速ご返信頂きまして有難うございます。
    現在自宅におりますので、出社したら「化学便覧」を調べてみます。
    また「florosilicon」でも、ある商品がヒットしたので、「fluorosilicon」で あることを、ついウッカリしていました。
    なお、三井化学のHPから探し出せませんでしたが、シリコン関連メーカー、 例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン㈱等には製品がありましたので 問い合わせました。
    アドバイスを有難うございました。今後とも宜しくお願い申し上げます。 先ずは御礼とご報告まで。
    -------------------------------------------------------------------

    411. シリコンウェハーの赤外線スペクトル

    Date: Tue, 17 Aug 2004 19:36:36 +0900
    Q1: 東京農工大学
    佐藤 勝昭 教授殿
    K大学工学部でポスドクをしているTと申します。(Webへのアッ プの際は、申し訳ないですが匿名にてお願いします。)
    現在、高分子の光反応による屈折率制御について研究しております。シリコンウェハー 上に材料のフィルムを形成し、光照射に伴う屈折率の変化を測定していますが、光反 応の進行を直接得る方法を模索していました。先日シリコンウェハーなら赤外線があ る程度透過するということを耳にしました。そこで、シリコンウェハー上にフィルム を形成してIRスペクトルを測定してみると材料に帰属できるスペクトルを得ることが でき、光反応の進行と共に変化が見られました。ただし、s/nがあまり良くありませ ん。
    さて、シリコンウェハーにはいくつか種類があるようですが、p-type、n-typeの違い と(100) と(111)の違いによってもシリコンウェハー自体の赤外線の吸収スペクトル は異なるのでしょうか?1600cm-1付近での吸収がなるべく少ないウェハーが好ましい のです。もしご存じであれば教えていただけないでしょうか?もしくは、参考となる ような文献等を紹介頂けると大変助かります。
    かなり都合の良い質問で甚だ失礼ではありますが、よろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 19 Aug 2004 01:42:50 +0900
    A1: T様、佐藤勝昭です。
     シリコンを選ぶ理由は赤外の透過性を考えてのことでしょうか。
    スペクトルのS/Nが悪いということですが、いくつかの原因が推定されます。
    ・薄膜は膜厚が薄いので吸収係数が大きくてもトータルの吸収量が小さいのに対 し、基板は厚いのでにわずかな吸収係数の要因があっても総吸収量は薄膜に比べて 大きくなってしまいます。
    (1)シリコンは屈折率が3程度と高いので、高分子膜との間での反射を考える必 要があります。高分子の膜の屈折率は1.5程度で、高屈折率のものでも1.9程度で す。今、シリコンの吸収を全く無視したとして、屈折率2の膜と屈折率3のシリコン の界面での反射率はR=(n1-n0)^2/(n1+n0)^2=(2-3)^2/(2+3)^2=1/25=4%に過ぎません が、膜と空気の間では、R=(1-2)^2/(1+2)^2=1/9=11.1%、シリコンと空気の間では、 R=(1-3)^2/(1+3)^2=1/4=25%だけの反射があります。反射でかなり光を損しているの です。
    (2)シリコンは両面研磨されていますか?通常のシリコンウェハーは片面研磨なので、裏面は凹凸があります。これにより光が散乱されます。両面研磨のシリコン 基板を使う必要があります。
    (3)フォノンによる吸収:純粋なシリコン結晶でも500-1200cm-1にかけて2フォ ノン吸収が見られます。不純物が入った場合、局在フォノンモードによる吸収が見 られます。これも 500-1200cm-1にかけて見られます。
    (4)自由キャリアによる吸収、高濃度のドナーを含むシリコンウェハーでは、自 由電子吸収による吸収が見られます。これは低波数に行くに従って増大します。 例えば 6×10^18cm^-3の濃度のn型シリコンの1900cm-1における吸収係数は2×10^ 2cm^-1もありますから、分厚いウェハーだと、膜の吸収に比べてかなり大きな吸収 量になります。なるべくキャリア数の少ないものが望まれます。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 19 Aug 2004 09:48:34 +0900
    Q2: 佐藤先生
    ご丁寧な御回答本当にありがとうございます。

    >  シリコンを選ぶ理由は赤外の透過性を考えてのことでしょうか。

    いいえ。本来石英ガラスを使用したいところですが、屈折率測定をエリ プソメーターで測定するためシリコンを使っています。 界面での反射は致し方ありません。

    先生の御回答から判断すると、薄くて両面研磨されていてキャリア数の 少ないウェハーが好ましいということですね。
    キャリア数の少ないというのは具体的にはどのようなものなのでしょう か?現在、株式会社ニラコのウェハーをしようしています。そのカタロ グには下記のようなウェハーが記載されています。
    Wafer 99.999% (one-face polished)
    <Item No><Orientation>
    SI-500439p-type high (111)
    SI-500444p-type low (111)
    SI-500440p-type low (100)
    SI-500446p-type high (100)
    SI-500441n-type high (111)
    SI-500452n-type low (100)
    SI-500443n-type low (111)
    SI-500445n-type high (100)
    この中でどれが最も吸収が少ないと考えられますか?
    非常にお忙しいと存じますが、再びお答え頂けると幸いです。
    よろしくお願い致します。
    ------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 19 Aug 2004 10:34:37 +0900
    A2: 田中様、佐藤勝昭です。
     p-type high などのhighは高濃度を意味するのか高抵抗を意味するかで判断が異 なります。どちらを意味するかはNilacoにお問い合わせになっては如何でしょう か。ドーピング濃度ならば低濃度のもの、抵抗なら高抵抗のものをお求め下さい。  pとnのどちらがよいかですが、高抵抗のものではどちらでもよいと思います。 また、結晶方位はエッチング特性やエピタキシャル成長を考える場合は重要です が、光学的にはあまり大きな違いはないでしょう。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 19 Aug 2004 21:08:19 +0900
    佐藤先生

    ご返答ありがとうございます。早速Nilacoに問い合わせてみます。
    このたびは大変お世話になりました。感謝致します。
    T
    --------------------------------------------------------------------

    412. アルゴンガスの飽和水蒸気量

    Date: Thu, 19 Aug 2004 21:18:10 +0900 Q: 佐藤先生

    はじめまして,私はC社に勤務しております
    Hと申します(匿名でお願いします)
    . HPを拝見しましてお知恵を拝借できればと思いメール致しました.

    現在,溶接時の酸化防止のためにアルゴンガスを用いているのですが, 配管内に水があって抜けない場合には,空気をアルゴンガスで置換して も水蒸気が溶接に悪さをします.そこでその影響を調べるために,常温 でのアルゴンガスの飽和蒸気量がいかほどかを調べておりますが,全く 分かりません.湿り空気線図のように湿りアルゴン線図?なるものはあ るのでしょうか?

    お忙しいところお手数ですが、なにとぞよろしくお願い致します。
    -----------------------------------------------------
    Date: Tue, 24 Aug 2004 22:37:56 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     お返事が大変遅くなり申し訳ありません。
    基本的には、ガスが空気であろうがアルゴンであろうが、混合気体においてはそれぞれの 分圧で考えればよく、水の蒸気圧は温度と圧力で決まるのですから、湿り空気線図と湿り アルゴン線図は変わらないのではないかと思います。
     細かいことを言うと、空気とアルゴンでは水に対する反応性が違うので全く同じではな いでしょうが、第1近似では同じと考えてよいでしょう。このことは、化学工学の専門家 に確かめました。
     http://www.mathtrek.com/contents/gvtut.html
    によりますと、
    空気以外の気体(N2,O2,H2,He,Ne,Ar,Kr,Xe,CO2,C2H4)と水の混合系については、 V.A.Rabinovich, V.G.Beketov: Moist Gases:Thermodynamic Properties (Begell House Inc)という本に載っているそうです。なお、この本は誤りがあるので、P.T.Eubank:J. Chem.Eng.Data 42 (1997) 412-413も参照するようにと書いてあります。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 26 Aug 2004 20:24:46 +0900
    佐藤先生
    C社のHです.突然のメールでの質問にお答え頂き本当に有り難うございます.

    湿り空気線図は知っていましたが,アルゴン中の蒸気量??で分からなくな っていました.気体中(空気でもアルゴンでも)の水蒸気量は水の蒸気圧で 決まると理解しました.基本に戻ってよく考えることが重要だと思いました.

    どうも有り難うございました.また質問させて頂くことがあると思います.
    その節にもよろしくお願い致します.
    ---------------------------------------------------------------------

    413. 自然酸化膜につて

    Date: Wed, 25 Aug 2004 15:32:31 +0900
    Q: 佐藤先生
    G社上山と申します。お世話になります。
    物性なんでもQ&Aには色々役立つ情報があり、よく活用させて頂いております。
    アモルファスシリコンデバイスの不良解析において、自然酸化膜による導通不良について調べております。
    結晶シリコンの自然酸化膜については文献情報で解るのですがアモルファスや微結晶シリコンにおける 自然酸化膜については殆ど記載されておらず困っています。
    具体的には、大気中、純水中での自然酸化膜や、薬液中での化学酸化膜の形成においてアモルファスシリコンと微結晶シリコンでは、その酸化膜の構造や膜厚に差はあるのでしょうか?
    特に硫酸過水のような強い酸化力をもつ液中での酸化膜形成についての知見が得られましたら助かります。

    以上、ご回答の方、宜しくお願い申し上げます。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 26 Aug 2004 13:41:41 +0900
    上山様、佐藤勝昭です。
     ご質問の件については、私は専門外なので、本学越田教授に伺いましたとこ ろ、体系的な研究はないそうです。
     アモルファスシリコンは水素化されているので、自然酸化膜は非常にできに くいと考えられます。一方、微結晶シリコンでは、経験的に酸化は0.3nm程度 で自動停止し時間とともに酸化が進むことはないということです。
    ---------------------------------------------------------------------

    414. 1次元の箱に閉じこめられた質量mの粒子の運動量

    Q: 私は社会人学生でインターネットで調べてものがあってこちらのアドレスを拝見してメールしました中島弘樹です。

    大変申し訳ないのですが。少し質問があるのですが、よろしいでしょうか?

    長さLの1次元の箱に閉じこめられた質量mの粒子の運動量の期待値はいくらになるのでしょうか?

    運動量2乗の期待値<p2>が運動量の期待値の2乗に一致しないのなら、その理由を考えよ!と言われたのですが、「一致する。」でいいのでしょうか?
    運動量のバラツキ(Δp)=(運動量二乗の期待値)の平方根の2倍により求めると、h/Lになり、位置のバラツキ(Δx)は、箱の長さに等しいことから、ΔxΔp=hになりました。これを不確定性原理の内容と比較検討せよ。と言われたのですが、どのように書いたらよいのかよく分かりません。
    以上、2つの質問なのですが、よろしくお願いします。
    すみませんがよろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 27 Aug 2004 17:23:52 +0900
    A: 中島様、佐藤勝昭です。
    1次元の量子力学の演習問題ですね。
     x=0とx=Lにおいて境界条件ψ=0を適用すると、ψ=sin(πx/L)が固有関数になると考え られます。sin(πx/L)は、正の方向に進む波c exp(iπx/L)と負の方向に進む波c* exp(-iπx/L) の合成です。[なぜなら、sinθ=(exp(iθ)-exp(-iθ))/2iです。] 正の方向に進む波c exp(iπx/L)による運動量p=-i(h/2π)∂/∂xの期待値を計算します。 ここにcは規格化の定数で0L|Ψ|2dx=|c|2 L=1よりc=1/L1/2となります。 運動量pの期待値<p>を求めるには、運動量の演算子-i(h/2π)∂/∂xについて
    ψ*とψではさんで0からLまで積分すればよろしい。
    すなわち
    <p>=-i(h/2π)∫0L ψ*(∂/∂x)ψdx=-i(h/2π)|c|2 (iπ/L)∫dx=h/2L
    となります。
    一方、負の方向に進む波exp(-iπx/L)の運動量p=-i(h/2π)∂/∂xの期待値を求めると-h/2Lです。 従ってトータルの運動量はゼロになります。[波動関数としてψ=sin(nπx/L)を使って期待値を計算しても、pの期待値はゼ ロになります。]
     Δpの期待値はp^2の期待値からpの期待値の二乗を引いたものの平方根の2倍と定義し ますとΔp=h/Lとなります。従って、答は「一致しない」が正しいのです。理由は、いわ ゆるゼロ点振動を行っているので平均値は0でも運動量の不確定性は残るのです。
     ΔxΔp=hとなりますが、不確定性原理では、ΔxΔp≧hなので、いまのケースはその極 限の場合になっているのです。
    運動量pの期待値<p>を求めるには、運動量の演算子-i(h/2π)∂/∂xについて
    ψ*とψではさんで0からLまで積分すればよろしい。
    すなわち
    <p>=-i(h/2π)∫0L ψ*(∂/∂x)ψdx=-i(h/2π)(1/L1/2)2 (iπ/L)∫dx=h/2L
    となります。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 27 Aug 2004 18:21:39 +0900 (JST) Q: 返信ありがとうございます。一度、先生の解説を見ながら計算して考えていきたいと思います。
    また、分からないところが出てきたときは、質問してしまうかもしれませんが、
    そのときはよろしくお願いします。ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 29 Aug 2004 02:28:13 +0900 (JST) Q: 度々すみません。中島です。 <p>=0 <p2>=h2/(4L2)に無事になりました。 では、なぜ、運動量の期待値の2乗は、運動量2乗の期待値に一致しないのですか?その理由が知りたいのですが。
    ΔxΔp=hになりましたが。理由は、「ゼロ点振動を行っているので平均値は0になっても運動量の不確定性は残るためです。また、ΔxΔp=hとなるが、不確定性原理では、ΔxΔp≧hになる、今回の場合は、その極 限の場合になているため。」という結果と不確定性原理との比較検討でいいのでしょうか?
    よろしくお願いします。  中島 弘樹
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 29 Aug 2004 14:03:32 +0900
    A: 中島弘樹様、佐藤勝昭です。
     運動量の期待値というのは観測される運動量です。粒子は箱の中に閉じ込められ ているので当然運動量の期待値はゼロです。しかし、量子的には、零点振動で右 (正方向)に左(負方向)に運動しています。運動量の2乗をとると、正であろう が負であろうが正になりますから、加えるとゼロにならないのです。
     不確定性原理との比較の答えは、あなたの先生がどこまで期待しておられるかに よります。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 29 Aug 2004 15:15:22 +0900 (JST)
    中島です。
    「ΔxΔpがなぜ極限の値hをとり、hより大きくならないのか?」という理由はどうしてなのでしょうか?
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 30 Aug 2004 13:17:17 +0900
    中島様、佐藤勝昭です。
     無限大の障壁をもった井戸型ポテンシャルに閉じこめられた場合がもっとも不確定性の 少ない極限になっており、たとえば障壁の高さが低く波動関数がしみ出しているような場 合には不確定積がhより大きくなります。ΔxΔp≧hは数学的に成り立つもので、式の意味 するところで重要なのは「hより小さくならないこと」です。
    --------------------------------------------------------------------------------
      

    415. 合金の仕事関数

    Date: Tue, 24 Aug 2004 15:55:04 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤勝昭先生
    N社のOと申します。
    いつもHPを拝見させて頂いております。
    小職、これまでQ&Aを拝読するばかりでしたが、質問させて下さい。
    合金の仕事関数の値について調べています。
    任意の組み合わせおよび組成の合金の仕事関数を計算で見積もることは 可能なのでしょうか。
    例えば、仕事関数が5 eVと4 eVの金属が原子比1:1の組成の2元系合金の 仕事関数が4.5 eVになるといったような加成性が成り立つということは あるのでしょうか。
    お忙しいところ申し訳ありませんが、何卒ご教示の程宜しくお願い致します。

    なお、Webにアップする際は会社名・名前とも匿名でお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 26 Aug 2004 20:35:52 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     結論から先にいえば、合金の仕事関数を両端の金属から見積もることは簡単ではありま せん。仕事関数が5 eVと4 eVの金属が原子比1:1の組成の2元系合金の仕事関数が4.5 eVになるといったような加成性が成り立つ系もあるかも知れませんが、一般にはバンド構 造においてフェルミ面がどこに来るかという問題なので、たとえば、LDA-CPAのバンド計 算で合金のバンド構造をきちんと出してそれから見積もるしかありません。また、Fe(bcc) とCo(hcp)の合金では結晶構造が変わりますから簡単ではありません。Fe-Co合金の磁気モ ーメントでも組成に対する線形性はなく、途中にピークを示します。途中組成で、金属間 化合物がができる場合もあります。おそらくcase by caseではないでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 27 Aug 2004 15:04:18 +0900
    AA: 東京農工大 佐藤勝昭 先生

    早速のご回答ありがとうございました。

    素人ながらに一見、大まかには加成性が成り立ちそうな勝手なイメージを想定していました。
    私もそれからいろいろと調べてみましたが、確かに加成性が成り立ってそうなものもあれば、そうでないものもあり、 それぞれの純金属のFermi準位上の状態密度の比によって加成性から外れると記している文献も見ました。
    先生のご回答からも、このことはなかなか一筋縄ではいかなさそうな実感が持てました。
    丁寧なご回答ありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    416. IH加熱に適した鍋材

    Date: Wed, 18 Aug 2004 15:23:58 +0900
    Q: いつも佐藤研究室のHPを楽しく拝見させて頂いております。
    私は、某金属会社に勤める鈴木と申します。
    誰にも聞けなく、普段より疑問に思っている誘導加熱について質問させてい頂きます。

    最近IH調理器と称して、誘導加熱を応用した調理器が発売されておりますが、メーカによれば、これに使用 される鍋の材質は、固有抵抗値の高いステンレスが良いとのことです。銅やアルミでは抵抗値が低く適さな いとのことです。
    私の浅い電磁気学的な知識ですと、ステンレスでは、抵抗値が高いため、渦電流が小さくなり、温度上昇が 低く抑えられてしまい、加熱には向かないような気がします。むしろ、銅やアルミの方が適するのではないか と考えておりますが、構造上の違いの認識違いなのかご意見頂ければ幸甚に存じます。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 19 Aug 2004 00:24:12 +0900
    鈴木様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。
    ご指摘のとおり、高周波の交流磁界を金属板に垂直に印加したときに導体に流れる 渦電流の電流密度は、誘導起電力を比抵抗で割ったものとなっています。従って、 低抵抗の導体においては、大きな渦電流密度が得られます。従って、トランスにお いて高抵抗のフェライトのコアは抵抗の低い鋼板のコアに比べて渦電流損が少ない といわれています。
     それでは、極端に考えて、抵抗ゼロの金属を考えますと、渦電流が永久に回り続け 減衰しませんが、それでは、発熱がありません。  IH鍋における高周波の渦電流損失を考える場合には、表皮効果による表皮抵抗での発熱を考える 必要があります。高周波が浸入できる表皮厚さ(skin depth)δは
      δ=(2ρ/ωμ)1/2 
    で表されます。ここでωは各振動数、ρは比抵抗です。
    なんでもQ&ANo.247にありますように、渦損失kμωに表皮厚さδをかけたものが表 皮抵抗RsですからRsはk(2ρωμ)1/2に比例します。
    通常、渦電流が定電流源から供給されると仮定し、電力損失は表皮抵抗Rsに比例するので、 比抵抗の平方根に比例するとして解析され、比抵抗の高い材料がIH鍋に適しているとされています。
    ------------------------------------------------------------------------------

    417. 炭素繊維の透磁率

    Date: Fri, 27 Aug 2004 13:03:05 +0900
    国立大学法人東京農工大学
    佐藤勝昭先生

    Q: 拝啓、残暑の候益々ご清祥の事とお慶び申し上げます。
    日本応用磁気学会事務局様よりご紹介賜り失礼ながらメールにてご教示をお願い申し 上げます。
    弊社は、東レの炭素繊維複合材料などを取り扱っております。
    今般、電波利用民生機器メーカー様より炭素繊維複合材料(マッチ棒大)をアンテナ として用いたいが炭素繊維の透磁率を知りたいとのご質問がございました。
    東レでも炭素繊維の透磁率のデータを有しておりませんので誠に失礼ながらご教示を お願い致しました次第でございます。
    尚、本アンテナでは長波帯の受信を想定しております。
    ご多忙とは存じますが、関係書籍、論文等ご教示賜りますようお願い申し上げます。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 27 Aug 2004 13:38:41 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     炭素は反磁性で磁化率χは非常に小さい負の値(10-5の程度)をとるので、比透磁率 μr=1+χは1としてよいと思います。
    ただし、複合材料とのことで、もし、強磁性の金属が複合されているようでしたら、大きな値を もつ可能性があります。何が複合されているのでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 27 Aug 2004 15:08:53 +0900
    Q2: 拝啓、いつもお世話になりまして厚く御礼申し上げます。早速ご教示賜りましてありがとうございます。

    炭素繊維複合材料は炭素繊維とエポキシ樹脂が複合された材料でございます。
    身近な商品としましてはゴルフブラックシャフトが炭素繊維とエポキシの複合品でございます。
    樹脂はエポキシだけではなく耐熱温度の高いポリイミド等も特殊品には用いられております。
    高剛性、軽量化、振動減衰性等がこれまで利用されてきましたが、これから電磁気的な特性も是非生かして 行きたいと存じます。今後とも何卒ご指導賜りますようお願い申し上げます。
    先ずは取り急ぎ御礼まで
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 06 Sep 2004 00:26:06 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
    応用物理学会のため、お返事が遅くなり申しわけありません。
    炭素繊維もエポキシ樹脂も比透磁率は1として扱ってよいと思います。
    カーボンのモル磁化率は 反磁性で-6.00×10-6(emu/mol)
    エポキシにはベンゼン環にCの2重結合があるので常磁性で+5.5×10-6(emu/mol)
    磁化率χは上の値にモル数をかけたものです。
    磁化率χと比透磁率μrのあいだには、μr=1+χの関係があります。
    従って比透磁率はほとんど1と考えられます。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    418. プラズモン振動数について

    Date: Sat, 28 Aug 2004 17:36:10 +0900
    Q: R大で助手をしておりますTと申します。
    最近、先生のホームページを拝見して、メールを差し上げる次第です。
    実は、金属のナノ粒子の光学スペクトルに関して以前から疑問になっていることがございます。
    1)金属ナノ粒子の表面プラズモンは粗密波であるのに、どうして横波である電磁波と共鳴を 起こすことができるのでしょうか。
    2)これは、数値に関するものです。Auのプラズマ振動数を求めるのに、自由電子密度 n = 5.90 x 1028 [m-3]
    (Ashcroft & Mermin) を使うと
    ωp = (ne2/mε0)1/2
    = [ 5.90 x 1028 [m-3] x (1.65 x 10-19)2 [C2] / ( 9.1 x 10-31 [kg] * 8.85 x 10-12 [F m-1]) ] 1/2
    = 1.41 x 1016[rad s-1]

    hωp / 2π = 6.63 x 10-34 [J s] x 1.41 x 1016 [rad s-1] / 2π [rad]
    = 1.49 x 1018 [J]
    = 9.31 [eV]
    となリます。

    一方、微粒子の表面プラズモンωspとバルクプラズモンwpの関係 ωsp = ωp / 31/2から
     hωsp / 2 π= 9.31 / 31/2
    = 5.38 [eV]
    と計算されますが、これは実測の2.5eV とは全く合いません。また、hωp / 2π = 9.31 [eV] は 反射スペクトルの立ち上がり (2.4 eV) ともかけ離れています。

    これは、なぜでしょうか。単純な計算間違いだと気恥ずかしのですが、原因をお教え頂けると幸いです。
    ------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 28 Aug 2004 21:41:54 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
    1)なんでもQ&A No.325 「表面プラズモンとエバネッセント波の結合」にあり ますように、表面プラズモン共鳴は、光の波動ベクトルの面内成分が表面プラズモ ン(電荷の粗密波)の波動ベクトルと整合する場合に起きます。
    たしかにプラズモンは縦波なので、そのままでは光とはカップルしません。共鳴す るのは、光が表面に対して斜め入射したときに表面に平行な電界成分があるため、 それと結合するのです。金属ナノ粒子に対して光が入射したとき、表面に対して斜 めに入射する状況が必ず生じます。
    2)Au, Ag, Cuのプラズマ周波数は、キャリア数からのみ計算すると9eV位の高いエ ネルギーに来ます。観測されるプラズマ周波数は、ハイブリッドプラズマによるも のです。「ハイブリッドプラズマ」はなんでもQ&AのNo.367にありますが、よく知ら れたようにバルクのプラズマ周波数ωpは ωp=(Nq2/mε0)1/2で与えられますが、 実際に誘電率がゼロを横切る周波数ωp'(これはハイブリッドプラズマと呼ばれ る)は高い周波数における誘電率をεとして ε-ωp2/ωp'2=0より、
    ωp'=(Nq2/mε∞ε0)1/2となり、低いエネルギーに移行しているのです。
    もっと正確には、プラズマ振動にともなうドルーデ則による誘電率のスペクトルに 加え、Auでは2.5eV付近にバンド間遷移が始まるため誘電率の実数部の分散構造が重 畳するため、εr=0を横切る振動数が低エネルギー側に移行するのです。
    もっと詳しく勉強されるには、(なんでもQ&A No.212の回答にありますよう に)D.PinesのElementary Excitation in Solids (Perseus Books, 1966), p.207- 228、あるいは、花村栄一「固体物理学」(裳華房1986)のp.149に記述されていま す。
    [同様のことは、No.31, No.194, No.212, No.303, No.346の回答にもあります。]
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 30 Aug 2004 09:34:31 +0900
    東京農工大学 佐藤 勝昭 様

    御丁寧な回答を早速お送り下さり、有難うございます。
    長い間疑問に思っておりましたことが、先生のご説明で明確になり、大変感謝しております。
    今後とも、よろしくお願い申し上げます。
    ---------------------------------------------------------------------

    419. 電子部品の硫化による断線

    Date:2004/08/06 22:35
    Q1: 電機メーカのHと申します。
    ホームページを見て質問をさせていただいております。
    Webにアップされる場合は、匿名でお願いします。

    質問内容は、電子部品の硫化による断線についてです。
    イオウ雰囲気の中使われている電機製品で、電子部品の硫化による断線が発生しております。
    この硫化による断線がなぜおこるのかが知りたいのです。

    実際には、チップ抵抗の銀パラジウム電極が断線しました。
    銀とイオウが反応して硫化銀ができ、硫化腐食が原因と聞いたりもするのですが。
    硫化腐食ってなんでしょうか。硫化銀のできる反応式はどのようなものでしょうか。
    その反応は起きやすいものなのでしょうか。
    硫化銀は絶縁物なのでしょうか。
    それとも硫化銀により腐食して、物理的に切れてしまうことで断線してしまうのでしょうか。

    分からないことだらけで申し訳ないのですが、お教え願えると幸いに存じます。
    よろしくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------
    Date:2004/08/07 1:49
    A1: H様、佐藤勝昭です。
     昔から、銀が硫化しやすいことはよく知られています。ボウディッカのWeb site (http://www.boudicca.gr.jp/shop/silver/)には銀の食器が空気や水に含まれる硫黄成 分によって黒化することについて次のように書いてあります。
    「銀が黒ずむのは、化学用語で言うと酸化(サビ)ではなく硫化だそうです。空気中の 硫化水素や水分中の二酸化硫黄と反応して、表面に硫化銀が生じるのです。特に日本は 火山国のためか、全く同じに作られた銀製品でも、ヨーロッパよりも早く黒ずんでしま います。ただ、銀の硫化の場合、鉄の酸化のように中までボロボロになってしまうこと はありませんから、たとえ何百年も放っておかれて、どんなに真っ黒に変色してしまっ た銀でも、正しく手入れすれば元の輝きを取り戻すことができる」のだそうです。
     従って、反応としては、2Ag+H2S=Ag2S+H2, 2Ag+SO2=Ag2S+O2,等が考えられます。
    また、
    LAPP USAのサイト(http://www.lappusa.com/catalog/TechData-GeneralApprovals.htm) によれば、電極材の表面コーティングについて次の記述があります。
    "Silver or gold are the normal choice for surface coating."
    Silver possesses the highest electrical conductivity of any metal and is the
    most cost-effective precious metal. With sulphur or sulphurous products in the
    ambient air, a brownish to black oxide coating made up of silver sulfide (Ag2S
    ) will rapidly be formed. However, this coating will break up in the process of
    mating and will be broken down by high currents, so that the necessary
    electrical conductivity is maintained. Passivation of the silver surface will
    delay the formation of the oxide coating and will reduce the mating and
    unmating forces.
    「.....空気中に含まれる硫黄あるいは硫黄化合物により茶ないし黒の硫化銀Ag2Sのコー ティングが急速に形成される。このコーティングはコネクタをはめるときに破壊される ので、必要な導電率は確保される。・・・」

    http://dcbwww.unibe.ch/groups/calzaferri/members/..%5Cpdf%5CIZC-2001-Ag2S.pdf によれば、「Ag2Sの低温相はacanthiteと呼ばれ、結晶構造は単斜晶系、電気的には半導 体で、バンドギャップはEg=1eV」と書かれています。
    ------------------------------------------------------------------
    以上を総合すると、硫黄雰囲気[といっても硫黄そのものでなく、硫化水素や2硫化硫黄 (いわゆる亜硫酸ガス)の存在する雰囲気]においては、銀は容易にAg2S(scanthite)とな り、表面を覆います。その被覆が薄い場合は問題ないけれど、進行すると全体が硫化銀 になり、硫化銀は半導体なので電気抵抗が高く、あたかも断線したようになる。
    というのが結論です。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: 2004/08/07 8:41
    Q2: Hです。
    さっそくのご回答ありがとうございました。

    質問さえうまくできなかったのに、私が疑問に思っていたことにズバリ回答いただいて、 たいへん感動しております。

    さらにずうずうしいお願いですが、もう少し教えてください。

    硫化水素や亜硫酸ガスと聞くと人体に影響の有るガスのように思われるのですが。
    硫化による断線が発生した環境は、人が普通に働く環境です。
    人体に影響がでないような微量な状態でも容易に硫化銀に変化するのでしょうか。
    温度や湿度は影響がありますでしょうか。
    その場所は空調設備がなく、蒸し暑い場所であることは確かです。

    よろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: 2004/08/07 9:30
    A2: H様、佐藤勝昭です。
     銀の硫化しやすさは有名で、輪ゴムで銀のスプーンを縛ると、輪ゴムに含まれ るわずかな硫黄のためその部分が黒くなります。(天然ゴムの主成分はポリイソ プレンですが、それを加硫法(主成分:硫黄)を用いて弾性を持たせています。 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=798086による)
     温泉地では何となく硫黄臭がしていますし、東京では南風が吹くと三宅島の噴 煙の硫黄臭がします。この時の2酸化硫黄の濃度は0.1-0.2ppmという値で、下記 の基準からいうと臭いを感じないはずです。おそらく、わずかに混じっている硫 化水素が硫黄臭のもとではないかと存じます。
    ●二酸化硫黄
          0.3~1.0ppm:臭いを感じる
                5ppm:上気道に刺激感や気道抵抗の増加がみられる
    20ppm:眼の刺激
      (出典:「環境科学辞典」東京化学同人)
    ●硫化水素
    0.0005~0.025ppm:においの閾値
    0.06 ppm:明瞭に感知
    1~5    ppm:不快臭が強くなる
        (出典:「環境科学辞典」東京化学同人)
    -----------------------------------------------------------------------
     硫黄臭のしない温泉でも銀のブレスレットが黒くなるという話もあります。ま た、水分があると、空気中にわずかに含まれる2硫化硫黄が亜硫酸H2SO3とな り、硫化水素も水溶液になって、Agに長時間付着することになり、硫化を進める のではないかと思います。(これは推測ですが)
    -------------------------------------------------------------------

    420. プラズモンとエバネセント波

    Date: Mon, 6 Sep 2004 23:50:11 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    私、「R社」の「Y」と申します。
    先生のHPで学生時代に解決・理解できなかった様々な疑問が解決されています。
    ありがとうございます。

    近接場光学や表面プラズモンポラリトンに興味があり、 何か面白いことが出来るのではないかと思い教科書など読んでいるのですが、 そのなかでどうしてもわからないことがありますので、ご教示いただけませんでしょうか。

    まず、プラズモンの電場増強効果についての質問です。
    「表面プラズモン共鳴により、電場が増強される。」と、どの本や文献にもありますが、
    入射光の電場が増強されるとはどのような原理に基づくのでしょうか。
    素人目にはエネルギー保存則に反してしまうのではと思ってしまうのですが。

    また、
    表面プラズモンポラリトンの共鳴条件に関して、分散関係を示す曲線がたびたび出てきますが、
    波数と振動数の関係とは、分散関係とはわかりやすくいうと何を意味しているのでしょうか。

    最後に先生のHPのなかで、以前
    15 Oct 2002 「表面プラズモン共鳴バイオセンサーについて」
    という質問についての記載がありましたが、
    そのなかに、
    「エバネセント波の電界は空間的には振動しない波」
    とあります。
    空間的に振動しないが時間的には振動するとはどのようなことなのでしょうか。
    伝搬しないということなのかと考えましたが、プラズモンは伝搬するものと解釈しております。 エバネッセント波とプラズモンでは違うと言うことなのでしょうか。

    もしかしたら非常にレベルの低い質問なのかもしれませんが、
    よろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 7 Sep 2004 13:08:14 +0900
    A: R社Y様、佐藤勝昭です。
     わたしのHPをご愛用頂きありがとうございます。
    ご質問にお答えします。
    > 入射光の電場が増強されるとはどのような原理に基づくのでしょうか。
    > 素人目にはエネルギー保存則に反してしまうのではと思ってしまうのですが。
    物質に入射した光は、もはや純粋な光ではなく、物質の中の電気分極と相互作用しながら 伝搬することはよくご存じですね。従って、物質の中で励起を(vertualに)ともなったり、 物質中の励起からからエネルギーをもらったりするのです。決してエネルギー保存則に反 することはありません。

    >分散関係とはわかりやすくいうと何を意味しているのでしょうか。
    純粋の光の波では波数とエネルギーは比例関係にあってその係数が光速です。一方、物質 中の素励起は進行する波と後退する波の干渉のため、エネルギーは波数に対して非線形の 関係になります。また、Optical Phononのようにエネルギーが波数にほとんど依存しない 場合もあります。
    ポラリトンは光の波と物質中の励起の波が混成した状態なので、両者の分散曲線が互いに 反発して複雑な形状になっています。波数が固有状態のラベルに対応し、その固有エネル ギーが分散曲線から与えられます。これの物理的な意味をやさしく説明するのは大変むず かしいです。

    > 空間的に振動しないが時間的には振動するとはどのようなことなのでしょうか。
    > 伝搬しないということなのかと考えましたが、プラズモンは伝搬するものと解釈して おります。
    > エバネッセント波とプラズモンでは違うと言うことなのでしょうか。
    プラズモンは、物質中にできた電荷の疎密の波で、これは伝搬する波です。
    一方、エバネッセント波は、光の場です。全反射する系では、普通の意味での透過光はあ りませんが、それでも境界を越えてしみ出している電界があります。この波の電界は境界 面から先は単に電界振幅が減衰するだけで、波としては伝わらないのです。
    式で書くと、通常の伝搬光の電界は exp(-ωκz/c)sin(ωt-ωnz/c)のように表せますが、 エバネセント光の電界はexp(-ωκz/c)sin(ωt)となると考えてよいでしょう。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 7 Sep 2004 18:50:20 +0900
    AA: 佐藤勝昭様

    R社のYです。

    早速のご教示、ありがとうございました。
    先生の丁寧なご回答により疑問の大部分が解決しました。
    先生のご回答から疑問解決の糸口を得ましたので、 残りの部分はなんとか自分で勉強してみます。

    また“Oさん”とのやりとりも大変参考になりました。
    ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    421. プラズモン増強とエネルギー保存則

    Date: Tue, 07 Sep 2004 15:51:45 +0900
    Q: 東京農工大学教授 佐藤勝昭様

    はじめまして、私、M社のOと申します。
    いつも楽しくホームページを拝見しております。

    当方、半導体の光デバイスを研究・開発していまして、プラズモンにも興味をもって調査しております。

    今回、「プラズモンの電場増強」について質問させて頂きたく、メールを致しました。

    プラズモンの電場増強については、9/6のR社のYさんのご質問に先生がお答えされていましたが、 私もYさんと同様の「エネルギー保存則」の問題が気になります。

    電場増強については、以下のように理解しています。
    (正しいでしょうか) 1.表面プラズモン(surface plasmon polariton)の場合
     界面と平行方向には伝搬しているが、
     界面と垂直方向に関しては局在しているので、
     局在している分だけ、エネルギー密度が増加し、
     電場も増強する。
    2.局在プラズモン(localized plasmon)の場合
     3次元全方向に局在しているのでエネルギー密度が増加し、
     しかも共鳴効果によりプラズモン状態の寿命分だけさらにエネルギー密度が増加する。

    上記の理解が正しいかもお教え頂きたいところですが、本当に伺いたいのは、この先です。

    「プラズモンにより電場増強の結果、
    周囲の分子からのラマン光(などの非測定物からの光信号)が増加する」
    と言われていますが、
    この場合にエネルギー保存則はどのように満たされているのでしょうか
    というのが恐らくYさんの質問で、私も少し不安になる部分です。

    つまり、増加する被測定物からの発光のエネルギーはどこから調達されるのか、 ということが疑問です。
    非線形現象の場合、電場増強により発生効率が向上することは理解できますが、 線形現象の場合は、理由がよく分かりません。

    私の理解は、
    ・電場が増強されない場合には発光に寄与していない入射光のエネルギーが
     電場増強により被測定物の発光効率が向上するため、
     発光のエネルギーになる。
    ・発光効率が向上する機構は、プラズモンによって電界の方向が
     非測定物の発光過程が速くなる向きに変わるため。
    というものです。

    上記の私の理解が正しいかどうかは別にして、
    「プラズモンの電場増強とエネルギー保存則」の問題に関して、お答え頂けないでしょうか。

    お忙しいところ申し訳ありませんが、ご教授頂ければ幸いです。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 7 Sep 2004 17:43:40 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aにアップして間もないレスポンスに驚きました。
    ご質問の1つ1つについてお答えするだけの知識を持っていないので、
    米国NEC研究所のグループのホームページに出ているプラズモンエンハンスメントの物理的説明をご紹介しておきましょう。それによりますと、

    「表面プラズモンは、プラズモンのうち、電荷が金属表面にコンファインされた特別の場 合で、電荷の疎密が表面に生じ、電界は金属表面内で最も強くなっていますが、そのまま では光を輻射しません。しかし、局所的な平面性が乱されると、プラズモンは光を輻射し ます。金属の表面に小さな欠陥による表面プラズモン媒介の発光が観測されており、プラ ズモンフラッシュライト(懐中電灯)と呼ばれています。これは、普通なら非輻射の表面電 荷密度の集団振動が起きている領域で光子輻射の局在化が起きたことを表しています。 従って、表面プラズモン輻射を利用出来るような(人工的な)構造を設計することができま す。表面プラズモンを使うと、輻射過程をエンハンスすることが可能で、発光の波長より 小さな寸法の明るい点光源を作ることができます。このエンハンス効果は高効率の光集光 器としても使うことができます。これらのいわゆるナノスコピック発光素子(あるいは集 光器)は、ナノスケールのアセンブリに集積すると有用です。」と書かれています。
    -------------------
     要するに、金属板に波長より小さな穴をあけ通常の光を照射すると、光は金属板全体に 当たっていて表面プラズモンが励起され、穴のあるところで振幅が高くなって、穴の面積 に相当する入射光の電界より大きな電界が穴の部分から輻射されるということで、「集光 器」に過ぎないのです。
     避雷針の針の部分に電界が集中し、針のない場合に比べて電界が エンハンスされていますが、これがエネルギー保存則を破らないのと同じことです。
    ラマン光の場合は、非線形プロセスなので何乗かで効いてくるので大きな効果が出ている と解釈出来るでしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 08 Sep 2004 09:49:06 +0900
    AA: 東京農工大学教授 佐藤様

    お世話になっております。
    M社のOです。

    アップしてすぐの反応は、定期的に先生の「物性なんでもQ&A」を見て、勉強させて頂いているからです。

    当方の質問へのご回答、ありがとうございました。
    線形な発光過程の場合も発光が増強されるという話を聞いたことがあるので ご回答には納得できない部分もありますが、 ご専門ではない領域に関しても丁寧なご指導を下さり、 うれしく存じます。

    今後も「物性なんでもQ&A」を楽しく拝見し 勉強させて頂きます。
    -------------------------------------------------------------

    422. 変圧器の等価回路

    Date: Thu, 9 Sep 2004 16:47:39 +0900
    Q: 神戸大学工学部電気電子工学科2回生の鈴木と申します。
    変圧器の等価回路はなぜ必要なのですか?
    --------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 9 Sep 2004 19:28:24 +0900
    A: 鈴木君、佐藤勝昭です。
     変圧器は単なる電圧の変換器だけではなく、インダクタンスとしての働きがあります。 変圧器の1次側を見ますと、磁性体にコイルを巻いてあるのでそれ自身インダクタンスと して働きます。これを自己インダクタンスといいます。変圧器には、2次側にもコイルが あり、そこに交流電流が流れます。すると磁心に生じた交流の磁束変化が1次側のコイル に影響を与えます。この効果を相互インダクタンスといいます。逆に2次側から見ても自 己インダクタンスと、相互インダクタンスがあります。これらの働きを記述するのが変圧 器の等価回路なのです。
    --------------------------------------------------------------

    423. 吸収端決定のための吸収スペクトルの式

    Date: Fri, 10 Sep 2004 09:54:30 +0900
    Q: はじめまして、私はB社のHと申します。(匿名を希望します)
    このたび、先生のホームページを拝見しまして、是非質問したいことがあり、メール しました。

    現在、有機材料のEg測定を行なっています。方法としては、吸収スペクトルの吸収端 から求めた値をλ=1.24/Egの式に代入して 算出しているのですが、正確な吸収端がわからない為、データに信頼性がもてませ ん。
    そこで、半導体のEgを求める際に一般的に使われているという、α(吸収端付近の吸 収係数)=(hν-Eg)^1/2/hνの式を用いて、 算出しようと考えています。しかし、この式がどのようにして得られるのか、その過 程が分からない為、困っています。
    よろしければ、この式の誘導式を教えていただけないでしょうか?

    お忙しい中すみませんが、どうぞよろしくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 11 Sep 2004 00:27:33 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     光吸収係数の導出は、多くの固体物理関係の教科書に載っています。 手前みそですが、例えば、佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社、平成3)の p.110-113をご覧下さい。
    簡単にいうと、量子力学により、吸収係数はバンド間遷移の運動量行列要素Mcvの絶対値の2 乗と、結合状態密度Jcv(hν)の積に比例し、νに反比例することが導かれます。す なわち、
     α(hν)=(q2/2ε0 cnm2ν)|Mcv|2 Jcv(hν)
    Jcv(hν)は、価電子帯の状態密度と伝導帯の状態密度のコンボリューション(たた み込み積分)で計算できます。この際、kを保存する遷移のみを考えます。結果は
     J(hν)d(hν)={4π(2m)3/2/h3}(hν-Eg)1/2 d(hν)
    が導かれます。従って、αは(hν-Eg)1/2に比例し、νに反比例します。
      ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 13 Sep 2004 09:31:58 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    こんにちは。B社のHです。
    光吸収係数の導出についての回答、大変ありがとうございました。
    さっそく教科書を参考に勉強させていただきます。
    私は化学専門の為、どの本に載っているかの見当もつかなかった為、大変助かりまし た。
    このような素朴な疑問にまで答えていただき、本当にありがとうございました。
    今後ともどうぞよろしくお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------------

    424. MOSキャパシター

    Date: Fri, 10 Sep 2004 13:38:54 +0900
    Q: 佐藤様, 東北大金研岩佐研助手の小林です。
    私は今現在有機TFTの研究をしています。しかしながら、元々は磁性の研究を行っていたので有機・半導体。デバイスに関してはまったくの素人です。そこで、最近行っている有機MIS構造のキャパシター-電圧依存が理解できません。
    そこで、以下に質問を記述します。回答よろしくお願いします。

    Question
    MOSのC-Vのとき、蓄積の方向に電圧をかけていくとC->Cox(Coxは絶縁体のC)になるとジーなどあらゆる本に書かれていると思います。
    これはもともとCox+Csemi(Csemiは半導体のC)の直列の合成Cと空乏層の厚みl->0になることか理解できることですが、半導体そのもののC(つまりMIS構造では絶縁体の上に半導体が載っているわけで、半導体のCも直列に入っていそうな気がしますが)は測定にはかからないのでしょうか?また、この効果は何らかの理由で無視できるのでしょうか?無視できるとしたら、キャリアが十分で金属とみなせる場合なのでしょうが、実際、文献など調べると金属とはほど遠いキャリア数でもCox+Csemiで扱っていると思います。何故でしょうか?
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 10 Sep 2004 23:51:37 +0900
    A: 小林様、佐藤勝昭です。
     絶縁体のCは誘電率εと面積Sに比例し膜厚dに反比例します。比誘電率は、絶縁体 のSiO2が4.5程度なのに、半導体のSiは11-12もあります。しかし、絶縁体はμm以下 のオーダーで薄いので、かなり大きなCになります。一方、半導体側は、厚みが数百 μmあるので、Cとしては大きくならないのではないでしょうか。
    ------------------------------------------------------
    Date: Sat, 11 Sep 2004 13:07:19 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様、東北大金研岩佐研小林です。
    > 絶縁体のCは誘電率εと面積Sに比例し膜厚dに反比例します。比誘電率は、絶縁体
    >のSiO2が4.5程度なのに、半導体のSiは11-12もあります。しかし、絶縁体はμm以下
    >のオーダーで薄いので、かなり大きなCになります。一方、半導体側は、厚みが数百
    >μmあるので、Cとしては大きくならないのではないでしょうか。

    丁寧な回答ありがとうございます。

    通常、Si半導体などでMIS(MOS)構造を作る場合は半導体(Si)の部分はOxsideの厚みの数千倍にしているので半導体のCは無視していいということでしょうか?
    そうなると、有機物の場合はそんなに厚く蒸着はしない(この業界では通常は数百nm程度)のでこの効果(半導体のCを合成容量に加える)を考慮しないといけないということですね。

    そうなると新たな疑問がわいてきます。
    空乏層のCkは
    Ck=ε0εsemi/lk(lkは空乏層の厚み)(1)
    ですが、半導体自身のCはCs=ε0εsemi/(t-lk)(tは半導体の厚み)(2)
    になると思います。そうすると直列の合成容量を計算すると逆数の和なので空乏層のCがキャンセルしてしまいます。(すなわち
    (t-lk)/(ε0εsemi)+lk/(ε0εsemi)=t/(ε0εsemi))
    この考え方だと空乏層のCは測定できないことなになります。

    どこが、間違っているのでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 14 Sep 2004 12:09:16 +0900
    A2: 小林様、佐藤勝昭です。
    >空乏層のCkはCk=ε0εsemi/lk(lkは空乏層の厚み)(1)ですが、
    >半導体自身のCはCs=ε0εsemi/(t-lk)(tは半導体の厚み)(2)
    >になると思います。そうすると直列の合成容量を計算すると逆数の和なので
    >空乏層のCがキャンセルしてしまいます。
    >(すなわち(t-lk)/(ε0 εsemi)+lk/(ε0 εsemi)=t/(ε0 εsemi))
    > この考え方だと空乏層のCは測定できないことなになります。
    私は、半導体デバイスについて詳しくないので間違っているかも知れませんが、 式(1)はフラットバンドのとき(Ψs=0)のCkですから半導体そのものの容量です。 従って、(2)と区別しても意味がなく、全体の容量が(ε0 εsemi)/tとなるのは 極めてreasonableです。
    測定の際は、depletionの状態でC-Vを測定し、それから各Vに対する空乏層のCdを 見積もるので問題はないと思うのですが。
    -----------------------------------------------------------------------------

    425. 注射器の中の空気の膨張

    Date: Tue, 14 Sep 2004 21:40:57 +0900
    佐藤先生へ
     S電機のKです。
     以前にも、いろいろとお教えいただきありがとうございました。
     また、わからないことが出てきて悩んでおります。
     ご指導頂けると幸いです。
     今回も匿名でお願い致します。

      空気の膨張の件で問題を抱えております。
     実験結果は、20℃で3ccの空気を注射器に密閉し、これを注射器ごと80℃のお湯の中に浸けます。
     するとゆっくりとシリンジが動き約6ccまで空気が膨張しました。
      ボイルシャルルの法則によれば、気体の体積は絶対温度に比例するので、20℃から80℃の場合
     353/293=1.205、約20%体積が増えるだけと思います。
      室温に戻した注射器をみると、内部に水が結露しており、隙間から水が浸入したと思います。そこで考えたのは
    、  空気の膨張以外に水の水蒸気圧が内部の体積膨張に寄与しているのではないか、ということでした。
      ここまでは推測をしたのですが、本当に水蒸気圧で体積2倍が説明できるのでしょうか?また、もし推測が正しい場合、  水の存在が寄与するのか、それとも空気中の水蒸気だけでも同じ寄与をするのか、という点が明確になりません。

    お忙しいところ、恐縮に存じますが、ご教授賜りますよう、 お願い申し上げます。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 15 Sep 2004 01:00:22 +0900
    K様、佐藤勝昭です。
    水が侵入したとすると
     pv=nRT
    の式で、もはやモル数nを一定とすることができなくなります。
    もし80℃の状態ですでにシリンジが移動して体積が1.205倍になった(このと き注射器内部の圧力は1atm=760mmHgになっています。また, 体積をv1としま す)あとに水が侵入したとすると、80℃における飽和水蒸気圧は356mmHgもあり ますから、全気圧は760+356=1116mmHgになります。これが1atmになるまでシリ ンジが移動しますから、
     1116V1=760v2
    となり、v2=1.468v1が得られます。
    従って、もとの体積からみると、1.205×1.468=1.768
    3cmだったものが5.3cmに増加します。
    観測された6cmには届きませんが、測定誤差もありますから、およそのことは 説明できるでしょう。

    一方、室温になって初めて水滴が凝集したと考え、その程度しか水が入ってい なかったとしましょう。このときの水蒸気圧は20℃における飽和水蒸気圧と考 えられるので、17.56mmHgしか水蒸気を含んでいなかったことになります。こ れによる体積変化はほとんど無視できるでしょう。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 15 Sep 2004 09:29:55 +0900
    Q2: 佐藤先生
     S電機 Kです。
     深夜のご回答に、驚いているとともに、大変感謝致しております。

     n数が一定でなくなったというご説明、非常に明快に理解致しました。
     確認なのですが、20℃では飽和状態でも17.56mmHgしか水蒸気を含んでいないということは、このまま80℃になってもn一定の場合とほとんど変わらない(誤差範囲)と考えてよろしいのでしょうか?
    逆に言うと、水が浸入するか、20℃の時に内部に多量の水滴が存在した場合には、気体のn数が変化して2倍近い体積増加を示す、と考えてよろしいのでしょうか?
    よろしくご指導、お願い致します。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 15 Sep 2004 15:14:15 +0900
    K様、佐藤勝昭です。
     露点がどこにあるかが判断基準として重要です。露点が20℃なら、このまま80℃に なってもあまり体積が増加しませんが、空気の露点が高い(80℃でも水と水蒸気が共存) 飽和蒸気圧が高くなります。  20℃の時に内部に多量の水滴が存在した場合でも、80℃での飽和水蒸気圧以上には なりませんが、そのときの体積変化は前のメールでお答えしたように2倍近くになるわけ です。
    ------------------------------------------------------------------

    426. 水晶の転位点での熱膨張係数

    Date: Wed, 22 Sep 2004 10:56:54 +0900
    Q: 佐藤先生様
    初めてmailさせていただきます。
    宜しくお願いします。
    私はK社(匿名でお願いします)のSと申します。
    業務の中で、どうしても解らないことがありまして、お尋ねします。

    質問1
    α水晶の570℃付近(転移点前)の線膨張係数
    (軸方向:Z軸、X軸、Y軸)

    質問2
    β水晶の580℃付近(転移点後)の線膨張係数
    (軸方向:Z軸、X軸、Y軸)

    以上の点に付きまして、お教え願えませんか。
    宜しくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Sep 2004 14:46:48 +0900
    A: K社S様、佐藤勝昭です。
     図書館に行っていろいろな本を見ましたが、高温の線膨張係数は見つかりませんでした。
    Webを探したところ、スイスETHのBerichtの論文が引っかかってきました。
    http://e-collection.ethbib.ethz.ch/ecol-pool/bericht/bericht_184.pdf
    この論文の
    図3(a)に合成水晶結晶のa軸とc軸の格子定数の変化率が出ています。
    転位点付近で大きな飛びがあり、飛ぶ前の値はa軸が1.5%, c軸が0.9%で、飛んだあとは、 aが1.75%, cが1.0%となっています。
    急に立ち上がっているので線膨張係数に直すのはむずかしそうです。あとは、ご自分でや ってみて下さい。
    ---------------------------------------------------------------
      Date: Wed, 22 Sep 2004 18:52:23 +0900
    佐藤教授殿
    お世話になります。
    K社のSです。

    早速のご調査・ご連絡ありがとうございます。
    わざわざ図書館まで足を運んでいただきまして、 感謝いたします。

    図3(a)の内容確認させていただきました。
    線膨張係数に直せるか、やってみます。
    傾向が解り、大変参考になりました。 助かりました。

    ありがとうございました。
    今後とも宜しくお願いします。

    -------------------------------------------------------------------

    427. 回転磁界

    Date: Thu, 23 Sep 2004 04:02:35 +0900
    佐藤様
    私は、回路技術者で、汐崎と申します。
    佐藤先生の、「材料系物理工学(H15後期)」を見させて頂きました。
    講義の目次だけでなく、内容まで、きれいなスライドで表現されて、 かつ一般向けにも公開されておられるのは、大変すばらしく、敬服する次第です。
    「物性何でもQ&A」に触発されて、メールさせて頂きました。
    磁界について、以下の疑問にお答え頂けませんでしょうか。
    宜しくお願いします。(なお、急ぎではありません。)
    --
    用語表現に自信が無いので
    講談社(BLUE BACKS)「図説・電流とはなにか」
    (著者:後藤尚久:東工大教授)(1990年1月20日版)
    この本を参照して質問させて頂きます。
    --
    [磁界の性質についての疑問]
    (163頁図85の説明は、)水平に置いた「棒磁石」を、水平面内で 回転すると、水平方向の磁力線(従って、磁界も)は、 近くからだんだん遠方に(光速度で)伝わりながら回転する (近接作用の考え方)とあります。
    --
    疑問点は、
    棒磁石が、円筒形(断面を真円、高さ方向は十分長い)の場合であって、 棒磁石を鉛直方向に置いて、水平面内で回転した場合に、 鉛直方向の、磁界は、やはり回転するのでしょうか?(*1)
    仮定としては、回転の中心が真円の中心で理想的な回転です。
    少なくとも、この場合には、棒磁石から水平方向に離れている観測点では、 観点する前も、回転途中も、回転停止した状態も、 「磁界の強さ」に関しては、変化が無い様に思われるからです。
    --
    検出する方法で、磁界の性質を考えました。
    1)棒磁石に垂直に導線(この場合、水平)、を置いた場合は、   フレミングの右手の法則による、(棒磁石の遠端側が+極となる)   誘導電圧が発生する(と思われます)が、そうでしょうか?
    2)一方、棒磁石に平行(鉛直方向)に導線を置いた場合は、   (上記で磁界が回転する場合にも)、磁界の向きが、導線と    平行であるので、誘導電圧は発生しないのでしょうか?
      (こちらが、最初に考えたのですが、導線と磁界の相対移動    はあるように思えますが)
    (*1)が、もし回転しているとしたら、地磁気の成因の議論   は別儀としても、地磁気も回転しているように思われますが   どうでしょうか?
      この場合、同じ様に自転している地表上では、一般的に、   検出するのは困難な様に思えますが、いかがでしょうか?
      前記1)の方法では、上下方向の誘起電圧が、測定系全体で、   相殺して検出できない様に思えます。
    *各種文献では、磁力線の方向の議論や図は多くありますが、 この場合のように、磁力線間の性質や図は、あまり見かけません。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Sep 2004 09:22:40 +0900

    汐崎様、佐藤勝昭です。
     手元にその書物はもっていませんが、ご質問についてはお答えできます。
    鉛直に置いた棒磁石の磁極から出ている磁力線は完全に軸対称をもちますから、磁 界には全く変化がなく、回転しているかどうかは意味を持たなくなります。変化が ある場合にのみ回転していると判断できるのですから・・。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Sep 2004 14:52:31 +0900
    佐藤様
    早速に、ご回答頂き、感謝申し上げます。
    私目の疑問(*1)が、で磁界が回転していないので、 その後の質問は、意味が無くなり、 簡潔なご回答を頂いたと理解しております。
    --
    ここで、理解をはっきりさせるために、追加の質問をさせて下さい。
    もし、円筒状の棒磁石の回転軸の中心位置を、真円の中心からずらした場合 を考えて見ますと、どうでしょうか?(*2)
    質問には書かなかったのですが、当初は、断面が、長方形の棒磁石で考え、 当然、磁力線は、回転するものと考えておりました。
    この場合にも、磁力線の回転はどうなるのでしょうか?(*3)
    #それで、逆に真円にした場合で、質問させてもらいました。
    もし、(*2)や、(*3)では、磁界が回転するというのであれば、 質問をした(*1)の場合も、回転するように思われるのですが?。
    だた、この場合には、磁界の変化が無い特異な条件とはなりますが。
    (もしかしたら、磁力線に対して、回転するという、概念で考えるのが 間違っているのかも知れません。)
    また、文献による、磁力線の性質(広い意味の物性?)として、 ゴムひものようなとか、閉じている、交差しないとか、 7つほどの性質をあげていることは、承知しているつもりですが、 この疑問に相当するものが無いように思われます。
    ---
    多くの文献では、発電機の原理で、一様磁界中で導線を移動した時に、 emfがフレミングの右手の法則の方向にて発生するとして説明しています。
    例えば下記の図。
    (図A)
    (図B)
    # (*A) の右端の図をクリックすると、(*B)が表示されます。
    (図B)の場合、導線を移動する変わりに、一様磁界の方を左方向に 移動させても、相対運動ですから、同様にemfは発生すると思えますが、 いかがでしょうか?
    先の、佐藤先生のご回答に従えば、磁界の変化が無いので(一様磁界ですから) emfは発生しないというようなことになるのでしょうか?
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Sep 2004 18:05:21 +0900
    汐崎様、佐藤勝昭です。
    ●回転軸の中心位置がずれた場合や長方形の棒磁石を回転させたときは、回転に ともなって磁界が変化します。強度の角度分布が時間とともに変わるのを磁力線 の回転というならそう呼んでもよいでしょう。回転の中心位置が円筒の対称軸に ある場合は、変化がないので回転したかどうかはわからないのです。
    ●「導線を移動する変わりに、一様磁界の方を左方向に移動させても、相対運動 ですから、同様にemfは発生すると思えますが」とおっしゃっていますが、一様 磁界を動かすという発想が間違っています。「場」と「導線の移動」とは相対運 動の関係にはありません。導線を移動させずに、一様磁界中の導線の移動と同じ 効果を期待するなら、磁界が空間的時間的に変化しなくてはなりません。
    ----------------------------------------------------------------------------------

    428. コイルの磁界

    Date: Fri, 1 Oct 2004 11:35:27 +0900
    Q: はじめまして花田と申します。
    質問ですが、宜しく御願い致します。
    単1コイルの中心磁界と比較して、左コイルと右コイルを直列配線し左コイルと右コ イル間隔をあけて左コイルと右コイルの間の中心磁界が単1コイルに比べ非常に弱 く、間隔にも関係いたしますが単1コイルと同程度の磁界をえることができますで しょうか?
    電流値、巻数等は単1コイルと左コイル+右コイルは同一条件として考えております。 左右コイルの中にケイ素鋼鈑等の磁性体の挿入及び、ケイ素鋼鈑等での閉磁気回路は 考えず、コイルのみでの方法はございませんでしょうか? 以上
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 3 Oct 2004 22:37:56 +0900
    A: 花田様、佐藤勝昭です。
    海外出張のため、お返事が遅れましたことをお詫びします。3時間前に帰国しまし たので取り急ぎお答えします。
    電流値、巻数等は単1コイルと左コイル+右コイルは同一条件としますと、コイル間 の中心での磁界はどうしても、単一コイルの中心における値より小さくなります。
    それは、磁力線がコイルの端から広がってしまうからです。
    同一の磁界を得るには、電流値を増やすとか巻き数を増やすしかないでしょう。
    計算式を示しておきます。
    内径r1[m], 外径r2[m], 長さL[m]、巻き数nのソレノイドコイルにi[A]の電流を流し たとき、コイルの中心軸に沿ってa[m]だけ離れたところでの磁束密度B[T]は
    B={μ0in/2(r2-r1)}×
    [(L+a)ln{((r22+(L+a)2)1/2+r2)/((r12+(L+a)2)1/2+r1}
      -aln{((r22+a2)1/2+r2)/((r12+a2)1/2+r1)}]
    で与えられます。同じコイルを長さ2a[m]だけ離したときにaの地点でBを測定する と、磁束密度は上の値を2倍にしたものになります。
    1つのコイルの中心での磁束密度は、上の式において、a=-l/2とすれば求まりま す。
    http://www.netdenizen.com/emagnet/solenoids/solenoidonaxis.htm参照下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------

    429. フォトリフレクタンス

    Date: Sat, 02 Oct 2004 18:01:20 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    日頃より、分からない事があれば氏のページを参考にし勉強を重ねております。
    容易に情報が探せ、また内容が深いサイトであると感じております。
    自分は、K大学工学部4回生のSと申すものです。
    自分はPRにつきまして第一に、工藤恵栄氏著「光物性基礎」において「電界光学効果」を学び、 ①:電磁波であるレーザ照射で試料に電界をかけることで(ツェナー破壊前の状態)、禁制帯を傾け、見かけ上の禁制帯幅を縮めてスペクトルを見ることで、電界0の場合と比較し、その出力の差と加電界時の出力で割ったものををデータ化する。
    この際の質問です:【禁制帯は傾きますが、斜め方向の励起はあるのでしょうか?電子は電界によって斜め方向に励起されて伝導帯に至るのでしょうか?それとも、エネルギーは量子的ですから単に高エネルギー側に励起されたととらえればいいのでしょうか?】
    ②:①より分かることは、電界0と加電界の場合の交点、つまり前述したグラフならば縦軸が0である場合がまさしく基礎吸収の起こっている場合であり、ここからバンドギャップが算出できる。この場合注意することは電界0の場合であれ、吸収が起これば全くの垂直に出力グラフが伸びているわけではなく誤差が生ずる。 この際の質問です。【この解釈は正しいでしょうか?】

    以上をPRの原理ととらえていますが、質問があります。【なぜPRに関する論文や文献が、PLに比べて圧倒的に少ないのでしょうか?】自分の推測によりますと、『PRは手法が簡単であり、誤差が生ずるため学術的に重視されない。』のではないでしょうか?

    最後の質問といたしまして、PRのメリットにつきまして。自分が現在理解しているところでは『①手法が簡単であり、専門家でなくとも容易に試料の特性評価が可能である。』『②PLは試料付近をヘリウムなどで低温にせねばならないが、PRは常温で測定可能であり、これもまた手軽さとつながっている。』
    【この解釈は正しいでしょうか?他にあれば教えていただきたく存じます。】

    自分はPLを見たことがなく、月曜に見学しようと思っているのですが、そもそもの始まりが、誰もやっていないことをやってやろうというものであってPRについて学生ながら極めてみたいと思っております。

    多くの質問、無礼に思いますが、願わくば回答していただければ光栄に存じます。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 4 Oct 2004 00:10:55 +0900
    S君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。PRとPLはそれぞれの特徴があり、どちらかだけでよいという ものではありません。
     PRは基本的には変調分光です。単なる反射スペクトルは一般的にはなだらかな曲 線で、特徴がよく見えませんが、さまざまな変調を行って分光をしますと、反射ス Nトルは一般的にはなだらかな曲 線で、特徴がよく見えませんが、さまざまな変調を行って分光をしますと、反射ス ペクトルの微分やさらに高次の微分が見られるので、遷移の起きる位置を明確にす ることができます。変調反射分光には、ER(電界変調反射)、MR(磁界変調分光)、TR (温度変調分光)、WR(波長変調分光)などがあります。変調分光については、Solid State Physicsのシリーズに下記の書物が詳しいので、図書館に行って調べてご覧な さい。
    M. Cardona, Modulation Spectroscopy, Suppl. No. 11 to Solid State Physics, edited by F. Seitz, D. Turnbull, and H. Ehrenreich (Academic, New York, 1969)
     PLはルミネセンスの1つです。ルミネセンスとは、励起状態にある物質が、基底 状態に戻るときに発光する現象です。励起の方法により、PL(フォトルミネセンス: 光励起)、EL(エレクトロルミネセンス:電界励起)、CL(カソードルミネセンス:電 子ビーム励起)等があります。PLは光吸収の逆過程です。半導体のPLスペクトルに は、FE(自由励起子)遷移、BE(束縛励起子)遷移、FB(バンド-束縛準位間)遷移、DAP (ドナーアクセプタ対間)遷移、さらには、そのフォノンレプリカなどの情報が見ら れます。しかし、その同定には、PLE(フォトルミネセンス励起)スペクトル、TRS(時 間分解発光)スペクトル、PLの励起強度依存性などを測定したり、試料のさまざまな 熱処理をしてPLを測ったりして初めて、どのような遷移によるかがわかるのです。
     自由励起子遷移は純粋な(=フォノンが関与しない)電子遷移なので、吸収にも発光 にも現れます。同一温度でPRとPLを測定して同じ波長位置に鋭い線スペクトルが現 れれば、その線スペクトルは自由励起子発光にアサインされることが多いようで す。吸収が測定できない場合にも、反射率Rのスペクトルを測定すればその情報が 乗っています。なぜなら、R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)~2+κ^2}で表され、kは光の吸 収を表しているからです。吸収係数αと消光係数κの関係は、α=4πκ/λです。し かし、Rには屈折率nの情報が含まれるため、吸収の情報が明確ではありません。そ れで、上述の変調分光をするのです。
     PRはERの一種で、キミのいうようにレーザ照射によってできた電界を用いた電界 変調分光です。ERでは電界によってバンドを傾斜させ、伝導帯と価電子帯の波動関 数のシミだしを起こさせ、トンネル効果で遷移させます。従って、見かけ上斜めに 遷移するのです。先に言いましたように、関与する遷移は、バンド間遷移だけとは 限りません。低温では自由励起子遷移はバンド間遷移より遷移強度が高いので、PR は自由励起子遷移を検出することが多いようです。室温では、たいていの場合自由 励起子は解離しているので、バンド間遷移を捉えているでしょう。
     キミの質問ですが、
    (1)【禁制帯は傾きますが、斜め方向の励起はあるのでしょうか?電子は電界に よって斜め方向に励起されて伝導帯に至るのでしょうか?それとも、エネルギーは 量子的ですから単に高エネルギー側に励起されたととらえればいいのでしょう か?】
    →A:励起された状態の波動関数と基底状態の波動関数が電界の傾斜でしみ出 して、その間で遷移が起きるので、見かけ上斜めに遷移したように見えるのです。
    (2)電界0と加電界の場合の交点、つまり前述したグラフならば縦軸が0である 場合がまさしく基礎吸収の起こっている場合であり、ここからバンドギャップが算 出できる。この場合注意することは電界0の場合であれ、吸収が起これば全くの垂 直に出力グラフが伸びているわけではなく誤差が生ずる。この際の質問です。【こ の解釈は正しいでしょうか?】
    →A:質問の意味がよくわかりませんが、変調分光の 場合、真の遷移位置だけでなく、変調によって生じるいくつかの新たな構造が現れ ます。これは誤差というよりは、測定によって系を乱したことによる信号というべ きでしょう。
    (3)【なぜPRに関する論文や文献が、PLに比べて圧倒的に少ないのでしょう >か?】自分の推測によりますと、『PRは手法が簡単であり、誤差が生ずるため学術 的に重視されない。』のではないでしょうか?
    →A: PRは学術的に軽視されている わけではありません。PRが用いられるようになったのは、10年くらい前からで す。結果の解釈の仕方が確立したのも、最近のことです。一方、PLは100年以上 の歴史があります。解釈の仕方が比較的単純です。従って、文献が多いのです。
    (4)【PRのメリットにつきまして】 自分が現在理解しているところでは『①手法が 簡単であり、専門家でなくとも容易に試料の特性評価が可能である。』『②PLは試 料付近をヘリウムなどで低温にせねばならないが、PRは常温で測定可能であり、こ れもまた手軽さとつながっている。』【この解釈は正しいでしょうか?他にあれば 教えていただきたく存じます。】
    →A: PRは決して簡単ではありません。変調励起 用のレーザーと、反射分光測定系が必要です。また、先に述べたように自由励起子 遷移の同定には、PLと同じ低温でのPR測定が必要です。単に、キミの研究室が低温 で測定する装置がないだけのことでしょう。
    (5)【自分はPLを見たことがなく、月曜に見学しようと思っているのですが、そも そもの始まりが、誰もやっていないことをやってやろうというものであってPRにつ いて学生ながら極めてみたいと思っております。】
    →A: チャレンジ精神は結構ですが、もう少し基礎的なことをきちんと勉強してから 挑戦されることをお勧めします。そうでないと、4年生の浅知恵で勝手な解釈をす ると、指導教員のご研究の方針と合致しない無駄な研究に突き進んでしまう場合が あるからです。また、卒業研究で与えられたテーマについて、自分の指導教員より 先に他人に聞くというのも、指導教員に失礼な話です。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 06 Oct 2004 15:48:36 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    PRについての質問に対しまして、懇切丁寧な解説を頂きまして、大変感謝しております。
    深く御礼申し上げます。佐藤先生の『応用物性』(オーム社、1991)は我がゼミの輪講でも教科書として使用されております。

    >さまざまな変調を行って分光をしますと、反射スペクトルの微分やさらに高次の微分
    >が見られるので、遷移の起きる位置を明確にすることができます。
    >変調分光については、Solid State Physicsのシリーズに下記の書物が詳しいので、
    >図書館に行って調べてご覧なさい。
    >M. Cardona, Modulation Spectroscopy, Suppl. No. 11 to Solid State Physics,
    >edited by F. Seitz, D. Turnbull, and H. Ehrenreich (Academic, New York, 1969)

    変調により遷移が明確になるという基礎的なことを知った途端イメージが広がりました。
    上記図書は本学図書館にはありませんでしたので、早速、取り寄せ手続きをしました。
    また担当教官であるK先生がPRの創始的な研究室出身であったことも今日のゼミで知りまして 『Handbook On Semiconductors:Completely Revised and Enlarged Edition V.2(SERIES EDITOR:T.S.MOSS VOLUME EDITOR M.BALKANSKI)(North-Holland)』のCHAPTER10にPRに関する詳 細な記述があることを教えていただきました。併せて読もうと思います。

    >PRはERの一種で、キミのいうようにレーザ照射によってできた電界を用いた電界
    >変調分光です。ERでは電界によってバンドを傾斜させ、伝導帯と価電子帯の波動関
    >数のシミだしを起こさせ、トンネル効果で遷移させます。従って、見かけ上斜めに
    >遷移するのです。

    エサキダイオードの存在を知りながら、トンネル効果が生ずる=ツェナー破壊と誤解していたのですが、先生のご回答により 量子力学において、トンネル効果とは、波動関数のしみ出す確率が0ではない場合を総じて指すものだと 理解いたしました。そしてPRでは電界変調によるトンネル効果を利用しているのだと言うことも併せて理解しました。 ありがとうございました。

    >【なぜPRに関する論文や文献が、PLに比べて圧倒的に少ないのでしょう
    >か?】自分の推測によりますと、『PRは手法が簡単であり、誤差が生ずるため学術
    >的に重視されない。』のではないでしょうか?→A: PRは学術的に軽視されている
    >わけではありません。PRが用いられるようになったのは、10年くらい前からで
    >す。結果の解釈の仕方が確立したのも、最近のことです。一方、PLは100年以上
    >の歴史があります。解釈の仕方が比較的単純です。従って、文献が多いのです。

    これを知ったことが非常に大きいもので、PRとは新しい学問なのですね。簡単な手法と軽率に誤解してしまっていたことを 恥ずかしく思います。ありがとうございました。

    >チャレンジ精神は結構ですが、もう少し基礎的なことをきちんと勉強してから
    >挑戦されることをお勧めします。
    >自分の指導教員より先に他人に聞くというのも、先生に失礼な話です。
    申し訳ございませんでした。その通りでありました。以後、気を付けます。
    ただ佐藤先生がこれほどまで丁寧に解説してくださったことに、くどいですが 深く感謝申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------

    430. 半導体エピ層における圧電効果

    Date: Tue, 5 Oct 2004 13:53:11 +0900 (JST) Q1: 私、東京工科大学3年の大平真治ともうします。
    先輩から佐藤先生のHPを教えてもらい、先生にお尋ねすることにしました。

    質問は
    格子定数の異なった半導体を接合させると、その接合面で結晶構造にゆがみ(不整合)がおこり、 それが原因となってピエゾ電界が発生する、とある論文に出てきたのですが、その電界の 大きさや方向、格子面による違いなどについて教えてください。
    また格子面の分類(a-plane,r-planeなど)についても教えてください。
    お忙しいところ、よろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 5 Oct 2004 14:20:27 +0900
    A1: 大平君、佐藤勝昭です。
     ご質問は格子不整合歪みによる圧電効果のことですね。
    等極性の半導体(シリコンやゲルマニウム)ではこの現象は起きません。
    極性をもつ半導体では歪みによって分極が起きるでしょうが、接合する物質の格子定数の 差によって歪みの大きさが異なりますし、圧電定数は物質や結晶の格子面によって異なる ので、一概にいえません。お尋ねの半導体は何でしょうか?
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 5 Oct 2004 15:03:54 +0900 (JST)
    返信ありがとうございます。
    問題の半導体はGaNにInGaNをはさみこんで量子井戸を形成している場合です。
    c-planeサファイアにGaNを積んで量子井戸を作製したものはピエゾによる電界が起こるのですが、r-planeの場合電界が発生しないとのことです。
    APLの84(18)/3663についてです。
    このc-planeやr-planeなどの違いや歪みによるピエゾ電界の発生する原因などについてよく分かりません。
    力添えよろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 6 Oct 2004 09:51:56 +0900
    大平君、佐藤勝昭です。
     格子不整合による歪みがあると、圧電効果によって1MV/cm程度の電界が発生すると考え られています。GaやInの窒化物はイオン性の強い化合物でかつ反転対称性がないので、歪 みによってイオン間の相対距離が変化すると電気分極が生じます。これが圧電効果です。
     GaN/InGaN/GaN量子井戸における圧電効果については、理論的には
    F. Bernardini et al.:Phys. Rev. B56 (1997) R10024
    によって予言され、実験的には、
    T. Takeuchi et al. APL 73 (1998) 1691
    らによって見出されました。
    詳しい解析や関連する文献などは
    C. Wetzel et al. Phys. Rev. B61 (2000) 2159
    S.F. Chichibu et al. APL 88 (2000) 5153
    などをご参照下さい。

     c面、r面というのは、サファイヤなど六方晶系の格子面に付けられた名称で、
    c: (0 0 0 1)
    r: (1 -1 0 2)
    a: (1 1 -2 0)
    面のことです。(添付図参照)面指数の付け方は、結晶学関係の書物を参照して下さい。 GaNはサファイアと同じ構造なので、サファイヤのR面にはGaNのR面が成長します。この面 は面内に極性がないので、圧電効果は生じません。
     詳細は、筑波大学の秩父先生がお詳しいので、そちらにお尋ねになってはいかがでしょ うか。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 6 Oct 2004 15:18:50 +0900 (JST)
    AA: 東京工科大学3年の大平です。
    ご回答ありがとうございます。
    紹介していただいた論文を読み、勉強させていただきます。
    ありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------

    431. 水銀の光吸収係数

    Date: Wed, 6 Oct 2004 22:20:57 +0900
    Q1: 佐藤勝昭 先生
    はじめまして、私は民間で光関連の企業の研究所に従事するOと申します。
    匿名でもお答えいただけるようなので、誠に恐縮ですが当方の場合もそれでお願いい たします。
    現在、レーザー応用において、光と物質の相互作用についてある考察を進めておりま すが、水銀の吸収スペクトルを知りたくwebを見ておりましたところ、幸運にも先生 のQ&Aに遭遇し、その中にLandolt BoernsteinのTableに記載されていることがわかり ましたが、生憎所内の図書室や近隣の大学の図書館にはこの本がありません。
    そこで、質問と申しますか是非この本(もしくは他のものでもよいのですが)の水銀 の吸収スペクトル(もしくは吸収係数)が記載されている部分をお送りいただけない でしょうか。波長は200nmから1μくらいまであればなおありがたいのですが。
    突然の質問ならびに不躾なお願いで誠に恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げま す。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 06 Oct 2004 23:26:06 +0900
    A1: O様、佐藤勝昭です。
     水銀の吸収スペクトルを知りたいとのことですが、気体(水銀蒸気)の吸収ス ペクトルでしょうか、それとも、液体の状態の水銀の吸収でしょうか。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 6 Oct 2004 23:42:00 +0900
    Q2: 佐藤勝昭 先生
    早速ご回答いただきありがとうございます。また言葉足らずで大変失礼いたしまし た。必要なものは液体水銀の方になります。よろしくお願い申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Oct 2004 11:06:29 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     工藤恵栄:分光学的性質を主とした基礎物性図表(共立出版、昭和47)p263に 可視域におけるHgの光学定数n,kというのが載っていました。これより Excelで吸収係数αと反射率を計算しましたので、お届けします。

    λ(Å)nkα(cm-1)R(%)
    30220.552.259.356E+0570.52913597
    31300.442.531.016E+0679.23181309
    36500.642.971.023E+0677.75943704
    40470.793.401.056E+0678.59673126
    43580.883.471.001E+0677.40011428
    40000.733.019.456E+0575.77366631
    50001.043.709.299E+0576.69676668
    60001.394.329.048E+0577.18927568
    70001.764.838.671E+0577.25106232
    80002.145.338.372E+0577.63173367
    87002.405.638.132E+0577.80700882

    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Oct 2004 11:58:40 +0900 (JST)
    佐藤勝昭 先生

    ただいま仕事場より、自宅に届きましたメールを読ませていただきました。
    当方が探しました図書(便覧が多いのですが)ではまったく見当たらなかったため、 このようなデータをいただけて大変うれしく思いますとともに、お骨折りいただきま して重ね重ね深く感謝いたす次第です。
    今後またご相談申し上げました際には何卒よろしくお願い申し上げます。

    ----------------------------------------------------------------------------

    432. 高分子と金属の物性比較

    Date: Wed, 6 Oct 2004 22:29:40 +0900 (JST)
    Q: はじめまして。HPを見て質問したいことがあります。 簡単な話かも知れませんが、高分子と金属の物性の違いについて教えてください。
    よろしくおねがいします。
    早稲田大学 理工学部 YT
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 06 Oct 2004 23:44:18 +0900
    A: YT君、佐藤勝昭です。
     ご質問ではどのような物性を知りたいのかわかりません。
    熱物性、電気物性、光物性、機械的性質について記述します。
    一般的に言って、高分子の融点は低く150℃付近のものが多く、高いものでもせい ぜい300℃でしょう。これに対し、金属の融点は、水銀やガリウムなどの例外をの ぞき、ほとんどが300℃以上です。高いものは2000℃に達するものもあります。熱 膨張係数は高分子のほうが金属より1桁程度大きいです。熱伝導率は、金属は高 分子の1000倍程度あります。電気伝導率は、一部の例外を除き、金属は高分子よ り5桁から10桁も大きいのです。高分子は一般には可視光線を透過しますが金属 はほとんど透過せず、よく反射します。硬度は金属の方が高分子よりはるかに高 いですが、延性は金属の方が大きいです。
     以上はあくまで一般論で、中には当てはまらないものもあります。丸善の理科 年表にさまざまな物質の物性の数字が出ていますから、図書館に行って比較して 下さい。理科年表は価格も手ごろなので、理科系の学生さんなら1冊備えておき たいものです。
    -----------------------------------------------------------------------

    433. ナノ粒子の光反射

    Date: Fri, 8 Oct 2004 10:20:22 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
     F社Nです。ホームページ引き継き拝見させていただいております。
    前回、プラズモンの質問に答えていただきましてありがとうございます。
    今回は、反射率に関して、質問がございます。
    ナノ粒子(30nm程度)に関して、(例えば銀ナノ粒子)形状が平板やロッド化してプラズモン吸収領域及び吸収強度が長波に出現及び多種類の吸収に変化しますが、吸収強度が大きくなると、反射率はあがってしまうのでしょうか?
    もうひとつは、基本的に反射率R={(n*-n)^2+k^2}/{(n*+n)^2+k^2}とするとkに引っ張られる形をとるとすると、吸収係数が大きい金属素材は基本的に反射率が大きくなると考えてよろしいのでしょうか。
    吸収係数は粒子径で変化することは知っていますが、(この範囲(30nm)ではバルクと同じ値を使っています。)
    形状に関しては記載されておりません。
    1)ナノ粒子の形状と反射率に関する知見ないでしょうか?
    2)上記はナノ粒子にも適用できるのでしょうか
    教えてください。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 8 Oct 2004 11:00:51 +0900
    N様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。
     さて、
    >吸収強度が大きくなると、反射率はあがってしまうのでしょうか?
    というご質問ですが、R={(n*-n)^2+k^2}/{(n*+n)^2+k^2}が成立しますから kがnやn+1に比べて十分大きいと、反射率が高くなります。基本的には、k→∞ではR→1で す。ε"=2nk、σ'=ωεo ε"ですから、k→∞はσ→∞を意味します。すなわち抵抗率ρ= 1/σが0です。同軸ケーブルのような分布定数回路において、ケーブルの終端を短絡する と電気信号が反射しますが、それと同じインピーダンス不整合によって反射するのです。

    (1)ナノ粒子の形状と反射率に関する知見ですが、 むずかしい質問です。粒子の形状が「金平糖」みたいな微細構造からできた特殊な構造になると、あたかも黒体のように光を全部吸ってしまいます。白金黒や現像銀がその例で、 この場合は反射がほとんどありません。
    本サイトの
     
    白金黒と銅粉のちがい
     現像銀はなぜ黒いか
    などをご参照下さい。このあたりを統一的に扱う理論があるのかないのか、私は存じませ ん。

    (2)R={(n*-n)^2+k^2}/{(n*+n)^2+k^2}は、散乱のない、平坦な界面に垂直に光が入射 した場合について純粋に電磁気学から導かれた反射の公式です。複雑な形状をとるとなる と斜め入射も関係しますし、散乱も多いでしょう。従って、面のでこぼこが物質内の光の 波長(λ/n)に比べ十分小さい場合は、平均的に上記の式が使えますが、そうでないと、適 用出来ないと思います。目安としてはλ=500nm、n=3として、150nmより1桁小さいRMS粗 さ(従って粗さ15nm以下)でないと上式は厳密には適用出来ないでしょう。
    --------------------------------------------------------------------------------

    434. カーボンの付着と剥離

    Date: Fri, 8 Oct 2004 11:45:08 +0900
    佐藤 勝昭様
     はじめまして。O大学工学部機械工学科のNと申します。先生のホーム ページはしばしば拝見させていただいております。
     ところで先生に質問させていただきたいことがあるのですが、黒鉛やカーボンなど の炭素系の物質が他の物質の表面に付着する時どのようなメカニズムによって付着するのでしょうか? たとえば、鉛筆では黒鉛がはがれて紙の繊維の間に入るのは分 かるのですが、その他に電気的な力などは働いていないのでしょうか?なぜ消しゴム では落ちるのに水で流すだけでは黒鉛が落ちてしまわないのでしょうか?
     お答えいただければ幸いです。またご面倒ですが匿名でお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 9 Oct 2004 00:46:56 +0900
    N様、佐藤勝昭です。
     黒鉛の面間の結合はファンデアワールス力によります。他の物質との付着につい てはどのような力が働いているのかわかりません。帯電すれば静電的に付着する可 能性があります。その場合は水で簡単に落ちるでしょう。ご指摘のように紙や布に 付着するのは繊維の間にはまりこむためです。消しゴムで字が消える原理は、次の サイトをご参照下さい。
    http://www.seedr.co.jp/keshigomu/hakubutu3.html
    -------------------------------------------------------------------------

    435. 光の全反射について

    Date: Fri, 8 Oct 2004 18:02:59 +0900
    佐藤勝昭 先生
    以前、ダイヤモンドと黒鉛のことで大変お世話になりました、化学製品PL相談セ ンターの高橋と申します。先週の毎日新聞(10/2土曜)で、
    金属光沢のなぞの話 のなかに先生のお名前を見つけ、懐かしく拝見しました。

    さて、今回は光ファイバについて調べておりまして、光ファイバ(ガラス)の細い中 を、光がどのように伝わるのかを説明しようとしています。
    そこで全反射について、もしお分かりであればお教え頂きたく存じます。
    ガラスの中に入った光が外(空気中)へと出ていくとき、入射角が小さいと屈折して 出ていきますが(一部は反射するものもある)入射角がある角度以上になると、(ガラスと空気の境 目を通り抜けることができなくなり)全反射という現象が起こります。
    このとき、「光は全部反射して戻ってくる」という表現は適切なのでしょうか?
    光には、本来屈折する分と反射する分があって、たまたま屈折しきれなくなった分 が反射に回るのであって、本来反射していた分とは別に考えなくてはいけないということはあるの でしょうか?(その場合は上記の文で、反射という言葉は使えず、「光は全部戻ってくる」ということになります)。 細かいことで恐縮ですが、ご存知でしたら教えて頂きたいのですが・・・
    (社)日本化学工業協会
    化学製品PL相談センター
    高橋由佳
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 09 Oct 2004 01:45:54 +0900
    高橋様、佐藤勝昭です。
     お久しぶりです。毎日の「なぞなぞ科学」を読んで頂いたのですね。あれは、 毎日新聞で「理系白書」という欄を担当しておられる元村有希子さんという女性 記者がまとめられたものです。
    元村さんは、Webに理系白書BLOGを公開しておられるのでぜひクリックしてあげて下さい。
     さて、光ファイバにける全反射についてですが、臨界角においては界面に沿っ て進む光となり、それより大きな入射角においては、入射した光は本当に全部反 射します。
     臨界角以下では反射と透過がありますが、全反射では透過に回る光エネルギー はありません。
    --------------------------------------------------------------------------

    436. 音響的に優れた金属の加工法

    Date: Sat, 9 Oct 2004 17:14:45 +0900
    Q: 私はK大学工学部4年のKと申します。金属と音について調べているのですが、 音響的に優れた金属の条件(一定の力で叩いてより大きな音が出る条件)として、
    1、内部減衰率の低さ
    2、E(縦弾性係数)/ρ(密度)の値の高さ
    3、音響インピーダンスが高いこと

    という3つの条件があることがわかりました。この3つの条件またはこの3つ以外の 条件でもよいのですが、既存の金属に何らかの加工を施して、より音響的に優れた金 属を作りたいのですが、いかなる方法があるかを聞きしたく思っています。例えば、
    1、弾性率係数を向上させる方法
    2、音響インピーダンスを向上させる方法
    3、より軽くて曲がりにくい金属を作る方法 etc

    大変恐縮ですが、ご返答の程宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 10 Oct 2004 16:05:21 +0900
    A1: K君、佐藤勝昭です。
     4年生ということですから、卒論のテーマでしょうか?もしそうなら、私に聞 く前にあなたの指導教員に聞くべきです。K大学は、学生と教員の間が密接で あることをうたい文句にして教育版COEをもらっている大学ですから、他大学の先生に聞くのはそれが 機能していないことを意味します。
     与えられたテーマをいきなり聞くのではなく、それぞれの問題について基礎に なる物理を把握することからスタートすべきでしょう。
     1.金属の内部減衰率とはなにか。
     2.縦弾性率は物質の何に由来するか。 
     3.音響インピーダンスとはなにか。
    1. まず、内部減衰率とはなんでしょうか。
       これは、物質を振動させたときに、外部要因なしに振動が減衰していく様子を 表しています。これは振動のエネルギーが熱に変って減衰していくからです。こ の熱エネルギーへの変換の原因を内部摩擦または内耗(internal friction)とい います。内部摩擦を生じさせる原因は、転位(dislocaion)、相変態(phase transition)、粒界(grain boundary)、合金化(alloy formation)などです。 転 位が原因であれば、焼鈍(anneal)などで取り除いたり、逆に昇温・急冷して転位 線を絡め合って転位が増殖しないようにすることもできます。その他のいろんな 欠陥はそれぞれの原因に応じて処理できるはずです。

       
    2. 次に、縦弾性率とは何でしょうか。
       縦弾性率とは、ものを引っ張ったときの応力とひずみの関係から求められる比 例定数です。体積弾性率(bulk modulus)とも関係します。体積弾性率は、物質の 結合の強さ(凝集エネルギー)と関係します。(詳しくは、キッテル固体物理学 第3章を読んで下さい。一般的には、遷移金属において体積弾性率が高くなって います。

    3. 最後に音響インピーダンスとはなんでしょうか。
       超音波が伝播するときに、原子や分子などの粒子が振動しますが、その時の音 圧に対する粒子速度の比を音響インピーダンスといいます。平面波の場合に、音 響インピーダンスは媒質の密度と音速の積により決定されます。

    以上を総合すると、結合が強く、密度が高く、欠陥の少ない金属材料を探せばよ いということになるでしょう。
    ---------------------------
    Date: Sun, 10 Oct 2004 16:28:15 +0900
    A2: 追伸 K君、佐藤勝昭です。
     「より軽くて曲がりにくい金属を作る方法」に答えていませんでした。
    金属元素のうち、結合が強くて軽い金属は、チタンでしょう。しかし、「曲がり にくい」ことを要求すると話は違ってきます。
     1つの例ですが、純粋の鉄は軟らかく曲げやすいので、炭素を加えさらにさま ざまな加工をして、曲げにくいものを作ります。すると、欠陥密度が高くなるの で、多分、内部摩擦は増大しているはずです。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 11 Oct 2004 15:55:21 +0900 AA: K大学工学部のKです。
    返信が送れて申し訳ございませんでした。仰る通り他大学の先生にこういった 質問をしてしまい軽率であったことをお詫び申し上げます。ご丁寧にこの様な 質問に答えてくださいましてありがとうございました。答えてくださいました事項 は大変参考になり、これから自分なりに突き詰めて調べていこうと思っており ます。本当にありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    437. 光のエネルギーの吸収・損失

    Date: Mon, 11 Oct 2004 17:57:51 +0900
    Q: 佐藤先生
    はじめまして、A社のKと申します。インターネットで検索を重ね、先生のホームペー ジに辿り着き、メールさせて頂く次第です。光の照射に伴うエネルギーの吸収や損失 に関する以下の質問について、ご教示いただけると幸いです。

    1.RはR={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}の式によると、κが大きくなると反射率が 高くなります。これは吸収が大きい物質はどんなものでも反射率が高いという理解で よろしいのでしょうか? 感覚的には、吸収が大きいということは、エネルギーの多 くが摩擦項によって失われて、格子振動のエネルギーに移行するということを意味す るため、反射する光が多くなるということと矛盾すると思うのですが、吸収が大きく かつ反射率が高いということは、どのようなことを意味するのでしょうか?

    2.誘電損失についてですが、
    101.誘電体中の光の伝搬では、位相の遅れはあるもの の、光のエネルギーは失われないと説明されています。また339.導体の誘電損失や、104.電子レンジによる炭素の加熱126.複素誘電率については、位相の遅れにより損失が起きると説明されています。

    このように、位相の遅れによって、エネルギーが失われる場合と失われない場合があ るのは、何の違いによるのでしょうか?

    なお、掲載は匿名でお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 11 Oct 2004 19:58:21 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
    1. κが大きくなると反射率が高くなることについて
      433の質問の答えに書きましたように
      「R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}において、κがn-1やn+1に比べて十分大きい と、反射率が高くなります。基本的には、κ→∞ではR→1です。
      誘電損失はε"=2nκで表され、導電率は誘電損失を用いてσ'=ωεo ε"と表されます から、κ→∞はσ→∞を意味します。すなわち抵抗率ρ= 1/σが0です。 同軸ケーブル のような分布定数回路において、ケーブルの終端を短絡すると電気信号が反射し ますが、それと同じインピーダンス不整合によって反射するのです。
       もう少し、ミクロに見てみましょう。反射という現象は、入射光によって、表 面に電子分極が生じ、この電子分極がアンテナとなって光を放射する現象です。 κが非常に大きいことは、基底状態|g>から励起状態|e>への遷移確率Pgeが非常に 高いことを意味します。(この場合は、実の遷移を意味します。)これにより実 の電子分極が生じます。励起状態|e>から基底状態|g>への遷移確率Pegは、基底 状態|g>から励起状態|e>への遷移確率Pgeに等しいので、励起状態は、光を放射 してたちまち基底状態に落ちます。非常に発光効率の高い蛍光体のようなもので す。蛍光体からの放射と違うのは、蛍光体の場合は、各分極がランダムに緩和す るので全方位に光を放射するのに対し、鏡面反射の場合はそれぞれの分極が位相 をそろえて放射するので、反射の法則に則った特定の方向に反射するのです。  たしかに感覚的には、「吸収が大きいということは、エネルギーの多くが摩擦 項によって失われて、格子振動のエネルギーに移行するということを意味する」 と思いがちですが、励起状態からフォノンに移行する前に基底状態に遷移してし まうと考えるのです。自由励起子遷移も遷移強度が非常に強いので、反射スペク トルに強いピークが現れるのです。
       それでは、黒い場合はどの程度なのでしょうか。白金黒、現像銀に見られるよ うに、微細な形状をもつ微粒子、結晶粒から成立している場合、鏡面反射の公式 が成り立たず、物質中で光は減衰して反射光は帰ってこないのです。
       また、鏡面でも黒光りの場合があります。FeやGaAsなどがこれに相当します。 この場合はκが中途半端に大きい場合です。
    2. 101.誘電体中の光の伝搬では位相の遅れはあるのに光のエネルギーは失われ ないと説明されているのに、339.導体の誘電損失や、104.電子レンジによる炭 素の加熱、126.複素誘電率については、位相の遅れにより損失が起きると説明さ れていることの違い。
       前者は光の電磁波の位相、後者は物質中の電子の振動の位相です。この違いを 説明しましょう。
       光が物質中を透過する際に、入射した光の電界が物質内を進行するときの位相 速度は、真空中の光速cの屈折率分の1になっています。従って、物質を透過し た光の位相は、物質がなかった場合の位相に比べて遅れています。101の説明は このことを示しています。
       一方、339, 104, 126では電磁波の電界の振動と電気分極の位相関係を考えて います。電気分極Pと電界Eが同位相なら、電力損失Wが起きません。
       なぜなら、W=E*Jです。ここにJは電流密度ですが、誘電体では分極電流(変位 電流)を意味します。J=∂P/∂tですから、PとJは位相が90度ずれます。(Pがexp (jωt)で表されるならJはjωexp(jωt)=ωexp(j(ωt+π/2))となって、90度ずれていま す。)従って電界と電気分極が同相だと電界と電流密度が90度ずれるので電力 損失はありません。もし、誘電率の虚数部があると、このずれが90度ではなく なり、有限の電力損失をもつのです。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 17 Oct 2004 23:49:21 +0900
    Q2: 佐藤先生
    A社のKです。お忙しい中、早速ご回答いただきまして、有難うございました。
    質問1「κが大きくなると反射率が高くなることについて」については、非常にわか りやすくご説明いただき、よく理解できました。
    また、質問2「101.誘電体中の光の伝搬では位相の遅れはあるのに光のエネルギーは 失われないと説明されているのに、339.導体の誘電損失や、104.電子レンジによる 炭素の加熱、126.複素誘電率については、位相の遅れにより損失が起きると説明され ていることの違い」につきましては、ご回答いただいてからよく考えて気づいたので すが、私自身が「誘電体を透過する光の位相の遅れは、光が引き起こす電子振動の位 相が摩擦などによってずれる場合に起きる」という誤った理解をしておりました。 現在はもう一度勉強しなおして、「誘電体を透過した光は、入射する光が引き起こす 電子振動によって輻射される光(入射光と位相が90度ずれている)と、誘電体が存在 しない場合の光(入射光と同位相)との重ね合わせであり、これによってさまざまな 位相のずれが発生する」、と理解しているのですが、あまり自信はありません。
    度重なる質問で恐縮ですが、誘電体における光の位相の遅れの原因について、ご教示 の程お願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 16:13:18 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭です。
    物質に光が入射したとき、もはや光は純粋の光ではなく、分極との混成波(ポラリトン)になっています。混成の程度は波長によって異なりますが、これは分極波と電磁波がエネルギーのキャッチボールをしているのです。媒質を通り抜けたあとは、普通の電磁波に戻ります。言い換えれば、媒質中を透過する光は、分極を引きずりながら進んでいるので、位相が遅れるのです。
    ---------------------------------------------------------------------------

    438. 常磁性極限から導いた磁気光学効果のスペクトルのちがい

    Date: Wed, 13 Oct 2004 20:06:39 +0900
    Q1: はじめまして。東京大学大学院工学系研究科M2の嶋田と申します。 物性なんでもQ&Aをみてメールを送らせて頂きました。

    今年の物性若手夏の学校にご参加いただきまことにありがとう ございました(僕は準備局員をやっていました) 磁気光学の サブゼミも然る事ながら、夜の懇親会での佐藤先生の絵の展覧 会も参加者から「良かった」との声を耳にしております。

    さて、本題の質問ですが、

    佐藤先生の「光と磁気[改訂版]」にはお世話になっていますが、 4章での議論から6章に移る途中で、よく理解ができません。
    他の教科書で勉強したところでは、磁気光学効果を導く 複素電気感受率テンソルの虚部

    χxy ∝ Im{<0|x|j><j|y|0>}

    を出発点に、外部印加磁場Bzによる摂動を1次まで取り込み、 摂動を受けた状態を|j>'で、そのエネルギーをW'jで表すと

    |j>' = |j> + Σz|j>|k> / Wjk
    W'j = Wj - z|j> Bz

    となり(Wjk = Wj - Wk)、これを用いてχxyへの摂動 の影響を求め、古典ボルツマン平均を課す事で、最終的には ファラデー回転角θが

    θ(ω) ∝ Σ{f(ω) A + g(ω) (B + C / kB T)} Bz

    という具合に、所謂ファラデーA項、B項、C項に分離して表すことが でき(ここでf(ω)とg(ω)はスペクトル形状を決める関数。)、また 「光と磁気」のp77~80での議論と照らし合わせるとA項が反磁性項、 C項が常磁性項であるだろう、といった理解をしています。

    しかし、上述の議論は常磁性の系を想定したもので、強磁性の場合 には具体的にどのように扱ってよいのかがよく分かりません。
    特に6章にもあるように磁性体ではスピン軌道相互作用が重要と なりますが、その効果をファラデーA,B,C項にどのように取り込めば よいのかについて、少しお知恵を拝借できないかと思います。

    この辺りのことについて書いてある文献等を挙げていただけるだけ でも結構ですので、ご回答よろしくおねがいします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    L.D.Barron "Molecular Light Scattering and Optical Activity" Cambridge University Press (1982)
    という分子における光学活性の教科書であり、磁気光学活性と自然光学 活性を統一的に書いてある教科書として勉強しています。磁気光学活性 については常磁性状態(外部印加磁場Bz)を仮定した議論がなされています。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Oct 2004 00:52:08 +0900
    A1: 嶋田君、佐藤勝昭です。
     夏の学校の運営ご苦労様でした。若い方々と交流を持てて大変楽しかったで す。また、「光と磁気(改訂版)」をお読み頂きありがとうございます。
     さて、ご質問の件ですが、ご指摘の他の教科書にあるファラデー効 果の導出法は、初めから外部磁界Bzを仮定しているので、自発磁化のある強磁性 体には適用できません。量子論にもとづく磁気光学効果の導出は、付録C(p229) の久保公式からの誘導をお読み下さい。その結果はp71の式(4.40)にまとめられ ています。ボルツマン分布はρn、ρmなどの分布関数を通じて反映されます。
     この式を、実際の系に適用したのが、図4.6です。常磁性の場合は、図4.6(a) の基底状態、励起状態の↑と↓の準位が外部磁界によりゼーマン効果で(b)のよう に分裂したものとして扱います。一方、強磁性体では、交換相互作用によって↑ と↓の準位が分裂しています。基底状態におけるこの分裂の大きさΔgは、キュ リー温度をTcとするとkTcのオーダーです。Tcが高ければ、室温ではΔg>>kTなの で、(b)図における基底状態の↑にしか分布しません。その場合は、スピン軌道分 裂を考慮した(c)図において、Jz=+1/2からの遷移しか考慮しなくてよいので、図 4.7(a)の準位図となり、(b)のようにε'が分散型のスペクトル[反磁性項]となり ます。(ここで反磁性項というのは、このギョーカイの用語で、本当に反磁性だ という意味ではありません。)
     一方、常磁性状態では(c)図においてJz=-1/2からの遷移も関与してきます。す るとp80の図4.9に近い状況になって、温度Tや磁界の強さBによって形状が変化し ます。すなわちkT<<Δ=gSB/μ0 (低温または強磁界)だとε'が山形である常磁性項 的になりますし、kT>>Δ=gSB/μ0(高温または弱磁界)だと反磁性項が混じってき ます。
     {f(ω) A + g(ω) (B + C / kB T)} Bz
    においてkT<<Δ=gSBz/μ0の極限では第3項(Cの項)が強調されますが、これまでの 議論では、kT<<Δは常磁性項の場合です。逆にkT>>ΔになるとA項が主となります が、反磁性項となります。あなたの解釈でよいと思います。
     式(4.40)を出発点にして、図4.6に基づいて、分布のいろいろなケースを考え れば、上の式が導かれるでしょう。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Oct 2004 12:53:27 +0900 Q2: 佐藤勝昭先生
    早速のご回答ありがとうございます。丁寧な説明で大変参考になりました。

    さて、佐藤先生の回答にある議論とは逆に、常磁性状態を仮定したファラ デーA,B,C項の式を元に強磁性体状態を考えることにすると、Bzに対応 した外部磁場として、分子場的に有効磁場Beff_zを印加したと考え、ス ピン軌道相互作用を含むハミルトニアンに

       H' = - (2 Sz + Lz) Beffz

    というハミルトニアンを有効的なゼーマン項として取り込めばよいと 考えられます。この結果、Jは良い量子数ではなくなる一方、J_zは依然 として良い量子数なので、Jzで考えた「光と磁気」の図4.6(c)に対応し 後の議論は佐藤先生の仰る通りJz=+1/2のみを基底状態とすればよく、 スピン軌道相互作用によるエネルギー分裂ΔSOを示すA項、即ち [反磁性項]のスペクトルが表れると思います。

    しかし、一方で温度とスピン分極の議論からは、強磁性状態はkT<<Δg となり、分子場近似における有効磁場Beff_zは通常実験系で得られる 印加磁場B_zよりはるかに大きいと考えられ、常磁性状態のkT<<Δ (低温または強磁場)極限に相当し、C項即ち[常磁性項]のスペクトル が主要となるように思われます。

    結局、(B項は非対角要素でありもっとnaiveな問題なので)A項とC項 のみを考えると、強磁性状態においてそのどちらが優勢になるかという のは"分布のいろいろなケース"に依存し、一概には言えないということ なのでしょうか? 

    「光と磁気」に既に書かれている場合には、こちらの勉強不足ですので ご容赦ください。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Oct 2004 14:02:55 +0900
    A2: 嶋田君、佐藤勝昭です。
     強磁性体を扱う場合には、有効磁界を使って
    H' = - (2 Sz + Lz) Beffz
    を摂動項とするのは、まずいと思います。
     たとえば、強磁性体のFeにおいて仮想的に交換分裂とスピン軌道相互作用をパラメータ としてバンド計算を行い、磁気光学効果の大きさを見積もると、交換分裂には比例せず、 逆に小さくなる場合もあるが、スピン軌道相互作用には比例するという結果が出ています。 「光と磁気(改訂版)」p.148 図6.38参照して下さい。
     強磁性体の交換相互作用を有効磁界に置き換えることはよく行われますが、それは、あ くまで、分子場近似で自発磁化がでることを説明するための便宜的なもので、実際にその ような磁界が働いているわけではありません。電子結合における交換相互作用のトータル で自発磁化はでているのですから・・・。
     また、磁気光学効果を強い分子磁界のもとでのローレンツ力で説明することはできませ ん。その場合には、数千テスラというとてつもない分子磁界が必要です。(p.67) 強磁性 であるかどうかは、基底状態のスピン状態が↑と↓のどちらかにフィックスされているこ とを意味します。その条件の下で、スピン軌道相互作用によって、励起状態がどのように 分裂するかを考えるのです。基底状態が一方のスピンのみであれば、励起状態における行 き先が決まってしまいます。軌道角運動量子が±1違うところにしか行かないからです。
    このような単純な遷移では、シンプルな2準位型(反磁性)スペクトルが導かれます。温 度が上がって、基底状態において、分裂したお相手のスピン状態にも分布するようになれ ば、基底状態の分裂と、励起状態の分裂とが効いてきて、図4.6(c)のすべての遷移がから みあって、常磁性型や中間型のスペクトルが生じます。実際の強磁性物質におけるスペク トルはそれほど単純ではなく、YIGの場合(p.121の図6.4)に見られるように遷移強度と符 号の異なるいくつかの磁気光学スペクトルが競合してp122の図6.6のような複雑な形状に なっているのです。このスペクトルをBarronのA,B,Cに当てはめることはもとより不可能 です。
     L.D.Barronの本の扱いは、弱い印加磁界の場合についての計算結果に基づきやや現象論 的にA,B,C項に分けたもので、強磁性体に適用するのはもともと無理があると理解して頂 いた方がよいのではないかと存じます。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Oct 2004 11:39:17 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生。

    お忙しい中お付き合いいただき本当にありがとうございます。

    久保公式から導出した式(4.40)がまずありきで、そののちに一例として、 常磁性体の系では、印加磁場の摂動によるゼーマン分裂(A項)、状態の 混成(B項)、ボルツマン則に従うスピン偏極(C項)の影響を陽に表し た式を用いると便利である、ということですね。

    そうであれば、強磁性体の系においても、当然、現象論的にはA,B,C項に "類似した"項を導出でき、「光と磁気」の4.3節のスピン偏極率や、4.4節 のスペクトルの温度依存性などの内容が1つの式で議論でき、文章で書 かれるよりも理解しやすいかなと思いましたが、残念ながら僕の力不足 で導出できませんでした。

    しかし、ひとまず、「常磁性を表す式」から「強磁性を表す式」に、単 純には行けないということが理解できたことで、少しすっきりしています。
    時代のせいかもしれませんが、「ファラデーA,B,C項で表す式」をまるで 一般論であるかのように扱う教科書であったので誤解していたようです (Barronの本を含めBuckingham & Stephensの総説(1966)も)。今となっ ては一般論はむしろ久保公式から導いた式にあるわけですが。

    「新しい光と磁気の科学」では"よく使われるMCDの理論"として付録にあり ますが「強磁性体では使えないよ、悪しからず」とどこかに書いておいて 欲しかったです。

    非常に勉強になりました。ありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------

    439. 光ファイバーのレーリー散乱を減らすには

    Date: Thu, 14 Oct 2004 15:01:35 +0900
    東京電機大学 4年情報通信工学科 斉藤 と申します。
    光ファイバーの勉強でApproach for reducing the Rayleigh scattering loss in optical fibers という Journal of applied physics の 15 February 2004 の論文を選んで読んだのですが、いまいちレーリー散乱を減らすために緩和時間や仮想温度Tfなどでてきて訳してもよく内容がつかみにくいのですが、できればこの論文でやっていることを詳しく教えてほしいのでよろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Oct 2004 15:29:24 +0900
    斉藤君、佐藤勝昭です。
     大変失礼な質問の仕方です。私は、この論文を手元に持っていませんし、君の指導教員 ではないので、わざわざ取り寄せて解説する義務もありません。大学の研究室のゼミは基 本的には指導教員の責任です。学生が読んでわからないことがあれば、指導教員に聞くべ きです。先生の説明が不十分か、先生も理解していないときにはじめて「この文章のこの 部分がわからない」と具体的に書いて質問して下さい。pdfかなんかでその論文も添付す べきでしょう。エチケットを守って下さい。
    (この回答をメールしたら、宛先不明で返送されました。)
    --------------------------------------------------------------------------------

    440. 小孔からの空気のリーク

    Date: Wed, 13 Oct 2004 21:49:24 +0900
    Q: M社Oです。HPを見て質問致します。
    小さな穴を明けた容器を水没させたモデルを考えます。
    穴のサイズにより、空気が漏れない限界があります。
    多分、表面張力によると思うんですが、穴の最小サイズを求め方を教えて下さい。 このモデルは溶接した部品から空気がリークする限界を知りたいために質問します。 なお、匿名でお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Oct 2004 14:43:01 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。  流体力学の専門家に伺いましたが、話はそれほどシンプルではないようです。もし穴の 直径に比べ、穴の深さ(容器の厚さ)が十分大きい場合には、粘性流の取り扱いが必要で す。一方、穴の直径に比べ、容器が十分薄ければ、表面張力で扱えるだろうということで す。溶接では、前者であることが多いので表面張力だけでは説明出来ないと思います。
     実際の穴の大きさと長さ(容器の厚み)がどの程度なのか教えて下さい。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Oct 2004 15:45:08 +0900
    Q2: 東京農工大佐藤教授殿, M電機Oです。
    早速に、ご回答いただきましてありがとうございます。
    お問い合わせの件、下記の通りです。
    ①穴の深さは十分に薄いと考えていただいて結構です。
     (溶接部分が露出)
    ②容器の寸法:直径1.7mm、深さ0.5mm。
    検討をよろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Oct 2004 11:05:15 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     本学物理システム工学科の佐野先生(流体物理学)から
    添付のような回答が得られましたのでお届けします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    流体の膜孔透過
  • 細い管を水が通過する場合には,それに伴うパイプコンダクタンスが効くのですが,この場合には薄い板にあけた孔とみなせそうですので,前者は無視します.半径Rの孔のあいた膜の両側が粘性率μの流体で満たされており,膜の両側に圧力差δpがあるとすると,膜を通り過ぎる流体の体積(流量Q)はQ=(R3/3μ)δpと計算されます.
     この場合には,流体は連続体とみなしていますので,どんなに小さな孔でも流体は流れます.もちろん孔の半径が小さければ流量は非常にわずかになります.
  • 膜の片側だけに流体があり,圧力差δpがかかっている場合を考えてみます.
    もし,流体が孔を通り抜けないとすると,流れを止める何らかの圧力差,たとえば表面張力や化学ポテンシャルの差など,があるはずです.
     孔の付近を拡大すると,おそらく下の図のようになっていると思われます.たとえば,水の界面が孔の直径と同じ程度の球面状に膨らんでいると仮定すると,表面張力γによる圧力はδp=γ(2/R)程度です.この圧力差が静水圧ρghとつり合って流体の流れを留めていると考えると R~2γ/ρgh となります.たとえば,
      常温で水深が10cmのとき
      R~2γ/ρgh=2×72[dyne/cm]/(1[g/cm3]×980[cm/s2]×10[cm])~0.014[cm]=140[μm] 
      水深1mの場合には14μm程度
    よりも小さい孔であれば水が漏れないことになりそうです.
     なお,水の表面張力はかなり大きく,エチルアルコールでは23[dyne/cm]と約1/4に下がってしまいます.また,温度や接する気体の種類によっても異なりますので,御注意下さい.
    (注)小さな孔を明けた容器を水没させた場合には,下の図の上下を逆にして下さい.その場合の水深は水の表面から,孔の位置までの深さになります.

  • ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Oct 2004 11:26:01 +0900
    AA: 東京農工大佐藤教授殿、佐野教授殿、M電機Oです。

    丁重な回答をいただきましてありがとうございました。
    貴回答は、今後の開発に活用させていただきます。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    441. 表皮効果とリアクタンス

    Date: Mon, 18 Oct 2004 14:14:51 +0900
    佐藤研究室
    佐藤勝昭様

    はじめまして、O大学大学院工学研究科の博士後期課程1年のIと申します。
    私はこれまで、高周波回路を学び、現在は光デバイスの研究に取り組んでおります。
    この度、物性なんでもQ&Aへ質問したくメールをさせていただきました。

    早速で恐縮でございますが、
    先日、高周波の教科書を眺めていた際に、ふと以下のような疑問を持ちました。
    質問295番にもありますように、高周波の電流は導体中の表皮深さの領域にのみ流れ 位相遅れを生じ、表皮抵抗成分と内部リアクタンス成分が同じ大きさになるものと 学部の授業で習い、そう理解しております。

    そこで私の疑問は、表皮深さより薄い金属中を流れる電流についてです。
    私が思うに、導体の厚みを表皮深さより薄くしていくと、抵抗成分が増加するものの、 内部リアクタンス成分はなくなり、高周波電圧と同位相の電流が流れるかと思います。
    もしそうであれば、信号の位相を気にするような回路で、かつゲインが期待できる ような回路、例えば、アナログ信号処理回路や発振回路の設計では、抵抗成分が増えるのを 覚悟の上で、あえて寄生的な内部リアクタンス成分を減らす目的で導体の厚みを 薄くすることは有利になるでしょうか。回路の高周波化には内部リアクタンスを 減らすことは必要になってくるかと思うのですが、何とのトレードオフになるのか 先生のご教授、ご意見賜りたく存じます。

    研究室等、周囲には光の専門家の先生、先輩はおられますが、回路のことは 教えてもらえず困っております。どうか、よろしくお願い申し上げます。

    なお、大変恐縮ではございますが、Web掲載の際には匿名でお願い申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 16:00:46 +0900
    A: I様、佐藤勝昭です。
     表皮効果については404番
    「表皮効果と金属の反射」(A社Kさん)
    にでています。(html言語において<OL>と<LI>を使って表示しているので、Browserによ っては、番号が違って出るかも知れませんが)
    金属内の電界は、
    E=E0 exp(-iωt) exp{i(ωμ0σ/2)1/2z} exp{-(ωμ0σ/2)1/2z}  (10)
    で表されます。exp{i(ωμ0σ/2)1/2z}の項があるので、表皮深さよりzが小さいところ でも深さ方向の位相の遅れはどうしても生じてしまいます。
     これは、伝搬定数の式(8)K=(iωμ0σ)1/2 において、i1/2=(1+i)/21/2 を代入し たことによるもので、Slater-Frankの教科書の表現を借りると
    This tells us that the real and imaginary parts are equal, so that a wave inside a good conductor damps down to a small fraction of its intensity in a few wavelengths [このことは伝搬定数の実数部と虚数部が等しいことを示し、従って良導体 中の(深さ方向に進む)電磁波は数波長の間に減衰してその強度が非常にわずかになる。]
    電界が面内にあるので電磁波は面に垂直に進行します。このため、浅い部分と深い部分で は、その電界に位相差が生じます。それとともに、深さ方向に減衰するのです。
    従って、リアクタンス部分をなくすことはできないのではないでしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 17:14:27 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様

    O大学大学院工学研究科のIです。 お忙しい中、早速ご返事いただきありがとうございます。
    明確な回答をいただき感謝しております。

    先生のご返事に対する確認の質問をさせていただいてよろしいでしょうか。

    良導体の深さ方向に進む電磁波は表皮深さの間に急激に減衰し、 浅い部分と深い部分で、その電界に位相差が生じ、これによって作られる 電流も浅い部分と深い部分とで位相差が生じることから、厚みがゼロでない限り リアクタンス成分をなくすことはできないと理解しました。
    そして、これによって作られる電流に対する内部インピーダンスは、表皮深さまでの 平均(積分)を用いて、Zs=(1+i)/σδ(表記によっては(1-i)/σδ)と表されるかと 思います。

    そこで確認の質問ですが、今考えている表皮深さより薄い良導体のインピーダンス を考えるとき、ごくごく表面付近の電界あるいは電流の位相遅れは少ないことから、 薄い良導体の厚みまでの平均(積分)を考えたとき、結果的にこのような表皮深さ より薄い良導体の内部リアクタンスは少なく見積もられるのではないでしょうか。 もちろん、この時の抵抗成分は非常に大きく現実離れしていて、使い物にはならない かと思いますが、インピーダンスのリアクタンス成分という観点から先生のご教授、 ご意見賜りたく存じます。。

    博士課程にもなり、このような現実離れした質問ばかりで恐縮ではございますが、 考え方が合っているかだけでもどうか、よろしくお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 20:50:15 +0900
    A2: I様、佐藤勝昭です。
     今、電界のみを考えるなら、表面付近では位相の遅れはないのでリアクタンス成分はゼ ロと言ってもよいでしょう。しかし、磁界のことを考える必要があります。表面付近には 磁界の変化を打ち消そうと電流が流れます。これによるインダクタンスを評価しなければ なりません。このことは、Slater Frankの教科書のChap X Section 6をお読み下さい。申 し訳ありませんが、私はこれからどうやってインダクタンスを導いてよいかわかりません。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 21:04:15 +0900
    AA: 佐藤勝昭様

    O大学大学院工学研究科のIです。
    お忙しい中、幾度にもわたりご返事いただきありがとうございます。

    先生のご助言により、少し考えが明るくなりました。
    私の中では、磁界の影響については考慮していませんでした。
    本質問の回答を得るべく、指示いただきました教科書を勉強したいと思います。

    私の中で何か明確なものを得ることができましたら、 ご報告させていただきたく思います。
    貴重なお時間をご提供いただきありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------------

    442. 銀パラジウムの物性値

    Date: Tue, 19 Oct 2004 10:36:43 +0900
    HPを見ての質問です。

    銀パラジウムの物性値について教えて下さい。

    組成比等にもよると思いますが、代表的な値でも構わないので 物性値(熱伝導率・密度・比熱・抵抗率と温度係数etc)を教えて 下さい。

    また抵抗率は何℃まで線形に変化するものなのでしょうか?
    Ag、Pd単体についてでも良いので教えて下さい。
    匿名希望:C社K氏としてください。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 19 Oct 2004 14:28:48 +0900
    C社K様、佐藤勝昭です。
    一般に、元素金属の物性値を知るには、
    webelement.comのsiteをご利用されると便利です。
    --------------------------------------------------------------------------------
    お尋ねのPdの熱伝導率・密度・比熱・抵抗率と温度係数ですが、
    熱伝導率Thermal conductivity [/W m^-1 K^-1]: 72
    線膨張率Coefficient of linear thermal expansion [/K-1 multiplied by 10^6]: 11.8
    固体の密度Density of solid [/kg m^-3]: 12023
    比熱Cp[/J K^-1 mol^-1]: 26.0
    電気抵抗率Electrical resistivity [/10^-8 Ω m; or mΩ cm]: 10
    (温度係数は載っていません。)
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Agについては
    熱伝導率Thermal conductivity [/W m^-1 K^-1]: 430
    線膨張率Coefficient of linear thermal expansion [/K-1 multiplied by 10^6]: 18.9
    固体の密度Density of solid [/kg m^-3]: 10490
    比熱Cp[/J K^-1 mol^-1]: 25.4
    電気抵抗率Electrical resistivity [/10^-8 Ω m; or mΩ cm]: 1.6
    -------------------------------
    Ag-Pd合金についてのデータを調べてみたのですが、歯科医用や、接点用として市販され ているようですが、組成と対応させた正確な物性値については、手元および図書館にある 資料では適当なものが見つかりませんでした。田中貴金属工業やジョンソンマッセーなど はデータをお持ちと思いますので、お尋ねになってはいかがでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------------

    443. Mie散乱と表面プラズモン共鳴

    Date: Sat, 16 Oct 2004 00:46:16 +0900
    佐藤 勝昭先生
     いつも楽しくHPを拝見しております。以前,間接遷移について質問致しました化 学系卒のO(匿名でお願い致します)です。徐々に固体物理の面白さに引き寄せ られています。

     Drudeモデルやハイブリッドプラズマに関する質問をたびたび見かけますが,今回 はMie散乱を勉強していて疑問に思ったことを二つ質問させていただきます。
    (1)球形の金や銀コロイドの局在表面プラズモンポラリトンの共鳴周波数につい て,バルクのプラズマ振動数の√3倍と表す式をよく見かけます。これはサイズの関 数ではありません。また,(粒径が光の波長より十分小さい領域で)共鳴周波数をサ イズの関数として表した式も見かけたことがありません(もしありましたら,不勉強 をお許し下さい_今回お聞きしたいところはまさにこの点です)。
     一方,Mieによる厳密解を用いて,球形の金や銀コロイドのスペクトルを書かせる と共鳴周波数は,(粒径が光の波長より十分小さい領域であっても)サイズの減少と ともに高エネルギーシフトすることが分かります。Mie散乱の式では,双極子,四極 子,六極子...の項は付加的に足しあわされるだけですので,多極子の足し合わせで みかけ上シフトすることはイメージできても,双極子の項だけでもシフトすることが よく理解できません。ちなみに,金・銀の誘電関数はバルクの実験結果(文献値)を 用い,電子の表面散乱等による誘電関数のサイズ効果を取り込まなくても,Mieによ る厳密解で書いたスペクトルはシフトしました。
     その物理的意味合いはどのように解釈すればよいのでしょうか?

    (2)平面の表面プラズモンポラリトンの分散関係(ω-k曲線)は頻繁に見かけます が,球形コロイドに関する局在表面プラズモンポラリトンの分散関係(ω-k曲線)は 見たことがありません。なにか理由があるのでしょうか? 幾何学的形状の違いで境 界条件が変わってくるため,分散関係に違いがでることまではなんとなく推測できま したが,(まだ境界条件の取り扱いに不馴れで)実際に分散関係を導き出すまでに至 りませんでした。

     まだまだ不勉強なことは重々承知しておりますが,Mieの厳密解の導出等,難解で あり十分解釈が及びません。御質問させていただき,勉強の助けさせていただけませ んでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 17 Oct 2004 10:26:27 +0900
    O様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございました。
    (1) Mie散乱についてのご質問ですが、残念ながら私はMie散乱の問題を自分で解いたこ とがありません。Mie散乱は微小球による電磁波の散乱をMaxwell方程式を用いて計算す るだけのことですが、入射光は平面波、散乱は球面波なので、数学的には平面波を球面 波で展開するプロセスが入り収束の問題がでてきます。また、2重虹の問題に見られる ように多重反射が関係し、非常に複雑です。最近は、さまざまな計算プログラムが開発 されていますが、その結果の物理的解釈はそれほど単純ではないようです。
     もっと単純な多層膜における多重反射干渉の問題であっても、実際にやってみるとプ ラズモンのピーク付近のスペクトル形状は層厚によって大きく変化します。これは実数 部と虚数部が複雑に絡み合うためと考えられますが、形状の変化によってピーク位置は シフトします。このことを物理的解釈してみてもあまり意味がないと思うのです が・・。
    (2) 球表面におけるプラズモンの分散関係が示されていないのは、直交座標系を使えな いので、数式が面倒になるためだけの理由ではないでしょうか。球面になっても物理的 な本質は変わらないと思うのですが・・。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 11:05:57 +0900
    佐藤勝昭 先生
     ご返信ありがとうございます。Mie散乱で得られる結果の物理的解釈はそれほど単 純ではないということですね。
     誘電率εmの媒質中に分散した誘電率ε(ω)をもつ金属の球形微粒子を考えた場合, (波長に対して半径が十分小さいとき)いくつか表面プラズマ振動数を表す式があります。
    ・ε(ω) = - {(l-1)/l}εmをみたすωで表面プラズマモードがみられる。
    ・ωsp = ωp /{(1 + 2εm)^1/2}
    これらはいずれもサイズの関数ではありません。
     しかし,(波長に対して半径が十分小さくても)実測値では共鳴周波数はサイズ依存性 を示しますし,Mieの厳密解によるスペクトルでもサイズ依存性を示します。
     お聞きしたかったのは,ε(ω) = - {(l-1)/l}εmなどの式やDrudeの式では表面プラズモ ンの共鳴周波数はサイズの関数ではないにも関わらず,Mieの厳密解ではサイズの関数とな っているのは,両者にどのような違いがあるからなのでしょうか?
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 18 Oct 2004 14:55:55 +0900
    O様、佐藤勝昭です。
     Drudeの式はあくまで電子論的に内部の電子運動がどのような分極を引き起こし、誘電 関数に反映するかということを意味しているだけです。
     一方、Mie散乱は、このような誘電関数をもつ球状の物質があるとき、そこに到達した 電磁波がどのような散乱を受けるかということをあらわしています。
     散乱のスペクトルに現れるときには、もとの誘電関数がゼロを横切る位置(プラズマ周 波数)でピークになるとは限らないということではないでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------

    444. 回折格子とプリズム

    Date: Wed, 20 Oct 2004 05:25:15 +0900
    白色光を虹色に分ける素子としてプリズムがありますが回折格子を用いた分光技術と プリズムの原理にはどのような差異があるのでしょうか。
    大学2年 電子情報工学科  佐々木駿
    -------------------------------------------------------------------------------
    佐々木駿君、佐藤勝昭です。
     君は、高校を卒業しているはずですよね。高校で物理をとらなかったですか?
    物理IBの「波動」で学んだはずですよ。
    たとえば、第1学習社刊「新物理IB」(平成10年版)では、p129に回折格子の原理が、p130 にはプリズムの原理が書かれています。教科書の記述をそのまま書いておきますと、
    --------------------------------------------------------------------------
    ●回折格子
     ガラスのような透明な物質の表面に、1cmあたり500-10000本の平行で等間隔のすじを多 数引いたものを回折格子という。回折格子に光をあてると、すじの部分は不透明で、すじ の間の透明な部分がスリットの役目をするので、たくさんのスリットが平行に並んでいる のと同じことになる。光が格子の面に垂直に入射する場合、格子の間隔をd、光の波長を λとすれば、入射光と角θをなす方向に明線が得られる条件は、次式で表される。
     d sin θ=mλ  (m=0, 1, 2, ・・・)
    ●光の分散とスペクトル
     光の分散・・光の波長によって、屈折率が異なるので、白色光はプリズムにより赤色か ら紫色までの光にわかれる。
     スペクトル・・分散によって分けられた光の帯。発光スペクトルには、線スペクトルと 連続スペクトルがある。
    --------------------------------------------------------------------------

    445. 分散と群速度

    Date: Tue, 19 Oct 2004 03:25:36 +0900
    佐藤勝昭先生

    毎度,HPを楽しく見ております.
    さまざまな内容があり見てると大変勉強になります.

    K大学修士1回生Yといいます。できれば匿名でお願いします.
    ここで,質問をしたいのですが,
     レーザの短パルスが,SiO2などの結晶を伝播するとパルスは広がります.その効果を 勉強していて分からないことがあります.
     まず,パルスは,さまざまな波長をもっていてそれらを重ね合わせたものであるの で,群速度の速度をもつと考えています.
     群速度はセルマイヤーの公式より波長に対しての群速度が求まります.しかし,疑問 なのが群速度はもともといろんな波長成分を足し合わせたものであって,群速度の波 長というものが理解できません.この波長はもともとパルスの波長成分と考えてし まっていいのでしょうか?
     つまり,もともとの波長の広がりがそのまま群速度における波長の広がりとなるので しょうか?

     また,大変あほな質問かもしれませんが
     パルス分散は,群速度の波長広がりが関与しているんですか?直感的には位相速度が 波長によって異なるためにパルス幅がのびるように思います.しかし,群速度の微分 がパルス広がりを決める(GVD)ということなのはなぜなのでしょうか?

    現在,非線形ファイバ光学という本を読んでいて,いろんな教科書をみて群速度をし らべたのですがどれも同じ書き方しかなく,どうもピンときません.

    長々とお書きしましたがどうかお教えください.
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 15:09:40 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     私より短パルスを専門に研究されている本学の三沢和彦助教授に尋ねましたところ、下記のような回答を頂きました。
    --------------------------------------------------------
    定性的な説明です。
  • まずパルスにおける位相速度と群速度の違いは、
    ・位相速度:パルスに含まれる周波数成分ごとの速度v(ω)=c/n(ω).
     ただし、1/v=k/ω
    ・群速度:多数の周波数成分からなる波のかたまりとしての速度1/vg=∂k/∂ω
     となっています。
    問題のパルス分散は波数の周波数に対する2階微分(∂^2k/∂ω^2)とで表せるわけです が、これを「群速度の波長広がり」ととらえるとすると以下のような説明になります。
     パルスの波長成分をすべて集めると一つのパルスを形成しますが、形式的にパルスの波 長成分をいくつかのグループに区切ってやると、それぞれの波長のサブグループがまたパ ルスを作っていると考えることもできます。サブグループのつくるパルスを全部集めると 全体で一個のパルスに見えているという訳です。
     各サブグループの中心波長は異なっているので、「群速度の波長広がり」はそれぞれの サブグループの群速度が異なっている状況を説明しています。ここで、サブグループごと の群速度が異なると、初めはひとかたまりになっていたサブパルスが、伝搬していくうち にばらけてきて、全体の形を広げる結果となります。
  • ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 19:56:56 +0900
    Q2:佐藤勝昭先生

    群速度の波長ということは,大変よく分かりました.
    ありがとうございました.

    そこでまた,疑問に思ったことがあります.
    群速度の波長というものは,どのようにして分かるのか?ということです.
    独立した波長での速度は位相速度です.
    では,群速度はもとの波長とは異なるのでしょうか?
    群速度とパルス幅が分かれば,波長はわかるような気もします.
    しかし,そうするとパルス幅が伸びると波長もかわるのでしょうか
    またそうすると,前回の質問でのサブグループに分けたときどの程度広がっているのかというのは分かるのでしょうか?
    もし,実験などでその広がりを見てみようとして分かるものなのでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 14:50:15 +0900
    A2: 三沢先生から次の回答をもらいました。参考にして下さい。
    -------------------------------------------------------------
  • 群速度の波長というのは、厳密にいうとありません。
    ここでは、パルスを形成する波長成分の中心波長と考えてください。
    群速度とは、波長と振動数を持つ「波」の速度ではなく、その包絡関数全体が進む速度を表しています。
    ですから、群速度の波長広がりというよりは、「その群速度を持つ波のかたまりの中心波長のちがい」と表現するべきものです。
    位相(=波数×伝搬距離)の1階微分が群速度で2階微分がパルス広がりを表すという部分は、
    Femtosecond Laser Pulses, (C. Rulliere, Ed., Springer) p.28
    あたりを参照されるとよいでしょう。
  • -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Oct 2004 18:56:42 +0900
    AA: Yです.

    佐藤先生、三沢先生、大変ありがとうございます.
    基本的なことのようなのですが実感がわかず,難しいです.
    でも,先生方の助言を参考にしながら Femtosecond Laser Pulses, (C. Rulliere, Ed., Springer) p.28
    の本を読んでみたいと思います.
    また,なにかわからなかったら質問させてください.
    ----------------------------------------------------------------------

    446. 接地用のSUS板

    Date: Wed, 20 Oct 2004 05:13:10 +0000
    Q1:名前 石黒 亮一
    所属 (有)ミズノ金型製作所
    突然のメール、失礼します。
    SS材とSUS材とでは、SS材の方が導通が良いかと思いますが、 SUS材をアースの媒体として使用しても問題はないでしょうか?
    導通は確保できますでしょうか??
    お忙しい所申し訳ありませんがご回答の程、宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 20 Oct 2004 23:33:54 +0900
    A1: 石黒様、佐藤勝昭です。
    SSの電気抵抗率は4.52×10^-8 ohm.mとなっています。
    SUSの抵抗率は72 × 10^-8 ohm.m ということです。SSより1桁抵抗が高いですね。
    SSと同じ抵抗値にするには、断面積を1桁大きくするか、同じ太さなら10本束ねれば同 じ効果があるでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 01:46:24 +0000
    Q2: 佐藤様
    ご回答ありがとうございます。
    すいません。条件を付け加えてもよろしいでしょうか?
    SUS材(700x570xt4)をアースの媒体として使用するかSS材 (700x570xt4.5)をアースの媒体として使用するかという選択がありまして、 当然SS材の方が導通がいいわけですが、上記大きさのSUS材をアースの媒体にし ようと思ってます。
    なぜSUS材を敢えてアースの媒体にするかと言いますと、SS材にすると当然表面 処理を施します。そこにアースの配線を繋げようとすると表面処理した一部をはがして接続しなければ なりません。そうすると、腐食の問題が起きてくるのでSUS材を使用することになりました。
    佐藤様の回答によりますと、SUS材は「SS材より1桁抵抗が高い」
    「SSと同じ抵抗値にするには、断面積を1桁大きくする」
    ということですが、簡単に言いますと、上記の条件でSS材の断面積よりもSUSの 断面積を一桁大きくしてあげれば同じ効果(導通)が得られる。という考えでよろしいでしょ うか?
    お忙しい所申し訳ありませんがご回答の程、宜しくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 14:17:24 +0900
    A2: 石黒様、佐藤勝昭です。
     700mmというのが長さ方向であるとして抵抗値を見ますと
     SS材の抵抗はR=4.52×10^-8 ohm.m×0.7 m/(0.57 m x0.0045 m)
      =1234×10^-8 ohm=12.34μΩ
     一方SUS材の抵抗はR=72 × 10^-8 ohm.m×0.7 m/(0.57 m ×0.004 m)
      =22105×10^-8 ohm~221μΩ
    となります。いずれも電気抵抗は十分低く接地用に使えると思います。
     アースの目的が、直流~低周波における漏電などに対する保護接地を目的とするか、 EMC対策として、高周波接地を目的とするかで違ってきます。高周波は表皮効果のため表 面しか流れないので、太くても意味がありません。保護接地の場合太くすれば導通を稼ぐ ことができますが、高周波接地の場合は、表面積を稼ぐために線を何本もよりあわせたも のが有効でしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 06:23:08 +0000
    AA: 佐藤様
    早速のご回答ありがとうございました。
    アースの目的としましては電気を逃がしノイズ対策として取付けます。
    佐藤様のご回答では「電気抵抗は十分低く接地用に使える」とのこと。
    なので、SUS材を選択しようと思います。
    もしそれで不具合が起きましたら何かしら対策を打とうとおもいます。

    また何かありましたら宜しくお願い致します。
    ありがとうございました。   
                     石黒。
    ----------------------------------------------------------------------------------

    447. 磁気テープの層厚と入出力特性

    Date: Thu, 21 Oct 2004 11:11:44 +0900 (JST)
    Q: 大学生、浜田、磁気テープの磁性層の厚さの差によってなぜ入出力特性に違いが出るのでしょうか?
    --------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 11:29:26 +0900
    A1:浜田君、佐藤勝昭です。
     どこの大学の何学科の何年生ですか。
    また、何の入出力特性ですか。この質問だけでは、何を測定したのかわからないので答え られません。また、もし学生実験の内容であれば、その考察のヒントは、実験手引き書や、 授業での講義ノートなどにあるはずです。それを「なんでもQ&A」に聞くのはカンニング と同じです。その場合はお答えできません。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Oct 2004 23:00:10 +0900 (JST) Q2:埼玉大学工学部機能材料工学科3年の浜田和です。
    まず磁気テープに電圧を変化させて、そのときの再生出力電圧をオシロスコープで読み取り、磁性層の厚さによってどのような違いが生じるか。という実験なのですが、、、、、、、
    結果は磁性層が薄い方が6dB/oct.特性からのずれがすくなく、性能がよいということになったのですが、僕が調べた所、膜厚が厚いと自己減磁作用によって損失がおきるので、薄い方が再生損失が少なくて性能が上なのではと考えたのですがちがいますか?
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 12:40:57 +0900
    A: 浜田君、佐藤勝昭です。
     磁気テープの学生実験でしょうか。アナログのオーディオ周波数の記録ですね。通常の テープレコーダの場合、ACバイアス法が使われています。Magnetic Storage Handbook (McGraw-Hill, 1996)によると、通常のACバイアス法によるアナログ記録の場合には減磁 作用による損失は記録波長が非常に短くない限り無視出来ると書かれています。むしろ厚 いと記録領域(recorded zone)が表面付近にとどまって、膜厚方向に広がっていないため に、信号出力がでなかったのではないかと思いますが。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 14:19:48 +0900 (JST)
    Q3: 埼玉大学工学部機能材料工学科3年の浜田です。返信ありがとうございました。
    が僕の質問の仕方が悪くて佐藤先生に勘違いをさせてしまいました。佐藤先生は
     [厚いと記録領域(recorded zone)が表面付近にとどまって、膜厚方向に広がっていないため に、信号出力がでなかったのではないかと思いますが。]と返信されましたが、
    実際実験では、厚い方がよい結果になりました。
    この結果はただ単に厚い磁気テープの方が磁性層の体積が大きくそれから出る 残留磁束が薄いテープよりも多く、再生ヘッドのコイルを通る磁束が大きいからですか?
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 15:08:29 +0900
    A3: 実験結果の解釈としては、それでよいと思います。それでは、最初書かれた
    「結果は磁性層が薄い方が6dB/oct.特性からのずれがすくなく、性能がよいということになった」というのは間違いだったのですか?
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 23 Oct 2004 23:55:55 +0900 (JST)
    浜田です。はじめ僕が書いた「結果は磁性層が薄い方が6dB/oct.特性からのずれがすくなく、性能がよいとい うことになった」というのは間違って書いてしまったようです。申し訳ございませんでした
    ---------------------------------------------------------------------------------

    448. 金属の接触電位差

    Date: Fri, 22 Oct 2004 06:32:31 +0900
    筑波大学4年生の大場正和と申します。HPを見ての質問をさせていただければと思 います。

     図解による半導体デバイスの基礎 玉井著 コロナ社の記述に異種金属同士を接触 せた場合に二つの電位差を持つことがかかれてありました。異種金属の接合部にはガ ルバーニの電位差、金属の接触面と反対側の開放端に電圧計を取り付けた場合外部回 路に対してボルタの電位差を持つという記述です。ここでいうところのボルタの電位 差は、金(仕事関数5.1eV)と白金(仕事関数5.65eV)を接触させた場合、外部回路 では0.55Vの電圧を測定できるというのではないかということです。

     実際に金と白金を接触させてみましたが電圧は計測できませんでした。開放端面の ところで仕事関数差に相当する接触電位差が発生するようにかかれてあります。同書 によれば、電気配線や接続ターミナル、コネクタ等の接触部に電流を流した場合に印 加した電圧に対して直列に加わることになるので、電圧を印加する方向の違いによっ て、接触電位差が差し引かれたり加わったりした電圧によって電流が流れると電流の 大きさがことなるとかかれてありました。これは金属同士でも整流作用があるんだと 思いました。

     近くにあった銅や白金にビスマステルル半導体を接触させると電位差が電圧計で測 ることができました。室温で計測してたのでビスマステルル半導体と金属の接触部と 電圧計回路の中では温度差はないと思います。ですから、熱電対で利用する熱起電力 は発生しないだろうと思ったので、金属同士の接触では接触電位差は計測できないけ ど、半導体と金属なら接触電位差が計測できると理解しましたがこれは本当に正しい のでしょうか?ケルビン法を用いてフェルミ準位の一致で移動した電荷を移動させて 計測すると接触電位差が計測できることを調べてわかったので、ケルビン法なら接触 電位差を測定できて、ただ電圧計を開放端にくっつけただけでは接触電位差を測定で きないということに行き着きました。電圧計の内部抵抗は大きいので電流が流れてし まい接触電位差が測定できないということはないと考えています。

     以上とは別に、フェルミ準位が揃うように電子が移動すると、接触している金属は 帯電することになると思います。接触面では電気2重層ができあがっている状態で しょうか。フェルミ準位が揃っているわけですから接触面は電位が同じということだ と思います。しかし、電気2重層があるので電位差があるはずです。折角電子が移動 しても、電子が居なくなった正に帯電した金属から電子が引っ張られることはないの でしょうか?フェルミ準位がそろうように電子が移動した場合、電子が居なくなった 金属は今度電子を引っ張ることになると思いますが、移動する電子の数が多くなると クーロン力も大きくなり、その引っ張る力とフェルミ準位差分のエネルギーをそろえ ようとするものが釣り合う時点でとまるのだろうと考え、結局接触面ではガルバーニ の電位差ができるということで落ち着いています。この電気2重層をつくっている電 子は、接触部に拘束されて動くことができないという仮定をすると、接触面では数原 子ぐらいの距離で電位差ができていることとして、外から見ると全体としては+-ゼロ という状態だから外部回路で電圧は測定できないというように考えました。

    クリックすると拡大します
    フェルミ準位が一致するために実際どれくらいの電子が移動するのでしょうか?1c m^3に10^23個ぐらい原子があって、表面1cm^2に10^15個ぐらいがフェルミ準 位の一致に関わり、ほとんどが表面だけの電子のやり取りですむため、バルク内部の フェルミ準位を影響しないのでしょうか?だから、熱電対のように形状に関係なく、 接触部の温度差だけに依存するような現象がみられるのでしょうか?

     また、私はフェルミ準位が揃うように電子が移動するのだから、エネルギーを持っ てきた電子が入った金属のフェルミ準位は上昇する。そのため真空準位までのエネル ギー少なくなるのだから仕事関数の値も小さくなる。電子が無くなった金属はフェル ミ準位が真空準位から遠ざかるのだから仕事関数が大きくなると思っていました。こ のときの真空準位との位置関係を図にしましたのでご教授いただければと思います。

     どうぞよろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 13:11:14 +0900
    A:大場君、佐藤勝昭です。
     pn接合でも同じなのですが、一般にwork functionの違う異種物質を接触させてフェ ルミ準位がそろうのは、外部回路が短絡されている場合のみです。また半導体と金属のち がいは、半導体では、界面付近にキャリアのない空乏層ができ、バンド端とフェルミ準位 の相対的エネルギー位置が移動することができるのに対し、金属では空乏層ができないこ とです。従って、接触部分に障壁がなければ(表面の酸化物や汚染物がなければ)開放端 に電圧が見られるはずです。一方、接合と反対側の面を短絡すると、フェルミ準位がそろ うまで電荷が流れ、接触界面付近に2重層ができ、つり合ったところで電流がながれなく なります。
     あなたの文章が長くて何を教えて欲しいのか読みとれませんので、もっと簡潔・明快に 質問を整理して下さい。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 21:16:29 +0900
    Q2: 佐藤先生
     回答ありがとうございました。私の知りたいことを箇条書きにまとめることにしま したので、ご教授いただければと思います。

    ●外部回路を短絡させるというのは棒状の金属片面同士を接触させることとおなじで あると思いますがよいですか?
    ●棒状の異種金属を一列にして片面同士を接触させたときのボルタの電位差とガル バーニの電位差を計測するにはどうすればよいか?普通の電圧計では無理なのか?原 さんという方に電位差とくにボルタの電位差は計測できないことをいわれました。
    ●金5.1eVと白金5.65eVをきれいな接触面で接触させた場合、外部回路で電圧を測定 すると0.55Vになる。
    ●異種金属2種類や3種類をループ状にした場合は接触電位差は生じなくなるのはなぜ なのか?
    ●トンネル効果が生じない程度の厚さの絶縁膜を挟んだ棒状の異種金属の片側接触の 場合は熱エネルギーなどを加えない限りフェルミ準位は揃わないで間違いは無い。
    ●棒状金属に半導体を接触させた場合でも拡散電位差は異種金属同士の接触どうよう に電圧計では測れないのか?
    ●ペルチェモジュールのように金属とn、p型金属を接触させた場合、教科書にある ような電圧がかかった状態で、電子がp型半導体の接触面で正孔と結合し、正孔が価 電子帯を移動し、金属との接触面でエネルギー準位の高い方へ移動し、金属からn型 半導体の伝導帯へジャンプし、伝導帯を電子が移動して、 金属との接触面でエネルギー準位の低い方へ移動する、電子エネルギーの状態を書い た図と同じように、p型半導体では電位が下がって、n型半導体では電位があがる図 を計測することは出来ないのですか?特に電圧計では無理なのでしょうか?
    ●電圧計でもKFMでも測定しているのは表面電位だと思いますが、具体的にいうと教 科書の説明で使うようなフェルミ準位を書いた接触の図でいうとどこにあたるので しょうか?

     質問を分けましたのですがやっぱり多くなって申し訳ありませんが、非常に悩んで いますのでご指導をいただけると、飛び上がるほどに嬉しいです。どうかよろしくお 願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Oct 2004 17:32:32 +0900
    A2: 大場様、佐藤勝昭です。
    私は、この方面の専門家ではないのと、手元に適当な教科書がないので、正確にお答え出 来るか自信がありませんが、ひととおり、私の考えた範囲でお応えします。
    > ●外部回路を短絡させるというのは棒状の金属片面同士を接触させることとおなじで
    > あると思いますがよいですか?
    ・たしかに、半導体と半導体の接触なら背面同士を金属線でつなげばよいですが、金属の 場合はそうすると第3,第4の接触を作るので意味はないので、ご指摘のように金属同士 を直接接触するというのでよいと思います。

    > ●棒状の異種金属を一列にして片面同士を接触させたときのボルタの電位差とガル
    > バーニの電位差を計測するにはどうすればよいか?普通の電圧計では無理なのか?原
    > さんという方に電位差とくにボルタの電位差は計測できないことをいわれました。
    ・接触した状態で接触電位差を測定することがなぜできないのでしょうか。Voltaの法則 をご存じでしょう。岩波理化学辞典の表記を借りると、「同じ温度でいくつかの導体を直 列に連結したときの両端の電位差は、両端の金属を直接接触させたときの電位差(接触電 位差)に等しい」という法則で、「この法則が成り立てば上述の両端の導体を接続したと き回路には電流が流れない。この法則は、金属の系列に対しては例外なく成立する」と書 かれています。電圧計のリード線が銅線だとすると、両端というのは銅線どうしになりま すから、接触電位差はなく電圧は読めません。
    ・Voltaが1798年に発見したのは、異種の(絶縁した)金属板を接触させてから引き離すと、 両金属が反対符号に帯電することです。これは、接触電位差による帯電と解釈されていま す。従って、この電荷量を精密に測定出来れば、金属と金属の接触電位差が測れるわけで す。しかす、この電荷はすぐに空気中の荷電粒子によって中和されてしまうので、通常の 測定法では測定出来ません。超硬真空中で非接触・非破壊で測定するのがケルビンプロー ブ法です。
    ・きれいな接触面といっても、原子レベルで見るとどこか凸の部分があって、トンネル障 壁を介して接触していると考えられています。トンネル効果が起きて、電荷が流れ、フェ ルミ準位がそろってしまうとこれ以上電荷は流れません。この電荷は、超高真空でない限 り、空間電荷によって中和されているので測定出来ません。ケルビン法のように試料を振 動させるとか何かの変化を与えると、空間電荷が追いつけないので外部回路に電流が流れ 観測出来るのでしょう。(丁度、自発分極をもった強誘電体の表面の電荷は空間電荷のた めに中和されているので強誘電体の両端には電圧が出ませんが、加熱したり、衝撃を与え ると電圧として観測されるのと同じではないでしょうか。これらはそれぞれ焦電効果、圧 電効果と呼ばれています。)

    > ●金5.1eVと白金5.65eVをきれいな接触面で接触させた場合、外部回路で電圧を測定
    > すると0.55Vになる。
    ・接触電位差が0.55Vということは正確ですが、上に述べた理由で電圧計をつないでも電 圧としては観測出来ません。

    > ●異種金属2種類や3種類をループ状にした場合は接触電位差は生じなくなるのはなぜ
    > なのか?
    ・上に述べたVoltaの法則によります。

    > ●トンネル効果が生じない程度の厚さの絶縁膜を挟んだ棒状の異種金属の片側接触の
    > 場合は熱エネルギーなどを加えない限りフェルミ準位は揃わないで間違いは無い。
    ・その通りです。

    > ●棒状金属に半導体を接触させた場合でも拡散電位差は異種金属同士の接触どうよう
    > に電圧計では測れないのか?
    ・pn接合やショットキー・ダイオードの両端に電圧を生じないのは、拡散電位差は接合 部で電荷の移動が起きるが、移動によって生じた空間電荷により電気二重層が形成され、 電荷のそれ以上の移動が妨げられることをポテンシャルとして表したもので、外部には決 して現れないからです。外部に現れたとしたら両端を短絡したとき電荷が流れますから・・ ・。

    > ●ペルチェモジュールのように金属とn、p型金属を接触させた場合、教科書にある
    > ような電圧がかかった状態で、電子がp型半導体の接触面で正孔と結合し、正孔が価
    > 電子帯を移動し、金属との接触面でエネルギー準位の高い方へ移動し、金属からn型
    > 半導体の伝導帯へジャンプし、伝導帯を電子が移動して、
    > 金属との接触面でエネルギー準位の低い方へ移動する、電子エネルギーの状態を書い
    > た図と同じように、p型半導体では電位が下がって、n型半導体では電位があがる図
    > を計測することは出来ないのですか?特に電圧計では無理なのでしょうか?
    ・温度差があったり、光を当てたりした場合には、定常状態からずれるので、開放端子電 圧が生じるか、外部回路を短絡すれば電流が流れます。

    > ●電圧計でもKFMでも測定しているのは表面電位だと思いますが、具体的にいうと教
    > 科書の説明で使うようなフェルミ準位を書いた接触の図でいうとどこにあたるので
    > しょうか?
    ・本来なら真空準位との電位差を測定すべきものでしょう。実際の系では、空間電荷で理 想的な準位図からずれているので、摂動を加え電位の変化分を検出するのだと思います。

    これ以上のことは私もわかりません。表面・界面の専門家にお尋ね下さい。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Oct 2004 20:31:24 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
     仕事関数等に関する回答などもあり造詣の深い先生だと思い質問させていただきま した。先生の専門から外れたところでの質問にも関わらず、丁寧に調べ回答して頂き 大変ありがたく思います。
     今後もどうぞよろしくお願いします。
    大場
    --------------------------------------------------------------------------

    449. 示温塗料

    Date: Fri, 22 Oct 2004 09:59:03 +0900
    Q: 川村節夫  60歳 所属  東京都行政書士会
    普通高校で物理を取り欠点のレベルです
    ご質問
    塗料で加熱温度に反応して色が変化するものがあります。昔見ましたのは酒の燗で人 肌になると変り飲み頃を知らせるというものです。現在のレベルでは何度くらいで色 が変るものが出来ているのでしょうか?塗料ですと130度ぐらいになると燃えてしま うのではないか・・と思います。小学生のボランテア実験で使いたく、130度-135度に なったことを知ることのできる示温塗料は開発されておりましょうか?液体を加熱し たら130度になったとしることのできる入手しやすい物が有れば・・と探しています・。 セラミツクのチップか何かでもいいのですが・・・物理学を大学で学んだというボラ ンテア仲間に聞きましても分からないとのことでご質問となりました。宜しくお願い 致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 11:42:34 +0900
    A: 川村様、佐藤勝昭です。
    示温塗料については、
    米国のTechnical Industrial ProductsというサイトにThermal paintとして出ています。
    Multi-Change Indicating Thermal Paint というのがあって、 41 standard change points available for temperatures 104°C/219°F to 1270°C/2318°F (104℃から1270℃までの温度に対し41の標準の変色点がある)と書かれています。
    詳細は、Web siteをお読み下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 10:56:43 +0900
    AA: 早速のご教示感謝申しあけます。ご指示の所に当たるることに致します。川村節夫
    -----------------------------------------------------------------------------

    450. シリコンと同等の熱膨張をもつ金属

    Date: Fri, 22 Oct 2004 16:37:35 +0900
    (有)プロブエースの木本と申します。
    弊社はプローブカードの開発している会社です。
    その開発で首記の
    シリコンウエハと同等の熱膨張率を有する金属材料を探しております。
    教えていただけるとありがたいのですが。
    よろしくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Oct 2004 17:26:16 +0900
    A: 木本様、佐藤勝昭です。
     シリコンは共有結合性なので非常に線膨張率が小さい固体として知られています。
    一方、一般金属は自由電子による金属結合をしているので、線膨張係数がシリコンより1 桁程度大きくなっています。金属の中でも遷移金属は比較的膨張率が小さいですが、最低 でもシリコンの2倍はあります。合金の中にインバーというFe-Ni合金がありますが、こ れはほとんど熱膨張しないことで有名な物質です。

     下記に表を示しておきますので、参考にして下さい。
    文献は新版「物理定数表」(朝倉書店1984)です。
    元素記号物質名線膨張率(10^-6/deg)
    Cダイヤモンド1.00
    Siシリコン2.5
    特殊合金  
    Fe-Niインバー-1.0~2.0
    W-C炭化タングステン3.7
    遷移金属  
    Prプラセオジウム4.4
    Wタングステン4.5
    Zrジルコン4.7(⊥c)
    Osオスミウム4.7
    Moモリブデン5.0
    Taタンタル6.5
    Irイリジウム6.5
    Vバナジウム7.8
    Rhロジウム8.2
    Pt白金8.9
    Pdパラジウム11.6
    Fe11.8
    Niニッケル12.8
    Coコバルト13.7
    貴金属  
    Ag19.0
    Au14.2
    Cu16.7
    通常金属  
    Alアルミニウム23.0
    Inインジウム-9.6(//c)
      52.9(⊥c)
    Mgマグネシウム27.0(//c)
      25.3(⊥c)
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 26 Oct 2004 10:53:20 +0900
    佐藤勝昭  様

    (有)プロブエースの木本です。
    このたびは勝手なお願いを聞いていただき有難うございました。
    大変参考になります。利用させていただきます。
    -----------------------------------------------------------------

    451. 配管リークの許容値

    Date: Sat, 23 Oct 2004 18:46:42 +0900
    Q: 佐藤先生
    突然のメールで失礼致します。
    『物性Q&A”』を拝見させていただいて、私のようなものの質問は 大丈夫なのだろうかと思いましたが、是非ご教授願いたくよろしくお願いします。

    当方は化合物半導体の製造装置メーカーE社のOと申します。
    文系の出身で、高圧ガスの一種販売の免許を持つ程度の知識が ある程度のレベルです。
    (匿名でよろしくお願いします。)

    さて、質問の内容ですが、上記の製造装置の配管系(原料供給系、及び排気系)の接 続箇所及び溶接箇所等の漏洩検査として ヘリウムリークディテクターを使用しての検査を行っていますが、
    この検査において、当社において1×10-10Pa・m3/secより 低いリークレートでの反応があった場合でも検査の合格となるのですが、その根本の 許容されるリークの考え方がわかりません。
    装置内で使用されているガスは水素、窒素がキャリアガスとして、 有機金属としてTMI、TMGなど、ドーパントとしてPH3、AsH3等 原料ガスとしてNH3などが使用されています。
    たとえば12乗レベルで漏洩の反応があった場合、なぜ安全といえるのかなど根本的 な考え方が理解できていません。
    なお、反応炉(SUSチャンバー)の検査レートはもう少し高いレートでもOKになります。

    接続はナイトライド系はアフラス若しくはNBR製のOリング、ヒ素りん系 はバイトン製のOリングを使用しており、供給系はニッケルめっき製の ガスケットの使用となっております。

    質問の内容は以上ですが、内容がまとまっておらず大変恐縮ですが ご教授いただければ幸いです。

    よろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Oct 2004 17:55:50 +0900
    A: E社O様、佐藤勝昭です。
     配管系のリークの許容度についてのご質問ですが、おそらく、その業界の基準があると 思います。いくらでも厳しくすればよいかというと、検出器の感度・精度の問題がありま すし、経済性の問題もあるでしょう。また、使われ方にもよるでしょう。MOCVD用反 応炉のように、装置全体をさらに別排気するような場合、装置そのもののリークレベルが 多少高くても、人が操作する部屋とは完全に分離されているなら許容されるということもあ るでしょう。

    私は、半導体プロセスの専門家ではないので、手元に持っていないのですが、
    「サブミクロンULSIプロセス技術 第2編 」(リアライズ社)1989/11/20
    「ガスサイエンスが拓くプロタクト・イノベーション 」(リアライズ社)1996/01/31
    「半導体産業の発展とUCS12年の成果」半導体基盤技術研究会編 (サイペック)2002.09
    あたりにその考え方が出ているのではないかと思うのですが・・。
     お役に立てず申し訳ありません。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Oct 2004 20:48:48 +0900
    AA: 佐藤先生
    E社Oです。
    この度は突然のメールにもかかわらず、ご返答頂き大変感激しております。
    早速、先生に紹介いただいた書籍をあたらせて頂きたいと思います。
    重ね重ね、お礼申し上げます。
    今後もご教授願えれば幸いです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 29 Oct 2004 23:35:03 +0900
    A': O様、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aの貴質問と私の回答を見て、S社のKさんから情報が寄せられましたのでお 伝えしておきます。
    ----------------------------------------------------------
    配管リークの許容値について、
    参考になると思われるURLがあるので、お知らせいたします。
    参考URL(アネルバテクニクス(株))
    http://www.anelvatx.jp/techinfo/lecture/5320.html
    尚、私も研究開発の立場でMOCVDを使用していますが、ガス漏洩の可能性がある箇所(配
    管のつなぎ目など)は、全て必ず筐体で囲み、常時換気できるようになっています。
    そしてその先には除外装置がつながっています。
    また、実験室、装置の各所にはガスセンサーが取り付けられ、常時監視されています。
    (もちろんガス漏洩時には、全てのガスの元栓が自動で閉じます)以上のように、MOCVD
    単体だけでなく、ほかの部分も併せて総合的に安全対策をしております。従って後は、
    用いる特殊材料ガス等の許容濃度(例えばアルシンでしたら0.05ppm)を超えない程度の
    リークに「なるべく」抑えればよいのではないでしょうか。
    以上、参考になるか分かりませんがお役に立ちましたら幸いです。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Oct 2004 10:10:20 +0900
    AA': 佐藤勝昭先生
    Oです。
    先般は、ほんとに突然のメールで、面識のない私のような者の問い合わせ(疑問点) に対応していただいて改めて感謝しております。

    さらに、この度はS社のKさんの情報までお伝えして頂いて大変恐縮しております。 ありがとうございます。

    この度頂いた情報の通りで私の勤めている会社の製造している装置でMOCVD装置 などは筐体がリアクター部、ガス供給部、排気部、電源・トランス部の4つ~5つに 分かれているのですがその筐体の上部には必ずダンパーが付いていて筐体排気される ようになっており(常時筐体内は負圧状態)、ガス検知器(吸引式と防爆型の併用) も各筐体内についていますね。

    私自身が排気系のガス配管(SUS304製)を作る事もあり(TIG溶接、イナー トガスとしてアルゴンを使用)、装置に組み込む前にも配管単体(1本単位で)でヘ リウムリークディテクターにかける事があってその際の判断においても前回質問させ て頂いたとおりの検査リークレートの合格ラインになる(1×10-10Pa m3/sec)の根拠 が判らなかったんです。
    リークレートの数値と今回の情報にある許容濃度との関係・・・・どう結び付けられ るのかも今の段階では正直理解できません。
    例えば、ヘリウムを噴霧して3×10-9Pa m3/secオーダーのリークがあるような配管 (単体・単品)の内部をAsH3、PH3などが流れた場合に、何ppmの量がもれるのか・・・・。
    リアクターの加熱で分解されたリンやヒ素も配管内を流れるます。
    装置システムでの保安システムの件は理解できるのですが・・・。

    この度のメールも全然まとまった内容にはなりませんでした。
    丁重にメール頂き、有難うございました。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Oct 2004 17:12:30 +0900
    A":岡田様、佐藤勝昭です。
     ヘリウムの原子は小さいので、ヘリウムが通り抜けてもアルシンやフォスフィンのよ うな大きな分子が通り抜けるかどうかはわかりませんね。ヘリウムと他のガスの対応関 係はガスを販売している会社がデータを持っているのではないでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------------

    452. 光の屈折とダイヤモンドの輝き

    Date: Sun, 24 Oct 2004 01:06:08 +0900
    はじめまして。
    中学1年生の土井と申します。宜しくお願い致します。
    最近、授業で光の屈折について習い、ダイヤモンドも光が屈折して輝いているという話を 簡単に聞きました。
    その、光がダイヤモンドに当たり、それがどういう方向に屈折してダイヤモンドが輝いているのかが もう少しくわしく知りたいのです。
    お返事を待っております。宜しくお願い致します。
    土井 千咲綺
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 24 Oct 2004 20:01:42 +0900
    土井君、佐藤勝昭です。
    メールありがとう。ダイヤモンドの輝きの秘密はカットの仕方にあります。一番有名な のは、添付図にあるラウンドブリリアントカット(round brilliant cut)です。この複雑 なカット(58面体)をすると、結晶に入った光は、どの面から入射しても、どこかの カット面(ファセット)で全反射され、よく輝くのです。
    全反射については、屈折の法則のことを勉強しなければなりません。
    光が屈折率nの物質の側から屈折率n0の物質へ入射するときの光の屈折を考えましょう。 入射角をθ(ギリシャ文字、シータと読みます)、屈折角をθ0とすると、
     n sin θ=n0 sin θ0
    の関係があります。sinは高校で学びますが、三角関数の1つ正弦関数で、サインと読み ます。θ=0°のときsinθ=0, θ=30°のときsinθ=0.5, θ=45°のときsinθ=1/√2= 0.707、θ=60°のときsinθ=√3/2=0.866、θ=90°のときsinθ=1です。sinという関数 は1より大きな値をとることができません。
    ダイヤモンドの屈折率はn=2.42、n0を空気の屈折率としてn0=1とすると、
     2.42sinθ=sinθ0 となりますから、sinθ=sinθ0/2.42<1/2.42=0.413
    屈折の法則が成り立つのは入射角θが24°以下の場合です。これ以上の入射角になると 屈折の法則が成り立たなくなって、全反射してしまうのです。
    カットの仕方をうまくすると、斜めのカット面への入 射角を24°以上にすることができ、入った光を全部もとに戻せるようにできるのです。
     三角関数については、どなたか大人の方に教えてもらって下さい。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Oct 2004 00:54:19 +0900
    佐藤先生、お忙しい中、こんなに早くお返事をくださり、有難うございました。
    とても、くわしく・わかりやすく説明いただき、よく理解できました。
    ダイヤモンドの輝きは、光の屈折ではなく、入射光の角度により全反射して キラキラと輝いていることがよくわかりました。
    こんなことも少し知ることによって、光に興味を持つことができました。
    これからも、色々な事を調べてみたいと思います。
    本当にありがとうございました。
    土井
    ----------------------------------------------------------------------------------

    453. グラファイトの抵抗率

    Date: Sun, 24 Oct 2004 21:51:12 +0900 (JST)
    こんにちは。茨城の高専5年の内藤と申します。グラファイトの抵抗率を教えて欲しいのでよかったらお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 24 Oct 2004 23:32:36 +0900
    内藤君、佐藤勝昭です。
     グラファイトの物性データはhttp://www.espimetals.com/metals/graphite.pdfをご覧 下さい。(アメリカのサイトなので英語です。また長さの単位としてインチが使われてい ます) 物性値はグレードによってかなり異なるようです。
    電気抵抗率のデータのみ(Ωcm単位に直して)再掲しておきましょう。
    (1)宇宙航空用
    ミサイル部品、ロケット噴射機等宇宙航空用.
    比抵抗 (21℃):1350μΩ cm

    (2)電子用
    金属合金作製ボート用、電気化学的貴金属メッキ用、高耐食性、耐ぬれ性.
    比抵抗 (21℃):1600μΩ cm

    (3)素材開発用 シリコン結晶引き上げ用るつぼ材等.
    比抵抗 (21℃):1900μΩ cm

    (4)ESPI(高純度)
    核応用など高純度を必要とする用途;
    比抵抗 (21℃):1350μΩ cm
    ----------------------------------------------------------------------------------

    454. Bi2Te3の誘電率

    Date: Wed, 27 Oct 2004 08:13:21 +0900
    Q: 佐藤先生はじめまして。R大のMと申します。できましたら、Webにアップす る場合に匿名でお願いしたいと思います。
     数日Bi2Te3または、BiSbTe,BiTeSeなどの誘電率を文献等で探していましたが、 どうにも見つけることが出来ずにメールした次第です。空乏層幅を見積もりたいので すが、誘電率を使わずに算出することはできますでしょうか?上記の誘電率をご存知 でしたらぜひ教えて頂けませんか?無理ならば、どの文献を探すと見つかるかだけで もお願いしたいと思います。
     また、2元系、3元系の仕事関数を算出する場合どのようにすると求めることがで きるでしょうか?計算式等ありましたら教えて頂けませんか?
     よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Oct 2004 19:42:00 +0900
    A: M君、佐藤勝昭です。
    ・Bi2Se3 Bi2Te3の誘電率のデータは、Landolt-Boernstein III 17f p.271,p.277にあり ます。(LBのシリーズは大抵の大学図書館にあると思います。)
    Bi2Se3
    ε(0)⊥=113, (赤外反射スペクトルの振動子フィットによる)
    ε(∞)⊥=29, (Drude modelのプラズマ端フィットによる)
    Bi2Te3
    ε(0)⊥=290, @15K (赤外反射スペクトルの振動子フィットによる)
    ε(∞)⊥=85, @15K, 300K (Drude モデルのプラズマ端フィットによる)

    ε(0)//=75, @15K(赤外反射スペクトルの振動子フィットによる)
    ε(∞)//=50, @15K, 300K (Drude モデルのプラズマ端フィットによる)
    となっています。
    ・BiSbTe, BiTeSeなどの混晶についてはデータがありません。
    ・空乏層幅の計算が誘電率なしでできる方法があるかどうかはわかりません。
    ・多元系の仕事関数を、元素の仕事関数から見積もることは、一般的には不可能です。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Oct 2004 01:21:02 +0900
    佐藤勝昭先生、Mです。
     Landolt-Boernstein III 17f という本の存在自体まったく知りませんでした。早 速計算して見たいと思います。理科年表、伝熱工学資料ぐらいしか知らなかった私に とっては非常に貴重な情報でした。
     どうもありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------

    455. ステンレスの不動態の抵抗

    Date: Wed, 27 Oct 2004 20:27:09 +0900
    Q: 初めまして。
    Y社のOと申します。
    HPにのせる場合は、匿名にて御願い致します。
    ホームページを拝見致しまして、御教授願えるものかと思いメール致しました。

    弊社は、スイッチを製作している会社です。
    スイッチの接触子にステンレス(SUS304をプレス加工)の板バネを使用して 実験(電極は、銀)をしておりますと、珠に接触抵抗値が極端に上昇するときが あります。
    ステンレスの比抵抗が鉄に比べて大きいことは承知しておりますが、その差 以上(100倍程度)に接触抵抗値が大きくなることが判明致しました。
    ただし、数回on/offを繰り返すと元の接触抵抗値に戻ってしまうようです。

    原因を調べておりましたところ、不動態被膜が関係しているのではないかと の指摘を受けました。

    不動態被膜の厚さが接触により変化(破壊)し抵抗値に影響を与えている のではないかとの指摘です。

    そこで質問ですが、
    ステンレスの不動態被膜として生成される3酸化クロムの比抵抗は、どの 程度と考えれば良いのでしょうか?

    単純に考えると、ステンレスの比抵抗値=3酸化クロムの比抵抗値とも 思われるのですが、如何でしょうか?

    バネ材にメッキ処理をすれば問題を回避出来ると思われますが、疑問に 対する答えを見つけたいと考えております。

    大変恐縮ですが、御教授願えれば幸いです。

    -------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Oct 2004 01:26:28 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     ステンレスの不動態はCr2O3が原因であると考えられています。この物質は基本的に絶 縁物で、「電荷移動型絶縁体」と呼ばれています。
     おそらく非常に純度の高いCr2O3は、10^12Ωcm程度の高抵抗と予想されますが、不動 態の厚みはせいぜい数nmですから、接触面の面積が1mm^2として、不動態膜の深さ方向へ の電気抵抗は数百MΩ程度に達すると推定されます。
     通常の接触点における低い抵抗は、強く金属を押しつけることで不動態が破壊され非 常に薄い絶縁膜となり、トンネル効果によっている電流が流れていることによる可能性 があります。この状態から、接点を流れる電流によりジュール熱で温度が上昇したりし て酸化が進むと不動態が回復し高抵抗状態に陥ります。何度もon-offしているうちに、 再び不動態が破壊され、低抵抗状態に戻るのでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Oct 2004 09:02:35 +0900
    佐藤先生

    おはようございます。
    Y社のOです。

    早速の御回答ありがとうございます。

    ステンレスについていろいろ調べてみました。
    そのときに比抵抗が大きい事についてのデータは有りましたが 絶縁膜についての解説は有りませんでした。

    通常状態で酸化皮膜が絶縁膜であるとすれば、接触を伴う部分 に導体として使用することは、導通不良を起こす可能性があると の事で認識を新たに致しました。

    ==>  不動態被膜=不導体被膜

    大変ありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------

    456. めっき材と被めっき材の抵抗

    Date: Thu, 28 Oct 2004 20:09:31 +0900
    はじめまして。
    C社Kと申します。
    現在、仕事で低接触抵抗の電池接片を検討しています。そこで、最近、めっき材 と被めっき材の関係について文献などで色々と調べていくうちに疑問点が浮かび 上がり、身の回りの文献や大学図書館では解決できず、メール致しました。

    例えば、銅に金めっきをした場合において、金めっき側から極めて弱い電流を流 したとき、電流は銅と金の両方に流れると想定しています。(金よりも銅の方が 導電率が高いので、金に電流が流れるならば、銅にも流れているのではないかと 考えています。)
    そこで今度は、金に銅めっきをした場合なのですが(←現実に存在するかどうか は別として)、同じく弱電流を流した場合、導電率の高い銅にしか電流が流れな いという現象は有り得るのでしょうか? 私個人の考えでは、この場合も両方の 金属に電流が流れていると考えているのですが、理論的な裏付けなどが得られま せん。
    電気や物性についての知識が全くなく、基本的な質問であるかも知れませんが、 ご回答のほどよろしくお願い致します。
    (もし先生のHPにアップする場合はぜひ匿名(イニシャル)でお願い致します。)
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Oct 2004 21:08:39 +0900
    C社K様、佐藤勝昭です。
     電流をどの方向に流すのでしょうか。いま、表面に平行に電流を流すとし、それぞれの 金属の中を平行に流れるとします。メッキした金属(比抵抗ρ1[Ωcm])の厚みをd1[cm]、 メッキされた金属(比抵抗ρ2[Ωcm])の厚みをd2[cm]とします。電流が流れる幅を1[cm]と すると断面積はメッキ層がd1[cm^2], 被メッキ層がd2[cm^2]です。電流を流す長さをz[cm] とします。メッキ層の抵抗はR1=ρ1・z/d1、被メッキ層の抵抗はR2=ρ2・z/d2です。
    メッキ層の厚さ方向の抵抗は非常に小さい(100nmの厚みだと1cm^2あたりの抵抗値はρ× 10^-5[Ω]で、金でも銅でも約10^-11[Ω]の程度です)のでメッキ層・比メッキ層は並列抵 抗だとすることができます。するとR=1/(1/R1+1/R2)=z/(d1/ρ1+d2/ρ2)となります。
     金の比抵抗は2.2×10^-6[Ωcm]、銅の比抵抗は1.7×10^-6[Ωcm]ですから、それほどの 比抵抗のちがいはなく、結局は、抵抗の低さはdの厚い方で決まると言うことになります。銅に金メッ キをするならば、銅の方が分厚いので、ほとんどの電流は銅の方を流れるのではないでし ょうか。金に銅メッキをした場合も同じで、金層が銅層より十分厚ければ金の方を電流が 流れ、それで抵抗値は決まると思います。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 29 Oct 2004 10:03:30 +0900
    AA: 佐藤先生
    おはようございます。
    C社Kです。
    多忙の中、ご回答頂きましてありがとうございます。
    めっき物を流れる電流に関して、等価回路に置き換えることで随分見通しが良くなりますね。
    取り急ぎお礼申し上げます。
    ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------------------

    457. 「配管リークの許容値」へのコメント

    Date: Fri, 29 Oct 2004 12:34:25 +0900
    C: はじめまして。
    S社のKと申します。(もしWeb公開する場合は匿名でお願い致します)
    物性なんでもQ&Aは時間があるときに楽しく拝見させていただいております。
    さて、質問ではないのですが、
    配管リークの許容値について、参考になると思われるURLがあるので、お知らせいたします。

    参考URL(アネルバテクニクス(株)) http://www.anelvatx.jp/techinfo/lecture/5320.html

    尚、私も研究開発の立場でMOCVDを使用していますが、ガス漏洩の可能性がある箇所(配管のつなぎ目など)は、 全て必ず筐体で囲み、常時換気できるようになっています。
    そしてその先には除外装置がつながっています。
    また、実験室、装置の各所にはガスセンサーが取り付けられ、常時監視されています。

    (もちろんガス漏洩時には、全てのガスの元栓が自動で閉じます)
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 29 Oct 2004 23:28:17 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     役立ち情報をお教え頂きありがとうございました。
    さっそく、質問者に教えてあげたいと存じます。
    ----------------------------------------------------------------------------------

    458. 反射スペクトルと屈折率

    Date: Sat, 30 Oct 2004 11:24:20 +0900
    Q: 佐藤 勝昭 先生
     しばしば「物性なんでもQ&A」のHPを見て楽しんでおります日本大学Hです。今日は,私がご 質問させていただきたく,メールをいたします。

     可能ならば匿名で扱っていただけると幸いです。

    以下,質問:
     複素誘電率を振動子モデルで表現して,その後,複素屈折率に変換すると,n とkの分散がきれいに描けることは,私自身もスペクトルシミュレーションをす るので,ある程度理解をしているつもりでおります。
     しかし,誘電体の反射率を測定したとき,なぜnの分散が測定されることにな るのか,Fresnelの式などを眺めてもいまひとつピンと来ません。反射率Rが屈折 率実部nに近い形になることを,明快にお示しいただければ幸いです。
     どうぞよろしくご検討のほど,お願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Oct 2004 16:04:00 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございました。
    誘電体の反射スペクトルと屈折率についてのお尋ねですが、数式をいじくってもRとnの 分散が比例する関係にはありません。
     反射率Rとすると、反射の際の位相の変化θは、Kramers-Kronigの関係式により、
      θ(ω)=(ω/π)P∫lnR(ω')/(ω'22)
    から計算することができます。ただし、Pは積分の主値を表し、積分範囲は0≦ω'≦∞で す。
    部分積分することにより、
      θ(ω)=(1/π)P∫ln|(ω-ω')/(ω+ω')| dlnR(ω')/dω'
    となるのでθはln|(ω-ω')/(ω+ω')|の性質から、ω'=ω近傍のlnR(ω')の微係数(傾 斜)に比例した変化をすることがわかります。
    Rとθが得られると、n, kは
      n=(1-R)/{1+R-2√R cosθ}
      k=2√Rsinθ/{1+R-2√R cosθ}
    となります。Rのピーク付近ではθはゼロとなるので、
      n=(1-R)/(1-√R)2=(1+√R)/(1-√R)~1+2√R
    と表されます。このため、Rがピークを示すとnもピークを示すのです。
    Kramer-Kronigの関係式については、拙著「光と磁気(改訂版)」3.5.4節(p.45)および問 題3.10(p.57)をご参照下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Oct 2004 16:35:59 +0900
    AA: 佐藤 勝昭 先生

     早速明快なご回答を下さり,まことにありがとうございます。おかげさまで要 点はほぼ解決できました。

    > となります。Rのピーク付近ではθはゼロとなるので、
    >   n=(1-R)/(1-√R)2~1+2√R
    > と表されます。このため、Rがピークを示すとnもピークを示すのです。

     この部分を読んで,ようやく意味がわかりました。ピーク位置が一致するため, Rの計測がnの分散を把握するのに使えることが腑に落ちました。厳密な意味でn がそのままRに現れているわけでないことがはっきりして,落ち着きました。

     ご親切に心より御礼申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Q': ところで「Rのピーク付近ではθはゼロとなる」とは,ピーク位置のところで 複素反射率が実数になるということになりますが,これは「ピーク位置のところ で,反射に伴う電場ベクトルの回転がなくなる」と考えられるように思います。

     一般に,金属面での反射の場合,面内方向の電場ベクトルはπだけ回転します が,誘電体での反射の場合はそうはならないため,θがゼロでないわけですが, ピーク位置ではどうしてゼロになるのでしょうか。

     計算すれば確かにゼロになることはわかりますが,物理として理解できずにお ります。ご説明をいただければ幸いです。

     たびたび恐れ入ります。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 1 Nov 2004 20:23:02 +0900
    A': H様、佐藤勝昭です。
     Kramers-Kronigの式は、金属・誘電体の別なく一般に成立する式です。
    「Rのピークでθがゼロ」というのは、やや極端な書き方でした。実際には、他のエネル ギー領域のスペクトルからの寄与がありますから、あくまで、今考えているピークからの 位相変化への寄与というべきものです。金属、誘電体それぞれの物質特有の「下駄」をは いていると考えるべきでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 03 Nov 2004 09:29:35 +0900
    Q": 佐藤 勝昭 先生

     お付き合いをいただき,ありがとうございます。

     いろいろ考えましたが,多くの固体物理の教科書にあるように,本来,きれい なローレンツ型のカーブと微分曲線を描くのは複素誘電率の虚部・実部の分散の みで,nおよびkの分散になるとそれがゆがみ,Rに至っては非常にゆがむのが妥 当です。

     ただ,私が主として測定している有機薄膜を対象とした赤外領域では,kがあ まり大きくないことが多いため,nの異常分散もあまり強くないことが多く,こ のためRのゆがみが比較的小さくなっていると考えられます。つまり,赤外領域 で見ている限り,「なんとなくRはnの分散に似ている」ということになるようで す。

     あくまでも,これは試料に光学異方性がない場合についての簡単な話です。

     混乱を招く原因は,多くの分光器に付属しているK-K変換ソフトです。実際に K-K変換できるのはn-kであるにもかかわらず,実際にはまがい物のnをK-K変換し ています。

     赤外分光器で直接測定できるのは吸光係数(α)の分散ですが,仮にこれを波 数を考慮してkに直そうとしても,試料の濃度も厚みもわからない状態では,絶 対値として正しいkの分散が得られるわけがありません。同様に反射率測定にし ても絶対値として正しいnの分散を誘電率シミュレーション無しに得られるわけ がありません。にもかかわらず,このまがい物のnの分散を元にkの分散らしきも のをはじき出すソフトが組み込まれているため,何が起こっているのかわかりに くくなっているように思います。

     つまり,反射測定から得られる微分形のスペクトルを,吸光度スペクトル‘風’ に変えて見せているだけといえます。結局,nやkの分散を正しく出すには,外部 反射もしくはATR測定の結果を誘電率関数でフィッティングするしかないという 理解でおります。

     今回の私の質問の発端は,フィッティング無しに,実測としてnやkが測れるか? ということだったのですが,やはりそうは行かないということで落ち着きつつあ ります。

     間違いがあれば,是非ご指摘いただけるとありがたく存じます。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 3 Nov 2004 12:34:51 +0900
    A": H様、佐藤勝昭です。
     丁重なメールありがとうございました。お考えのとおりで正しいと存じます。組み込 まれたK-K変換は注意して扱わねばなりません。
    -----------------------------------------------------------------------------

    459. エアロゲルの熱輸送について

    Date: Sat, 30 Oct 2004 14:01:12 +0900
    Q: 佐藤様
    初めてメールいたします。K社のYと申します。
    下記内容についてお教えいただきたく。ご回答いただける場合は匿名でよろしくお願いいたします。

    <エアロゲルの熱伝導率について>
    空気の熱伝導率が1気圧で0.026W/mK程度であるのに対し、エアロゲルはナノ空隙構造であり、 空隙中の空気圧力が1気圧でもエアロゲル全体として0.01~0.02W/mK程度の低い熱伝導率 を示すとのことですが、このメカニズムは理論的にどのように考えればよろしいでしょうか。
    エアロゲルは90%以上が空隙でできているということなので、固体の熱伝導率寄与は確かに小さくなると思います。 残りの空隙中の「気体の熱伝導率寄与」と「輻射による熱伝導率寄与」をどのように考えればよいかがわかりません。
    特に「気体の熱伝導率寄与」についてですが、エアロゲルの空隙がナノサイズであり、 1気圧であっても空気の平均自由行程のほうが大きいため、空隙中の空気分子の衝突が減少する、 あるいはなくなるので熱伝達が小さくなると一般的には説明されているようですが、
    空気分子どうしの衝突がなくても個々の空気分子は自由に運動して空隙壁に衝突して直接熱を伝達するので、 空気分子どうしの衝突頻度は関係ないように思うのですが。それとも空気分子どうしの衝突が減ることにより、 個々の空気分子が空隙壁に衝突する回数もエアロゲル全体としては減少すると考えられ、熱伝導率が小さく なるのでしょうか。
    一方、「輻射による熱伝導率寄与」についてはナノ空隙であることの影響をどのように考えればよいでしょうか。
    ナノ空隙のため空隙壁が多くなるため減衰により輻射熱伝導率は小さくなるようにも思いますが、 壁厚さが薄いため電磁波は透過しやすくなり輻射熱伝導率が大きくなるようにも思います。
    ご教示願いたくよろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Oct 2004 16:57:17 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
    メールありがとうございます。Aerogelの熱的性質についてはLawrence-Berkley National Laboratoryにおいて詳細に研究されています。
       
    http://eande.lbl.gov/ECS/aerogels/satcond.htm というWeb siteをご覧下さい。
    主な点を訳しておきますと

    気相を通じての熱伝導を極小化するには
     典型的なシリカエアロゲルの全熱伝導率は約0.017 W/mKです.このエネルギー輸送の大 部分はエアロゲルに含まれる空気によってもたらされます。この輸送モードは制御しや すいのです。微小ポア構造のために、標準気圧・標準温度において、ポアの直径は窒素 や酸素の平均自由行程と同程度です。もし、特定の気体の自由行程がポア径より長けれ ば、気体分子同士が衝突する確率より、ポアの壁と衝突する確率のほうが高くなるで しょう。すると、気体の熱エネルギーはエアロゲルの固体部分に輸送されますが、この 部分は熱伝導率が非常に低いのです。気体の平均自由行程をポア径より長くするには、 3つの方法があります。1つは低分子量の気体でポアを埋めること、つぎにエアロガル のポア径を小さくすること、そしてエアロゲル内の気圧を下げることです。(中略)
    ほとんどのエアロゲルでは、気圧を50Torr程度に下げることが行われています。
    気圧を低下すると0.008W/mKにまで熱伝導率を下げることができます。

    熱輻射を極小化するには
     温度上昇とともに、輻射の寄与が大きくなります。200℃以上の高温で用いるには、輻射 による熱輸送モードを抑えなければなりません。このためには超臨界乾燥過程の前ある いは後にエアロゲルにある添加物を加えなければなりません。この添加物には、赤外輻 射を吸収するか、散乱するかの機能が必要です。難しいのは、添加物を加えることでエ アロゲルの機械的性質を悪くしたり、固体熱伝導を増やしてはならないということで す。最も有望な添加物は炭素です。炭素は赤外線の有効な吸収体ですし、機械的な強度 を増大する場合もあるからです。
    炭素の添加によって熱伝導率は0.017から0.0135 W/mKにまで低下します。
    炭素複合材の減圧下の熱伝導率の最小値は0.0042 W/mKです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 31 Oct 2004 01:32:34 +0900
    AA: 佐藤勝昭様

    このたびはお世話になります。
    K社のYです。

    大変お忙しい中、ご返答いただきありがとうございました。
    ご教示いただいた内容、ご紹介いただいたWeb siteを活用させていただきます。
    本当にありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------------

    460. 円二色性のミュラー行列

    Date: Mon, 01 Nov 2004 16:17:50 +0900
    Q: はじめまして,こんにちわ。
     私,農工大機械科の研究室に所属しております,修士2年の小川と申します。
    円二色性についてお尋ねしたいことがありましてメールした次第です。
     私は現在ストークスパラメータとミュラー行列の関係から試料の複屈折や旋光性, 直線二色性を計測するという研究を行っています。またこの原理をプローブ顕微鏡に適用し, 微小領域の観察も行う予定です。
     顕微鏡で観察する試料として細胞などの生物分野の物と考えているのですが, こういった物には円二色性という性質が多々観察されると最近知りました。そこで, 円二色性も計測できる方法をと考えているのですが,本手法で必要となる円二色性の ミュラー行列が調べてもどこにものっていません。そこで先生のホームページを見つけて 拝見しましたところ,円二色性について詳しく書かれていました。
     大変ぶしつけな言い方ではございますが,よろしければ円二色性のミュラー行列を 教えていただけないでしょうか?もしくは参考になる資料,本などを教えていただけないでしょうか? 浅い知識でこのような質問をしてしまって大変失礼とは存じておりますが,ご回答の方よろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 2 Nov 2004 09:51:34 +0900
    小川君、佐藤勝昭です。
     円二色性は、直線偏光を入射したとき楕円偏光をつくる効果です。
    楕円偏光はポアンカレ球のS1軸(またはS2軸)とS3軸を結ぶ円周上にある偏光です。
    直線偏光のストークスベクトルと楕円偏光のストークスベクトルとを結びつける行列を考 えれば、円二色性のミュラー行列が得られるはずです。
    なお、楕円率角χと単位長あたりの円二色性Δαの間には、χ=-Δα/4の関係があります。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 02 Nov 2004 15:59:15 +0900
     こんにちわ,小川です。
    お忙しい中返信どうもありがとうございました。
    自分なりにも考えてみた結果,部分偏光子を方位45°の1/4波長板で挟んだ物全体を 円二色性のミュラー行列とみなせるのではないかという結論に至りました。
    シミュレーション上で直線偏光を通過させてみたところ,楕円偏光に変換されることも確認できました。 大変参考になる助言ありがとうございました。今度は実験的にも確認していきたいと思います。
    --------------------------------------------------------------------------------------

    461. 異方性結晶中の光の伝播

    Date: Mon, 08 Nov 2004 01:50:23 +0900
    Q: 先生のホームページを見てメールした次第です。
    はじめまして、私は岐阜大学教育学部理科教育1年の望月亮太です。
    今回質問したいことは、異方性結晶中における光の伝播の仕方です。
    単軸結晶と双軸結晶とでは光の伝播の仕方が違います。
    これはなぜですか?光の伝播はどうなっているのですか?また、常光線・異常光線と の関係を教えてください。
    よろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 8 Nov 2004 19:46:40 +0900
    A: 望月亮太君、佐藤勝昭です。
     異方性結晶中の光の伝播は「複屈折」と呼ばれています。異方性の媒質を光の平面波が 伝播するとき、光は2つの平面波に分かれて進行します。2つの平面波は進行方向は同じ ですが、電気ベクトルおよび電束ベクトルの偏りの方向と位相速度が異なります。このた め2つの平面波に対する屈折率が異なるのです。きちんとした説明のためには、マクスウ ェルの方程式において、異方性物質の誘電率テンソルを代入して、固有解を求めるという 手続が必要です。このことを勉強する参考書としては、応用物理学会光学懇話会編「結晶 光学」(森北出版, 初版1975)の第3章(p.65-68)、あるいは、ランダウリフシッツ理論 物理学教程「電磁気学」(井上他訳, 東京図書、1962)第2巻§77 異方性媒質中の平面波 (p.394-403)がお薦めです。自分で勉強する気があれば、図書館に行って調べてご覧なさ い。
     教育学部1年生だと、まだ電磁気学における光の伝播について学習していないですよね。 ここでは、厳密さに目をつぶって定性的な説明をしておきます。
     結晶を光学的に分類すると等方性結晶、単軸結晶(=1軸性結晶)、双軸結晶(=2軸 性結晶)に分けられます。
     NaCl, ZnS(閃亜鉛鉱構造), ダイヤモンド, Siなど立方晶の結晶では、単位格子が立方 体(格子定数a)なので、たとえばz方向から入射した光の電界の振動方向がx、yのどの方向 に向いていても、屈折率は同じ値をもちます。x方向から入射した場合でも、y, zどちら の方向にも同じ屈折率を示します。
     しかし、CdS(ウルツ鉱構造)のような六方晶の物質、Al2O3(コランダム構造)のような菱 面体構造の物質や、CuAlS2(カルコパイライト構造)のような正方晶の物質では、c軸の格 子定数とa軸およびb軸の長さ(a=b)が異なる(これを1軸異方性といいます)ので、c軸に平 行に入射した光については、電界のa方向とb方向の屈折率は同じだが、c軸に垂直なa面に 入射した光は、c軸に平行な振動とb軸に平行な振動とで屈折率が異なります。b軸に平行 な電界の振動が受ける屈折率は、c軸入射の光が見る屈折率と同じです。振動方向がb軸に 平行な電界をもつ光を正常光線とよびます。これに対し、c軸に平行な電界を持つ光を異 常光線と呼ぶのです。異常光線の光線ベクトルの方向(すなわちエネルギーの伝わる方向) は波数ベクトル(位相の伝わる方向)と異なっています。このため、異常光線の光線ベク トルは入射面内にはありません。
     異方性物質では屈折率はindicatrixという回転楕円体で表現出来ます。楕円体の主軸の 向きを光軸と呼びます。 世の中にはもっと複雑な結晶構造をもつものがあります。たと えばYAlO3は斜方晶なのでa, b, cの格子定数が全部異なります。これを2軸異方性といい ます。このときのindicatrixは光軸を2本もちます。
     わかりやすい説明ができなくてごめんなさい。自分で納得するまで本を読んで下さい。 その本を読むための電磁気学や結晶学の基礎知識が不足しているなら、そのために基礎の 勉強をして下さい。その方が、授業で習うより、目的意識がはっきりするので、身に付く こと請け合いです。
    ------------------------------------------------------------------------------

    462. スーパーボールがドアの動きを止める

    Date: Mon, 8 Nov 2004 17:26:03 +0900 (JST)
    Q: K高校2年のHと申します。
    今、授業では力学を学んでいて、摩擦力のところに入りました。
    スーパーボールを勝手に閉まるドアの前においておくとドアストッパーの役割 をするのですが、なぜだかわかりますか?どなたかわかる方がいらっしゃった ら教えてください。
    (これは伊東家の裏ワザなのですが、番組で紹介していた理由は正しくないそうです。)
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 8 Nov 2004 19:53:56 +0900
    A1: H君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。申し訳ないのですが、スーパーボールって何ですか?また勝手に閉 まるドアというのは、いわゆる自動ドアのことですか?それともドアの敷居が斜めに傾い ていて勝手に閉まるのですか。ドアは左右に動くのですか、それとも、回転して手前に開 くタイプですか。またボールはどこにおくのですか。伊東家の食卓を見ていないので状況 が把握出来ません。可能なら、絵を描いて、ディジカメで撮ってjpgか何かの画像ファイ ルで送って下さい。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 8 Nov 2004 22:05:46 +0900 (JST)
    Q2: 先ほどメールしたHです。お返事ありがとうございます。
    スーパーボールというのは、
    縁日などで売っているゴムでできた弾力のあるボールのことで、 地面に向かって投げるとよく弾みます。また、かってに閉まるドアとはドアチェカーがついた ドアのことです。 番組に出てきたスーパーボールに加わるとされる力の模式図も手書きで添えておきます。

    <裏技の説明>

    勝手に閉まってしまうタイプのドアを意外な方法で止める裏技
    スーパーボール(ピンポンだまのようなボール)をドアーの止めたい位置に置きます。
    それでOKドアーは止まったままです。驚きです。これは、ドアーがスーパーボールの真横
    を押しているからだそうです。ボールの上からとか下からとかでは転がす力になるそうです。
    真横からだと中心から下向きに力が変わってボールが止まるらしいです。

    友人によると、この説明は誤りだそうです。どこが誤りなのか、なぜスーパーボールがドアストッパーの 役割をするのかがわかりません。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 14:58:47 +0900
    A2: H君、佐藤勝昭です。
     添付ファイルありがとう。
     スーパーボールはよく弾むということですから、弾性係数が大きいと考えられます。弾 性係数が大きいというのは、わずかな歪(ひず)みで大きな弾性力が働くと言うことです。  おそらく、ドアが押す力により、わずかに変形しそれによる反発が大きいことが1つ重 要です。
     もう一つ重要なのは、押されたときボールが転がらないことです。転がらないためには、 床とボールの間に働く摩擦力とドアとボールの間に働く摩擦力の両方が必要です。
     床とボールの摩擦力が働くためには、床に垂直下向きの力が必要です。おそらく、この 力はボールの変形を考えなければ説明出来ないでしょう。先ほど、ドアの押す力によって わずかに変形する(縮む)と書きましたが、ボールの体積を保つために、垂直方向には少 し伸びる必要があります。この伸びが復元するときの弾性力は下向きに働き、弾性係数が 高いので、かなり強い力が床方向に向かって下向きに働いているのではないでしょうか。
     一方ドアが押す水平力によりドアとボールの間には強い摩擦が働きますから、これによ ってもボールの回転は抑えられると思います。
     このうち、どの力が最も効いているかは、実際の弾性係数や摩擦係数が分からないと、 見積もることができません。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 17:27:13 +0900 (JST)
    Q2: Hです。
    丁寧なご説明ありがとうございます、とても感心して読ませていただきました。

    はっきりしない点があったのですが、先生のご説明のなかで「この伸びが復元するときの弾性力は下向きに働き、弾性係数が高いので、かなり強い力が床方向に向かって下向きに働いているのではないでしょうか。 一方ドアが押す水平力によりドアとボールの間には強い摩擦が働きますから、これによってもボールの回転は抑えられると思います。」とあり、この部分がうまくイメージできません。ボールがどのようにつぶされ、復元するのか。「水平力によりドアとボールの間に摩擦が働く」の部分について水平力だけでは摩擦は働かないのではないか。

    私の勉強不足かとは思いますが、図入りでこの部分を詳しく説明していただけるとありがたいです。必要ならばファイルを添付してください。

    かさねてお願いするようで申し訳ないのですが、よろしくお願いします
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 19:43:15 +0900
    A2: H君、佐藤勝昭です。
     それほど自信があるわけではないのですが、添付図で説明しましたのでお読み下さい。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 20:14:35 +0900 (JST)
    AA: Hです。
    お返事ありがとうございました。図入りの説明はとてもわかりやすかったです。
    先生の解説は本当にためになります。
    また何かわからないことがあったら相談にのって下さい。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 21:35:34 +0900 (JST)
    Q3: Hです。
    先ほどの質問に付随したことなのですが、ボールの中心を真横から押したとき、ボールはきちんと転がりますか?友人が「転がらない」といっていたのですがこれは間違いですよね?
    ボールが転がる仕組みについて詳しく説明していただけるとありがたいです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Nov 2004 09:34:42 +0900
    A3:H君、佐藤勝昭です。
     もし床とボールの間に摩擦がないとすると、真横から押した場合には、ボールに回転を 与えることができないので転がらずに滑ります。しかし、斜め上から力を加えると、ボー ルに回転力を与えるので転がります。
     一方、摩擦のある系では、真横から押しても、添付図のようにボールと床の接点を支点 としてテコの原理で上半部に横向きの力が働き、回転力(トルク)を生じます。このため に転がるのです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Nov 2004 13:39:47 +0900 (JST)
    Q4: Hです。お返事ありがとうございました。大体理解できたのですが、
    黒の力が何を示しているのかはっきりしませんでした。これは青の力と関係あるのですか。
    よろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Nov 2004 15:12:52 +0900
    A4: H君、佐藤勝昭です。
    説明不足でした。黒は、円周に対して回転力が働くよということを示したものです。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Nov 2004 15:36:57 +0900 (JST)
    AA': Hです。お返事ありがとうございます。
    黒い矢印の意味がわかりました。いつも丁寧に応対してくださって感謝しています。
    また何かわからないことがあったらよろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 15 Nov 2004 23:02:53 +0900 (JST)
    Q5: 先日学校の定期考査において私が質問した「スーパーボールのつりあい」についての問題が出題されました。そこで、私は先生に指導していただいたように答えたのですが、8点中0点という採点をされました。これについて、先生はどう思われますか。私は、この採点に疑問を感じるのですが…。ご意見お願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 09:31:55 +0900
    A5: H君、佐藤勝昭です。
     私が教えたことで0点になってごめんなさい。先生が示されている「正解」を教えてく ださい。私の回答は、むずかしく考えすぎているのかも知れませんね。高校の先生は、 高校で教える範囲のことを使って答えることを期待しているのでしょう。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 16:25:02 +0900 (JST)
    Q6: Hです。お返事ありがとうございます。
    友人から借りた問題と彼の書いた7点(8t点満点)の答案を添付しておきます。(添付図は公開すると問題があるので添付しません:佐藤
    [注:この答案では、ドアとボールの間に下向きの摩擦力F'(ドアを押す力F"として、F'=μF")が働く。
    一方、床とボールの間には、左向き(ドアを押す方向と反対向き)に摩擦力Fが働き、ドアを押す力F"ととつり合っている。
    摩擦力F"は、ドアとボールの摩擦力F'とボールの重力wを加えた下向きの力に摩擦係数μをかけたものF"=μ(F'+w)になっている。
    作用反作用の法則でFと大きさが等しく逆向きの垂直抗力Nが上向きに働く。NとF"がつりあう。
    となっています。]

    僕の答案は、受け持ちの教師に抗議した結果、預かられることになりました。
    佐藤先生が僕に指導してくださったことは間違いではないと思います。
    その妥当性(僕の書いた答案の妥当性)を主張していただけるとありがたいです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 19:06:33 +0900
    A6: H君、佐藤勝昭です。
    摩擦力F'はあくまでボールに時計回りの回転力が働いたときにそれを止めようとして働く のであって、ドアとボールの接点でつり合っているはずです。この回転力はもともとボー ルを右に押そうとした力F"から生じているので、垂直抗力Nとつり合うとした解答は誤っ ているのではないかと存じます。
    スーパーボールのように弾性係数の高い特殊なボールの問題を高校の力学の範囲で解かせ ようということ自体に問題があると存じます。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 20:29:38 +0900 (JST)
    AA':Hです。
    先生の貴重なご意見ありがとうございます。
    やはり、先生のご発言には説得力があります。
    いつも、親切にご指導くださり感謝しています。
    また、何かありましたらよろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------

    463. 半導体金属複合材料の光吸収

    Date: Tue, 9 Nov 2004 04:25:59 +0900
    Q: 佐藤 勝昭先生
    はじめまして、T大学物理学科4年のNと申します。
    いつも楽しくHPで勉強させて頂いております。
    現在私は金属と半導体が混ざり合った薄膜試料(300nm程度)の光学特性を 研究しております。
    光学密度から得られた吸収係数(Maxで1.5程度)をdrude-lorentzモデルを用いて
       α=2πε2/nλ
    よりfitしようと試みているのですが、n=1と仮定した場合、半導体のバンド間遷移も金属のdrude吸収も きれいにfitできたのに対し、nを考慮して(nをε1、ε2で記述して)
    fitを行うと赤外領域で現れる金属のdrude吸収の部分でnが増大してしまってその部分を うまくfitすることができません。
    モデル自体には間違いが無いと思うのですが(論文によると同じモデルでfitできています)
    ただ単に私の解析が下手なだけなのでしょうか?
    それともなにか特別な扱いが必要なのでしょうか?
    ちなみに反射はないと考えております。
    分光学の解析はまったくの素人なのでくだらない質問かも知れないですが よろしかったら教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
    (匿名、匿所属でお願いいたします)
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 13:02:33 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
     複合材料の光学解析は単純ではありません。
    半導体に金属微粒子が分散している系でしょうか?
    光学密度が1.5程度と言うことなので金属粒子の濃度は低いものと考えられます。(300nm もの厚みだと金属はほとんど光を透過しません。)
    実効誘電率εeffを考えるとすれば、半導体の誘電率εs、金属の誘電率εm、金属の組成 比fとすると、εeff=(1-f)εs + fεm で与えられます。
    Drude-Lorentzでfitするということは
     εm=1-A/(ω^2+iωγ) (ここにA=ωp^2)
     εs=B/{ω^2-ωg^2+iωγ'}
    と仮定したと言うことでしょうか?
    これより、εeff=εeff'+iεeff"(君の書き方ではε1+ε2)を求めると
     εeff'=(1-f)B(ω^2-ωg^2)/{(ω^2-ωg^2)^2+ω^2γ^2}+f{1-A/(ω^2+γ^2)}
     εeff"=(1-f)Bωγ'/{(ω^2-ωg^2)^2+ω^2γ^2}+fAγ/ω(ω^2+γ^2)}
    となります。
    屈折率は、n^2={εeff'+|εeff|}/2から、
    消光係数は κ^2={-εeff'+|εeff|}/2から求まります。
     ここに|εeff|^2=εeff'^2+εeff"^2です。
    こうして求めたκを使って、
     α=4πκ/λの式で吸収係数を求めるのが、正しいやり方です。
    パラメータが多いのでフィッティングはむずかしいかも知れませんね。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    464. チタンの屈折率

    Date: Tue, 09 Nov 2004 03:16:23 +0000
    Q: はじめまして。
    T高専のKと申します。(もしWebで公開する場合には匿名でお願い致します)
    物性なんでもQ&A拝見させていただいております。
    質問なのですが、チタンの屈折率を知りたいのです。文献を探しても酸化チタンはあ るのですが、チタンは見つけることが出来ませんでした。もしご存じでしたら教えて 頂けませんか?
    よろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 9 Nov 2004 12:29:39 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     G. Hass and A.P. Bradford: J. Opt. Soc. Am. (=Journal of Optical Society of America) vol. 47 (1957) 125
    によれば、次のようになっています。
    λ(nm)nκ
    4362.042.85
    5162.533.33
    5782.613.42
    6503.033.65
    --------------------------------------------------------------------------------

    465. 「光と磁気(改訂版)」付録Cの式の導出」

    Date: Wed, 10 Nov 2004 16:10:26 +0900
    Q: 突然のメールで失礼致します。
    私は関西大学の院生の小川芳史というものです。
    私どもの研究室では御著作「光と磁気」を授業の教科書として勉強させて頂いており ます。
    そこで質問なのですが、久保公式を導出している付録Cについて式C.16から式C.17へ の式変形の物理的解釈がわかりません。失礼ながら私の解釈を
    添付ファイルにのせま すのでコメントを頂けたら幸せです。

    それとここの訂正なのですが式C.9とC.18には分母に2が必要だと思います。それにつ いても添付ファイルに私なりの解釈をのせますので検討していただけたら幸せです。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 17:51:29 +0900
    A: 小川君、佐藤勝昭です。
     丁寧にフォローしてくれてありがとう。
    分母の2については、ご指摘の通りです。

    C.16からC.17の変形は、上村洸先生の書かれた磁性体ハンドブック19.1節p.1011の式(19. 38)の結果を鵜呑みにしていました。

    もし、あなたのご指摘のように、εxy=-εyxより、
    εxy=(εxyyx)/2として計算すると、
    εxy∝ΣΣ[(Py)nm(Px)mn-(Px)nm(Py)mn]/[ωnm^2-(ω+iγ)^2]
    としています。ここで
     Px={(P+)+i(P-)}/2^(1/2), Py=-i{(P+)-(P-)}/2^(1/2)
    として代入しますと、
    εxy∝ΣΣ(-i)[(P-)nm(P+)mn-(P+)nm(P-)mn][ωnm^2-(ω+iγ)^2]
    となってしまいます。

    C.16に直接、Px={(P+)+i(P-)}/2^(1/2), Py=-i{(P+)-(P-)}/2^(1/2)
    を入れますと、
    εxy∝ΣΣ[(-i){|(P+)mn|^2-|(P-)mn|^2}(ω+iγ)/{ωnm^2-(ω+iγ)^2}
          +i{(P+)nm(P-)mn-(P-)nm(P+)mn}ωmn/{ωnm^2-(ω+iγ)^2}]
    第2項はΣ_m (P+)nm(P-)mn-(P-)nm(P+)mn=<n|(x+iy)(x-iy)-(x-iy)(x+iy)|n>=0 なので、 εxy∝ΣΣ[(-i){|(P+)mn|^2-|(P-)mn|^2}(ω+iγ)/{ωnm^2-(ω+iγ)^2}
    となり、|(P+)mn|^2-|(P-)mn|^2はでますが、係数がωmn^2にならないようです。
    その結果、
    χxy=lim(-iNq^2/2mε0)Σ(ρn-ρm)(ω+iγ){(f+)mn-(f-)mn}/ω{ωnm^2-(ω+iγ)^2}
    となりω+iγ~ωとすると 
    χxy=lim(-iNq^2/2mε0)Σ(ρn-ρm){(f+)mn-(f-)mn}/{ωnm^2-(ω+iγ)^2}
    となり、久保公式を使わずに導いた式(4.38)に一致しました。

    きちんと式をフォローしていなかった点をお詫びします。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 19:22:51 +0900
    ご返答ありがとうございます。
    先生のご指南のもと検算をしてみたところよくわかりました。
    失礼ながら最後に一つだけ確認させていただきたいのですけれども 結局(Py)nm(Px)mnの数学的意味は(Py)nm(Px)mn*ということで 後ろの(Px)mnは複素共役になっているから、
    |(P+)mn|^2-|(P-)mn|^2はそれぞれ絶対値になるということですね。
    間違いでなければご返答は結構です。
    ご多忙のところどうもありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------

    466. 金属の粘性係数と表面張力

    Date: Wed, 10 Nov 2004 20:17:08 +0900
    Q: 初めてmailさせていただきます。
    宜しくお願いします。
    私はD社のKと申します。(もしWebで公開する場合には匿 名でお願い致します)
    さっそくの質問なのですが、金の粘性係数と銅の表面張力を教えてください。文献や ネットで調べても見つけることが出来ませんでした。もしご存じでしたら教えて頂け ませんでしょうか?
    よろしくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 15:47:55 +0900
    A1: K様、佐藤勝昭です。
     粘性や表面張力は液体の場合にしか定義出来ません。
    液体状態の金属の粘性係数は手元にデータがありません。
    液体状態の金属の表面張力は下記の通りです。

    金属接触ガス温度℃表面張力[dyn/cm]
    Agair970800
    Alair700840
    AuH21070580-1000
    BiH2300388
    CuH211311103
    PbH2350453
    Ptair20001819
    SbH2750368
    SnH2253526
    ZnH2477753
    出典:新版「物理定数表」(飯田他編、朝倉、1969、改訂1978)
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 16:03:28 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭です。
     先ほど書き忘れたのですが、高温融液の粘性係数は、次の式で推定出来るということで す。(J.C. Brice: Crystal Growth from Melt, NorthHolland 1973)
     η=(4/V)exp(-ΔHvisc/RT)
    ここでVは平均原子容、ΔHviscは粘性流体のエンタルピーであり、
    金属ではΔHvisc=(29Tm±4)×10^3
    ということです。
     また、金属の融液物性値は、「熱物性ハンドブック」(養賢堂、1990)、「金属データブ ック」(丸善、1984)に納められているそうです。
    (結晶成長ハンドブック、共立、1995)
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 15 Nov 2004 13:46:32 +0900
    AA: 佐藤先生

    D社のKです。
    早速のご返答ありがとうございます。
    粘性係数については早速金属データブックにて調べたところ記載がありました。
    本当にありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    467. 反磁性の磁化率

    Date: Thu, 11 Nov 2004 14:09:44 +0900
    Q: 突然のメールで失礼いたします。京大学生Kです。
    反磁性体ではχが負になるそうですが、それではμはどうなるのでしょうか?
    χ=(Naμo/3kT)×μ2の式からするとχは常に正でなければならないと思われ るのですが。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 14:44:36 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
    χ=(Naμo/3kT)×μ2の式は常磁性の式です。反磁性には適用出来ません。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 14:46:58 +0900
    早々のお返事、ありがとうございます。
    -------------------------------------------------------------------------

    468. プラズモン励起について

    Date: Thu, 11 Nov 2004 17:10:16 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤先生
     お世話になります。北陸先端科学技術大学院大学材料科学研究科博士後期課程3年 の岩井と申します。先生のH.P.いつも楽しく拝見させていただいております。物性Q &Aでも、最近のナノテクノロジーでも表面プラズモンがよく話題になり、興味を持 ちました。勉強してみましたが、下記の4点についてよく理解できません。ご教示を 頂きたく、メールさせていただきました。
     1.光による表面プラズモンの励起によって、励起光の数十倍から数百倍の増強電 場が金属表面に局在することはよく知られており、盛んに応用されております。私は その機構(表面プラズモン励起による内部電場増強の機構)が知りたく、論文その他の 文献を当たりましたが、明確に説明した物を見つけることができませんでした。表面 プラズモン励起による内部電場増強の機構についてご教示いただけないでしょうか。
    2.光による表面プラズモンの励起は、励起光の偏光がp偏光の場合にのみ起こ り、s偏光の場合には起こらないと言われておりますが、その理由がよく理解できま せん(Maxwellの境界条件に関係しているだろうことは想像できるのですが・・・)。 この理由についてご教示いただけないでしょうか。
     3.表面プラズモンポラリトンは、励起光の電場が表面プラズモンを励起すること によって形成される連成波であるとの理解は正しいでしょうか?また、その励起は共 鳴周波数を持つ光でなくとも、ωp(プラズマ振動数)<ωなる振動数ωを持つ光であ れば可能であると考えてよろしいでしょうか。さらにこれに関連しまして、"表面プ ラズモンと光の共鳴"や"光による表面プラズモンの励起”という言葉遣いは正しく、 "表面プラズモンポラリトンと光の共鳴"や"光による表面プラズモンポラリトンの励 起”という言葉遣いは誤りであるとの認識は正しいでしょうか。
     4.プラズモンに関する論文は、そのほとんどがAgを、次いでAuをターゲットにし ているとの印象を持ちます。しかし、その他の貴金属、例えばPtにつきましては表面 プラズモンに関する論文はほとんど見かけません。Ag、Au以外の貴金属におけるプラ ズモンの研究例が乏しいことについて、先生のご見解をお聞かせ願えないでしょう か。(Ptはダンピングが大きく、プラズモン共鳴のスペクトルの半値全幅が大きくな りすぎ、シャープなピークが得られないことからその観測が難しい、というのが私の 私見ですがいかがでしょうか)
     お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 11 Nov 2004 19:04:15 +0900
    岩井様、佐藤勝昭です。
     私は、表面プラズモンの専門家ではありません。従って、詳細な議論は、たとえばNEC 基礎研の藤方潤一さんにお尋ねになった方がよいと思います。

    1.表面プラズモン励起による内部電場増強の機構についてご教示いただけないで しょうか。
    米国NEC基礎研の
    G.D. Lewenの論文がWebに載っています。わかりやすい図解がありますの で参考にしてはいかがでしょうか。
     URL=http://www.foresight.org/Conferences/MNT9/Papers/Lewen/

    2.光による表面プラズモンの励起は、励起光の偏光がp偏光の場合にのみ起こ
    > り、s偏光の場合には起こらないと言われておりますが、この理由についてご教示いた だけないでしょうか。

    表面プラズモンは電荷分布の疎密が表面に平行(x方向とします)に存在し、疎密波の波 数ベクトルkpと光の波数ベクトルを表面への射影Ksinθが、等しくなければカップルしま せん。また、光の電界の表面への射影が電荷の疎密の方向(x方向)の成分を持たなけれ ばカップルしません。s偏光の電界は入射面に垂直なのでy成分しかもたないのでカップ ルできません。一方、p成分は入射面内にあるのでKの射影と同じ向きのx成分をもつの でプラズモンを励起出来るのです。

    3.表面プラズモンポラリトンは、励起光の電場が表面プラズモンを励起すること
    > によって形成される連成波であるとの理解は正しいでしょうか?

    ポラリトンは、分極波と電磁波が結合した状態です。入射光は表面付近ではもはや純粋の 光ではなく、電荷の疎密による表面電気分極と結合した新しい固有状態になっています。 力学振動のことばで言えば連成振動といえるでしょう。

    また、その励起は共> 鳴周波数を持つ光でなくとも、
    > ωp(プラズマ振動数) <ωなる振動数ωを持つ光であ> れば可能であると考えて
    > よろしいでしょうか。

    ω<ωpでは、電荷は電界の振動に対してin phaseで振動する(付いてくる)ことができ ます。この状態がプラズマ状態です。

    さらにこれに関連しまして、"表面プラズモンと光の共鳴"や
    > "光による表面プラズモンの励起”という言葉遣いは正しく、
    > "表面プラズモンポラリトンと光の共鳴"や"光による表面プラズモンポラリトンの励
    > 起”という言葉遣いは誤りであるとの認識は正しいでしょうか。

    あなたの解釈でよいと思います。

    4.Ag、Au以外の貴金属におけるプラズモンの研究例が乏しいこと
    > について、先生のご見解をお聞かせ願えないでしょうか

    Ag, Auのプラズマ振動数は、なんでもQ&Aの418にありますように、金属のバンド間遷 移が起きることによるハイブリッドプラズマによるものです。
    Ptの場合ωpは6eV付近にあります。しかし、反射率は「白金黒の説明に使った反射スペクトル」にありますようにあまり高くありません。これは、ご指摘のようにscattering lifetime が短く、自由キャリア吸収のtailが広く可視域に広がっているためです。
    このため、プラズマ振動の減衰が大きく、有効に電界と結合しないためではないかと考え られます。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 12 Nov 2004 06:34:26 +0900
    AA: 東京農工大 佐藤先生
     プラズモンの件でご教示をお願いいたしました、北陸先端科学技術大学院大学の岩 井です。お忙しい中早速ご教示いただき有難うございます。半年ほど前からプラズモ ンに興味を持ち勉強してまいりましたが、先生にお尋ねした部分がどうしても理解で きませんでした。しかし、先生にご教示いただき、ようやくスッキリと理解すること ができました。
     また何かご教示いただくことがあるかもしれませんが、何卒よろしくお願い申し上 げます。有難うございました。
    --------------------------------------------------------------------------------------

    469. 一般炭素鋼での高温でのヤング率

    Date: Mon, 15 Nov 2004 00:37:50 +0900
    Q: 佐藤研究室 担当者 様
    はじめてメールさせていただきます。
    WEBにて金属材料の高温での特性を検索する過程でHPの存在を知り、お聞かせ戴きたく存じます。

    質問
    高温(650度と700度)での一般炭素鋼(炭素>0.3%)のヤング率をご教授ください。
    とあるWEBサイトでは 425度までのデータを見つけましたが、この温度以上のものはありません。
    http://at.wxw.jp/binran/tbl/ElasticModulus.php

    経緯
    圧力容器を700度にて応力除去熱処理する際、円筒胴内部に炭素鋼管のサポートをしなくては 円形が座屈し楕円形に変形をしてしまいます。
    この円筒胴サポートの寸法を計算求めたいというものです。
    何卒宜しくお願い申し上げます。
    WEBアップされる際は匿名でお願いします(匿名:会社員N)
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 15 Nov 2004 19:07:46 +0900
    A1: N様、佐藤勝昭です。
     私は、金属工学の専門家ではないので、手元にデータが無く、図書館で、金属データブ ック、鉄鋼便覧、金属便覧などを調べてみたのですが、探し方が足りないのか、見つけら れませんでした。
     このくらいの高温になると、弾性的ではない変形(相変態、クリープなど)が起きるの で、きちんとしたデータが測定出来ないのが原因ではないかと存じます。
     
    図のttt曲線(http://www.key-to-steel.com/Articles/Art17.htm)に示しますように、 550℃付近では短時間でAusteniteからPearliteに変態するようです。従って、650度~700 度で一般炭素鋼を使うのは、無謀な気がします。
     機械システム工学科の桑原先生にお願いして、しかるべき研究者を捜してもらっていま すので、今しばらくお待ち下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 01:01:48 +0900
    Q2: 佐藤勝昭殿
    ご返信ありがとうございます。
    本件Temporaryサポート用に使用するもので当然メーカーサイドで安全率を考慮し メーカーサイドの責任のもとで使用する部材となっています。 (熱処理後、このサポートはスクラップとなります)
    700度でのヤング率は、まさかゼロにはならないとは思いますが ガラスが溶ける時のような赤く溶解した状態まではならないと思われます。
    (実際 形状は保つことが出来ています)
    何卒宜しくお願い申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 09:25:58 +0900
    A2: N様、佐藤勝昭です。
     本学の機械システム桑原教授が製鉄会社の専門家H様に問い合わせてくださいました。
    H様から桑原先生へのお返事は下記の通りです。
    =================================================================================

    お問い合わせの件,直接のデータは見つかりませんでしたが,既存のデータをもとに推定してみました。

    まず,0.2%C鋼での温度依存性として
    室温:213GPa→550℃:175GPa
    というデータがありました。温度依存性は曲線でしたが,外挿すると700℃:160GPa程度でした。
    他の鋼材の温度依存性(700℃までのデータあり)も参考に外挿してますので,さほど悪い推定 ではないと思います。ただし,425℃:187GPa程度ですので,ご紹介いただいた
    http://at.wxw.jp/binran/tbl/ElasticModulus.php
    (425℃:16700kgf/mm^2)より大きい値になっています。
    前者は共振法による測定ですが,後者が引張試験で測定したものだとすると,比例限が不明瞭で結果的に ヤング率を低く同定した可能性があると思います。

    一方,室温でC量を0.2%から0.3%にすることでヤング率は1%程度しか下がらないこと,温度依存性の固溶原子 量依存性は小さいことなどがうかがえるデータが別の文献に示されていました。

    以上のことから,少なくとも比例限以下でのヤング率は160GPaとしても,さほど問題はないと思われます。 もちろん,加熱中の炭化物析出をともなう組織変化や比例限を超える場合の挙動をどう考慮するかなどは 考えていませんが,その影響はケースバイケースですので,とりあえずはある程度の安全係数をかけて あげるしかなさそうです。例えば,乱暴には
    http://at.wxw.jp/binran/tbl/ElasticModulus.php
    を外挿してしまうのも手かもしれません。

    なお,ここで参考にしたデータは「鉄鋼便覧」と「レスリー鉄鋼材料学」に紹介されていたものです。詳細が必要で したら,コピーをお送りします。

    頼りない回答で申し訳ありませんが,これでご容赦いただきたくお願い申し上げます。

    鉄鋼メーカー H
    --------------------------------------------------------------------------

    470. 銀薄膜の酸素透過率

    Date: Tue, 16 Nov 2004 13:21:24 +0900
    ㈱三社電機の寺本と申します。
    パワー半導体デバイスを製造している小さな半導体メーカーです。
    物性何でもQ&Aのホームページを見て、初めてメールさせていただきます。
    [質問内容]
     弊社では、一部デバイスで酸化防止のためAg薄膜を蒸着しています。(1~2μ m)。しかしAg薄膜が充分な酸化防止機能を果たしていない可能性があります。 Ag薄膜を透過する酸素の透過率データ又はAg膜中の酸素の拡散係数を教えていた だけませんでしょうか?
    Ag薄膜を透過するガスに関する参考文献紹介でも結構です。
    尚、Au薄膜やPd薄膜との比較をしたいので、AuとPdに関する同データがあればな お有難いのですが。
    以上よろしくお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 16 Nov 2004 19:27:09 +0900
    寺本様、佐藤勝昭です。
     申し訳ありませんが、銀の中の酸素の拡散については、手元にデータがありません。
    私は専門外なのですが、一般に金属の薄膜においては、もし緻密であれば、室温でのOTR (oxygen transmission rate)は十分低く表面のみが酸化しそれが不動態を作ってそれ以上 の酸化を防ぎます。プロセスを通すとき高い温度になったときには拡散が起きると思いま す。室温の拡散係数は10^-3~10^-1[cm^2s^-1]の程度ですが、活性化エネルギーが, 1-2eVのオーダーなので、T=900Kでは10^2~10^4という大きな値をとるでしょう。(bcc金 属中の酸素の拡散係数と活性化エネルギーは、深井有著「拡散減少の物理」(朝倉、1988) のp.88に載っていますが、fcc金属であるAg等についてのデータは載っていません。)
     しかし、私が思うには、金属薄膜の場合、室温付近での酸素の透過は拡散を通じてとい うより、ピンホールや結晶粒界を通しておきるのではないでしょうか。そのあたりのこと を抑えておかないと、バルク中の拡散現象を追求しても無意味になるでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 17 Nov 2004 09:32:31 +0900
    佐藤 教授様

    早速の情報提供、誠にありがとうございます。
    求めていたデータは入手できませんでしたが、回答の内容から、 いろいろ真剣に検討していただいたことが伺え感激しました。
    このようなQ&Aコーナーがあることは、技術関係者にとって本当に 心強く思います。
     お教えのように、薄膜の酸素透過についてはバルク中の拡散より 粒界や膜欠陥がポイントになるのでしょう。
    経験的にAu膜に比べAg膜は酸素透過が多いらしきことはわかっていますので 今後膜質や成膜条件などに注目して検討を進めていきます。
    もし、さらにヒントとなる情報がありましたらよろしくお願い致します。
    本当にありがとうございました。今後もよろしくお願い致します。
                             寺本
    ---------------------------------------------------------------------

    471. 電磁波の電界測定

    Date: Tue, 16 Nov 2004 16:44:27 +0000 突然のメール申し訳ございません。
    電磁波について勉強している電気通信大学の笹川貴則と申します。
    電磁波によって生じる電界の測定をする為、オシロスコープを用いた装置を作ろうと 考えていますが、具体的な装置が思いつきません。
    モノポールアンテナを用いる?というのを聞いたのですが?
    また電界が人体に与える影響について説明して頂けないでしょうか?
    よろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 17 Nov 2004 18:57:15 +0900
    A: 笹川様、佐藤勝昭です。
    学生さんでしょうか?学科と学年をお教え下さい。
    とりあえず、あなたが、大学院の学生で、電波工学の単位をとっているものとしてご説明 します。最近、電磁波の環境への影響を考える概念としてEMC(電磁両立性)がクローズア ップされています。一口に電磁波といっても下は10kHzから上は100GHzまで広い範囲にわ たっています。電磁波の不要輻射(スプリアス)を測定する方法としては、国際的な規格で あるCISPR規格に準拠して電波技術審議会が規格を定めています。
    規格については、
    電波環境協議会 のホームページをご覧下さい。
    問題になる領域別に規格がpdfで載っており、そこにアンテナまで書いてあります。
    たとえば、http://www2.ias.biglobe.ne.jp/emcc/cispr/pdf/CISPR16-1.pdf には無線妨害波およびイミュニティ測定装置の技術的条件が書かれており、周波数帯別に アンテナの規格が決められています。

    人体への影響については未解明なことが多く、専門家の間でも統一した見解がないと思い ます。世界保健機構World Health OrganizationのHPに電磁波の人体への影響のことがま とめられているので、参考にして下さい。
    http://www.who.int/peh-emf/about/WhatisEMF/en/
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 20 Nov 2004 13:41:52 +0000
    Q2: 早速の返信ありがとうございました。
    私は電気通信大学、電気通信学部、情報通信工学科に所属している大学4年目の学生 です。
    申し遅れましてすいませんでした。
    先生に教えて頂いたURLに書いてある事は非常に難しく、私の勉強不足を痛感いたし ました。
    電界を測る装置を作る前に、もう少しこの分野を勉強する事にしました。 一つだけ質問があるんですが、電磁波の環境への影響を考える際に、磁界強度を求め て人体への影響を考える方法と電界強度を求めて人体への影響を考える方法とあると 思うんですが、磁界強度から人体の影響を考える場合については新聞や文献等を通じ て理解出来たのですが、電界強度と人体への影響に関してはいまいち理解出来ませ ん。
    電界強度と人体への影響についての関係、この点についてお教え願えますか? よろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 21 Nov 2004 00:00:31 +0900
    A2: 笹川君、佐藤勝昭です。
     電磁波は、電界と磁界がマクスウェルの方程式で結びついていることは、学習 しているはずです。従って、電界強度と磁界強度の間には簡単な関係式がありま すから、どちらを測っても、同じ情報が得られます。ただ、人体に対する作用 は、電界から直接来るものより、磁界による方がはるかに大きいので、磁界を測 定する方が直接的なのです。磁界変化→回転電流を誘起→血流に影響という経路の 方が、電界の変化→電気分極という経路より影響を与えやすいのではないかと存 じます。
     電気通信大学、電気通信学部、情報通信工学科といえば、電磁気学・電波工 学・通信工学のメッカではありませんか。私のような電子材料物性の研究者に聞 くより、お近くにいくらでも有名な専門家の先生方がいらっしゃるはずです。卒 研の指導教員を通じてしかるべき先生に尋ねられることをお勧めします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 21 Nov 2004 16:17:06 +0000
    AA: お返事ありがとうございます。
    磁界強度と人体への影響、電界強度から影響について非常に的確に答えて頂き、正確 に理解する事が出来ました。
    今後は教科書をもう一度勉強しなおしたり、教授にお話を伺ったりしてこの分野につ いて理解を深めていこうと思います。
    ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    472. 強誘電体の誘電率

    Date: Thu, 18 Nov 2004 11:39:47 +0900
    Q: 佐藤先生

    初めまして。T社のTと申します。
    (恐縮ですが、もしHPに掲載されます場合は匿名でお願い致します。)
    佐藤先生のQ&AのHPは、お忙しい中の熱心なご回答に、いつも感謝の気持ちで拝見しております。

    さて、私は現在、強誘電体微粒子を用いた機能性薄膜を作成する試みを行おうとしています。
    強誘電体の情報を収集している中で、疑問に思うことがありました。

    強誘電体の強誘電相は、内部電場によって、分極成分の動きが、基本的に凍結された状態だと思うのですが、 たとえば、教科書に載っています、BaTiO3の(3段階あるようですが)最低温域のTcの下でも誘電率が約1000、 またKDPでもTc以下で誘電率が1000以上の値を示しています。

    普通のイオン結晶の誘電率が室温で10ぐらいであることを考えますと、上記の強誘電相では、 弱い外電場にさえ、十分大きな分極が起こることを意味していると思います。
    これは、強誘電相の「秩序状態」という描像と矛盾しているような気がしますし、このような「揺らいだ 状態」と「秩序状態」がどのように共存しているのかも不思議です。

    いくつか教科書を当ってみましたが(キッテル、アシュクロフト・マーミン、フレーリッヒ誘電体、 強誘電体と構造相転移(裳華房)、誘電体(培風館)、他洋書など)、
    この強誘電相の常誘電的(?)振る舞いについての記述は見当たりません。

    この現象を、どのような機構として捕らえるべきか、ご存知でしたらお教えくださりますと幸いです。 宜しくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 18 Nov 2004 12:50:35 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
     ご質問は、強誘電体の自発分極がなぜ外部電界に依存して変化するかということですね。 このような現象は強磁性体でも同じことが起き、いわゆる磁気ヒステリシスループを描く ことはよく知られています。磁気異方性の小さな強磁性体では保磁力が小さくてわずかな 磁界でも磁束密度は大きく変化します。この変化率を透磁率と呼んでいます。パーマロイ (Fe20Ni80合金)はゼロ磁界における透磁率が非常に大きいので高い透磁率(permeability) をもつ合金(alloy)という意味でpermalloyよ呼ばれています。強磁性では本来すべての方 向に磁化がそろっているはずなのになぜゼロ磁界でほとんど残留磁化を持たないことが起 きるのでしょうか。それは、磁性体が異なる磁化方向をもつ「磁区(domain)」に分かれて 全体として打ち消しているからです。
     これと同じような現象が強誘電体にも起こります。そもそも強誘電性をferroelectric というのは、ferromagnetic (強磁性)のアナロジーなのです。強磁性の自発磁化Msと同様、 強誘電体は大きな自発分極Psを持っています。強誘電体の初期状態で分極がゼロなのは、 強磁性体のdomainと同じく誘電体でもdomainがあるからです。この業界ではdomainに「分 域」という訳語を付けています。わずかな電界ΔEを加えてもこの分域の移動や回転が起 きるので全体の分極Pが大きく変化(ΔP)するのです。ΔP/ΔEが誘電率として働くので、 大きな誘電率を示すのです。この値は、物質定数ではなく、分域の出来方に依存するので、 試料の作製の仕方、処理の仕方で変わります。因みに強磁性体における大きな透磁率など の現象は、技術磁化(technical magnetization)と呼ばれています。従って、強誘電体で も「技術分極」と名付けるべき現象が起きているとお考え下さい。
    分域についてはKittelのIntroduction to Solid State Physicsにも載っています。(た とえば7th edition p408のFig22に写真が掲載されています。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 18 Nov 2004 13:38:36 +0900
    AA: 佐藤先生
    早速の、しかも大変詳細なご回答を下さり、本当に有難うございます。
    強誘電体の分極域の極性反転は、かなり高い電位を印加しないと起きないのでは、 というイメージを持ってしまっておりました。
    確かに、強誘電体でも、磁性体の保磁力に相当するものが小さければ、 外場の強さに係らず、大きな分極を起こすことができるということなのですね。
    改めて、ヒステリシスループの図も見て、納得いたしました。
    「技術磁化」という言葉も初耳で、大変勉強になりました。
    今後ともご指導の程宜しくお願いいたします。有難うございました。
    --------------------------------------------------------------------------------

    473. 金属と絶縁体の屈折率

    Date: Thu, 18 Nov 2004 13:43:01 +0900
    Q: 突然のメール申し訳ございません。京大ポスドクのIです。
    物性なんでもQ&Aを見ての質問です。
    下記の金属と酸化物粉末につきまして、レーザー回折散乱法による
    粒度分布測定を行いたいのですが、測定に必要な各原料に関する
    屈折率が分かりません。
    Cr (Chromium), Al (Aluminium), W (Tungsten), Ti (Titanium),
    Fe (Iron), Si (Silicon), Mn (Manganese),
    Y2O3 (Yttrium Oxide), Y3Fe5O12 (Yttrium Ferrite),
    TiO2 (Titanium Oxide)
    文献値で構いませんが、ご存知でしたら教頂けないでしょうか?
    どうぞ宜しくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 18 Nov 2004 15:42:49 +0900
    A: I様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。ご存じと思いますが波長によって屈折率は異なります。 回折計のレーザーの波長がHeNe(632.8nm)であるとして、600nm付近における屈折率をお答 えします。
    物質屈折率(測定波長)文献
    Cr3.47(610.8nm)Palik vol.2 p384
    Al1.39(635.8nm)Palik vol.1 p398
    W3.65(635.8nm)Palik vol.1 p366
    Ti3.03(650.0nm)Kudo p376
    Fe3.53(626.8nm)LB III 15b p372
    Si3.882(632.6nm)Palik vol.1 p565
    Mn信頼性のある
    データなし
      
    Y2O31.930(619.9nm)Palik vol.2 p1091
    Y3Fe5O122.03(620 nm)Wittekoek Phys Rev
    B12(1975) 2777 Fig4より推定
    TiO22.88(//) 2.59(⊥)(620 nm)Palik vol.1 p800
     今回は、他の方々の役に立つので、調べてお答えしましたが、あなたは京大のPD研究員 なのですから、京都大学には立派な図書館がありますので、次回からはそこに行って調べ て下さい。
    Palik とは Handbook of Optical Constants of Solids (Pergamon)
    LB とはLandolt Boernstein (Springer)
    Kudo は 工藤恵栄「基礎物性図表」(共立)
    --------------------------------------------------------------------

    474. 密度汎関数理論とバンドギャップ

    Date: Fri, 19 Nov 2004 09:33:37 +0900 (JST)
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭様

    突然のメール失礼します。T大学の修士2年のNと申します。よろしくお願い致します。(HPにアップされる際は、大学名、氏名ともに匿名でお願い致します。)質問は、密度汎関数理論についてです。

    密度汎関数理論において、交換相関汎関数にLDAやGGAを適用すると、半導体のバンドギャップが過小評価されてしまう理由をご教示願えますでしょうか?密度汎関数理論は基底状態の理論ですので、励起状態の情報を含むバンドギャップが正確に出ないというのは納得できるのですが、常に「過小評価」になるのは、別の理由があるような気がします。いくつか文献に当たったのですが、この理由について触れてあるものは見当たりませんでした。

    ご多忙のところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 21 Nov 2004 01:50:46 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
     私は、理論家ではありませんから、正確なお答えができるかどうか心配です が、実験屋的な感覚で定性的にお答えしたいと存じます。
     一般に、LDAによる1電子バンド計算ではバンドギャップを正確に見積もるこ とができません。たとえば、GaNのバンドギャップの実験値は3.4eVですが、LDA では1.81eVという小さな値をとります。InNに到ってはマイナスのギャップにな ります。
     これを救うためにLDA計算結果に対しGWAにもとづく多体の自己エネルギー補正 が行われます。GWAの補正では、コア(閉殻)のすべての電子と価電子帯を構成す る電子の交換・相関エネルギーを考慮しています。すなわち、閉殻まで含めた多 電子系のエネルギー準位を考えた補正を行うのです。
     東理大の浜田典昭先生のグループでは、LDA-GWAによってGaNのバンドギャップ を計算し、3.16eVという実験値に近い値を報告しています。
     このことから、LDAで計算すると波動関数の広がりが大きいため、閉殻のポテ ンシャルを遮蔽して小さなバンドギャップを与えるが、多電子の効果を入れると 波動関数は局在して、ポテンシャルは遮蔽を受けにくくなって、バンドギャップ が広くなるという解釈ができそうです。
    (しかし、InNについてはGWA補正によってもギャップは0.02eVにしかならず、最 近の実験結果である0.7-0.8eVを説明できていません。従って、GWAに加え、さら なる補正が必要であるようです。)
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 22 Nov 2004 09:22:05 +0900 (JST)
    AA: 東京農工大学 佐藤勝昭様
    T大のNです。迅速で分かりやすいお返事を頂き、恐縮です。自分なりに定性的に理解できました。これからも一読者として物性なんでもQ & Aを興味深く拝見させていただきたいと思います。ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    475. YIGの放射率

    Date: Mon, 22 Nov 2004 09:10:14 +0900
    Q: 佐藤先生、お世話になります。F社のSと申します。(所属、名前は匿名でお願いいたします) 先生の「なんでも物性Q&A」を拝見させていただき、質問させていただきたくmailさ せていただきました。

    私はYIGをセル化して変調器アレイの開発を行っています。
    DRAMのようにマトリックスの配線を配して、YIGのセルを個別にスイッチングするも のです。
    このとき配線のサイズがミクロンであり、有効に磁場を印加させるためにYIGを数ミ クロンの薄膜として、 ファラデー回転を十分に回転させるため532nmのレーザー光を使用しています。 この時、薄いと言えど回転の温度依存性を抑えるには、吸収による発熱設計が必要と なりました。
    伝導、対流の等価モデルは理解できるのですが、放射の項の物性値が判らず滞ってし まいました。
    Bi置換のYIGとGGGの放射率をご存知でしたらお教えください。
    あるいは、実験的に求める手法をご伝授ください。

    変調器の構造は、1mm程度のGGG基板片面にBi-YIGをLPEにより数ミクロン製膜し、そ の上に アルミを数百nmスパッタ製膜しミラーとします。さらにその上に無機質絶縁層、アル ミ配線、絶縁層・・・
    と重ねます。つまりGGG(SiO2のARコート有り)から入射したグリーンレーザーは反射 してYIGを往復します。
    YIGのダイサイズは□1cm程度で、ガラエポの駆動回路にフリップチップ実装されてい ます。
    光の入射面のGGGは大気にさらされていて、逆に配線側は実装基板より放熱を行いま す。
    GGG、YIGともに面は平滑です。

    以前「なんでも物性Q&A」No.332で透明材料の放射の考察をされていましたが、この 場合もYIGが熱源で、YIGの 放射率と屈折率差による反射を考慮したGGGの透過率との掛け算でよろしいのでしょ うか?
    放射率が非常に小さいGGGからは放射は期待できない、と考えるべきか、放射はYIGか ら大気により多く起こる、 と考えるべきかで設計が変わってしまいます。
    ちなみに、GGGは波長532nmでも赤外でも吸収はありませんでした。YIGは波長1300nm 以上の赤外で吸収なしで、 532nmで1.5dB/μmの吸収が観測されました。
    屈折率は、GGGが532nmで2.0、YIGが1500nmで2.2、532nmで2.4でした。
    いずれもAR処置後のデータです。

    以上よろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 22 Nov 2004 17:01:27 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     放射率については
    パイロメーター・インスツルメンツという会社のWebに載っていますが、放射率は物質 定数ではなく、技術者の用いるほとんどの物性と違って同じ物質でも、温度、表面のテク スチャー、材料の履歴などに依存して大きく変化する量なのです。その結果、同じクラス やタイプの材料ですら、放射率と他の物性値との相関はほとんどありません。 一般的に いえることは、金属の放射率は金属の酸化物すなわちセラミクスより低いこと、金属の放 射率は温度とともに上昇するが、セラミクスの場合は逆の温度変化を示すという程度です。  このWeb-siteには放射率 測定法についても載っています。

    同じ会社のWebにある論文 によれば、セラミクスの場合について、次の記述があります。
    Sample CodeEmissivityT(補正前)T(補正値)
    "A".88 - .89716 ℃723 ℃
    "B".50 - .52784 ℃831 ℃
    "C".73 - .75601 ℃619 ℃
    ものによりますが、0.7-0.8程度でしょう。
    しかし、あなたの質問は室温付近のものなのでこの値は適用出来ないと思います。また、 LPEで作製した薄膜のように平坦な物質の表面の場合放射率は小さく、0.02程度になるで しょう。ご質問は、熱設計において放射による熱移動を見積もるという場合と存じますが、 前に書きました放射温度計での計測は高温の場合です。デバイスの温度は室温付近ですか ら周辺との温度差も小さいので放射による熱輸送は熱伝導によるものにくらべて無視出来 るのではないでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 22 Nov 2004 17:31:33 +0900
    AA: 佐藤先生、大変敏速なご回答をありがとうございました。
    予想はしていましたが、放射の項は期待できないようですね。
    熱源から最短距離で或る程度の表面積が望める部分からの 放熱が理想なのですが。
    等価回路的には、放射と対流は並列に起きていますので、 今後は対流の項に着目していきます。
    今回はありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------------

    476. 光吸収による汗の分析

    Date: Mon, 22 Nov 2004 17:27:25 +0900
    Q: 突然のメール失礼いたします。
    A高専専攻科のTといいます。匿名でお願いします。

    汗の成分を光吸収係数を利用して、分析したくて検索していたら、先生のHPに 水銀の吸収スペクトルことについて書いてあるのを見つけました。

    汗の中のナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムの濃度を調べるために この4つの物質の光吸収スペクトルを教えていただけないでしょうか。

    いきなり不躾な質問だと思いますが、回答していただけると光栄です。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 22 Nov 2004 20:28:16 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。汗の中の金属は、金属元素そのものではなく、Na+イオン、Mg2+イ オンの形で化合物を作っています。たとえば,塩化ナトリウム(食塩NaCl)は汗の中の重要 な成分ですが、決して金属ナトリウムの吸収を示すわけではありません。ご存じの通り、 NaClは無色透明ですから、紫外線や、赤外線に対しては吸収を示しますが、可視光線に対 して吸収はありません。グルタミン酸ソーダもNaの化合物ですが無色透明です。
     従って、直接吸収スペクトルを測定しても、何も見えないでしょう。どうしても光吸収 で評価したいなら、原子吸光分析(Atomic Absorbance)がよいでしょう。これは、原子吸 光分析装置という高価な装置が必要ですが、分析したい物質を溶かした溶液をバーナーの 炎に吹き込んで、化合物をバラバラにし原子特有の吸収スペクトルを評価するのです。  このほか、汗を乾燥させて得られた粉末を赤外線分光によって測定したり、ラマン効果 で測定したりも可能でしょうが、汗の粉末を数十mg用意するのは大変だと思いますよ。  いずれにせよ、簡単に手に入る装置で吸収スペクトルから分析するのはむずかしいと思 いますよ。今後どうするかは、指導教員と相談して下さい。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Nov 2004 08:32:32 +0900
    佐藤先生
    調べてくださって本当にありがとうございました。
    指導教官の先生と相談してみます。
    --------------------------------------------------------------------------------

    477. 1/4波長板の偏光状態

    Date: Tue, 23 Nov 2004 14:04:49 +0900
    Q: 突然のメール失礼します。
    私は、W大学大学院修士1年のKと申します。よろしくお願い致します。
    (HPにアップされる際は、大学名、氏名ともに匿名でお願い致します。)
    質問は、電磁波理論についてです。
    質問
    1/4波長板での位相差はΓ=π/2である。1/4波長板の偏角をφと仮定する。
    a,入射光はy方向に直接偏波しているとして、出射光の偏波状態を求めよ。
    b, aの答えの偏波状態が複素平面上で複素数で表示されているならば、φを0から
    φ/2まで変化させたとき、この偏波状態の軌跡が双曲線であることを示せ、
    また双曲線の方程式を求めよ。
    ==================================










    ==================================
    研究の参考書の問題なのですが、a,の方は間違ってないと思います。しかし、 b,が何度やっても双曲線になりません。
    教授は長期出張でいないのでお伺いしました。

    お忙しいと存じておりますが、解答よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Nov 2004 23:07:50 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     計算間違っています。下記のように双曲線になります。







    y偏光のベクトルは






    従って、






    ここで





    という座標変換を行うと、




    となり、双曲線で表されることがわかります。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Nov 2004 23:44:33 +0900
    AA: ありがとうございます。早速の解答ほんとに助かりました。
    マトリックスの計算間違ってました。何度も検算したのですがまちがってました。
    --------------------------------------------------------------------------

    478. アモルファスシリコンの光化学

    Date: Wed, 24 Nov 2004 13:12:07 +0900
    Q: 佐藤先生
    初めまして.T大学の修士1年Sと申します.
    ホームページを拝見し,メールさせて頂いています.
    (匿名での公開を希望します)

    現在,光導電性物質を利用した研究を立ち上げるつもりでサーベイをしています.
    アモルファスシリコンについて,その光伝導性等について御教授願いたいと思います.

    1.私の研究室にはRFスパッタ装置(80w程度)があります. これを用いてSiを膜付けしたとき,得られる膜に期待できる 光導電性はどの程度でしょうか?
    水素化したアモルファスシリコンでは,10-9 Ωcm→10-6 Ωcm 程度というデータを見たことがあるのですが,水素化して いないものでもこの程度の光伝導性を得られるのでしょうか?

    2.ガラス基板にITO→a-Siの順に膜付けし,その上を例えば生理食塩水で満たしたとします.生理食塩水中に漬けた 金属板とITOとの間に電圧を印加し,ガラス側からピンポイントでのレーザー光照射を行ったとき,光照射されたSiの抵抗が下がり,その周辺部位で選択的に電気分解を生じさせることは可能でしょうか?

    「光導電性=光が当たったところに 絶縁体→導線 という変化がおきる」
    という安直な理解をしているのですが,こう上手くはいかないので しょうか?

    学科が機械系ということもあり,周囲に専門的な知識を 持っている人がいないため,メールさせて頂きました.
    身勝手なお願いで恐縮ですが,よろしくお願い致します.
    -----------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Nov 2004 17:21:00 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
    1.Si:Hのアモルファス膜と、Siのみのアモルファス膜とでは、物性が大きく異なります。
    単なるアモルファスシリコンでは、ダングリングボンド(未結合手)が終端されないため、 深い準位となり、光生成されたキャリアをトラップして光伝導に寄与しない可能性があり ます。a-Si:Hでは、Hがダングリングボンドを終端するためドーピングも可能になるし、 深いトラップが減少して光伝導も大きくなっています。
    2.a-SiのFermi準位と食塩水のRedoxとの関係で電気分解が進むかどうかが決まります。
    光を当てて低抵抗になっても、Fermi準位の位置によっては電気化学反応は進まない可能 性があります。電気化学の専門家にお尋ねになってはいかがでしょうか。

    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Nov 2004 18:40:59 +0900
    Q2: 佐藤先生
    T大のSです.早速の御返事ありがとうございました.

    まったく専門外のことに手を出そうとしているため,わからないことだらけで,質問をさせて頂き 本当にありがとうございました.

    食塩水の電気分解についてですが, 電気分解を進めることはできなくても, 例えば,その周辺のみ電位が上がったり, 電荷がしみ出したりという現象は生じるのでしょうか?

    今ひとつ光伝導の現象がわかりません.
    何か良い参考書等がありましたら, 推薦して頂けると幸いです.

    よろしくお願い致します.
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Nov 2004 19:34:34 +0900
    A2: S君、佐藤勝昭です。
     電位に関しては、光の有無によって変わることはないと思いますが、電気化学の分野は 素人なので、お答え出来ません。ごめんなさい。
     光伝導は、1950年代に理論が確立して以来、ほとんど議論されていないと存じます。
    したがって、最近の物性の教科書には出ていないかも知れません。
     手元にある教科書では、
    佐藤勝昭・越田信義共著「応用電子物性工学」(コロナ社1989初版)
      4.3節 光電変換材料p.147-153
    佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社1991初版)
      3.4節 光導電効果p.135-137
    青木昌治編著「オプトエレクトロニックデバイス」(昭晃堂1986:たぶん絶版)
      9.2.2節 光導電 p.227-234
    菊池誠著「半導体の理論と応用(中)」(裳華房1963:たぶん絶版)
      2.3節光から電気への変換装置p.75-79,
    今村舜仁他著「半導体物性測定法」(日刊工業新聞1965: 絶版)
      4.3.3 光伝導 p.255-267 (私の知る限り、これが最も詳しい)
    T大なら、どの本も図書館に行けばあるはずです。古い話は、ネットでは情報が得られま せん。
    ------------------------------------------------------------------------

    479. 電界によるバンド間励起は可能か

    Date: Wed, 24 Nov 2004 17:28:32 +0900
    Q: はじめまして。T大学二年のOというものです。
    日頃、非常に興味深く拝見させていただいております。
    早速質問なのですが、半導体等でエネルギーギャップを超える(励起する)には エネルギーを与える必要がありますよね?そのエネルギーの供給の仕方に、熱や 光があるのは分かりますが、電界によっての励起はないのでしょうか。(また励 起させるエネルギーの形態はほかにないのでしょうか?)
    例えば、GeならEgが0.66eVなので、かなりおおきな電圧をかければEgを超えら れるのでは?などと考えてしまいます。
    まだ、半導体の勉強を始めて間もないので、拙い質問かも知れないですがよろし かったら教えていただきたいです。
    (匿名、匿所属でお願いいたします)
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Nov 2004 18:22:22 +0900
    A: O君、佐藤勝昭です。
     電子にエネルギーを与えてバンドギャップを超えることが出来るかというご質問ですが、 電界で電子にエネルギーを与えるにはどうすればよいでしょうか?
    たとえば1μmの厚みのGeの裏表に10Vの電位差を与えたとしましょう。
    すると、GeにはE=10^7[V/m]の電界がかかります。Geの価電子帯の電子が励起されるので すから、価電子帯の移動度μ=0.18[m^2/Vs]を用いると、電子はv=μE=1.8×10^6[m/s]に 加速されます。( 1.8×10^6[m/s]=1.8×10^8[cm/s]というのは 電子のフェルミ速度を遙かに超えていて、いわゆるホットエレクトロン状態になっています。)
    この電子の運動エネルギーKは、K=(1/2)m*v^2ですが、m*=0.34m0として、
    K=0.5×0.34×9.1×1.8^2×10^-19=2.23×10^-19[J]=1.39 [eV]
    となり、K>Eg=0.66[eV] なので十分励起出来ることになります。

    しかし、このときの電流密度Jは、キャリア密度を10^16[cm^-3]=10^22[m^-3]として、
     J=σE=neμE=nev=10^22 × 1.6×10^-19 × 1.8×10^6 =2.88×10^9 [A/m^2]
    単位体積あたりの消費電力はp=2.88×10^16 [W/m^3]となり、もし、断面積を1cm^2とする と、全消費電力はP=p×10^-6×10^-4=2.88×10^6[W]となり、Geは融解してしまうでしょ う。キャリア密度10^19[m^-3]程度の半絶縁性Geを使ったとしても2.88kWの消費電力とな り、破壊されるでしょう。

    ここに述べたのは一例ですが、半導体の電子を加速してバンドギャップを超えさせるのは かなりむずかしいことがおわかりいただけたでしょうか。

    しかし、pn接合を作れば小数キャリアの注入という形で簡単に伝導帯に電子を励起出来る のです。このことがなければ、半導体にわずかな電圧を加えて発光する素子は出来なかっ たでしょう。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Nov 2004 18:55:47 +0900
    AA: 納得のいく説明、本当にありがとうございました。
    これからもホームページを参考にさせていただきます。
    ----------------------------------------------------------------------------

    480. 金属反射率の温度変化

    Date: Wed, 24 Nov 2004 23:41:57 +0900
    Q: 佐藤先生
    HPを見ての質問です。
    K社研究所のOです。
    サーモリフレクタンスを使った熱物性評価の検討をしておりますが、そもそも金属の 反射率の温度依存性は金属によってどのように異なるのかを知りたいと思っています。 温度による反射率の変化は金属の種類によって正負があるのでしょうか?
    具体的にはMoとNiの反射率の温度依存性データなどが欲しいですが、文献を教えてい ただけますでしょうか。
    よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Nov 2004 00:55:41 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     一般に垂直入射反射率Rは
    R=|(√ε-1)/(√ε+1)|^2
    と表されます。ε=ε'+iε"
    Drudeの式によれば、
    ε'=1-ωp^2/(ω^2+1/τ^2)
    ε"=ωp^2/ωτ(ω^2+1/τ^2)
    です。ωp^2=ne^2/mε0ですが、金属ではキャリア密度nは温度変化しないのでωpも 温度変化しません。したがって、Rの温度変化が起きるとすれば、キャリアの寿 命τを通じてしかありません。
    高温ではτはT^(-3/2)に比例するのでε"はT^(3/2)にほぼ比例して増加します。 もし誘電率が実数部のみであり負の値をとれば、反射率は100%となりますが、虚 数部があることで反射率は小さくなるのです。
    従って、温度上昇とともに反射率は低下します。増加することはないと思いま す。MoやNiの反射率の温度変化のデータは私は存じません。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Nov 2004 07:51:48 +0900
    Q2: 佐藤先生
    Oです。早速のご返事、感謝いたします。
    つい、甘え心から先生のお手を煩わせまして申し訳ありません。
    先日、Mo,Niの反射率測定実験でそのように温度計数に正負があるかのようなデータが 得られたからです。どこか間違っているのかもしれません。
    もう一度見直し、ご回答をもとに、勉強してみます。
    本当にありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Nov 2004 11:34:13 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     実際の金属の誘電率はDrudeの項とバンド間遷移の項とから成り立っていますが Drude項の寄与についてはLandolt Boernsteinにまとめられており
    Moでは、ωp=6.21eV (文献によっては5.18, 5.25, 6.43などがある)
        τ=0.6×10^-14s
    Niでは、ωp=4.70eV
        τ=1.9×10^-14s (文献では0.2-1.9の間にばらつく)
    となっています。Niの反射率について、τを変えながら反射率Rに対するDrudeの寄与を2 eVで評価してみました。
    τ(s)R
    2.00E-140.9846
    1.00E-140.9695
    5.00E-150.9400
    のように散乱寿命が短くなるに従ってRが減少してることが分かります。 Moについても同様の結果が得られました。
    τ(s)R
    6.00E-150.9634
    1.00E-150.9282
    3.00E-150.8016
    測定されたRの温度係数が正になったというのは、散乱寿命とは別の要素を考える必要が あります。たぶん実験的なもので、温度が上昇して表面状態が変わったことによる反射の 増大(面の凹凸がアニールされてフラットになったとか、あるいは、表面の汚染が除去さ れたとか、逆に酸化膜が出来て反射増大効果があったとか)ではないかと存じます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Nov 2004 20:36:44 +0900
    AA: 佐藤先生, Oです。
    かさねて御礼申し上げます。
    昨晩たまたま、先生のサイトに至ったのですが、物性論に関して、先生のような方から わかりやすく教えていただけるのはありがたいことです。
    お忙しい中、本当にすばらしい啓蒙活動をされていることと敬服いたします。
    回答を公開されているのは、同じような疑問をもつであろう多数の初学者にとって非 常に有用なことと思います。
    私も、これから過去の分を拝見させていただき、勉強したいと思います。
    また、今回の件は、先生のご教示に従って再検討してみます。
    ありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------

    481. 構造におけるSi発光の反射

    Date: Sat, 27 Nov 2004 17:24:05 +0900
    Q: 佐藤先生初めまして
    N大学D1のTと申します。(Webで公開する場合には匿名でお願い致します)

    ホームページを見てメールを送らせていただきました。
    恥ずかしながらもどうしても知りたいことがありまして質問させてください。

    初めてシリコンの発光を観察しているのですが
    下のような図で考えたとき

    酸化膜をつけている場所とつけていない場所ではパッシベーションの 影響を考えなかった場合どれぐらい反射して最終的に空気中に 出てくる光強度はいくつになるか知りたく 調べたのですが

    垂直入射の場合反射率Rは
    R=(n2-n1)^2/(n2+n1)^2
    これが単純にn1とn2界面
    n1と空気界面で起こるとして計算すればよろしいのでしょうか

    これだけだとSiO2の膜厚に関係なく屈折率だけで空気中 いわゆる観測する光の強度を求めることができるのでしょうか。 光は1000~1100nmの波長域なのでSiO2では吸収されないと考えています。

    ただ2回目の反射光が干渉を起こして観測できる光の強度に影響を与えるのかがわかりません。

            |
            |
    Si      |
    n1      ↓  ↑反射
    --------------------------------
             |
    SiO2     |
    n2       ↓ ↑反射
    --------------------------------
    空気 n=1    ↓

    申し訳ありません
    よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 27 Nov 2004 20:09:29 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
     シリコンは十分厚く、発光は表面の直下で起きるとします。
    また、表面の凹凸は十分に平坦であるとします。発光の波長λ=1000nm、SiO2の膜 厚をh1[nm]とします。
    なんでもQ&Aの152にありますように、直入射の場合は、SiO2と空気の各界面 での多重反射の効果を仮想屈折率法で扱います。
    複素屈折率N2=n2-iκ2の下地層の上に、厚さh1で複素屈折率N1=n1-iκ1の薄膜をつ けたとき、これを仮想的複素屈折率N0の1層の媒体に置き換えることができます。
     N0=N1×{1-r2 exp(-2iφ)}/{1+r2 exp(-2iφ)}
      ここに、r2=(N1-N2)/(N1+N2), φ=2πN1h1/λ
    あなたの場合は、下地は空気なのでN2=1, N1はSiO2の屈折率
     r2=(N1-1)/(N1+1)
     N0=N1×{1-r2 exp(-2iφ)}/{1+r2 exp(-2iφ)}
    Siから、仮想屈折率N0のSiO2/air複合体に入るときの電界の反射率r1は, Siの複 素屈折率をNsiとして、
     r1=(Nsi-N0)/(Nsi+N0)
    光強度の反射率R1は
     R1=|r1|^2
    で表されます。
    1000~1100nmの波長域にけるSiO2の屈折率N1はN1=1.45としてよいでしょう。
    この波長ではSiは吸収が弱いのでk=0とみなし複素屈折率は実数でNsi=3.6程度で しょう。(今、家なので正確な数値はわかりませんが・・)
     r2=(1.45-1)(1.45+1)=0.184
     φ=2π1.45h1/1000=0.0091h1
     N0=1.45×{1-0.184 exp(-i0.01821h1)}/{1+0.184 exp(-i0.01821h1)} このN0を用いて、
     r1=(3.6-N0)/(3.6+N0) これは複素数です。これより光強度の反射率は  R1=|r1|^2 として求められます。
    ------------------------------------------------------------------------

    482. ステンレスの屈折率

    Date: Sat, 27 Nov 2004 22:28:50 +0900
    Q: 初めまして。
    N大学修士のTと申します。
    HPで掲載するようでしたら、匿名にしていただければ幸いです。

    実は、ステンレスの屈折率を教えていただきたくメールいたしました。
    文献の検索の仕方が悪いのか、ステンレスの屈折率が掲載されているものが見つかりません。
    厚かましいお願いですが、ステンレスの屈折率(例えばSUS304など)、文献等を紹介していただけませんか。
    ご多忙のことと存じ上げますが、よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 27 Nov 2004 23:56:26 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     ステンレス鋼は基本的にはFe-Cr合金で、SUS304の組成はモノによって違いますがFe70Cr18Ni10Mn2付近の組成です。製品毎に合金比に幅がありますから、比抵抗、反射率、熱伝導率など「物性値」は製品に依存します。従って、普通のハンドブックのtableに載っていないのだと思います。また、屈折率を求めるには、反射スペクトルのクラマースクローニヒ解析をするか、エリプソメトリを行えばよいのですが、表面には不動態であるCr2O3層が被覆しており、ステンレスのみの正確な値が出るか疑問です。
     ステンレスの反射率は、太陽光の集光用ミラーなどに用いられているので、そちらの業界では鏡面研磨したステンレス鋼が使われていますが、反射率は62%程度とされています。
     しかし、公表されたデータがない以上、屈折率が必要でいたら、使いたい製品についてエリプソメータなどで測定し、不動態の厚みを仮定して推定するしかないと思います。しかし、とりあえずは、Feの屈折率を適用しておかれれば如何でしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------------
    ステンレスの光学定数 註(2013.3.30):
    竹田誠一様よりステンレスの複素屈折率については表のように測定されているとのことでした。
    竹田:金属表面の薄膜厚さの光学的測定方法;熱処理28 [6] pp379-383
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 08:55:48 +0900
    Q2: 佐藤勝昭 先生
    おはようございます。
    先日、ステンレスの屈折率について質問させていただきましたTと申します。

    早速のご返答、ありがとうございました。
    現在、空気-Cr2O3-ステンレスという媒体に関する反射光強度の計算するプログラムを作成しております。
    その際に屈折率を必要としておりまして、先生に質問させていただいたのです。とりあえず、Feの屈折率を用いて計算してみようかと思います。

    失礼ながら、もう一点質問させてください。
    たとえば、『李正中 光学薄膜と成膜技術 アグネ技術センター (2002)』といった文献で屈折率を調べますと、Feの屈折率は2.88-3.37i (0.65μm)と特定の波長における値は掲載されております。
    私が検索したところでは、全波長にわたって屈折率が載っているものはないので、その値を用いる、すなわち、屈折率は一定であると仮定して計算するしかないと考えております。
    実際、屈折率を一定として計算するということは行われているのでしょうか。

    何度も質問させていただいて申し訳ありません。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 21:32:04 +0900
    A2: T君、佐藤勝昭です。
    Feの複素屈折率n-iκはLandolt Boernsteinによると

    Feの屈折率nと消光係数κ
    λ(nm)κR(%)
    10002.304.5270.6
    9002.254.2568.6
    8002.213.9966.3
    7002.153.7564.1
    6002.083.6062.9
    5001.463.1763.7
    4050.982.6664.4
    3020.882.0454.3
    となっています。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 23:04:49 +0900
    AA: 佐藤勝昭 先生

    本当にありがとうございました。
    不勉強である私に丁寧な助言をいただき、感謝いたしております。
    早速、佐藤先生に紹介していただいたFeの複素屈折率を利用して計算を行いたいと思います。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 4 Dec 2004 09:54:29 +0900
    Q2: 佐藤勝昭 先生

    おはようございます。
    以前、ステンレスの屈折率に関して質問させていただいたTと申します (HPでは匿名でお願いいたします)。

    実は、先生に紹介していただいたLandolt Boernsteinを本学の図書館で探していたのですが、所蔵していないことがわかりました。
    物性値等を調べるために非常に有効な文献だと存じ上げております。
    そこで、学外へFeおよびCr2O3の屈折率の掲載されている箇所を複写依頼をしようと思うのですが、ページが分かりません。
    お手を煩わせてもうしわけありませんが、Landolt-BoernsteinのNew Series (Springer)でFe及びCr2O3の屈折率掲載されているページを教えて頂けないでしょうか。
    度々、申し訳ございません。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 5 Dec 2004 15:59:23 +0900
    A2: T様、佐藤勝昭です。
    Landolt Boernsteinのデータは金属のみですからFeについては出ています(LB New Series III 15b p.250-253です。)が、Cr2O3についてはデータが載っていません。Cr2O3については論文を探さないいけませんね。
     Cr2O3の屈折率は590nmにおいて2.55であると韓国の論文に出ています。
    URL=http://journal.kcsnet.or.kr/publi/bul/bu95n3/bu95n3t7.html#2
     また、ECOMのHP(http://www.ecomer.biz/hakumaku/cr2o3.html)によると
    酸化クロム(Cr2O3)の屈折率は2.4nと書かれています。(nが何を意味するかわかりませんが)
    スペクトルは出ていないようですね。
    --------------------------------------------------------------------------

    483. カーボンマトリックスとグラニュラー磁性体

    Date: Sat, 27 Nov 2004 22:46:02 +0900 (JST) Q: こんにちは。某大学の学生Nです。匿名でお願いします。自分はスパッタ法に よる薄膜作製をしているのですが、ターゲットに使うもので粉末ターゲットは 分かりますが、「カーボンマトリックス」というものがありました。この 「マトリックス」とはどういう意味ですか?それと磁気抵抗素子への応用が考えられる グラニュラー構造薄膜についての質問です。カーボン薄膜中に強磁性微粒子を分散させて グラニュラー構造薄膜を作製する時に、導通(ある程度伝導するもの)のある膜中に 分散させるのは導通のない薄膜(絶縁膜)中に分散させる場合と比べて どんなメリットがあるのでしょうか? -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 28 Nov 2004 00:20:56 +0900
    N様、佐藤勝昭です。
    A: このような質問は、本来指導教員に尋ねるべきものです。また、研究室の先輩 や助手の先生、ポスドク研究員などにお尋ねになるべきです。
     マトリックスというのは溶液の場合は溶媒のこと、合金の場合は母体となる成 分を言います。ターゲットの「カーボンマトリックス」はカーボンを主成分とす る混合物です。Co-Cなどのグラニュラー磁性体の薄膜作製に用いるものです。グ ラニュラー磁性体の場合、カーボンや酸化物がマトリックスとなります。
    グラニュラー材料を磁気ヘッド用のGMR素子として用いる場合は電気抵抗が高い と高周波特性が悪くなるので、マトリックスとしては導電性のものが好まれま す。一方、TMR素子に使う場合は、トンネル特性を高めるために絶縁性の方が好 まれます。
    ------------------------------------------------------------------------

    484. 混相のX線回折

    Date: Mon, 29 Nov 2004 22:26:18 +0900
    Q: 突然のメールご了承ください。私はM大学のTと申します。
    特にHPに関しての質問 というわけではないのですが、 X線回折に混相のピークの見分け方について質問がございます。
    現在、私は誘電体関係の研究をしているのですが、その物質が 生成条件により、同じ組成で正方晶と斜方晶の混相になるという ものであります。しかしながら、その物質の斜方晶ならびに正方晶単体の X線ピークが存在しないため、どのピークが正方晶か、斜方晶かが分かりません。 実際、その物質の焼結温度を変化させると、あるピークにおいて、強度が入れ替わる 現象がおこっておりますが、その現象が斜方晶と正方晶の生成割合に寄与しているもの か判断できかねています。このような場合、どのように判別したらよいのでしょうか?
    何卒ご教授の程宜しくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 29 Nov 2004 23:47:04 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
    「しかしながら、その物質の斜方晶ならびに正方晶単体のX線ピークが存在しな いため」というのがどういう意味かわかりません。「過去の文献に各相の単体の XRDのデータが掲載されていない」ということでしょうかか。
    両相の格子 定数は知られているのでしょうか。もし知られているのなら、計算によってXRD のピークを出すことができます。計算式は簡単です。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 10:00:09 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様
    返答有難うございました。説明不足で申し訳ありませんでした。
    先生のおしゃるとおり、過去の文献に各相の単体のXRDのデータが掲載されていなく、 また両相の格子定数も知られておりません。そしてその物質の焼結温度を変化させると、 あるピークにおいて、強度が入れ替わる現象がおきております。どのように判別した らよいのでしょうか?
    何卒ご教授の程宜しくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 12:31:05 +0900
    A2: T様、佐藤勝昭です。
     データがないなら、何らかの方法で単相の物質を作製して、自分でXRDデータをとる以 外に方法がありません。高温相のデータは急冷法で高温相を作製しXRDで調べるほかない でしょう。
     具体的な物質系を教えて頂けないでしょうか。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 13:08:41 +0900
    Q3: 具体的な物質系はSrBi3Ti2NbO12でビスマス層状構造を有している物質です。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Nov 2004 21:18:02 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
    SrBi3Ti2NbO12は、Bi4Ti3O12のBiの一部をSrに置換するとともにTiの一部をNbに置換した と考えてよいのでしょうか。
    その場合、やはりよく調べられているBi4Ti3O12に出発点をとるべきでしょう。これにつ いては、正確な格子定数が分かっています。
    http://www.lanl.gov/mst/SPML/BTO.htmlに よると結晶構造は、pseudo-orthorhombic structureで格子定数は a=5.41 A, b=5.45 A, and c=32.83 Aとなっています。
    Nb-doped Bi4Ti3O12はよく研究されています。
    たとえば、http://www.scientific.net/0-87849-925-3/7.htmを ご参照下さい。
    しかし、Bi(3+)をSr(2+)で置き換えると、価数の中性を保つためにSrBi4Ti4O15が出来て しまうのではないかと存じます。
    Applied Physics Lettersに
    Y. Noguchi, M. Miyayama and T. Kudo, Ferroelectric Properties of Intergrowth Bi4Ti3O12-SrBi4Ti4O15 Ceramics; Appl.Phys.Lett., 77(22), pp.3639-3641, 2000 という論文が載っているので参考にされるとよいでしょう。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    485. 高屈折率透明物質

    Date: Mon, 6 Dec 2004 04:28:49 +0900
    Q: 佐藤研究室(物性、なんでもQ&A)さま。私の名前は阿部寛治、帝京平成大学教授、工学博士、65歳、ついでに東大名誉教授です。
    貴【なんでもQ&A】のHPはよく見ております。献身的なサービス精神には感銘しております。私も助けていただいたら、と思っています。もし以下の情報をお持ちの時は私にください。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    私は、地球の高層大気に透明な微粒子を散布して地球アルベドを大きくする研究をしております。これとの関連で以下の条件を満たす結晶か、金属を探しております。

    1.屈折率ができるだけ大きい実数(太陽光を吸収しない)。
    2.微粒子に加工しやすい(サブミクロン粒子)。
    3.安価に製造できる。

    2と3は物性とは直接関係しませんが。1についてヒントでもよろしいので、お知恵を授けてください。書物を探す、研究室を訪ねていくなど労は問いません。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 06 Dec 2004 08:56:34 +0900
    A: 阿部先生、佐藤勝昭です。
     私のHPが先生のお目にとまって光栄です。
    さて、ご質問の件ですが、可視透明で屈折率の大きな物質をお探しということで すね。一般に、宝石に使われる物質は屈折率が大きいのです。それは、カットの 仕方で全反射を得やすいからです。今、自宅から回答していますので、手元には 理科年表しか資料がありませんが、屈折率が2以上の物質は
    物質名屈折率
    ダイヤモンド2.41
    閃亜鉛鉱(ZnS)2.37
    ルチル(TiO2)no=2.61, ne=2.90
    ウルツ鉱(ZnS)no=2.36, ne=2.38
    チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)n=2.31-2.38
    微粒子にしやすく安価ということではTiO2がお薦めです。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 7 Dec 2004 06:55:13 +0900
    AA: 阿部です。 さっそく佐藤先生自らのお返事ありがとうございます。
    ルチルの値段、対流圏大気に微粒子として放出したときの親水性などを調べます。
      Q&Aのサービス精神にはかねがね感銘しています。
    ------------------------------------------------------------------------------------

    486. チタン・クロム・アンチモン系の顔料

    Date: Tue, 7 Dec 2004 18:03:00 +0900
    Q1: 佐藤先生
    こんばんは。
    はじめまして、京都にあります材料メーカーS社のTと申します。
    (HPアップの際はS社、T氏としていただければ幸いです。)
    全く勉強不足で申し訳ないのですが、無機顔料について質問したいことがあります。
    (文献、インターネットを調査しておりますが、公知のことのようでなかなか詳しい ことが解らない中、貴HPに質問しようと思い立った次第です。)

    無機顔料で使用されるチタンの挙動についてです。
    例えば黄色顔料として知られる、チタン・クロム・アンチモン系の顔料は、 それぞれの酸化物を混合して~1000℃程度に焼成して製造されているとのことですが、 チタンについて酸化数が変化しているのでしょうか?
    (しているのでしょうが、相互のメカニズムがわかりません。)

    よろしくご指導お願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 7 Dec 2004 19:39:01 +0900
    A1: T様、佐藤勝昭です。
    チタンの酸化物にはTiO2とTi2O3があります。どちらを出発原料としておられるのでしょ うか。Ti2O3を出発原料としている場合は、酸化雰囲気で焼成すれば酸化が進むとTi3+か らTi4+ (TiO2)になる可能性があります。一方、TiO2を還元雰囲気で焼成するとTi2O3がで きる可能性があります。
    出発原料、焼成条件などわかりますでしょうか。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 8 Dec 2004 09:06:55 +0900
    Q2: 佐藤先生
    早速のお返事ありがとうございます。
    また、お返事遅れまして申し訳ありません。

    出発原料に関してですが、TiO2、Cr2O3、Sb2O5ということです。
    焼成条件ですが、焼成スケジュール等詳しいことが判らず、1000℃近傍と聞きました。
    焼成の際、ルチル型酸化チタン結晶にアンチモン、クロムを固溶発色させるとありました。
    この際のメカニズムについて、御教唆のほどよろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 8 Dec 2004 20:52:48 +0900
    A2: T様、佐藤勝昭です。
     ルチル型TiO2は高温で安定なので、CrやSbがTiのサイトを置換してもルチル型が保たれ ているのではないかと推察します。
     CrはCr3+としてTi4+を置換するので、SbがSb5+としてTi4+を置換すれば全体として電荷 補償されます。ルチルにCrはCr3+で入ることが、文献(1)にあります。
    TiO2:Cr3+の光スペクトルは文献(2)のFig.7にあります。これによる と2.5eVから吸収が始まり、3eVでさらに立ち上がっているので、青から紫の光を吸収し、 結果的にTiO2:Cr3+は黄色く見えるものと考えられます。この遷移はCr3+における4A→4T2 という配位子場遷移にアサインされています。
    文献(1) H.J.Gerritsen et al., Phys. Rev. Lett. 2 (1959) 153-155
    文献(2) L. Grabner et al., Phys. Rev. B2 (1970) 590-597
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 9 Dec 2004 14:44:25 +0900
    Q3: 佐藤先生
    Tです。
    詳しい回答の上、しかも参考資料まで教えて頂き、ありがとうございました。
    頭の下がる気持ちで読ませていただいております。
    言い訳にもなりませんが、有機系出身のため、結晶構造等のイメージを図式化されて おりますと分かり易く、理解できましたのですが。

    重ね重ねありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 9 Dec 2004 17:21:29 +0900
    A3:T様、佐藤勝昭です。
     結晶構造はtetragonal SnO2構造で対称性はD4h14 (P4/mnm)です。
    WyckoffのCrysatl Structures (Krieger, 1982)第1巻p250に載っています。
    -----------------------------------------------------------------------------

    487. オーステナイトステンレス鋼の脆性

    Date: Wed, 8 Dec 2004 15:21:26 +0900
    Q: 質問内容
    オーステナイトステンレス鋼の脆性特性について、一般的知見をご教授下さい。
    よろしくお願い致します。
    石川島播磨重工業株式会社 豊嶌 至
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 12 Dec 2004 16:19:28 +0900
    A: 豊嶌 至様、佐藤勝昭です。
     小生は、金属材料の専門家ではないのと、特にオーステナイト系のステンレスについ ての知識が乏しいため、本学機械システム工学専攻の金属材料系教員に問い合わ せをし、このほど回答を頂きましたので、ご返答痛さいます。というわけで、ご返答が 遅くなり申しわけありません。
    --------------------------------------------------------------------------
    「オーステナイト系ステンレス鋼」についてのご質問ですが、組成の違いで特性が大き く変わるため「一般的知見」として回答することは困難です。
     脆性とかもろさという点では、応力腐食割れ(stress corrosion cracking)を起こし やすいことは比較的多くの場面で見られるようです。溶接性にも優れている材料である ため溶接構造で使われることが多く、その 結果導入される偏析、残留応力、熱影響部な どは、特に塩化物環境、硫化物環境、高温高圧水、苛性アルカリ性環境で使用する場合 は注意が必要となります。
     オーステナイト系ステンレス鋼はfcc構造を安定化させているので低温まで使える と考えるのが一般的なのでしょうが、極低温でオーステナイトが不安定化 しマルテンサ イトが生じる組成のものではbcc構造のフェライトと同様の低温脆化が生じやすく、 低温でも安定な組成の場合は低温脆性は生じないようで す。
     詳細については各鋼種について機械工学便覧等を参照していただいた方がよいでしょ う。
    ----------------------------------------------------------------------------

    488. 方向性鋼板の磁区観察

    Date: Sun, 12 Dec 2004 17:10:23 +0900
    Q: H大学修士1年のFです。
    前期の授業では大変ためになる講義を受けさせていただきました、ありがとうございました。
    私がとっている講義に先生のような熱心な先生が少ないので、久々に有意義な授業で あったなと思います。

    大変恐縮なのですが、質問がありましてメールさせていただきました。
    現在私が行っている研究の一部で、ビッター法により磁区画像を得ようとしているのですが、 何度行ってもそれらしいものを見ることができず、奇妙な模様が出てきてしまうので、それが 何であるか教えていただきたいのです。磁区であるのならよいのですが・・。

    材料は、方向性珪素鋼板(N社からいただいたもの。多分)で、 その上に水性磁区観察用コロイド液をたらし、光学顕微鏡で観察しました。
    倍率は200倍と450倍になります。幾度電界研摩を行っても似たような画像です。

    画像を添付したので、よろしかったらご教授のほどよろしくお願いします。
    200倍写真
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 12 Dec 2004 18:56:43 +0900
    A: F君、佐藤勝昭です。
     お久しぶりです。方向性珪素鋼板(Goss鋼板)は、冷間圧延によって微細化した 後再結晶化し、結晶の磁化容易軸方向を圧延方向に配列させることによって得ら れます。さらに磁区を微細化することで、磁化に関与する活動磁壁数を増加さ せ、磁壁移動速度をさげることで鉄損(ヒステリシス損)を減らしています。
    (佐藤勝昭編著:「応用物性」(オーム社,1991) p231-232参照)
     まずお伺いしたのは、お送り頂いた画像が、磁気による像なのか、形状による 像なのかということです。まずその点を明確にしておく必要があります。外部磁 界で変化するかどうかを確認して下さい。
     この画像が磁区(磁壁?)像であるとすると、90度磁壁になっていると考えら れ、理想的なGoss鋼板(180度磁壁からなる)から はずれていると思われま す。試料の面方位にも関係します。
     F君は、S研究室でしたよね。先生は、ビッター法による磁区観察の 権威ですから、いろいろな磁区の像について私よりよくご存知のはずです。遠慮せ ず、先生に直接聞かれた方がよいのではないでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 13 Dec 2004 12:36:32 +0900
    Q2: 早速の返信ありがとうございました。
    送った画像なのですが、外部磁界をかけると変化するので、磁気による像だと思われます。 ということにすると、理想的な180度磁壁からなるものとは違いますね。私もそのようなもの ではないのかなとは考えていたのですが、ほぼ確信できました。

    ここのところS先生とはあまり顔を合わせる機会がなかったもので、ご迷惑かとも思いまし たが佐藤先生にメールを送らせてもらいました。
    丁寧に答えていただき、大変うれしく思います。ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 13 Dec 2004 20:35:50 +0900
    A2: 藤咲君、佐藤勝昭です。
     観察された磁区は、non oriented silicon iron materialの磁区として紹介されている ものに似ていますね。
    Alex Hubert, Rudolf Schaefer: "Magnetic Domains" (Springer 1998) p.534を参照してください。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    489. タンタルの仕事関数

    Date: Mon, 13 Dec 2004 16:33:23 +0900
    Q: 名古屋大学工学部3年 佐々野 裕介 といいます。
    簡単な質問で申し訳ないんですが、タンタルの仕事関数を教えてください。タングス テンが4.5eVぐらいだからそれに近い数字かとは思うんですが、お願いします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 13 Dec 2004 17:34:55 +0900
    A: 佐々野君、佐藤勝昭です。
     私も知らなかったのですが、environmentalchemistry.comというサイトの
    Periodic Table of Elements によれば、4.25eVと書かれています。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 14 Dec 2004 01:33:37 +0900
    どうもありがとうございます!図書館で文献を探しても、実際の値は載ってなくて…

    とても助かりました。また、ホームページのほう拝見させてもらいます。ではでは
    ---------------------------------------------------------------------------------

    490. 色覚について

    Date: Tue, 14 Dec 2004 16:33:22 +0900
    Q: キヤノンの長谷川と申します。

    貴研究室のHPを拝見して、物性なんでもQ&Aというコーナーでボランティア で多くの方の疑問に答えておられるのに前々から感心しておりました。
    私も幾つか参考にさせて頂いたことはあるのですが、質問するのは初めてです。 学生時代は御近所の電通大に通っていました。キヤノンでは半導体関連の仕事を しております。

    それでは、質問に入らせて頂きます。
     光に関するものですが、波長が380~430nmの紫色と、460~500 nmの青と610~780nmの赤を合成して得られる紫とは違うものなのでしょ うか?
     R(赤)G(緑)B(青)を合成していろんな色を作れる。
     色の違いは波長の違い。
    と漠然と理解していたのですが。
    人間の目の細胞に、R,G,Bに反応するため、RとBに反応する細胞がある割 合で刺激を受けて紫に感じているだけで、紫域の波長を持つ紫とは別のものなの でしょうか?そうだとすると、他の生物が見たら識別できるのでしょうか???

    以上で質問を終わらせていただきます。とんちんかんなことを聞いているでしょ うか?宜しくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 14 Dec 2004 21:03:36 +0900
    A: 長谷川様、佐藤勝昭です。
    メールありがとうございます。

    http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color3.htmによれば、RGB表色系では表現出来ない色があり、3刺激値にもとづくXYZ等色曲線で は、添付図のように赤の視感度は2つのピークをもつものを使っています。これにより、 赤と青の刺激によって紫が見えることを表現しています。
    このことは、ご指摘のように、 「人間の目の細胞はR,G,Bに反応するため、RとBに反応する細胞がある割 合で刺激を受けて紫に感じているだけである」と言ってもよいと思います。 黄色の純色(線スペクトル)と、RとGの混色とは、人間の目では同じに感じるように設 計されているといってもよいでしょう。
     白は、R,G,Bの混色ですが、蛍光灯のもとで写真をとると緑がかって写るのは、フ ィルムと目ではRGBに対する反応が違うためです。同様に、他の生物は全く別の色覚の 世界を持っているはずです。
     このように色覚は、まだ未知の部分があります。たとえば、 http://www.4colorvision.com/files/chromaticity.htm では、"動物の目は減色混合"が原則であるとすべきであり、CIEのような加色混合の考 えでは、正確に色覚を表せない。という主張もあるくらいです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 16 Dec 2004 09:26:02 +0900
    AA: 長谷川です。非常に素早い回答恐れ入ります。
    本当にありがとうございました。

    色に限らず科学というのは面白いですね。

    また何かわからないことがあったら御世話になるかもしれませんが、そのときも 宜しくお願い致します。

      ------------------------------------------------------------------------------

    491. モリブデンの反射率

    Date: Wed, 15 Dec 2004 17:06:09 +0900
    Q: 佐藤先生
    はじめまして
    M大学電子基礎研究室Oと申します。
    HPでこの相談室を見て思い切って送ってみようと思いました。
    (HPに載せる際は、匿名でお願いします。))
    質問なのですが、太陽電池デバイス中の裏面電極として 一般に使われているMoの反射率について光をあてることによって どのくらい反射するのか値を教えてもらえないでしょうか? 関係ある参考書を調べてみるもののなかなか探しきれません。 些細な質問で申し訳ありません。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 16 Dec 2004 08:25:52 +0900 A: O様、佐藤勝昭です。
     学生さんですか?教職員の方ですか?明確に書いて下さい。
     Moの光学定数は
    Palik:Handbook of Optical Constants of Solids (Academic Press, 1985) p.303にあり ます。抜き書きをしておきます。
    nκ
    1.3713.5
    1.945.58
    3.683.52
    3.043.27
    3.013.51
    空気との界面における反射率は
    R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}
    で与えられます。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 16 Dec 2004 13:08:15 +0900
    AA: 佐藤先生
    M大学のOです。失礼しました。僕は大学院1年生です。
    メールの返答ありがとうございます。
    早速、参考書調べて見たいと思います。
    --------------------------------------------------------------------------

    492. X線吸収端の定義

    Date: Fri, 17 Dec 2004 04:31:33 +0900
    Q: 佐藤先生
    東京大学理学系研究科物理学専攻D1の伊藤昭治です。
    突然のメールで失礼します。
    吸収端についての「物性なんでもQ&A」を拝見しての質問です。

    天文衛星搭載望遠鏡の研究をしております。鏡面は物質は金です。
    私は鏡面反射率の入射エネルギー(X線領域)依存性を調べるために、金の吸収端周辺の反射率を0.5 eV ピッチ で測定をしました(2000 eV - 3000 eV)。その結果を Henke et al. (1994) 等公表されている光学定数と比較しました。
    反射率曲線の形はだいたい一致しておりました。さらにその測定結果と Henke et al. を基づいて計算した 反射率とで吸収端のエネルギーは同じなのか?それともずれているのか?を考えました。 そこで疑問を持ちました。
    「吸収端の厳密な定義とは?」
    噂は聞きました。
    吸収端とは
    ・反射率曲線の二階微分が0になるエネルギー
    ・反射率曲線の極小点
    などと言う人もいます。
    そこで私は調べました。どこかの論文で厳密に吸収端のエネルギーを定義していないだろうか。
    私の目にとまった一つの論文は
    M. D. Roper et al. 'Soft x-ray spectroscopy in atomospheric helium'
    Rev. Sci. Instrum. vol.63 pp1482 (1991)
    です。Roper らによると、Nb, S, Fe, Cu の吸収端の位置を 1eV の精度で書いてあります。これらはHenke et al. から計算したとも書いてあります。私が実際に反射率曲線を書いたところRoper らの書いた吸収端のエネルギーは反射率で言うと、極小値でした。しかし、Roper らの定義は一般的なのでしょうか?
    以上、質問を要約しますと、
    「反射率曲線を書いた時に、厳密にはどこを吸収端のエネルギーと定義するのでしょうか?」
    です。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 19 Dec 2004 00:54:25 +0900
    A: 伊藤昭治様、佐藤勝昭です。
     半導体の価電子帯から伝導帯へのバンドギャップを超える光学遷移の場合は定 義が明確です。この場合は、吸収係数αが使われます。
    直接遷移では
     α=A{(hν-Eg)^(1/2)}/hν
    となるので、(αhν)^2をhνに対してプロットしたとき、横軸を切る位置として定 義されます。
    一方、間接遷移では、
     α=B{(hν-Eg)^2}/hν
    となるので、(αhν)^(1/2)をhνに対してプロットしたとき、横軸を切る位置とし て定義されます。
    垂直入射の反射率は、屈折率n、消光係数κとして
     R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}
    で与えられ、κと吸収係数αの間にはα=2ωκ/c=4πνκ/cの関係があります。
     半導体の吸収端付近でのκの変化は、直接吸収端でも0からせいぜい1に増加す る程度です。また、屈折率は吸収端付近でほとんど変化ありませんがκの立ち上 がりの中心付近でnはわずかにピークになります。(Kramers-Kronigの関係によ る。)このときの反射率変化は5%程度の小さなものですがS字を横にしたような 変化を示します。極小値が吸収端と言うわけではありません。わずかにずれてい ます。間接遷移ではほとんど変化はありません。
     これに対して、X線吸収端は内殻準位からフェルミ準位付近の満ちていないエ ネルギー帯への遷移です。このときの吸収端は内殻準位の幅程度の鋭い立ち上が りになると考えられます。局所的に起きる遷移なので、遷移強度は大きくκの変 化は非常に大きくなります。X線領域で屈折率は1よりわずかに小さな値をとり ますが、κの立ち上がり付近で大きく変化します。このため、反射率スペクトル に構造がでます。この変化するエネルギー幅は狭いので反射率のディップを吸収 端だとしてもそれほど誤差にはならないと存じます。
     しかし、本来は反射スペクトルのKramers-Kronig変換から吸収係数(X線の業 界ではμと表記)を求め、μの立ち上がりの位置から決めるのが正確でしょう。
    http://www.bmsc.washington.edu/scatter/AS_form.html
    というサイトにX線吸収端の一覧およびそれに関連した文献等が示されています。
    -------------------------------------------------------------------------

    493. 光学異方性とスネルの法則

    Date: Mon, 13 Dec 2004 00:42:42 +0900
    Q: 先生のHPをみてメールした次第です。
    岐阜大学教育学部理科教育1年の望月亮太です。
    この前は私の質問に答えていただきありがとうございました。
    今回は前の質問の延長みたいなものです。

    前回は異方性結晶とは何かを質問して、先生に文献も紹介してもらいました。
    その文献等を読み、疑問に思ったことを今回の質問にします。

    異方性結晶で、光は二つに分かれて、一方を常光線、他方を異常光線といいます。
    常光線は、スネルの法則に従い、異常光線はスネルの法則に従わないとあります。
    この、スネルの法則に従う、従わないというのはどういうことなのでしょうか? 教えてください。
    お願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 13 Dec 2004 01:36:30 +0900
    A: 望月君、佐藤勝昭です。
     スネルの法則について説明しておきます。
    等方性媒体においては、屈折率が一意的に決まり、複素屈折率N1の媒体から複素 屈折率N2の媒体に入射角θ1で光が入射したとき、
     N1sinθ1=N2sinθ2
    という関係が成立します。これをスネルの法則といいます。
    これに対して、異方性媒質においては、誘電率がスカラーではなくテンソルで記 述されますが、このような誘電率のもとでMaxwellの方程式を解くと、固有状態 として常光線と異常光線が現れます。常光線は等方性媒体の場合と同じように、 屈折現象がおきるのですが、異常光線ではポインティングベクトル(光のエネル ギーが伝わる方向)と光の位相が伝わる方向が異なるため、上のような単純な式 が成立しないのです。
    -----------------------------------------------------------------------------

    494. モリブデン焼結体の粒径

    Date: Mon, 20 Dec 2004 13:07:40 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤教授

    突然のメールにて失礼致します.
    結晶粒界について調べておりましたところ, このHPを見つけましたのでメールを送らせて頂きました.
    私はK大学修士2年のMと申します.
    大学院では産技術分野の研究を行う研究室に所属し その中でモリブデン(焼結体)の超精密切削加工に関する研究を行っております.

    さて,本題の質問なのですが、
    モリブデンのような焼結体の粒界の大きさというのは 焼結前の粉末の大きさに依存するのでしょうか?
    具体的には,扱っているモリブデンが2~3μmの粒を焼結させたものなのですが, この焼結体の粒界の大きさは2~3μmなのでしょうか?
    モリブデンでなくてもいいので,焼結体の結晶粒界の大きさについて ご存知でしたら教えて下さい.

    指導の先生はこの分野について詳しくないようでわかりませんでした.

    年末でお忙しいとは思いますが,ご教授頂ければ幸いです.
    よろしくお願い致します.

    HPに掲載される際は匿名でお願い致します.
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 20 Dec 2004 18:44:44 +0900
    A:M様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。焼結体の粒径が出発物質の粉体の粒径に依存するかとい うご質問ですが、どのような焼結をするかによると思います。たとえば、ホットプレスの ように加圧して焼結しますと、粒界で結晶粒どうしが密着し(原子の移動がともなって) 大きな結晶粒に成長します。この結果、空隙が減少して密度が高くなります。加圧しない 場合でも金属やセラミクスの種類によっては同様の粒成長がおきると思われます。たとえ ば、フェライト、YIG、モリブデン、タングステン、セレン化亜鉛などでは、種結晶を 多結晶体に接着して粒成長させることで単結晶を得ることが行われています。詳しくは、 結晶成長ハンドブック(日本結晶成長学会編、共立出版、1995)第Ⅲ編第5章p343-345を ご参照下さい。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 20 Dec 2004 19:13:12 +0900
    AA: 東京農工大 佐藤教授
    迅速な返答ありがとうございます.
    参考にさせて頂きます.
    お忙しい中,ありがとうございました.
    -------------------------------------------------------------------------

    495. レジスト回転塗布と広がり方

    Date: Wed, 22 Dec 2004 12:32:06 +0900
    Q: 佐藤教授 殿
    初めまして!
    私は、N社に勤務しており、半導体製品製造を行なっているNです。
    半導体の製造工程にリソグラフィー工程(暗室)があり、その中にレジスト塗布とい うものがありますが、そのレジスト塗布の技術について質問なのですが・・・。

    最近は、半導体のウエハコスト削減という事でVEを色々と行なっておりますが、レ ジスト塗布ではシリコンウエハ上にレジスト塗布する前にシンナー(有機溶剤)を 塗布しその後回転させ被膜層を作り、シンナーが乾かない間にレジストを塗布する 事で従来のレジストのみを塗布していた時より非常に多くのレジストを削減する事 ができましたが、このメカニズムについて教えていただけないでしょうか!?
    色々、書物やインターネット等を調べてみましたが記載されているものがなく今回 メールいたしました。

    1.従来(レジストのみ)と新規(シンナー+レジスト)ではなぜレジストの滴下量が 少なくてすむのか?

    2.シンナーによってなぜ濡れ性や接触角というものが向上するのでしょうか?

    3.レジストのみで回転塗布した場合、ウエハ上のレジストはヒトデ形に拡散するのが 確認できました。シンナーでレジスト塗布前に被膜層を作ると初期拡がりはウエハ と同心円状に拡がり、その後に数多くの レジストがウエハ外周部に向かって拡 がっているのが確認できました。この違いは・・・?
     (添付ファイル
    2は同じ滴下量にてレジストを滴下して回転した後の状態です。)
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Dec 2004 18:08:08 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
     ご質問は、流体工学に関するものなので、本学物理システム工学専攻の 佐野教授(流体工学)にお伺いしました。以下は、佐野先生の回答です。
    =======================================================
     この問題は液膜が遠心力不安定性をおこして波状変形し,続いて放射状に伸 びていくという流体力学の問題と思われます.
    回転中心近くでは粘性応力と表面張力(および重力)が優勢で安定ですが, 半径の増加に伴い遠心力が卓越して不安定性を起こした結果では ないかと思います.
     初期状態では液滴(円板状)の下面は基盤との粘性摩擦が働き,上面は自由表 面ですから,回転とともに強い剪断流が生じます.基盤表面に被膜層を作ると, 被膜とレジストの境界面での摩擦が減り,剪断流の速度勾配が小さくなりますので, より半径の大きなところまで不安定性が起こらないものと推測します.定量的 な説明にあたっては,レジスト(およびシンナー)の粘性率,膜厚,の情報が 重要です.回転数は写真のファイル名にある1000rpmと考えてよいのでしょうか?  回転は急に与えるのですね?レジストは温度変化や相変化(液体から固体へ) がありますか? それによって物性が変わり複雑になります.
    取り急ぎ,お返事申し上げます.
    ==================================================================
    ということです。
    -----------------------------------------------------------------------

    496. パラジウムの表面の曇り

    Date: Wed, 22 Dec 2004 15:36:07 +0900
    Q: 初めてご質問させていただきます。
      S社のKと申します。

    装飾品のパラジュームメッキの曇り(白化)についての質問です。
    パラジュームメッキ(出来ればニッケルメッキも)の曇り(白化)の原因、促進方法、防止方法、この曇り が、生地に及ぼす影響等についてお教えいただきたくよろしくお願いいたします。

    装飾品のパラジュームメッキで、メッキ後数ヶ月経つと、表面が曇ってくるものがありました。拭き取れ ば取れるのですが、溝等の場合拭き取れず、困っています。素地は黄銅ですが、黄銅以外でもなるよ うで、素地の影響はないようです。
    WEBで調べた限りでは、ニッケルメッキでも曇り(白化)が出るようで、(楽器などは曇るのは当たり前 の様に扱われているようですが)、ニッケルは、メッキ液中の光沢材中の硫黄分が悪さをしている、と 言う事が述べられていましたが、具体的にどういうものが生成されて、曇りになるのか、防止方法があ るのかないのか、わかりませんでした。ニッケルメッキとパラジュームメッキの曇りの原因がそもそも同 じなのかも判らないのですが、パラジュームメッキの場合、ニッケル分が含まれているとの事でそれが 影響しているのかと、思って調べたわけです。 パラジュームメッキについては曇るなどという話も見つ かりませんでした。

    誠にに恐縮ですが、ご回答いただけ、Web掲載の場合は匿名にてお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Dec 2004 21:15:19 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     私は、貴金属のメッキについて専門家ではないので、実態がよくわかりません。
    曇ってくるのは、傷ではなく表面に付いた汚れなのですね。
    パラジウムなどは触媒作用があるので、表面で空気中に含まれる化学物質同士のさまざま な反応を促進する可能性があります。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Dec 2004 18:08:08 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    早速のご返事ありがとうございます。
    汚れです。
    表面の光沢が消えて、白い曇りになります。
    息をハ~と吹きかけたような曇りです。
    見た目の観察では、ニッケルメッキの白い曇りと同じ様に見え、 ニッケルメッキも拭き上げると光沢が復活しますが、パラジューム の場合も同じ様に光沢が復活します。従いまして、パラジュームメッキの 中のニッケル成分を疑ったのですが・・・
    前回書き忘れてしまったのですが、2種類パラジュームメッキの物を テストしたのですが、その成分はPd 65ーNi 35という組成のものと Pd 95ーNi 5 という組成のものですが、両方ともに曇りが発生しました。 Pd 100 はテストしていません。Pd 100 でも発生するとすれば、先生の おっしゃるように、色々な生成物という事になるのかもしれません。 Pd100でメッキしていただける、メッキ屋さんとのお付き合いが ないので、すぐに確認は出来ないのですが・・・。

    メッキはご専門でないとの事ですが、もしニッケルメッキの曇りについて、 ご存知の事がありましたら、ご教示お願いいたします。

    ありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------

    497. バンド励起後の電子緩和

    Date: Wed, 22 Dec 2004 23:49:09 +0900 (JST)
    Q: 佐藤教授 殿
    HPをいつも楽しく拝見させております、大阪市立大学大学院の修士2回生のNと申します。HPに載せる際は、匿名でお願いします。半導体のバンド間遷移後の電子緩和メカニズムに関してお伺いしたいことがあり、メールいたしました。
    一般に、半導体バンド間遷移において、バンドギャップよりも高エネルギーで励起された電子は、フォノン緩和によりバンド端付近まで緩和した後、フォトンを放出し、価電子帯に緩和します(長波長近似のもとで)。これは、理解できるのですが、バンド間遷移において、フォノン緩和ということは、考えられるのでしょうか?
    バンド内遷移では、電子のフォノンによる緩和がサブピコ秒で起きることは、文献等で理解できるのですが、バンド間遷移ではフォノン緩和は起きないのでしょうか?フォノンのエネルギーはエネルギーギャップよりも十分小さいと考えられますが、多重フォノン放出により緩和が可能かどうか教えてもらえないでしょうか?もし、フォノンによる緩和が可能なのであれば、バンド間遷移において、なぜ強いフォトルミネッセンスが観測されるのかわからないのですが、ご返答のほどよろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Dec 2004 01:18:40 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
     GaAsのような直接吸収端におけるバンド間遷移は、純粋に電子的な遷移です。シリコ ンのような間接吸収端では、運動量保存則を満たすためフォノンが関与します。この場 合は光学遷移にともなってフォノンが吸収又は放出されます。
     GaAsにおける不純物や欠陥の関与する遷移では多重フォノン遷移をともない非発光に なることがあります。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Dec 2004 02:51:29 +0900 (JST)
    Q2: ご返信ありがとうございます。
    「GaAsのような直接吸収端におけるバンド間遷移は、純粋に電子的な遷移です。」
    →直接型半導体の場合、フォノンを放出しなくてもバンド間遷移が起きえるということですが、
    波数が0に近いフォノンは存在しえないのでしょうか?フレーリッヒ相互作用によれば、電子とフォノンの相互作用は波数が小さい領域で強くなると考えられるのですが、それを考慮しても、フォトン放出による電子緩和時間は、フォノン放出による電子緩和時間よりも速いということでしょうか?
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Dec 2004 13:44:26 +0900
    A2: N君、佐藤勝昭です。
     半導体中の局在した状態(欠陥準位や不純物準位)における局在遷移の場合で は、配位座標モデルが適用できます。つまり、電子エネルギーは座標位置によっ て変化します。添付図(山田・佐藤他著:機能材料のための量子工学p185)にあり ますように、基底状態および励起状態のエネルギーは配位座標に依存します。左 図のように基底状態の極小位置と励起状態の極小位置が異なるので、励起後、 フォノンを放出して励起状態の極小位置2に到達し、発光(電子遷移)して基底状 態の2’に落ち、さらにフォノンを放出して基底状態1に戻ります。発光の緩和 時間は、それが許容遷移であれば、フォノンによる緩和時間より桁違いに短いと 考えられます。一方、右図のように2つの曲線が交わるとき、すべてフォノンを放出して遷移し全く発光せずに緩和します。
     一方、量子ドットにおいては、フォノンが局在し、これと量子井戸に閉じ込め られたバンド電子や局在した励起子が強くフレーリッヒ結合して、多重フォノン 遷移が起きる可能性があります。
     これに対して、普通のバンド状態の電子は結晶全体に広がっているので、位置 によるポテンシャルの変動は、平均値としてしか感じません。従って配位座標モ デルは適用できません。従って、フォノンによる緩和は考える必要がないでしょう。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Dec 2004 14:17:52 +0900 (JST)
    AA: お忙しい中、早急なご返信ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------

    498. ショットキー障壁

    Date: Fri, 24 Dec 2004 17:17:13 +0900
    Q: 初めてご質問させていただきます。W大学2年のKと申します。
     HPいつも拝見させていただいております。さっそくで恐縮なのですが、金属と半 導体の接触によるショットキー障壁の形成について、ショットキー障壁の高さの導出 の仕方があまり理解できませんでした。またその整流性はどのように説明できるので すか?エネルギーバンドが関係しているとは思うんですが。さらに、電位を加えたり した場合変化はありますか?授業では理解するに至らず、調べてもなかなかいい文献 が見つかりませんでした。
    誠に恐縮なのですが、ご回答いただきたく思います。お願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 24 Dec 2004 17:56:29 +0900
    A: Kさん、佐藤勝昭です。
     大学名、学科名、本名を名乗って質問して下さい。匿名希望ならそのように記載してく ださい。Web掲載の時に匿名にします。
     ショットキー障壁が整流性がでるのは、半導体から見た障壁の高さe(Vd-V)=φm-φs-eV は順バイアスVの増加とともに低下するのに対し、金属から見た障壁の高さφm-χsはバイ アス電圧に依存しないからです。ここにφmは金属の仕事関数、φsは半導体の仕事関数、 χsは半導体の電子親和力(真空準位と伝導帯の底のエネルギー差)です。
     参考書としては、佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社1991)第2章2.2節[1]金属と半 導体を組み合わせる(p.59)を読んで下さい。それでわからなければ、再度メール下さい。
    -------------------------------------------------------------------------

    499. 液晶の表面電位

    Date: Sat, 25 Dec 2004 16:28:12 +0900 (JST)
    Q1: KS大学4年Fです。(匿名希望)
    液晶(5CB)の特性及び金属の仕事関数の関連性を教えてください
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 25 Dec 2004 18:12:50 +0900
    A1: F君、佐藤勝昭です。
     ご質問の意味がわかりません。おそらく卒業研究で、液晶関係の研究をしてい て、疑問点が出たのでしょうね。指導教員は教えてくれないのでしょうか。
     お尋ねの液晶と金属は接しているのですか。また、どのような問題が起きたた め、このような質問をされるのでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 26 Dec 2004 14:02:35 +0900 (JST)
    Q2: すいません.私たちは、5CBの研究をしていて、ガラス基板の導通している方にAlやAuを蒸着して5CBを80℃でガラス基板に蒸着してそのときの電位を測定しています。その時に蒸着している金属の仕事関数によって電位が異なることを教授から教えていただいたのですが本を読んでも理解できないのでお聞きしました.あと、表面処理を行わないので何のために測定しているのかわからないのでそちらのほうもアドバイスをいただけたらうれしいです。実際の回路図と実験方法を
    添付ファイルとして送ります。ご迷惑だと承知しますがお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 26 Dec 2004 14:49:47 +0900
    A2: F君、佐藤勝昭です。
     すこしは見えてきましたが、電位を測定して5CBのどのような特性を評価しようとして いるのでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 26 Dec 2004 15:18:44 +0900 (JST)
    Q3: 結果を添付します。この結果からどの特性を評価すべきかを教授からアドバイスがないのではっきりしたことが分からないのですが、おそらく電位が飽和状態になる理想的な値を探しているものだと推論しています。理論的にどのような特性が評価されるのでしょうか?
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 26 Dec 2004 23:10:02 +0900
    A3:F 君、佐藤勝昭です。
     君の所属する研究室のHPによれば、君のいる班では、「有機材料を大気中で蒸着し、その蒸着温度や 蒸着回数、蒸着時間を変化させ、5CB分子薄膜の表面電位 を測定を行っている。」と書かれています。
     基本的に、卒業研究の研究目的を卒研生に教えるのは、指導教員の務めです。 それを言っても仕方がないので、研究の意味を考えてみましょう。
     最近、有機エレクトロニクスの観点から、表面電位を測定することが行われて います。有機薄膜と金属電極が接している界面では、正負の電荷シートが向かい 合った電気二重層ができ、界面を横切る電子の動きに大きな影響を与えることが 知られています。例えば、応用物理, 71(2002) 1488-1492には、この道の権威で ある名大の関一彦先生らによる「ケルビン法でみた有機/金属界面の電子構造- バンドの曲がりと巨大表面電位発生」という解説が出ています。
     名大の関研究室のHPには、 素人向けにやさしい解説が出ています。
     私はこの方面の専門家ではなく、有機材料のことわわかりませんが、一般的に は、ケルビン法による表面電位はかなりの高真空中で測定しないと正しい値が出 ないと思います。実験装置の写真を見る限り、真空中での測定のように見えない のですが、アルミや金を蒸着するのですから、真空装置に入れるのでしょうね。
    、  仕事関数が表面電位にどう関係するかは、応用物理, 71(2002) 1488-1492
    あるいは、広島大の関連HP に載っています。
     まずは、図書館に行って応用物理という雑誌を探して、上のページをコピーし てよく読んで見てください。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 27 Dec 2004 07:47:25 +0900 (JST)
    AA: ありがとうございます。装置の図は、作図ソフトG-crewを使用していたのでご覧に慣れなかったですよね。すいません応用物理を参考に考えてみますので、またつまずくことがあればお教えください。
    -------------------------------------------------------------------------

    500. バンド理論について

    Date: Sun, 26 Dec 2004 09:38:48 +0900 (JST)
    Q: 先日、
    半導体のバンド間遷移についてメールしたNです。

    今回は、また少し違う質問で、バンド理論についてお教えいただきたいのですが、

    一般に半導体のバンド構造を求める手段として、第1原理計算、強束縛近似、kp摂動論があるということを、大学の講義で教えていただきました。が、それぞれの特徴がはっきりと理解できません。第1原理計算は、理論値のみを考えるというもので、強束縛近似の場合は、伝導帯電子には、良い近似であるが、価電子帯にはあてはまらないということぐらいは知っております。

    kp摂動論に関しては、式を追ったことがあるぐらいで、特徴といったものがわかりません。(k=0の波動関数を波数領域全体に展開する?)。それぞれのバンド構造をもとめる手段として、利点と欠点について簡単にお教えいただけますでしょうか?また、第1原理計算、強束縛近似、kp摂動論は、すべて最外殻電子(価電子)のみを考慮したものでしょうか?ご返答のほどよろしくお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 28 Dec 2004 12:23:59 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
    私は、理論家ではないので詳細なことはわかりません。
    お薦めサイトを紹介します。
     物質材料機構の小林一昭氏の 物性若手夏の学校のスライドがわかりやすいと思います。

    第1原理でも、全電子を使う場合と、擬ポテンシャル法のように価電子のみを使う場合が あります。
    平面波から出発する近似では、たくさんの電子軌道を使わないと内殻電子を扱えないので すが、強束縛近似のように原子軌道から出発する近似では、内殻も取り込みやすいという 一般的なことはいえると思います。
    k・p摂動は、あくまでk=0から少し離れたところの価電子帯の様子を表すための近似 法で、光スペクトルを説明するような場合に使われますが、バンド構造全体を計算する手 段ではありません。
    ------------------------------------------------------------------------------

    501. X線結晶解析

    Date: Mon, 27 Dec 2004 20:17:54 +0900
    Q1: 突然のメールご了承ください。私はM大学理工学部のTと申します。
    前回は
    質問にお答えいただき有難うございました。
    今回は最小自乗法による格子定数の求め方について質問がございます。
    現在私はビスマス層状構造を有するセラミックスについて研究をしております。
    しかし、XRDを用いたリートベルト解析では酸素の位置をうまく定めることができないため、 最小自乗法をもちいて置換による格子定数の変化を求めることに致しました。
    内部標準試料としてSiを用いて、X線を測定致しました。
    しかし、この後の計算方法についていろいろと本などで調べましたが、明確な計算方 法が見つかりませんでした。
    そこで先生に最小自乗法を用いた格子定数の求め方についてご教授の程お願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 28 Dec 2004 13:43:24 +0900
    A1: T君、佐藤勝昭です。
     最小二乗法による解析法は
    桜井俊雄著「X線結晶解析」(裳華房1967初版、1985第9版)p.229に詳しく出ています。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 30 Dec 2004 13:40:05 +0900
    Q2: 質問に対する回答有難うございました。
    お教えいただいた本を読ませていただきました。大変参考になりました。有難うござ いました。しかし、X線測定を行い実際に計算する際の手順についてもう少し詳しくお教えいただ けないでしょうか?宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 4 Jan 2005 13:16:43 +0900
    A2: T君、佐藤勝昭です。
     年末年始が入ったためお返事が遅くなり申し訳ありません。
    私は自分でやったことがないのですが、結晶構造解析に最小二乗法を使うやり方は、
    桜井敏雄「応用物理学選書4 X線結晶解析の手引き」(裳華房1983)のp183-213
    に詳しく説明されています。また、最近は、X線の装置にソフトが附属していますので、 それを使われた方がよいでしょう。なお、パソコンを使ったセラミクスのX線構造解析に ついては、東北大学学際科学国際高度研究センターの山根久典教授がお詳しいので、お尋ねになってはいかがでしょうか。  山根先生のお書きになった 「セラミストのためのパソコン講座」には、ソフトの入手法も書かれていますので、参考になると存じます。
    -------------------------------------------------------------------------------

    502. アルミ合金とステンレスのポワソン比

    Date: Fri, 7 Jan 2005 16:49:57 +0900 Q: 佐藤勝昭 様
    益々御清栄のこととお慶び申し上げます。
     初めてメールさせて頂きます。
    私は、(株)シンコーの佛円と申します。
    現在、固有振動解析を行っておりますが、ポアソン比が掲載されている文献が見つからず、大変困っております。
     下記材質のポアソン比について、御教示下さい。私の不勉強で大変恐縮ではありますが、よろしくお願い致します。

     [質問内容]
     SUS630, AC4C-T6, A2017-BE-T4, SUS440C,
    CAC604のポアソン比を御教示下さい。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 9 Jan 2005 00:24:17 +0900 A: 佛円信博様、佐藤勝昭です。  個々の規格の合金についてはメーカーにお尋ね下さい。一般論では、アルミ合金のポ ワソン比は0.32-0.34、ステンレスのポワソン比は0.27-0.30です。 同じ番号の合金でもメーカによって組成に幅があり、ポワソン比も幅があります。 ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 11 Jan 2005 08:16:35 +0900
    AA: 東京農工大学大学院
     教授 佐藤 勝昭様
    御回答有難うございました。
     材料メーカに問い合わせて、データを入手したいと思います。  今後また質問することがあると思いますので、よろしくお願い致します。
    ------------------------------------------------------------------------------

    503. 鉄イオンの拡散について

    Date: Thu, 6 Jan 2005 13:46:14 +0900
    Q: 佐藤 先生

    明けましておめでとうございます。
    お世話になっております。アドテックの半井と申します。

    久し振りに「苦しい時の神頼み」としてアクセスさせて戴いてますので、宜しくお願い申し上げます。

    拡散について、検討しなければいけない状況なのですが、全くの素人につき非常に困っております。
    ヒント・参考書(類似の演習問題集等)etc.を教えて頂ければ幸甚です。
    解きたい課題は下記の通りです。
     ---------------------------------------------
                           1mlと512ml(一辺:8cm)の容積を持つ大小の立方体ガラス容器が夫々の中央で「内径2.00φで外径2.01φの帯状空隙」を介して繋がっています。
    1mlの方は1ppmの鉄イオン含有水溶液ですが、200mlの方は真水になっています。
    鉄イオンが時間と共に帯状空隙を通じて拡散していく状況を把握したい。(平衡に達するまでの時間 等)
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 6 Jan 2005 15:27:17 +0900
    A: 半井様、佐藤勝昭です。
     1次元の拡散のみを考えるのであれば、簡単な拡散方程式を解くだけです。
    たとえば、深井有「拡散現象の物理」(朝倉書店1988)の最初の部分をご参照下さい。た だし、拡散係数が必要です。Feイオンの拡散係数は、何にでているか見当が付きません。
     3次元で広がっていく様子を見ようとなると、有限要素法による解析が必要でしょう。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 06 Jan 2005 18:10:45 +0900
    AA:佐藤 先生

    お世話になっております。アドテックの半井です。
    早速ご返信頂きまして有難うございます。

    明日にでも本屋に行って調べてみたいと思います。
    有難うございました。
    --------------------------------------------------------------------------------

    504全反射と屈折率

    Date: Mon, 10 Jan 2005 17:36:18 +0900
    Q:高専4年機械工学科の学生です。匿名希望です。 全反射を用いて屈折率を測定するにはどのような方法を取ればよいのでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 11 Jan 2005 21:08:21 +0900
    A: 匿名希望様、佐藤勝昭です。
     Webでは匿名にしますから、高専名、氏名はきちんと書いて下さい。礼儀ですよ。
    さて、全反射を用いた屈折率測定ですが、屈折率nが未知の媒体から、空気(屈折率1とし ます)に光が入射し、全反射が始まるときの臨界入射角さえわかれば、スネルの法則から 出すことが出来ます。
    臨界角θcとすると、
     n sinθc =sin (π/2)=1
    となりますから、n=1/sinθc
    となります。どこで臨界角なのかがわかりにくいので、これを見やすくしたのがアッベの 屈折計です。
    --------------------------------------------------------------------------------

    505. 金属混合による発色

    Date: Tue, 11 Jan 2005 10:34:36 +0900
    Q: 佐藤様、こんにちは。
     突然のメール、失礼致します。
    私はA社で、品質管理業務に携わっておりますMと申します。よろしくお願い致します。
    (尚、Web upの際には社名・氏名共に匿名でお願い致します。)
     1年程前にもお世話になりました。その節は本当にありがとうございました。
     その後も佐藤様が、このサイトで読者の質問への回答に尽力されている事に大変感服しております。

     さて、首題の件について、また佐藤様の知識をお借りしたくメール致しました次第です。
    ご多忙の所、恐縮ですがよろしくご教授ください。。。

     内容の詳細としまして、
    現在、弊社では『蛍光X線分析装置』を導入し、 無機物の異物解析や重金属検査を行なっております。
     そこで、校正に使用している標準金属試薬が 3種類(Zn・Fe・Sn)あるのですが、この試薬を 混合比1:1:1で混合すると黄色の発色反応(蛍光発色?)を示します。
    2種類までの混合はどの組み合わせでも発色が起きないのに なぜこのような事が起きるのでしょうか?

     私自身、金属イオンの基底・励起の状態変化による発色なのか?
    または単に化学反応なのか?色々調べたのですが 明確な回答が得られる資料に辿りつけませんでした・・・。

     なにか良い参考書の紹介や、手がかりになるヒントを頂ければ幸いです。
    よろしくご指導下さいますよう、お願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 16:01:50 +0900
    M様、佐藤勝昭です。
     通常、X線照射により金属や金属の合金が可視光を発光することは考えられません。
    金属を混合と書いておられますが、粉末試料なのでしょうか。粉末を混合して加熱するの でしょうか。乳鉢で摺り合わせるのでしょうか。粉末試料は最表面が酸化している場合が 多いのですが、摺り合わせる際に合金化しさらに表面が酸化してZnFeSnの酸化物が出来、、 X線を受けて発光したのではないでしょうか。2元素の場合は紫外線または赤外線を放射 していたのが、3元素になり、たとえばZn1-xSnyOにFeが添加された形になったときに丁 度可視光を発したということも考えられます。
     まずは、酸化物などの存在を疑ってみて下さい。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 11:42:02 +0900
    Q2: 佐藤様
     A㈱のMです。
    早速の返信、ありがとうございました。
     私の説明が悪かったようで、うまく伝わっていませんでした。
    すみませんでした・・・。
     各金属の状態は液状で、市販品を用いております。
     Zn:Zn(NO3)2
     Fe:Fe(NO3)3
     Sn:SnCl2
     この3種類の試薬を混合した状態ですでに蛍光発光し、X線照射する前での話なのです、、、
       佐藤様がおっしゃるには酸化物の存在を疑うと良いということでしたが 3種類とも酸化性物質ですね。
     佐藤様がお考え頂いている
    『2元素の場合は紫外線または赤外線を放射していたのが、 3元素になり、たとえばZn1-xSnyOにFeが添加された形になったときに丁 度可視光を発した』という部分がかなり当てはまりそうです。
    もう少し詳しくご教授頂けますか?
     ご多忙の中、大変恐縮ですが、時間のある時で結構です。
    よろしくお願い致します。。。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 13:00:11 +0900
    A2: M様、佐藤勝昭です。
     事情がわかりました。硝酸塩(錯塩)と塩化物ですね。
    硝酸亜鉛も塩化スズも無色の物質ですからそれ自身では可視光線の蛍光を示すとは考えら れません。硝酸鉄の結晶にはFe(NO3)2とFe(NO3)3がありますが、前者はFe2+で緑 色、後者はFe3+で淡紫です。Fe(NO3)2は、赤~黄と青~紫に吸収帯があるため、透過 色は緑に見えるのですがこれ自身は赤外発光するでしょう。一方、Fe(NO3)3は、緑か ら青に弱い吸収帯があるため、紫っぽく見えています。この吸収帯が黄色を発光する(ス トークスシフトで発光は長波長になる)可能性があります。しかし、この準位に励起エネ ルギーが効率的に移る必要があり、3つの物質を混合したとき、適当にFe(NO3)2とF e(NO3)3ができて、前者の青~紫の吸収帯から後者の発光帯にエネルギーが移行してい るのではないかと存じます。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 14:33:25 +0900
    AA: 佐藤様
     A㈱のMです。
     大変詳しくご教授頂き、感謝しております。
    なるほど、蛍光発光していたのは鉄化合物の存在の仕方に原因があったということですね。
     『理化学辞典』に、硝酸鉄は酸化数2価と3価の物質がありそれぞれ佐藤様がおっしゃられたような特徴が記載されておりました。
     発光の仕方・・・複雑というか、目に見えないエネルギーの移行が可視光波長領域の推移にも影響があるとは。。。
    まだまだ勉強不足でした。大変勉強になりました。
     また、お世話になるかもしれませんが、 その際にはよろしくお願い致します。ありがとうございました。

     ランキングBest3以内に入るように私も影ながら応援させて頂きます。。。
    -----------------------------------------------------------------------------

    506. 周期表の原子の並べ方

    Date: Tue, 11 Jan 2005 13:30:14 +0900
    Q:[周期律表の原子配列はどのようにしてきめられたか、またなぜこのような配置になるのか「電子軌道」ということばに注目して説明せよ]
    という課題があるのですがいろいろ調べたのですがわからないんです↓教えてください!!
    樟蔭女子大、食物栄養学科一回生、おのだまい
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 11 Jan 2005 21:41:22 +0900
    A: 小野田君、佐藤勝昭です。
     周期表の成り立ちをわかりやすく説明するのは大変です。このことを理解するには、物 理学の多少の知識が必要です。高校の「物理II」の教科書にも書いてあるので、弟さんに でも借りて読んでみてはいかがでしょう。
     元素の周期表の横の段は、上から下へ、最外殻電子の主量子数の順にならんでいます。
    左から右にかけて外殻電子数が増える順に並んでいます。
    主量子数nとすると、軌道角運動量量子l(エル)は0からn-1までの値をとることができます。  一番上の段はn=1 です。このときlは l=0のみです。l=0の電子をs電子といいますが、s 電子軌道は1種類しかなく、スピンを含め、s軌道には2個の電子を収容出来ます。従って、 1s状態には電子を1個収容した状態(H水素原子)と2個収容した状態(Heヘリウム原子)のみ が来ます。Heでは2個の軌道を2個の電子が占めたので閉じてしまい、1s閉殻をつくります。
     2番目の段はn=2です。これにはl=0,1が対応します。主量子数がn=2で軌道角運動量量 子数がl=0の状態は2s状態です。l=1の状態は2p軌道と呼ばれます。2p軌道にはスピンも含 め6個の状態があります。従って、周期表の2段目には8個の原子が対応します。各状態 に占める電子の数を^の後に書きますと、Li,Be,B,C,N,O,F,Ne はHe閉殻の外に
    Li:2s^1,2p^0, Be:2s^2,2p^0, B:2s^2,2p^1, C:2s^2,2p^2, ・・・・Ne:2s^2,2p^6となり、
    Neは8個の状態を8個の電子が占め再び閉殻になります。3段目まではこれでいいのです が、4段目になると、3d軌道(l=2)が埋まらないまま、4s軌道の方がさきに占められてし まい、ScのところからZnまで、3d軌道が順に占められていきます。
     全部説明すると大変なので、この辺にしておきましょう。電子軌道の占有の様子は丸善 から出ている「理科年表」にも出ていますから、図書館で調べて下さい。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 00:12:00 +0900
    AA: ありがとうございました(o^□^o)
    -------------------------------------------------------------------------------

    507. ITOの熱物性

    Date: Tue, 11 Jan 2005 17:12:41 +0900
    Q:佐藤先生
       はじめまして。名古屋大学のAと申します。
       ITO膜を電極として使用したくて、ITO膜の熱特性を調べております。
       ITO膜の温度伝導率(熱拡散係数)、比熱、密度や(光)吸収係数を教えてい ただけないでしょうか。
       ITO膜の熱伝導率が先生のHPに載ってありますので、それを参考させていただ きたいと思います。
       どうぞよろしくお願い致します。

    A 名古屋大学
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 01:47:56 +0900
    A様、佐藤勝昭です。
    透明電極の熱物性の測定は産総研の竹歳尚之氏が研究されているので、そちらにお尋ね になっては如何でしょうか。
    第25回熱物性シンポジウム(信州大2004)のA324に
    ナノ秒サーモリフレクタンス法を用いた透明導電膜の熱拡散率の測定
    というタイトルで発表があったようです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 16:21:42 +0900
    AA:佐藤先生
       ご返答していただいて、どうもありがとうございます。
       先生の回答が非常に役立つ情報になると思います。大変感激致します。
       これからもどうぞよろしくお願い致します。

    名大大学院 A
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 18:54:02 +0900
    A2: A君、佐藤勝昭です。
     青山学院の八木様から、あなたの質問に関して下記のコメントがありましたので転送し ます。
    添付pdfは、先日紹介した講演の論文です。
    ------------------------------------------------------------
     東京農工大学 佐藤勝昭先生

     青山学院大学でポスドクをしております、八木貴志と申します。
     先生のご質問につきまして、産総研の久住様から返答があるかと思いますが  私からもコメントを申し上げます。

     当研究室では、産総研の熱物性標準研究室と共同で薄膜の熱物性計測を行っており、
     ITO薄膜についてもその一環として取り組んでいます。
     ITO薄膜は、成膜時の温度によりアモルファス(室温)から結晶(200℃以上)に変化
     します。このような構造の変化は熱のキャリアである格子振動の伝わり方に大きな影
     響を与えるため、単純に「ITO薄膜の熱拡散率はいくつ」という決め方ができません。
     我々のグループでは現在室温成膜したアモルファスITO膜の熱拡散率を求めることに
     成功しています。ITO膜の膜厚は30nm~300nmです。
     測定に使用するサーモリフレクタンス法は、バルクの熱拡散率の測定法として最も
     一般的なレーザーフラッシュ法と全く同じ配置を持ち、ピコ秒もしくはナノ秒パルス
     レーザーを用いることで時間分解能をあげて薄膜用に特化した方法です。この方法で
     は薄膜の膜厚方向へ伝わる熱の拡散率を得ることができます。
     昨秋の熱物性シンポジウムの予稿を添付しましたのでご覧ください。

     また、ITOはセラミクスでありながら電気の良導体ですので、熱の伝達は格子振動と
     伝導電子の両方に担われる特殊な材料です。したがって、前述した構造の変化だけで
     なく電気伝導性の違いも熱拡散率の大きさに影響すると考えています。

     以上、参考になることがあれば幸いです。
    -----------------------------------------------------------------------------

    508. アルミと銀のスキンデプス

    Date: Wed, 12 Jan 2005 02:28:24 +0900
    Q: 阪大4回生のT(Webにアップする場合匿名希望)と申します。
    HPを拝見させていただきました。そこで、佐藤先生にお尋ねしたいことがあります。
    それはアルミと銀のスキンデプスです。理科年表や理化学辞典などで調べてみたのですが、 載っていなかったので、これは佐藤先生に聞くしかないと思いました。
    ちなみに対象とする光の波長は800nmです。
    ご存知であればお答え願います。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 09:53:05 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     普通、光に対しては電磁波のスキンデプスの考えは使いませんが、光の侵入長δとして 考えると、光強度がもとの1/eになる距離と考えられます。従って吸収係数αの逆数です。 αは消光係数κ、波長λを使って、α=2ωκ/c=4πκ/λで与えられます。従って δ=λ/4πκです。
    λ=800nmにおいてκは、Alでは7.75、Agでは5.35です。
    従って、Alではδ=8.2 nm、Agではδ=11.9 nm となります。いずれもほぼ10 nmのオーダ ーです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 22:50:20 +0900
    AA: お答えありがとうございました。大変参考になりました。
    -------------------------------------------------------------------------------

    509. 圧延後と低温焼鈍による伸び率の変化

    Date: Fri, 7 Jan 2005 17:39:00 +0900
    Q: 佐藤様
    初めてメールさせて頂きます。
    私はT㈱のMと申します。
    炭素鋼やステンレス鋼の圧延を行っている会社です。
    早速ですが、以下の点につきましてご教授頂ければ幸いです。
    弊社におきましてオーステナイト系ステンレス(SUS301N)を圧延し(材料硬度はHV520程度です)、 低温焼鈍(350~400℃で5min保持)したところ、伸び率が元々8%程度あったものが0.6%程度まで 低下してしまいました。
    材料硬度やバネ性は低温焼鈍を施す事により上昇しますが、何故伸び率は低下してしまうのでしょうか? そのメカニズム等を教えて頂けないでしょうか?
    お忙しいところ大変恐縮ではございますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
    なお、HPに掲載させる場合は匿名にてお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 9 Jan 2005 14:43:16 +0900
    A1: M様、佐藤勝昭です。
     質問を確認させてください。「伸び率」がどのような定義なのか解りません。
    SUS301Nステンレス鋼を圧延後低温焼鈍する前後で、応力・ひずみ特性をとったところ、 伸び率が低下したということでしょうか、それとも、圧延に対する伸び率が低下し、圧 延で起きた塑性変形がもとにもどってしまったということでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 11 Jan 2005 10:12:44 +0900
    Q2: 佐藤様
    返信有り難うございます。
    早速ですが、『伸び率』は引張試験を行い元の試験片長さに比べどれくらい伸びたかの比率となっております。
    私の認識では圧延のみによりHV550程度まで仕上げたSUS301はこの伸び率は0.6%程度であります。
    しかし、対象となっておりますSUS301Nは圧延後硬度はHV520程度、伸び率8%程度でありましたが、 低温焼鈍後、試験を行ったところHV550程度、伸び率0.6%となってしまいました。
    単純に伸び率は硬さに依存してしまっているのか?硬さが上昇する挙動の中に伸び率が低下してしまう 原因があるのか?が分かりません。

    お忙しいところ大変恐縮ではございますが宜しくお願い申し上げます。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 17:30:46 +0900
    A2: M様、佐藤勝昭です。
     状況はわかりました。応力印加時の伸び率が圧延後大きくなったものが低温焼鈍で小さ くなった原因を知りたいと言うことですね。
    SUS301Nの圧延後硬度がなぜそれほど低いのかわかりませんが、低温焼鈍の結果を見る限 り硬度と対応関係があるようですね。硬さと弾性係数は一応正の相関があるのですが、今 の場合どうして、焼鈍で硬さが増大したのかがよくわかりませんね。
     金属加工の専門家に尋ねてみたいと存じます。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 17:43:59 +0900
    Q3: 佐藤様、Mです。
    返信有り難うございます。
    また、専門家の方に聞いていただけるとのこと有り難うございます。
    お忙しいところ大変お手数お掛け致しますが、宜しくお願い申し上げます。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 01:31:33 +0900
    A3: M様、佐藤勝昭です。
    本学の桑原教授(機械システム)に問い合わせましたところ、
    下記のような回答を得ましたのでお伝えします。
    =================
     経験的に言われていることは.材料を焼鈍しますと強度は低下し,
     それに伴い,伸びは大きくなります.
     しかし,下記の御指摘では,「材料硬度やバネ性は低温焼鈍を施す事により上昇する」
     とあります.硬度が上昇する(材料強度が上昇する)ならば,通常は材料の延性は低下します.
     ということで,「材料硬度やバネ性は低温焼鈍を施す事により上昇する」という事実が
     あるのであれば,その結果として,伸び率(延性)が低下するのは,常識レベルの範囲では理解できます.
     力学レベルできっちり説明するためには,材料の加工硬化指数など,焼鈍前後の引張試験における
     材料の加工硬化特性(いわゆるn値:材料の加工硬化式をσ=F×ε^nで近似したときの,指数nの値)
     などを測定してみなければなりません.
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 14 Jan 2005 17:21:42 +0900
    AA: 佐藤様
    お世話になっております。
    T社Mです。
    この度はお忙しいところ小生の為に貴重なお時間を割いて頂き、誠に有り難うございました。
    今後、また何かございましたら御教授して頂ければ幸いです。
    -------------------------------------------------------------------------------

    510. 真空中の導電体の誘電率

    Date: Wed, 12 Jan 2005 18:33:24 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭様

    T社のUです
    HPを拝見させて頂き、不躾ながら質問のメールをさせて頂きました。

    標題について教えて頂きたいことがあります。
    真空の誘電率をε0として、真空中に導体(金属など)を配置させたような系を作って、その導体のプラズマ周波数ωpより 小さい周波数帯で誘電率を測定したとします。(電極は金属に接しておらず、導体は電極間に存在しているとします)

    ωpより小さい周波数帯では、その導体の誘電率は実数部は負に、虚数部は正になると思います(ドルーデの式より)。 このとき、全体としての見かけの誘電率εを以下のように考えてみましたが、電磁気学に疎い方ですので全く自信がありません。誤り等をご指摘頂けると有り難いです。

    まず、佐藤先生が書かれた応用物性(応用物理学シリーズ)の4章p170に2相分散系の見かけ誘電率の表式が載っています。 この式のε1に1をε2に導体の誘電率を代入すれば求まるのかと思い、まず、導体のε2がどの程度になるのかドルーデの式(佐藤先生の機能材料のための量子工学4章p159)から|εr|^2を計算しました。
    (εrが複素数なので、絶対値の計算が必要かと判断しましたが、実部(負値)のみを使うと言うことになると、以下の議論はまた違うものになるかもしれません。)

    緩和時間のτがどの程度になるのか私にはよく分からないのですが、少なくとも、ωp>ωであるので、仮にωを低周波数(~数MHz程度)とするとωp>>ωと仮定できて、|εr|^2は1より非常に大きな数値になろうかと思います。(|εr|>>1とおいて差し支えない)

    そこで、上記ε2に適当な大きな値(10,000とか100,000)を入れて2相分散系の見かけ誘電率を求めてみました。(エクセルで計算しました)そうすると、ε2が10,000だろうと100,000だろうと見かけ誘電率に違いは殆ど見られず(そういう表式だから仕方ないのかも知れませんが)、φ(導体の体積分率)が0.5を越えるあたりから立ち上がるような曲線になりました。(10,000と100,000の違いはφ>0.99で見られるくらいでそれ以外ではあまり大きな違いがありません)

    これは、結局の所、見かけの誘電率は導体であればその種類にあまり依存しない、ということを表している...

    このような感じになりました。いかがでしょうか?ご指摘の程よろしくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 12 Jan 2005 18:59:44 +0900
    A: U様、佐藤勝昭です。
     導体の誘電率を測定する意味を教えて下さい。何のためにこのような系をお考えなのでしょうか。
     特に2相分散系の式は、通常の誘電体(ε'>0, ε"=0)の場合について考えていますので導体の系には適用するべきではないと思います。導体の場合サイズがスキンデプスより大きいと電磁波は中に入れないので、平均誘電率の式が使えません。  ご質問を再度読み直してみました。
    ε1=1としておられるので、微粒子分散系の実効誘電率をお求めなのですね。
    微粒子のサイズが十分小さければ、有効誘電率の考え方で、実数部、虚数部を計算出来ま す。(絶対値をとっても無意味です。)いわゆるマクスウェルガーネットの式に帰着しま す。ガラスに金の微粒子を分散させれば赤色に着色するのがこの原理です。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 08:24:34 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生
    早速のご回答ありがとうございます。
    すみません、私の説明が足りませんでした。微粒子分散系の実効誘電率, 先生のご推察の通りです。
    先生のご指摘について、2点教えてください。
    1.”絶対値をとっても無意味”について、複素数の大きさはその絶対値に
      なると思いますが、複素誘電率の絶対値が大きさに対応しないというこ
      とでしょうか?
    2.マクスウェルガーネットの式について、参考文献がありましたら教えて
      頂けないでしょうか?インターネットで検索してみましたが該当するような
      ページは見当たりませんでした。
    宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 19:20:44 +0900
    A2: U様、佐藤勝昭です。
    1.Drudeの基本的性質は誘電率の実数部の光子エネルギー依存性から来ていますので
    、   虚数部も合わせて絶対値をとっても光学的な性質を議論するには不都合であると
      申し上げたかったのです。
    2.微粒子分散系の光学、磁気光学に関しては、東工大の阿部先生がお詳しいのですが、
      阿部先生の書かれた日本応用磁気学会第127回研究会資料p.17「磁性ナノオニオンの表
      面プラズモン効果の増大」によりますと、①準静電近似は、電気双極子の基底モードしか
      考慮されていないため、直径が波長より十分小さいときのみ有効である。電気多重極子お
      よび磁気多重極子を含め、Mie散乱理論に依ればいかなる粒径に対しても厳密に計算出来
      る。(中略)Mie散乱理論は分散媒体については、体積占有率が非常に小さいときにしか適
      用出来ない。②Maxell Garnet近似は、粒子間の双極子相互作用を取り入れているが、体
      積占有率が小さいときのみ有効である。占有率30%くらいが限界。それ以上ではBruggman
      の有効媒体近似を用いるなどしなければならない。・・と書かれています。
    引用文献としては
      V.Kreibig and Vollmer: Optical Properties of Metal Clusters (Springer, Berlin,
    1995)が掲げられていますが、私の手元にありません。
    阿部先生の論文としては、M.Abe: Phys. Rev. B53 (1996) 7065.をご参照下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 18 Jan 2005 18:06:42 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    お返事どうも有り難うございました。
    (お礼が遅くなり申し訳ありません)

    標記について、先生に示して頂いた阿部先生の文献や 金属微粒子・光学などをキーワードに文献を探して調べて みようと思います。
    お忙しいところ、どうも有り難うございました。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 24 Jan 2005 21:21:47 +0900
    A2: U様、佐藤勝昭です。
     あれからいろいろ調べていましたら、Palik"Handbook of Optical Constants of Solids vol 1"のChapter 5にD.E. Aspnesによる"The accurate determination of optical properties by ellipsometry"という章があり、有効媒質近似についてp104に詳 しく説明され、Maxwell-Garnetの表現, Bruggemanの近似について説明されています。
     この本をしっかり読まれることをお薦めします。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 25 Jan 2005 09:08:08 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    Uです。
    参考文献のご教示ありがとうございます。
    これから読んでみます.
    --------------------------------------------------------------------------------------

    511. 金属の電気抵抗の起源

    Date: Thu, 13 Jan 2005 00:16:54 +0900
    Q: K高専電気科のSといいます。匿名希望です。
    質問したいのですが、金属材料の電気抵抗が生じる原因について聞きたいのですが。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 01:22:35 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
    電気抵抗の主な原因は伝導に寄与する電子が金属結晶の格子振動によって散乱さ れることです。格子振動は極低温になるとほとんどなくなりますが、不純物によ る散乱のため完全にゼロになることはありません。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 13 Jan 2005 01:32:05 +0900
    AA: ありがとうございました!本当に夜分遅くにすいませんでした。
    ------------------------------------------------------------------------------------

    512. 原子中の電子

    Date: Sun, 16 Jan 2005 21:07:38 +0900 (JST)
    Q: HPを見ました
    熊本大学のOといいます
    匿名でお願いします
    原子核の+の電荷とその周りの-の電子は静電的に引っ張り合うので、電子が原子核 に引っ張られて飲み込まれてしまう。だから原子はこの世に存在しないかもしれな い。けどそのようなことは起きていない。
    何故ですか
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 16 Jan 2005 23:44:34 +0900
    A: O君、佐藤勝昭です。
     工学部1年生なら、力学の基礎はわかりますね。
    電子は、本当は量子的な取り扱いをしなければなりませんが、とりあえず古典粒子とし て扱います。電子は原子核の周りを周回しているのですが、そのとき電子には遠心力が 働きます。この遠心力と静電引力がつりあうのです。
    -------------------------------------------------------------------------------------

    513. 電子の利用

    Date: Mon, 17 Jan 2005 01:18:01 +0900 (JST)
    九州東海大1年電気電子システム工学科の尾崎といいます
    HPみて質問したいんですけど
    電子はどこでどのようなとこで利用されているか教えてください。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 17 Jan 2005 20:13:09 +0900
    A: 尾崎君、佐藤勝昭です。
     電気電子の学生の質問とは思えませんね。高校の物理の教科書にも載っています。
     金属を電気が流れるのは、金属の中の電子が電位差を受けて流れるからです。このよう に電気の流れは、電子の流れによります。あなたの学科名にある「電子工学」(エレクト ロニクス)というのは、電子の働きを利用する技術すべてを指します。
    (1) トランジスタは、半導体の接合を流れる電子およびホール(電子の抜け穴;正の電荷 をもっている)の流れを制御することによって、電気信号を増幅しています。
    (2) 発光ダイオードは、半導体の接合に電圧を加えることによって電子とホールを注入し これらが再結合するときにエネルギーを光の形で放出します。
    (3) テレビのブラウン管では、電子ビームが走査線に沿って蛍光スクリーンを掃引し、蛍 光体を励起して可視光線を発光します。
    (4) 太陽電池においては、半導体接合に光を当てることによって、電子とホールの対が作 り出され、半導体接合に内蔵された電位差によって電子はn型半導体側に、ホールはp型 半導体側に流れるため、両端に電圧を生じるのです。
    (5) 磁気記録においては、記録された磁気状態を読み出すために磁気抵抗素子が使われま すが、電子のもつ磁気モーメントが磁性体中の磁性原子のもつ磁気モーメントと平行か反 平行かで、電子散乱の大きさが異なることを利用して磁気を電気抵抗に変えて読み出して います。
     このように電子工学のあらゆる分野で電子の働きが利用されています。
    -------------------------------------------------------------------------------------

    514. 高周波回路と誘電率

    Date: Wed, 19 Jan 2005 11:08:30 +0900 (JST)
    Q: はじめまして、私はN大学4年Kと申します。
    この度、「誘電率」についてインターネットで調べていたところ、先生のHP「物性なんでもQ&A」にたどりつきましたのでメールを送らせていただきました。
    現在私は、実務研修で、Mという会社で研究の手伝いをしております。
    先日社長から、「近年、携帯端末などの発達に伴い、高周波回路が多く使われている。その高周波回路には絶縁性がありつつ、誘電率の低い材料が求められている。」という話をされ、どういうことなのか調べてほしいと頼まれました。
    私は機械系なので、電気の知識はあまりなく、まずは誘電率について自分なりに調べたところ、混乱は深まってしまいました。 誘電率の高い材料を絶縁体と呼ぶのだとしたら、社長の話の意味がわかりません。
    絶縁に最低限必要な誘電率があれば良いということなのでしょうか?またなぜ高周波回路にはそのような材料が必要なのでしょうか?
    そもそも高周波回路という言葉自体良くわかっていない私がこのような質問をして本当に申し訳ありません。
    大変お忙しい中、このようなメールを読んでいただき、本当にありがとうございます。時間のあるときでよろしいので、返事をいただけるとありがたいです。宜しくお願いいたします。
    それから、HPに載せる際には会社名、学校名など、匿名でお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 19 Jan 2005 12:49:56 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     たとえば、絶縁物で出来たプリント基板上に高周波回路を作ったとします。2本の配線 (伝送線)の間に基板の容量(キャパシタンス)Cが並列に入ります。配線には電気抵抗Rがあ りますから、この回路はRCの回路になり角振動数ωが2π/RCより高い高周波電気信号が 伝送中に減衰してしまうのです。配線間容量Cは誘電率εに比例しますから、誘電率の小 さな基板を使わないと、高周波がうまく伝わらないのです。
     絶縁体は電気抵抗の高い物質と言うことで、誘電率の高い物質ではありません。念のた め。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 19 Jan 2005 17:54:02 +0900 (JST)
    Q2:今日誘電率の件でメールさせていただいたKです。質問にお答え頂きありがとうございました。大変参考になりました。 ところでまだ少し疑問があるのですが、私が調べたところ誘電体というのは、外部から電場をあたえると分極を起こして電気を流さずにためる働きがあるとありました。
    わたしはこの「ためる」ということから、電気を流さない→絶縁体と勝手に解釈していました。
    そうでないということは絶縁という現象はどのような原理で起こっているのでしょうか?違いが今一つわからないのです。
    それからもう一つ教えていただきたいのですが、絶縁性を持っていながらにして、誘電率の低い材料というものにはどのようなものがあるのでしょうか?簡単な原理のようなものをおしえていただけると大変ありがたいです。
    たびたび初歩的な質問をしてしまい大変申し訳ありませんがどうか宜しくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 19 Jan 2005 22:53:19 +0900
    A2: K君、佐藤勝昭です。
     絶縁体というのは、電気抵抗の高い物質ということで、半導体のシリコンでも純粋のも のは絶縁体です。セラミクスの大部分も絶縁体ですが、キャリア(電気の担体)が少なく 電子の移動度も低いので電気抵抗が高くなっています。
    誘電体というのは、あなたの言うように電界によって分極が生じるということですが、直 流では、金属以外のすべての物質は誘電体と言ってもよいでしょう。しかし、金属でも光 のような高周波の電磁波にたいしては、誘電率を使って表すことが出来ます。
    誘電率のうち電子分極によるものは、バンドギャップの逆数の二乗に比例します。誘電率 にはイオン分極による分もあり、高周波においては、これも無視出来ません。
     このあたりのことは、拙著「応用電子物性工学」(コロナ社)、「機能性材料のための量 子工学」(講談社)などに載っています。しかし、最低限の電磁気学と電子物性の知識が必 要で、機械屋さんにとってはちょっとむずかしいかも知れません。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Jan 2005 17:41:41 +0900 (JST)
    Q3: 誘電率についてたびたびメールさせていただいている狩野です。
    先生のメールをよんで、誘電体と絶縁体の違いが分かりました。大変参考になりました。
    何度も質問して申し訳ないのですが、誘電体=絶縁体ではないわけですが、絶縁体は誘電率 が高いということなんですよね?
    誘電率の低い絶縁体を作り出すということは、つまり電気を流れやすくしてしまうということ にはならないのでしょうか?
    お忙しいところ度々申し訳ありません。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Jan 2005 18:38:39 +0900
    A3: K様、佐藤勝昭です。
     絶縁体であることと、誘電率が高いことは全く関係がありません。
    絶縁体というのは、電気が流れにくいということ以外の何物でもありません。
     コンデンサに使われる誘電率の高い材料の多くが絶縁体ですが、逆は真ではありません。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Jan 2005 08:39:51 +0900 (JST)
    Q4: Kです。度々私の初歩的な質問に丁寧にお答えいただき、本当にありがとうございます。
    また質問があります。回路には誘電率の高い絶縁体が使われているということですが、先生のお話では、 誘電率が高いと高周波の場合、減衰してしまうということでした。では誘電率の高い材料を使うメリット というものは何なのでしょうか?
    それからもう一つ、誘電率の低い、且つ絶縁体であるという材料にはどんなものがあるのか教えて いただけないでしょうか?
    しつこく質問してしまい申し訳ありません。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Jan 2005 19:30:29 +0900
    A4: K君、佐藤勝昭です。
     回路の素子には、コンデンサとして誘電率の高い絶縁物が必要です。コンデンサの容量 CはC=εS/dで与えられることは、高校の物理IIで学んだはずです。たとえば、BS放送受信 機の10GHz帯に用いるコンデンサにはルチル系の材料が使われていますが、この物質は誘 電率が高く、誘電損失(誘電率の虚数部)が小さく、かつ絶縁性が高いからです。
     誘電率が低く絶縁体であるものはいっぱいあります。図書館に行って、電子通信ハンド ブック、電気工学ハンドブックなどで、絶縁及び誘電材料の項をご覧ください。
     たとえば、セラミクスの絶縁材料では、
    材料抵抗率絶縁耐力比誘電率 
    アルミナ>10^12Ωm30kV/mm9
    ステアタイト10^11Ωm30-40 6
    フォルステライト10^12306.4
     プラスチックでは
     
    材料抵抗率絶縁耐力比誘電率
    ポリエチレン>10^18Ωm35-50kV/mm2.3
    ポリプロピレン>10^18Ωm35-502.3
    などとなっています。
    一般にプラスチックは絶縁耐力も高く誘電率も小さいので伝送路に向いています。
    プラスチックの諸特性は日立ケーブルのHPにあります。
    http://www.hitachi-cable.co.jp/ewc/pdf/technical/3-1.pdf

    --------------------------------------------------------------------------------
      Date: Mon, 24 Jan 2005 09:05:13 +0900 (JST)
    AA: 誘電率について度々質問させていただきました、Kです。
    初歩的な質問に度々丁寧にお答え頂き、ほんとうにありがとうございました。
    大変分かりやすく、理解することが出来ました。
    ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------------

    515. 微結晶シリコンの核生成

    Date: Thu, 20 Jan 2005 19:56:34 +0900
    Q: 初めまして。A高専4年のKです。(匿名希望)
     「プラズマ化学堆積法を用いて50-100[μm]の微結晶シリコンをガラス上に製膜し た時、ガラス上での核生成(核形成)反応が起こり、低いシラン濃度で多くのアモル ファス量を含む核生成層が生成される」と言うのを英語の論文を読んでいると出てき たのですが、「核生成反応」というのは一体どういう現象で、なぜ多量のアモルファ ス状態を含む核生成層というのが出来るのでしょうか?お忙しいところだと思います が、宜しくお願いします。(英語の論文を色々模索しながら訳したので不明瞭な訳 なっています。もし質問している意味が分からなかったら、その部分の論文を送りま す。)
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Jan 2005 20:04:40 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     「多くのアモルファス量を含む核生成層が生成される」というのはつぎのように解釈され ます。核(nucleus)というのは結晶核のことで、いわば、結晶のタネです。たとえば融液 からの結晶成長ではnuceation and growthといって初めに融液の中に固体の結晶核ができ てそれが成長して、だんだん大きな結晶になります。ガラス上にシランやジシランをプラ ズマ分解して堆積すると、基板温度が低ければ普通はアモルファス(非晶質)になります が、ガス中の水素の濃度を変えたり、放電の電力を変えたり、基板温度を上げたりすると、 ナノメートルサイズのシリコンの微結晶がアモルファスの中に析出し始めます。高倍率の 電子顕微鏡で見ると、全体にはランダムなパターンの中に微細な格子像が浮かんでいるの が見られます。これが、「大量のアモルファスを含む核生成層」の意味でしょう。この核 が成長して数10μmのシリコン微粒子ができると考えられます。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 23 Jan 2005 23:42:32 +0900
    AA: Kです。お返事が大変遅れてすいません。
     ご丁寧な解説、本当にありがとうございました。結晶が出来るプロセスさえも知ら なかった自分が恥ずかしいです。また非結晶から微結晶への成長への過程も理解で き、今後の物性に関する興味もより一層深くなった次第です。現在読んでいる論文を 完全に理解できるように励みたいと思います。
     これ以後もお世話になることが多々あると思います。ご迷惑承知の上ですが、宜し くお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------

    516. ナイトライドのエピ成長における問題点と解決法

    Date: Thu, 20 Jan 2005 21:36:10 +0900
    Q: 初めまして、佐藤研究室様。
    Y大学3年のSと申します。(匿名希望でお願いします)
    化合物半導体のGaN系(AlN,InGaN)をサファイヤ基板上で気相エピタキシャル成 長させる時の、問題点とその解決法について教えてください。
    大学の教官へ伺ったところ、格子不整合や無転位、光学特性の劣化がキーワードだと 聞きました。理工図書館やNETで調べても出てきません。何卒、よろしくお願いいた します。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Jan 2005 21:14:38 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
     自主学習ですか、それとも授業の宿題ですか?匿名にするというのは宿題なのでしょう ね。先生からヒントをもらっているのですから、地道に調べて下さい。
     参考になる文献としては、
    応用物理学会結晶工学分科会第3回結晶工学セミナー「これから始めるナイトライド半導 体」(1997)p.21ナイトライド半導体の作りかた(平松和政)が参考になります。
     また、少し古くなりますが、
    平松和政:日本結晶成長学会誌15 (1988) 334
    I. Akasaki et al.:J. Crystal Growth 98 (1989) 209
    などが参考になるでしょう。
     一応GaNとサファイアAl2O3の格子定数、熱膨張係数を記載しておきます。
    物質格子定数熱膨張係数×10^-6/K
    GaNa=3.189 c=5.182a: 5.59 c: 7.75
    Al2O3a=4.758 c=12.991a: 7.5 c: 8.5
    格子定数が異なるものをエピタキシャル成長するために、バッファ層を挿入します。
    あるいは、ELO基板という特殊な基板を用います。
    このあたりは、最近2-3年の応用物理学会誌を見ていけば、いろいろ載っているはずで 図書館での君の調べ方が悪いだけです。たとえば、
    天野 浩:短波長可視・紫外発光デバイス開発と半導体へテロエピタキシー応用物理、 第71巻、第11号、 p.1329-1334(2002) を読んで下さい。
    -----------------------------------------------------------------------------

    517. ポリシリコン、銅の赤外での光学定数

    Date: Thu, 20 Jan 2005 22:36:44 +0900
    Q: 東京農工大学教授   佐藤勝昭先生
    永年、半導体材料会社に勤めていました山本桂です。
     光子エネルギーが0.005eVと0.05eVのときのTaN、poly-Si、Cuの複素屈折のnとkの値を 調べたいのですがよい方法を教えてください。よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Jan 2005 20:30:31 +0900
    A: 山本桂様、佐藤勝昭です。
    さて、窒化タンタルTaNはあまりポピュラーな材料ではないので、測定はされていないと 存じます。ポリシリコンは基本的にはシリコンの多結晶体ですから、シリコンのデータが 使えるはずです。銅については、最近のデータは0.113eV以上しかありません。古いデー タですが、0.0657eVのデータがあります。これ以下の値は、Drudeの式で見積もるほかない でしょう。

    結晶シリコン
    光子エネルギー屈折率n消光係数κ
    0.0053.41601.4×10^-3
    0.053.42019.15×10^-5

    光子エネルギー屈折率n消光係数κ
    0.065732.66101.81
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 24 Jan 2005 21:06:11 +0900
    AA: 東京農工大学教授   佐藤勝昭先生
    半導体材料のeVに対するi複素屈折率に関する現状がわかりました。
    参考にさせていただきます。
     ありがとうございました。
                        山本  桂
    -------------------------------------------------------------------------------

    518. レーザパワーの計測法

      Date: Thu, 20 Jan 2005 17:26:06 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
     A(株)のNと申します。
    先生のHPには、約半年前に遭遇し、それ以来、折にふれて参考にさせて頂いております。
    そして、そのたびに先生の活動範囲(趣味も含めて)の広範さに驚嘆しています。

     さて、私の疑問ですが、これは、赤外域の光パワーメータの選定・調査の中で、生 じたものです。その内容を要約すると、次のようになります。
    1.光パワーの単位量1ワットとは、どのように定義されているのか?
    2.光のパワーは、その波長とはどのように関係するのか?
    このような基礎的な事柄なのですが、身近な書物やインターネットで調べても要領を 得ません。

     これらの疑問に関連する私の混乱ぶりを次に記しておきます。ご回答の際に参考と していただけたらと思います。
    ● 光のパワーは、それがもたらす熱的効果で計るのか?
    光パワーメータの校正には、光カロリーメータ法なるものが使われるらしい。また、 光の熱的センサー(例:熱電対、サーモパイル)の波長特性は、ほぼ平坦であると記 されている。これらから、光のパワーは、熱に換算して計量するのではないか。とす ると、単位パワーの光は、波長に依らず一定の熱的効果をもたらすに違いない。
    一方、可視光よりも赤外光の方が熱効果が高いというのが生活実感である(例:赤外 線ストーブ、コールドミラー)。この違いは?
    ● 単位パワーの単色光を構成する光子の数は、波長に正比例するのか?
    量子論によると、光子のエネルギーは、E=hν (=hc/λ) と表せ、波長に反比例す る。このことから、上のように言えると思うが、いままで、パワーを光子数で考えた ことがなかっただけに、思いがけない結果である。

    先生の貴重なお時間を頂く事になり申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 24 Jan 2005 20:42:26 +0900
    A: A社Nさま、佐藤勝昭です。
     お返事が遅くなり申し訳ありません。わたしも自信がないので、レーザーを使った分光 計測をしておられる本学物理システム工学科の谷俊朗教授にうかがいましたところ、下記 のような回答を頂きましたのでお届けします。
    ===========================================================================
    1. ワット[W]とは,例えば理科年表を見るのはいいと思いますが,1ジュールのエネ ルギーが1秒間当たりに出入りする,単位時間当たりのエネルギー量[W=J/sec] です。あるいは,例えば抵抗体に1アンペア[A]の電流が1ボルト[V]の電圧で注入さ れているとき,そこで熱に変換され消費される1秒当たりのエネルギー量は1Wである, としてもよく,これらは辻褄が合っています。  では1Jはというと,力学的には,1ニュートン[N]の力が質点に作用し,1メート ル動かしたときにする仕事[N・m],といった所でしょうか。これは,単位系がcgsに変 わり,名称が変わっても中身は同じです。  実際には,実用単位と称してまぜこぜに使うことも多く(e.g. レーザー分光),例え ば,レーザー光の入射光強度は約 3 W/cm2 です,といった様に我々はよく使います。パ ルスレーザーを使っている人達は,なぜか1パルス当たりの総エネルギーを言うことが多 く,3Jのパルスを入射すると・・・,といったように使います。この場合は,ビームの 断面積やその強度分布のプロファイルは示されていないことが多く,多くはガウスビーム を前提にした,阿吽の呼吸のようです。

      測定は存外難しく,原理的には熱に変換して温度の上昇で測るしかない様です。最も素 朴な装置は,確かに,熱電対,サーモパイルでしょうか。だから,パワーメーターは一般 に応答速度が遅いです。正直言うと,今私たちが使っているレーザーのパワーメーターの 素子がどうなっているのかは,うかつにもよく知りません。必要なら調べます。二次的な 計測器では,校正されたシリコンのフォトダイオードを使うことも多く,使える波長範囲 に制限がありますが,応答速度・感度共に優れ,WないしJで表示されます。手持ちのもの でも nW まで測れます。究極は無論,質問にもあるように,光子係数法です。
    2. パワーそのものは,エネルギーの流れで見ていますから,波長は関係ありません。も しその光束を,光子という粒の数密度で測るなら,これは波長を念頭に置くべきで,例え ば,同じ数密度でも波長が半分になるとパワーは2倍です。同じパワーでも,波長が半分 になると,数密度も半分になります。
       E=hν (=hc/λ)だから,波長が倍になれば光子のエネルギーは半分で,単位パワーの単 色光を構成する光子の数は倍になります。つまり,波長に反比例です。
       また同じパワーなら,原理的には波長に関係なく熱的効果は同じです。

       可視光より赤外光の方が熱効果が違う生活実感は,多分その通りであって,別の要素が 入っているからだと思います。つまり,体の内部まで浸透し吸収される効率が違うのであ り,可視光は反射率が高いと思われます。コールドミラーは別で,これはきちんと波長領 域によって反射したり透過してしまうように設計されています。つまり長波長の光を反射 しない設計になっている鏡をコールドミラーといいます。
    =============================================================================
    Date: Wed, 26 Jan 2005 17:45:06 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生
    A社のNです。 この度は、お忙しい中を教えていただき有り難うございました。ま た、谷俊朗先生にも感謝致します。
    おかげで、光パワーの第一次的な計量が熱的方法によることが分かりました。しか し、具体的な測定法となると、計量研究所レベルの難しい問題となりそうなので、原 理としての知識に止めたいと思います。
    ただ、光パワーの測定に関連して、さらに次の質問をさせて下さい。
    1. 光よりも波長の短いX線や波長の長いマイクロ波のパワー測定においても、光の 場合と同じように、第一次的測定には熱的な測定法が使われるのでしょうか。
    2. 数社の光パワーメータ(サーモパイル使用)について、その測定波長範囲を調べ たところ、ほとんどが0.25~11μmとなっていました。範囲の下限は、空気の吸収に よって制限されるのかと思いますが、長波長側を制限している主な要因は何でしょう か。
    単なる知的興味からの質問で申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Jan 2005 20:02:03 +0900
    A2: N様、佐藤勝昭です。
    > 1. 光よりも波長の短いX線や波長の長いマイクロ波のパワー測定においても、光の
    > 場合と同じように、第一次的測定には熱的な測定法が使われるのでしょうか。
    マイクロ波のパワーは、高周波信号の電力を測定する標準的なパワーメータで測定されて
    います。X線の場合は、X線のフォトンをカウンタで計数する方法が使われます。

    > 2. 数社の光パワーメータ(サーモパイル使用)について、その測定波長範囲を調べ
    > たところ、ほとんどが0.25~11μmとなっていました。範囲の下限は、空気の吸収に
    > よって制限されるのかと思いますが、長波長側を制限している主な要因は何でしょう
    > か。
    OPHIRという会社のサーモパイルパワーメータは0.16-20μmとなっています。
    窓のあるタイプでは、窓材の透過領域で制限されています。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Jan 2005 16:14:36 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生

    早速のご回答いただき有り難うございました。
    例示されたOPHIR社のHPにあたり確認しました。
    今後もよろしくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    519. 金属の誘電率のシミュレーション

    Date: Thu, 27 Jan 2005 13:19:15 +0900
    Q: 東京農工大学, 佐藤勝昭 様

    はじめまして。N(株)のSと申します。
    HPを拝見させて頂き、不躾ながら質問のメールをさせて頂きました。

    金属の屈折率波長分散について教えていただきたいことがあります。
    可視光帯域(λ=400~700nm)における屈折率波長分散のフィッテングをDrudeの式で行っています。
    Al、Ag、Ptなどについては平均相対誤差約5%以下程度にフィッティングできるのですが、 Au、Cuなどについては平均相対誤差が30~50%程度になってしまいます。
    もともと可視広帯域に対してDrudeの式を適応することに無理があるのかもしれませんが、他に良いモデルを知りません。
    Drudeモデル以外で可視光帯域における金属の屈折率波長分散に適したモデルをご存知でしたら 教えて頂けないでしょうか?

    ちなみに、金属の屈折率データはPalikの Handbook of Optical Constant of Solidsから引用しました。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Jan 2005 15:27:22 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     誘電率は、Drudeの式と、Lorentzの式を使ってフィットできます。
    Drudeの項は自由電子によるもの、Lorentzの項は束縛電子の電子励起によるものです。
    金属の場合、後者は正確にはバンド間遷移なので、Lorentzで完全にはfit出来ませんが、 固有振動数の違う複数のLorentz項を用いればほぼfitできます。
     Alはバンド間遷移が1.5eV(800nm付近)に始まり、Agは4eV付近にバンド間遷移が始まる ので、Drudeだけでは合わないはずですが、波長範囲が短いので何とかなったのでしょう。
     Au, Cuではそれぞれ、3eV、2.5eV付近にLorentzの中心波長を持ってくればfitできるの ではないかと存じます。ε∞の定数項が必要かも知れませんが。
    Drudeの式としては、
     ε(ω)=1-ΣAj/(ω2j2+iωγj)
    の形が使えます。Drudeと合わせた場合、  ε(ω)=ε- ωp2 / ω(ω+iγ)-ΣAj/(ω2j2+iωγj)
    としてください。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Jan 2005 17:11:34 +0900
    AA: 佐藤 様

    非常に早いお返事ありがとうございます。
    バンド間遷移による効果をLorentzモデルで代替できるということは気が付きませんでした。
    考え方としてはバンド間遷移の起こる周波数を電子束縛による共鳴周波数で近似するような感じでしょうか。
    試してみたいと思います。ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    520. 表面プラズモン共鳴センサー

    Date: Fri, 04 Feb 2005 16:45:54 +0900
    Q: 佐藤先生

    突然メールを差し上げまして失礼致します。
    私は大阪大学院 生命機能研究科 修士2年の川住愛子と申します。
    先生のホームページを拝見させていただきました。
    そこで、是非先生に質問させて頂きたいことがありましたのでメールを差し上げました。

    私は発生生物学の研究をしておりまして、その研究に表面プラズモン共鳴センサーを用いることが出来ないか検討しておりました。
    しかし、物理学の勉強不足のため行き詰まっております。どうかお力を貸していただけませんでしょうか。

    質問は以下の通りです。
    センサチップ表面に結合させた物質に相互作用する物質が、どの様な物質か分からない場合、相互作用する時の誘電率の変化によって、相互作用した物質がどの様な性質(例えば分子量など)であるかを特定できるのでしょうか?
    具体的には、金属薄膜にDNA断片を結合させ、その断片に結合する転写因子を同定したいと考えています。
    どうかよろしくお願いいたします。

    川住愛子
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 4 Feb 2005 16:58:07 +0900
    A: 川住愛子様、佐藤勝昭です。
     表面プラズモン共鳴センサーはあくまで、物理的に誘電率を調べるだけですから、予め、 様々な物質についてのデータがないかぎり、同定することができません。
     それは、X線解析やラマン分光などと同じです。従って、もし、論文などを探してみて、 いままでに関連しそうな物資についてのデータがなかったら、既知の物質群について自分 でデータをとり、比較するしかないでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 04 Feb 2005 17:51:53 +0900
    AA: 佐藤先生
    早速回答頂き、本当にありがとうございます。
    実はいくつかの分子についてはPubMedですでに調べてみたのですが、見つかりませんでした。
    今後の研究を進めるうえで表面プラズモン共鳴センサーを用いるならば自分でデータをとるしかなさそうです。
    もう少し調べてみて検討しようと思います。
    ありがとうございました。

    川住愛子
    -------------------------------------------------------------------------------

    521. 反射を用いた食塩の同定

    Date: Tue, 8 Feb 2005 19:10:14 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    初めまして.N大学の修士1年Yと申します.
    ホームページを拝見し,メールさせて頂きました.
    (大学名、氏名ともに匿名での公開を希望します)
    突然の質問失礼致します.
    私は塩分が付着していると予想されるものに、光を当て、その反射率から 塩分の濃度を計測できないかと考えています。そこで、いろいろな文献やインター ネットでNaClのスペクトル特性を調べましたが、NaClに関しては記載されていません.
    これはNaClには特徴的な波長域(400nm~2500nmで)をもたないからなのでしょうか.
    もし、そうなら理由を教えて頂けないでしょうか.
    稚拙な質問ですが、ご教授のほどお願い致します.
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 8 Feb 2005 20:52:19 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     NaCl(食塩)はご覧の通り無色透明な物質です。紫外の光学吸収端は200nm付近(6.2eV) にあり、赤外吸収は15μm付近から長波長にかけて増大します。200nm-15000nmの広い波長 範囲でNaClはほとんど透過率が一定値をとります。反射率も400-6000nmでほぼ一定値をと ります。従って、400nm~2500nmの範囲ではNaClを特徴づける反射スペクトルの構造はあ りません。反射のピークはポラリトン(格子振動と分極がカップルした固有状態)による 赤外反射のピーク(反射率90%)が53μmに生じます。光反射で塩分を同定するなら、この波 長を使う必要があるでしょう。
     可視域に特徴的な吸収帯を持たない理由ですが、NaClではイオン性が強いため、バンド 間遷移はほとんど塩化物イオンに局在したp電子軌道と、ナトリウムイオンに局在したs電 子軌道の間で生じるため、半導体のような共有結合にもとづく低いバンドギャップに比べ 大きなエネルギーを必要とするため、可視領域で吸収がないのです。
    -------------------------------------------------------------------------------

    522. 光と磁気p.48の質問

    Date: Thu, 10 Feb 2005 02:56:50 +0900
    はじめまして。
    筑波大学大学院数理物質科学研究科の菅野と申します。
    HPにて物性なんでもQ&Aというコーナーがあることを知り、メールさせていただきました。
    佐藤先生のお著しになった「光と磁気」について質問があります。

    p48の(3.81)式の導出についてですが、脚注に書いてある式変形の理解が進みません。
    dr/r = (dr/2r) - ( -dr/2r) ~ ln(1+(dr/2r)) - ln (1-(dr/2r))
    = ln((2r+dr)/(2r-dr))
    という理解でよろしいのでしょうか?
    不躾ではありますがご教授いただけませんでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 10 Feb 2005 12:29:05 +0900
    M菅野君、佐藤勝昭です。
     「光と磁気」をご購読頂きありがとうございます。
    さて、ご質問の件ですが、一般に、xが1より十分小さいとき、
     ln(1+x)~x
    と展開することができます。また、xが1より十分小さいとき、
     (1+x/2)/(1-x/2)~1+x
    と展開出来ます。これらの式を1つにすると
     x~ln{(1+x/2)/(1-x/2)}=ln{(2+x)/(2-x)}
    と近似出来ます。ここでx=Δr/rを代入すると
     Δr/r~ln{(2+Δr/r)/(2-Δr/r)}
    と書けるのです。
    -------------------------------------------------------------------------------

    523. 水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムの熱伝導率

    Date: Thu, 10 Feb 2005 12:52:42 +0900 (JST)
    Q: 佐藤先生、初めまして。
    私は、N社のKと申します(匿名でお願いします)。
    今回、初めてHPを拝見させていただきました。
    早速、ご質問なのですが、水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムの熱伝導度と電気的特性を教えていただきたくメールいたしました。現在、化粧板の開発に携わっており、そこで使用する樹脂の、水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムの配合を変えるという事で物性を調べておりました。なかなか、思うようなデータが見つからず、困っておりました。 
    よろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 11 Feb 2005 16:07:09 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     私は、この手の物質になじみがないのですが、Googleで英文で検索するといろんな情報が手に入ります。
     水酸化アルミニウムそのものの熱伝導率は、
    http://www.ingentaconnect.com/content/maney/prc/1999/00000028/00000002/art00002
    にある論文
    Barta S.1; Bielek J.1; Dieka P.1: Thermal conductivity and limiting oxygen index of basic rubber blend/aluminium hydroxide particulate composite; Plastics, Rubber and Composites, February 1999, vol. 28, no. 2, pp. 62-64(3)
    によると、
    フィラーとしてAl(OH)3の粒子を用い、ゴムに混ぜたときの熱伝導率について詳しく解析されています。
    解析の結果を見るとAl(OH)3の熱伝導率は
    λ=1・506±0・132 [W m-1 K-1]
    と書かれています。
    誘電率は
    http://www.clippercontrols.com/info/dielectric_constants.html
    によれば、
    誘電率ε=2.2
    となっています。
    比抵抗ρは記載がありませんが、絶縁体(ρ>1010Ωcm)であると考えられます。

    一方、CaCO3については、http://www.ima-eu.org/en/ccawhat.html(What is calcium carbonate?)によると
    熱伝導率λ=2.4-3.0 [W m-1 K-1]
    体積比抵抗ρ=1010 [Ωcm]
    誘電率ε=6.1
    と書かれています。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 11 Feb 2005 18:43:12 +0900 (JST) AA: N社のKです。早々にお答えを頂きありがとうございました。私自身もかなり検索したつもりでしたが、英文までは検索していませんでした。そこに情報があるということで、メールに記載されていた具体的な数値を参考に、もう一度読んでみるつもりです。本当にありがとうございました。今後もHPを拝見させていただくと共にまた質問等させていただくかもしれませんがその時はよろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    524. ブリルアン散乱と偏光面の回転

    Date: Thu, 10 Feb 2005 16:07:42 +0900
    Q1: はじめまして。
    私は、X大学修士2年のSと申します。(HP掲載の際、匿名でお願いします。)

    先生のHPを拝見させて頂きました。
    そこで是非、質問したいことがあり、メールを送らせて頂きました。

    私は、Brillouin散乱法という、光散乱を用いた物質内の音波を観測する手法を用いて、物性評価を行っています。
    現在、ZnO多結晶膜中のバルク波(縦波、横波)を測定し、物性評価を行っています。

    そこで、お聞きしたいのです。
    散乱平面に対してH偏光のレーザ光を試料に照射した場合、縦波はH偏光、横波はV偏光の散乱光を散乱させます。
    また、V偏光の入射レーザ光の場合、縦波はV偏光、横波はH偏光の散乱光を散乱させます。
    電磁気学2でこの現象に関する式は発見したのですが、なかなか理解できませんでした。
    この現象の理由について、何かご存じでしたら教えてください。

    最後に、「電磁気学2~連続媒質の電気力学~東京図書株式会社」pp.502,503の式(98.7),(98.11)です。
    今,V偏光で入射させた時、
    縦波: E=(eikR0ω2/4πR0c2)*(iVu0q/2)a2E (98.11)
    横波: E//=(eikR0ω2/4πR0c2)*(ajiV/4)qu0 cos(φ/2)E (98.7)
    添字||と⊥は散乱平面に平行及び垂直なベクトル成分を表わし、散乱面に対して垂直な偏波面をもつ入射レーザ光は、縦波により垂直な偏波面、横波により平行な偏波面に散乱されていることを、表しています。

    本来、担当教授に尋ねるべきですが、私的な事情により担当教授に頼りたくなく、ご質問させて頂きました。
    お忙しいと思いますが、ご回答頂けると幸いです。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 11 Feb 2005 02:07:07 +0900
    A1: S君、佐藤勝昭です。
     君の引用しているLandau Lifshitsの散乱の式はレイリー散乱の一種です。
    一方、ブリルアン散乱は、音波が物質中に定在波を作り、密度の粗密により屈折率の大 小による回折格子ができ、それによって光が散乱されると考えられます。
    http://metwww.epfl.ch/Brillouin/physique_brillouinE.htm
    にわかりやすく解説されています。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 12 Feb 2005 13:00:13 +0900
    Q2: X大学のSです。
    お忙しい中、早々のご返事、本当にありがとうございます。
    正直、こんなに早く返信頂けるとは、思っていませんでした。
    光の散乱に関するHP、非常に分かり易かったです。
    そこで、もう少し質問させて下さい。

    密度の粗密による散乱、おぼろけですが理解できました。
    そこで、入射レーザ光の電界ベクトルの偏波面と縦波による散乱光の電界ベクトルの偏波面との関係、また同様に、入射レーザ光の偏波面と横波による散乱光との関係に関して、もう少し教えて頂けないでしょうか。
    何故、縦波は入射レーザ光の偏波面と同じ偏波面をもつ散乱光を散乱させ、何故、横波は入射レーザ光の偏波面と直角の偏波面をもつ散乱光を散乱させるでしょうか??
    よろしければ、もう少し教えて頂けないでしょうか。
    お願いします。

    あつかましく、もう少し質問させて下さい。
    ・屈折率とバルク波(縦波・横波)の音速値に関して、私は、バルク波の音速値は、人間の手で感じることのできる硬さ、屈折率は光から見た硬さと、単純に考えています。
    しかし、光から見た硬さというのが、どうもシックリきません。
    もし、これに関して、何が意見をお持ちであれば、お聞かせ頂けると非常に幸いです。

    ・ZnOの屈折率の周波数分散(15 [GHz]~45 [GHz])を調べているのですが、ご存じでしたら教えて下さい。

    最後になりましたが、あつかましく幾つも質問させて頂き、本当に申しわけないです。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 12 Feb 2005 20:19:42 +0900
    A2: S君、佐藤勝昭です。
    >(1)何故、縦波は入射レーザ光の偏波面と同じ偏波面をもつ散乱光を散乱さ
    >せ、何故、横波は入射レーザ光の偏波面と直角の偏波面をもつ散乱光を散乱さ
    >せるでしょうか??
     縦波と横波とで、密度の粗密の変化方向が異なることが原因と思われますが、 私は、うまく説明できないので、ブリルアン散乱の専門家である本学電気電子工 学専攻の田中洋介先生に問い合わせています。教えて頂き次第、転送します。少 々お待ち下さい。

    >(2)屈折率は光から見た硬さと、単純に考えています。しかし、光から見た
    >硬さというのが、どうもシックリきません。
     光の屈折現象は、光の速度が物質の中で真空とは異なる値をもつことによりま す。屈折率は、真空中の光速cを物質中の光速c'で割った物理量です。なぜ物質 中で光速が小さくなるのでしょうか? 物質中では光は純粋の電磁波ではなく、 光が物質中に誘起した電気分極の波を引きずりながら進んでいるためと考えられ ます。誘起された分極には、イオン分極や電子分極がありますが、通常の半導体 では、ほとんど電子分極によると考えられます。君のいう「光から見た硬さ」と は、分極の起きやすさを表していると言えるでしょう。

    >(3)ZnOの屈折率の周波数分散(15 [GHz]~45 [GHz])を調べているのです
    >が、ご存じでしたら教えて下さい。
     15 [GHz]~45 [GHz]というとSHFからEHFにわたるマイクロ波の領域なので、光 のような屈折率という概念は使わないようです。この領域では誘電率を使ってい ます。しかし、これまでのZnOのデータはあったとしても、多結晶体(セラミク ス)のデータで、高品質の酸化亜鉛単結晶の誘電率の分散は測定されていないと 思います。高品質の酸化亜鉛の中赤外領域の300-1200 cm-1(9-36 THz)の誘電分 散は赤外エリプソとラマン測定で得られていますから、これより分散式を使って マイクロ波領域の値を推定してください。
    N. Ashkenov, B. N. Mbenkum, C. Bundesmann, V. Riede, M. Lorenz, D. Spemann, E. M. Kaidashev, A. Kasic, M. Schubert, M. Grundmann, G. Wagner, H. Neumann, V. Darakchieva, H. Arwin, B. Monemar: Journal of Applied Physics vol. 93 (2003) pp. 126-133
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 14 Feb 2005 15:22:36 +0900
    A2': S君、佐藤勝昭です。
     電気電子工学専攻の田中洋介先生から下記の回答がありましたのでお伝えします。
    ====================================================================
  • 教科書等の紹介で勉強の指針を、というお電話でしたので、解説論文を紹介いたします。

    R.N.Thurston, "Elastic waves in rods and optical fibers,"
    Journal of Sound and Vibration (1992) vol.159, no. 3, pp. 441-467.

    これは「光ファイバ」内のBrillouin散乱の論文ですが、これを読めば、ご質問の疑問は 解決できると思います。

  • いわゆるBrillouin散乱:縦波音響波によって、音の進行方向に向かって進行する屈折率 の周期的な分布ができ、それがいわば、移動する回折格子のようなはたらきをするので、 入射光の一部が「後方」に散乱されます。(光ファイバ内であれば、完全に反対方向に進 みます。)また、この回折格子は動いているので、散乱光は、ドップラーシフトを受け、 (Brillouin周波数シフトと呼ばれる)音響波の周波数分だけ低い周波数の光が後方に散 乱されます。この過程では、基本的に、偏波は維持されます。

  • 横波音響波によって光が散乱される場合:これは、Guided Acoustic Wave Brillouin Scatteringと呼ばれます。これは、「前方」散乱となります。横波音響波によって、光が 進行する方向に対して、垂直な平面内で屈折率分布が生じます。これにより、複屈折が生 じ、光の偏波面がわずかに変調されることになります。偏波面が回転するということは、 入射光と直交する偏波成分が生じるということになります。ただし、横波音響波による散 乱であれば、必ず偏波面が回転するというわけではありません。例えば、光軸のまわりに 均一な横波音響波が伝搬しているのであれば、複屈折は生じず、したがって、偏波面も回 転しません。(光の位相が変調されるにとどまります。)
    -----------------------------------------------------------------------------
  • Guidede Acoustic Wave Brillouin Scattering についてですが、光ファイバを使った 実験では、GAWBSとして知られていますが、一般的な媒質に対してこの用語が使われて いるかどうかはわかりません。
    GAWBSは微弱な散乱ですが、量子光学の分野で、ファイバを使用した実験をする際に は、雑音となるので、嫌われています。
  • ===========================================================================
    以上参考にして下さい。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Feb 2005 15:07:10 +0900
    X大学修士1年のSです。
    早々のご返事、本当にありがとうございました。

    まだ、論文の方は、読んでないのですが、早急に読ませて頂きます。
    本当に、ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    525. 初透磁率と分子場近似

    Date: 14 Feb 2005 00:17:40 +0900
    Q: H社のの西尾と申します(恐縮ですが弊社名は匿名でお願い致します)。
    HPを楽しく拝見させて頂いております。
     佐藤先生の御意見を伺いたく質問をさせて頂きます。

     直流の磁場Hが印加された状態での透磁率μ(H)、もしくは同じ事ですが帯磁率χ(H)をHの関数として 初等的に計算したいと思っております。この場合Heisenberg Hamiltonianに分子場近似(平均場近似) を行って計算をすることは可能だと思うのですが、この計算結果を実際の実験結果の解釈に使用しても 良いものでしょうか?
     質問の意図は、実際の磁性材料は磁区に分かれており磁壁移動等による磁化が生じていると思われま すが、上記の計算方法には磁区や磁壁移動のような効果が入っているとは思いにくいため、何か根本的 な勘違いをしていないか御教示願いたいということです。近似精度が荒いため定量的な一致が得られる とは期待していないのですが、定性的な内容としても上記の計算は物理的な内容として実際の磁化過程 を反映しないことになるのでしょうか。また上記の計算方法が有意味であることを仮定しての質問とな りますが、通常の初等的な教科書(例えば:近角聰信,強磁性体の物理,裳華房1984,Chap.7)では、磁化 過程を回転磁化と磁壁移動による磁化に分類することが多いようです。この分類に当てはめると上記の 計算は回転磁化による磁化過程に相当すると考えてよろしいでしょうか。

    以上、御忙しいことと思いますが御教示頂けますでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 14 Feb 2005 14:45:36 +0900
    A: 西尾様、佐藤勝昭です。
     分子場近似は、磁区や磁壁を考えない磁性体において、自発磁化がどのように形成され るかを表すための考え方で、物質固有の交換相互作用を使って得られる量です。ここでは 磁気異方性も一切考慮されていません。
     実際の物質では、磁極の形成による静磁エネルギーの上昇を避けるために、磁区に分か れており巨視的な磁化は消滅していますが、初磁化状態で磁場を印加したとき、低磁場では磁壁移動に より巨視的な磁化が誘起されます。このときの初磁化率は、近角先生の強磁性体の物理の 第7章の式(18.31)であらわされます。もっと高い磁場になると、磁化回転が起き、非線 形の磁化曲線となります。磁化容易軸に垂直に磁場が印加されたときのみ、直線的になり、 式(18.77)となります。この本の18-27図にありますように、初磁化率は合金の組成や熱処 理法によっても変わる量で、物質固有の量ではなく素材中の不純物濃度、欠陥濃度、プロ セスに依存するため「技術磁化」と呼ばれています。
     このような巨視的な磁化の様子は、分子場近似の想定外のことです。しかし、ご質問の ように強いて対応を求めるとすれば、回転磁化の場合に相当すると言ってよいでしょうが、 パラメータの意味が物質固有のものと違ってきますから要注意です。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: 15 Feb 2005 00:37:59 +0900
    Q2: H社の西尾です。
    佐藤先生、早速の御回答をありがとうございました。
    丁寧に説明して頂き、誤解していた部分がはっきりと致しました。

    >  分子場近似は、磁区や磁壁を考えない磁性体において、自発磁化がどのように形成され
    > るかを表すための考え方で、物質固有の交換相互作用を使って得られる量です。ここでは
    > 磁気異方性も一切考慮されていません。

     自分の質問の仕方が悪かったかと思いますが、Heisenberg Hamiltonianに異方性の項を付け加えるこ とは簡単ですので、この意味では物質固有の異方性を考慮することが可能であると考えておりました。

     下記の御説明により良く分かりました。結局「初磁化率が物質固有の量ではない」ということが分か っていなかったようです。

     学生時代に直流磁場下での帯磁率χ(H)をHamiltonianから計算し実験と比較した論文をいくつか読ん だような記憶があり、素材中の不純物や格子欠陥が限りなく0に近づき理想的な試料が作製されたとす ると、微視的な計算結果のχ(H)と実験結果が一致するような錯覚を持っておりました。

    >  実際の物質では、磁極の形成による静磁エネルギーの上昇を避けるために、磁区に分か
    > れており巨視的な磁化は消滅していますが、初磁化状態で磁場を印加したとき、低磁場では磁壁移動に
    > より巨視的な磁化が誘起されます。・・・・・
    > 強いて対応を求めるとすれば、回転磁化の場合に相当すると言ってよいでしょうが、
    > パラメータの意味が物質固有のものと違ってきますから要注意です。

     御回答により良く分かったのですが、初磁化率を微視的な立場から計算して求めることは出来ないこ とが分かり、ちょっと残念です。

    以上、丁寧な御回答をありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 15 Feb 2005 01:05:21 +0900
    A2: 西尾様、佐藤勝昭です。
     技術磁化の初磁化率を微視的に計算できないかというとそんなことはありません。
    LLG(Landau-Lifshitz-Gilbert)方程式という時間を含む微分方程式を数値解析で解いて 緩和させることにより、各磁場における磁化やスピン構造を決めることがで きます。(反磁場の計算にずいぶん時間がかかりますが)初磁化率も求めることが可能 です。このとき実験にあわせるにはやはりパラメータが必要ですが磁壁移動も磁化回転 もシミュレートすることができます。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Feb 2005 14:28:58 +0900
    Q3: H社の西尾です。
    佐藤先生、度々の御教示をありがとうございます。

     自分はLLGについてよく勉強しておりませんで、Hamiltonianを出発点としないでも 微視的に計算できることを知りませんでした。
    #微視的な計算=原子レベルでの計算=Hamiltonianを出発点とする計算というふう に思っておりました。

     御回答の文面から佐藤先生もLLGから初磁化率を計算された経験があるように推察 されますが、初学者がLLGを利用して計算を行なう際に参考になる文献を御教え頂け ないでしょうか。
    #自分なりに教科書的なものを探してみた範囲では、「磁性薄膜工学 (1977) 丸善刊」がこの種の計算の過程が詳しく載っている本であると思いました。但し、自 分が計算したいと思っている対象は薄膜ではないのですが、、

    以上、度々の質問となり恐縮ですが御教示頂ければ幸いです。
    --------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Feb 2005 17:03:33 +0900
    A3: 西尾様、佐藤勝昭です。
     LLGは現象論的な式ですが、ミクロとマクロの間(メゾ)くらいの領域では十分有効 な式です。物質固有の量を計算する場合はハミルトニアンから出発するべきでしょうが、 技術磁化のように、形状など構造敏感な量を、計算する手法としては結構利用価値があります。
     初磁化率の計算ではありませんが、サブミクロンサイズの磁性ドットにおけるメゾスコ ピックなスピン構造を決める計算については私どももやっています。
    http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/NanoDot.pdf
    http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/JEMS04_manu_revision.pdf
    などをご参照下さい。
     LLGの計算手法は
    Hubert.R.Schaefer: Magnetic Domains - The Analysis of Magnetic Microstructures-, Springer, New York, 1998.
    に載っています。NISTから無料のソフトがダウンロード出来るそうです。

    --------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Feb 2005 17:19:30 +0900
    AA: H社の西尾です。
    佐藤先生、御連絡をありがとうございました。
     教えて頂いた文献を参考に計算をしてみたいと思います。
    --------------------------------------------------------------------------------------

    526. X線領域での屈折率

    Date: Mon, 14 Feb 2005 13:05:10 +0900
    Q: はじめまして。T大学のZです。
    調べ物をしていたところ佐藤先生のホームページに検索であたり,訪問をさせていただきました。
    文献等でで調べてみてもわかりませんのでご教授ください。

    X線領域での物質の屈折率が1以下になる理由がわかりません。
    数式上でではなく,物理的な観点からの理由が知りたいのです。
    よろしくお願いします。

    追記
    できればイニシャルでの名前の表示もしていただきたくないのですが,よろしいでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 15 Feb 2005 01:29:29 +0900
    A: Z様、佐藤勝昭です。
     物質の光学遷移はVUV領域の価電子プラズマ周波数以下の光子エネルギー(だいたい20 -30eV)で価電子帯から伝導帯への遷移は全部終わって、内殻からのX線吸収が始まるまで は、電磁波の吸収はありません。
     価電子帯→伝導帯の励起は(バンド構造に起因する細かいことを言わなければ)ロー レンツの振動子モデルで近似できます。ローレンツ振動子においては、吸収の曲線はベ ル型のカーブを描くのに対し、屈折率の曲線はSという字を倒して上下をひっくり返した いわゆる分散型のカーブになります。つまり、吸収のピークエネルギーの少し下でピー クをとり、中心では1(他の遷移による分散曲線との重なりにより、実際には1より 大きな値)になり、少し上のエネルギーで極小値をとるカーブです。
     X線の領域では、バンド間吸収のピークより高いエネルギーなので1以下になるのです。
     バネによる振動子の強制振動を考えると、共振点より低い周波数では位相遅れがある が、共振点で位相遅れがなくなり、高い周波数では位相が進みますが、それに対応してい るといってもよいでしょう。位相遅れというのは波の位相速度が遅いことを意味し、位 相進みというのは波の位相速度が速いことを意味します。屈折率は真空の光速と、媒質 中の位相速度の比ですから、共振点以下の周波数では屈折率が1より大きく、共振点以 上では屈折率が1以下になるのです。
     総和則(sum rule)により、スペクトル全体では屈折率(正確には誘電率の実数部)の 凸凹は相殺されるはずです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 15 Feb 2005 11:59:35 +0900
    AA: 佐藤先生
    迅速なお返事ありがとうございました。
    おかげさまで深く理解することができました。
    今後ともよろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------

    527. アモルファスカーボンの評価

    Date: Wed, 16 Feb 2005 19:13:14 +0900
    Q: 佐藤先生, 先生のWeb上のQ&Aを見ての質問です。
    私のカーボンを取り扱っている会社RのIというものです。
    カーボンブラックはアモルファスカーボンということですが、
    アモルファスカーボンは通常の炭素素材の特性に加えて、表面積が大きく、高強度で、耐熱性、 耐食性、耐摩耗性、耐摩耗性、ガス・液体の遮断性に優れているとのことですが、 アモルファスカーボン自体の良し悪し、評価の仕方というのもは存在するのでしょうか?

    アモルファスは網目構造を折り曲げてごちゃごちゃにしたようなもののようですとのことですが、 各カーボンブラックを取り扱っている業者により、特徴があるということは、 アモルファス状態にも特徴があると考えてよいのでしょうか?
    宜しくお願い致します。
    また、匿名で宜しくお願い致します。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Feb 2005 21:16:27 +0900
    A: I様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。業者により特徴があることを知りませんでした。たぶん、 製造条件により、折りたたんだ網目構造のユニットの大きさが違うとか、網目同士の間隔 が違うとか、不純物の入り方(網目と網目のあいだに不純物が挟み込まれることがありま す)が異なるとか、いろいろなバリエーションがあるのではないでしょうか。
     善し悪しというのもどういう構造がよいとは一概にいえなくて、耐食性、耐摩耗性、耐 摩耗性、ガス・液体の遮断性などそれぞれの目的に応じて評価すべきものではないかと存 じます。お答えになっていないかも知れませんが、専門外なのでこの程度でご勘弁下さい。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    528. 材料工学科vs物理工学科

    Date: Sat, 19 Feb 2005 14:50:38 +0900
    Q: 突然のメール、失礼致します、現在T大学に通う一年生のNといいます。
    僕は高校の頃から物質、材料、特にナノスペースでの物性、機能を研究をしたくて、 T大のマテリアル工学科を目指し頑張ってきました。

    しかし、大学に入ってから勉強や、色々調べていく過程で、材料、物質の研究を行っ ている学科はマテリアル工学科に留まらず、物理工学科や応用科学科でもそのようなことをしてい ることがわかってきました。

    調べているさなか、カリキュラムでみるとマテリアル工学科は物理化学に重点を置い ており、量子論などの物質の性質を調べるような基礎科目が不足していますし、 主にプロセス寄りの内容となっている気がしてならないのです。

     今は、カリキュラムから固体物理学や量子論、数学にも不足のない物理工学を目指 そうと考えているのですが、やはり本当にこれでいいのか迷っています。そこで、専 門家である教授に質問のメールをしました。一体マテリアル工学科でいうところの材 料と、物理工学科のような応用物理の範疇の材料(もとい物性)と、応用化学のいう ところ材料、これらはいったいどのような違いがあるのかなど、教えていただけない でしょうか?そして、あまり学部時代のカリキュラムに目を向ける必要はないので しょうか?物質研究のような、基礎と応用が密接に関係した領域となるとどうしても 学部時代、基礎となる物理や数学をやっておかないと後々大変なことになる気がして 心配です。

    HPに公開の件なのですが、もし公開されるときは匿名でお願いします。 身勝手な質問をして申し訳ないと思っています、よろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 19 Feb 2005 20:19:16 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
     あなたの学問に対する純粋で真剣な態度を高く評価します。
    貴学の場合がそうであるかどうかは知りませんが、一般に、材料(マテリアル)工学科 というのは、以前は金属工学とか鉄鋼工学であった学科が、時代に合わせて名称を変更 したところが多いようです。このため、カリキュラム的には、材料のマクロな機械的特 性評価、材料作製プロセス、材料加工技術、応用技術が中心となっています。しかし、 それだけでは、現代の材料工学にマッチできないので、少なくとも研究レベルでは、半 導体工学、さらには光エレクトロニクスやスピンエレクトロニクスまでウィングを広げ て来ています。物性評価や測定技術には、STMや電子顕微鏡など物理学の成果の装置が使 われますが、中身はわからなくても利用できるようになっています。
     一方、物理工学や応用物理学では、基礎的な量子力学に足場をおいて、固体物理学と いう道具を使って、半導体物性、光物性、磁性、超伝導、結晶学などの物性を研究しま す。ともすれば、物理学者は基礎重視、理論重視に陥り、現実の材料や、応用を軽蔑す る傾向があります。しかし、物理学の成果は、その延長として、エレクトロニクスやス ピニクスのさまざまな材料への応用につながっていますので、応用物理学では、基礎を 応用につなげる努力をしています。実際の研究においては、試料作製のためにCVD(気相 化学堆積法)など化学の手法を用いますし、単結晶の作製においては、材料工学の分野 の結晶成長プロセスを用いています。その結果、研究レベルでやっていることは、材料 工学科とあまり変わりません。また、最近では、バイオや有機物も応用物理学の対象に なってきましたので、遺伝子学や有機化学なども、必要に応じ勉強しています。
     私は、もともと、電気工学科出身なので授業では電気機器や回路を主に学習しており ましたから、物理の基礎の学習に飢えていました。それで、大学院修士課程時代に、理 学部物理の講義を受けたり、量子力学、固体物理学、結晶成長学など学部時代に学ばな かったことを書物や論文で友人と輪講したり自習したりしたものです。NHK基礎研究所時 代にも、多くの物理学者達との交流を通じて、固体物理学の研究手法を身につけまし た。
     教養課程で学んだ数学や物理・化学の基礎さえあれば、異分野の勉強はいつだってや ることができます。どの学科に属しているかより、要は自分のモチベーションがしっか りしているかどうかが大切です。基礎さえあればどの分野にも適応することができま す。ただ、数学のように面倒な学問は、学生時代にしかじっくりと勉強できませんか ら、1-2年次のあいだにやや背伸びして、複素関数論、汎関数論、群論などなどを(あ まりわからなくても)一通り学んでおくことをお薦めします。大学の講義で学生に与え ることができるのは、どのような書物をよめばよいかの指針を与えるのみです。若い 方々は、大学で与えられたものに満足せず、可能な限り背伸びして、好奇心をもって異 分野に関心をもたれることをお薦めします。
    ----------------------------------------------------------------------------

    529. 7075アルミニウム合金の焼鈍後の腐食

    Date: Mon, 21 Feb 2005 21:58:11 +0900
    Q: 佐藤先生
    はじめまして
    私は茨城大学工学部機械科の留学生 雲 暁勇です.

    この間,7075アルミニウム合金T6材とO材(T6材を焼鈍したもの)の塩水噴霧腐 食試験を行いました.不明な点があったので、質問させて頂きます.
     同じ試験条件で7075-T6材とO材を2ヶ月ほどで腐食試験をしました.今のとこ ろは試験後の表面外観の観察をしています.しかし,T6材と比べたらO材がかなり 全面腐食の模様を呈しています,孔食も全面に分布して,けっこう深いです.腐食減 量もT6材よりずいぶん多くなってます.なぜ,O材の腐食が激しいか図書館で文献 も調べましたが,なかなか見つかりません.
     
     佐藤先生がお忙しいところと思いますが、教えていただけませんか.
      どうぞよろしくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 22 Feb 2005 01:38:09 +0900
    A: 雲君、佐藤勝昭です。
     私は、物性物理学が専門で、金属工学は専門ではありません。従って、正しいお答え ができるかどうかわかりません。超々ジュラルミンと呼ばれる7075合金は、航空機用に 日本で開発されたAl-Mg-Zn-Cuの合金で,組成は、Znが5,6%、Mgが2,5%、Cuが1,6%、Crが 0,3%ということです。非常に強い合金ですが、Cuを含むため応力腐食割れを起こしやす く、Crなどを加えて耐食性を増しているようです。Crはどういう形で入っているかは、 専門家ではないのでわかりませんが、転移を修飾しているのではないでしょうか。O材を 作るための焼鈍処理がどのようなものかわかりませんが、添加したCrが焼鈍処理によっ て転移に沿って動き粒界に偏析するなどしたため耐食性を失った可能性があります。孔 食があることがこの推論を支持しているように思えます。
     私は、あくまで物性的見地から解釈したので、金属工学では違った見方があるかも知 れません。やはり、あなたの指導教員によく相談されては如何でしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------------

    530. ガラス転移温度の低い高分子

    Date: Thu, 17 Feb 2005 21:35:04 -0500
    Q: はじめましてD社のSと申します。HPを見て質問させてい ただきたくメールいたしました。

    シリコーンを扱っていて、”耐寒性に優れている”などと皆さんおっしゃいますが、 材料のガラス転移という観点から見た場合に何か他にも面白い材料があるのでは?と 暇なときには調べておりました。そこで質問なのですが、世のなかで一番ガラス転移 が低いと思われる高分子材料は何なのでしょうか?極低温域でゴムライクな物性を保 つ材料としてシリコーン以上に優れているものは何かあるのでしょうか?

    Webで調べて本をよんで簡単に答えが出そうで、なかなか真実がわかりません。どう か教えていただけますでしょうか?

    *WebにUpするときは匿名でお願いできますでしょうか?
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 23 Feb 2005 10:51:58 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     有機化学の専門家に聞きましたところ、やはりポリシロキサンが最も低いガラス転移温 度を示します。
    Poly(oxydimethylsilylene) Tg =129-150 K
    ということでした。
    -------------------------------------------------------------------------------

    531. 高温におけるシリコンの比抵抗

    Date: Tue, 22 Feb 2005 13:24:56 +0900
    Q: 東京農工大/佐藤先生
    お世話になります。
    M社のSと申します。

    産総研/技術相談口へ相談しました所、佐藤先生のことを伺い、ぜひ先生にご教授頂きたくmail 致します。
    弊社は太陽電池用単結晶シリコンウエハの製造を長年行ってまいりましたが、今回原料のポリシリコン の製造事業を行うこととなりました。
    大変初歩的なこととなってしまうのですが、下記の内容に関して出来うる限り知識を得たいと思います。

    1.高純度シリコンの比抵抗
    常温では10^5Ω㎝と記憶しています。
    1100℃の場合の比抵抗はいくつでしょうか。
    温度と比抵抗の関係は何か公式は存在するのでしょうか。
    温度に対しての比抵抗のグラフ等の資料はあるのでしょうか。

    2.シリコンに電気を通電させ電力にて温度(表面)を1100℃に
     保つのに、どの位の電力が必要なのでしょうか。
    こちらで把握していることでは表面負荷密度は
    4W/㎝^2 とあるのですが、正しいでしょうか。
    装置はシリコン棒を炉内に設置し、容器は密閉し電気を流す構造です。

    大変お忙しいと存じますが宜しくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 22 Feb 2005 20:20:51 +0900
    A: 佐藤勝昭です。
    1.シリコンの1100℃における抵抗値
    高温になると、不純物準位から供給されるキャリアは飽和し、バンド間励起によるキャリ ア密度の変化が支配的になります。従って、真性半導体として考えてよいのです。
     一般に真性半導体のキャリア密度の温度変化は植村・菊池「半導体の理論と応用(上)」 の(2.4-74)式にありますように
    ne=nh=(me mh/m^2)^(3/4)N0(T) exp(-Eg/2kT)
    で表すことができます。me, mhは電子及びホールの有効質量、N0(T)は
     N0(T)=2×(2πmkT/h^2)^(3/2)=4.831×10^15×T^(3/2) [cm^-3]
    比抵抗はρ=1/(neμe+nhμh)と表されるのですが、μe、μhは温度に対してT^-3/2で減少 するのでN0(T)のT^(3/2)と相殺して、ρの温度変化は結局exp(Eg/2kT)の因子で記述出来 ます。
     ρ(1100℃)/ρ(室温)=ρ(1373K)/ρ(300K)=exp(Eg/2k1373-Eg/2k300)=exp((1.1/(2*0. 118)-1.1/(2*0.026))=exp(-16.5)=6.8*10^-8となります。
    従って、室温で10^5Ωcmなら1100℃では6.8×10^-3Ωcmと推定されます。

    2.通電による温度上昇
    通電して発熱する量は計算出来ますが、熱がどのように逃げるかを推定できないと、何度 になるかを計算出来ません。4W/cm^2というのはあくまである条件下での測定結果でしょ う。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 4 Mar 2005 17:01:04 +0900
    Q2: 東京農工大/佐藤先生
    お世話になります。
    M社のSです。
    シリコン比抵抗の件ではご教授ありがとうございます。
    本件にて色々調べた結果下記のような数値もあるのですが 数値の違いはなぜでるのでしょうか。
    常温で10^5Ω㎝は社内での計測値ではなく、文献で調べたものです。

    >1.高純度シリコンの比抵抗
    > 常温では10^5Ω㎝と記憶しています。
    ⇒比抵抗が常温で10^5Ω㎝はアービンカーブよりほとんどドープなしつまりintrinsicです
    > 1100℃の場合の比抵抗はいくつでしょうか。
    ⇒1100℃では、intrinsic領域なので電子濃度は1.0e19[cm-3]である。
    また、Mobilityは50[cm2/Vsec]これは、mu=A*T^(3/2)で決定する。
    よって比抵抗はオームの法則より1.25e-2Ω㎝となる。
    0.0125Ω㎝
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 05 Mar 2005 00:19:18 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。
     確かに、室温の抵抗値を基準にexp(Eg/2kT)で説明するお答えはやや正確さを 欠いていましたね。
    真性半導体とすると、室温でのキャリア密度は
    ne=nh=(me mh/m^2)^(3/4) × 2×(2πmkT/h^2)^(3/2) exp(-Eg/kT)
    =1.384×10^15 × T^(3/2) × exp(-6377/T)
    室温のキャリア密度はne=nh=1.384×10^15 × 298^(3/2) ×
    exp(-6377/298)=3.606×10^9 cm^-3
    室温の移動度はμe=1400cm^2/Vs, μh=450cm^2/Vsを入れると
    室温の導電率はσ=ne(μe+μh)e=1.083×10^-6 Ω^-1cm^-1
    従って室温の真性抵抗率はρ=9.23×10^5 Ωcmとなります。
    従って、室温での10^5Ωcmという抵抗値は不純物によるものです。前の計算はこ の不純物による抵抗を基準にしたので、抵抗が小さく出たのです。
    ===============================
    今度は、1100℃=1373Kにおける真性導電率を求めましょう。
    キャリア密度は(Egが変化しないとして)
    ne=nh=1.384×10^15 ×1373^1.5 ×exp(-6377/1373)=6.77×10^17cm^-3
    1373Kにおける移動度はT^-3/2の依存性を仮定して、
    室温の値の0.1011倍となりますから、μe=141.6cm^2/Vs, μh=45.5cm^2/Vs
    従って1373Kにおける導電率は
    σ=6.77×10^17×187.1×1.6×10^-19=20.26Ω^-1cm^-1
    抵抗率はρ=0.0493Ωcm
    ================================
    1373Kにおけるバンドギャップが0.9eVになったとしたら、
    上式のexp(-6377/1373)はexp(-5217/1373)に変化するので、
    1.384×10^15 ×50875 ×2.24×10^-2=1.58×10^18cm^-3
    σ=1.58×10^18×187.1×1.6×10^-19=47.3Ω^-1cm^-1
    抵抗率はρ=0.021Ωcm
    となり、齋藤さんの引用された抵抗値に近くなります。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 10 Mar 2005 13:09:28 +0900 Q: 東京農工大/佐藤先生
    お世話になります。
    M社のSです。
    度々お伺いし申し訳ありません。
    600℃の場合はどうなるでしょうか。
    お手数ですが宜しくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 10 Mar 2005 23:45:53 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     600℃は873K です。式にT=873をいれて計算してください。
    ne=nh=1.384×10^15 ×873^1.5 ×exp(-6377/873)=2.40×10^16cm^-3
    873Kにおける移動度はT^-3/2の依存性を仮定して、
    μ(873)=μ(298)×(873/298)^(-3/2)=μ(298)×0.199
    室温の値の0.199倍となりますから、μe=278.6cm^2/Vs, μh=89.6cm^2/Vs
    従って1373Kにおける導電率は
    σ=2.4×10^16×368.2×1.6×10^-19=1.41Ω^-1cm^-1
    抵抗率はρ=0.707Ωcm
    ---------------------------------------------------------------------------

    532. αスズの屈折率スペクトル

    Date: Wed, 23 Feb 2005 14:08:01 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭 様
    N社のSと申します。
    以前、「金属の誘電率のシミュレーション」という質問をさせていただいた者です。
    その節はご回答いただきありがとうございました。
    Drude-Lorentzの式を使ったフィッティングはかなり上手くいっています。
    今回、お聞きしたいのはスズ(Sn)の可視光帯域の屈折率データです。
    私の持っている参考書(Palikの"Handbook of Optical Constant of Solids")では ちょうど354~930nmの帯域のデータが抜け落ちてしまっているようです。
    Drude-Lorentzの式で外挿するという方法もあるかと思いますが、精度がかなり落ちると思われます。
    もし、データをご存知でしたら教えて頂けないでしょうか?
    何卒よろしくお願い申し上げます。
    ※社名、名前は匿名でお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 23 Feb 2005 21:01:37 +0900
    A:S様、佐藤勝昭です。
     αスズの1-4eVの反射スペクトルは、Cardona, Greenway: Phys. Rev. 125(1962)1291 のFig1に載っています。反射率の縦軸がarbitrary unitsになっています。
    従って、Palikに載っているデータを使って、350nm付近の値で反射率を校正し、それを Kramers-Kronig変換すれば、なんとか求まるのではないかと思います。
     私は時間がないので、ご自分でおやりになってはいかがでしょうか。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 1 Mar 2005 10:28:37 +0900
    Q: 東京農工大学, 佐藤勝昭 様

    >> ご丁寧に論文を紹介していただきありがとうございます。

    >> ご返答いただいてスズは構造がα、βと2つあることを知りました。
    >> βスズの反射スペクトルもしくは屈折率などが載っている論文はあるのでしょうか?
    >> また、αタリウム(Tl)のデータも探しています。

    >> お忙しいところ申し訳ありませんが、ご存知でしたらお教え頂けないでしょうか。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wednesday, March 02, 2005 8:02 PM
    A: S様、佐藤勝昭です。
     残念ながら、βスズのデータは手元にありません。
    またタリウムのデータは、蒸着フィルムの極紫外のデータがあるのみです。
    可視のデータの報告はありません。
    T.M.Jelinek et al.: J.Opt.Soc.Amer. vol.56, p.185 (1966)
    抜粋すると、
    λ(nm)nk
    1001.200.28
    1200.590.55
    1400.480.96
    1600.611.28
    1800.731.49
    2000.841.70
    2200.911.90
    2401.032.11
    2601.192.40
    2801.352.70
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 3 Mar 2005 09:35:10 +0900
    AA: ありがとうございます。
    タリウムのデータを参考にさせて頂きます。
    ----------------------------------------------------------------------------

    533. 真空の導電率

    Date: Fri, 25 Feb 2005 19:51:48 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭殿
    突然のメールで失礼いたします。
    私は、ダイキン工業でインバータの設計をしている池田と申します。
    私は、インバータのノイズについて今調べており、このHPを拝見させてもらいました。
    以前、Q&Aのコーナーで真空状態の導電率について、定まった説があるわけではない。と書かれていたのですが、 だいたいの値の目安という値はないのでしょうか。
    また、空気の導電率の値はいくらなのでしょうか?
    インバータのノイズの原因を探している為、このようなメールをさせて頂きました。
    お忙しいとは思いますが、よろしければ御回答をよろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Feb 2005 23:39:39 +0900
    A: 池田様、佐藤勝昭です。
     完全な真空では導電率は無限大です。しかし、実際の系では残留気体の蒸気圧 は有限の値をとります。
     気体の蒸気圧が10^-3Torr台以上で高い電圧をかけるとグロー放電がおき、電 流が流れます。どのくらいの電流が流れるかは、気体の種類、真空度、電圧に依 存します。従って、「真空の導電率」なるものを定義することができないので す。さらに放電開始時には、高い電圧を必要としますが、開始後は電圧が低下 し、電流値も安定します。従って、開始時と定常時では導電率が異なります。
     蛍光灯の管球では真空(低い蒸気圧の気体の存在する状態)中の気体放電を用 いています。20Wの蛍光灯では定常状態では100Vの電圧印加に対し0.2Aの電流が 流れるので、抵抗値は500Ωと見ることができるでしょう。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Feb 2005 09:18:15 +0900
    AA: 東京農工大学 佐藤勝昭殿

    ダイキン工業の池田です。

    お返事ありがとうございました。
    あまりにも早いメールの返事にびっくりしています。
    実は私は新入社員で、電磁気学だけでなく先生の仕事の姿勢も学ばせてもらいました。
    これかもこのホームページを楽しく拝見させて頂きます。
    ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    534. シリコンの熱処理

    Date: Sun, 27 Feb 2005 01:20:18 +0900
    Q: 佐藤教授殿
    メーカーM社 山田と申します。
    貴HPを拝見し、是非お教え願いたいことがあり、メールさせていただきました。 (半年前に二度、質問させていただいたことがあります。)
    すごく基本的なことで大変申し訳無いのですが、いまいちピンとこないので是非教え ていただきたいです。
    シリコン基板の熱処理についてですが、LSIの製造工程においては必ず何回かの熱 処理というものがあって、電気炉、ランプ加熱装置、エキシマレーザー装置などがそれに 用いられていると思います。
    ここで、このシリコン基板をあっためるということに関してですが、例えば
    ・KrFエキシマレーザーなどの紫外光レーザー装置を用いた熱処理というのは、結 晶Siがバンド間の遷移吸収に基づいて光を吸収するために温まるということ。
    ・電気炉(赤外線)での加熱は、自由電子による吸収。
    という感じなのでしょうか?
    また、
    ・ランプ加熱処理(おそらく急速ランプ加熱とかいう手法)はどんなことになってい るのでしょうか?
    お忙しいところ申し訳ありませんが、御返答のほうを何卒宜しくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 27 Feb 2005 22:39:58 +0900
    A: 山田様、佐藤勝昭です。
     電気炉加熱では、昇温・降温過程に要する時間がかかるので、拡散が起きたり、 これに対し、光学的な加熱によれば、短時間でかなりの高温にすること、および、急速 に冷却することができます。
    ランプ加熱の場合、光のエネルギー分布の大部分は赤外部にあります。シリコンは赤外 線を吸収して格子振動を直接励起します。シリコンは赤外線の吸収が弱いので、表面だ けでなくバルク全体も加熱されると考えられます。
    一方、エキシマーレーザなど吸収端より高いエネルギーの光の場合、強いバンド間遷移 による吸収が表面部分でのみで起き、内部には光が達しないので表面部分のみを急速に 加熱できると考えられます。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 1 Mar 2005 00:22:42 +0900
    Q2: 佐藤先生
    山田です。
    早速の御返答ありがとうございます。
    シリコンだとバンドギャップが1.1eVで吸収端の波長は赤外の1μmくらいのところ になって、これより短波長は吸収される、
    ということがKrFの時に起きていということですよね?
    それで、ランプ加熱の場合は主に赤外域にいろんな波長があって、ほとんどシリコン を透過してしまい、わずかに吸収されたものが 格子振動を起こして、基板が全体的に温まるということでしょうか???
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 3 Mar 2005 01:37:56 +0900
    A2: 山田様、佐藤勝昭です。
     シリコンの吸収端付近の赤外波長に対する吸収は間接遷移のため弱いので10-3cm= 10μm程度浸入します。この間吸収した光のエネルギーは、格子振動に転換されます。ま た、10μm~20μmにかけてはα=10cm-1程度の弱い赤外吸収があり格子振動を誘起しま す。あなたのご理解のように1mm程度の厚みなら70%くらい吸収し30%くらい透過します。 この吸収は格子振動を直接励起し、熱を発生します。
     一方、短波長の領域ではバンド間直接遷移が起きているため吸収強度が強く,KrFの波 長では吸収係数はα=106cm-1に達しますから表面から10-6cm=10nm程度しか浸入でき ないのです。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    535. 黒クロムの反射率

    Date: Fri, 11 Mar 2005 12:08:51 +0900
    Q: 東京農工大学 
     佐藤 勝昭 様
    お世話になります。
    ㈱O社のMと申します。
    貴HPの「なんでもQ&A」を拝見しまして、表記の件について御教授いただけないかと 思いご連絡を致しました。
    現在、弊社では分光器内に設置するモジュールの開発を行っており、その外観に黒クロム メッキを 施すことを検討しております。そこでこのクロムメッキの測定系への影響を考慮する 必要があり 波長300nm~2100nmでの反射吸収特性について資料等があれば御教授願います。
    大変お忙しい中申し訳ありませんが、ご検討の程宜しくお願いいたします。
    なお、失礼ですがwebには匿名にて公開頂きますよう宜しくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 13 Mar 2005 18:35:33 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     黒クロムというのはメッキや陽極酸化で作製した酸化クロムの被膜です。
    1-2μmの厚みの膜の場合、3-4%の反射率であると報告されています。
    詳しくは
    S W Hogg et al
    The unusual and useful optical properties of electrodeposited chrome-black films
    J. Phys. D: Appl. Phys. (1977) No.10, pp.1863-1869
    を取り寄せて、お読み下さい。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 14 Mar 2005 09:04:03 +0900
    AA:東京農工大学
     佐藤 勝昭 様

    お世話になっております。
    O社のMです。
    御回答頂きありがとうございました。
    早速取り寄せて調べてみます。
    ------------------------------------------------------------------

    536. 1000℃におけるシリコンの物性値

    Date: Fri, 11 Mar 2005 14:34:29 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭殿

    HPを拝見させて頂き初めて御質問させて頂きます。私、日清紡績(株)の竹崎 和久
    と申します。

    弊社は半導体用のシリコン製品の製造販売を行っていますが、御客様から下記の様な
    質問を受けました。

    現在、N型のシリコン(低効率:50Ω・cm)を加工してシリコンサセプターとして納め
    ております。その御客様から、
    ①1000℃での導電率
    ②1000℃での熱膨張率
    ③放熱性
    について、質問が御座いました。

    お忙しいと思いますが、簡単で結構ですので御教え願えればと思います。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 13 Mar 2005 17:59:51 +0900
    A: 竹崎様、佐藤勝昭です。
    > ①1000℃での導電率
    抵抗率50ΩcmのN型シリコンですが、温度を上げた場合、不純物準位から伝導帯
    へ熱的に励起されるキャリア密度は飽和して「出払い領域」となります。さらに
    温度を上げると、価電子帯から伝導帯への励起が起き「真性領域」に入ります。
    真性領域のシリコンの場合、T=1273K(1000℃)でのキャリア密度は
    ne=nh=(me mh/m^2)^(3/4) × 2×(2πmkT/h^2)^(3/2) exp(-Eg/kT)
    =1.384×10^15 × T^(3/2) × exp(-6377/T)
    =1.384×10^15 × 1273^(3/2) × exp(-6377/1273)=4.196×10^17cm^-3
    室温の移動度はμe=1400cm^2/Vs, μh=450cm^2/Vsなので1000℃では
    μe(1273K)+μh(1273K)=1850×(1273/298)^-3/2=209.5cm^2/Vs
    1000℃の導電率は
    σ=ne(μe+μh)e=4.196×10^17×209.5×1.6×10^-19=14.06Ω^-1cm^-1
    従って1000℃の真性抵抗率はρ=1/σ=0.071Ωcmとなります。
    > ②1000℃での熱膨張率
    シリコンの熱膨張係数はhttp://www.virginiasemi.com/pdf/Basic%20Mechanical%20and%20Thermal%20Properties%20of%20Silicon.pdfによれば、
    T=1200K α=4.384×10^-6 K^-1
    T=1300K α=4.442×10^-6 K^-1
    直線的に補完して
    T=1273Kではα=4.426×10^-6 K^-1
    > ③放熱性
    http://mail.mems-exchange.org/pipermail/mems-talk/1996-June/000579.html
    によれば、
    1200 0.60
    1300 0.57
    なので、0.578(波長=0.65μm)です。
    ----------------------------------------------------------------------

    537. 表皮効果のシミュレーション

    Date: Mon, 7 Mar 2005 13:08:51 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    はじめまして、P社のSと申します。 HPのなんでもQ&Aを見て メールさせて頂きました。
    スイッチング回路に用いる空芯コイルの損失をシミュレーションにより求めること ができないか検討していますが、表皮効果のモデリングでつまづいています。
    導体の抵抗値は表皮の深さの式から、周波数の平方根に比例すると思われます。
    実際、インピーダンスアナライザーで測定すると、ほぼそのようになっています。
    周波数が高くなるにつれて抵抗値が増えるということは、この抵抗値が周波数応答を 持つということだと思っていますが、そうすると、抵抗を流れる電流と両端電圧と に位相差があるという不思議な話になります。
    このことはどのように理解したらよいのでしょうか? また、モデル化について アドバイスを頂ければありがたく思います。
    無い頭で考えて、ラプラス因子を用いてモデル化を試みたところ、AC特性は FITできるのですが、過渡解析では周波数応答のため瞬時電力が負になったりして、 どうしてよいかわからなくなりましたので宜しくお願いします。
    (社名と名前は匿名でお願いします。)
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 15 Mar 2005 00:46:37 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
    御返事が遅くなりました。本学電気電子工学科の鈴木泰夫教授(通信システム工学)にお伺いしましたところ、
    「表皮深さに基づく表面インピーダンスは一般にインダクタンス成分を持ち、次式で表されます。
    Z=(1+j)(ωμ/2σ)1/2
    上式を用いて計算されては如何でしょうか?」
    とのことです。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Mar 2005 15:59:37 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    P社のSです。
    ご回答を頂きありがとうございました。 少し考えて見たいと思います。
    -------------------------------------------------------------------------

    538. 冷陰極蛍光管の暗黒効果

    Date: Tue, 15 Mar 2005 18:41:02 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤勝昭様
    はじめまして 私は、T社の鈴木と申します。
    毎日、物性なんでもQ&Aを拝見させて頂いております。
    貴方様の懇切丁寧な回答には何時も感銘を受けております。

    弊社は細型の冷陰極蛍光管(液晶のバックライト用等)を製造しております。
    ご存知の通り、冷陰極蛍光管には暗黒効果と言う問題がありまして、冷陰極蛍光管を 暗黒状態で放電させずに放置しておきますと、放電遅れ、放電しないと等の現象がでます。
    これはバックライトユニット等の様な閉鎖された場所で使用されますと問題となるこ とがあります。
    この対策としまして以前は、β線を放出するRIをランプの中のNi素材のサポート 等にメッキし対策をしておりました。
    ところがご存知のようにRIを一般民生用の機器には使用できなくなりまして、代替 品を探しております。
    いろいろ探しては見たのですが有効な物を見つけることができません。
    RI物質以外でこのような物質は有るのでしょうか。
    又この様な物質を使用する方法以外でいい方法はあるのでしょうか。
    私の浅い知識では思い浮かびません。

    お忙しいとは存じますがご教授頂けたら幸いです。
    以上宜しくお願いいたします。
    尚会社名は匿名でお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 15 Mar 2005 20:51:06 +0900
    A:S様、佐藤勝昭です。
     冷陰極蛍光管に暗黒効果という問題があることを初めて知りました。調べてみると Pm147を冷陰極に埋め込んだ管球もあったようですが、現在ではアルカリ金属化合物を電 極に使うなどして1次電子密度を高める工夫をしているようです。閉鎖しなければ光によ ってイオン化した1次電子が使えるのであれば、点灯時に電極付近に光を当ててやればよ いので、LEDを点灯して1次電子を発生させることはいかがでしょうか。最近では値段の 安いLEDもあるので、コスト的に無理とは言えないと思うのですが。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Mar 2005 11:19:28 +0900
    Q2: 東京農工大 佐藤勝昭様

    T社のSです。

    お忙しいところ早速のご回答有難うございました。
    LEDを点灯する、電極付近に光を当てるなどの対策は各セットメーカーで実践して いるようです。
    今回はランプ自身の構造、材料で解決したいと考え質問させていただきました。
    アルカリ金属化合物を電極に塗布する方法は私どもも試しましたが、暗黒効果を解消 するには今一つ確実性がありません。
    一次電子を出す物質はRI以外にはやはりないのでしょうか。
    放電管と言う専門外で誠に申し訳ありませんが宜しくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Mar 2005 18:52:15 +0900
    A2:S様、佐藤勝昭です。
     専門外なので、的確なお答えができず申し訳ありません。
    効率の高い電子放出源としては、カーボンナノチューブ(CNT)、ポーラスシリコン(PS)な どが知られています。CNTはノリタケ伊勢電子さんあたりでは、やっておられるのではな いかと思いますが、実現にはかなりのノウハウの蓄積が必要かも知れません。PSについて は、本学の越田先生が特許を持っておられますので、共同研究をされるとよいかも知れま せん。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 17 Mar 2005 08:29:52 +0900
    AA: 東京農工大
    佐藤勝昭 様
    T㈱Sです。

    ご回答有難うございました。
    共同研究の件は私一存ではできませんので社内で検討してみます。
    専門外のことにもかかわらずご回答くださいまして誠に有難うございました。
    今後もわからないことがありましたらご質問させていただきます。
    その時は宜しくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------

    539. 薄膜の誘電率

    Date: 2005/03/17 7:21
    佐藤勝昭 様
    はじめまして、突然のメールで失礼します。O大学M1のDと申します。
    (匿名でお願いします。)
    メールを読んで頂きありがとうございます。
    つい最近先生のHPを見つけ、それ以来先生のファンになってしまいました。
    薄膜の誘電率でわからないことがあり、もしよろしければ教えていただきたくメールしました。
    バルクでは大きな誘電率をもつのに、薄膜にすると誘電率が大きく減少する現象がよく見られます。
    この現象は、どう理解したらよいのでしょうか?
    サイズ効果と教えられたのですが、それにより分極の電場に対する反応が 変化するようにはどうしても思えないのです。
    お忙しいところ申し訳ありません。
    もしお時間のあるときにでも返信いただければ幸いです。
    これからも先生のHP楽しみにしております。
    よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Data: 2005/03/17 23:44
    A: D様、佐藤勝昭です。
     一般に、物質の表面はバルクに比べ、性質が良くありません。酸化したり、欠陥が あったりします。表面層は数nmから数十nmにおよびます。例えば厚み1cmのバルク結晶に おいて10nmの表面層は無視できますが、100nmの薄膜においては表裏計20nmの表面層は 20%にもおよびます。これをサイズ効果といっているのでしょう。
     もう一つ考えられるのが、薄膜のモルフォロジーです。多くの薄膜をミクロに見る と、小さなグレーン(結晶粒)から構成されていることがわかります。その結果、バル クに比べ密度が低く、誘電率も低くなるのです。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: 2005/03/18 3:56
    AA: 佐藤勝昭 様
    O大学のDです。
    非常に迅速な返信ありがとうございます。
    誘電体でもグレーンの影響が大きく効いてくるのですね。
    グレーンの影響について詳細に書かれたものを見つけられず、 そういった効果はあまり考えてませんでした。
    粒径と誘電率との相関が定量的に扱えるとおもしろそうですね。
    (ただドメインの大きさも考慮する必要がありそうですが。)
    もしよろしければ、また質問させてください。
    本当にありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 18 Mar 2005 20:20:31 +0900
    A2: D君、佐藤勝昭です。
     誘電体が結晶粒と空気から構成されていると、誘電率は両者を平均した実効誘電率で取 り扱うことができます。光学薄膜では、密度と屈折率(電子分極による誘電率の平方根) の関係が論じられていますし、ポーラスシリコン(PS)ではポロシティを変えて、誘電率 (従って屈折率)を変えることができるので、本学の越田先生は、陽極酸化の電流制御で ポロシティを制御して屈折率を制御し、導波路や光共振器を作成しておられます。
    T. Nakagawa, H. Sugiyama and N. Koshida:
    "Fabrication of Periodic Si Nanostructure by Controlled Anodization"
    Jpn. J. Appl. Phys. 37(Part 1, No. 12B) (1998) 7186-7189.
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 18 Mar 2005 22:35:10 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    適切なご指導、ありがとうございます。
    私の勉強不足でした。
    結晶粒と空気から構成されているときのモデルとしては、 先生の著書「応用物性」p.168のモデルが適用できそうですね。

    自身の分野にとらわれて、 広い知識を得ようとしていなかったのは 自分の能力不足です。

    先生のように広い視野と好奇心をもつように心がけます。
    そういった勉強・成長をするには学生というのは 最良のときなのだと近頃感じています。

    為になるご指摘、ありがとうございました。
    ----------------------------------------------------------------------------

    540. ニオブ酸リチウムの物性値

    Date: Wed, 16 Mar 2005 22:52:14 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭殿

    はじめまして。HPを見た者です。すみませんが、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)の特性 で、下記の件について調べております。もしおわかりになりましたら,お知らせくだ さい。

    ニオブ酸リチウムのヌープ硬さ、ヤング率

    以上よろしくお願いいたします。アップされる場合には匿名を希望いたします。

    F社 S
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 17 Mar 2005 01:03:38 +0900
    A: 酒井様、佐藤勝昭です。
    http://www.impex-hightech.de/NLO-LT.htmlによると、
    Knoop hardness HK=5.5です。

    http://www.coretech.com.cn/LINBO3.HTMによると
    弾性率は c11=2.03×1011 [Pa]
         c13=0.75×1011 [Pa]
    ポワソン比σ=0.36
    理科年表によれば、ヤング率Eは
    E=3c11(1-2σ)=3×2.03×1011×(1-2×0.36)=3×2.03×0.28×1011=1.71×1011[Pa]
    と見積もることができます。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 20 Mar 2005 21:49:59 +0900
    AA:東京農工大学 佐藤勝昭殿
    早速のご返答ありがとうございました。とても参考になりました。
    また何かありましたら、よろしくお願いいたします。
    F社S
    ---------------------------------------------------------------------------

    541. 高圧ガス配管の伸び

    Date: Thu, 24 Mar 2005 15:44:40 +0900
    Q: 佐藤先生
    初めてのメールになります。
    Q&Aのサイトを拝見し質問させていただいております。
    私はJ株式会社のOと申します。
    (匿名にして頂けると助かります)
    さて質問ですが、ステンレス製(SUS316)の配管に高圧(100MPa)がか かったとき配管の径方向への伸びを計算したいのですが、どのようにし たら良いかご教授下さい。
    内径と外径の比無視できない外周部分の表面張力と圧力の関係から求め て良い物か良く分かりません。
    弊社ではHPLCを扱っており、カラムの内径の圧力による膨張を見積もる事が目的です。
    I.D. = 2mm, O.D. = 3mm ほどを想定しています。
    お忙しい折とは存じますが宜しくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Mar 2005 20:48:54 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     パイプの内径の伸びを考えるのは簡単そうで結構面倒ですね。よくわかりません。
    ただ、内径2mm、肉厚0.5mmのステンレス配管に1000気圧もかけたら、破裂するのではない かと思います。
    高圧ガス保安協会の提案事項
    http://www.khk.or.jp/committee/hpg-comm/shousai2.PDF
    に、
    内径Di=Do-2tに対する外径Doの比が1.5以下であるとき、
    Do/(Do-2t)≦1.5に
    肉厚算定式
    t=P Do/(2ση+0.8P)
    を代入することで前項で述べた条件式( P≦0.385ση)が得られる。
    と書かれています。
    ここに、
    t:配管又は導管の最小厚さ(単位mm)
    Do:配管又は導管の外径(単位mm)
    P:設計圧力(配管又は導管を使用することができる最高の圧力として設計され た圧力をいう。) (単位MPa)
    σ:特定則第14条に規定する材料の許容引張応力(第二種特定設備に係る材料の 許容引張応力を除く。) (単位N/mm)
    η:特定則第19条に規定する溶接効率(第二種特定設備に係る溶接効率を除く)
    ただし、電気抵抗溶接管等で許容引張応力の値にあらかじめ溶接効率が乗 じられているものは、1とする。
    です。
    SUS316 では σ=130 [N/mm^2]
    η=1とするとP≦0.385×130×1=50MPa
    従って  50MPa以下で使わなければなりません。
    また肉厚はt=100×3/(2×130+0.8×100)=300/340=0.88mm必要です。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Mar 2005 09:10:17 +0900
    Q2: 佐藤先生、Oです。
    ご回答拝見させて頂きました。
    ご丁寧なお答えありがとうございました。
    伸びはともかく材質の再検討が必要になるとのご指摘参考になります。
    径の伸びは自力でもう少し調べるか、シミュレータに掛けられるかなど検討してみます。
    また何かありましたら宜しくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Mar 2005 11:08:53 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     本学物理システム専攻で力学を教えている教員に伺いましたところ、
    径の伸びは、つぎのようにして算出出来るとのことです。ご参考まで
    ----------------------------------------------------------------
    (1)伸びによる弾性エネルギーの増加=弾性定数x(2πxΔR)2
     というように、ΔRの2乗で増加する。
    (2)膨張によるエネルギーの減少:圧力xπx{(R+ΔR)2-R2)
    というようにΔRの1乗で減少する。
    (1)と(2)の足し合わせで、minimumを見つける。
    --------------------------------------------------------------------------------

    542. ドープされたシリコンの赤外吸収

    Date: Fri, 25 Mar 2005 15:57:46 +0900
    Q: 東京農工大学、大学院工学教育院物理システム工学専攻
    佐藤 勝昭 教授殿
     H社のKと申します。
    物性何でもQ&Aを見てまことに不躾ながら質問させて頂きます。
    411番の質問に対し、先生は
    「例えば 6×10^18cm^-3の濃度のn型シリコンの1900cm-1に おける吸収係数は2×10^ 2cm^-1」
    との回答をしておられます。
     小職の不勉強を棚に置いて誠に勝手な質問では御座いますが、 Siなどの半導体の光学特性、特に消衰係数(k)若しくは 吸収係数(α)の赤外領域でのドーピング濃度依存性に 関する文献が御座いましたら、是非お教え願えませんでしょうか。
    小職は、Phys. Rev. lett. vol.46(1981) p. 1414: G. E. Jellisonらの 報告しか存じ上げず、当該文献は1.5 eVから短波長領域(可視光域) での特性を報告しているのみです。
     小職の拙い経験では、少なくともSiでは屈折率(n)はドーピング 濃度に余り依存せず、ドーピング濃度の増加に伴い長波長領域で kが増加するような印象を持っています。しかし、K-K関係を 満たすためには、kが変わればnも当然変わる筈ではないか、 との疑問を感じております。また、高濃度ドープの半導体基板では どのような誘電関数モデルを用いて分光エリプソのデータを解析 するべきか悩んでおります。(低濃度基板ほどには上手くfitさせる ことが出来ません。)
     このような小職の蒙昧を啓くヒントとなる知見が得られれば、 と考えております。
    甚だ無礼なお願いで申し訳ありませんが、宜しくお願い申し上げます。
    PS. もしHPにアップされるのであれば、申し訳ありませんが、匿名にてお願い致したく。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Mar 2005 17:09:54 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     シリコンのdopingによる赤外スペクトルの変化はずいぶん昔に研究されています。
    Elizabeth Barta: Determination of effective mass values by a Kramers-Kronig analysis for variously doped silicon crystals;
    Infrared Phys. 17 (1977) pp.111-119
    に詳しく出ています。この論文では、反射スペクトルからK-K変換で誘電率や吸収係数を出 していますので、お尋ねの件にぴったりです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Mar 2005 18:25:30 +0900
    AA: 東京農工大学、佐藤 勝昭 教授殿

     ご多忙な中、小職の愚問に迅速な回答を頂き、大変恐縮です。論文を読ませて頂き、勉強致します。
    有難う御座いました。

     取り急ぎ、御礼まで。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    543. シリコーンの気体透過性

    Date: Mon, 28 Mar 2005 09:52:08 +0900
    Q: HPをみて質問させていただきます。
    下記条件でパッキンを選定しています。
    <条件>
    内圧:0.35MPaをシールする
    温度:0~60℃
    その他:匂いがもれないこと
    シリコーンゴムを考えていましたが、気体透過性が非常に大きく匂いの流出を心配しています。
    しかし、匂いがうつらないパッケージのパッキンにはシリコーンゴムが使用されているようです。
    気体透過性と匂いの透過は別の物性なのでしょうか?
    それとも、気密透過性(匂いの透過)の悪いシリコーンが存在するのでしょうか。
    初めての質問ですが、よろしくお願いいたします。
    W社開発部K
    追記:記載は匿名(イニシャル)でお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Mar 2005 11:00:46 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     私は、この方面の専門家ではありませんので、正確なお答えができるかわかりませんが、
    シリコーンの気体透過性は他のシール剤に比べ圧倒的に高いことが知られています。
    パッキングランドのホームページ によると、
    「シリコーンゴムは、気体透過性が大きな特徴の一つで、非常に高い値を示します。また、 気体透過性が高いだけではなく、酸素透過率に対して窒素透過率は、約半分、炭酸ガスは 約5倍、水蒸気は約60倍の値を示します。このような性質を利用して、ガスの分離・濃 縮などにも利用されます。」と書かれています。
    「匂いがうつらないパッケージ」というのは、「匂いのもととなる化学物質が付着しない」 ことを意味しますから、透過性がよければ匂いを(付着せず)通すことになります。 シリコーンを使う限り匂いも洩れると考えた方がよいでしょう。
    先ほどのホームページによれば、
    「ブチルゴム(IIR)は、気体を通しにくいゴム材料として有名で、空気入りタイヤのイン ナーチューブやインナーライナーなどに広く使用されてきました。最近では、タイヤへの 窒素ガス充填をされることもありますが、これはブチルゴムの気体を通しにくい性質に、 その気体の中でも窒素が、さらに通しにくいことを利用したものです。」と書かれていま すから、ブチルゴムを検討されてはいかがでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Mar 2005 16:33:23 +0900
    Q2: 早速のご回答ありがとうございます。
    ブチルゴムではゴム自体の匂いが強いので食品関係には向かないと判断しました。
    今は、食品向対応のNBRを検討しています。

    匂いの移らない容器ですが、冷蔵庫などで使用しても他の食品に匂いが移らないとの意味だと思いますので、 やはりパッキンから匂いがもれていないのではないでしょうか・・・

    また、なにか情報がございましたらお手数ですがご教授願います。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Mar 2005 17:46:55 +0900
    A2: 駒田様、佐藤勝昭です。
     1気圧以上の圧力差がある場合に気体が透過するのと、圧力差のない冷蔵庫のパッキン グとでは、透過の仕方におのずとちがいがあると存じます。
    気体透過係数は
      気体透過係数=気体透過量(体積)×フィルムの厚さ/(圧力差×透過面積×時間) のように圧力差に依存するからです。
    日本合成化学のホームページ 参照)
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Mar 2005 18:38:32 +0900
    AA: 佐藤様
    ご回答ありがとうございます。
    参照資料大変参考になりました。
    気体透過性の低い材料を探して検討を進めていきます。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    544. 消光係数の意味

    Date: Fri, 8 Apr 2005 11:52:34 +0900
    Q: 佐藤先生 ご無沙汰しております。化学会社のMです。
    最近分光エリプソメーターの調査をしており、過日、あるメーカーの製品でデモ測定やってもらいました(試料は有機化合物の透明なフィルム、範囲は190から800nm)。そして、n,kの波長依存性のグラフをもらい、化学的な解釈を試みているところです。そこで、教えていただきたいことがあります。
     (1)消衰係数kの意味は試料が共鳴点(ω=ω0)で吸収した光エネルギーが熱エネルギーに転換される度合いを示すものでしょうか。

     (2)高エネルギー領域においてkは増大する傾向にありますが、これは減衰因子γが大きくなるからでしょうか。つまり 「(ω^2-ω0^2)^2+(γω)^2」におけるγのことです。

     (3)γというものは電子の振動が強制振動に追随できなくなることによるもの、と理解してよいものでしょうか。

    以上、よろしくお願い致します。

    p.s
     上記の質問とは関係ないことですが、かつて液晶セルなど位相板を通過する偏光のことでお聞きしたことがありました。これをきっかけとして、その後ジョーンズベクトル法などを勉強し、かつ偏光子、検光子、光源、受光器などを購入して、今やこの種の実験ができるようになりました。どうも、ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 8 Apr 2005 19:44:38 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     (1)媒体の屈折率をn、消光係数をkとすると、電場の振幅がEoで角振動数 ωの光(平面波)が、この媒体中を距離rだけ進んだ時の電場E(r)は
       E(r)=Eo exp[-iω{t-(n+ik)r/c}]
    と表されます。従って、上の式を書き直すと、
       E(r)=Eo exp{-iω(t-nr/c)} exp(-ωkr/c)
    となって、光の振幅は、もとの値のexp(-ωk/c)倍になります。すなわち振幅 が減衰します。
    光の強度I(r)は、電場の絶対値の2乗に比例しますから、もとの光の強度を Io=|Eo|^2としますと、
       I(r)=Io exp(-2ωkr/c)
    となります。通常は、光の強度の対数の減衰率を吸収係数αと表すので、
       I(r)=Io exp(-2ωkr/c)=Io exp(-αr)
    となり、吸収係数αは
       α=2ωk/c=4πk/λ
    と書けます。ここにλは光の波長です。
     このように、kは光の吸収係数に比例する量ということがわかりますね。
    媒体に入った光強度(パワー)Ioのうち、Io (1-exp(-ωkr/c))のパワーは媒体 に吸収されたのです。
     吸収されたエネルギーの一部は媒体の格子振動となり熱となりますが、一部 は媒体から光を放射して失われます。
    効率の高い蛍光体では、ほとんど熱にならずに光エネルギーに変換されます。 おたずねの有機フィルムでも、吸収のある短波長の光を当てたときには、発光 しているかもしれませんね。

    (2) 有機物のように(バンド間遷移でなく)局所的な遷移を考えることの できる媒体では、その光の損失はローレンツの式で表すことができます。ロー レンツモデルでは、共鳴周波数ωoをもつ吸収帯の複素誘電率εは
        ε(ω)=1+A/{ωo^2-(ω+iγ)^2}        =1+A(ωo^2-ω^2+γ^2)/{(ωo^2-ω^2+γ^2)^2+4ω^2γ^2}            +i2Aωγ/{(ωo^2-ω^2+γ^2)^2+4ω^2γ^2}
    と書き表すことができます。ここにγは振動子のダンピングを表す項です。 Aは比例係数で,(Ne^2/mεo)と振動子強度の積です。
    ε=ε'+iε"と書くと、損失に相当する誘電率の虚数部ε"(ω)は
         ε"(ω)=2Aωγ/{(ωo^2-ω^2+γ^2)^2+4ω^2γ^2}
    となります。マクスウェルの方程式によるとεと光学定数n, kの間には、
         ε'=n^2-k^2, ε"=2nk
    の関係がありますから、k=ε"/2nとなります。屈折率の分散を無視して定数n であるとすると、消光係数kは
          k=Aωγ/n{(ωo^2-ω^2+γ^2)^2+4ω^2γ^2}
    と導かれました。
     これはω=(ωo^2-γ^2)^(1/2) にピークをもつベル型の形状ですが、分子に ωがかかっているので非対称な形をしています。高エネルギー領域にはたくさんの局在遷移がありそ の重ね合わせになるので、ベル型の裾がオーバーラップして高い周波数ほどkが大きくなるのです。γの波長依存性ではありません。

    (3)ローレンツモデルでは、γはダンピング係数です。γがない場合でも、ωoを超えると強制振動に振動子がついていけなくなり、位相が遅れます。(学生実験でやらなかったでしょうか?)
    γの物理的解釈は、あなたの解釈ではなく、あくまで振動の振幅が無限に大きくならないことを表しています。
    γがなければ、ω=ωoで振幅は発散してしまいますからこれを避けるために入れています。量子力学では、準位が有限の寿命をもつことを表しており、スペクトルの線幅と寿命の間に不確定性原理が成り立つことを表しています。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 11 Apr 2005 18:53:30 +0900
    AA: 佐藤先生 さっそく詳しいご回答をしていただきありがとうございます。

    >吸収されたエネルギーの一部は媒体の格子振動となり熱となりますが、一部は
    >媒体から光を放射して失われます。効率の高い蛍光体では、ほとんど熱にならず
    >に光エネルギーに変換されます。おたずねの有機フィルムでも、吸収のある短波
    >長の光を当てたときには、発光しているかもしれませんね。
    今やっていることに関して大変参考になるコメントです。まさに発光を気にしてお りますので・・・。

    >高エネルギー領域にはたくさんの局在遷移がありその重ね合わせになるので、
    >ベル型の裾がオーバーラップして高い周波数ほどkが大きくなるのです。γの
    >波長依存性ではありません。
    なるほど高エネルギー側でkが大きくなるのはγの波長依存性によるのでは ないのですね。これは私には新しい知見です。

    >γの物理的解釈は、あなたの解釈ではなく、あくまで振動の振幅が無限に大き
    >くならないことを表しています。
    「ダンピング因子」というのはそういう意味の因子なのですか。これも新しい 知見です。

    おかげさまでkのデータの見方がかなり分かってきました。ありがとうございまし た。
    --------------------------------------------------------------------------

    545. ポリエチレンの誘電率(2)

    Date: Sun, 10 Apr 2005 20:57:09 +0900
    Q: 夜分遅くに失礼します。私はH社のNといい、20です。HPを拝見し、質問させていただきたくメールを送ります。私は今、RG-213/Uという型式の同軸ケーブルの静電容量を計算しています。
    しかし比誘電率は2.2~2.4と幅広いため、正確に計算出来ません。密度によって比誘電率が違うことは調査出来たのですが…。
    もしよろしければポリエチレンの比誘電率を教えていただけませんでしょうか?
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 11 Apr 2005 10:07:29 +0900
    N様、佐藤勝昭です。
    なんでもQ&Aの345にありますように、ポリエチレンは、結晶とアモルファスの混合した状態にあり、作製のプロセスによって混合比も異 なり、誘電率は幅広いデータしかありません。1つ1つの製品について測定する以外方法がないということです。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 11 Apr 2005 10:24:54 +0900
    AA: 佐藤勝昭様。
    ありがとうございました。
    ----------------------------------------------------------------------------

    546. 電気回路の問題回答

    Date: Thu, 14 Apr 2005 12:43:46 +0900 (JST)
    Q: HPを見ての質問です。A社のNです。
    ただいま勉強中です。
    参考問題
    (1), (2)の回答を教えていただきたくメールいたしました。
    よろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Apr 2005 19:30:14 +0900
    A:N様、佐藤です。
     物性なんでも Q&Aは基本的には「物性物理学」「物性工学」に関する 質問コーナーです。ご質問の内容は、電気回路工学の基礎的な問題で、 どのような教科書にもある原理に基づいてやればできるはずの簡単なも のです。答えだけをお教えしても意味がないと思うのです。いきなり答 えを教えろというのではなく、このように解いたが正しいか、とか、こ この部分がどうしても理解できない、という形でおたずねください。こ のような簡単な問題のどの部分であなたがつまずいているのか理解でき ないからです。
     また、あなたの教育歴、学習歴もお教えいただければ、お答えの際の 参考になります。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Apr 2005 07:39:59 +0900 (JST)
    A: Nです。
    私の最終学歴は工業高校の電子科です。
    仕事になかなかついていけないので1から勉強しようとしています。
    自分なりに答えを出したのですがあっているのかわからなかったので質問いたしました。
    答案(1), 答案(2)
    よろしくお願いします。
    一度、答え合わせをお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 16 Apr 2005 14:21:39 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
     添削しました。ほぼ、できていると存じます。
    採点(1), 採点(2)
    5番は複素共役という意味で、虚数部分を符号を変えたものをそう呼びます。
    6番は、共振時にはコイルのインピーダンスとコンデンサのインピーダ ンスが打ち消すということを利用すれば、抵抗のみになることがおわか りいただけると存じます。
    自習されているとのこと立派です。インピーダンスの意味や複素数の意 味など、基礎にかえって学習されることをおすすめします。 ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 16 Apr 2005 14:49:09 +0900 (JST)
    AA: 佐藤さま
    大変詳しく解りました。
    今後も仕事に勉強とがんばり精進していきます。
    また、解らないことがあると思いますのでその時は質問すると思いますが よろしくお願いします。
    ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------

    547. 電子回路の問題回答

    Date: Thu, 14 Apr 2005 10:25:34 +0900 (JST)
    ①トランジスタ増幅器において、低周波高周波で電圧増幅率が低下する原因をおしえてください。

    ②オペアンプは直流信号を増幅できる理由を教えてください

    M大学3年Z工学科Kです。匿名希望でお願いします。
    (同趣旨の質問が名城大の今井君からもありました。)
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Apr 2005 01:32:02 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     宿題の解答は原則として行いません。ヒントだけ与えますので、教科書を良く読んで ください。
    ①低周波側はカップリングコンデンサに原因があります。高周波側はトランジスタの特 性に原因があります。
    ②オペアンプは、基本的に差動増幅器なのです。教科書の差動増幅器のところを読め ば、なぜ直流が増幅できるかがわかるでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------

    548. 微小ビーズの銀メッキの色

    Date: Thu, 14 Apr 2005 19:17:18 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭 様

    初めまして。PB社の赤沼といいます。
    現在,弊社では無電解による銀めっきをガラスビーズへ施し,商品化しております。 この銀めっき皮膜について,不明な点がありご質問いたしますので,貴殿の見解を お聞かせ下さい。

    1.材料  : 無色透明なガラスビーズ
    2.サイズ : 平均径 10μm
    3.めっき : 無電解による銀めっき
    4.質問  : 同一材料を用い,銀コート量を変動させた時に仕上がりの色目が 異なり,この原因がつかめておりません。
    膜厚の表面状態による要因も考えましたが,銀コート量を減少さ
    せると黒味を帯びた色目に仕上がってしまいます。
    膜厚による光の吸収,反射によるものと推測できますが,メカニ ズムが不明です。多くの文献等で調査しましたが,未だに解決していません。
    以上 -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Apr 2005 19:47:53 +0900
    A: 赤沼様、佐藤勝昭です。
     事情がよく飲み込めないのですが、微少なビーズに銀メッキを施した とき、コート量を減らすと黒ずんで見えるが原因はなにかというご質問 ですね。
     まず、銀コートの膜厚は、およそどのくらいでしょうか?
    また、コートされた銀の粒径はどれくらいなのでしょうか?
    何しろ、ビーズのサイズが小さいので、粒径によっては、表面を一様に 覆うのではなく、がさがさした形で覆う可能性があります。銀粒子が3 次元成長をし、サブミクロンの微細構造となっておれば、あたかも現像 銀のように黒ずんでくるのではないでしょうか。SEM(走査型電子顕 微鏡)などで表面を観察されてはいかがでしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------

    549. 直交するレーザ光の干渉

    Date: Sat, 16 Apr 2005 01:00:42 +0900 (JST)
    A:はじめまして、A社のMと申します。
    ホームページを拝見して、メール差し上げております。
    早速ご質問ですが、同一光源から出射されたレーザ光を2つの光線に分光した後、 それらを2方向(例えば互いに直角な方向)から重ね合わせた場合、両光線の交点 で(具体的には、その一点のみで)干渉させることはできるのでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 16 Apr 2005 12:37:07 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     
    添付ファイルのように直交した偏光の干渉が起きないことを示されます。しかし、幾何学的な交差角が90度の場合の干渉に付いては、干渉が起きます。偏光が直交していない限り幾何学的な交差角によらず干渉は起きます。(2005.09.16)YTさんのご指摘により修正しました。)
    -------------------------------------------------------------------------

    550. 金属酸化物薄膜の熱膨張係数

    Date: Wed, 20 Apr 2005 12:38:14 +0900
    Q: 佐藤先生へ。H株式会社のHと申します。

    初めてメールいたします。私は光学薄膜を用いた機能材料の開発に携わっておりま す。いろいろな分野からのさまざまな質問について明解にご教示されているHPを拝見 し、私もご教示願えたらと思い、メールさせていただきました。

    TiO2、Nb2O5、Ta2O5などの金属酸化物の熱膨張係数をご教示願えないでしょうか?
    膜厚は100nm程度です。
    100nm程度の膜厚の熱膨張係数をご教示願えれば幸いなのですが、もし、ご教示願え た熱膨張係数がバルクの値であった場合に、薄膜の値とどのように異なるのかコメン トお願いできないでしょうか?
    また、実際に薄膜の熱膨張係数を私が測定するとして、どのような機材が必要となり ますでしょうか?

    ぶしつけな質問で申し訳ありませんが、ご検討お願いできないでしょうか?
    できれば、匿名でお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 20 Apr 2005 13:24:18 +0900
    A: 濱本様、佐藤勝昭です。
     バルクのルチルの熱膨張係数は
    a|| = 9.19×10-6[K-1]
    a⊥ = 7.14×10-6[K-1]
    (http://www.sciner.com/Crystals/TiO2.htmによる)
    他の物質のデータは、ご自分で英文で検索してみてください。
    しかし、薄膜においては基板に付着しているため、基板の影響を受けま す。従って、薄膜のみを取り出して膨張係数を論じることができません。
    膜厚が薄い場合は、バルク基板に引きずられます。もし、熱膨張係数に 基板の膨張係数が薄膜のそれより大きいと、薄膜に引っ張り応力がかか り、逆に熱膨張係数に基板の膨張係数が薄膜のそれより小さいと、圧縮 応力がかかります。
     測定は、温度を変えながらX線回折を測定する装置で行うことができます。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 20 Apr 2005 15:12:39 +0900
    AA: 佐藤先生へ。H社のHです。

    ご丁寧な回答ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    551. バンドギャップの温度依存性

    Date: Thu, 21 Apr 2005 13:14:13 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
    はじめまして、突然のメールで失礼します。N社Tと申します。
    (もし、Web掲載の折には、匿名でお願いいたします。)

    日々、「物性なんでもQ&A」を拝見させていただいております。大学の講義で 先生がご用意されている資料などもあわせて勉強させていただいています。

    質問をさせていただきたことがあります。私どもはII-VI族半導体のなかで、 温度変化によりバンドギャップ幅が変化するものに着目して機能材料の研究を 行っております。恥ずかしながら、そもそもどうしてバンド幅が温度変化を起こす のかが理解できずにいます。その点についてお教え願えませんでしょうか?また、 吸収端は温度上昇と共に長波長側にシフト(レッドシフト)を起こすのが一般的な のでしょうか?

    一応、以下の文献に説明がされているようですが理解ができません。
    K.P.O'Donnell and X.Chen, Appl.Phys.Lett.,vol58, no.25,2924(1991) (添付ファイルをご覧下さい)

    なにとぞ、よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Apr 2005 20:23:24 +0900
    A:T様、佐藤勝昭です。
     バンドギャップ付近に励起子遷移があるかないかで話が違ってきます。  まずは、励起子(エキシトン)が関与しない場合を述べます。バンド ギャップは、電子に対するポテンシャルを波数kについてフーリエ展開 したときの何次かのフーリエ係数で与えられます。一方、電子が感じる ポテンシャルは、格子の周期をもつ周期関数です。J. Pankove:Optical Processes in Semiconductors, Dover, New York, 1971 p.27によると、 原子はその平衡点の付近で振動をしていますが、温度上昇にともなって その振幅も増加します。その結果、電子同士の重なりが増え、許容帯幅 が広がるため、結果的に禁制帯幅(バンドギャップ)が小さくなるので す。バンドギャップの温度変化は、デバイ温度(格子振動の平均エネル ギーに相当する温度)より十分低い温度では、温度の二乗で変化します が、デバイ温度より十分高い温度では温度の1次関数となります。この 様子を表した経験式がご照会の論文の式(1)です。
     しかし、実際には、低温では二乗にならずほぼ一定値をとります。こ れは、温度上昇に伴い格子間隔が広がると電子の重なりが減り、許容帯 幅が狭くなり、この結果ギャップは増加するので、相殺するのです。温 度が上昇すると格子間隔が膨張する効果を取り入れたのが式(2)で、こ の式を使った方が、実験をよく説明できるのです。式(2)にはさらに 電子格子相互作用が温度依存性を持つことも考慮されています。
     
     次に、励起子がみられる場合を考えましょう。このときは、励起子遷 移のピークの裾が温度変化をします。この裾の様子を記述するのがアー バックの法則です。励起子のピーク位置はバンドギャップより束縛エネ ルギーだけ低いのですが、その位置から指数関数的に裾を引いていて、 温度上昇によって裾が広がります。これによってバンドギャップが見か け上小さくなる効果があります。
    -------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Apr 2005 09:39:53 +0900
    AA: 佐藤教授
    Tです。

    早速のご連絡ありがとうございました。
    まだ、とても全部わかったわけではないのですが、さしあたり、「温度上昇と共に 格子振動が増え、電子の重なりが増すことで、許容帯幅が増し、ギャップが 狭くなる」点は、なんとなく理解しました。先生のお話ですと、基本的には温度上昇 と共にレッドシフトを起こすのが一般的と考えて間違いなさそうですね。

    引き続き、自分でもご紹介の書物などを読んで行きたいと思います。
    今回はありがとうございました。
    先生のHPをいつも楽しみにしております。これからもよろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------

    552. フォトダイオードの量子効率

    Date: Thu, 21 Apr 2005 16:25:07 +0900
    Q: E社Mです。
    HPを見て、Mailさせていただきました。
    匿名希望です。

    PhtotoDiodeの受光感度〔A/W〕、及び量子効率の測定方法を教えてください。

    現在、パワーメーターで光エネルギー〔W〕を求めた後に
    それをパワーメーターの受光部面積で割って
    放射照度〔W/m2〕を求めています。
    一方光電流はPhotoDiodeの光電流の面積から
    光電流〔A/m2〕を求めています。
    従い受光感度〔A/W〕は、光電流/放射照度として求めています。
    しかしこの方法で、量子効率を求めたところ
    1.0を超えてしまいました。
    何が間違えているのでしょうか?

    ちなみに量子効率ηは
    η= (Ip/e)/(P/hν)
    Ip〔A/m2〕:e電子の電荷:P〔W/m2〕
    で、計算しています。
    ------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Apr 2005 20:55:15 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     アバランシェフォトダイオードなどでは、電流増倍が行われているの で、η= (Ip/e)/(P/hν)でみつもると当然1を超えることがあります から、アバランシェを起こさず増倍率1にして測定する必要があります。
     増倍率1にして測定していてηが1を超えるのなら、おそらく、光電 流密度を算出したり、放射照度を見積もる際の面積の評価の問題ではな いかと思います。そのあたりをよくご検討になってはいかがでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Apr 2005 11:30:18 +0900
    Q2: 佐藤 様。E社Mです。
    ご回答ありがとうございました。

    実際私たちが測定しているPhotoDiodeは3.3Vで測定しておりますのでアバランシェではありません。
    従い面積の方をもう一度見直したいと思います。

    現在の所、私たちは光の放射照度を知るのにパワーメーターを使っています。
    これは、取得できるDATAがWであるためセンサー部の面積1cm□で割って放射照度を求めています。

    このやり方は一般的なのでしょうか?他に異なる方法でのDATA取得方法があれば教えてください。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Apr 2005 11:09:20 +0900
    A2: 佐藤勝昭です。
    本学物理システム工学専攻の谷俊朗先生(半導体光物性)にお伺いしましたところ、下記の回答をいただきましたので、転送します。
    ==========================================================
     光の放射強度は,W/cm^2でいいので,光強度の分布が均一なら特に問題は
     ないと思います。無論,パワーメータが校正されていることは必要ですが。
     ここで言うフォトダイオードが光検出器として動作していて,その光子検出
     の量子効率をパワーメータとの比較で測るというなら,特にこれで問題はな
     い様に思います。量子効率の定義も,これでいいと思います。
     パワーメータ以外を使うとなると,余り弱くなければサーモパイルとか,微
     弱なら光子計数にいって俄然大変になります。
     もし何かあるとすれば,フォトダイードの受光面が平らで、1cm^2の面積を
     持っていても,表面に電極などが張り巡らされていて実効的な面積が減って
     いたり,場所的に不均一だとその分の修正が要るかも知れませんが,例えば
     CCD検出器など私の知る限りでは,その分もコミで,センサーの量子効率=
     検出効率と定義しています。
     例えば,電極がある側から光が入る通常のCCDでは20%前後でも,背面
     照射型になると90%を越えるのはその例です。
     少なくとも普通のパワーメータで表示されるW数は,通常はそういったもの
     をコミにしていると思います。
     どの程度1を超えたかですが,まさかとは思いますが,cmとmがどこかで
     混ざったと言うことはないでしょうね。面積以外なら,電流値のオーダーが
     ずれていないかどうか。
    --------------------------------------------------------------

    553. シャフトの輸送中の磁化

    Date: Thu, 21 Apr 2005 16:36:22 +0900
    Q:ホームページを見てご質問させて頂きます。
    Tセンター研究員のKです。(匿名でお願いします。)

    直径2~4mmで長さ100~200mmくらいのシャフトを100本程度袋詰め にして輸送しているケースで、送る前には磁気を帯びていないのに(或いは 脱磁してから送付)送られてきたシャフトが磁気を帯びています。

    しかし全て一律ではなく、強く磁気を帯びたもの、ほとんど帯びていないもの などあります。
    袋の中は、防錆油を入れてあります。

    この現象の起こる原因と対策について、ご教授いただければと思います。

    よろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Apr 2005 20:34:03 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございました。この原因は簡単ではないですね。シ ャフトの材料が何かわかりませんが、保磁力が地磁気程度か、やや小さ く、かつ残留磁化の大きな材料だとしますと、輸送の際に地磁気を受け て磁化したことが考えられます。保磁力は製品ごとに多少のばらつきが あるので、磁気を帯びたもの、ほとんど帯びていないものがあったので しょう。
     一方、保磁力がかなり大きな材料であったとしますと、輸送の際のベ ルトコンベアなどに使われているローラなどが強く磁化していて、その 影響を受けたとも考えられます。またモータの漏れ磁界の影響もあるか も知れません。その場合にも磁化している装置からの距離によってばら つきが起きるかも知れません。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Apr 2005 21:49:02 +0900
    Q2: 佐藤勝昭 様
    早速ご教示頂きありがとうございました。
    地磁気の影響を受けるのは意外でした。
    材料は、ハイスとSKDですが、保持力の材料による差で、どんな ものがファクターに成り得るのでしょうか。(例えば炭素量とか)

    お忙しいところ恐れ入りますがご教示よろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Apr 2005 12:40:36 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     ハイス(高速度鋼)というのは、高温での焼き戻し抵抗を高めるため にクロム等を混合した鋼材ですが、ハイスと一言でいってもいろいろな 組成のものが存在するようです。
    日立金属のWebサイトに工具鋼の組成がでています。
    一例として、
    SKH51では C0.85 Si0.25 Mn0.35 Cr4.15 W6.50 Mo5.40 V2.00 Co0.0
    SKH57では C1.25 Si0.25 Mn0.35 Cr4.15 W10.0 Mo3.50 V3.45 Co10.0
    となっています。
     また工具鋼SKDでも組成は様々で、
    SKD61では C0.38 Si1.00 Mn0.40 Cr5.15 W0.0 Mo1.40 V0.80 Co0.0
    SDK1では、C2.10 Si0.25 Mn0.45 Cr13.5 W0.0 Mo0.0 V0.0 Co0.0
    となっています。鋼材の「飽和磁化」の大きさは、クロム、コバルトや モリブデンの含有量によっても変わりますし、結晶構造によっても変わ ります。さらに「保磁力」や「残留磁化」などの「技術磁化」は、作製 のプロセスに依存します。冷間圧延の際の応力によっても、また、金属 組織によっても異なります。従って、工具鋼の磁化については、単純で はないと思います。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Apr 2005 13:13:44 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    ご連絡ありがとうございました。お忙しいところお手数をおかけしました。
    なかなか難しい課題であることがよくわかりましたが、大変参考になりました。
    いろいろご教示頂きありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------

    554. X線と光の透過について

    Date: Wed, 27 Apr 2005 21:54:46 +0900
    Q: 佐藤先生
    放射線技師のHと申します調べ者をしていて偶然このコーナーにたどりました。 疑問に思いながら長年放置しておりました。専門技術者でありながら基礎的知識 は皆無ですので、小、中学生レベルで教えてください。
    Q、光、X線は粒子である。X線が身体(物質)を透過するのは0,01ナノメートル という超微粒子が物質の間隙を通過し原子の電子に当たり電離を起こし又コンプ トン散乱をおこしエネルギーを失いながら透過していくことはうろ覚えでなんと なく理解しています。
    光も粒子説で考えると透明のガラスは透過しますが曇りガラスは透過が弱くなり ます。X線撮影室の操作窓に含鉛ガラスが我々術者の放射線被爆がないよう守っ ています
    我々の日常の周りに感じられる光の粒子は身体(物質)を透過することが出来ま せんのにⅩ線を遮蔽する含鉛ガラスはなぜ光の粒子は透過するのか疑問に思いな がら今日に至っています。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Apr 2005 01:03:45 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
    なんでもQ&AのNo.149にありますように、物質による光やX線などの電磁波の 吸収が起きるかどうかは、決して粒子のサイズの問題ではなく、電磁波のエネル ギーを受けて、物質内で電子状態間の遷移(電子励起)が起きるかどうかの問題で す。物質の中の電子状態のエネルギーは連続ではなくとびとびの帯域に分かれて います。従って、鉛ガラスでは、低いエネルギーの電磁波である可視光では光学 遷移が起きず、吸収がないので光を透過しますが、波長が短い(エネルギーの高 い)電磁波である紫外線になると、(結合に使われている)外殻電子の電子状態間 の遷移がおきて光を吸収します。しかし、もっと高いエネルギーの電磁波である 極紫外線の20eV付近以上になると、遷移に関与する電子状態が無いため、再び透 過します。さらに、内殻電子の関与するX線吸収端付近のエネルギー(数keV)の 電磁波(X線)になると吸収が起きます。この吸収の起きるエネルギーは元素に よって差があるため、骨では吸収が起きるが、肉では吸収が起きないというよう なことが起き、レントゲン写真が撮れるのです。
    鉛は重い金属元素なので電子の数が多く、X線吸収端での吸収係数が高いので鉛 ガラスは、X線を透過しにくいのです。
    ------------------------------------------------------------------------
    Q2:佐藤先生
    >X線と光(粒子)の透過についての質問にお忙しい中、早速の回答を頂きありが >とうございます。「Q&AのNo149にありますように」とあるNo149が探せません検 >索キーワードはあいうえお順です。タイトル名を教えてください。このコーナー >で私の質問に関連するQ&Aを読みながら、私の回答を読んでいるうち又判らない >ことにぶつかり、基本的な知識の無さを痛感しております。
    ------------------------------------------------------------------------
    A2:H様、佐藤勝昭です。
     149は2002.11.21の筑波大Tさんの質問「X線吸収」です。50音順索引に貼り 付けるのを失念したようです。
    夜中に急いで書いたので説明が不十分でわかりにくかったかも知れません。わか らないところがあれば、再度ご質問下さい。
    ------------------------------------------------------------------------
    Q3:佐藤先生
    放射線技師のHです。お疲れの所迅速なお返事ありがとうございます。
    No149を参考に先生の回答を読み、理解するために基礎的なことを勉強しなおし ます時間がかかると思いますが、また質問させていただきます。
    勝手なお願いですが時間がございましたら参考になる事なんでも結構ですレクチャ 下さい。
    -------------------------------------------------------------------------
    A3:齋藤大嗣様、佐藤勝昭です。
     ご参考のため、拙著「応用電子物性工学」の
    第3章をお読みください。 図3.4(c)を使って説明しますと、ガラスなどの透明材料では、価電子帯と伝 導帯のエネルギー差が人間の可視光線のエネルギーを超えているので、可視光線 では光学遷移(光吸収)が起きず、紫外域で「価電子帯→伝導帯」の遷移が起き ます。一方、X線による遷移は、1s内殻から3s3p伝導帯への遷移(K吸収端)、2p 内殻から3s3p伝導帯への遷移(L吸収端)・・というように内殻と伝導帯の間の遷 移なのです。
     エネルギーバンドモデルの説明は、3.2節を丁寧に読んでみてください。 わからないことがあれば、またお尋ねください。
    ---------------------------------------------------------------------------

    555. カーボンブラック分散系の誘電特性

    Date: Fri 29 Apr 2005
    Q: 佐藤勝昭先生、X大のKと申します。
    カーボンブラックを高分子マトリクスに分散した系のGHz帯の誘電特性について教えてください。
    > (1)GHz帯で観測される誘電率ε’の物理的意味
    > CB本来の誘電率というものがよく分かりませんが、グラファイトの
    > それ(5程度と認識しております)に近いとすると、GHz帯の誘電率が
    > 高分子マトリックス及びCBの誘電率よりも高い場合、その誘電率の
    > もつ物理的意味とはどのように考えられるでしょうか。
    > (2)導電機構との関連
    > CB充填量が閾値を超えた試料に関しては、導電機構として、CB連鎖間の
    > トンネル及び連鎖中の接触が考えられると思います。これらの導電率が、
    > CB粒子内部の導電率と異なる場合、その導電率の違いにより界面分極が生じ、
    > 低周波域で誘電率が増大すると考えて妥当でしょうか。
    > また、トンネル、接触による導電率は温度、電界といった因子に対し
    > どのような関係で記述されるのでしょうか。
    >
    > 以上です。お忙しいところ恐縮ですが、是非ご教授頂けたらと思います。
    > よろしくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 29 Apr 2005 14:35:02 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     界面分極はおそらく数kHzくらいで応答しなくなるので、GHz帯では考え なくてよいでしょう。GHz帯では、イオン分極と電子分極が誘電率の起源です が、逆に言えば、低周波になると界面分極の分だけ、誘電率が上昇すると考えら れます。
    > (1)GHz帯で観測される誘電率ε’の物理的意味
     CBの誘電率ですが、カーボンはc軸方向にはファンデアワールス力で弱く結 合していて、半導体的電気伝導ですが、c面内は金属的電気伝導です。従って、 CBの導電性や誘電性は両者の平均的な値が観測されます。
     金属的電導を示すc面内においては、誘電率はDrudeの法則
    ε=ε(∞)-ωp^2/ω(ω+iγ)
    で説明されます。
    Ferro-Ceramic Grinding, Inc. のHP でも誘電率の項は無記載となっています。
    http://psroc.phys.ntu.edu.tw/cjp/v7/24.pdfによる とプラズマ振動数は6.8eV=1.63×10^15Hz。従って、εは負の大きな値を取りま す。γ=0.3eVとすると、f<7.2×10^13Hzでは、εc=-500です。
    高分子マトリクスの誘電率をεp、CBの誘電率をεcとし、CBの充填率をfとす ると複合材の誘電率ε=εp(1-f)+εc fで計算できます。
    εp=2.5, εc=-500, f=0.01とすると、ε=-2.8という負の値を示します。この状態 で、誘電率を普通の測定器で測定すると、訳のわからない値を示すでしょう。

    > (2)導電機構との関連
    トンネルは量子現象なので、温度依存性は持ちません。トンネル電流は電界に対 して非線形の応答をします。一方、接触による場合、熱的に障壁を超えるので、 温度上昇とともに導電率が上がります。 CB連鎖が接触するほどの高密度になると、パーコレーションという形で電流の パスができます。この時は複合材の導電性は金属的になり、Drude的になり、誘 電率は負の値になるので、通常の測定器では測定できません。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Apr 2005 01:45:43 +0900
    Q2: 早速のご返事ありがとうございます。
    大変勉強になりました。

    恐縮ですが、もう一点だけ質問させてください。

    半導体的な性質と金属的な性質の平均として観測されるとのことですが、 このような粒子がパーコレーション閾値を超えて接触による導電パスを 形成した状態で、観測される導電率が温度の上昇と共に下がる場合、 電子が熱的に接触間の障壁を超える効果よりも、CB粒子の金属的な性質が 顕著であると解釈して妥当でしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 30 Apr 2005 14:14:48 +0900 A2: 説明不足で失礼しました。カーボンにも結晶状態のものと非晶質(アモルファ ス)状態のものが存在します。お尋ねのCBは、なんでもQ&A No.336 アモル ファスカーボンの電気特性に書きましたようにおそらくアモルファス状態になっ ているのでしょう。 アモルファスカーボンではグラファイト微結晶同士が緩く 結合しているので粒界が存在し、粒界にはポテンシャル障壁が存在します。この 障壁の高さをΔEとすると、グラファイトの粒子から粒子に電子が飛び移る(= ホッピングする)確率は、exp(-ΔE/kT)となります。従って電気伝導率は活性化エ ネルギーΔEをもつ温度変化を示すのです。この場合は金属伝導性は見られませ ん。半導体的な活性型なら導電率は上昇します。温度上昇とともに導電率が低下 するとしたら金属的で、フォノンによる散乱が主原因です。この場合は、 CBはアモルファスでなく、結晶相になっているのでしょう。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 01 May 2005 18:05:11 +0900
    AA: 佐藤先生
    ご指導、ありがとうございます。
    頂戴したアドバイスを参考に、自分でももっとよく勉強したいと思います。
    この度は本当にありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------

    556. ダイヤモンドの熱膨張係数


    Date: Mon, 9 May 2005 23:14:40 +0900
    Q: こんにちは。
    Y大学1年Yです。(匿名希望)
    つい最近熱膨張について習いました。
    その時ふと思ったのですが、世の中のものはすべて熱を加えると膨張するんでしょうか?
    「分子運動が激しくなり、分子間距離が大きくなることによって物体は膨張する。」と教わりました。
    とすると、やっぱり分子からなる世の中の物はすべて、熱によって膨張するということになるんでしょうか。
    でも私的にダイアモンドは膨張しないだろうなぁ・・・・と思いましたので、質問させていただくことにしました。

    よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 10 May 2005 14:04:56 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     ほとんどの物質は、正の熱膨張係数を持っています。
    例外的に、負の膨張係数を示すものもあります。たとえば、インバーという合金です。
    ダイヤモンドだって小さいけれど正の熱膨張係数を示します。
    線膨張係数βは、物質の長さL, 温度Tとして、
    β=(1/L)dL/dT で表されます。単位は[deg^-1]です。

    アルミの線膨張係数は19.0×10^-6[deg^-1]
    鉄の線膨張係数は11.8×10^-6[deg^-1]
    これに対し、ダイヤモンドは1.0×10^-6[deg^-1]、珪素は2.5×10^-6[deg^-1]です。
    インバー合金は-1.5~-2.0×10^-6[deg^-1]という負の値をとります。
    黒鉛(グラファイトカーボン)は結晶の軸方位により異なり、
    積層構造の面内では25.9×10^-6[deg^-1]、積層面に垂直方向では-1.2×10^-6[deg^-1]
    となっています。

    出典:新版物理定数表(朝倉書店)p.124
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 11 May 2005 02:39:19 +0900
    AA: この前、膨張について質問させていただいたYです。
    さっそく回答していただきありがとうございました。
    疑問が解決して、すっきりしました!
    -----------------------------------------------------------------------

    557. 半導体の光学定数の温度依存性

    Date: Tue, 10 May 2005 19:20:59 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様

    N社のTです。(匿名にてお願いいたします)

    先日は「バンドギャップの温度依存性」についてご教授いただきありがとうございま した。その後、自分なりに勉強を進めて参り、自前で半導体の光学定数の温度依存性につい て調べてまいりました。今回は、金属のDrudeモデルのように、半導体の光学定数の温 度依存性を計算から知るすべにてついてお教えいただけませんでしょうか?

    金属の場合にはDrudeモデルにバンド間遷移の効果を重畳することで光学定数を説明 できると、先生がHP上で仰られてきたと思います。金属ではキャリア濃度は温度に依らず一定と 考えてよいが、緩和時間が音響型フォノンによる散乱のため、T^3/2の依存性をもつことから、温度 依存性が生じると理解しております。
    一方、半導体の場合には、以下の式で表されるキャリア密度の温度依存があると、成 書には(最新半導体光学、朝倉書店)書かれています。
    n=2(2πk_B)^(3/2)(M_e*M_h*)^(3/4)T^(3/2)exp(-E_g/2k_B T) (真性半導体の場合) n(n+N_A)/(N_D-N_A-n)=(N_c/2)exp(-E_g/k_B T) (N型半導体の場合)
    (出払い域では、n=N_D-N_A, p=N_A-N_D)
    キャリア散乱については、先の音響型フォノンの他に、光学フォノン(exp(-Θ_D/T) 依存)、圧電効果による効果(T^(1/2)依存)があるとのことでした。

    私が困っているのは以下の事柄になります。
    ・高温では(例えば室温以上)、この場合もキャリア散乱については音響フォノンによ る散乱のみを考えれば十分なのか?
    ・そもそも、Drudeモデルを当てはめてよいのか?キャリア密度が低い場合には、むし ろ誘電体に用いるLorenzモデルのほうが近くて、温度が高い場合にはDrudeモデルのほうが近いと考え て、折衷モデルのようなものが必要なのか?

    長々と書いてしまいました。お時間が許すときにどうぞ、お教えいただければ助かり ます。
    以上、よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 10 May 2005 21:07:50 +0900
    A:T様、佐藤勝昭です。
     半導体において、高濃度ドーピングした縮退半導体(n+とかp+とか呼 ばれる)の場合には、Drudeモデル+バンド間遷移モデルが適用できます。 縮退半導体ではキャリア数が一定なので、Drudeの式の温度依存性はダ ンピング定数γ=1/τの温度依存性から生じます。
    一方、バンド間遷移から来る光学定数の温度変化は吸収端の温度変化に よって生じます。吸収係数αと消光係数κはα=2ωκ/c=4πκ/λで与 えられますが、αの立ち上がりが温度変化すれば当然、κにも影響を与 え、これとクラマースクローニヒの関係にある屈折率nにも影響を与え ます。定量的に計算するのは、ある仮定の下には可能でしょうが、一般 的には難しいと思います。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 11 May 2005 12:29:01 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生

    N社 Tです。
    早速のご連絡、ありがとうございました。定量的な計算は難しいとのこと、 いささか残念です。
    私の実験では半導体薄膜試料の光学特性を調べた際に、バンドギャップから 遠い波長でも、僅かながらも温度依存が見られたことから、原因を調べており ました。

    大変参考になりました。ありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------

    558. ステンレスの赤外領域における反射率の温度依存性

    Date: Thu, 12 May 2005 00:11:52 +0900
    Q1: 佐藤勝昭先生
    サーモエレクトロンの牛場と申します。
    HPを見て質問させて頂きました。
    弊社は赤外分光装置のメーカーでありますが、赤外の高角度反射(80°)に使用するステンレス板(もしくはアルミ板)について質問があります。
    ステンレス板(もしくはアルミ板)を反射面としてその上に薄膜(数100nm)を塗布し、反射板を常温から400℃まで加熱して、温度依存性のスペクトルを測定することを考えているのですが、薄膜の物性より、ステンレス板(もしくはアルミ板)の反射率の低下があるのではないかと気になっております。

    実際アルミ板を用いた場合、350℃以上で反射率が低下し、赤外反射スペクトルを測定することが出来なかった例も聞いているのですが、ステンレス板を400℃に加熱した際、赤外領域(2.5μm~10μm)の反射率は約何%になるのでしょうか?

    お時間が許すときにどうぞお教えいただければ助かります。
    以上、何卒よろしくお願い申し上げます。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 12 May 2005 00:11:52 +0900
    A1:牛場様、佐藤勝昭です。
     高温での金属の赤外線領域の反射率の測定は大変難しいと存じます。
    理由としては次のようなことが考えられます。
    (1)Drude項を通じた散乱の増加による反射率の低下
    (2)金属表面の酸化による反射率低下(特にアルミは良く酸化します)
    (3)高温金属からの赤外線放射(これは、反射率が高い方にずれます)
    (4)熱膨張による変形による反射光の散乱
    ステンレスの反射率は、基本的には鉄の反射率だと思います。鉄においては電子のプラ ズマ周波数が低く、おそらく0.2eV(6.2μm)付近でしょう。従って、(1)のケースに ついては、温度上昇により散乱が増え、2.5μm~10μmの反射率は影響を受けると予想さ れますが、何%と正確に予言するのは難しいです。実際には、さらに(2)や(4)の 効果を考慮する必要があるでしょう。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 12 May 2005 01:29:40 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生
    夜分にご連絡頂きまして誠にありがとうございます。
    お忙しいところ大変恐縮ですが、もしご存知でしたらステンレス、アルミにこだわらず、 可能性のある金属を教えて頂きたくお願い致します。
    以上、何卒よろしくお願い申し上げます。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 12 May 2005 01:36:17 +0900
    A2: 牛場様、佐藤勝昭です。
     Gold furnaceという透明な赤外線炉がありますが、金が使われています。金は高温で も反射率の変化が小さいので使われるのですね。さびにくいという点では、プラチナが 良いかも知れません。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 12 May 2005 01:49:30 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    たびたびご連絡頂きましてありがとうございます。
    金は悩んでいたいたところでしたので、一度金で試してみようと思います。

    色々と有難うございました。
    ------------------------------------------------------------------------------

    559. フェライトによるインダクタンス増大の理由

    Date: Wed, 11 May 2005 16:05:52 +0900
    Q: はじめまして。藤田と申します。成蹊大学・工学部・電気電子工学科3年です。今、研 究でパルス磁界渦電流反発浮上装置の試作をしています。
    平らなフェライトの上にパンケーキコイルを置き、電流を流してコイルのインダクタ ンスの変化を測定しているのですが、フェライトを用いるとなぜコイルのインダクタ ンスが増加するのでしょうか。どういった原理か教えてください.
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 12 May 2005 01:15:28 +0900
    藤田君、佐藤勝昭です。
     工学部・電気電子工学科なら、電磁気学で磁性体のことを学んでいるはずです。
    外部磁界をHとすると、磁性体が無いときの磁束密度Bは、B=μoHで表されますが、磁性 体があると、その比透磁率をμrとして、B=μrμoHとなります。
     コイルの自己インダクタンスをLとすると、コイルの中を貫く磁束をΦ、コイルを流れ る電流をJとして、Φ=LJと表されます。コイルの面積をSとすると、Φ=BS。一方、コイ ルに流れる電流をJとすると、その磁界は単位長さあたりのコイルの巻き数をNとして、 H=nJと表すことができます。従って、
     L=Φ/J=BS/J=BS/(H/n)=nSB/H=nSμrμo
    と表されます。すなわち、コイルの中に磁性体があると、インダクタンスは磁性体の比 透磁率倍になるのです。
    -----------------------------------------------------------------------------

    560. 化学処理後の高濃度ドープシリコンに見られる不動態膜

    Date: Wed, 11 May 2005 12:09:22 +0900
    Q: 佐藤 先生

    お世話になります。
    S電機のTと申します(できれば匿名でお願い致します)
    弊社はシリコンパワー半導体を製造する半導体メーカーです。
     シリコンウェハー処理工程で発生するシリコンのステイン膜(不働態膜)への 対応で悩んでいます。
    高濃度にドーピングしたシリコンウェハーを弗酸や弗硝酸系の薬液で処理すると シリコン表面に不働態膜(一般にはステイン膜と称する)が形成される場合があ ります。
    この不働態膜の発生メカニズム(発生要因)、膜の組成、除去方法について教え ていただけませんでしょうか?
    高濃度にドーピングされている場合や光の存在で発生しやすくなることなどは経 験的に知っているのですが・・。
    この膜が形成されるとメタル電極とシリコンとのコンタクトが取れなくなります。
    以上よろしくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 13 May 2005 02:13:47 +0900
    A: 寺本様、佐藤勝昭です。
     私は、シリコンプロセスの専門家ではないので、高濃度ドープの場合、エッチングに よってステイン膜(不働態膜)ができるという事実を存じませんでした。
     フッ硝酸系のいわゆるstain etchingは、シリコンの表面処理として一般的で、硝酸に より酸化被膜(ガラス)を作り、フッ酸でそのガラスを溶かすことにより、シリコンの 清浄表面を得ると考えられています。シリコンに高濃度に不純物が添加されていたとし ますと、エッチングにおいてシリコンは酸化物を作りフッ酸で除去されるが、不純物の 酸化の進行が遅く、フッ酸処理が有効に効かないで、酸化物が残るというようなことが 考えられないでしょうか。あくまで推測ですが・・。SEM付属のEDXを使って、ステイン 膜の分析をされてはいかがでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------------

    561. 圧着端子の加熱による強度変化

    Date: Fri, 13 May 2005 10:00:46 +0900
    Q1: はじめまして。
    突然のメール、失礼致します。
    私は、J社のRと申します(会社名・氏名は匿名でお願いします)。

    弊社では圧着端子を製造しているのですが、熱衝撃試験(+100℃~-55℃、30分 ずつ温度を切り替え、250サイクルからすでに強度変化あり)をした結果、圧着強度 が初期に比べて上がっていました。
    通常は、圧着部が熱衝撃によって開き、圧着強度は下がると考えられます。
    圧着端子の母材は銅合金、めっきはAuです。電線は銅線にSnめっきです。

    母材を扱っているメーカーにこの現象の原因を問合せたところ、母材自体のバネ性が 熱で回復すること、またSnとAuとで金属間化合物が生成されるためではないかとの 回答でした。

    ネット等でSn-Auの金属間化合物を調べたところ、大抵はんだの話になってしまい、 適当な答えが得られませんでした。
    はんだは使用していませんし、MAX100℃なので反応が進むような高温ではないと 思います。

    SnとAuはめっき同士でも100℃程度の温度下で金属間化合物を生成するのでしょう か。また、生成した化合物はどのようなもので、機械的強度が上がるのでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 13 May 2005 12:33:25 +0900
    A:R様、佐藤勝昭です。
     おたずねの件は、私のカバーできる専門領域を超えており、圧着端子 という特殊な分野での技術的な相談ですので一般性がなく「なんでもQ &A」の趣旨に沿わないと思います。
     ギョーカイでは常識かも知れませんが、圧着強度をどのように測定し ているのか、熱衝撃の具体的な加え方など、全く見当もつきません。
     おたずねのSn-Au金属間化合物については、たいていの理工系の図書 館に行かれるとHansenの相図(Hansen, M., and Anderko, K., “ Constitution of Binary Alloy”, McGraw-Hill, New York (1958))と いうのがありますから、それを見ればどんな金属間化合物ができるかの 見当がつきますから、それについて強度等をお調べになってはいかがで しょうか。ただ、メッキ程度の微量なものが圧着強度に影響を与えると は、考えられませんので、母材メーカーの指摘の「加熱により母材自体 のバネ性が回復した」というのが、最もあり得る話ではないかと思いま す。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 13 May 2005 12:17:40 +0900
    AA: こんにちは。お世話になっております。
    早速のご回答、ありがとうございました。
    特殊な質問をしてしまい、申し訳ありませんでした。
    ------------------------------------------------------------------

    562. Rayleighの分解能の式

    Q: 佐藤勝沼先生
    はじめまして。
    早稲田大学 理工学部 電気情報生命工学科2年の斉藤と申します。
    HPを見て質問させて頂きました。

    顕微鏡についてのレポートを書くのですが、「Reyleighの分解能の式」の導出方 法がどうしてもわからないので教えてください。
    ネットや書籍で探してみたのですが、「Reyleighの分解能の式」を使った分解能 の計算方法ばかりで、導出方法が一向に見つかりません。
    自分勝手な質問で申し訳ありませんが、何卒よろしくお願します。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 15 May 2005 02:52:26 +0900
    A:斉藤君、佐藤勝昭です。
     Rayleighの分解能の式は、多分にempiricalな式で、いわゆるdiffraction ringの最初 のdark ringの位置の計算から求められています。BornのOpticsに出ています。
     また、Wikipediaのangular resolution の項
    (http://www.answers.com/topic/angular-resolution)に詳しく書かれています。訳し ておきますと、
    ================================
    レンズの分解能は究極的に回折限界で制限されています。
    レンズの開口は、単一スリットの実験の2次元バージョンに対応する「孔」です。
    すなわち、この孔を通過する光は、自分自身と干渉し、画像をぼやけさせるリング状の 明るい回折パターンを生じます。
    経験的な回折限界はレイリーの判定基準
    sinθ=1.22λ/D
    で与えられます。ここにθは角度分解能、λは波長、Dはレンズの開口径です。
    因子1.22は回折パターンの中心の明るい円盤の周辺にある最初の暗いリングの位置の計 算値に由来しています。
    この因子は、人間の眼が、2つの離れた点光源を区別する能力を近似することに使わ れ、回折パターンの明るい円盤の重なり具合に依存しています。
    ビデオセンサーを用いた近代的な顕微鏡や望遠鏡では、明るいパターンの重なりを区別 する能力が人間の眼より少しばかり高くなります。
    と書かれています。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 15 May 2005 22:55:57 +0900
    AA: 佐藤勝沼先生

    早稲田大学理工学部電気情報生命工学科2年の斉藤です。
    お忙しいなか、どうもありがとうございました。

    なるほど、英語のページまではカバーしていませんでした。
    日本語版のwikipediaには行ってみたのですが・・・

    今日は一日大学の中央図書館で資料を探しており、返事が遅くなってしまい、申 し訳ありません。
    レポートは今から書く予定です。
    本当に助かりました。
    -----------------------------------------------------------------------

    563. 低抵抗液体の誘電率測定法

    Date: Wed, 18 May 2005 10:39:54 +0900
    Q: 佐藤先生
    初めてのメールになります。
    Q&Aのサイトを拝見し質問させていただいております。
    私はS大学の電気電子科の大学院1年生のSと申します。
    (匿名でお願いします)

    私は取り扱いが危険な液体を容器の中に入れて外側に電極 をつけてLCRメータなどでキャパシタンスを測定してやることで 中に入っている液体の誘電率を測定するという実験をしています。
    ただこの方法ですと液体の抵抗値が低いもの(硫酸など)を測定対象としたとき うまくキャパシタンスの測定が出来ません。
    しかし、文献値には硫酸の誘電率は100と載っています。
    そこで質問なのですが、このように抵抗値が低い液体の誘電率の文献値は どのような方法で測定されたものなのでしょうか?
    お忙しいとは思いますが、よろしければ御回答をよろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 18 May 2005 20:45:40 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。硫酸などのイオン性水溶液の誘電率の測定は、簡 単ではありません。電極表面付近に電気2重層を作って、キャパシタの 働きをするので、硫酸そのもののR, Cと、電気2重層のR, Cとが直列に つながったようなものになります。周波数が低い場合、硫酸のインピー ダンスはほとんどRだけで決まってきますが、2重層のインピーダンスは Cだけで決まります。電気2重層のキャパシタンスは20-30μF/cm^2なの で、電極面積が大きいと、非常に大きな値となります。CRで決まる周波 数より高い周波数では、電気2重層のインピーダンスはゼロに近くなる でしょう。すると、直列のインピーダンスは溶液のみのインピーダンス で決まることになり、さらに周波数依存性から、溶液のCRが求められ、 Rが分かれば、Cが得られるでしょう。
    従って、この測定系のインピーダンスはどの周波数を使うかで、大きく 変わってくるでしょう。周波数分散をとってやる必要があると思います。
    文献に出ている誘電率の値は、どうやっているかは、分かりません。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 19 May 2005 19:05:29 +0900
    AA: すばやい返答ありがとうございました。
    イオン性水溶液のでは電極表面付近に電気2重層 ができるというのは初耳でまだまだ勉強不足だなと実感しました。
    -------------------------------------------------------------

    564. 光導電材料の感度

    Date: Sat, 21 May 2005 15:04:16 -0400
    Q: 佐藤先生
    T大のKと申します。
    (申し訳ありませんが、ネットには匿名でお願い致します。)

    お忙しいところ、申し訳ありません。
    光導電性材料を用いた複合材料の研究を行おうと思い、光導電性材料に関する 勉強を始めましたが、幾つか分からない点がありましてご教授頂きたく思い、 メール致しました。どうかよろしくお願い致します。
    これまで金属ばかり扱っておりまして、半導体に関しては全くの素人ですので、 的はずれなことを書いているかも知れませんが、その際はご指摘頂ければ 嬉しく思います。

    質問は2点あります。
      光導電性材料の感度を決めるファクターとして、G(利得)=τ/Tがあります。
      Photoconductivity of Solidsという本によれば、キャリアのライフタイム τ は、τ =(nSv)-1とのことですが、この式の意味が分かりません。
      おそらく「キャリアが多いほどτが短くなる」という意味で、Svは物質固有の 定数になるのだと思いますが(半導体における熱励起キャリアと同じだと考えて います)、それではSvの物理的意味は何なのでしょうか。また、Svを小さくするための 物質設計の指針はあるのでしょうか。
    1. 今の質問と関係するのですが、PbSは光導電材料として用いられています。しかし、 PbSはバンドギャップが小さく、そのため熱励起キャリア密度が~1018 /cm3と 非常に大きいため、暗電流が非常に大きくなってしまい、これによって光電流の効果が 目立たなくなってしまい、光導電材料として適していないのではないかと思います。
      ところが、G(利得)は~105ほどもあり、これは可視光域のギャップを持つCdSと比べても遜色ありません。このように高い感度を持つ理由は何故なのでしょうか。
     以上です。長文になってしまい申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 22 May 2005 23:36:23 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     光導電の利得Gはτ/Tで与えられます。光吸収によってバンドに生成されたキャ リアのライフタイムτは、浅いトラップ準位によるキャリアの捕捉とバンドへの 再励起のプロセスも含むライフタイムです。一方、キャリア走行時間Tは、電極 から対抗電極へとキャリアが走行する時間です。従って、1度、光吸収で生成さ れたキャリアは、再結合で消滅するまでは何度でも繰り返して、電気伝導に寄与 するのです。従って、利得G=τ/Tは、この繰り返しの回数であると考えられます。
     τが、キャリア密度に比例する理由を考えましょう。例えばn型半導体に光を当 てると、電子とホールが生成されますが、電子は多数キャリアなので注入でき ず、光導電に寄与するのはホールだけです。従って、このホールが再結合する相 手は多数キャリアである電子で、電子の密度をnとすると、再結合の確率(1/τ;単 位は[s-1])は、密度n[m-3]と、衝突断面積S[m2]と単位時間あたりのキャリア の進む距離(すなわちキャリア速度v)[m/s]に比例します。すなわち、1/τ=nSvです。
     τを増加するためには、キャリア密度を減少するほか、トラッピングと再励起 を繰り返せるように、適当な浅いトラップを導入するというやり方をとることが できます。PbSはCdSに比べてバンドギャップが狭いので、トラップ準位も浅いた め、実効的にτを増大できるのでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 22 May 2005 11:26:07 -0400
    AA: 佐藤勝昭 先生
     T大のKです。
     ご多忙にも関わらず丁寧な説明をして頂き、ありがとうございました。私は、キャリアのトラッピングに関する知識が不足しており、先生の ご説明をまだ十分に理解できておりませんので、これから半導体の基礎を勉強し直し、その上で先生のご回答を熟考したいと思います。
     本当にありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 28 May 2005 16:50:21 -0400
    Q2:佐藤勝昭先生
     T大大学院1年のKです。
     光導電材料に関して、どうしても理解出来ない点があり、  数日間煮詰まってしまっております。
     お答え頂ければ幸いです。
     光導電材料は、浅いトラップ準位を入れることによってキャリアの  トラッピングと再励起を繰り返すことが出来ます。私の理解では、  トラップの意味は「貯蔵」であり、光が照射されている間はキャリアを蓄え、  光度が下がり、自由キャリアが減少すると放出し、減少を補っています。
     それでは、トラッピングは一定強度の光を照射している際には、光電導性の  改善(gain factorの増加)には何ら寄与しないのでしょうか。
     トラップが上記のようなものであるなら、トラップは「光度が下がった時に  光電導性が急激に落ちるのを防ぐ」だけのもので、「一定強度の光照射時の  光電流特性の向上」には関係ないように思えるのですが。
     以上です。お答え頂けたら非常に嬉しく思います。よろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 29 May 2005 10:16:35 +0900
    A2: K君、佐藤勝昭です。
     君はレート方程式というのを知っていますか。
    キャリアの生成と、トラッピングと、再励起をすべて考慮した微分方程式です。
    トラップの深さに分布を考えると、結構面倒なプロセスになります。ご質問の一 定照射の場合にも、トラップの埋まり方によるフェルミ準位の移動まで考えると 結構面倒な式になります。レート方程式の定常解を求めれば、光伝導の実際のゲ インを求めることができます。
     J G Simmons et al:The theory of photoconductivity in defect insulators containing discrete trap levels; J. Phys. C: Solid State Phys. 8 (1975) 3353-3359 をきちんと読まれることをお薦めします。
    ------------------------------------------------------------------------

    565. Geの仕事関数と電子親和力

    Date: Sun, 22 May 2005 10:54:58 +0900
    Q: 自分はS大学3年のNといいます。
    HPを見てメールしました。

    Geのn形半導体においての仕事関数値と電子親和力を教えてもらえないでしょうか?お願いします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 22 May 2005 23:53:56 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
    真性Geの仕事関数は4.76eVです。n型の場合、真性の場合のフェルミ準位の位置 と伝導帯の底との間のエネルギー差0.4eVを引き約4.4eV程度でしょう。
    Geの電子親和力は119[kJ/mol]=119×103×1.036×10-5[eV]=1.23[eV]です。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 23 May 2005 06:28:49 +0900
    AA: どうもありがとうございました。
    ----------------------------------------------------------------------------

    566. 異種金属間における電位差と腐食速度

    Date: Thu, 26 May 2005 00:39:56 +0900
    Q: 佐藤先生
    HPを見ての質問です。
    電位差から発生する異種金属間の電食(GALVANIC CORROSION)について、電解質中 の雰囲気の条件があるとします。
    Q-1
    いろいろと参考文献を探してみましたが、異種金属間における電位差と腐食速度の関 係式が見当たりません。電位差を元にして防食処置か必要か否かの目安になる根拠は あるのでしょうか? Q-2
    具体例としては油圧配管材料にアルミニウム合金とオーステナイト系ステンレス鋼を 海水の雰囲気にさらして接続した場合、単独金属と比較した腐食速度は何倍くらいに なるのでしょうか?
    Q-3
    電食に対し防食処置が必要となる組み合わせは一般常識的に次の金属間で必要でしょ うか
    鋼 と キュープロニッケル(Cu:Ni=70:30)
    鋼 と モネル
    オーステナイ系ステンレス と チタン
    オーステナイ系ステンレス と アルミニウム合金

    ご多忙のところとは思いますが、宜しくご教授いただければ幸いです。

    艦船修理技師 ・ 村上誠治
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 26 May 2005 20:34:05 +0900
    村上様、佐藤勝昭です。
     申し訳ございませんが、私は、この方面の専門家ではないので、適切なアドバイスができませんが、
    デラウェア大学のSea Grant Marine Advisory SystemのWebにあるGalvanic corrosionに関するpdfが大変わかりやすく異種金属間の腐食の仕組みとアノード側の腐食の進行の速さについて説明していますので、ご自分でお読みになって下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 26 May 2005 23:40:11 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生

    お忙しいところ、ご返信ありがとうございます。
    早速お教えいただいたデラウェア大学のWEBページからgalvanic corrosion に関する 記述を見てみました。
    私が所持している資料にはない合金としての電位差配列表があり、また対応策も明確 に説明してあります。
    特にお聞きしたかったアルミ合金とステンレス間の具体例が出ており、十分活用でき そうです。
    本当に適切な情報をお知らせいただいて、心より感謝する次第です。ありがとうござ いました。
    ますますのご活躍をお祈りいたします。
    また、機会がありましたら是非ともご指導いただきたいと思っております。
    先ずはお礼まで。

    村上誠治
    ---------------------------------------------------------------------------

    567. シリコンの熱酸化膜形成によるシリコンの消費

    Date: Fri, 27 May 2005 13:10:54 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
    はじめまして。
    T大学大学院M1のTと申します。(匿名でお願いします)
    HPを見て質問させて頂きました。
    私は研究室でCMOS微細化の研究をしています。
    シリコンの熱酸化についての質問です。
    熱酸化によってSiO2が形成されるとき、その酸化膜厚の44%のSiが消費されるような のですが、そのメカニズムを教えてください。本によっては46%になっているものも あり、いまいちその値の算出方法がわかりません。
    よろしくお願致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 27 May 2005 21:42:15 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     シリコンの酸化は、Si-SiO2界面で起きますから、界面のシリコンは 酸化が進むとともに消費されます。酸化物の成長とともにSi-SiO2界面 はシリコン基板の奥へと進行します。その結果、界面は常に元のシリコ ン基板表面の下部に存在します。一方、SiO2表面は元のシリコン基板表 面の上にあります。このため、SiO2の形成は、元のシリコン表面から、 上下2方向に進みます。SiO2が形成されたことによって消費されたシリ コン量は、SiとSiO2の相対的な密度と分子量から計算することができま す。
    TSi/TSiO2=(SiO2の密度/Siの密度)×(Siの分子量/SiO2の分子量)=
    (2.22/2.33)×(28.085/60.085)=44.5%
    消費されたシリコンの厚みは、形成された酸化物の厚みの44%です。
    SemiconFareastのHP をごらんください。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 28 May 2005 13:10:09 +0900
    Q2:佐藤勝昭先生
    T大学大学院 M1のTです。
    ご回答ありがとうございました。大変参考になりました。
    計算に使う密度や分子量の微妙な違いで2%くらいの誤差がでるようです。
    先生の式では44.5%となっていますが、それを四捨五入すると45%となります。
    しかし消費されたシリコンの厚みは酸化物の44%であるというのは、 その1%の差は上記したようなことからくると解釈してよろしいのでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 28 May 2005 17:01:11 +0900
    AA: T君、佐藤勝昭です。
     SiO2は石英ガラスです。作り方で密度は大幅に変化します。
    2.22というのは透明石英の値なので、いろんなケースが考えられます。
    不透明石英では2.07です。44-46%の幅のあるものになるのが正解です。
    -------------------------------------------------------------------------

    568. 樹脂の硬さ測定法

    Date: Tue, 24 May 2005 22:04:56 +0900
    Q: 物性なんでもQ&Aを楽しく趣味の範囲で読ませて頂いていたものです。
    今回初めて御質問させて頂きます。
    質問の前に
    名前:S 所属:N㈱ 技術開発センター
    名前及び所属の公開はご容赦願います。
    現在、樹脂材料(スーパーエンプラ)について製品設計を行っています。
    質問の内容ですが、樹脂材料の硬さ測定方法について御教授願います。
    樹脂材料の硬さ評価方法として私の方で適切であると思った方法が、ビッカース硬度 計を用いて測る事でした。
    上記の方法では、ビッカース硬度計の菱形◆の圧痕が樹脂の弾性により丸●になって しまい、正確に読み取ることが出来ません。(厳密には全く)
    測定対象が弾性体(ゴム等より硬いもの)の場合、他に有効な測定方法はございます でしょうか?
    陳腐な質問で申し訳ございませんが、御教授の程宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sunday, May 29, 2005 10:59 AM
    A: N㈱S様、佐藤勝昭です。
     専門外なので、お返事が遅くなりました。機械科の教員に尋ねたのですが、 Vickersの硬さ測定は金属には適用できますが、樹脂材料の硬さ測定には向かな いとのことでした。樹脂材料の硬さ評価には、ショアーの硬さが使われます。  ショアー硬度(Shore hardness)というのは、先端にダイヤモンドを取り付けた 小さなハンマーを試料表面に落下させたときの跳ね上がりの高さから求めた硬さ のことを言います。 
     ダイヤル直読でショアー硬さを測定する装置をDurometerと呼ぶようです。 Matwebというサイト(http://www.matweb.com/reference/shore-hardness.asp) に「Shore (Durometer) Hardness Testing of Plastics」が書かれています。そ れによると、「硬さの値は、Durometerのインデンタの足の浸入長で測定しま す。ゴムやプラスチックには回復力があるので、浸入長の読みは時間とともに変 化します。従って、硬さの表示には、インデント時間も書き添えられている場合 があります。」これは、本来のショアー硬さの定義とは大分違いうようですね。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 29 May 2005 21:28:19 +0900
    AA: 専門外の質問に御丁寧に御答え頂きまして有難うございます。
    御教授受けた内容を自分なりにさらに調べたいと思います。
    これからも「物性なんでも…」を楽しく拝見させて頂きます。
    どうも有難うございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    569. 水の最大密度

    Date: Sun, 29 May 2005 21:58:57 +0900
    Q: お世話になります。

    物性なんでもQ&Aを楽しく読んでいます。
    名前:S 所属:N㈱ 技術開発センター 専攻 化学
    名前及び所属の公開はご容赦願います。

    仕事柄、溶剤及び溶液等に常日頃から接していて疑問に思った事象があります
    。 完全に趣味の範囲の質問をさせて頂きます。
    (液体から固体になると密度が上がる)←世間一般に広く浸透している事象です。
    しかし水は「固体時の密度<液体時の密度(温度≒4℃)=最大密度」という事も一 般に浸透しています。
    早速質問ですが、なぜ水だけ(リンも?)は固体時の密度よりも液体時の密度の方が 高いという特異な性質を発現しているのでしょうか?
    本来は自分で調べるべきことなのでしょうが、なかなか核心めいたことを書いてある 書面等がありません。
    英文でも構わないので参考になる論文等も御教授頂けたら幸いです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 30 May 2005 02:03:20 +0900
    A: N社S様、佐藤勝昭です。
    London South Bank UniversityのWater and Aqueous Systems Researchの教授で あるMartin Chaplin博士の
    水についての素晴らしいホームページがあります。そのなかの、
    Forty-one Anomalies of Water に次のように書かれています。
    「液体の水の高い密度は主として水素結合のネットワークの凝集性によるもので す。これによって水の自由体積は減少し、水素結合ネットワークの本来持つオー プンな正確を補償し比較的大きな密度をもたらしています。しかし、水の密度は 等電子の最密構造をもつ液体ネオンほどは大きくありません。液体は一般にすべ ての温度において温度とともに膨張するものです。水の異常な温度-密度関係 は、12面体のひだの程度の違うさまざまなクラスタが部分的に形成され、それら が広い範囲にわたる異なる環境を持つことで説明されます。最大密度は、温度が 上昇したときに、構造的な「押しつぶし」をもたらす効果と熱による膨張の効果 の相反する効果の釣り合いによってもたらされます。」
    ここだけでは、よくわかりませんが、原文全体をよくお読み下さい。
    -------------------------------------------------------------------------

    570. LEDの通電劣化の原因

    Date: Thu, 2 Jun 2005 21:27:22 +0900 (JST)
    Q: はじめまして。いつもHPを楽しみに拝見しております。私はT(株)のZと申します。 会社名と氏名は匿名でお願いいたします。

    さて、現在発光ダイオードの信頼性を評価する部署におり、通電ライフ試験をこの春から担当いたしました。 色々な環境で電流値を変え、通電による発光出力の劣化を調べております。
    そこで、すごく基本的な事をお聞きしますが、なぜ、LEDは通電量や環境温度(特に温度)に依存して、輝度が劣化するのでしょうか?
    簡単に考えると、非発光センター(結晶欠陥?)が初期の状態よりも増えて、非発光成分が増えるためでしょうが、なぜ通電や温度(あるいは樹脂のストレスでも)欠陥が増えるのでしょうか?
     部の先輩に聞いた所、熱エネルギーやバイアスによるエネルギーを半導体に与えると、欠陥が増えるための活性化エネルギーを与える事になり、その結果、欠陥が増え、輝度が落ちるとの事でした。
     この説明が正しいのかどうか。 また関連する文献や書籍を調べたいのですが、ネットで検索してもなかなか良い文献に行き当たりません。どうかご教授くださいますようお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 03 Jun 2005 00:10:12 +0900
    A: Z様、佐藤勝昭です。
     手元に資料がないので、正確なお答えは後ほどにさせてください。
    GaAsのLEDの寿命の問題は1970-80年代に詳しく研究されました。
    たとえば、O'Haraによるreview
    S O'Hara: The degradation of semiconductor light-emitting diodes,
    high-radiance lamps and lasers; J. Phys. D: Appl. Phys. 10 (1977) 409-430
    をご参照下さい。LEDの劣化は、主としてDLD(dark line dfect)という暗線が成 長していくことによってもたらされます。これは、転位が原因であるとされてい ます。
    NASAのレポートに簡単なまとめがあります。
    http://misspiggy.gsfc.nasa.gov/tva/meldoc/sources1.pdf
    「LEDやレーザの劣化の主な原因は:半導体内部に影響を与える転位、電極に影 響を与える金属拡散と合金反応、部品の接合に影響を与える半田の不安定、ヒー トシンクとの接合金属の分離、内部に埋め込まれたヘテロ構造デバイスの欠陥な どである。これらは、室温動作中に電流によって増強される。酸化によるファ セットの損傷も光や湿気によって増強される。」と書かれています。
    さらに読み進むと
    「内部の劣化:点欠陥と暗線欠陥(DLD):内部での劣化の主因は、材料ばかりで なく、結晶構造の方位にも関係しており、[100]方位に沿って成長する。これ は、格子間原子や空孔点欠陥が引き金になっているとされる。AlGaAs/GaAsの転 位の成長は、InGaAs(P)/InPにくらべはるかに高い。一般に、材料の波長に対す る応答が長波長で起きるほど、転位の成長は点欠陥に敏感ではなくなる。この欠 陥が結晶構造において面欠陥を生じるとき、点欠陥が遅い劣化をもたらすことも あれば、速い劣化をもたらすこともある。これらの欠陥を防ぐ唯一の手段は結晶 成長技術の改善である。」
    と書かれています。
    半導体光デバイスの信頼性解析については豊橋技科大の福田光男先生がNTT時代 になさった仕事が有名です。
    ---------------------------------------------------------------------

    571. バンドギャップボーイングの起源

    Date: Fri, 3 Jun 2005 10:18:39 +0900
    佐藤勝昭様
    N社Tと申します。(匿名にてお願いいたします。)

    貴HPをいつも楽しく拝見させていただいております。

    バンドギャップボーイングの起源について質問をさせてください。
    例えば、以下のHPでZnOSeなどの禁制帯湾曲が紹介されています。
    http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol02_11/vol02_11_main.html#f

    ・バンドギャップボーイングはなぜ起きるのでしょうか?
    ・二種の半導体を混合しても、ギャップは濃度に対して直線的に変化する場合 (GaAsP)もあると思うのですが、これは湾曲の曲率が小さいと考えるのでしょうか?
    (GaAsPの例は「最新半導体工学」朝倉書店p43にあります。)

    何卒、よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 4 Jun 2005 19:50:36 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
     最近GaInNに関連してバンドギャップの組成依存性の実験および理論による研究が盛ん になっております。もともとは、実験的に観測されたものです。2次関数で近似され、係 数がボウイングパラメータとしてリストアップされます。実験的なものなので、組成の 揺らぎなどがあると、バンドギャップは低く出るので、各組成のalloyについて周期ポテ ンシャルが決まり、それにもとづいてバンド構造がきまり、バンドギャップが得られま す。組成を変えたときにギャップが直線的に変化する方が不思議です。
    InGaNの理論計算の例は、
    Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 41 (2002) pp. 73-74
    をお読み下さい。やはりボウイングが見られるようです。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 7 Jun 2005 09:27:05 +0900
    AA: 佐藤勝昭教授
    N社Tです。

    ご教授いただきありがとうございました。
     各組成について周期ポテンシャルが決まり、バンド構造、およびフーリエ成分である バンドギャップが決まる、とのこと定性的にはなんとなく理解できます。この考えを推し 進めると、周期ポテンシャルを大きく乱すようなものを添加すると、大きなボーイング 効果が得られるということになるのでしょうか。GaAsPの場合では、AsとPがよく似て いたということかも知れません。

    ご紹介いただいた論文を読んでみましたが、まだ自分でいろいろ勉強してみる必要が ありそうです。

    どうもありがとうございました。
    ----------------------------------------------------------------------------

    572. 温泉水の冷却

    Date: Sun, 5 Jun 2005 00:25:34 +0900 (JST)
    はじめまして、S社Kと申します。
    今回、物性なんでもQ&AのHPを拝見し、質問させていただいております。
    (上記、匿名にてお願いいたします。)

    質問の内容は、勤務と畑違いの内容になります。分野としては“熱物性”に相当するものと思われますが、 実家で経営している温泉の源泉冷却に関するものです。(背景は添付資料を参照ください。)
    添付資料に簡単な図を載せておりますが、高温(約70℃)の源泉を近くの川から水を引いて作った池の中を通すことで適温(約40℃前後)まで冷ますことが可能かどうかということがご相談させていただきたい内容です。

    添付資料中に記載のように、池を通す管の材料、その長さ、厚さといったことがダイレクトに効いてくるとは思うのですが、私の方にその知識がなく、先生のお知恵をお貸しいただければと思い、質問させていただきました。

    参考になる指針のようなもの(理論式など)をご教授いただくだけでも構いませんので、何卒、よろしくお願いします。

    必要な情報などがございましたらご連絡ください。
    以上です。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 05 Jun 2005 02:29:21 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     この手の問題は原子炉の冷却水や熱交換器を通した加熱・冷却などと同じ考え 方でよいと思います。詳細は、ハンドブックを参照されてはいかがでしょうか。
     考え方を述べておきましょう。
    長さL(cm)、半径r(cm)で肉厚t(cm)のステンレスパイプ:熱伝導率k=15(J/smK)が 池(t0=20℃)に浸かっているとします。このパイプ内の水をt1=70℃からt2=40℃にす るには、重量(πLr^2(g))×比熱(4.2(J/g・K))×温度差(t1-t2=30)だけの熱量ΔQ(J) の変化が必要です。例えば、半径1cm、長さ100m=10^4cmのパイプであれば、
    ΔQ= 4.2π×10^4×30=3.96×10^6(J)の熱の移動が必要です。
    一方、パイプの表面積Sは2πLrですから、厚さtのパイプの裏表の温度差ΔTをとお して1秒間に流れる熱量はS(m)k(J/smK)ΔT(K)/t(m)です。半径1cm、長さ100m、肉 厚1mmのパイプの場合S=2π(m^2), t=10^-3mなので、ΔTとして70℃と40℃の平均値と 池の温度の差=55-20=35を代入して、
    熱流I(1秒間に運べる熱量)は2π×15× 35/0.001(J/s)=3.297×10^6(J/s)となります。
    従って、ΔQ/I=3.96×10^6/3.297×10^6=1.2(s)となり、1.2秒で熱量をまかなえる ことになります。すると流速は、4.2π×10^4(cm^3)/1.2(s)=1.099×10^5(cm^3/s)= 6.59(m^3/min)
    となり、原理的には半径1cm、肉厚1mmのステンレスパイプを100m池に沈めれば、 毎分6.6立米の70℃の水を40℃に冷却できる勘定になります。
    およその見積もりなので、間違っているかも知れません。比熱の単位はcgs、kの 単位はSIになっているので、換算のミスがあるかも知れません。上の導出をフォ ローしてみてください。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 6 Jun 2005 19:51:04 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭先生

    ご回答ありがとうございました。
    ご教授いただきました内容を参考に自分でもフォローしてみたいと思います。

    また何かありましたらご助力のほどよろしくお願いします。

    以上です。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 19 Jun 2005 23:02:28 +0900 (JST)
    Q2:佐藤様
    以前、表記の件に関してご質問させていただきましたKです。

    仕事の都合で、先生に回答いただきました内容を やっと最近になって確認できたのですが、 一つお聞きしたい点が生じましたので、 今回、再度メールさせていただいております。

    質問の内容は、前回ご回答いただいた “流速”に関する記述の部分についてになります。

    回答文にて、流速の計算過程を、
     >4.2π×10^4(cm^3)/1.2(s)=1.099×10^5(cm^3/s)=
     >6.59(m^3/min)
    のように記述してありました。

    上記の計算では、式の冒頭に“4.2” という値が入っています。
    おそらくこの値は“水の比熱”と思われます。
    ただ、この流速は、
     (流れた量[体積])/(要した時間)
    で単純に求まる量だと思うのですが、 比熱、即ち熱量を考慮する必要性はあるのでしょうか?

    それとも、この“4.2”という値は、 “比熱”とは異なる要素から出た値でしょうか?
    その場合、何を元に生じた値になるのでしょうか?

    この値の有り無しで、結果が大きく変動しますので、 お忙しい中申し訳ありませんが、 ご教授のほど、よろしくお願いします。

    以上です。
    --------------------------------------------------------
    Date: Sun, 19 Jun 2005 23:21:11 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭です。
    4.2はカロリーcalをジュールJに換算するときに入ってきた量です。
    ------------------------------------------------------------

    573. 42合金の光吸収係数

    Date: Mon, 6 Jun 2005 13:08:02 +0900
    Q:佐藤勝昭先生

    X高専のHと申します。初めてメールします。
    現在、Si基板や金属基板の上の有機薄膜にレーザーを当てる研究をしています。
    調べているうちに先生のHPに行き当たりました。
    教員がこのようなことを尋ねるのは誠に恥ずかしいかぎりですが、宜しければご教示頂ければ幸いです。

    42-アロイ(Fe:Ni=42:58 wt%)の吸収係数を最終的に知りたくてメールさせて頂きました。波長は、Nd3+YAG レーザーの第二高調波(532nm)です。
    おそらく42-アロイそのものの吸収係数はないと思いますので、鉄、Niから想像することになると思いますが、この2つの金属の吸収係数の間に入ると考えてよいのでしょうか?
    また、鉄、Ni自身の吸収係数も残念ながら見つけれませんでした。Siに比較すると一桁以上大きいことまではわかりました。
    先生のHPを拝見しますと「Landolt Boernstein “New Series III 15 b Optical constants of pure metal”」を見ればわかるようですが手元にありません。ページ数も教えていただければ幸いです。
    Siは調べましたところ4x104cm-1 at 530nmでした。これで宜しいでしょうか?

    誠に勝手なお願いですが、何卒宜しくお願いします。
    (匿名、匿所属でお願いいたします)
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 10 Jun 2005 02:15:05 +0900
    A: H先生、佐藤勝昭です。
    Fe、Niの光学定数は、Johnson and Christyの論文に出ています。
    P. B. Johnson and R. W. Christy: Optical constants of transition metals: Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, and Pd; Phys. Rev. B 9, 5056-5070 (1974)
     Fe-Ni合金の光学的性質がFeとNiの合金比に比例して変わるということはおそ らくないと存じます。Feはbcc、Niはfccと結晶構造が違うので、合金のバンド構 造は単純ではないので正確な光学定数は推定できないと存じます。
     しかし、今欲しいのは吸収係数ですから、FeとNiでそれほど変わるとは思えま せん。また波長依存性もあまり大きくありません。文献にはn, kが載っています から、α=4πk/λを使って吸収係数を計算してください。
     なお、Siの吸収係数は、おっしゃるとおりだと存じます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 10 Jun 2005 14:50:19 +0900
    AA: 佐藤勝昭東京農工大学副学長殿

    お忙しいところ真にありがとうございました。
    現在文献を取り寄せています。

    多忙の中このような教育啓蒙活動を続けておられることに頭が下がる思いです。
    少しでも先生を見習いがんばりたいと思っています。
    取り急ぎお礼まで。 
    ---------------------------------------------------------------------------

    574. コランダムの熱膨張係数の方位依存性

    Date: Thu, 09 Jun 2005 10:20:47 +0900
    Q:名前:M.O 所属:Y専 研究科

     卒論で、コランダムの熱膨張率が必要になり図書やネットで検索したのですが、固 体全体に対するものしかなく困っています。
     格結晶軸方向での熱膨張率を知りたくメールしました。もしかしたら、あまり変わ らないのかもしれませんが知っててやるのと知らずにやるのとではと、、、、
     よろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 10 Jun 2005 01:33:41 +0900
    A:M.O.君、佐藤勝昭です。
    コランダムの異方的熱膨張率は
    http://www.chinaluckygems.com/property-1.htm
    に載っています。
    それによると人工コランダムの熱膨張率は
    C-軸に平行: 6.7×10^-6/deg
    C-軸に垂直: 5.0×10^-6/deg
    となっています。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 15 Jun 2005 10:12:00 +0900
    AA: 今日ページを確認し、返事が遅くなり申し訳ありません。
    大変面白いページで、これからも利用させていただきます。
    お忙しい中ありがとうございました

    ----------------------------------------------------------------------------

    575. 超伝導体への電場の侵入長

    Q: 私はM社Yです。
    所属と名前は匿名でお願いします。技術系の管理職です。

    突然のメールの失礼をお許しください。
    ホームページを見せて頂来ました。その中に超伝導体 と完全導体の違いについて大変分かりやすい絵が書かれて いました。差がはっきり認識でき大変勉強になりました。

    ところで是非これに近い問題で教えて頂きたいと考え失礼 を承知でメールさせて頂きました。

    (1)超伝導体の平板(例えば)に電界をかけたとき多分表面
       電荷が現れると思うのですがこの現象は完全導体と全く
       同じなのでしょうか。

    (2)磁場浸入長というのがありますが電流深さも同程度だと
       聞いていますが電界が存在する深さみたいなものは今まで
       目にしたことがありません。電界浸入のような概念はあるので
       しょうか。

    (3)臨界磁場、臨界電流値と同じように電界の臨界強度や電荷
      の臨界面密度のようなものは全く存在しないのでしょうか。

    超伝導は全くの素人で基礎知識もほとんどありません。分かりやすく ご説明いただければ幸いです。よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 14 Jun 2005 15:39:32 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
     超伝導の物理に詳しい本学物理システム工学専攻の内藤教授にお伺い しましたたところ、下記のような明快な回答をもらいましたので転送し ておきます。
    ===========================================================
    (1)
    導体(金属)の静電場や電荷に対する応答には、J=σEは用いません。
    遮蔽の長さのスケールは、ポアッソン方程式を用いて出てくるトーマス・ フェルミの 長さλ
    λ2=4πexp{2N(EF)}
    です。この導出は、常伝導金属か超伝導体かには依らないと思います。

    (2)
    マックスウェル方程式から、磁場Bと電流Jの関係は
    rot B=μ0J
    で与えられますから、磁場侵入深さと電流侵入深さは同じです。
    電界の侵入深さは上述のように静電界であれば、トーマス・フェルミ 長さですから磁場侵入深さとは関係ありません。電磁波であれば、電界 と磁界は等価ですからどちらの侵入長も同じです。

    (3)
    静電界を意味するのであれば、導体中には電界は存在しませんから、超 伝導を破壊する電界・電荷の臨界強度という概念は存在しないと思いま す。時間的に変化する電場であれば、臨界磁場、臨界電流値との切り分 けはできないと思います。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 18 Jun 2005 01:24:37 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生 

    お礼を申し上げるのが大変遅くなりました。申し訳ございません。
    電界に対する振る舞いは常伝導体と同じ考え方でよいことがわかり 安心いたしました。教科書ではあまり解説されていなかった事項なので 質問させていただきました。これで電場磁場中の超伝導体中の振る舞い がバランス良く理解できるようになりました。ありがとうございました。
    今後ともご指導お願い申しあげます。
    内藤先生にもどうかよろしくお伝えください。
    ------------------------------------------------------------------------

    576. 不純物半導体のフェルミ準位の決定法

    Date: Tue, 14 Jun 2005 09:44:44 +0900
    Q: こんにちは。W大学D科3年のSと申します(匿名でお願いいたします)。
    佐藤先生のHPを見つけて以来、いつも拝見させていただいております。
    現在授業で半導体物性についてまなんでおります。その際いくつか不明 な点があります。おそらく基本的な事だと思うのですが、
    1.室温(300[K])においてGaAsの不純物濃度が具体的に与えられている場 合、フェルミ準位はどのように求めればよいのですか??計算による求め方や作図に よる求め方があるらしいのですが・・・
    2.GaAsの室温(300[K])におけるNc、Nvはどうなるのですか?? なんか基本的なことで申し訳ありません。学校の図書館のどで調べたのですが、Ga Asについて記載されているものがうまく見つからず、質問させていただきました。 また、上記の質問においてGaAsが、例えばSiであった場合はどのように変わる のですか?
    大変忙しいと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 14 Jun 2005 13:28:48 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
     あなたの学科のシラバスを検索した結果、D科3年であれば、H先生の「半導体の物理」 が該当する科目であることがわかりました。シラバスに依れば、参考書としてSzeの 「半導体デバイスの物理」(Sze、コロナ社)が指定されています。
    手元には、訳本ではなく原著しかありませんが、フェルミ準位の式は1.4.3節(36)式にで ています。シリコンについての図はFig.17です。Nc,NvをGaAsの場合に適用するには、有 効質量などを調べて(12)(15)式に代入して下さい。
    (式の番号は原著の番号なので、訳本でどうなっているかは不明です。)
    -------------------------------------------------------------------------

    577. メッキの素過程における結晶成長

    Date: Mon, 6 Jun 2005 15:00:51 +0900
    ICメーカーに勤務している松永と言います。
     メッキの組織を調査していますが、メッキの断面を反射電子像、EBSP法 で表したものは有ります。 従って、結晶方位などの関わりはイメージ出来 ますが、メッキそのものの結晶化プロセスについては未だ理解しておりま せん。 陰極に吸着した原子が結晶核、キンク、ステップに放電若しくは 表面拡散により最初の被膜が形成される模型図は存在します。
     しかし、その後にどういうプロセスで原子が積層されてメッキが成長して、 所定の厚さまで成長していくのかは分かりません。
     次の、メッキの場合の膜形成過程及び、第1層との積層形態について 知りたいのですが、宜しくお願いします。
    STEP1 素材と第1層との接合(素材との界面)
    STEP2 その後の原子層の積層、成長プロセス。形態。
    電気メッキ(電界メッキ)
    (エピタキシャル成長?)
    化学メッキ(無電界メッキ)
    (エピタキシャル成長?)
    溶融メッキ
    溶射メッキ
    蒸着メッキ
    気相メッキ
    粉体メッキ
    以上ですが、宜しくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 10 Jun 2005 20:05:11 +0900
    A: 松永様、佐藤勝昭です。
     このご質問は専門外なので、本学で電気化学の研究をしている先生に 聞きました。メッキのプロセスをミクロの結晶成長の目で見ている研究 はほとんどないので、ご質問のような問題は、それ自身が研究課題であ ろうとのことでした。しかし、理論的に成長過程を解析し、説明するこ とが可能な真空中のエピタキシャル成長に比べ、液体が絡む複雑な過程 なので、それほど簡単な話ではないだろうということでした。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 16:16:24 +0900
    AA: 佐藤先生  

    回答いただきどうも有り難うございます。
    専門外の質問にも調査いただいたことを感謝しています。
    今後も可能な範囲で観察していきたいと思います。
    --------------------------------------------------------------------------

    578. 拡散反射を高くするには

    Date: Mon, 6 Jun 2005 17:07:30 +0900
    Q: 東京農工大学副学長 佐藤先生

    はじめまして。F社のMと申します(貴研究室ウェブサイトに掲載の折に は社名と私の名前を匿名にてお願いします)。
    先生の物性なんでもQ&Aを楽し く拝見させていただいております。非常に内容が濃く、広範ですのでなかなかま とまって拝見する時間がとれないのが残念です。

    さて私はプラスチックの光学部品製作に携わっています。含有する添加剤や内部 構造を変えることで透過率や反射率を所望の特性にするべく開発を行っておりま す。この設計にKubelka-Munk理論が使えないか、と考えて先生の過去のQ&Aを 読んでいくうちに下記の2点の疑問が起こりました。

    1)408「拡散反射を用いたバンドギャップ算出」の項で、拡散反射の Kubelka-Munk理論についてはMid Sweden大のPer Edstrom氏のウェブサイトを見 るように、と書かれていますが、外部からではアクセス制限されてしまうようで す。大変申し訳ありませんがお時間のあるときに貴研究室のHPにアップしていた だければ幸いです。

    2)可視光領域で拡散反射率が最も高いのは炭酸マグネシウムの98%(建築学大 系:昭和44年)という情報を得ています。これに対し拡散反射率100%のものを 作製したいとき、Kubelka-Munk理論でいうところの吸収係数を限りなく0に近づ けた(散乱係数と全体の大きさは適宜設定)ものをつくるということでしょう か。また現在存在する物質を用いて挑戦するとしてどのくらいまで拡散反射率 100%に近づくことが可能でしょうか。

    お忙しいところ申し訳ありませんがご回答よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 10 Jun 2005 20:42:54 +0900
    A: F社M様、佐藤勝昭です。
     会議ばかりで時間がとれず、お返事が遅くなりました。申し訳ありま せん。実は、私は拡散反射を詳しく勉強したことはありませんので、人 の話の請け売りにしかすぎないのです。
    1)Kubelka-Munk理論を解説したPer Edstrom氏のWebは削除されていま した。この理論は1931年の古いものなので、最近はその改訂版が出てい るようです。GoogleでKubelka-Munkでご自身で検索してください。
    2)拡散反射で高い反射率を得るには、不純物濃度が低い(従って吸収 係数が低い)ものが適していることは言うまでもありませんが、市販品 の最も高いものでも98%位だと思います。 (たとえば、http://www.pro-lite.uk.com/Light/Labsphere/coatings.html) また、屈折率の大きなものも粒子内で全反射を起こしやすいので有利かと存じます。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 20 Jun 2005 09:56:46 +0900
    AA:東京農工大学副学長 佐藤様

    ご回答ありがとうございました。参考にさせていただきます。また当方も長期出 張のためお返事が遅れまして申し訳ございませんでした。

    ところで
    >GoogleでKubelka-Munkで検索
    はすでに行っておりまして、たとえば東大農学生命科学研究科 江前氏の文献で Kubelka-Munk理論の式を得ております。これを踏まえて吸収係数や散乱係数と反 射率の関係をいろいろ探っています。ただこの文献でいうところの散乱係数の算 出法がわからないので頓挫していました(吸収係数はランベルトの法則による吸 収係数と同一視できそうですが)。実際は実物の反射率を測定してそこから得る のでしょうが、設計の立場としては先に散乱係数を所望のものにしていく方向で すのでなかなか難しそうです。

    長くなってしまいましたがご回答ありがとうございました。これからも先生の ウェブサイトを参考にさせていただきたいと思います。
    ----------------------------------------------------------------------------

    579. YIGのディスアコモデーーション

    Date: Tue, 7 Jun 2005 19:21:05 +0900 (JST)
    Q: 私は光磁気(といっても分光器も無い)をホビーとして楽しんでいる老人で久武慶蔵と申します。佐藤先生のようなプロ中のプロの方に、しかも超ご多忙な方にこのような幼稚な質問するのは、大変失礼ですが、

    (1)
    添付しましたような保磁力のピークの解釈が私の能力ではつきません。この図は最大印加磁場は800 A/m、10kHz。BH-curve.試料は以前、無機材研の木村茂之氏からいただいたフローティングゾーン法により、作製したYIG単結晶リングです。酸素欠陥があるとは言われていました。光誘導透磁率効果は同じインゴットにかかわらずある場合とない場合があります。この試料は無い場合です。そのピークのでる温度の周波数依存性は2.5K -100kHzの間ではほとんどありません。昔の文献を見ますと、YIGの保磁力は指数関数的に単純に温度とともに下降します。何らかのレゾナンスか磁気余効か、だと思いますが、直流的測定が室温以下では出来ません。なお普通の初透磁率の温度変化では単調に増加するだけですが、低温で光照射した後で温度を上げると、ディスアコモデーションが200Kあたりで見られました。こういことはよくあることでしょうか?

    (2)U.Enz先生の昔出されたYIGにSiを添加すると、低温で光を感じて、透磁率が減少する理由として、Si(4+)に束縛されているFe(2+)が光を吸収すると、「遠く」のFe(3+)に電子が飛ばされる。Si近傍では結晶対称性がくずれ、磁気異方性に対する寄与は小さい。したがって透磁率が高い。しかし結晶対称性の良い所では生き返る、したがって透磁率が下がる。とのうまい考え方です。ところがある計算では結構バンド幅が広く、[遠くの」Fe2+はしたがって電子は動き回っている。それでも磁気異方性への寄与は大きいものでしょうか?私のイメージでは光でSi(4+)-Fe(2+)pairが光で切られると、charge balanceがくずれ、局部的歪が生じて、大昔Kerstenが考えたような磁壁ピン止めが起るからと考えてはおかしいでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 09 Jun 2005 01:39:06 +0900
    A: 久武先生、佐藤勝昭です。
     ご無沙汰しております。小生、 東京農工大学の副学長としての日常業務(といいても教育関係の学内・学外委員 会ですが)に忙殺され、殆ど机に座っている時間が無く、お返事が遅くなったこ とをお詫びします。
    (1) ご質問のガーネットの保磁力の温度依存性の件、申しわけありませんが、全 く見当も付きません。このガーネットは純粋にYIGなのでしょうか?木村茂行先 生がお作りになったのなら多分大丈夫なのでしょうね。もし、DyIGが混じってい ると、補償温度が200K付近にあるので、保磁力の増大が見込まれますので念のた めお伺いしました。
    (2) 初透磁率のようなマクロな性質は、さまざまな要因によって変化しうるの で、電子のトラッピングやFeのイオン価数の変化による磁気異方性の変化といっ たミクロな性質と簡単には結びつけることができないのではないかと存じます。 特に、YIGのようなモット型(正確には電荷移動型)の絶縁体では、バンド幅は 広くても電子相関が大きいために電子がFeイオンに局在している可能性はありま す。その場合、局所的な磁気異方性を発揮する可能性があるでしょう。
     いずれにせよ、YIGの初透磁率などは、久武先生のご専門であり、門外漢の私 などがお答えできる内容ではないと思います。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 12 Jun 2005 00:03:35 +0900 (JST)
    AA: (1)木村先生に頂いた時にはYIGだけれど、酸素欠陥が相当入っているとおっしゃいました。
    他の会社の方からは、2かの鉄イオンを消すために、ごく少量カルシウムを普通入れると言っていました。
    それが多量だと変なことが起るらしいので、もう少し勉強してみます。
    副学長という超ご多忙の中、まさか直接佐藤先生がご返事くださるとは考えてみませんでした。
    かえって大変失礼しました。

    (2) なるほどそういうことでしたか。今になって、職業選択を間違ったと、後悔します。
    といって他の才能があるわけではないし、頂いた年賀はがき(マドリッド宮殿)を ハノイから学位を取りに来ていた(昨日とれた)学生(彼だけが優秀)に見せたら、 先生のことをトリプルスパースターだと言っておりました。(2)の内容を、スペインの 友人に知らせます。ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    580. ステンレスのヤング率

    Date: Sat, 11 Jun 2005 08:46:24 +0900
    Q: ステンレス鋼のヤング率の値を教えてください。出来れば鋼種ごと。又一般の鉄鋼の ヤング率もお願いします。園部誠二
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 11 Jun 2005 09:51:21 +0900
    A: 園部様、佐藤勝昭です。
     質問には、所属(大学であれば、学科名、学生(学年も)か、教員か)などを お書き下さい。希望されれば匿名にします。
    CAD設計製図資料室のホームページを参照してください。http://at.wxw.jp/binran/
    低炭素鋼では19,600 kgf/mm2=19.2×10^10Pa
    高炭素鋼では21,000 kgf/mm2=20.6×10^10Pa
    オーステナイト系ステンレスでは19,300 kgf/mm2=18.9×10^10Pa
    フェライト系ステンレスでは20,500 kgf/mm2=20.1×10^10Pa
    ということです。(Paには1kgf/mm2=100kgf/cm2=9.807×10^6Paにより換算)
    一方、理科年表によれば、
    鉄(軟):21.14×10^10Pa
    鉄(鋳):15.23×10^10
    鉄(鋼):20.1-21.6×10^10
    となっています。
    各鉄鋼会社によっても多少の違いがあるようです。
    ---------------------------------------------------------------------------

    581. 水の解離定数と電気化学反応

    Date: Tue, 14 Jun 2005 21:58:21 +0900
    Q: 佐藤先生
    HPを拝見しての質問です。T大で電子材料の研究をしておりますMと申します(匿名でお願いし ます)。マンガン電池などの電池の電気化学反応で、対極のOH(またはH)イオンが消費された場合 に、反対極からそれが拡散によって補われる過程があります。水の解離定数を考えると中性液中での OHイオンはせいぜい6×10の13乗個/CC程度なのに対し、電流が100mA流れると0.1C/sec、すなわ ち1秒間に0.1/(1.6×10の-19乗)=6×10の20乗の電子が流れる事になります。イオンもこれ に追従する様に対極に拡散しているのでしょうか? 水イオンの解離速度や拡散速度から十分説明で きるのでしょうか? お忙しい中恐縮ですがご教示の程何卒よろしくお願いします。以上
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 20 Jun 2005 13:11:37 +0900
    A:M様、佐藤勝昭です。
     専門外なので、よく分かりませんので、いろいろ考えているうちにお 返事が遅くなってしまいました。電池の電気化学反応では、水ではなく、 電解質の解離反応を考える必要があると思います。この解離に当たって は、電極のフェルミ準位と電解質の酸化還元電位との差がドライビング フォースになって、解離が進むのではないかと愚考するのですが、電気 化学関係のハンドブックなどをごらんになってはいかがでしょうか?
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 20 Jun 2005 19:21:11 +0900
    AA: 佐藤先生
     
    ありがとうございました。
    メールをお送りした後もいくつか実験し、下記式の様に電池全反応とし てはOH-が反対極のカチオンを中和する反応式になっていても、実際 には電解質イオンの拡散が圧倒的に支配的である事が判ってきました。

    負極活物質: Al→Al3+ + 3e
    正極活物質: O + 2HO +4e → 4OH
    (炭素上で反応)
    全反応(メールで書きにくいのでモル数は無視します):
    Al + O + HO → Al3+ + OH

    実は電池内部におけるフェルミ順位と液の酸化還元電位の関連性にも 悩んでいたところです。電池は奥が深いですね。
    もっと深く考えてみます。
    佐藤先生にご返事頂けて嬉しいです。有り難うございます。
    ----------------------------------------------------------------------

    582. 2次元フォトニックバンドギャップ

    Date: Thu, 16 Jun 2005 03:08:22 +0900
    Q: はじめてメールさせていただきます、京都にある大学の修士1回生のTと申します。
    Webでフォトニック結晶とフォトニックバンドギャップについて調べているうちに, 先生のHPにたどり着きました。

    私、フォトニック結晶光導波路に正弦波を入射させて、2次元FDTD法を用いて電磁場の解析を行う研究を 行っております。

    早速ご質問なんですが、規格化周波数やフォトニック結晶の誘電率がTE波による場合とTM波による場合で 等しいときはフォトニックバンドギャップのエネルギー帯はやはり等しいのでしょうか?
    お忙しいとは思いますが、差し支えがなければぜひご返事お願いします。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 17 Jun 2005 14:29:38 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
     私は、フォトニック結晶について大まかなことはわかりますが、あまり専門的なことは自分でやったことがないのでよくわかりません。
     おたずねの内容に関連した論文としては、
    S.Guo, F.Wu, S.Albin, R.S.Rogowski:
    Photonic band gap analysis using finite-difference frequecy-domain method;
    Optics Express 12 [8] (2004) 1741-1746
    をお読みください。アルミナ(εa=8.9)のロッドと空気(εb=1)から なる2D正方格子のバンド構造はTMとTEとで異なっています。TMではギ ャップがあるのに、TEではギャップがありません。
     京都には、京大の野田先生をはじめPBG結晶の専門家がたくさんおられ ますので、直接おたずねになってはいかがでしょうか?
    ---------------------------------------------------------------------

    583. 金属表面への吸着

    Date: Sat, 18 Jun 2005 17:59:30 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤先生

    はじめまして。S社のUと申します。
    先生のHPを拝見させていただき、物性なんでもQ&Aのほうに 質問させていただきたくメールさせていただいています。

    金属表面の吸着に関する性質についての質問です。

     現在、NiやFe(鋼)を材料とした製品を取り扱っているのですが、
    (1)NiとFeというように金属の種類によって、有機物やシリカゲル、 金属の微粉末(酸化物も含む)等の吸着性が異なるのか
    (2)金属の種類ではなく表面状態の違い(鏡面など)で吸着性が異なるのか
    (3)その他、吸着性の差が出る主な要因について

    以上の3点についてお教えいただければ幸いです。
    お忙しい中、大変恐縮ですがよろしくお願いいたします。
    その他、アドバイスなどがあれば、どうぞよろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 19 Jun 2005 00:17:29 +0900
    A: U様、佐藤勝昭です。
     私は、金属表面の専門家ではないので、正しいお答えができるかどうか疑問で すが、一般論でお答えしておきます。
    (1)空気中におかれた金属の表面は決して金属そのものが出ていることはな く、薄い酸化物に覆われています。金属の種類によって表面にできる酸化物の厚 みやその化学的性質が異なります。Niの表面はNiOが覆っています。Feの表面 は、さまざまな酸化鉄や水酸化鉄が覆っています。有機物や無機物との吸着性を 考えるにはこの表面酸化物層との吸着性を考える必要があるでしょう。従って、 表面に形成された層の種類により、当然吸着性は変化すると考えるのが自然で しょう。もちろん、研磨やエッチングにより表面層を除去してすぐの表面の場合 は、金属そのものの性質を考える必要があるでしょう。さびやすい金属とさびに くい金属がありますから、自ずと金属そのものの吸着性も金属の種類に依存する でしょう。
    (2)表面状態は金属の種類以上に吸着性に影響を与えます。表面が荒れている と、キンクが多数存在し、そこに他の物質が付着しやすいからです。
    (3)表面の清浄度が付着性に影響します。一般には清浄なほど酸化しやすく、 他の物質が堆積しやすいでしょう。逆に、油などの有機物が付着していると、他 の物質との付着を妨げるでしょう。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 20 Jun 2005 13:12:03 +0900
    AA: 東京農工大学 佐藤先生
    早速のご回答ありがとうございます。

    金属の表面は酸化物になっているという点で非常に納得ができました。
    用いている材料はどうしても研磨後、時間が経ってからの使用になるので 金属表面=酸化皮膜の表面と考えたほうがよさそうですね。
    金属の酸化物の物性について調べなおしてみたいと思います。

    表面が荒れていることと、清浄であることは相反する気がしますが、 荒れていない面に何か防汚剤のようなものを塗っていたりすると、 一番付着しにくいということですね。

    専門外の分野に熱心に回答を下さって本当にありがとうございました。
    また、お尋ねする機会があるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------

    584. 磁流と導磁率

    Date: Sun, 19 Jun 2005 02:11:43 +0900 (JST)
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭様

    こんにちは。突然のメール失礼いたします。
    私、S社のNと申します。
    (HPにアップなさる際には会社名、氏名ともに匿名でお願いいたします。) 現在、電磁場解析のために数値電磁気学の勉強をしております。
    そこで、マクスウェル方程式に関して理解不能な部分が出てきまして 先生のお知恵を借りたく思い、メールを差し上げました。

    私の読んでいる本(計算電磁気学:電気学会編)によれば、マクスウェル方程式は

    ∇×E = -∂B/∂t - Jm ・・・(1)
    ∇×H = ∂D/∂t + J ・・・(2)
    ∇・D = ρ ・・・(3)
    ∇・B = 0 ・・・(4)

    であり、(1)式以外は普通にみる方程式系です。
    また、J、Jmはそれぞれ電流、磁流密度でOhm則 J=σE、Jm=σmHm (σは導電率、σmは導磁率) で書けるとあります。

    これまで物理学科に在籍していましたが、磁流及び導磁率という言葉は 一度も聞いたことがありません。
    磁荷を仮定した上で磁荷の流れを指すものかとも思いましたが、 そうすると(4)式の右辺に磁荷密度が出てくるはずです。
    誤植かと思い、ネット検索しましたが、同様の式が(工学分野で) 多く見られました。会社にはこういった話に詳しい人がおらず行き詰っています。
    磁流及び導磁率は単に計算上の存在なのか、または実体を持ち、きちんとした 物理的意味をもつのかを教えて頂けるとうれしく思います。
    ご多忙とは存じますが、宜しくお願い申し上げます。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 19 Jun 2005 11:06:42 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
     私も、どちらかといえば「物理屋」なので、磁流密度や導磁率などを導入する ことには抵抗があります。
     物理学においてMagnetic Currentという概念は1944年頃、米国のFelix Ehrenhaftが導入した概念で、
    http://www.rexresearch.com/ehrenhaf/ehrenhaf.htmに
    一連の論文が出ています。これは単磁極の存在を前提とした話なので現在では、 物理学者の間では顧みられていません。
     電気工学では、モーターのヨークや変圧器などの磁気設計のために、電気回路 のアナロジーとして「磁気回路」という概念が使われています。磁気回路では磁 束を磁流として扱い、磁気抵抗なるものが使われますが、あくまで、工学的な概 念です。計算上の存在として考えていただいて結構です。
     たとえば、熊本高専の電気磁気学のシラバスを見ますと、
    「。磁性体を用いて作られている電気機器において、磁性体の磁束分布と電気回 路の電流分布との類似性より、磁性体各部を通る磁束の通路を磁気回路として扱 い、磁束分布を求める計算法について説明する。」
    とあります。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 23:51:21 +0900 (JST)
    AA:佐藤勝昭様
    返信が遅れてしまい、申し訳ありません。
    計算上の概念だということで、割り切ることができそうです。
    どうもありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------

    585. GaAsにドープしたMn中性アクセプターの光遷移の選択則

    Date: Mon, 20 Jun 2005 14:05:44 +0900
    Q:佐藤様

    突然のメール、失礼致します。
    私、K大学B学科4年のHと申します。
    物性なんでもQandAをいつも拝見させていただいております。
    今回は、ある疑問がどうしても自己解決出来ず、メールにて質問するに至りました。
    ウェブへのアップの際は匿名でお願い致します。

    質問を説明致します。
    以下において、点群の対称性の表記としてKoster表記を用います。

    内容としては、「GaAsにドープしたMn中性アクセプターの光遷移の選択則」に関し てです。
    Mn中性アクセプターが持つエネルギー準位間のホールの遷移、
    1S3/2(Γ8) → 2S3/28)
    1S3/2(Γ8) → 2P1/26)
    を考えた時、
    被積分関数の対称性を簡約した結果、両者とも全対称表現Γ_1を含むので遷移が許さ れるはずなのに対し、
    添付した論文に記載された実験結果(Fig.1)には現れていない事が疑問となってお ります。

    さらに具体的に説明致します。

    GaAsの価電子帯におけるj=3/2のバンドは、
    GaAs結晶の対称性T_dにおいて、4重縮退を表現する4次元の表現がΓ8しか無い事か らΓ8の対称性を持つ事がわかります。
    不純物の波動関数は、k=0のブロッホ関数u0に不純物のまわりに局在した包絡関数C をかければ得られますから、
    Mn中性アクセプターの1S軌道波動関数の対称性は、
    S対称性(Γ1)の包絡関数に価電子帯j=3/2の波動関数(Γ8)をかぶせて Γ1×Γ88
    となる物と考えられます。
    また、同様に2P軌道波動関数の対称性は
    P対称性(Γ5)の包絡関数に価電子帯j=3/2の波動関数(Γ8)をかぶせて Γ5×Γ86+Γ7+2Γ8
    と簡約されて、4つの軌道となる事が群論的考察からわかります。
    ここで、
    Γ6はP1/2
    Γ7はP5/2
    Γ8はP5/2とP3/2
    の対称性を表しているようです。

    ここで、本題に入ります。
    磁場中のハミルトアンにおいて、電磁波とキャリアの相互作用を表す摂動項H'は双極 子近似の下でΓ5の対称性を持ちますから、
    1S3/2(Γ8) → 2S3/28)
    の遷移の選択則を考える場合、
    Γ8×Γ5×Γ8=2Γ1+2Γ2+4Γ3+6Γ4+6Γ5
    と直積が簡約されます。
    よって、全対称既約表現Γ1を持つために遷移の選択則が許される事がわかります。
    1S3/2(Γ8) → 2P1/26)
    のホール遷移も同様に、
    Γ8×Γ5×Γ61+Γ2+2Γ3+3Γ4+3Γ5
    となり、遷移が許されます。
    以上のように群論的な考察をいたしますと、
    1S3/2(Γ8) → 2S3/28)
    1S3/2(Γ8) → 2P1/26)
    の両遷移は許される事がわかります。
    ところが、添付した論文に記載された実験結果(Fig.1)には両者の遷移は見えてい ません。
    これは何故なのでしょうか。
    ただ遷移確率が低くて見えてないだけなのでしょうか。
    原子物理学が教える所によれば電気双極子遷移では軌道角運動量は±1しか変化しな いことを要請します。
    これによると、本来1S→2S遷移は許されません。
    このような対称性のパリティに関する議論がカギになる気がするのですが、 Tdは反転操作を失っていますからパリティの考え方は破綻してるようにも思えます。
    まだまだ勉強不足なようです。

    以上の議論は
    P.Y.ユー,M.カルドナ. 半導体の基礎. (シュプリンガーフェラーク,1999)P197
    犬井鉄郎,田辺行人,小野寺嘉孝. 応用群論. (裳華房,1986) P394
    を参考に行いました。

    疑問は以上です。
    質問以外にも、以上の議論で間違った理解があればご指摘ください。
    恐縮ですが、時間等余裕がございましたらご教授ください。
    返答お待ちしております。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 21 Jun 2005 21:48:45 +0900
    A: H君、佐藤勝昭です。
     半導体中の遷移金属のアクセプタに関する遷移に関するご質問ですが、 論文のようにシンプルに扱ってよいかは、疑問があります。
     実際には、電荷移動遷移(d→s,p)と束縛ホールにおけるs→pの励起の 配置間相互作用を考慮した取り扱いが必要で、そのあたりは、藤森淳先 生(東大理)がいろいろと扱っておられますので、解説論文を参照して ください。また、直接メールされてはいかがでしょうか。

    なお、1S3/2(Γ8) → 2P1/26)
    の強度をきちんと計算するには、クレブシュゴルドン係数とウィグナー 係数をきちんと評価する必要があります。
    犬井鉄郎,田辺行人,小野寺嘉孝. 応用群論. (裳華房,1986)
    の演習としてきちんとやってみてください。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 21 Jun 2005 22:45:25 +0900
    Q2:佐藤様

    お忙しいところ御返事ありがとうごさいます。

    結論を確認しますと、ホールの遷移
    1S3/2(Γ8) → 2S3/28)
    1S3/2(Γ8) → 2P1/26)
    が表れないことを群論的な考察のみで示すのは難しく、
    吸収のピークが表れない原因を知るには数値計算による定量的な議論が必要であると いうことでよろしいでしょうか。

    また、私の勉強不足なのですが「電荷移動遷移」という言葉を始めて知りました。
    物理学辞典(物理学辞典編集委員会. 培風館.)で探した所でも見当たりませんでし た。もし、「電荷移動遷移」を理解できる適当な書物をご教授いただければ幸いなのです がよろしいでしょうか。

    たびたび申し訳ありませんがどうぞよろしくお願いします。
    返答お待ちしております。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 01:05:59 +0900
    A2:H様、佐藤勝昭です。
    電荷移動型遷移というのは、英語のcharge transfer transitionの訳です。
    上村、菅野、田辺:配位子場理論とその応用(裳華房)のp.249に、「電荷移動 吸収帯」という言葉が出ています。
    例えば、遷移金属酸化物において、価電子帯 は酸化物イオンの2p状態、伝導帯は遷移金属イオンの3d^n状態です。価電子帯か ら伝導帯に遷移が起きると、2p→3dの遷移が起きます。この遷移はパリティ許容 ですから強い遷移です。(この遷移は、比較的局所的に起きるので、多電子状態 間の遷移2p63dn→2p53dn+1として扱うことができます。2p6から見て2p5はホールが1つある状態なのでこれをLと表すと、 この遷移は3d5→3d6 Lと書くことができます。)
    これに対して、配位子場遷移は3dnの多重項の電子配置の変化をともなう遷移 で、本来3d→3dなのでパリティ禁止で、弱い遷移です。また、配位子場の対称性 により、3dはよい量子状態ではなく、配位子の2p状態と混成してt2軌道やe軌道 になっていますので、選択則は純粋の3d状態から変化しています。
     電荷移動遷移も配位子場遷移も多電子の多重項間遷移なので、同じ既約表現を もつ配置間の相互作用が考えられます。すると、配位子場遷移のベースになる状 態は、もはや決して純粋な3dnではなく、3dnに電荷移動のおきた3dn+1, 3dn+2などが混じった状態をとらねばならないことが導かれます。そのような考 え方にたって、半導体中の不純物状態を扱ったのが、以下の解説論文です。
    藤森淳: 半導体中の磁性不純物の電子状態、 日本物理学会誌 45 (1990) 310.
    ぜひお読み下さい。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 21:22:45 +0900
    AA: 佐藤様

    お忙しいところ御返事ありがとうごさいます。

    お勧めされた解説論文に目を通してみました。
    今の私に完全な理解は困難でしたが、 半導体中の3d遷移元素不純物が一電子近似では描くことができない性質を持ってい るという事がわかりました。
    いろいろ勉強すべき事が多いですが、自分なりに調べて理解したいと思います。

    これからも物性なんでもQandAを楽しみに拝見させていただきます。
    今後、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。
    お忙しいところのご教授ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    586. 浮力に関する入試過去問

    Date: Mon, 20 Jun 2005 21:59:48 +0900
    Q:HPをみてメールさせていただきました。
    名前:S-主婦です。(宿題でも何でもなくて、ただ個人的に物理を勉強し ようと思っている者です。)
    アップする時は匿名でお願い致します。

    質問は、以下のようなものです。ある大学の過去問をと解きたいのですが、答え が無いので思いきってメールさせていただきました。専門違いの場合は、結構です。
    質問:半径 r の剛球が重力の作用で無限に広がる液体中を落下している時、落下 速度について考えてみる。この球には、下向きの力、即ちFgとして

    Fg=4πr3×1/3×(ρ2-ρ1)×[a] ・・・・式1

    が働いている。 ρ2=剛球の密度
              ρ1=液体の密度
    Fgは、剛球の重さから浮力を差し引いた値とする。π=円周率である。

    一方、剛球がある液体中を等速度 v で運動している時、剛球には液体から受ける 抵抗力 (Fv)が作用している。 速度 v が十分小さいとすると、 Fvは、

    Fv=6π×[b]×r×v   ・・・・式2

    で近似できる。剛球が等速度で上記の液体中を落下し ている時、Fg=Fv が成り立つ。

    Q1.[a] と [b]に当てはまる最も最適な物理的用語を記入しなさい。

    Q2. 同じ液体中を落下する時、密度の大きな球体と小さな球体ではどちらが早く 落下するか?

    Q3.球体を液体中の任意の深さで静止させるための条件を示せ。

    ちなみに私の答えは、
    Q1. [a]… g (重力加速度) 
          [b]・・・h (ポアズ:ストークスの式?)

    Q2.密度が大きい方が早く落下する???でもvはすごく小さいはずだからどうな んだろう・・・

    Q3.は、以下の通り。
    式1=式2から Fg=Fv
    4πr3×1/3×(ρ2-ρ1)×g=6πhrv これより、式を変形し
    v=2・(ρ2-ρ1)gr2 
      9    h     とおける。

    任意の深さで静止させるとして、その深さを Hとおくと、

    H=vt=2・(ρ2-ρ1)gr2 
         9    h      (t=時間)
                    という条件になる。//
    あっているか間違っているか教えてください。長くなってしまい、ごめんなさい。

    それでは。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 21 Jun 2005 12:42:34 +0900
    A:S様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。
     浮力、粘性などの問題は、現在の高校の指導要領では扱ってはならないことになってい ます。従って、受験に出ることはありません。多分かなり古い問題でしょうね。
    さて、[1]の[a]はお答え通り重力の加速度です。[b]は粘性率(単位はボアズ)です。 [2]ですが、Fgは液体との密度差が大きいほど大きいのに対し、Fvは半径にのみ依存し密 度に関係しないので、密度が大きいほどFg-Fvが大きく、速く落下します。
    [3]はもっとシンプルに考えてよいのではないでしょうか。Fg=Fvは定速落下の条件ですか ら、絶対に静止することはありません。もし静止したらFv=0ですからFg=0でない限り落下 します。従って、ρ2=ρ1以外に静止する条件はあり得ないでしょう。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 21 Jun 2005 16:28:36 +0900
    A:丁寧に答えていただき、ありがとうございました。今後も何か分からないことがあれ ば、質問させていただきます。
    -----------------------------------------------------------------------

    587. 鉛フリーハンダの銅食われ

    Date: Mon, 20 Jun 2005 22:07:53 +0900
    Q:佐藤勝昭様
    N(株)技術部、Uと申します。社名・氏名は匿名でお願いいたします。
    いろいろ答えを探しているところでこのHPに行き当たりました。ご教授いただけれ ば幸いです。

    銅・SUSのクラッド材に銀メッキを施した端子を真空炉で500℃10分熱処理後 窒素ブローで急冷したところ、鉛フリー脂入りハンダを用いてハンダ付けをする際、 銅に施した銀メッキに激しい変化がありました。
    銀メッキ上をフラックスが流れ、次にハンダが流れますが、更にハンダごてをあてて いると、瞬時にハンダの下地が黒く変色し流れていたハンダがはじかれるように逃げ てしまいます。黒色部を擦ると銅の下地が見えるので、ハンダによる「銅食われ」と いう現象が知られていますが、銀メッキが同じようにハンダに食われているのではな いかと考えています。
    メッキのみで熱処理していないものにはこのような現象は発生しません。また、ハン ダごての温度を上げるとこの現象は容易に再現するようです。熱処理とハンダ付けに より銀メッキに何が起きているのでしょうか?
    宜しくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 21 Jun 2005 12:00:30 +0900
    A: U様、佐藤勝昭です。
     鉛フリーハンダについて、
    日本スペリア社のHPを見ましたところ 実に多種多様な成分が使われていることを知りました。
    品番組成融点(℃)
    SN100CSn-0.7Cu+Ni227
    SN96CISn-3.8Ag-1.0Cu217
    SN97CSn-3.0Ag-0.5Cu218-219
    SN96Sn-3.5Ag221
    BI57Sn-57Bi139
    LF-C2Sn-3.5Ag-1.0Cu-3.0Bi208-213
    LF-SASn-3.5Ag-3.0In-0.5Bi202-214
    SN88Sn-3.5Ag-8.0In-0.5Bi198-210
    LF-Z1Sn-9.0Zn199
    95ASn-5.0Sb236-243
    多くの品番のもので成分としてAgが使われています。銀メッキのAgがハンダに食われるの は、新たな合金反応を起こしているものと推察されます。組成により、対応の仕方も変わ りますので、鉛フリーハンダのメーカーにご相談されるのがよいかと存じます。
    ------------------------------------------------------------------------

    588. 一般的な無機物の熱伝導率と硬さのデータ

    Date: Mon, 20 Jun 2005 17:09:41 +0900
    Q: 佐藤様

    M社の草間と申します。お世話になります。
    物性なんでもQ&Aには色々役立つ情報があり、 2点ほど教えて頂きたいデータがありメール致しました。
    一般的な結晶性無機物の熱伝導率と硬さのデータを探しているのですが、 なかなか見つかりません。
    もしご存知でしたらご教授頂きたく。
    よろしくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tuesday, June 21, 2005 1:49 PM
    草間様、佐藤勝昭です。
    「一般的な」というのが何を指すのかは、分野によると思うのですが、 熱伝導率は、物理量ですからたいていのハンドブック類には載っていま す。たとえば、飯田他編「新版物理定数表」(朝倉書店, 1969)p.122
    一方、硬さは物理量ではないので、機械的な試験方法に依存する硬さが 機械材料のハンドブックに載っています。Webではたとえばhttp://www.accuratus.com/のMaterialsを 見てください。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 21 Jun 2005 18:13:15 +0900
    Q2: 東京農工大学 佐藤様

    ご質問に回答頂きありがとうございました。
    また質問が曖昧すぎてご迷惑をおかけしました。
    現在、弊社では無機物の結晶水和物を取り扱う装置の開発を行っております。
    その中で無機物の結晶水和物付着による伝熱効率の影響を評価するために 無機物の熱伝導率、無機物の移送による磨耗を評価するために無機物の硬さの データを探しております。
    無機物の熱伝導率や硬さのデータを色々と調査しているのですが、なかなか 見つかりません。
    もし佐藤様がご存知ならとメールした次第です。
    本件について何かご存知なことありましたらご教授頂きたく存じます。
    よろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 20:23:39 +0900
    A: 草間様、佐藤勝昭です。
     具体的な無機物の英文名称でGoogle検索されることをお薦めします。
    --------------------------------------------------------------------------

    589. シリンダー内のピストンのロック

    Date: Wed, 22 Jun 2005 10:19:47 +0900
    Q: はじめまして シリコン関係で調査していたらここにたどり着きました。
    匿名でお願いします。

    非常に困っています。専門分野ではないのでおたずねしたいのですが、 シリコン材料(半導体のシリコンではなく2液硬化型の接着剤や成型用材料です)を 高圧下(20MPa)のシリンダー内に充填し圧送しようとすると必ずと言って良いほど シリンダー内壁とピストンがロック状態になります。
    (いわゆるピストンとシリンダーの一部にカジリが出ます)
    シリンダーはS45Cの鉄でホーニング内面バフ仕上げでピストンはSUS303 SK3にハードクロームメッキなど いろいろ試していますが時間の長短あれど全てロックします。クリアランスは3/100程度です。

    私の現在の検討過程ではシリコンと金属との間に高圧下(20MPa)では何か別の金属 に近いものが生成されクリアランス内に入り込みロックするのではないかと考えています。

    何か対策など良い方法があればご教示ください。ちなみにシリンダーもピストンもた だの筒とシャフトです。

    ピストンリングやOリングも摺動部分には何も存在しません。移動スピードは最高で も50mm/sec以内です。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 12:37:28 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     お困りの様子が伝わってきます。
    しかし、「なんでもQ&A」は物性に関する一般性のある疑問にお答えす るのが趣旨なので、お困りの具体的事例に直接お答えすることはせず、 一般的なお答えにさせてください。
     シリンダーとピストンのカジリの問題は、いろんな場合に発生します。 たとえば無機材料の粉末試料を錠剤状の円盤に整形するような場合にも 微粒子が隙間に入って部分的な摩擦を発生し、ピストンがシリンダー壁 に対して斜めになるためにカジリが生じます。とくに潮解性のある無機 材料では、少しの水分でも含まれていると、ピストンを部分的に腐食し カジリの原因になります。風船に粉末飼料を詰めて圧縮し、カジリを防 いだこともありました。
     おたずねのシリコン系接着剤の具体的な組成や構造がわからないので 何ともいえませんが、金属と珪素が反応するのではなく、別の要因でカ ジリがおきるのだと思います。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 13:27:40 +0900
    AA:ご丁寧な回答有り難うございました.
    参考にさせていただきます。
    ---------------------------------------------------------------------------

    590. アルミニウムの塗装と接着性

    Date: Wed, 22 Jun 2005 11:54:22 +0900
    Q:はじめまして。電線会社で技術開発に携わる池田と申します。
    HPを見てご相談させていただきました。

    アルミニウムは一般に、塗装や接着がし難いといわれていますが、 その原因は何でしょうか? PTFEのように表面エネルギが低いと 濡れ性が悪く、接着が困難と去れていますが、アルミニウムも 同様に考えてよいのでしょうか?

    また、アルミニウムの表面にアルマイト処理により酸化皮膜が あった場合、自然状態のアルミニウムにくらべて塗装や接着性 はどう変化するのでしょうか? そしてこれも表面エネルギに よって決まるものなのでしょうか?

    よろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Jun 2005 01:17:03 +0900
    A:池田様、佐藤勝昭です。
     アルミニウムは酸化しやすい金属ですが、表面にできた極めて薄い酸化被膜が それ以上の酸化を妨げるといわれています。特許庁の資料室のホームページに
    「アルミニウムの化成処理方法の一覧表」がでています。

    ここには、
    「アルミニウムの自然酸化皮膜厚さは20~25Åであるが焼なましなどの高温 処理で厚く成長する。この酸化皮膜に対するポリエチレンの接着強度は電解研摩 面(酸化皮膜24~40Å)が最高で厚さの増加に伴い低下する。水和酸化皮 膜,MgなどAl合金の成分の接着力への影響がみとめられるが、表面残存油分 は接着力を低下するとは限らない。密着性強化のための下地処理法として機械的 表面加工,エッチング,化成処理,陽極酸化,ウオッシュプライマー処理,コロ ナ放電,グロー放電,CASING処理などがある。アルミニウムの接着理論の 確立には,1)塗膜‐アルミニウム界面の結合力の解明,2)アルミニウム表面 形態の解析,3)アルミニウム表面特性の明確化,4)W.B.Lの解明,5) 塗膜塗布工学の確立と測定手法の開発が必要である。」
    と書かれていますので、参考にしてください。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 23 Jun 2005 07:08:26 +0900
    AA: 佐藤先生
    さっそくのアドバイス、まことに有難うございます。
    これをもとに、さらに検討を進めてまいります。
    ------------------------------------------------------------------------------

    591. 金属の赤外反射・吸収特性

    Date: Wed, 22 Jun 2005 18:00:11 +0900
    Q:T社Oと申します。
    HPを拝見し、今回初めてメールさせていただきます。

    質問258の中赤外における金属の反射に似た質問になりますが、
    ①各種金属(ステンレス、チタン、アルミ、銅、ニッケル)の近赤外(700-2000nm) 域の吸収・反射特性を知りたく、ご教示いただけませんか。
    ②ステンレスやチタンを衣服の内側にスパッタリング加工し、保温材として用いられ ているのを見かけます。これは、赤外域の吸収を利用したものなのでしょうか。
    ③私が考えているのは、生地表面上で近赤外線をいかに反射するか、ということに関 心があります。生地表面に金属加工、もしくは、薄膜加工をすることで効果のある処 方があれば、ご教示ください(アルミ蒸着以外で)。

    よろしくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 22 Jun 2005 20:18:18 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
    (1)ステンレスの組成は非常に幅広く分布しているのですが、基本的にはFeの反射特性 とみてよいと思います。
    Fe, Ti, Al, Cu, Niの屈折率n、消光係数kは次の通りです。
    反射率R={(n-1)^2+k^2}/{(n+1)^2+k^2}×100%で計算して下さい。
    吸収係数α=4πk/λで計算して下さい。(λ=波長[cm]のときαの単位[cm^-1])
    屈折率n,消光係数k
    波長nmFeTiAlCuNiNi
    7003.84,4.372.86,3.962.08,8.340.21,4.242.24,4.232.21,4.09
    8004.23,4.343,21,4.012.83,7.750.26,5.262.41,4.602.48,4.38
    10004.50,4.283.35,3.970.99,9.730.40,8.402.69,5.132.80,4.97
    15004.24,4.813.67,4.371.02,13.70.59,8.063.60,6.303.27,6.51
    20004.01,6.313.51,5.191.27,17.80.85,10.64.10,7.603.69,7.92
      P I-p384LB15b p308LB15b p372P I-p285LB15b p372P I-p323
    P:Palik. LB:Landolt Boernstein

    (2)おそらく、遠赤外における高い反射率を利用してるのではないかと思います。

    (3)保温上は近赤外光より遠赤外光を如何によく反射するかではないでしょうか。
    近赤外光はむしろよく透過した方が暖かいと存じます。その意味で、遠赤外では反射率が 高く、近赤外では反射率の低い材料が向いているでしょう。TiやFeはその意味でよいと思 いますが、酸化物になりやすいので要注意でしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 29 Jun 2005 10:06:16 +0900
    AA: 佐藤様

    早速にご回答いただき、ありがとうございました。
    参考にさせていただきます。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    592. TFEのp-h線図

    Date: Thu, 23 Jun 2005 17:39:07 +0900
    Q: はじめまして。私、W大学4年のNと申します。
    HPを拝見し、質問させていただきます。
    ヒートポンプ等で使われる冷媒のトリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol,TFE)のp-h線図を作成しているのですが、圧縮液状態における有効な物性式が見つかりません。
    圧力(~2Mpa)、温度(40~150℃)、密度、エンタルピについて物性関数を作成したいのですが、何かよい方法、または文献・シミュレーションソフト等はございますでしょうか?
    よろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 25 Jun 2005 18:42:52 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
     私は専門でないので、東京農工大学で熱力学を教えている中島先生に聞きまし た。次のような回答を得ました。
    「東京農工大学物理システム工学科3年の学生実験で「ヒートポンプ」なる冷暖 房空調機を調査実験するテーマがあり、そのテキストには
    フロン22の詳細なp-h曲線(いわゆるモリエル線図(日本冷凍協会の資料です)) とその使い方が載せてあります。
     TFEに関してはこの圧力範囲でのp-h曲線は、文献を当たらないと出ないで しょう。また、任意の低分子に関して第1原理から熱関数等を計算することは現 段階では不可能であるので、丹念な実験的研究を探されるしかないと思います。
    またlocalmapであれば実験室でデータを取ることはさほど難しくないと思いま す。なお、冷媒、新種のフロン異性体などでしたらクーラーメーカーの研究開発 部隊がもっているはずです。」
     ご参考まで。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 27 Jun 2005 10:56:21 +0900
    AA: 早速のご返答ありがとうございます。
    ご指摘・ご助言を参考に研究のほうを進めていきたいと思います。
    -------------------------------------------------------------------------------

    593. 2D, 1D, 0D 量子構造における発光

    Date: Fri, 24 Jun 2005 16:38:15 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
    突然のメールの失礼をお許しください。
    私はT大学大学院B専攻M1のTと申します。(WEB上では匿名でお願いします。)

    先日のシリコンの熱酸化膜形成に関する質問に際しては誠にお世話になりました。
    いつも興味深くHPを拝見させていただいております。

    早速ですが質問に移らせて頂きたいと思います。
    量子井戸において2次元、1次元、0次元構造が変化すると状態密度が階段状、のこぎ り歯状、デルタ関数状に変わると思うのですが、そのことによって発光の様子はどの ように変化するのか(特に偏光依存、電界依存)を教えてください。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 24 Jun 2005 20:02:20 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
    あなたの専攻のシラバスを見ますと、
    ・量子光半導体デバイス
    ・先端材料光物性
    ・ナノフォトニクス
    など関連する授業が開講されているようです。
    私より詳しい先生がおられますので詳細は直接聞いてください。
    一般論でいいますと、2D閉じこめのWellでは、励起状態の状態密度の 階段状のジャンプの最低エネルギーのところから、基底状態の階段の最 大エネルギーに向かって遷移します。3Dに比べると、やや鋭い発光線 でしょう。偏光特性は2次元の面に垂直に観測するかぎり見えないでし ょう。1D閉じこめのワイヤーでは、ワイヤーに平行な偏光と垂直な偏 光とで選択則が異なります。たとえば
    http://prola.aps.org/abstract/PRB/v45/i16/p9443_1
    をお読みください。状態密度がのこぎり状になるので、スペクトルは鋭 くなり、発光強度も高くなります。
    0Dのドットは基本的に等方的ですから偏光特性を示さないでしょう。 発光線の線幅は、最も小さいでしょう。
    電界依存性は、量子準位の間隔が狭いと、電界によって励起状態への遷移がおきやすくな り、ブロードな発光線になる可能性があります。次元性と直接関係するかどうかはよくわ かりません。
    ------------------------------------------------------------------------

    594. ユーイングのたわみ法と引っ張り試験で得られるヤング率

    Date: Sat, 25 Jun 2005 00:25:29 +0900
    Q: はじめまして。HP拝見しました。自分も質問があるので、どうかお願いします。
    自分はD大学、E科、二年生Yです。匿名でお願いします。
    質問ですが、引張り実験からσ=Eεで求めたヤング率Eとユーイングの試験でタワミ(E=l3Mg/4a3bh)から求めたヤング率Eとでは、同じ金属の場合(同じ形)、ふたつのヤング率の値は違うのですか?それとも一緒なのですか?教えてください。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 25 Jun 2005 16:38:31 +0900
    Y君、佐藤勝昭です。
     理想的な等方性の金属においては、引っ張り試験とたわみ試験の公式はおなじヤング率 Eで記述されます。この話は機械工学の基本でしょう。実験結果が異なっていたら、金属 の機械的性質に異方性があるとか、たわみの評価を間違えたとかが考えられます。
    ---------------------------------------------------------------------------

    595. マイクロ波を用いたセラミックスの焼結

    Date: Sat, 25 Jun 2005 17:48:30 +0900
    佐藤勝昭様
    はじめまして。K大学大学院K研究科修士二回生のAと申します。
    佐藤先生のHPを拝見し、近々予定している実験に関してご意見を伺いたく 質問をさせて頂きました。よろしくお願いします。

    現在、マイクロ波を用いたセラミックスの焼結を行っております。
    今回、圧粉体試料(10φ、厚さ3mm)をアルミナ板(厚さ2mm)で挟み、 さらにその周りをSiC(もしくは炭素)粉末で覆ったマイクロ波(2.45GHz)加熱 を予定しています。以前こちらのHP内で、SiCや炭素粉末の高い発熱現象 に関しての質問がありましたが、SiC(もしくは炭素)粉末は何度位まで昇温する ものなのでしょうか?グレードによる違いがあるかと思われますので概算でも構いま せん。
    改めて、よろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 25 Jun 2005 19:58:33 +0900
    A: A君、佐藤勝昭です。
     セラミクスのマイクロ波加熱についてのご質問ですが、通常は結晶成長したい 材料自身に含まれる水分を加熱します。
    本間 康浩「ほんまの物理学のコーナー」http://www.est.hi-ho.ne.jp/mayu_ah/ 「家庭用電子レンジは2.45GHzのマイクロ波を用いて物質(主として水)のマイ クロ波エネルギー吸収により効率的加熱を行っております。この加熱は電気炉な どによる試料外部からの熱伝導による加熱と違って物質内部からの加熱が可能で す。化学反応の研究においては近年、効率面だけではなく、マイクロ波加熱でな いとできない化学物質の生成も行われるようになってきました。この方法で代表 的高温超電導物質YBCO(超伝導臨界温度Tc=93K)の生成が可能です。」
     SiCとか炭素を高周波サセプターとして使うのであれば、粉末としてではな く、成形したものをアルミナ板に代えて使うべきでしょう。(粉末だと酸化して 燃える可能性があります。)グラファイトカーボンを成形したサセプターが入手 できると思います。電子レンジでは無理でしょうが、高周波加熱で温度は2000度 くらいまで上がるでしょう。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 25 Jun 2005 20:33:48 +0900
    AA:佐藤先生へ
    K大学大学院K研究科修士二回生のT.Aです。
    ご回答頂きましてありがとうございました。
    これを参考にして新たな実験プロセスの立案を
    行いたいと思います。ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------------

    596. TiO2とUO2の結晶構造

    Date: Mon, 27 Jun 2005 23:39:07 +0900
    Q: 神戸大二回生のHと申します。匿名でお願いします。
    HP拝見しました。TiO2とUO2のlattice typeについて調べているのですが答えが見つかりません。
    教えていただけたら幸いです。つまらない質問ですいません。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 28 Jun 2005 11:54:07 +0900
    A:H君、佐藤勝昭です。
    TiO2については、Wyckoff:Crystal Structures (Second edition), Robert E.Krieger, 1982, Vol.1p.251-254に載っています。(図書館に行って確認してください。)
    TiO2にはルチル(rutile)構造とアナターゼ(anatase)構造とブルーカイト(brookite)構造 の3種類があります。p.251-254
    ルチル:正方晶系D4h^14 (P4/mnm単純正方) 格子定数a=4.59373Å,c=2.95812Å
    アナターゼ:正方晶系D4h^19(I4/amd体心正方)格子定数a=3.785Å,c=9.514Å
    ブルーカイト:斜方晶系Vh^15(Pbca単純斜方)格子定数a=9.184Å,b=5.447Å,c=5.145Å

    UO2については、前掲書p.243にあります。
    立方蛍石(cubic fluorite)構造:立方晶系Oh^5(Fm3m面心立方)格子定数a=5.4682Å

    ネットで人に聞くとすぐに答がわかって楽かも知れませんが、学生なんだから、図書館に 行ってWyckoffのシリーズを探しておくと、あとあと便利ですよ。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 28 Jun 2005 21:04:15 +0900 (JST)
    AA: お忙しい中ありがとうございました。
    教えていただいた本、調べておきます。
    ------------------------------------------------------------------------------

    597. 遷移金属酸化物のバンドギャップと移動度

    Date: Wed, 29 Jun 2005 18:39:12 +0200
    Q: 佐藤勝昭さま
    HPを見て質問させていただいています。
    S社M氏と申します。当方、有機導体を専門に材料科学の博士を取得しました。

    さて、最近、金属酸化物の半導体の電子物性に興味を持っています。
    いくつか質問があるので、できれば適当な本を紹介いただけると幸いです。

    今知りたいことを書かせていただきます。

    TiO2、Nb2O5、V2O5、MoO3、Fe2O3のconduction band、valence bandのエネルギー準位、それぞれの電子、ホールの移動度を教えていただけますでしょうか?いろいろ調べたのですが、うまくわからず困っています。
    また、一般的な質問ですが、金属酸化物の多くはn型半導体と聞きました。これは本当でしょうか?そしてなぜでしょう?有機をやってきた人間からは奇異に思います。特に上記V2O5もn型でしょうか?正孔輸送機能として、もしくは陽極として電池等に注目されていると思うのですが、これとは矛盾しませんか?

    以上、よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 30 Jun 2005 13:14:46 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
    TiO2、Nb2O5、V2O5、MoO3、Fe2O3のバンドギャ ップおよび移動度についてのデータですが、おそらく、バンドギャップ は基本的には酸化物イオンの2p軌道からなる価電子帯から遷移元素の3d または4d軌道からなる伝導帯への電荷移動型遷移です。(従って、半導 体のバンド間遷移のような明確なギャップではないのです。)電荷移動 型ギャップの値については、ある程度のデータがあると思いますが、電 子・ホールの輸送現象に関しては公表されているきちんとしたデータは ないと思います。
    酸化物においては、化学量論組成からのずれが起きやすく、それが電気 伝導の原因になっています。また、組成のずれによってバンドギャップ もずれる可能性があります。また、いろいろな結晶構造がありますので、 それによっても異なってきます。このため、デバイスに使うような半導 体とはずいぶん感覚が違う物質になっています。
     TiO2については、価電子帯は酸化物イオンの2pバンド、伝導帯はTi4+ イオンの空いた3dバンドと思われます。rutile, anatase, brookiteの 3つの結晶構造があり、バンドギャップも微妙に違うと思います。 Rutileについては、Egはほぼ3.4eVです。(Palik:Optical Constants of Solids vol.1 p.799にスペクトルが出ています。 薄膜については、これらの相が共存している場合があるので要注意でしょう。
     Nb2O5もコーティングに使われる材料なので、光学吸収のデータがあ ると思いますが、私の手元にデータはありません。おそらくLiNbO3(LN)と同 程度でしょう。Palik のVol.1 p.699によれば、Egはほぼ3.8eVです。
     V-O系酸化物は、一般にマグネリ相といってVxOyの不定比の物質群が知ら れており単一相の結晶を取り出すのは至難です。V2O3は有名なモット型絶縁体で、 金属・絶縁体転移を起こします。絶縁体相のバンドギャップも論文を探せ ば見つかると思いますが、手元にデータはありません。
     MoO3は全く存じません。
     Fe2O3もα相(ヘマタイト)とγ相(スピネル構造)とで異なります。 αFe2O3は褐色透明の単結晶が得られます。私の以前の測定では、α相は 1.8eV付近、γ相は2.1eV付近にバンドギャップがあったと存じます。 このデータは公表されていません。
     電子、ホールの移動度は、試料作成技術により大きく変化します。そ れぞれの作製法に応じたデータを文献から探すしかないでしょう。ほと んど報告はないでしょうが。
     n型になりやすい理由は、酸素欠陥がドナーとして働くことによると 存じます。
     参考書としては、
    物性科学選書
    津田惟雄、那須奎一郎、藤森 淳、白鳥紀一 共著「電気伝導性酸化物(改訂版)」
    裳華房
    をご覧下さい。
    ----------------------------------------------------------------

    598. 水素化アモルファスシリコンの電子移動度と正孔移動度の差はなぜか

    Date: Thu, 30 Jun 2005 19:13:57 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤先生
    こんにちは、S社で半導体関係の仕事をしておりますHと申します。
     先生のHPでいつも興味深い話題が展開されているのを、「こんな考え方もあるのか」と感心しながら見させ て頂いております。

    副学長になられてますますご多忙の佐藤先生にお聞きするには、あまりにお粗末な質問かもと思い、社名に泥を塗らな ために匿名でお願いしたいと思います。

    質問はSiの移動度についてです。 単結晶Siのドリフト移動度は、 電子で1500cm2/Vs、正孔で450cm2/Vsと 教科書に出ております。 これがa-Si:Hになると電子で1cm2/Vs程度, 正孔で0.01cm2/Vs以下などとあるのですが、アモルファス状態で正孔 の移動度が電子に比較して極端に低くなる理由はなぜなんでしょうか?
     単結晶の場合の比とアモルファスの場合の比が違いすぎる理由が 知りたいのですが、お教えいただけますでしょうか?

    「こういう初歩的な質問は、ここを参考にすること」という お答えでも結構ですので、宜しくお願いします。

    それでは、失礼します。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 30 Jun 2005 20:27:03 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     水素化アモルファスシリコンの伝導機構は、必ずしも完全に解明されている訳ではあり ません。一応の理解は、長距離秩序が欠落しているため、周期ポテンシャルが乱れている ため、エネルギー帯の状態密度はすそを引いたものとなっており、伝導帯の移動度端より 下、価電子帯の移動度端より上では、アンダーソン局在がおきています。このため、電子 移動は、結晶シリコンのようなバンド中のキャリアのドリフトではなく、Variable range hoppingという機構でピョンピョンと跳んで移動しています。従ってa-Si:Hの移動度は、 結晶中のスムーズ電子移動ではなく、hoppingの平均的な移動を表しています。
     結晶における電子、ホールの移動度は、あくまで、parabollicなバンドのk空間におけ る曲率の逆数として定義される有効質量を前提とする量であり、周期ポテンシャルがなけ れば定義出来ない量となっています。アモルファスにおいては、周期ポテンシャルがない ので、波数kはもはやよい量子数ではありません。従って、電子と正孔の移動度の比を結 晶と比較することそのものに意味がありません。
     a-Si:Hで電子移動度が正孔移動度より大きいのは、正孔がより強く局在しているため、 価電子帯の方がホッピングの際のポテンシャル障壁が高いことを意味しています。ダング リングボンドによるギャップ内準位が価電子帯のすぐ近くに現れるため、トラッピングを 伴って、見かけ上局在性が強いのかも知れません。a-Si:HはHを15-25%も含むため、これ を単純にシリコンのアモルファスバージョンと考えることはできず、珪素と水素の合金ま たは化合物と考えるべきでしょう。従って、結晶シリコンと比較することにあまり大きな 意味があると思えないのですが・・。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 1 Jul 2005 10:36:56 +0900
    Q2:東京農工大学 佐藤先生
    こんにちは、匿名希望でa-Si:Hの移動度について質問させていただいた S社のHと申します。 こんなにも素早くご回答いただけるとは、 大変驚くと共に、つまらない質問にも真摯にお答えいただけたことに深く 感謝いたします。

    「水素化アモルファスシリコンには、水素が10%以上含まれているので 、これはシリコンと水素の合金(化合物)と考えるべきである」とのご意見 は、まさにその通りだと、指摘されて初めて思い至りました。

    そこで少し別の疑問が湧いてきたのですが、間抜けな質問ついでにもう 一つお聞きしても宜しいでしょうか?
    a-Si:Hを何らかの手段で多結晶化させていくと、水素の含有量も減ると同 時に、伝導スタイルも結晶に近づいてくると思います。 この時、電子と正 孔の移動度の比も結晶の値に近づくと思うのですが、この近づき方は漸近 的なものになるのでしょうか? それとも、何かの値(水素量?準位数?)が 閾値を越えると急に結晶に近くなるという変わり方になるのでしょうか?

    「意味のない質問だ」と仰りそうな予感もいたしますが、意味があるかどうか も不確かなので、何かヒントをいただけると幸いです。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 1 Jul 2005 11:45:42 +0900
    A2: H様、佐藤勝昭です。
     アモルファスを微結晶化しますと、初期の段階では、微結晶の粒子同 士が離れているため、その間をホッピングする伝導機構なので、アモル ファスとあまり変わらないのですが、微粒子のサイズが拡大するにつれ て結晶と同様の性質を示すようになります。具体的にどのあたりで、結 晶的になるかは、本学工学教育部電気電子工学専攻教授の鮫島俊之先生 がご専門ですので、直接お聞きになってはいかがでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 1 Jul 2005 12:01:45 +0900
    AA: 東京農工大 佐藤先生
    こんにちは、a-Si:Hの移動度の件で再度質問をさせていただいたHです。

    今回の質問にも大変分かりやすい回答をいただきまして、 どうも有り難うございました。
    講義や研究の仕事のうえに、更に副学長までなさっていて これ程素早いレスポンスをなさることは、私にとって驚異です。

    これからも、HPで展開される話題を楽しみにしております。
      どうも有り難うございました。

    失礼いたします。
    ---------------------------------------------------------------------------

    599. 磁性ナノビーズの磁束観察

    Date: Fri, 01 Jul 2005 00:19:39 +0900
    Q: 佐藤先生様
    A社メディカル事業部のOです。

    現在、ガンの先端医療方法に”磁気ナノビーズ”が使われています。
    磁気ナノビーズとは一次粒径が10nmであり、二次粒径は1μm程度です。
    組成はFe3O4のマグネタイトです。K社(キーエンス社)の顕微鏡で観察しますと1000 倍の観察で、ブラウン運動により画面を縦横無人に飛びかっています。

    そこで、お尋ねしたい事はマグネタイトからなる磁気ナノビーズの持つ 磁束密度を測定したいのですが、どの様な方法が有りますでしょうか?
    当方ではMFM及びVSM測定器を用いているのですが、 今一度定量に成功していません。
    なにとぞ、御教授下さいませ。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 01 Jul 2005 01:03:42 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
    二次粒径は1μmというのは、10nmのビーズが集まって1μmのクラスタになっている のでしょうか。動き回っているのは10nmのビーズですか?それとも1μmのクラス タでしょうか?磁束を知りたいのは、10nmのビーズの方ですか、1μmのクラスタ の方でしょうか?また、磁気ビーズは何かの溶液に懸濁されているのでしょうか? 微小な磁束を測定するには、SQUID(超伝導量子干渉デバイス)を用いた磁束計を 用いると可能になります。
    10nmのビーズ1つ1つのスピン分布を見るには、もし溶液中であれば、低温にす るなど、溶液の運動によるブラウン運動を止めなくてはならないでしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 01 Jul 2005 01:46:18 +0900
    Q2: 佐藤先生様
    リアルタイムの御教授恐れ入ります。

    1000倍では、クラスターと思います。その他、外部磁場を与えると磁力線に従って クラスターが連結して磁力線に従って動きます。

    磁気ビーズは生理食塩水に懸濁されて、不思議とあまり自己凝集しません。
    磁束密度については1μmのクラスタで良いのですが、SQUIDでも定量出来ていませ 。
    私は磁気カー効果で定量しようと考えていますが、いかがでしょうか?
    取り急ぎ御返信致します。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 1 Jul 2005 10:23:24 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     事情はよく分かりました。
    磁気カー効果で1μmの粒子の磁化を判定するのは至難のわざです。市販 の磁気カー顕微鏡(ネオアーク社製)でも、3μmくらいがよいところで す。私どもが、現在開発中の円偏光変調法を用いた磁気光学顕微鏡で、 ようやく1μmのものが見えるかなという感じです。またブラウン運動し ているとのことなので、動的な観測が必要でしょう。私どもの装置で も動的観察は、現在のところ1秒に10フレーム程度の遅いものです。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 01 Jul 2005 11:29:24 +0900
    AA: 佐藤先生様
     A社Oです。
    これまでの経緯をお話ししますと、初めは見つける事すら出来ませんでしたので、見えないと思っていました。

    高濃度磁気ビーズ液を順次希釈してゆきつつ、それにあわせて顕微鏡、レンズ、フィルターを交換 しつつ、結局高速度カメラを使ってブラウン運動をしている事自体理解できてようやく見える様になりました。
    御教授大変ありがとうございました。難しそうですがもう少し頑張って見ます。
    ------------------------------------------------------------------------

    600. 厚底鍋のIH加熱

    Date: Wed, 29 Jun 2005 19:46:44 +0900
    Q: 佐藤 勝昭先生殿

    たいへん御世話になっております。

    以前にもIH調理器の質問をさせて頂きましたM電機㈱のMです。
    公開はできれば匿名でお願いします。

    どう調べてもわからないもので、御専門外かもしれませんがよろしくお願いします。
    弊社の卓上IH調理器 定格1200Wでの実験ですが、鉄、SUS304、SUS430共 一般的な鍋の大きさ、厚さでは消費電力は差が出ないのですが、SUS304で底径  29cm 厚さ2㎜の鍋をかけたところ800W位しか反応せず沸騰までには至りませ んでした。沸騰しないというのはSUS304は鉄より熱伝導が悪く、あと形状的に 飽和状態になると思いますが、何故、材質が厚いと反応が悪くなるのでしょうか。
    いずれも底はフラットです。
    お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 29 Jun 2005 20:20:15 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     IH加熱において発熱は、表皮効果で高周波の電磁界の侵入する深さま での極めて薄い領域です。従って、厚くても薄くても発熱部分の大きさ は同じなのです。従って、厚い鍋ほど熱容量が大きいので、同じ発熱量 があっても温度が上がらないのではないかと存じます。
    ------------------------------------------------------------------------

    601. エチレングリコールとトリエチレングリコールの粘度と表面張力

    Date: Mon, 4 Jul 2005 11:09:56 +0900
    Q: はじめまして。
    わたくし、K製作所のYと申します。(H.P記載時には匿名でお願い致します。)
    技術開発を業務としております。
    早速ですが、質問させて下さい。
    エチレングリコールとトリエチレングリコールの粘度(20℃)および表面張力 (20℃)を教えていただけないでしょうか?
    比較的取り扱いやすい流体なので、あるものの擬似流体として使おうと思ってます。 宜しくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 4 Jul 2005 13:19:40 +0900
    A: 吉岡様、佐藤勝昭です。
     私の手元にあるハンドブック類には載っていませんでしたので、 Googleで英文検索しました。

    ethylene glycol viscosityと検索したら
    http://dwb.unl.edu/Chemistry/MicroScale/MScale05.html
    のLiterature dataのところに
    ethylene glycol viscosity(粘度) ~16centipoise(センチポワズ)
    と出ています。
    triethylene glycol では見つかりませんでした。

    http://www.lib.umich.edu/dentlib/Dental_tables/Visc.html
    にtriethylene glycol dimethacrylateの粘度が7.5centipoise, Ethylene glycol dimethacrylateの粘度は3.5centipoiseと書かれています。
    ジメチルアクリレートになると粘度はずいぶん下がるようです。

    表面張力については、http://www.sartomer.com/wpapers/4024.pdf

    Ethylene Glocyl Dimethacrylate 33.1 dyne/cm
    Triethylene Glycol Dimethacrylate 36.5 dyne/cm
    ---------------------------------------------------------------------------

    602. 炭素繊維の構造

    Date: Mon, 4 Jul 2005 21:20:59 +0900
    Q: はじめまして。東洋大学の浜野と申します。
    現在炭素繊維についての研究をしており、不明な点があるので、 質問をさせていただきました。

    炭素繊維は構造面からは2種類に分類されるとあります。
    ・実質的に配向性をもたない等方性のCF
    ・異方性の高い三方炭素の微結晶の炭素も網面方向が繊維に
     平行になるように選択的に配向した環状繊維構造を有する
     異方性のCF

    となっています。この中でいっている『配向性』、『環状繊維構造』 とはどういったものなのでしょうか。

    お手数をおかけ致しますが、なにとぞよろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 5 Jul 2005 14:31:39 +0900
    A: 浜野様、佐藤勝昭です。
     私はCFについてほとんど知識がありませんので間違っているかも知れませんが、一般 的には、炭素はグラファイト構造をもちますから、炭素の6員環の網目から成り立ってい ます。配向性というのは繊維がこの網目の面に平行に伸びている構造のことを指している のではないでしょうか。このような構造を「環状繊維構造」とよぶのではないでしょうか。  これに対して、融解したピッチから引き出したCFでは、グラファイトの網目が折りた たまれているため、実質的に等方性になっているのだと思います。テネシー大学のHPに 炭素繊維のコーナーがありますので、ご参照下さい。
    http://www.engr.utk.edu/mse/pages/Textiles/CARBON%20FIBERS.htm
     詳細はわかりませんので、炭素繊維協会のホームページ
    http://www.carbonfiber.gr.jp/
    に質問を書き込むところがありますから、問い合わせられてはいかがでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------------

    603. 二酸化珪素の熱伝導率の温度変化

    Date: Wed, 6 Jul 2005 15:41:52 +0900
    Q: お忙しい中恐縮です。今日、ネットである調べものをしている際に、偶然このブログ を発見して早速質問をさせて頂きました。私は、名古屋大学の工学部の4年生で田中 智悠と申します。先日、熱伝導に関するある教科書の中で二酸化ケイ素のThermal conductivityが出てきたのですが、その熱伝導の値が絶対温度10K(ケルビン)付 近においてはT^3に依存し、100K付近ではe^1/Tに、そして1000K付近では1/T に依存しているようなのです。温度領域によって、なぜ熱伝導の温度依存が変わるの でしょうか?結晶構造がかわるのでしょうか?
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 6 Jul 2005 19:01:33 +0900
    MA: 田中君、佐藤勝昭です。
     誘電体の熱伝導は、フォノン(格子振動の量子)によって説明されます。 キッテルの固体物理学入門の第5章に熱伝導率の項があり、詳しく説明 されているので、図書館で本を借りてきてお読みなさい。
    熱伝導率Kは、基本的に(1/3)CvLで与えられます。ここにCは熱容量、v は音速、Lはフォノンの平均自由距離です。
    極低温では、熱容量はDebyeの3乗則に従いT^3に比例します。フォノン の平均自由距離Lは極低温では長いので試料サイズできまり、結局熱伝 導率はT^3に比例します。
    一方、高温では、熱容量はほぼ一定になります。一方平均自由距離は高 温では1/Tに比例するので、結局高温では、熱伝導率は1/Tに比例するの です。
    問題は、途中の温度です。このときは、フォノンの散乱の際にUmklapp 過程というやや難解な過程が関係するので(詳細は前述書参照)、平均自 由行程はexp(-θ/2T)に比例することになります。ここにθはフォノン の最大周波数に相当する特性温度です。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 00:26:57 +0900
    AA: すばやい返信かつ適切なコメントありがとうございました。
    これからもご多忙のことだと思いますが、いろいろな方からの質問への助言よろしく お願いします。今度とも御先生のブログを拝見させて頂いていく次第です。
    簡単ながらお礼のメールとさせて頂きます。
    --------------------------------------------------------------------------

    604. ひずんだシリコンのバンド構造と有効質量

    Date: Thu, 7 Jul 2005 02:52:28 +0900 (JST)
    Q: 佐藤先生
    はじめまして。
    東京農工大学BASE小畑研究室に去年在籍していた七条といいます。

    HPにQ&Aのコーナーを見たのでちょうど疑問に思ったことを質 問させていただきます。

    結晶性とバンド構造についてです。
    最近、インテルのCPUにもコンセプトが取り入れられているひ ずみSiですが、結晶性とバンド構造は教科書に載っている通り かと思いますが、
    例えばbiaxialなひずみはhydrostaticな応力とunaxialな応力 に分けることができると思いますが、
    hydrostaticな応力に関しては結晶性が変わるとは思えません。

    バンドギャップが変化することはわかりましたが、波数空間でconduction band valence bandそれぞれが平行移動するのでしょうか?
    曲率とともに holeの有効質量も変わるのでしょうか?
    論文にはどんな応力でもvalence bandの変化により、holeの有 効質量が変わると書いてあるものを読んだ記憶があります。
    しかし結晶性に変化があるとは思えません。
    valence bandの扱いが複雑でだいっ嫌いなんですが 結局のところどうなんでしょうか?
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 10:25:04 +0900
    A: 七条様、佐藤勝昭です。
     おたずねの「結晶性」というのが何を意味しているのか不明です。ふ つう結晶性がよいとか悪いとかいうのは、転位、空孔などの結晶欠陥が 少ないとか多いとか言う場合に使われます。
     立方晶系の結晶に1軸性のひずみが加わりますと、結晶の対称性が変 わり正方晶系になります。すると、電子の波動関数はひずみの方向と、 それに垂直な方向とで違ったポテンシャルを感じることになります。こ のため、Γ点で縮退していた価電子帯の重いホールバンドと軽いホール バンドが分裂することになります。この結果Γ点付近でのバンドの形状 が変わり、曲率の変化を通じて有効質量が変わるのです。
     さらにMOS構造などでは、量子閉じこめ効果によりフォノンの散乱が 減少することで移動度が増大するという効果が期待されています。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 17:51:20 +0900 (JST)
    Q2: 佐藤先生
    七条です。
    お返事ありがとうございます。

    「結晶性」ではなく、結晶の対称性です。
    hydrostaticな圧縮の場合、結晶の対称性は変化しませんよね。
    なのになぜホールの有効質量が変化するのでしょうか?
    という疑問です。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 22:05:50 +0900
    A2: 七条様、佐藤勝昭です。
     おっしゃるとおり、静水圧では対称性は変化しません。
    しかし格子定数が変化します。格子定数が小さくなると、波動関数のオ ーバーラップが増加しますから、covalencyは増加し、その結果バンド 幅が増え、結果的にバンドギャップが圧縮されるでしょう。
    静水圧Pとともに次の式に従って狭くなります。
     Eg=Eg(0)-1.4・10^-3P (eV)
    これによって、バンドのk空間での曲がりが変化するものと思われます が、いろいろなファクターが関係するので、実際にバンド計算しないと どう変化するかは予測できないでしょう。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 22:55:24 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭先生、七条です。
    的確なお答えありがとうございます!
    --------------------------------------------------------------------

    605. LEDにおける波長と光度の関係

    Date: Wed, 06 Jul 2005 12:20:12 +0000
    Q: はじめまして。T大学大学院のYといいます。(匿名でお願いします)
    わたしはLEDについて研究しているのですが、LEDの波長と光度の関係がわかりません。 波長が大きくなれば光度も上がることの理論的な根拠を知りたくてメールさせていた だきました。
    また、波長が1nm違ったとすると理論的にはどの程度光度が変わってくるのでしょうか?

    お忙しいとは思いますがよろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 6 Jul 2005 21:23:37 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     一般的に言って、波長が長いほど光度が高いということはいえません。
    あなたの研究しているInGaN系(?)のある組成範囲での話ではないでしょ うか。あなたの研究については指導教員が一番よく把握しているはずで すから、直接指導を仰ぐべきでしょう。
    -----------------------------------------------------------------------

    606. チタン・ニッケル合金の機械的強度

    Date: Thu, 7 Jul 2005 15:23:41 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
    はじめまして。
    私、T社で研究しております、Tと申します。
    (ホームページでは匿名でお願いいたします)
    早速なのですが、TiNiを室温で36ヶ月以上放置しても、その機械的物性は変化しない。 というようなことが記載されている文献などご存知ないでしょうか。
    ちなみに、機械的物性は、引っ張り、繰り返し特性、疲労特性などです。
    引っ張り特性だけでも載っているものがあれば、非常に助かるのですが・・・
    当方、八方手を尽くしましたが、見つけることが出来ませんでした。
    よろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 15:53:23 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
     私は、金属工学が専門ではないので、知識がなく、Googleで
    nickel titanium alloy tensile stress
    と入力しましたところ
    Asaoka K.; Yokoyama K.; Nagumo M.:
    Hydrogen Embrittlement of Nickel-Titanium Alloy in Biological Environment;
    Metallurgical and Materials Transactions A, 1 March 2002, vol. 33, no. 3, pp. 495-501(7)
    という論文が引っかかりました。これは、NiTi合金の水素脆性に関する論文ですが、 これを手がかりにして引用文献等を当たれば、よいのではないかと存じます。
    IngentaConnectというサイトに
    http://www.ingentaconnect.com/content/tmsasm/mmta/2002/00000033/00000003/ art00003
    としてabstractが載っています。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 7 Jul 2005 16:05:12 +0900
    AA: 佐藤先生
    迅速な対応ありがとうございます。
    この文献を参考にして、引用文献を探してみようと思います。
    ありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------

    607. プラチナ・パラジウムの分離法

    Date: Thu, 7 Jul 2005 15:33:10 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
    またまたT社のTです。何度も申し訳ありません。
    実はもう一点、教えていただきたいことがあります。
    プラチナとイリジウム合金の分離方法がわかりません。
    金属関係の会社様にも問い合わせてみたのですが、返答はみなわからず仕舞いでした。
    (企業秘密なのかもしれません)
    お手数お掛けしますが、返答の方、よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 08 Jul 2005 01:08:19 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
    Googleで探したところ、下記の論文が見つかりました。詳しく書かれているので
    ご参照下さい。
    --------------------------------------------------------------------
    Platinum and Palladium Separation Method
    Contributed by:
    Corby G.Anderson, Ph.D.
    The Center for Advanced Mineral & Metallurgical Processing, Montana Tech (http://technology.infomine.com/labmine/resources/pt_pd.asp)
    によりますと、プラチナとパラジウムを含む王水溶液を沸騰させシロップ状にし 塩酸を加える。この操作を硝酸がなくなるまで繰り返す。この操作は、液体が完 全に蒸発することがないように、中くらいの熱のもつフードの下で行う。つい で、大きな容器に注ぎ込み蒸発皿を洗浄瓶を使って洗う。この溶液を滴下水で薄 める。プラチナを析出させるには塩化アンモニウムを用いる。・・・
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 8 Jul 2005 09:00:47 +0900
    AA: 佐藤先生
    お忙しい中、ありがとうございました。
    早速論文を読んでみます。
    ------------------------------------------------------------------------

    608. NaのD線のゼーマンスペクトル

    Date: Fri, 8 Jul 2005 21:49:11 +0900
    Q: 佐藤先生
    私は薬科大学の衛生化学教室で助手をしておりますAというものです。
    (匿名希望です。)
    ------------------------------------------------------------------------
    教室の専門は生化学分野なのですが、必要に迫られて分子と電磁波の相互作用の勉強をはじめました。
    物理の専門家からは
    とても素朴に思えるかもしれませんが、勉強中に疑問に感じたことを教えていただけないでしょうか?
    (あまりにも初歩的あるいは的外れな質問であれば、公開しないで下さい。)
    1)
    電子スピンの発見の歴史的な解説で、よくナトリウムのD線が取り上げられています。
    電子スピンと軌道スピンにより、同一軌道でもエネルギー準位に差が生じるというということはわかるのですが、その結果としてなぜ二重線になるのでしょうか?
    基底状態と励起状態にそれぞれ二つの微細準位があるならば、四重線か、準位差がちょうど同じであれば三重線になるように思えます。

    2)
    半導体の簡単な原理図で、シリコン結晶中に中性のホウ素(p型)あるいはヒ素原子(n型)が存在している図を見かけます。
    このように不対電子が存在しているのを見ると、有機・生物系の私はラジカルという言葉を反射的に想像します。
    半導体を、固体中にラジカルが散在している状態と捉えるのは間違った考え方でしょうか?
    ホウ素ラジカルは電子を受け入れて安定な偶数電子陰イオンになるため電子のアクセプタとなり、ヒ素ラジカルは電子を放出して安定な偶数電子陽イオンになるため電子のドナーになり、それぞれがシリコンの結晶格子中でさらに安定化しているというように解釈しても良いように思います。
    有機系の人間が慣れ親しんでいる「ラジカル」や「ラジカルの関与する電子移動反応」という表現が、半導体の原理の説明に使われないのは、そのように理解するのが間違っているからなのでしょうか?

    3)
    蛍光灯は、曲がりくねっていてもなぜ均一に発光するのでしょうか? 直管状の蛍光灯ですと、熱電子が直線状に飛行し、水銀蒸気に5 eV程度の衝突エネルギーを与えて紫外線が発生するという過程を想像しやすいのですが、管が曲がりくねっているときの電子の飛行はどのように考えればよいのかわかりません。(管内の希薄な気体がプラズマになり、導電性が結構高い状態になっているのでしょうか?)
    また、複雑に曲がった蛍光灯も均一に光って見えますが、これは蛍光管内に軸方向に沿った均一な電位勾配が出来ているということでしょうか?

    素朴な疑問ばかりですが、どのように調べればよいのか良くわかりませんでした。
    週末にこのようなメールをお送りして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 09 Jul 2005 11:46:42 +0900
    Q: A様、佐藤勝昭です。
     あなたの学習歴がわかりませんので、一応、大学で量子物理学を学んでおられ るとして説明させていただきます。

    質問1)ナトリウムのD線はなぜ磁場の印加で2本にしか分裂しないのか。基底状 態と励起状態にそれぞれ二つの微細準位があるならば、四重線か、準位差がちょ うど同じであれば三重線になるように思えます。
    回答)おっしゃるとおり、選択則を考えなければ、D_1線は4本、D_2線は8本に分 裂するはずです。しかし、選択則があるため、それぞれ2本、4本に分裂します。
    難しければ、以下は読み飛ばしてください。
    ================================================================
    NaのD線はそれ自身がダブレット(2重項)になっています。
    D_1線とD_2線です。どちらも基底状態は3s_1/2(j=1/2)で、励起状態は、それぞ れ、3p_1/2(j=1/2)と3p_3/2(j=3/2)となっています。この分裂幅はスピン軌道相 互作用によっています。jは全角運動量の量子数です。
    磁場があるとき基底状態はjz=1/2とjz=-1/2に分裂します。jzはjの量子化軸方向 (今の場合磁場の方向)の成分です。
     s軌道はlz=0ですから、sz=1/2とsz=-1/2に分裂するといってよいでしょう。


    (a)まずD_1(j=1/2)線を考えます。基底状態はjz=1/2とjz=-1/2に分裂します。
     jz=1/2には、lz=0,sz=1/2が対応します。
     jz=-1/2には、lz=0,sz=-1/2が対応します。
     同様に励起状態もjz=1/2と-1/2に分裂します。しかし、励起状態はl=1なので  jz=1/2には、lz=1,sz=-1/2が対応します。
     jz=-1/2には、lz=-1, sz=1/2が対応します。
    Δlz=±1、Δsz=0という選択則を考えると
     3s(jz=1/2)→3p(jz=-1/2)および3s(jz=-1/2)→3p(jz=1/2)の2本のみが許されま す。この結果、D_1線は2本に分裂します。第1の遷移はΔlz=-1,第2の遷移はΔlz=+ 1なので、それぞれ左回り円偏光、右回り円偏光を吸収します。

    (b)次にD_2線のゼーマン分裂を考えましょう。
    磁場があるときはD_2線(j=3/2)に対応する励起状態はjz=3/2,1/2,-1/2,-3/2の4 つの準位に分かれます。
     jz=3/2という状態はlz=1,s=1/2に対応します。
       (lzはlの量子化軸成分,sz=sの量子化軸成分)
     jz=1/2には、lz=1,sz=-1/2とlz=0,sz=1/2が対応します。
     jz=-1/2には、lz=-1,sz=1/2とlz=0,sz=1/2が対応します。
     jz=-3/2には、lz=-1,sz=-1/2が対応します。
    Δlz=±1, Δsz=0という選択則を考えます。
     この結果、ゼーマン分裂した基底状態の1つの準位 3s(jz=1/2; lz=0,sz=1/2) からは2つの励起準位3p (jz=3/2; lz=1,sz=1/2)と3p(jz=-1/2; lz=-1, sz=1/2) への遷移が可能です。
     分裂した基底状態のもう一方の準位3s(jz=-1/2; lz=0,sz=-1/2)から、2つの 励起準位3p(jz=1/2; lz=1, sz=-1/2)と3p(jz=-3/2; lz=-1, sz=-1/2)への遷移が 可能です。
     この結果、D_2線は磁場によって4本に分裂します。
    ------------------------------------------------------------------------
    質問2)半導体を、固体中にラジカルが散在している状態と捉えるのは間違った 考え方でしょうか?
    回答:面白い発想ですね。ラジカルは決して基底状態ではなく、励起状態です。 従って、ある寿命をもって基底状態にもどります。一方、半導体におけるドナー を考えますと、価数の違った不純物で母体原子を置換すると、結合に使われずに 余った電子や、結合に必要な電子が足りないので生じた電子の孔(ホール)がそ の不純物付近の余分の電荷(例えば珪素を燐で置換すると燐は5価で珪素は4価 なので、不純物の部分のみ+1正電荷があるように見えます)にクーロン力で束 縛され、燐原子の周りをまわっています。この軌道半径は数十原子間隔にもわ たっています。(正電荷が半導体中の誘電率のため遮蔽を受けているため、クー ロン力が小さい。)この状態は、中性ドナー状態という基底状態です。この状態 では電子は結晶内を自由に動けないので、電気を運ぶことはできません。それ で、バンドの下に準位線を書くのです。温度上昇とともに、ドナーの電子は正電 荷の束縛を振り切って、結晶全体に広がって行きます。電子は伝導帯というバン ドの中に励起されています。これがn型半導体の電気を運ぶキャリアとなってい ます。この状態はイオン化ドナー状態といわれます。この状態は、励起状態です から、むしろラジカルに近いかなという気がします。

    質問3)曲がりくねった蛍光灯では、管内の希薄な気体がプラズマになり、導電 性が結構高い状態になっているのでしょうか?
    回答:お考えの通りです。放電灯はみな同じです。かつて裏銀座の象徴であった ネオンサインは曲がりくねったガラス管に封入されたネオンガスの放電による衝 突励起による発光を利用しています。蛍光灯の場合は放電により気体から放出さ れた紫外線を励起光源として管壁に塗布した蛍光体を励起し可視光線を発光させ るところが違うだけです。電極から飛び出した電子が気体を電離し、これにより 放出された電子が次の電離をおこすというように、電離現象を引き継いでいき、 最後は、対抗電極に足しいます。このとき放電が起きたというのです。放電のパ スは樹枝状に伸びていくので、決してあなたのおっしゃるような直線的に進行す るものではありません。これは蛍光管内に軸方向に沿った均一な電位勾配が出来 ているということは結果的にそうなっているだけで、放電のパスができるまで は、樹枝状に電離が進んでいくと思います。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 10 Jul 2005 23:23:55 +0900
    AA: 佐藤先生

    休日にもかかわらず、早速お返事をいただきありがとうございました。

    1)については、「選択則」の理解が最大のポイントかと思いました。
    パウリの排他則や量子もつれ(entanglement)の理解と共通するもののようにも思えますが、いずれにせよもう少し基礎に戻って勉強してみます。

    2)は、放射線の半導体検出器の原理をどのように説明すれば良いだろうか?ということから出た疑問です。
    放射線障害ではラジカル反応が重要ですので、その延長でなんとかラジカルで説明できないものかと考えた次第です。

    3)の放電の開始は、カミナリが次第に伸びてつながっていくのと同じような感じですね。
    いったん放電が始まった後は、曲がりくねった電線を電流が流れるのに何の不思議もないのと同様ですね。
    実は子供のころからの疑問だったのですが、やっとすっきりと理解できたように思いました。

    >  あなたの学習歴がわかりませんので、一応、大学で量子物理学を学んでおられ
    > るとして説明させていただきます。

    量子物理学の単位を取り、その上で量子、無機、有機化学へと進んだはずなのですが・・・・・・
    基礎をきちんとやらずに進んでしまうと、ぼろが出てしまいますね。

    回答をお聞きすると、つまらない質問をしてしまったものだと思いましたが、ご丁寧な説明をしてをいただきありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------

    609. ITOの電気分解による導電性の劣化

    Date: Wed, 13 Jul 2005 10:30:58 +0900
    Q: はじめまして、H社 Sと申します。
    *匿名希望
    液晶パネルの製造をしておりますが、ITO電極に塩化ナトリウムと水が付着 (具体的には、汗液を含む木綿繊維が付着)により、ITO電極が電気分解し、 導電性が無くなるメカニズム(化学式)が知りたく、mailさせて頂きました。

    よろしくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 13 Jul 2005 11:26:29 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     ITOが電気分解して導電性がなくなるという話は初めて知りました。 なんでもQ&A244にありますように、ITO電極の電気伝導は In2O3に添加されたスズが担っています。おそらく、食塩水中での電気 分解によってスズが塩化スズSnCl4になって溶け出し、Snを添加されな いIn2O3が残ったため、導電性を失ったのではないかと愚考します。
     化学反応式は、自信がありませんが、
       SnO2+4NaCl+4H2O=SnCl4+4NaOH+2H2↑
    ではないでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 13 Jul 2005 12:13:30 +0900
    Q2: 佐藤様、Sです。
    早速ご回答頂きありがとうございました。
    非常に助かります。
    もう2点質問をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?
    ①今回塩化ナトリウムの付着での事例について問い合わせさせて
     頂きましたが、水のみの付着(水の電気分解のみ)でITO電極の
     導電性が無くなることがあるのでしょうか?
    ②今回、化学式を教えて頂いたのですが、Inはイオン化し
      化学反応は起こさないのでしょうか?

    お願いばかりで、恐縮ですが、よろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 13 Jul 2005 12:55:56 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。
    ①何らかの電解物質が溶けていない限り電気分解は起きないでしょう。 もし起きたとすれば、純粋の水のつもりでも、いろいろのイオンがとけ 込んでいたのでしょう。
    ②酸化インジウムはイオン結合性を持ち比較的安定な物質なので、スズ が先に溶け出すと判断しました。また、導電性がスズによってもたらさ れていること考えると、インジウムの反応は、あったとしても、考えな いでよいのではないでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 13 Jul 2005 13:09:55 +0900
    佐藤様
    ありがとうございました。
    悩んでいたことが、解消されました。
    --------------------------------------------------------------------------

    610. 誘電加熱

    Date: Fri, 15 Jul 2005 00:43:26 +0900
    Q: 佐藤 様
     お世話になります。以前も一度ご質問させていただきました、K社Yと申します。
    再度ご質問させていただきたくメールいたしました。
    (お答えいただけるようでしたら匿名でお願いいたします)

    誘電加熱について検討を行っております。
    そこで、常温~100℃位での2.45GHzのマイクロ波を照射した場合の誘電損失 (ε’×tanδ)のできるだけ大きい物質、できれば固体粉体物質(ナノ~数ミクロン粒径) を探しておりますが、なかなか文献検索をしても適当なものが見当たりません。
    一覧表になっているような文献、総説、あるいは具体的な物質などがございましたら お教えいただけませんでしょうか。

    1MHzくらいのマイクロ波照射における誘電損失の一覧表はある程度みつけ、 酸化チタンやチタン酸バリウムが大きいような記載がございましたが、2.45GHz になるとかなり違ってくるようにも思います。2.45GHzそのもでなくとも、 数GHz~数百GHzであればある程度推測可能かとも思っております。

    お忙しいとは存じますが、ご教示いただきたく、何卒よろしくお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Jul 2005 01:15:31 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
     GHz帯の誘電損失については、近年GHz帯を移動体通信に使うことから、 誘電損失の少ないコンデンサを見つけるための研究が行われていると思います。
    一般にGHz帯の誘電損失は、周波数とともに増大します。この原因は、中赤外 領域にあるフォノン(格子振動の量子)吸収帯の裾を見ているためです。フォノ ンの周波数は、質量の平方根に反比例しますから、吸収ピーク周波数は軽い元素 ほど高くなります。すると吸収の裾も高い周波数側にシフトします。従って、軽 い元素であるチタンの酸化物は、マイクロ波帯での誘電損失の小さな物質とし て、知られています。逆に重い元素を含む誘電体の方が損失という点ではよいと 思います。多分、損失の少ないもののリストは入手できるでしょうが、損失の多 いものの一覧表はないのではないかと推察します。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 15 Jul 2005 23:14:22 +0900
    AA: 佐藤 様
    お忙しい中、メールをいただきありがとうございました。
    ご教示いただきました「重い元素」に着目して、実験してみたいと思います。
    一覧表はないだろうとのことですが、ひとつの切り口を見出せたと思います。

    ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    611. 分子軌道法

    S大学の一年電気電子工学科の坂口です。
    以下の質問をお願いいたします、
    窒素(ガス)が安定で酸素(ガス)が活性である理由は分子軌道法でどのように説明されるか?
    というものなのでが。・・分子軌道法も習ってませんし、どう説明すればいいのかわかりません。
    もしよろしければ、おしえていただけると大変助かります。
    また、もうひとつあるのですが、分子の形と、対称性について説明しましょう、ということなの ですが何のことかさっぱり・・・・。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 13 Jul 2005 20:41:50 +0900
    A: 坂口君、佐藤勝昭です。
     大学の宿題でしょうか?
    分子軌道法を習っていないのにそのような問題を出す教員に問題がありますし、分子軌道 法を知らなければ、私が説明しても、君はわからないでしょう。また、分子の形や対称性 というのは、電気系の1年生にはむずかしいと思います。
    図書館に行けば、分子軌道法や分子の形、対称性を説明したたくさんの書物があるはずで す。分子軌道法を理解するには最低限の量子力学の知識が必要です。(波動関数など) どれでも1つ読んでみて、わからなければ、さかのぼっていろんな本を読んでいって、や はりわからなければ、どこがわからないかを質問して下さい。
    参考書として、たとえば、化学のための量子力学(M.W.ハナ著、柴田周三訳、培風館) のp.152に載っています。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 14 Jul 2005 03:58:55 +0900 (JST)
    AA: ありがとうございます。化学の量子力学に載ってるのですね☆その本を見てみたいと思います、
    大変助かりました。わざわざ、ご返信のほど、大変感謝いたします。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Jul 2005 01:44:56 +0900 (JST)
    AA: この前、分子軌道法のアドバイスをいただいた、S大学電気電子工工学科の一年の坂口です。
    あれは、宿題ではなかったのですが、主題科目の期末試験でこういう感じの問題を出しますよ というものでした。ともかくも、東京農工大学理事・副学長である、佐藤勝昭先生から、わざわざ メールを頂きアドバイスをしてもらえたことに、大変恐縮しております。
    先生のアドバイスのおかげで主題の期末テストが100点満点とれました。
    自分でも、びっくりしている限りであります。本当にお世話になりました。
    大変ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    612. ZnSと[CuInS2]2の占有軌道数

    Date: Tue, 12 Jul 2005 13:16:21 +0900 (JST)
    物性なんでもQ&Aを見て、質問したいことがありメールしました。T大M1Tです。(匿名希望)
    ある論文で、ZnSと[CuInS2]2の占有軌道はそれぞれ9,36と書いてあったのですが、 自分で考えてみてもそのようになりません。どうしてそうなるのか、もしご存知でしたら 是非教えていただきたいです。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 17 Jul 2005 11:23:03 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     (どの論文にそのように記載されていたのか質問差し上げたのですが、お返事が ないので、私の考える範囲でお答えします。)
     ZnSの価電子帯は硫化物イオンの3s,3p軌道と亜鉛の4s軌道が混成して形成され ています。しかし単純に考えれば、価電子帯のトップは3pと考えてもよいでしょ う。1s, 2s, 2p, 3s, 3pまでが占有されているので、1+1+3+1+3=9個の軌道が18 個の電子(スピン1/2と-1/2)で占有されているということだと思います。(注: s軌道には1個の軌道、p軌道は3個の軌道が対応します)
     一方、[CuInS2]2において価電子帯のトップが硫化物イオンの3pだとすると、S が4個なので、単純に9×4=36としたのではないでしょうか。
     しかし、実際には、(Zungerらの第1原理バンド計算によれば)CuInS2の価電 子帯には、銅イオンの満ちた3d軌道が混成していますから、3dには5個の軌道が あるので、CuInS2においては、Sの9個×2+Cuの3d 5個=23の軌道が占有されてい ます。[CuInS2]2で考えるならば、46個の軌道が占有されているはずです。
     T君が「自分で考えてみてもそのようになりません」というのはそのことで しょうか?
    --------------------------------------------------------------------

    613. 金属水酸化物

    Date: Fri, 8 Jul 2005 07:30:14 +0900
    Q: はじめまして
    HPをみて送らせて頂いております。
    Mと申します。所属は今どこにもなく失業中です。 匿名でお願いします。
    接着剤関係の仕事をしていました。友達からの相談で返答に困っています。

    全くの素人なのでトンチンカンな質問かもしれませんが、宜しくお願いします。
    1.金属表面(ステンレスやアルミ)にある酸化皮膜はすべて水と接触すると一旦は水酸化物に変化するのでしょうか?
    2.水酸化物に変化した場合、酸化皮膜にのっている樹脂膜などがあると端面から浸入し塗装膜の密着が剥がれていくことになるのでしょうか?
    3.もしそうなら、酸化皮膜を水酸化させない方法はあるのでしょうか?(安全、短時間で設備のいらない方法)
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 8 Jul 2005 19:54:59 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     専門外なので、一般論でお話しします。
     一般に金属をさびさせるのは酸素であって純水と接してもさびること はありません。ステンレスがさびにくいのは、ステンレスに含まれるク ロムが酸化物を作って不動態となり酸素が中に入り込むことを防ぐから です。この酸化物は堅牢で、水と接触しても水酸化物になりません。し かし、酸素を含む水中で他の金属たとえば鉄と触れたりすると、接触電 位差のため、電池作用が起きて、接触した金属の方をさびさせるそうで す。たとえば、鉄と触れているとき、触れた鉄に腐食生成物赤さび(水 酸化第二鉄[Fe(OH)3])を形成するそうです。また、水に電解質が溶け ている場合にも水酸化物ができる可能性はあります。アルミニウムにつ いても、表面の酸化アルミニウムが単に水に接しただけでは水酸化アル ミニウムにはならず、何らかのアルカリ溶液と接して水酸化物になるの ではないかと存じます。有機物がつくと、隙間腐食のメカニズムで腐食 が起きやすいと言われています。
     さびについては、コロージョンテックのHPがわかりやすいのでご参照
    ください。http://www3.kitanet.ne.jp/~corr-tec/sub3.html
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 20 Jul 2005 07:26:16 +0900
    AA: 佐藤様

    お礼が遅くなりましたが、迅速なご返事ありがとうございました。
    ご紹介いただいたHPは分かりやすかったです。もっといろいろ勉強させていただきます。
    -----------------------------------------------------------------------------

    614. AlGaN/GaN HEMTの抵抗率異方性

    Date: Thu, 21 Jul 2005 18:30:49 +0900
    Q: はじめまして、私はN大学大学院1年のHと申します。
    ヘテロ接合のAlGaN/GaN HEMTについて研究を行なっているのですが、分からない事があり、助言頂ければと思い連絡致しました。
    AlGaN/GaN HEMTのサンプルをホール効果測定(van der pauw法)してみたところ、縦方向と横方向で抵抗率が2~4倍違ってしまうことが多々あります。
    GaNはウルツ鉱型で、自発分極は持ちますが、z軸方向にのみであり、xy平面方向には極性がなく分極は発生しないと考えています。
    かといって、オーミック電極のつけ方に依存する接触抵抗等の原因でここまで大きく、正確に差が出るとは考えられません。
    やはり結晶構造に原因があるのでしょうか。なにか思いつくことがおありになれば、教えて頂ければと思います。
    なお、勝手ながらHPにアップする際は大学、名前は匿名にてお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Jul 2005 20:00:55 +0900
    A: H君、佐藤勝昭です。
    AlGaN/GaNでHEMTが出来るようになったのですね。
    もしウルツ鉱型のc面が正確にでているなら、異方性はないはずですね。
    GaN上にきちんとAlGaNがc軸配向してエピタキシャル成長しているのか は確認されているのでしょうか?
    農工大で窒化物のMOCVDをやっている纐纈教授に伺ったのですが、 AlGaNのc面は極性が強いのですが、極性が一様でなかったりすると、 等方性でなくなる場合があり得るし、圧電効果によってひずむこともあ り得るので、極性がきちんとしているかなど、よくチェックする必要が あるのではないかとの示唆をもらいました。参考にしてください。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 23 Jul 2005 18:37:13 +0900
    AA: 丁寧、親切なご返事ありがとうございます。確かにGaNの結晶はまだ品質が悪いので、まずは成長の状態をよくチェックする必要があると思いました。ご多忙の中、ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    615. 単結晶Siの線膨張係数

    Date: Fri, 22 Jul 2005 19:39:45 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤様

    三菱電機(株)柳澤と申します.
    単結晶Siの異方性について調べていたところ,先生のHPにたどり着き ました.非常に有用なHPで,今後,参考にさせて頂きます.

    単結晶Siについて,ヤング率については,軸方向で異方性があることは 直感的に理解できるのですが,熱伝導率については,
    http://www.jemco-mmc.co.jp/products/siliconparts/sp_property.html にありますが,垂直方向と水平方向で値が異なるとの記載があります.
    結晶構造がCubicなので,<001>と<100>では,差が無いように思うの ですが,上記のHPの水平方向とは<110>の事を言っているのかと邪推して います.これであれば,理解できます.

    そこで,質問なのですが,軸方向毎(<100>,<110>,<111>)の熱膨張係数は 異なるのでしょうか? いろいろな資料を見る限りでは,ヤング率の異方性 について明記されている資料でも,熱膨張係数は1つしか書かれていません.

    Cubicですので,差はないと考えるのが妥当な気がしますが,上記のHP で熱伝導率に差があるとの記載を見ると,熱膨張係数にも差がある可能性が あるのかと,頭を悩ましています.

    素人質問かもしれませんが,ご教示頂けると幸いです.

    以上,よろしくお願いいたします.
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Jul 2005 20:42:55 +0900
    A: 柳沢様、佐藤勝昭です。
     熱伝導率には、電子による熱伝導率が寄与しますので、k-空間でのエ ネルギーバンドのvalleyが関与するため、異方性が出ています。
     熱膨張率は、格子振動のみが寄与しますから、電子に比べずっと等方 的になります。おそらく、熱膨張率の異方性はないでしょう。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Jul 2005 21:01:59 +0900
    AA: 東京農工大学
     佐藤 勝昭様 三菱電機(株)柳澤です.
    早速のご回答,どうもありがとうございました.
    微少な反りを嫌う材料同士の接合で,熱応力による歪みを検討する 必要があり,下記のような質問をさせて頂くに至りました.
    やっと,すっきりいたしました.
    今後とも,よろしくお願い致します.
    -------------------------------------------------------------------------

    616. 誘電損失はなぜ生まれるか

    Date: Wed, 13 Jul 2005 23:55:41 +0900 (JST)
    Q: こんにちは、R大学二回生のOと申します。HPをみての質問です。
    いま高周波数でのコンデンサーの誘電損失を求める実験をしているのですが、高周波数でコンデンサーに誘電損失が生まれるのはどうゆう原理なんでしょうか?誘電損失はコンデンサーに抵抗が並列につながっているとみなせるみたいですが、周波数をあげると抵抗はどんどん減っていきますよね?それはいったいなんでなんでしょうか?
    WEBでは匿名(イニシャル)にしていただけると嬉しいです。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 21 Jul 2005 19:49:58 +0900
    A: O君、佐藤勝昭です。
     誘電損失というのは、誘電率に虚数部があることから発生することは おわかりですね。誘電率の虚数部とは、高周波の電界が加わったとき、 電気分極の振動が電界の振動より90度だけ位相の遅れるということを意 味しています。つまり、電界の振動に分極がついて行けないのです。
     なぜ分極の遅れが周波数とともに大きくなるのでしょうか?電気分極 にはイオン分極と電気分極があることは、よくご存知だと思いますが、 高周波でのイオン分極の位相遅れが原因なのです。この遅れは、運動方 程式におけるダンピング項から来ています。
     その結果、複素比誘電率εの角振動数ω依存性は次のようになります。

     ε=1-(Nq^2/Mεo)/{(ω+iγ)^2-ωo^2}   (1)

    ここにNはイオン対の密度、qはイオン対の有効電荷、Mはイオン対の換 算質量、ωoは格子振動の固有角振動数です。
    複素比誘電率の実数部をε'、虚数部をε"とすると

     ε"=2(Nq^2/Mε0)ωγ/{(ω^2ーωo^2ーγ^2)^2+4ωγ}   (2)

    すなわち、ε"は、格子振動の固有角振動数付近にピークをもち、裾を 引いたベル型のスペクトルになります。

    複素誘電率εと複素導電率σの間には、
     σ=-iωεεo (3)
    の関係がありますから、σの実数部σ'は
     σ'=ωε"εo   (4)
    となり、(2)を代入して
     σ'=2(Nq^2/M)ω^2γ/{(ω^2ーωo^2ーγ^2)^2+4ωγ}  (5)
    高周波のωは格子振動の固有振動数ωoに比べ十分小さいので、
     σ'=2(Nq^2/M)ω^2γ/ωo^4   (6)
    となり、導電率はωとともに増大します。
    抵抗率ρはσ'の逆数のなので
     ρ∝ω^-2
    のように周波数とともに抵抗が小さくなっていきます。

    --------------------------------------------------------------------

    617. 回折格子と近接場

    Date: Wed, 20 Jul 2005 20:49:36 +0900
    Q1: 佐藤勝昭先生
    はじめまして。
    私はM社で照明の研究開発をしておりますFです。(ホームページでは匿名でお願いい たします)

     回折格子の効果を考えていて、ふと疑問に思って悩んでいることがあります。 通常、回折効果は、波長とピッチの関係で表されますが、現実にはそれ以外に、 回折格子の高さ(透明基板での透過型回折格子の場合)の影響もあるように思えるの ですが。
    たとえば、凹凸の高さがあまりにも小さいと、光が構造を認識できずに回折効果は現 れない。

    つまり回折格子の凹凸の高さがあるしきい値以下では回折効果が現れないというよう なしきい値があるはずだと思うのですが、 それが、エバネッセント光の染み出しの距離との関数ではあらわされないのでしょうか?

     たとえば、エバネッセント光の染み出し距離は入射角度により指数関数的に減少し ます。
    もし、凹凸の高さのしきい値が染み出しの距離と何らかの関係があれば、このしきい 値は入射角の関数になると思われますが、実際のところはどうなのでしょうか?

    いろいろ、ネットや本で調べたりしましたが、どうしても回答を得ることができませ んでした。
    お忙しいところ、申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 22 Jul 2005 19:25:33 +0900
    A: 添付頂いた図を見ると、凹の部分では全反射になるけれど、凸部では、側面から 通常の透過で光が出ていくような感じですね。
     もし、凸部が十分小さければ、エバネセント場の中に微細な構造体 (凹凸)があるということになり、この構造体で散乱され再び伝搬光に 変換された後、伝搬光が干渉しあって特定の方向に回折するのだと思い ます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Jul 2005 11:31:07 +0900
    Q2: 回答ありがとうございます。
    ということは、凹凸の高さと回折の効果の度合いには関連があるように思えますが、 いかがでしょうか?
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Jul 2005 12:55:57 +0900
    A2: F様、佐藤勝昭です。
     おっしゃるとおりだと思います。近接場の範囲内に凹凸の高さがある 場合の方が効率的に伝搬光に変換されると思います。
     なお、このあたりのことは、最近では有限要素法などを用いたシミュ レーションによって、計算できるので、その関係の専門家にご相談され てはいかがでしょうか。必要なら本学の専門家の教授をご紹介しますが、・・
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Jul 2005 15:42:20 +0900
    AA: 佐藤先生
     回答ありがとうございました。
    今は、まだ、シミュレーション等までは考えておりませんので、 専門家への依頼は、また時期をみてお願いしたいと思います。
    (シミュレーション等まで検討が必要な依頼になると、個人の興味だけでなく、 会社として依頼しなければならなくなるので。勝手な理由ですみません)
    お忙しいところ、アドバイス、ご指導ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------

    618. グラファイトの誘電率(εr)と損失角(tanδ)

    Date: Tue, 26 Jul 2005 15:58:42 +0900 (JST)
    Q: こんにちは、R大学の修士1回生のOと言います。HPをみて質問しました。

    外径70㎜、内径30㎜高さが60㎜のグラファイトで作られた、中空円柱状のパンチのなかで 圧縮をかけながらマイクロ波でセラミックス材料を焼結する実験をしようと思っているのですが、 実験結果で内部のセラミックスにどれくらい外部のグラファイトの影響がありそうなのかグラファイト の誘電率と損失角(誘電正接)が分からないために計算できません。設定温度は約1000℃~1600℃、 圧力は約30~50MPaで焼結しようと思っています。いろいろ文献やWEBサイトを調べてみても 掲載されていません。もし、このような情報が掲載されている文献やWEBサイト、もしくは何か 特別な方法などがあれば教えていただけないでしょうか?是非よろしくお願いします。
    WEB上に掲載する際は匿名でお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Jul 2005 11:56:25 +0900
    A: O君、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aの239にありますようにグラファイトのc面内は、誘電体ではなく導体 です。一方、c面に垂直には絶縁体です。しかし、いわゆるグラファイトカーボンでは、 多結晶粉末が整形されたものなので、導体になっており、誘電率の実数部は負です。従っ て、誘電率と誘電正接というような誘電体の扱いでなく、導体として扱えばよいのではな いでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Jul 2005 12:13:47 +0900 (JST)
    AA: ご回答ありがとうございました。ご回答を参考に今後の実験の計画を練って行きたいとおもいます。
    --------------------------------------------------------------------------------

    619. ステンレスにおけるマルテンサイト量の評価

    Date: Mon, 25 Jul 2005 11:25:15 +0900
    Q1: 佐藤勝昭先生
    いつも物性なんでもQ&Aを拝見させて頂いています、
    A㈱のOです。
    社名と姓名は隠してください。

    以下の様に振動試料型磁気計(VSM)を用いて計測した磁気モーメントから マルテンサイト量を計測する方法があります。

    マルテンサイト量(g)=VSM磁気モーメント測定値(emu)/Ms(emu/g)
       マルテンサイトの場合は Ms= 156.86emu/g

    サンプル中のマルテンサイトwt%=100*(マルテンサイト量(g))/サンプル重量(g)

    そこでお尋ねしたいのは、何故「マルテンサイトの場合は Ms= 156.86emu/g」 なのか?どうゆう理由でこうなったのか?明治大学の西尾先生が見つけられたと か。
    もし、ご存知でしたら御教授願います。宜しく御願い致します。

    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 25 Jul 2005 22:15:41 +0900
    Q: O様、佐藤勝昭です。
     おたずねの件は非磁性の304ステンレス鋼におけるオーステナイト→マルテンサイト 転移にともなう「マルテンサイト量」を求める問題でしょうか。この場合、経験的に飽和 磁化の大きさがマルテンサイトの含有量に比例することが知られています。私も根拠を存 じません。おそらく156.86というのは、比例係数から求めた経験的な数字ではないでしょ うか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 26 Jul 2005 08:18:55 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生、
    非常に早い御対応驚きと共に感謝致します。
    言葉足らずで申し訳ありませんでした。御指摘の様に非磁性の304ステンレス鋼の マルテンサイト量を求める問題です。
    私は理論的に求められる数字だと思い、色々と計算してみました。自分でやると100 のオーダーにはなるのですが、どうしても156.86にならず悩んでおりました。
    先生のおっしゃる様に「経験的」な数字であれば、安心致しました。
    質問のついでにお尋ね致しますが、経験的に飽和磁化の大きさがマルテンサイトの含 有量に比例することが知られている代表的な文献があれば教えてください。

    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Jul 2005 13:27:12 +0900
    A2: 小澤様、佐藤勝昭です。
    直接のお答えにならないのですが、価電子濃度と磁化の関係は直線性があります。
    V.A.L'vov J.Phys.:Cond.Mat. 10, 4587-96 (1998)が参考になるかも知れません。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Jul 2005 13:36:29 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生様、Oです。
    参考文献の御教授まで御願いしまして、本当にありがとうございました。価電子濃度 と磁化の関係から自分で考察してみたいと思います。
    お忙しいところ、アドバイス、ご指導ありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    620. スピン演算子の固有値問題

    Date: Wed, 27 Jul 2005 07:46:02 +0900 (JST)
    Q1: 初めまして、関西のX大学に通う3回生のYともうします。
    WEB上で量子化学を検索してところこのアドレスを発見し、わらをもすがる気持ちでメールを送っています。
    急にこんなメールを送って大変申し訳ないと思いますがぜひお力になってください。

    実は、僕も大学の授業で量子力学を取っているのですが、教授が独りよがりの授業を行って全く理解できません。質問にいってもきっちり答えてもくれません。

    今回、その授業のテスト勉強で、以下の問題が全くわからなかったので、是非お教えください。

    N電子系のスピン角運動量演算子の全z成分は
        S(z,total) = ∑Szj (∑の範囲はj=1~Nです) である。

    この時

    φ=1/√2×w
       wは行列   1sα(1) 1sβ(1)
              1sα(2) 1sβ(2)

    φ=1/√3!×w1
       w1は行列   1sα(1) 1sβ(1) 2sβ(1)
               1sα(2) 1sβ(2) 2sβ(2)
                 1sα(3) 1sβ(3) 2sβ(3)

    のいずれもがS(z,total)の固有関数であることを示せ。
    また、それぞれの場合の固有値はいくらか。

    本当にお忙しいと思いますが是非お願いします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Jul 2005 20:29:11 +0900
    A1: Y君、佐藤勝昭です。
     正確な所属を書いてください。
    学科は物理ですか、電気ですか、化学ですか?
    それによって、説明の仕方が変わります。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 27 Jul 2005 22:13:08 +0900 (JST)
    Q2: 急なメールにお返事をいただき本当にありがとうございます。
    所属は化学系です。
    今日、丸一日図書館であれこれ量子の本を調べた結果何とか自力できそうです。
    この問題では「Zψがψの定数倍になっていれば、ψはZの固有関数であることが証明できる。」という結論に至ったのですが、正しいのですかね?
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Jul 2005 19:38:52 +0900
    A2: Y君、佐藤勝昭です。
    wは行列でなく、行列式です。なお、固有関数の考え方はそれでOKです。
     農工大工学教育部物理システム工学専攻の鶴淵誠二教授が
    添付のような解答を 作ってくださいましたのでお送りします。参考にしてください。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 28 Jul 2005 22:52:58 +0900 (JST)
    AA: 佐藤様お返事ありがとうございます。
    今回、農工大工学教育部物理システム工学専攻の鶴淵誠二教授が作ってくださった解答と自分で考えた回答がほぼ同じでした。
    しかし、回答をみてさらに詳しく理解できました。鶴淵誠二教授にも本当に感謝しています。
    また今回、色々ご指導くださった佐藤様も本当にありがとうございました。
    これからも、勉強に頑張っていきますが何か行き詰ったときはお力をお貸しください。
    今回、急なメールだったにも関わらず本当にありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    621. TEM 波と静電磁界

    Date: Tue, 2 Aug 2005 23:34:37 +0900 (JST)
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭様

    こんにちは。私はS社のNと申します。
    (HPでは社名、氏名ともに匿名でお願い致します。)
    以前は「磁流と導磁率」のところでは大変お世話になりました。
    この度、TEM波の理論で理解できない部分があり、先生のお力を再度お借りしたく、 メールを差し上げました。

    多くの参考書やWebなどで、TEM波の電磁界分布は静電磁界と同様に表されると あります。このことが疑問でなりません。なぜなら、以下のHP

    http://www.eecs.kumamoto-u.ac.jp/~matsua/lecture/trans/mwtl.ppt
    ではMaxwell方程式をTEM条件の下で極めて一般的に解き、解を求めています(5ページ)。
    しかし、この解はdivE=0は満たしますが、rotEは0にはなりません。
    つまり、静電磁界ではないことを表しています。

    もしTEM波が静電磁界と異なる電磁界分布をするのなら、

    「導体で囲まれた導波管のような線路は、遮蔽効果から静電磁界が分布できないため、 TEM波は伝送できない。」

    といった結論も全て否定されることになります。

    この矛盾はどのように考えればよいのでしょうか?
    お忙しいとは思いますが、よろしくお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 03 Aug 2005 00:43:54 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
     TEM波では、電界Eも磁界Hも進行方向(z)に垂直な面内にあることを意味しま す。すなわちEz=0, Hz=0となっています。
    このため、[rot E]z=-μ∂Hz/∂t=-jωμHz=0
    すなわち、rot Eのz成分が0なのです。[rot E]z=∂Ex/∂y-∂Ey/∂xなので、高周波 電磁界のx,y成分については静電磁界と同じ扱いとされるのです。しかし、rot E のx成分、y成分は決して0ではないのです。従ってrot E=0でないのです。
    「導体で囲まれた導波管のような線路は、遮蔽効果から静電磁界が分布できない ため、TEM波は伝送できない。」という事実には、決して影響を与えません。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 3 Aug 2005 11:09:11 +0900 (JST)
    Q2: 東京農工大学 佐藤勝昭先生
    非常に早くご返信下さり、ありがとうございました。
    自分の理解では、

    微小範囲z~z+△zにおいて、xy平面内の電磁界は静電磁界のものと 同じになる。そして、全体の電磁界はzを動かして足し合わせれば求まる。
    このことは、rotE≠0であることに矛盾しない。

    というものなのですが、これで正しいでしょうか?
    誤りならば指摘して下さると幸いです。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 3 Aug 2005 15:12:06 +0900
    A2: N様、佐藤勝昭です。
     お考えの通りでよいと思います。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 3 Aug 2005 15:38:23 +0900 (JST)
    AA: 佐藤様
    迅速なご回答ありがとうございました。お蔭様で理解できました。
    ------------------------------------------------------------------------

    622. モル吸光度から屈折率を求めるには

    Date: Thu, 4 Aug 2005 10:45:51 +0900 (JST)
    Q: 佐藤勝昭先生
    いつも物性なんでもQ&Aを拝見させて頂いています。
    F㈱のUです。
    (HP掲載時は社名と姓名は隠してください。)

    早速ですが、質問させてください。有機化合物の簡単な物性値で屈折率を見積もれないかと考えています。ローレンツロレンツの式などから、大まかに知ることができるようなのですが、私には難解でよくわかりません。私が求めているのは、厳密な屈折率ではなく大まかにわかって、化合物による序列を付けれればよいのです。方法としては分子量が既知の有機分子の溶液吸収を測定することで、各波長におけるε(モル吸光係数)を算出し、そこから屈折率に換算できればうれしいのですが可能でしょうか?
    不躾ながら、質問のみ。ご返信をお待ちしています。よろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 4 Aug 2005 19:28:14 +0900
    A: U様、佐藤勝昭です。
     ご質問は、吸収スペクトルがわかれば、屈折率の分散が見積もれない か?という主旨だと思います。
     ご承知のように、誘電率の実数部ε'と虚数部ε"の間にはKramers- Kronigの関係式が成立します。
     ε'(ω)=1+(2/π)P∫{ω'ε"(ω')/(ω'^2-ω^2)}dω' (1)
    ここに積分範囲は、0~∞、Pは積分の主値をとることを意味します。
     ε'、ε"は、屈折率nと消光係数κを使って、
    ε'=n^2-κ^2, ε"=2nκ
    と表されるます。積分にはω'~ω付近の被積分関数のみが寄与します が、nは緩やかに変化するとするなら、式(1)は近似的に
    n(ω)^=κ^2+1+(4n(ω)/π)P∫{ω'κ(ω')/(ω'^2-ω^2)}dω' (2)
    となるので、κからnを計算することは原理的には可能です。
     ただし、吸収ピークが孤立せず、多数あると、分散の裾が重なり合っ て来ます。また、Kramers-Kronig変換の積分範囲は、ω'=0から∞です が、現実には有限のω'の範囲ですから、誤差の原因になります。
     なお、モル吸光係数εと吸収係数αの間には、モル濃度Cとして
     ε=(α/C)loglog10e
    の関係があり、また、消光係数κと吸収係数αの間には
     α=2πωκ/c=4πκ/λ
    が成り立つので、モル吸光係数εと消光係数κの関係は
     ε=(4πκ/Cλ)log10e
    となります。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Aug 2005 21:24:45 +0900 (JST)
    AA: 佐藤 勝昭 先生

    返信ありがとうございます。

    誤差等のことも含めて、目的に合うように考えたいと思います。
    また、質問させていただくかもしれません。ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------

    623. ダイヤモンドとグラファイトの違い

    Date: Thu, 04 Aug 2005 14:54:14 +0900
    Q:佐藤 勝昭 先生
    はじめまして。
    個人事業主としてシステム開発に従事しているAと申します。
    (Web掲載においては匿名でお願いします。)

    個人的な興味から物理化学の基礎を勉強しています。
    ダイヤモンドと黒鉛の性質の違いについて、個人で学習してる上で 理解できない点があり、質問させて頂きたいと思います。

    1.電気伝導性の違い
    ダイヤモンドは絶縁体であるが、黒鉛は電気をよく伝える。
    2.熱伝導性の違い
    ダイヤモンドは熱をよく伝えるが、黒鉛は熱を伝えにくい。

    電気伝導性の違いについて、金属結晶の理論と同様に捉えて良いのでしょうか? すなわち、黒鉛にはπ結合中に自由電子が存在するため、電気を良く伝える。

    熱伝導性の違いについては、まったく理解できていません。

    また、この当たりの適切な文献等があればご教授頂きたいと思います。

    大変申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 4 Aug 2005 17:58:08 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
    1.電気伝導度の違い
     ダイヤモンドは、シリコンと同じく四面体配位の結晶構造をもち、電 子軌道はsp^3混成軌道となり、電子で占有された価電子帯と空の伝導帯 の間にバンドギャップ(約6eV)をもつ絶縁性の電子構造となっています。
    一方、グラファイト構造では、蜂の巣状の網目構造が層状に並ぶ構造を もち、層内はπ電子系による共有結合によってできたバンドを電子が部 分的に占有するため、金属的な伝導を示すのですが、層間はファンデア ワールス力で弱く結合しているため、電子はホッピングによる絶縁体的 伝導を示すとされています。

    2.熱伝導率の違い
     熱伝導率には、自由電子によるものと格子振動によるものとがありま す。
     ダイヤモンドの高い熱伝導率は、格子振動を介したものでUmklapp過 程が関与しております。
     一方、グラファイトの熱伝導率は極めて異方的で、層内はダイヤモン ドの半分くらいの熱伝導率を示しますが、層間はアルミナより小さい熱 伝導しか示しません。グラファイトの熱伝導率も、格子振動によるもの と考えられています。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 05 Aug 2005 21:58:18 +0900
    AA: To:佐藤 勝昭 先生

    返信ありがとうございます。Aです。

    キーワードを追いつつ学習を続けていきたいと思います。
    ダイヤモンドと黒鉛の性質を知るだけでも初学者には難しいもの だと感じています。

    お礼が遅れたこと、大変申し訳ありませんでした。
    ----------------------------------------------------------------------

    624. 有機溶媒の誘電率の周波数分散

    Date: Thu, 04 Aug 2005 18:38:36 +0900
    Q:佐藤先生

     初めまして。私はC社のNと申します。所属、氏名は匿名でお願いします。
    このQ&Aは丁寧な解説で物理の苦手な私も楽しく拝見しています。

    私は有機溶剤(アルコールなど)のインピーダンスを周波数応答アナライザで計測しています。
    測定範囲は0.1 Hz~100 MHzです。インピーダンスから誘電率を計算すると、 100 Hzより高い領域では誘電率の測定値は文献値と一致するのですが、それよ りも低い領域では物質により誘電率が非常に大きな値を示すものと、一定のもの があります。
     このような低い周波数域では分子がどのような状態にあるのでしょうか。教え てください。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 4 Aug 2005 20:06:31 +0900
    A:N様、佐藤勝昭です。
     一般的に申しますと、誘電率には、配向分極、イオン分極、電子分極 の3つの寄与があります。低周波数では配向分極の寄与によって誘電率 が高く、高い周波数では配向分極が寄与せず、イオン分極や電子分極の みが寄与するので誘電率は低くなります。
     この様子は、デバイ関数で記述され、
    ε(ω)=ε_∞+Δε/(1+iωτ)
    で与えられます。ε_∞はイオン分極と電子分極の寄与です。
    Δεは緩和強度と呼ばれ、配向分極による誘電率の増大を表すパラメー タで、Δε=Nμ^2/kTで与えられます。μは双極子モーメントです。ま た、τは緩和時間で、2状態間のポテンシャル障壁に関係します。すな わちτ=(1/2Γ)exp(ΔU/kT)です。
    (佐藤勝昭編著「応用物性」(オーム社)p.172-175参照)
    アルコールと水とは水素結合で緩く結びつくので電気双極子が生じ、こ れによる配向分極がおきる可能性があります。水素結合の様子が違うと 上記のΔεに違いが生じるのではないかと存じます。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 05 Aug 2005 10:32:29 +0900
    AA:佐藤先生

     誘電率の上昇は分子の双極子‐双極子相互作用による配向分極のためであると 理解できました。丁寧なご説明ありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------

    625. 電子レンジによる水の加熱の原理

    Date: Tue, 09 Aug 2005 12:02:12 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
      突然のメイルで失礼いたします.
    質問があります.
     電子レンジのことでお聞きいたします.電子レンジは2.45GHzを使用しますが,この周波数は水の共振周波数と関連しているのですか.また,この周波数は,水の構造(H2O)と関連していると思いますが,どのような計算式から導くのですか.
     御多忙の所,お時間を拝借いたしまして申し訳ありませんが,以上の2点について教えて下さい.
     宜しくお願い申し上げます.
    電気通信大学 知能機械工学科 村田 眞
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Aug 2005 00:24:23 +0900
    A1: 村田先生、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。
    水分子の固有振動の共鳴周波数は、
    http://www.lsbu.ac.uk/water/vibrat.html に記されているように、2200cm-1から3700cm-1にあります。これらは、赤外線の領域にあり、周波数Hzを使って表すと、6.6~11.1×1013Hzとなります。つまり、水分子の共鳴周波数は66-111 THzにあるので、電子レンジで用いる2.45GHzから大きく離れていて非共鳴となっています。たとえ非共鳴であっても、食品に水分子が含まれるとマイクロ波誘電率に虚数部(電束密度の位相のズレ)を生じ、誘電損失を生じます。電子レンジでこの周波数が使われる理由は、この周波数の電磁波が、多くの食品において内部まで十分浸透すること、この周波数帯は電気通信に あまり使われていないので通信に妨害を与えないという理由により選ばれているのです。
    (このことは、http://www.physicsforums.com/archive/t-16698_How_do_microwave_ovens_ACTUALLY_work?.htmlというWeb siteに出ていますので参照してください。)
    ----------------------------------------------------------------------------- 
    Date: Wed, 10 Aug 2005 10:38:54 +0900
    A2: 村田先生、佐藤勝昭です。
     前の回答は水分子の共鳴のみに注目しましたが、誘電損失の原因について説明して いませんでした。水の分子の配向分極による複素誘電率は、デバイ周波数の前後で大き く変化します。水のデバイ周波数は温度により大きく上昇しますが、25℃で100GHz前後 です。デバイ周波数以下では、水の双極子は与えた高周波と同相で振動しますが、デバ イ周波数を超える付近で高周波電界に追従できなくなり、損失が生じることになりま す。このあたりのことはhttp://www.lsbu.ac.uk/water/microwave.htmlに詳しく出てい ますのでお読み下さい。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Aug 2005 11:41:44 +0900
    AA: 佐藤勝昭 先生
     拝復
      ご多忙の所丁寧なお返事を2度もいただきまして,恐縮しております.心より御礼申し上げます.
      また参考となる資料も教えていただきましてありがとうございました.
      私は専攻が機械ですので,お返事いただきましたことが,総て理解できることはありませんが,勉強して理解できるように致します.お返事をありがとうございました.
     残暑がまだまだ続きますので,佐藤先生に於かれましても,御身ご自愛下さい.
                 敬具
      電気通信大学 知能機械工学科 村田 眞
    --------------------------------------------------------------------------------

    626. 導波管にTEM波を入射するとどうなるか

    Date: Mon, 8 Aug 2005 18:16:53 +0900 (JST)
    Q: 東京農工大学 佐藤先生
    S社のNです。先日は、
    TEM波についてご教授下さりありがとうございました。この件は、一度は納得したのですが、再び疑問が浮上してきて悩んでいます。

    思考実験として、導波管のような閉導体にTEM波を入射させたとします。このとき、TEM波によって導体壁に生じる電位Vは、電場がexp(jωt)の依存性をもつことから、V=V(t)となります。導体内にTEM波が存在できないとすれば、時刻tに、TEM波の電場を打ち消すだけの電位差⊿V(t)が生じている必要があります。ここで、ωが非常に大きいとき、導体内の電荷がωt<<1の時間で素早く移動して、TEM波を打ち消すだけの電場を瞬時に作り出すというのは不自然に感じます。従って、「閉導体内では静電磁場は存在できない」ことと、「閉導体内でTEM波は存在できない」ことは別のことと愚考してしまいます。

    これはどのように考えればよろしいのでしょうか?しつこく質問してご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 10 Aug 2005 13:37:19 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
     ご質問の思考実験ですが、TEMモードは導波管の固有状態ではないので、中には侵入で きません。入射させようとしても反射してしまいます。もちろんある侵入深さδが存在 して、入口からδ以上の距離では減衰して伝わらないのです。
     それでは、どのくらいの応答時間でそのことが起きるのかということですが、10^-14 sくらいの短時間でしょう。あなたの解釈「ωが非常に大きいとき、導体内の電荷がωt <<1の時間で素早く移動して、TEM波を打ち消すだけの電場を瞬時に作り出すというのは 不自然に感じます。」は誤解です。金属の高い反射率は、自由電子のドルーデ則による 電子分極によるものですが、自由電子の移動は光の周波数にまで応答しているのです。 電子が動けなくなるのは、プラズマ振動数を超えたときです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 12 Aug 2005 11:23:55 +0900 (JST)
    AA: 佐藤先生
    Nです。おかげさまで、自分の無知による誤ったイメージが払拭されました。
    長くお付き合い頂きまして、誠にありがとうございました。
    これからも、一読者としてQ&Aを楽しく拝見させて頂こうと思います。
    -------------------------------------------------------------------------------

    627. トンボの眼の紫外線視感度

    Date: Fri, 19 Aug 2005 13:44:20 +0900
    Q: 東京農工大学 物理システム工学科 佐藤勝昭様

    初めまして。静岡県立磐田南高等学校、生物部の佐藤です。
    私たちは、「トンボ釣り」という遊びを使って、シオカラトンボの光感覚について調査をしています。研究の参考にするために、インターネットで調べていたところ、東京農工大学のホームページを見つけ何かアドバイスをしていただけたらと思い、メールをしてみました。

    トンボは紫外線が見えると書いてありましたが、トンボの可視光域はどのようなものなのか教えていただけないでしょうか。

    お忙しいところ申し訳ありません。
    よろしくお願いします。

    静岡県立磐田南高等学校
    生物部トンボ釣り班
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 20 Aug 2005 09:27:44 +0900
    A1: 磐田南高校 佐藤君、佐藤勝昭です。
     私は、昆虫の専門家ではないので、昆虫がどのくらい広い波長領域が見えるか について、きちんとした知識はないのですが、人間と違って反応を調べる手段が 限られているので、精密な研究はないのではないかと存じます。
    トンボの眼のホームページによれば、344nmの感度が最も高いと書かれています。要するに、花の色が紫外線で違って見えることが、昆虫にとって重要なことなのでしょう。
       研究テーマにしてみると良いかも知れません。すると関連していろんな知識が 得られると存じます。眼を構成する物質の透過スペクトル、レチクルの感度スペ クトルなどが関係するでしょう。
    --------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 20 Aug 2005 17:39:55 +0900
    A2: 追伸:佐藤君、佐藤勝昭です。
     岩崎電気という電灯を作っている会社があります。この会社では、昆虫防除効 果のある植物生育ランプ(黄色)を作っているようです。
    そこのホームページ に昆虫の視感度曲線が載っていました。
     また、松下電工のホームページに 「黄色蛍光灯による夜行性害虫の防除法」という論文(松下電工技報(Feb.2003)が載っています。
    それには、もっと詳しく、昆虫の視感度曲線が人間のそれと比較して載っていま した。これによると、240nm-580nmの範囲が可視で、ピークは370nm付近、小さな ピークが300nm付近にあるようです。
     どちらの図も、もとは、E.D. Bickfordという学者の次の論文が元になっているようですが、私の手元にはありません。
    E. D. Bickford : Biological Lighting,I. E. S. Nat. Tech. Conf. Paper No. 2,p. 1-9(1964)
    -------------------------------------------------------------------------------------------

    628. 10円銅貨の汚れ落とし

    Date: Wed, 24 Aug 2005 15:16:26 +0900
    Q: はじめまして!!私は千葉県公立中学3年関山です。
    夏休みの自由研究で十円玉の汚れを色々な物を使って落とす実験をしたいのですが、
    酸性の物質で汚れが落ちることは予想できるのですが、なぜ酸性の物が銅の汚れを
    落とすのか実験の考察を学校で習った化学式などを使ってカッコよくまとめたいので
    すが...笑’’
    例えば、銅が酸素と化合して酸化銅になるというのが十円玉に汚れがつくという事な
    らば、酸性の物質がどのような役割をして十円玉が綺麗になるのか等、理由が知りたいです。
    簡単に言ってしまうと、考察をどのようにまとめたら良いのかを教えて頂きたいです。
    実験は簡単ですが、結果が解った上で色々と応用して実験してみたいと思っています!!
    お返事待ってます。よろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Aug 2005 00:35:34 +0900
    A: 関山君、佐藤勝昭です。
     銅貨の表面の汚れにはいろいろなものが混じっています。もちろん、金属のす ぐ近くの表面は酸化物や水酸化物に覆われています。中には硫化物の場合もあり ます。そのほか、コインは多数の人の手に触れているので、汗や皮膚の脂質に含 まれる有機物やほこりで汚れています。よくレモン汁にしばらく浸けておくとき れいになるといわれますが、レモン汁にはクエン酸が含まれています。酸は、表 面についた物質の一部を溶かす作用がありますが、必ずしもすべての汚れを落と すわけではありません。酢酸やクエン酸は硫化銅を溶かす可能性がありますが、 酸化銅を溶かすことはないでしょう。(酸化物そのものを完全に除去するのは フッ酸以外では難しいかもしれません。)
     おそらく酸によってきれいになるのは、酸が金属表面を覆っている酸化物の粒 子の隙間から侵入して金属(銅)を溶かすため、表面を覆っていたものがはがれ 落ちるのではないでしょうか。レモン汁(クエン酸)に少しの時間漬けておかな いときれいにならないのは、隙間からしみ込んで金属を溶解する時間が必要なた めではないかと考えます。従って、酸を使うと、銅貨も目減りしているのではな いでしょうか。
     金属の汚れ落とし用にメタルクリーナとして販売されているのは、アルカリ性 のものが多いのは、有機物を溶かし、さらには酸化物を還元するので、金属その ものは溶かさないから目減りはなく安全でしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Aug 2005 23:20:26 +0900
    Q2: たびたびすみません。実験結果を伝えたいと思います。
    実験方法;
    1. まず、大さじ1杯の果実や調味料、洗剤などの液体にテトラテスト試験紙pHに
       1分つける。
    2. 着色したパット部分を比色表で比色する。
    3.  1.で使った液体の中に十円玉を5分間入れる。
    4.  5分後に十円玉を取り出し、その汚れの取れ具合を調べる。

    実験で使ったテトラテスト試験紙のpH値は、水中に溶けている水素イオン(H+)の
    量と水酸イオン(OH-)の量の釣り合いで決まります。すなわち水素イオンが水酸イオン
    より多くなると酸性(<pH7)、水酸イオンが水素イオンより多くとアルカリ性(>pH7)、
    釣り合うと中性(pH7)となります。

    実験結果;
    4.5以下:レモン、グレープフルーツ、赤ワイン、お酢、日本酒
    4.5: ソース、トマト
    5.0: 醤油、ケチャップ、コーヒー、紅茶
    5.5: マヨネーズ、味噌、スイカ
    6.0: 緑茶、洗口液(モンダミン)、歯磨き粉
    6.5:
    7.0: お風呂のルック、砂糖水、麦茶、食塩水、食塩用菜種油、水道水
    8.0: 台所用洗剤(ジョイ)
                                    計24品

    十円玉が綺麗になった液体ランキング;
    1位: ケチャップ
    2位: マヨネーズ、ソース
    4位: 醤油
    5位: みそ、お風呂のルック
    7位: レモン

    となりました。
    このように、酸性の値の強かったグレープフルーツやお酢やワイン、日本酒などの洗
    浄力が強いわけでもなく、お風呂のルックの7.0と中性であった物の方が綺麗にな
    っていました。
    ルックをのぞいて綺麗になったものは酸性ではあるものの、必ずしも酸性の強さに比
    例しているわけではありませんでした。
    ということで、実験前の予想とはかなり違っていたため、考察をどのようにまとめる
    べきなのかが更にわからなくなってしまいました。どのような原理で汚れが落ちてい るのでしょうか?
    私には上位7つの共通点を述べることができません。他にどのような実験をすればそ
    の結果がえられるのでしょうか?教えて下さい。
    ----------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Aug 2005 00:49:32 +0900
    A2: 関山君、佐藤勝昭(台湾出張中)です。
     詳細な実験結果を教えてくれてありがとう。
    さきのメールに書きましたように、酸によって汚れ自身は落ちることはなく、侵 入して金属を溶かすのではないかと思います。
     ケチャップや醤油やマヨネーズは単純な酸ではなく、様々な成分が混合してい ます。全体としてのPHが利くのではなく、その成分の中に、表面の油脂など有機 物を溶かす成分と、酸化物などを還元する成分、さらには、それらの付着物を除 去する成分がうまい具合に含まれていた場合によく落ちるのではないでしょう か。しかし、話は簡単ではありませんね。マヨネーズは卵黄、酢、サラダオイル を混合して作りますが、多少は化学結合がおきているでしょうから、単純にはど の成分がどうだということは難しいでしょう。
     あまり、ちゃんとした答えになっていなくてごめんなさい。
    ----------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Aug 2005 10:41:36 +0900
    AA: 忙しい所有難うございました(*^-^)p
    私が考えていたほど、簡単な事ではないみたいですね。。。
    私も、もう一度考えてみます。
    詳しい説明本当に有難うございました。
                                関山
    ------------------------------------------------------------------------------------------

    629. カーボンブラックの濡れ性

    Date: Wed, 24 Aug 2005 17:00:59 +0900
    Q: 東京農工大学
    佐藤 勝昭 先生

    突然のメールをお許し下さい。
    私はN社、Aと申します。
    (勝手を言いまして大変申し訳ありませんが、HP上ご掲載の際は匿名で何卒宜しくお願い致します。) 先生のHP「物性なんでもQ&A」を拝見致しまして、不勉強で大変恥ずかしい質問になるかと思いましたが、 疑問を解決する糸口を得たく、メールを送らせて頂きました。

    <質問内容>
    カーボンブラックの水に対する接触角や付着エネルギーなど、
    カーボンブラックのぬれ性を表す値を知りたいのですが、
    何かヒントとなる文献等ございましたら教えて頂きたく、
    何卒宜しくお願い致します。

    現在のところ、インターネットや「ぬれ技術ハンドブック」を調べまして、 黒鉛の接触角データは分かったのですが、カーボンブラックに関しては載っておりませんでした。
    カーボンブラックは非晶質であり、その表面構造が黒鉛ほど規則正しいものではないため、 正確なデータが得られないためでしょうか?

    お忙しいところお手をわずらわせることになり大変申し訳ありませんが、 ご都合がよろしければご回答を頂きたく、何卒宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 24 Aug 2005 23:30:06 +0900
    A: A様、佐藤勝昭(国際会議で台北に滞在中)です。
     メールありがとうございます。
    カーボンブラックといっても千差万別でして、撥水性のものも親水性のものもあ ります。
    東海カーボンのHPの製品情報
    http://www.tokaicarbon.co.jp/products/carbon_b.shtml
    には、撥水性のものは表面張力などが載っておらず、親水性のもののみについて 70-72mN/mという数値が載っています。
     また、
    L.L.Popovich et al. "Influence of physical and interfacial characteristics on the wetting and spreading of fluids on powders"; Powder Technology 104(1999)68-74 という論文には、Carbon black "Monarch 900"およびシリカ粉末について、水の 他粘性の異なるさまざまな液体との濡れ性が詳細に論じられていますので、じっ くりと読んでみてください。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Aug 2005 10:28:39 +0900
    AA: 東京農工大学
    佐藤 勝昭 先生

    N社のAと申します。
    お忙しいところにもかかわらず、
    早速のご返信を誠に有難うございました。
    しかもご出張中とのこと、大変失礼致しました。

    ご親切にも、わざわざ文献を添付して頂き、簡単に質問してしまいました自分が情けなく思えました。
    しかしながら先生から頂きましたアドバイスやヒントを基に、しっかり前進して行きたいと考えております。 誠に有難うございました。
    ----------------------------------------------------------------------------------------------

    630. シリコン研削粉のpn分離

    Date: Thu, 25 Aug 2005 11:30:52 +0900
    Q: 東京農工大学/佐藤勝昭先生
    お世話になります。
    エム・セテックの齊藤と申します。
    以前にも先生のHPを拝見しご質問(真性半導体比抵抗)させて頂きご回答頂きました。

    その節はありがとうございました。
    させ今回シリコンウエハの研削粉(ウエハ表面をダイヤモンドカッター+純水(不純物混入し純水では なくなっているとは思います)にて研削のP型とN型の混合粉(実際には混合なのか、PもしくはN型のみか不明)+純水があり これをビーカーに入れ電極+、-を設置し電圧を加えました。目的はPN型の分別です。

    (微弱電流も流れます)すると時間経過とともに+極側のみに研削粉が付着しました。

    付着物はP型N型両方混ざったままなのでしょうか。それともどちらかのみでしょうか。

    加電圧の時間経過とともに付着量が増え、電極部+、-で電圧測定すると電圧が上昇していく、つまり抵抗がだんだん 増してくるのですが、この理由もよくわかりません。
    大変漠然とした質問内容で申し訳ありません、何かヒントでもいただければ幸いです。

    お手数ですが宜しくお願いいたします。

      定電圧電源+極 ---> 抵抗R ---> +電極(電極は研削粉+水が入っているビーカー内設置)
      定電圧電源-極 ----------------> -電極
                (抵抗Rは電極間の電圧値変化を測定するために挿入)
    ------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thursday, August 25, 2005 3:24 PM
    A: 齊藤様、佐藤勝昭@台北出張中です。
     研削の際にはさまざまな不純物の混入があると存じます。電極に何を使ってい ますか。電流が流れるのですから、研削粉を含んだ水はイオン化しているので しょうね。実際の液のPHはどうなっていますか。陽極に付着したということなの で、その粉末は負電荷をもっていたのでしょうね。
     pであれ、nであれ、シリコンが水溶液にイオン化してとけ込むことはあり得 ないので、シリコン微粒子表面に研磨液に含まれる何らかの物質が付着し負に帯 電し、電極間の電気力線にそって移動したのでしょう。おそらく、pもnも区別 されることはないでしょう。(陽極酸化の場合は、pとnとで溶解度が異なりま すが、これは、陽極酸化に用いる溶液のRedoxとフェルミ準位との相対関係によ るのです。今の場合には当てはまらないと思いますが、研削液がどうなっている かによっては、考慮の余地があるかもしれません。)
     あなたからのインフォメーションからいえることはこれだけです。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 26 Aug 2005 15:33:53 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様
    エム・セテックの齊藤です。
    お世話になります。
    出張中にも関わらず早々にお返事頂きありがとうございます。
    研削粉+水(当初は純水)はテスト前はPH6程度で、テスト中でだんだん上がり 24時間経過でPH8くらいです。
    何かP/Nを分離するのに当り今後どのような展開が考えられるのでしょうか。
    アドバイスあれば是非お願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 29 Aug 2005 18:13:00 +0900
    A2: 齊藤様、佐藤勝昭です。
     p型であれ、n型であれ、シリコン自体は中性です。
    従って、水に懸濁したシリコン研削粉に電界を印加しても電極に付着す る訳はありません。また、極性を変えてpとnとを分けることも不可能 です。しかし、実際には、研削液は弱酸性で、しかも正極に研削粉が付 着したという実験事実があるのでしたら、シリコン微粒子に何らかのイ オンが付着して荷電していたのであろうと推察されます。
    しかし、イオンがp型、n型を選んで付着するとは考えられませんので、 研削液に電界をかけてp、nを分離することが不可能と存じます。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------

    631. サファイアの1850℃までの高温特性

    Date: Thu, 25 Aug 2005 16:00:36 +1000
    Q: 初めまして佐藤と申します。
    わたしは、下記を調査しております。

    単結晶サファイアの高温下での挙動に関した文献やレポートがあれば助かります。
    単結晶が材料なのですが、1850℃で使用する事を検討しています。
    ご検討をお願い致します。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 25 Aug 2005 19:30:21 +0900
    A: 佐藤様、佐藤勝昭@台北出張中です。
     手元にハンドブック類がないので、よくわかりませんが、サファイアは 1800℃で軟化するということを聞いたことがあります。
    京セラのサファイアのサイト
    http://americas.kyocera.com/kicc/pdf/Kyocera%20Sapphire.pdf
    でも熱膨張係数、熱伝導率とも1700℃までしか載っておりません。
    軟化し始めてからの物性値は測定できてもあまり信頼性のあるものではないと思 います。
     お役に立てず申し訳ありません。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 26 Aug 2005 08:24:15 +1000
    Q2: 佐藤勝昭様

    お世話になります。
    早速のメールありがとうございます。
    御社の加熱炉で1700℃は可能でしょうか?
    もし可能’であれば、カタログを郵送して下さい。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 26 Aug 2005 14:02:47 +0900
    A2: 佐藤様、佐藤勝昭です。
     私の研究室にはそんなに高温にできる加熱炉はありません。
    私は、会社の人間ではありません。どこか電気炉の会社に問い合わせてください。
    --------------------------------------------------------------------------------------------------

    632. 液晶の交流駆動

    Date: Tue, 23 Aug 2005 01:04:20 +0900
    Q: 初めまして。A社のMと申します。HPを見ての質問です。
    (所属、氏名は匿名でお願いします。)
    TN液晶に関する質問です。
    TN液晶ディスプレイでは、焼きつきを防止するために反転(AC)駆動を行っていますが、 正の電界から負の電界へ電界方向が変わると、TN液晶はどのように変化するのでしょうか?
    (液晶のセルは一回転するのか、それとも電圧が同じ大きさであればそのままを維持しているのでしょうか?)
    本やInternetなどには”電界のかかっている状態”から”電界のかかっていない状態”の変化 については述べられていますが、”電界のかかっている状態”から、”逆極性の電界のかかっている状態” への変化時については見つけることができませんでした。
    どうぞよろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Aug 2005 01:52:04 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     私たちも、円偏光変調式磁気光学顕微鏡の変調波長板に液晶素子を使っていま すが、イオン分極を防ぐために200Hzの交流駆動をしています。液晶ダイレクタ は交流にはいちいち応答せず、実効値のみが駆動力になっています。理由につい ては、後ほど、液晶の専門家の飯村先生(電気電子工学専攻)に伺っておきます。
    ----------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Aug 2005 11:08:27 +0900
    Q2: 早速のお返事ありがとうございます。
    質問をさせていただいたMです。

    実効値のみが駆動力なんですね。
    TN液晶の場合、反転のたびに液晶ダイレクタが対応するのではないだろうとは 考えていたのですが、単純にダイレクタに正負の方向があると考えると、 反転ごとに方向をかえないといけないな、などと考えが発散してしまい質問させていただきました。

    お返事の早さに正直驚いています。
    実効値駆動の理由もわかりましたら、是非教えてください。

    それではよろしくお願いいたします。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tuesday, August 23, 2005 5:35 PM
    A2: M様、佐藤勝昭@台北です。
     飯村先生からのメールを転送します。参考にしてください。
    =====================================================================
    佐藤先生
       液晶素子がどうして交流駆動できるかというご質問だと思いますが、お
    答えいたします。液晶分子自体は永久双極子を持っているため、交流を印加す
    るとその極性に応じて回転トルクの方向が変化し、液晶分子の方向も電界の極
    性の変化に応じて変化すると考えられます。しかし実際の液晶分子をミクロ的
    に見ると二つの液晶分子が双極子を反対にして結合したダイマー(二量対)構
    造をとっていると考えられています。この結果、単独の分子の持つ永久双極子
    の電界中で効果が打ち消されます。ではなぜ電界中で液晶分子の配向変化が起
    こるかというと、ダイマー構造を一つの液晶分子と考えると(あるいはダイレ
    クターと考えてもよい:このダイレクターには便宜上矢印を書いているが、頭
    と尾の区別はない)、それは無極生の分子と考えられます。従って、ある方向
    の電界が分子に印加されるとまず電界の強度に比例した分極が液晶分子に誘起
    されます。更に、その誘導分極と電界との間で回転トルクが働き液晶分子は配
    向方向を変化させます。この回転トルクの大きさは、電界の二乗に比例し、そ
    の方向は電界の方向に寄らず一定になることが簡単な計算からわかります。
    従って、液晶素子は交流を印加した時その極性に依らずその配向方向(回転ト
    ルクの方向)が決定されるということです。
    以上、取りあえずお答えいたします。
    飯村
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Aug 2005 18:02:17 +0900
    AA: 佐藤先生、Mです。
    お忙しいところ、それも海のむこうからご連絡いただきありがとうございます。
    飯村先生からのメール、大変参考になりました。

    台北ではお忙しいとは思いますが、
    スケッチと、おいしい料理と、楽しんできてください

    また質問をさせていただくと思います。
    どうもありがとうございました。飯村先生にもよろしくお伝えください。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Aug 2005 20:01:58 +0900
    Q3: 佐藤先生、Mです。
    先日は以下の回答ありがとうございました。

    あれから飯村先生のメールを理解しようとしたのですが、 いくつかわからないことがございます。
    申し訳ございませんが、質問させてください。

    1、
    飯村先生のメールに、液晶のダイレクタは無極性とみえ、そこに電界がかかると
    誘導分極が生じるとありますが、具体的にはどの種類の分極が主なのでしょうか?
    (配向分極の例として液晶が挙げられているのを見たことがありますが、
    配向分極だとしたら、一対の分子がどのように分極するのでしょうか)
    2、
    良くある液晶の配列図(添付しました)の楕円形のものは何を表しているのでしょうか?
    液晶のダイレクタ自身(2分子)を楕円形で代表し、その配列を表しているのでしょうか。
    それとも確率的に存在する液晶分子をまとめてあらわし、
    各ダイレクタは図の楕円形の動きよりも早く分極の向き(極性)を反転でき、
    結果電界の向きの変化に図の楕円形が追従しないのでしょうか。
    3、
    また、分極によっては応答周波数が低く、
    電界の向きを変えた直後には、液晶ダイレクタへの回転トルクは
    電界の向きを変える前に比べて小さくなり、図で言う楕円形にも
    変化が生じるのかと感じます。(楕円形の応答が分極よりもさらに十分に低い場合は
    変化は見えないかもしれませんが)

    まとまりのないMailとなってしまいましたが、どうぞよろしくお願いいたします。
    もし、あまりに質問が的外れであり、先に本を読むべきというようでしたら、
    お手数ですが何か良い本を推薦していただけると幸いです。

    それでは失礼します。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 31 Aug 2005 11:33:12 +0900
    A3: M様、佐藤勝昭です。
    1.液晶分子は、永久双極子が2つ逆方向に結合した構造をとり、トー タルとして極性を失っていますが、電界を印加したときには回転力が生 じます。1次の項は消えますが、2次の項は残るので結果的に、電界の 2乗に比例し、交流駆動できるのです。

    2.楕円体は、上記のような2量体分子そのものを表しています。楕円 体で表すのは、1つ1つの分子に誘電率の1軸異方性があるため、光学 的に屈折率楕円体(indicatrix)で表されることを象徴しているものと思 います。

    3.分子のもつ屈折率楕円体は、永久双極子から出ているので、電界印 加によって多少の変化はあるでしょうが、第1近似としては一定と考え てよいのではないでしょうか。

    なお、参考文献について飯村先生に伺ったところ、下記の回答をいただ きました。
     ダイマー構造を明らかに説明した文献についてははっきりと思い出せ
    ませんが、隣り合う液晶分子(永久双極子を持つ)が反平行になり、液
    晶相全体で永久双極子の効果を打ち消していることに関する説明が多少
    載っている日本語の文献をお知らせします。
     「液晶の物理(チャンドラセカール著、第2版、吉岡書店)p.85」
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 31 Aug 2005 18:08:41 +0900
    AA: 佐藤先生、Mです。
    いつも丁寧にありがとうございます。
    まずはご推薦いただいた本を読んでみます。

    的外れな質問にもかかわらず、ご丁寧にお答えいただき 本当にありがとうございます。
    --------------------------------------------------------------------------------

    633. 力のモーメントの問題

    Date: Tue, 30 Aug 2005 16:20:05 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭様

    以前、浮力に関して質問させていただいた物理が苦手な主婦Sです。今回の質問は、力のモーメントに関する問題についてです。問題は、
    添付ファイルにしました。
    私が解答可能だったのは、(ア)と(イ)のみで、何か勘違いしているのか、頭が混乱してしまいました。

    ちなみに、私の答えは、
    (ア):Fsin θ
    (イ): Fcos θ

    (ウ)、(エ)、(オ)の考え方、解答を知りたく思います。 余り難しいことを言っているとは思えないのですが、外肋間筋の収縮力の垂直成分で肋骨を引き下げる回転能力というのは、回転の支点はS’又はSということなのでしょうか? 

    ちなみにこの問題は、インターネット上で見つけました。答えは、ありませんでした。個人的に、面白い問題だなあと思い、トライしてみましたが・・・
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Aug 2005 19:17:53 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     問題の一部に誤植があります。
    「外肋間筋の収縮力の垂直成分で肋骨を引き下げる回転能力(力のモーメント)は
     ( ア ) X ( ウ )、 肋骨を引き下げる回転能力は
     ( ア ) X ( エ ) である。」
    とありますが、後の方は、「肋骨を引き上げる回転能力」の間違いです。
    これが混乱の原因でしょう。
    お答えの(ア)、(イ)は合っています。
    (ウ)は、OS(OとSと間の距離),
    (エ)は、OS'(OとS'の間の距離),
    (オ)は、上
    が正解です。
    ----------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 30 Aug 2005 21:37:01 +0900
    AA: 佐藤先生、ご解答、ありがとうございます。頭がすっきりしました。
    今後もよろしくお願いいたします。
                 S
    ---------------------------------------------------------------------------------------

    634. 金属電極と半導体の合金化の結合エネルギー

    Date: Wed, 31 Aug 2005 10:49:06 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤勝昭先生

    初めてメールいたします。HPをみて質問させていただきます。
    私は、T社で、分析を受託する業務に携わって おり、透過型電子顕微鏡で、物質/素子の構造を調べる仕事をしています。
    HPにアップする際には、匿名にしていただけると助かります。

    ところで質問の内容ですが、半導体素子には金属多層膜の電極が使用されていますが、 これらが熱処理等により合金化することがあります。ただし、金属の種類によっては 合金化するものとしないもの、中には直接接していないにも関わらず、合金層を形成して しまう場合もあります。

    そこで、この合金化のメカニズムを知りたいと思っているのですが、このためには いろいろな情報(合金状態図など)が必要だと思いますが、現在ある元素(原子)同士の 結合エネルギーの強弱に注目しています。
    教科書やネットで結合エネルギーで調べると、いろいろなものがあり、同じ元素のもので も数値が数種類あるため、どれを採用して良いのか分かりません。
    また、同一原子同士の結合エネルギーについては、いろいろな文献に載っていますが、 異種原子同士のデータはなかなか見つからないのが現状です。
    このような状況なのですが、この結合エネルギーを調べる(いくつかのペアについて比較 する)のにいい方法はないでしょうか?何か適当なデータベースなどご存じでしたら、ご教示い ただけると幸いです。また、電気陰性度などからこれらを簡易に導出することは出来ないのでしょう か?

    お忙しいところ恐縮ですが、以上の点について、ご教示いただけると幸いです。
    では、宜しくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 31 Aug 2005 11:10:45 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     金属と半導体の合金化を結合エネルギーだけで「簡単に」論じるのは 暴論です。
     合金といってもいろんなものがあり、置換型合金も挿入型合金もあり ます。2元合金については、いわゆるHansenの状態図(どこの図書館に もあります)で、どのような相が現れるかを判定できます。
     おたずねの件は、理論的に合金化を論じられないかという主旨と判断 しました。現在、よく行われているのは、考えられるいろいろな相に関 して、第1原理の電子エネルギー計算によってトータルエネルギーを求 め、(絶対零度しか論じられないのですが)どの相が最も安定になるか を計算するのです。このごろは、計算ソフトを市販しているので、少し 基本を勉強すれば誰でも扱えるようになっているそうです。問題は、高 温での安定相でして、これには、熱力学的な考察が必要になります。
    (必要なら、専門家を紹介します)
    -----------------------------------------------------------------------------------

    635. 磁気光学効果の測定

    Date: Mon, 22 Aug 2005 22:25:05 +0900 (JST)
    Q: 佐藤勝昭 先生

    A社Kと申します。
    先生のHPを拝見し、磁気光学効果(カー効果)の測定について質問させていただきたく、
    メール致しました。

    1.現在、多結晶のパーマロイ薄膜の磁気特性の測定方法を検討しているのですが、
    カー効果を用いたヒステリシスループの測定で、多結晶のサンプルは測定可能でしょうか。
    多結晶のサンプルを用いた場合、光の散乱等による影響は考えられるでしょうか。

    2.また、試料表面が平坦でない場合も、光の散乱等による影響はあるでしょうか。

    3.カー効果の測定は、通常単磁区で行われるものでしょうか。
    試料表面が多磁区構造の場合、測定に影響することはあるでしょうか。

    質問は以上です。素人質問とは思いますが、宜しくお願い致します。
    (社名・名前を匿名でお願い致します。)
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Aug 2005 02:06:16 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
    1.多結晶であっても、磁気的に結合していて、結晶粒を超えて磁区が形成され ているのであれば、単結晶と同様に測定できるはずです。ただし、粒径が光の波 長程度であれば、光散乱が起きてノイズになります。
    2.平坦でないと、(その程度によりますが)反射の際の位相の変化が激しく て、磁気光学効果がノイズに埋もれることがあります。
    3.カー効果測定用の光のスポット内にいくつもの磁化方位の異なる磁区が入っ ておれば、カー効果は当然ながら打ち消されてしまいます。磁場を印加すると磁 壁移動が起きて、一方の磁化方位が優勢になるとカー効果が観測されます。さら に磁区において磁化回転が起きると、カー効果が飽和に近づきます。このように して、多磁区試料においてヒステリシス(らしきもの)が観測されます。
    正確には、本当のヒステリシスそのものではありません。詳しくは、拙著「光と磁気」 改訂版p.12脚注に紹介した文献を参照してください。単磁区であれば、その変化 がon-offとなるだけのことです。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 23 Aug 2005 19:03:09 +0900
    AA: 佐藤勝昭 先生

    昨日メールで質問させていただいた、Kです。
    非常にわかりやすい回答で参考になりました。

    お忙しい中、丁寧なご返答をいただきありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------------

    636. マイカの熱不安定性

    Q: 佐藤様

    いつもHPを拝見させていただいております。N社Sです。
    2回目の質問になりますが宜しくお願い致します。

    マイカの熱分解のメカニズムを教えて下さい。
    600℃弱の温度で使用していますが、どうも物性値が変わり絶縁が取れなくなってしまいます。 たぶん熱分解が原因と考えています。
    併せて対策もご教示いただければ幸いです。
    漠然とした質問で申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。

    匿名希望です。

    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 31 Aug 2005 19:24:44 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     雲母は層状の結晶構造をもつ珪酸化合物の総称で、天然のものと合成 のものがあります。合成ものは、天然の鉱石タルクから作られます。
     層状化合物に一般的ですが、層間に不純物のインターカレーションを 行うことができます。有機物をインターカレーとした雲母もあります。
    それによって、いろいろな機能性が付加されますが、逆に、熱分解の原 因にもなるのでしょう。従って、お使いの雲母の素性をきちんと調べる ことが必要ではないでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 1 Sep 2005 08:33:23 +0900
    Q2: 佐藤様

    早々の回答ありがとうございました。
    現在、使用しているマイカは合成マイカです。

    組成を下記致します。
    金雲母・・・・KMg3AlSi3O10(OH)2

    宜しくお願い致します。

    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 2 Sep 2005 19:52:53 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。
     合成金雲母ですね。
    鉱物の世界では、
     金雲母+石英=頑火輝石+微斜長石+水
    という反応で不安定化するということが知られています。
    L.Y.Aranovich, R.C.Newton: Amer. Mineralogist 83, 193 (1998)
    反応は、700-800℃で、低圧下で進むと書かれています。
    金雲母合成時に石英が混入しているような場合、減圧下で700℃以上 に加熱すると、脱水反応が起き、絶縁がとれなくなる可能性があります。
     雲母を供給している会社にお問い合わせになることをおすすめします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 4 Sep 2005 08:43:44 +0900
    AA: 佐藤様

    ありがとうございました。
    早々、メーカーを呼んで打ち合わせをしてみます。
    今後とも宜しくお願い致します。
    -以上-
    ---------------------------------------------------------------------------

    637. シリコーンゴムの屈折率分散

    Date: Sat, 3 Sep 2005 15:15:04 +0900
    Q: 初めてメール差し上げます。
    質問があります。 よろしくお願いします。
    当方は S社Aと申します。現在光学設計を担当しています。 なお掲載にあたっては匿名でお願いします。

    質問:シリコンゴムを用いたレンズを設計していますが、屈折率の分散特性400から1000ナノメートルぐらいまでのデータがなかなか見つかりません、どこかにデータがあるのでしょうか、メーカーからも知らないと言われました。わかりましたら教えてください。よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 04 Sep 2005 02:14:27 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     シリコンゴムは、silicone rubberの和訳です。シリコーンは、珪素と酸素か らなるチェーン状のポリマー(高分子)で、多くの有機ラジカルがチェーンに付 着するので、物性は非常にバラエティに富んでいます。従って、物性値も幅のあ るものとなっています。
     お求めの屈折率分散ですが、正確にわからなくても、アッベ数(Abbe number, Abbe value)がわかれば、推定できるでしょう。
     アッベ数は逆分散を与え、大きな値ほど分散が小さく、色収差が小さくなりま す。アッベ数の定義は、
     V=(nD-1)/(nF-nC)
    ここにnD, nF , nCは材料の波長がそれぞれ D:589.2 nm, F:486.1 nm ,C:656.3 nm の光に対する屈折率です。 分散率はアッベ数の逆数です。分子・ 分母とも長さの次元を持つので、アッベ数は無次元数となります。
    代表的なレンズ材料のアッベ数は、コンタクトレンズ関係の書物に載っているは ずです。
    -----------------------------------------------------------------------

    638. 酸の水溶液の誘電率

    Date: Tue, 6 Sep 2005 02:12:38 +0900
    Q: 佐藤先生

    今回、液体の誘電率について調べているうちに、先生のHPに行き当たりました。 私は、H(株)のYと申します。(匿名にてお願いいたします)
    今、液体の電磁流体力学的な実験および理論計算に取り組んでおります。
    この研究では、表面張力、粘性、導電性、誘電率などの物理量が 液体の物性値として、必要になると思われます。

    このうち、誘電率を測定する道具だけは、身近にある装置でカバーすることが できませんでした。

    そこで、誘電率が大きく異なる2種の液体を混合して 電磁流体力学的な現象の、誘電率の対する依存性を調べられないかと 考えています。

    たとえば、「分子間力と表面力」(朝倉書店)のP.38を読むと、 酢酸の比誘電率は、6.2とあります。
    これを水など高い比誘電率(78.5)と混合した場合、 混合液の比誘電率は、6.2から78.5の間で単調的に変化すると 考えてよいのでしょうか?

    もしそうならば、混合比をパラメータにして依存性を調べられる思うのですが いかがでしょうか?

    私の調査不足を棚に上げて恐縮ですが、どうかご教示下さいますよう、 お願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Sep 2005 20:29:39 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
     さまざまな化学物質の誘電率は、
    南メイン大学の化学のサイトにあり ます。
     酢酸CH3CO-OHも水H-OHも誘電率はイオン分極の電気双極子から生じま す。単純に考えれば、誘電率は含まれる電気双極子の密度に比例します から、混合比に比例すると考えればよいと思います。ただし、双極子・ 双極子相互作用があるので、多少曲線的に変化するものと思われますが、 やったことがないのでよくわかりません。
     なお、このような酸の水溶液の誘電率を実際に測定する場合は、水溶 液の酸化還元電位と電極金属のフェルミ準位との相対関係によっては電 極の付近に電気2重層ができる可能性があり、その場合に正しい誘電率 が得られないので注意が必要です。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Sep 2005 23:04:20 +0900
    AA: 佐藤先生
    大変わかりやすいご回答、ありがとうございます。
    また、有益な情報に感謝いたします。
    今後の研究に、大いに活用したいと存じます。
    以上、よろしくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------

    639. 重金属の汗への排出

    Date: Tue, 6 Sep 2005 12:39:01 +0900
    Q: 東京農工大学工学部
    佐藤 勝昭 先生

    HPを拝見してメールさせていただいております。株式会社BのKと申します。 (社名と氏名は匿名でお願いいたします)

    最近、遠赤外線とかの機具を使用して、汗をかいて、それに よって体内に蓄積した、有害な重金属類を出すという健康法を よく目にしますが、実際にこの汗から重金属類(カドミウム、 鉛、水銀、砒素等)が通常どの位(ppb)出るといったデータは あるのでしょうか。あればこれら4つの、それぞれの値を 教えていただきたいと思います。宜しくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Sep 2005 19:33:21 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     おたずねの件については私は専門ではなく手元にデータがありません。
    インターネットで検索すると、
    「重金属を排泄するには、サウナで汗をかくのがよい」ということが
    J. Ely: Heavy metal detox: Why sweating may protect the kidneys -Will dry sauna prove the safest and best method for most people?
    ; Well Mind Association Special Report March 1994
    に書かれています。これによれば、「Hgにさらされた労働者においてHg は尿より汗の中に多く含まれていた」という報告H.B.Lovejoy et al.:Journal of Occupational Medicine 15, 590-591 (1973)を引用し、「汗をかくことの主な利点は、HG, Cd,Pbなどの重金属を,腎臓ではなく皮膚や肝臓を通して排泄すること にある」と述べています。

    また、
    J.R.Cohn and E.A.Emmett: The excretion of trace metals in human sweat; Annals of Clinical and Laboratory Science 8 [4] 20-275 (1978) [Internetで公開されているのは、 Abstractのみです。]
    には、「汗の中に含まれるNiとCdは尿に含まれるものより多かったが、 Pbについては同程度であった。」と書かれています。

    しかしながら、Health Canadaのサイトにある 飲用水の品質に関する文書をまとめたサイトに As, Cd, Hg, Pbのデータが含まれていますが、汗に含まれるのはわず かだと書いています。
    Cdの排泄については、次のように書かれています。「動物実験によれ ば吸収されたCdの10%以下が尿と糞として排泄され、毛髪、爪、汗から は無視できる量しか排泄されない。通常の大人が1日に排泄するCdは0. 002mgにすぎない。職業的にCdに接している人の尿には、この数百倍も のCdが含まれる・・」
     Hgの排泄についてはもっと詳細な報告がありますが、汗に関して定量 的なデータは載っておりません。

    いずれにせよ、おたずねの件は、物性に関するものではないので、私の 専門外です。詳細は医学・疫学・公害関係の方におたずねください。
    ------------------------------------------------------------------------

    640. 格子面間隔

    Date: Tue, 6 Sep 2005 21:17:54 +0900 (JST)
    Q: 名城大学3年生Kです。匿名でお願いします。
    1.面間隔
     結晶格子のhkl面を考える。
    (a)逆格子ベクトルGhb1+kb2+lb3
    はこの面に垂直であることを証明せよ。
    (b)格子の平行な2枚の隣あった面の距離はdhkl=2π/Gであることを証明せよ。
    (c)SC格子ではd2a2/(h2+k2+l2)であることを示せ。

    という問題で、(b)の答えが
    (b)Gベクトル方向の単位ベクトルe
      eG/G なので、定義により、
      dhkla1e/h=2π/G
    となっています。どうしてhkl面に平行な隣り合った面が原点を通るのかわからないのですが 教えてもらえませんか。よろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 07 Sep 2005 01:40:35 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     
    図に示す(211)面を例にして考えましょう。
    この面指数は、a軸を1/2で、b軸を1で、c軸を1で横切っています。
    3つの格子点(1,0,0), (1,0,-1), (0,2,-1)を通る面(薄緑色)です。
    格子点1つ下側で隣り合う面は(0,0,0), (1,0,-2), (0,2,-2)を通る面(薄黄色) です。(原点を通っています)緑も黄もどちらも(211)面であることは明らかで す。あとは、自分で作図して考えてください。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 7 Sep 2005 10:31:17 +0900 (JST)
    AA: 名城大学3年のKです。
    お忙しい中大変ありがとうございました。今後もわからない事があったら質問させていただきます。
    ----------------------------------------------------------------------------

    641. モワレ縞

    Q: T大学情報工学科2年のKです。 ①格子間隔d=1mmの格子を2つ、互いに、Θ=4°傾けて、
    モアレ稿が観察できるように実際に書き、モアレ稿の間隔Lを測定せよ。厳密に平行な線を描くこと。
    ②格子間隔1㎜、傾ける角Θ=4°としたときのモアレ稿間隔 Lを理論式から計算で求めよ。
    ③上記の①と②で求めた値がほぼ等しいことを確認せよ。

    以上なんですけど、さっぱりわかりません。おしえてくでさい。お願いします
    ---------------------------------------------------------------------------
    A: K君、佐藤勝昭です。  モワレのことは、わかりますね。すだれが2枚斜めに重なっていると、新たな 周期の格子縞が見えますね。あれが、モワレ縞です。マンガを描くときに使う縦 縞のスクリーントーンを2枚重ねても見えますね。
    ①については、とにかく作図してご覧なさい。
     1㎜の間隔の直線格子を描き、それを4度回転させて、重ね合わせなさい。
    添付の図(Word file)の(a)の格子をある角度だけ回したのが(b)。(a)と(b)を重ねたのが(c) です。新たな周期の縞が見えているでしょう。
    ②については、次の記述を参考にしてください。
     周期dの格子を二枚、角度αだけ回転して重ねると、D=d/αの拡大された格子が 元の格子と90°異なる方向に現れる。αの単位はラジアンです。
    ③については、実際に比べて見てください。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 13 Sep 2005 11:40:37 +0900 (JST)
    AA: どうもありがとうございました。
    ---------------------------------------------------------------------------

    642. 光吸収による熱発生

    Date: Sat, 10 Sep 2005 00:51:43 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤先生
    メーカーM社 山田と申します。
    2005年2月に”シリコンの熱処理(534)”に関して質問させていただいたものです。
    その節は御返答ありがとうございました。
    その後、物性科学に興味がでてきまして時間があるときに”物性なんでもQ&A”の 他の方々とのやりとりも拝見させて頂いております。

    それで読んでいるうちに、以前の質問の御返答に関して基本的に自分が分かっていな かったことがあることに気づきました。

    今回の質問ですが、以前の先生の御返答で、
    ”シリコンは赤外線を吸収して格子振動を直接励起します。シリコンは赤外線の吸収 が弱いので、表面だけでなくバルク全体も加熱されると考えられます。一方、エキシ マーレーザなど吸収端より高いエネルギーの光の場合、強いバンド間遷移による吸収 が表面部分でのみで起き、内部には光が達しないので表面部分のみを急速に加熱でき ると考えられます。”

    これに関して、バンド間遷移で光を吸収した場合にどうやって熱になるのか?がわか りません。
    よく教科書に載っている、”電子と正孔が再結合して光を出す”ことの逆ということ はわかりますが、吸収した後はどうなるのでしょうか?
    価電子帯から伝導帯に励起した電子と、後に残った正孔が格子振動に働きかけるので しょうか?

    あと、もしよろしければ、この辺(光に関する物性)に関する導入の教科書を教えて いただければありがたいです。

    お忙しいところ申し訳ありませんが、宜しくお願いします。

    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Sep 2005 21:42:31 +0900
    A: 山田様、佐藤勝昭です。
     光を吸収して、励起状態になる物体が、基底状態に戻るには、ご指摘の発光を ともなう輻射再結合(radiative recombination)のほかに、発光をともなわない 非輻射再結合(nonradiative recombination)があります。前者では、励起状態の エネルギーは光(可視光とは限らない、赤外線の場合もある)として放出されま すが、後者では、格子振動(又は分子振動)にエネルギーを移動し、その結果物 質の温度が上昇します。
     人間が太陽光を受けますと、皮膚は光を吸収し励起状態にありますが、そのエ ネルギーは可視光として放出されることはなく(そんなことがあれば、人間は赤 や緑に光っているでしょうね)、波長の長い赤外線を放出するか、分子振動とし て体内に伝わり、温かさを感じるわけです。大抵の物質では、このように吸収さ れたエネルギーは、原子や分子の振動のエネルギーに分配されるのです。
     一方、蛍光体では、なるべく非輻射再結合を抑え、可視光の輻射再結合にエネ ルギーが配分されるように作られています。
     光物性の教科書にはいろんなものが出版されています。わかりやすい教科書と しては、小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)をお薦めします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Sep 2005 21:28:32 +0900
    A: 佐藤先生
    早速の御返答有難うございます。分かりやすいご説明ありがとうございました。

    また、早速アマゾンで「発光の物理」を注文してしまいました。
    通勤時にでもこれを読んで勉強してみます。
    -----------------------------------------------------------------------------

    643. 高電圧電流導入端子における金属の異常蒸発

    Date: Sun, 11 Sep 2005 14:56:03 +0900
    Q: 先生
    S社Hです。初めてメールさせて頂きます。匿名にてお願いいたします。
    主題に記載しましたように、真空中(10-6torr)で200℃しか温度上昇が無い にもかかわらずセラミック電流導入端子の銅や銀が真空容器内にかなり飛散し付着し ています。単純な蒸発ではないように思うのですが、原因を教えて下さい。電流導入 端子には、2000v程度の電圧が掛かっています。電界剥離とか電子マイグレイショ ンの様なものが生じて居るのでしょうか。
    お世話になります。

    よろしくお願い致します。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 11 Sep 2005 22:07:17 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     真空チェンバ内で端子間または端子と筐体の間で放電が起きていないでしょうか。
    10-6torrの高真空では、放電は起きないと存じますが、真空度が悪いとき に電圧がかかっている場合、放電により生じたイオンが電極にぶつかり、電極金 属のスパッタが起きる可能性があります。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 13 Sep 2005 18:46:45 +0900
    Q2: 佐藤先生
    忙しいなか、ご指摘いただきまして有難うございます。
    確かに、電流導入端子の20cm離れたところで熱電子が出ていますが、放電が起きない 時も電流導入端子の銅や銀がチャンバーに付着しています。現在、電流導入端子の銅リー ドをニッケルリードに替えてから銅の飛散は無くなり、電流導入端子の銀ロウ付け部 の銀だけが飛散しています。
    何か思い当たるところが有れば、ご指摘頂ければ幸いです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 13 Sep 2005 20:37:03 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     温度が本当に200℃ならば、CuもNiもAgも蒸気圧は非常に低く、飛散 することは考えられません。部分的に温度が上がっていることはないで しょうか?たとえば、Agの場合、685℃で蒸気圧は10^-6torrとなり飛散 する可能性があります。電極とチェンバ筐体の間にリークがある等によ り予想外の電流が流れたり、effusion cellなどの輻射熱により、表面 が予想以上に高温になっていたりする可能性はないでしょうか?
    ----------------------------------------------------------------------------
     

    644. 金属とITOの密着性

    Date: Sun, 11 Sep 2005 14:13:32 +0000
    Q: T大学大学院、Yといいます(匿名でお願いします)。
    簡単な質問で申し訳ないのですがよろしくお願い致します。
    私は大学においてLEDの研究を行っております。
    当研究室では、P側の電極としてITOを用いております。この酸化物であるITOとITOと コンタクトしている金属電極での密着性の強さが問題となっており、酸化物と金属の 密着性の強さがどのようにして決まっているのかを知りたいと考えております。
    また、ITOと金属電極の密着力測定方法として適当なものがあれば教えてください。
    とりとめの無い文章での質問ですがよろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Sep 2005 00:14:16 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     「密着性」というのは機械的な密着性のことでしょうか。
    密着性のテストは一般にはセロテープではがれるかで判定するようです。
    一般に蒸着で着けた金電極は、機械的な密着性が弱く、テープテストで簡単には がれるが、スパッタ法で着けると金属が内部に入り込むためはがれにくいとも言 われています。

     なお、ITOと金属との電気的コンタクトについて、次のサイトが参考になり ます。(信頼性は保証の限りではありませんが)
    http://www.betelco.com/sb/phd/index.html これは、S. A. Bashar という人の博士論文で、Indium Tin Oxide (ITO) for Novel Optoelectronic Devices というタイトルです。
    2章にITOと金属とのショットキー接合、オーミック接合について記述があり ます。また、5章の実験のところにもでています。
    ----------------------------------------------------------------------------

    645. X線回折でシリコンの200禁制反射が観測される理由

    Date: Thu, 15 Sep 2005 09:40:34 +0900
    Q: F県工業試験場Kと申します。

    HPを拝見しての質問です。

    XRD(粉末X線回折装置です。)で100のシリコン基板を測定すると、2θ=69°付近の400ピーク以外に 2θ=33°付近にピークが現われました。d値を計算すると、シリコンの格子定数の1/2となるので、 200反射と思われますが、消滅則からはシリコンの200反射は出ないことになっています。

    このことは、どのように解釈すればよいのでしょうか。
    よろしくご教授お願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Sep 2005 12:50:08 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     私は、そのような経験がなかったので、X線結晶学の専門家である広 島工業大学の藤本勲教授に伺いましたところ、「回り込み反射」による ものではないかということです。禁制であっても、方位によっては、回 り込みによる入射波と回折波のベクトルがちょうど2倍の逆格子ベクト ルに一致し回折が観測される場合があるということです。
     従って、試料方位を回転させて、回り込み回折線が出ないような配置 にすることが大切で、それにも関わらず出るようだと、試料のひずみな どの因子を考慮しなければならないということでした。
    -----------------------------------------------------------------------------

    646. 金、銀、Ni、Al、Cuの反射率

    Date: Thu, 15 Sep 2005 19:06:52 +0900 (JST)
    Q: 佐藤先生、
    O社Hと申します(匿名希望でお願いします)。
    HPを拝見しメールさせていただきました。

    光学部品の開発を行っております。
    光源を覆う部材(金属)を検討しておりますが、 金属の可視光の反射率(380nm~700nm)データを探しておりま す。ご教示いただけないでしょうか?
    対象は、金、銀、Ni、Al、Cuです。
    もし、その他もご教示いただけるのであれば、助かります。
    お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Sep 2005 19:32:20 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aに何度も書いていますが、(たとえば、No.5,No.394) 下記の書物を参照ください。反射率の場合と反射率のデータが直接載っ ておらず屈折率nと消光係数κしか載っていない場合があります。その 場合は
     R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}
    で計算してください。
    Palik:Handbook of Optical Constants in Solids, I, II (Academic)
    Landolt Boernstein:New series III-15b (Springer)
    工藤恵栄:分光学的性質を主とした基礎物性図表(共立、昭和47)
    なお、「理科年表」丸善の物99頁に、Al,Ag,Au,Cu,Rhの分光反射率が載っています。
    また、新版物理定数表(朝倉)p.171に、Al, Sb, Cu, Au, Fe, Mg, Mn, Ni, Pt, K, Rh, Ag, Na, Znの粗いデータがあります。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 16 Sep 2005 15:07:22 +0900 (JST)
    Q2:佐藤先生、O社のHです。
    早速のご回答ありがとうございます。
    しかも資料まで別送していただき感謝しております。
    いただいた資料を拝見し気づいた点がありましたので、質問させてください。
    アルミニウムの反射率が2つの資料間で20ポイントほど差が ありますがそれは何故でしょうか?

    よろしくお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 16 Sep 2005 22:58:51 +0900
    A2:H様、佐藤勝昭です。
     多分そのようなメールが来ると思っていました。
    Alは大変酸化しやすい金属なので、真空中で作製し、in-situで測定しない限 り、正しいデータを示さないのです。理科年表のデータは、フレッシュな蒸着面 に対して測定されたものなので、Alそのものの反射率としては理科年表の値の方 が正しいと思います。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 20 Sep 2005 17:14:43 +0900 (JST)
    Q3: 佐藤先生、オムロンの本間です。
    ご回答ありがとうございます。
    便乗で申し訳ありませんが、更に質問させてください。
    Alは酸化しやすいとのことですが、Agと比べるとどちらが酸化 しやすいのでしょうか?

    よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 21 Sep 2005 01:46:33 +0900
    A3: 佐藤勝昭です。
     Alは、10^-8Torr程度の高真空で蒸着しても、その後放置すると1時間後には酸 化膜で覆われているということです。ただし、酸化膜ができると不動態となり、 酸化がそれ以上進まないそうです。AgはAlに比べればはるかに酸化しにくいで す。むしろ硫化が進み黒化するようです。
     なお、データとしては、Handbook of Optical Constant of Solids掲載のもの が現在最も信頼性があります。金属の光学的利用をなさるなら、御社で揃えてお かれるのがよいかと存じますが・・。
    ----------------------------------------------------------------------------

    647. 高圧円筒容器の軸方向ののび

    Q: 始めてメールをさせて頂きます。I社で機械設計をやっておりますMと申します。 ステンレス製の円筒形をした圧力容器に、蒸気を入れて加熱する設備を検討していま す。 胴の両端を軸で支持する場合、熱と圧力を受けて、軸方向の膨らみ量を推定する場合 の考え方を教えてください。 工業高校 機械科出身です。 ちなみに胴の外形は850mm板厚10mmで胴の両端は鏡板となっています。蒸気圧は 1.5MPaです。 ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 17 Sep 2005 12:12:54 +0900
    A: 望月様、佐藤勝昭です。
     物理システムで力学を教えている教員に聞きましたところ、下記の回答を得ま した。
    ========================================================================
    この問題は、熱と圧力は分けて取り扱います。

    (1)所望の温度まで上げたところで、熱膨張係数から「伸び」を算出。
    (2)その後に加圧し、内圧による軸方向の伸びを計算します。トータルの伸び は (1)+(2)です。
    (2)の伸びの算出は、「材料力学」系の教科書の定番の計算 らしく、肉厚が 薄い場合には、軸応力σ(z)、円筒の半径r、肉厚t、圧力Pとすると、

    円盤を押す蒸気の力=面積×圧力=(πr^2)Pが
    円筒の軸応力による力=円筒の壁の断面積×軸応力=2πrtσ(z)
    と釣り合うということから

    (πr^2)P=2πrtσ(z)

    の簡単な関係式が導かれます。これより、

    σ(z)=P*r/2t

    となります。これに弾性係数を乗ずれば、「伸び」が算出できます。肉厚が無視 でき ない場合には、肉厚方向に応力が一様でなくなり、計算はやや難しくなり ます。

    質問者には、まず、「材料力学」の本を読むことを勧めたいと思います。
    ========================================================================
    ということでした。
    円筒形の圧力容器に関する材料力学に関して、西オーストラリア大学の機械科の 講義ノートが役立ちます。(英語ですが)
    http://www.mech.uwa.edu.au/DANotes/cylinders/thin/thin.html
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 20 Sep 2005 11:52:03 +0900
    A: 佐藤勝昭先生
    お忙しい中早速の回答誠に有難うございました。
    大変助かりました。
    -------------------------------------------------------------------------

    648. 高反射率の金属が太陽光を吸収して熱くなる訳

    Date: Mon, 19 Sep 2005 14:02:20 +0900
    Q: 東京農工大学 佐藤先生
    L社のFと申します(匿名希望でお願いします)。
    HPを拝見しメールさせていただきました。

    私はプラスチックの成形加工を行っている会社の研究開発部門に 所属している者です。光化学に関してはまったくの素人ですので、 的外れな質問かもしれませんがご容赦ください。

    先生のHPを拝見しますと、金属は、プラズマ周波数より長い波長では 誘電率が負になるため光を吸収できず反射するので光って見えるとの ことですので、たとえば太陽光線の波長域の可視光線から近赤外線 (~2500nm)の光は高い率で反射するのであろうと考えました。
    光を反射するのであれば、光のエネルギーを吸収できないため 金属は太陽光線が照射される環境に置かれても熱くならないのでは と思いましたが、実際、公園などに設置されている金属製の 滑り台などは、プラスチックや木、石などに比べて非常に熱く 感じます。
    プラスチックの場合、色との関係もあると思いますが、 白ではなく、青や赤に着色されているプラスチックでも、 ステンレスのような金属より熱くないように思います。

    なぜ、金属はプラスチックや木、石などに比べて熱くなるのか お教えいただきたく、お願い申し上げます。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 21 Sep 2005 01:59:32 +0900
    A: F様、佐藤勝昭です。
     赤外線を吸収するから熱くなるとは限りません。可視光線でも吸収すれば、そ のエネルギーは、結局は格子振動を通じて熱になります。
     反射率が高いというのは、吸収係数が大きいためです。垂直入射反射率Rは屈 折率n、消光係数κとすると、R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}で与えられます。
    もし、吸収が強くて、κ>>nとしますと、R→κ^2/κ^2=1となり100%反射します。
    実際には、100%反射しないで可視光線に対して80%位の反射率になっているの で、表皮部分で十分に吸収があり、発熱するのです。鉄は反射率が低く、十分吸 収するのでかなり熱くなります。銅は、プラズマ周波数以上の光子エネルギー (2eV付近)に対し反射率が低いので、緑や青の光を十分吸収し熱くなります。銀 は可視光に対し95%以上の反射率なので太陽光下で温まりにくいです。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 21 Sep 2005 12:35:08 +0900
    AA: 東京農工大学 佐藤先生
    L社のFと申します。
    (申し訳ありませんが、HP掲載の折には 匿名でお願いいたします。)
    感覚的な内容の質問に対して、お忙しい中、 丁寧なご回答を頂き、ありがとうございました。

    吸収率と温度は正の関係で相関するとの ことですので、実際に各種材料の可視光線から 近赤外線の波長領域の吸収率と、これらに 太陽光を照射した場合の表面温度との関係を 測定してみたいと思います。

    吸収された光が熱に変わる効率や、放熱(比熱に 関係するのかもしれませんが)が、材料によって 違い、それが試験を行った時の材料の表面温度に どう影響するか分からない点もありますが、 まずは、測定をしてみます。

    この度は、愚問にご回答いただき、重ね重ね、お礼 申し上げます。
    -----------------------------------------------------------------------

    649. アルマイト加工したアルミ板のマイクロ波反射率

    Date: Fri, 16 Sep 2005 17:33:50 +0900
    Q: 初めまして。N社Tと申します。
    ホームページ記載上は匿名でお願いします。

    質問
    アルミと電波について

    アルミ板(3mm厚)に、アルマイト処理(陽極酸化処理) 膜厚6ミクロンを施したものに電波(6.5GHz)を当てたときの 反射率の低下はあるのでしょうか?
    光の反射で、純なアルミ板(鏡面)のものと、アルマイト処理を 施したアルミ板(少しくすんだ表面)では反射に影響があるように 思えるのですが、6.5GHz(波長=4.6cm)の電波は6ミクロンの 膜厚には全く関係ないように思えます。
    電波も光と同じように、鏡面ものと、くすんだ表面のものでは 影響がでるものなのでしょうか?

    検討よろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 17 Sep 2005 01:24:40 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
     アルマイト部分が膜厚6μmの単純なAl2O3薄膜であるとしたら、 おっしゃるように波長=4.6cmの電波に対しては、何の影響もないと思います。
    おそらく、鏡面反射率の低下ではなく、陽極酸化によってできた凹凸による散乱 ではないでしょうか?
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 29 Sep 2005 09:32:39 +0900
    AA: 佐藤 様

    返事が大変遅くなりまして申し訳ありません。
    お答えありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------

    650. 円偏光フォトンと直線偏光フォトン

    Date: Sat, 24 Sep 2005 01:05:27 +0900
    Q: 佐藤先生
    A社のKと申します。HPをいつも拝見させていただいております。
    教科書などで、「直線偏光=右円偏光+左円偏光」という説明をよく見かけますが、 直線偏光のフォトンは、右円偏光のフォトンと左円偏光の2つのフォトンが合わさっ たものということになるのでしょうか? フォトンが2つ合わさって1つになるという のは、非線形光学現象のようにエネルギーが変化しなければならないので、正しい理 解ができていないと考えています。
    また「右円偏光(左円偏光)は、偏光面が90度ずれ位相がπ/2ずれた2つの直線偏光 の和」という説明は間違っているのでしょうか?
    お忙しいところ恐縮ですが、よろしくご教示ください。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 24 Sep 2005 17:24:46 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     電磁気学的には、直線偏光と見ても、2つの円偏光の重畳とみてもまったく等 価です。円偏光は直交する90度位相の違う2つの直線偏光の重ねあわせと考えら れます。
     数式で考えますと、x方向の単位ベクトルex、y方向の単位ベクトルeyとする と、z方向に進むx方向に振動面を持つ直線偏光の電界ベクトルは、
     Ex=E0exp(-iωt)ex、
    右回りの円偏光はx方向の電界ベクトルexと90度位相の進んだy方向の電界ベクト ルeyの1次結合で表され、Er=E0exp(-iωt)(ex+iey)/2と書けます。
     同様に左回り円偏光はEl=E0exp(-iωt)(ex-iey)/2と表されます。
    右円偏光と左円偏光の和はEr+El=E0exp(-iωt)exとなり、確かにx方向の直線偏光 となります。一方、差はEr-El=-iE0exp(-iωt)eyとなりy方向の直線偏光です。
     量子力学で考える場合、「フォトンが2つ合わさって1つ」と考えるのではなく 右円偏光|R>と左円偏光|L>の混成した状態(1/√2)|R>±(1/√2)|L>が直線偏光であ ると考えるのです。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 27 Sep 2005 00:40:57 +0900
    Q2: 佐藤先生
    A社Kです。迅速なご回答有難うございます。
    photonには直線偏光や円偏光などの種類があるという理解でよろしいでしょうか?
    それとも、混成というと電子軌道の混成を思い浮かべますが、これと似たようなもの という理解でよろしいでしょうか?
    度重なる質問となりますが、よろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 4 Oct 2005 21:53:40 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭です。
     お返事が遅くなりました。
    量子力学では、部分的にある状態になるということがしばしば起きます。
    確率的なことなので、電子軌道の混成と同様にお考えいただいてもよい と存じます。
    ------------------------------------------------------------------------

    651. ウィレマイトの結晶構造

    Date: Mon, 26 Sep 2005 12:39:05 +0900
    Q: 山口東京理科大4年 Hです。
    ウイレマイトの結晶構造について知りたいです。教えてください!
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 03 Oct 2005 01:06:29 +0900
    A: H君、佐藤勝昭です。
     多忙のためお返事が遅くなりました。
    http://ruby.colorado.edu/~smyth/min/willemite.htmlによれば、
    ウィレマイト(Willemite)の化学式はZn2SiO4
    結晶系は三方晶系(trigonal)で空間群はR-3(3の上にバーを書きます)
    a 13.971Å
    c 9.334Å
    です。なお、結晶構造の図などは、
    http://webmineral.com/data/Willemite.shtml
    に詳しく載っています。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 3 Oct 2005 11:08:35 +0900
    AA: ご多忙の中調べていただいてありがとうございます。
    今回の資料はこれからの実験に役立てたいと思います。
    今後もご質問させていただくかも知れませんがよろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------

    652. マイクロ波誘電率の温度係数

    Date: Fri, 30 Sep 2005 14:28:10 +0900
    Q: 佐藤勝昭様

    初めまして。M大学大学院 修士1年のKと申します。
    (恐縮ですが、もしHPに掲載される場合には匿名でお願い致します。大学名も伏せていただけると幸いです。)

    以前より先生のHPを拝見させていただいており、今回質問させていただきます。

    現在マイクロ波誘電特性の発生要因。特に共振周波数の温度係数(τf)ついての研究を行っております。
    τfについては文献調査をしてもほとんど議論されておりません。そこで、私は、高温X線を用いて共振周波数の温度係数を測定する温度(20℃と80℃)でXRDをそれぞれの組成に対して(置換量の変化でのτfがプラスとマイナスの組成)とり結晶構造の変化が温度特性に影響を及ぼしているのでは?と考え研究を進めました。
    高温X線の結果から構造の原子間距離は伸び、結合強度は落ちております(熱膨張係数はプラスの値を有してますので)。つまり、分極が大きくなるような気がします。分極が大きくなると比誘電率は大きくなり、共振周波数は20℃の時より80℃の方が低い値(つまりτfはマイナス)を有するような気がするのです。しかし、τfがプラスの値を有する材料もあります。
     今私はτfがプラスとマイナスの値をなぜ有するのかについて悩んでおります。
     
     ・なぜ温度が変化すると共振周波数が変化するのでしょうか?
     ・なぜ共振周波数高くなったり低くなったりするのでしょうか?(τfがプラスとマイナスの値をなぜ有するのでしょうか?)
    もちろん指導教員の教授に質問をしたのですが、分からないと言われてしまいました。
    お忙しい中大変申し訳ございませんが、ご存知でしたらお教えくださりますと幸いです。
    宜しくお願い申し上げます。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 3 Oct 2005 16:27:29 +0900
    A1: K君、佐藤勝昭です。
    多忙のため、返信が遅くなったことをお詫びします。
     マイクロ波誘電特性の発生要因、特に共振周波数の温度係数(τf) ついて、ご研究とのことですが、私はこの方面に詳しくないので、 共振といっても、どのような条件下での共振なのか全く理解できません。
     測定は、ESRと同じように、キャビティに誘電体をおいて、導波管 に接続して、反射か透過を見ているのでしょうか?それとも、線路を構 成して、ネットワークアナライザなどで共振を観測しておられるのでし ょうか?共振周波数が変わるとおっしゃっていますが、誘電率(従って 静電容量)が変わると考えてはいけないのでしょうか。またτfはどの ように定義されているのでしょうか?また、物質は何なのでしょうか。
     関連する文献などの情報がないとお答えする手がかりがありません。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 4 Oct 2005 11:35:15 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様

    M大学大学院 Kと申します。
    ご多忙な中、敏速なご返事ありがとうございました。
    そして、私の説明不足でご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません。

    ご指摘の点ですが、
    今私の扱っている材料の組成は、Hexagonal-Perovskite系****(質問者の要望により削除)であります。
    この組成は構造の報告はあるのですが、誘電体としての論文はまだ世に出ておらず、今私が研究しております。
    (今回NiサイトにZn、Co、Mgを全置換することに成功しました。その結果、共振周波数の温度係数(τf)がマイナスからプラスに変化をしました。)
    参考文献を添付できず申し訳ありません。

    共振周波数はネットワークアナライザーを用いて測定しております。
    共振周波数の温度係数(τf)を求めるには、20℃と80℃の時の共振周波数を測定し以下の式に代入をして求めております。
      τf=((f80-f20)/(60*f20))*10^6
           f20:20℃の時の共振周波数
           f80:80℃の時の共振周波数
    また、先生のご指摘の様にτfは誘電率と密接な関係があります。
    その関係式を以下に示します。
      τf=-τε/2-α
        τε:誘電率の温度係数
        α:熱膨張係数

    先生のご指摘の通り、私の今の疑問は
     ”なぜ誘電率(静電容量)が温度変化によって変化するのでしょうか?”
    と言い換えることができます。
    温度の増加とともに、なぜ誘電率が大きくなったり小さくなったりするのでしょうか?

    それぞれの組成の熱伝導率などが関係してくるのでしょうか?

    お忙しい中、大変申し訳ございませんが、ご存知でしたらお教えくださりますと幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    最後に改めて、私の説明不足によってご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 4 Oct 2005 16:40:48 +0900
    A2:K君、佐藤勝昭です。
     Hexagonal-Perovskite系****にZn,Co,Mgを置換した場合に共振周波数の温度係数が負 から正に転換した理由をおたずねなのですね。あなたの示した式によれ ば、誘電率の温度係数は、異符号なので、Zn,Co,Mgの置換によって、誘 電率の温度係数が正から負になったと考えられます。
     私は、この物質のことをよく存じ上げませんが、BaTiO3同様の強誘電 体であり、その強誘電転移温度(キュリー温度Tc)が80℃より高ければ、 誘電率はTc付近でピークをもつので、温度上昇とともに増大し、正の温 度係数を示します。もし、置換によって、Tcが20℃より低くなれば、誘 電率は温度上昇とともに低下しますので、負の温度係数となります。
     強誘電性があるかどうかは、自発分極があるかどうかに関係しますの で、E-Dヒステリシスを測定する必要がありますが、強誘電体関係の しかるべき教科書をお読みください。
     強誘電体の誘電率のTc付近での変化は、キッテルの第13章図9に 載っていますのでご参照ください。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 4 Oct 2005 18:50:37 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    M大学のKと申します。
    お忙しい中ご返答本当にありがとうございます。

    さっそく研究室にある測定器でE-Dヒステリシスを測定し、さらになぜキューリー点の後に誘電率がいきなり変化せず、減少するのかをじっくり考察してみようと思います。
    (今この様な疑問が生じましたが、思いつきでの質問はたいへん失礼ですのでじっくり考察をしたいと思います。)

    この度は私の様な学生の質問に、ご返答を頂きありがとうございました。
    また質問させて頂くことがあるかもしれませんが、その節は何卒ご教授よろしくお願いいたします。
    ありがとうございました。
    ----------------------------------------------------------------------------

    653. 鉱物の発光の温度依存性

    Date: Thu, 6 Oct 2005 11:05:53 +0900 (JST)
    Q: 佐藤勝昭先生

    先生のサイトを以前より拝見し、大変参考にさせていただいております。 O大学で鉱物の結晶化学を研究しているN(教員)です。
    尚、掲載の折りは匿名でお願いします。

    今般、ルミネッセンスについて是非質問させていただきたくお願いします。

    試料温度を変えながら鉱物のカソ-ドルミネッセンス(CL)測定しています。液体窒素温 度から400℃の範囲です。一般に試料温度が上昇すると発光効率が下がり消光します(温 度消光)。鉱物に関しては、「低温下でCL強度の上昇が認められる」程度の情報しかあ りません。したがって、各種鉱物の温度消光効果を定量的に検討してきました。

    結果は、温度消光を顕著に示すもの、試料温度にあまり影響を受けないもの、さらには 昇温に対して増感効果を示すものまであります。石英などは、温度消光が著しくMott-S eitzモデルでよく近似できます。しかし、炭酸塩鉱物中のMn(Ⅱ)によるCL発光は、アク チベ-タのMn濃度により試料温度効果がまるで違ってきます。

    通常の温度消光に反し、低温下でCL発光効率が下がってしまったり、試料温度の影響を 受けない現象は、無機材料物質などではよく知られているのでしょうか?そのような例 があれば、ご紹介下さい。その原因や解釈について判っていることがあればお教え下さ い。また、発光中心濃度と温度消光効果の関係についての知見などありましたら併せて ご教示下さい。

    当方、量子化学(光学)の知識は大変乏しく、つきましては基礎的な事柄からの説明をお 願いしたく、ご面倒ながらご高配のほどお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 7 Oct 2005 19:02:03 +0900
    A: N先生、佐藤勝昭です。
     Mn2+のような遷移金属イオン、Er3+のような希土類イオンが関与する 光学遷移は、かなり局所的に起きるため、バンド端と不純物準位が関与 するような発光に比べて温度消光が小さいと言うことがあります。
     私の経験で申しますと、CuAlS2:Mn2+においては、Mn2+の配位子場遷 移4T2→6A1の赤色発光は室温でも十分強く観測されます。また、時間分 解スペクトルを測定すると、励起直後は、DAP(ドナー・アクセプタ対) 遷移(Mn2+がCu+を置換したことによるドナーとMn2+がAl3+を置換した ことによるアクセプタが関与する遷移)が主たる発光です。しかし、こ のDAP遷移は数10nsの時間内に消光し、そのエネルギーをMn2+の配位子 場遷移に受け渡し、100ns後にはMn2+の配位子場発光が主となります。 つまり、2つの発光遷移間のエネルギー移動が起き、主役交代するので す。DAP遷移が時間とともに消光する仕方は低温では遅く、室温では早 いというようなこともありました。
     また希土類がアクチベータである場合、低温では可視発光しているが、 室温では赤外発光しているようなケースがあり、赤外で観測していると 温度消光ではなく温度増光になるケースもありました。
     このような、競合するいくつかの光学遷移がある場合に、温度ととも に発光のウェートが変わる現象はよくあることです。その場合のエネル ギー移動のメカニズムは単純ではなく、多重極子間のエネルギー移動や、 電荷移動遷移を介したエネルギー移動など、いろんな場合が考えられま す。
     濃度と温度消光の関係ですが、一般には濃度消光といって、発光中心 の濃度が高くなると、ペア、トリアッドなどクラスタが形成され、電子 状態が変化するため、多くの場合、シングルイオン系から、ペアの方へ エネルギー移動して発光の様子が変わるのです。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 8 Oct 2005 12:49:29 +0900 (JST)
    Q2: 佐藤勝昭 先生

    大学のご要職を担当され、お忙しいところ丁寧なご返事を頂き恐縮しております。

    ご指摘にありましたように、希土類イオンによるものはエネルギー移動があるようで、 鉱物の種類によってはイオンの種類により温度消光(増光)の異なる挙動が認められ、大 変複雑です。材料科学の分野では解決済みかもしれませんが。

    したがって、最近は、なるべく発光中心の複合しない試料を選び検討しています。 炭酸塩鉱物(例えばCaCO3)中のMnの発光は、4G(T1g)→6Sのみで解釈でき濃度消光もはっ きり現れます。試料は、いずれもFeによるクエンチャーや希土類イオンなどの影響のな いものです。Mn濃度が低いものは(数百ppm以下)温度増光、Mn濃度の高いものは(数千pp m以上)顕著な温度消光、中間領域のMn濃度では試料温度効果をあまり受けません。

    Mn高濃度試料の温度消光過程をMott-Seitzモデルを仮定して解析すると、アレニウスプ ロットで良い直線関係が得られ活性化エネルギーを求めることができます。値も格子の 振動エネルギーに近いような気がします。しかしながら、今までに報告されている炭酸 塩中のMn(Ⅱ)の配位座標ダイアグラムでは、4Gと6Sは交差しません。この場合、仮定し たモデルが間違っているのか、実際の結晶中では4Gと6Sが交わるかトンネル効果のよう なエネルギー移動などが起こっているのか、他の過程(多重フォノン)によっているのか など判断に苦慮しています。物性物理や材料科学の分野では、このような事例はどのよ うに解釈されてきているのでしょうか。また、Mnの低濃度や中濃度の試料については、 試料温度のCL強度変化に及ぼす特異な現象(温度消光を示さない)をどのように説明すべ きか悩んでいます。アドバイスをいただけると有り難いのですが。

    一方、Mnが約2万ppmを超すと濃度消光が認められるようになり、5万ppm以上の試料で はCL発光が見られなくなります。しかし、約-100℃以下では濃度消光の影響は全く見 られなくなり、Mn高濃度試料は液体窒素温度で強烈に発光します。これは、低温下でMn イオンから近接のMnイオンへのエネルギー伝達が行われないことを示します。もし物性 物理学の分野などで同様な現象をご存じなら、どのような具体例があり、またどのよう に解釈されているのかご教示いただければ幸甚です。

    お時間の余裕があるときにでもご返事いただけたら有り難く存じます。
    先ずはお願いまで
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 09 Oct 2005 02:16:13 +0900
    A2: N先生、佐藤勝昭です。
     「Mn濃度が低いものは(数百ppm以下)温度増光、Mn濃度の高いものは(数千pp m以上)顕著な温度消光、中間領域のMn濃度では試料温度効果なし」ということで すが、温度増光が起きるのは、他の準位からのエネルギー移動があることを意味 しています。Mnが微量ですから、同程度の微量の不純物が入っていないとは言え ないでしょう。あるいは、このような炭酸塩では結構高い濃度の格子欠陥があり ますから、欠陥によるカラーセンターがあったり、Mnとの複合欠陥を作っていた りすることが考えられます。かなり注意深く作られた半導体結晶でも、発光プロ セスには不純物や欠陥(GaAsでも濃度10^14cm^-3程度)が関与するのですから、半 導体に比べれば、はるかにクオリティの低い炭酸塩鉱物結晶では、Ca-空孔など の欠陥や、転位を修飾した不純物の存在を無視できないでしょう。Mn濃度が中濃 度になるとCa空孔を埋めて欠陥の関与が減少するなどのために理想的なシングル イオン状態となり、配位座標モデルがよく成立するため、温度消光が起きないの ではないかと思います。更に高濃度になると、Mn2+のイオン半径がCa2+より小さ いことによる局所的な歪み大きくなり、配位座標モデルがモディファイされるの ではないかと推察できます。
     このように鉱物結晶中の発光を考える場合には、純粋な発光遷移だけでなく、 結晶工学的な考察が必要かと存じます。Mn濃度による格子定数の変化などを測定 することも参考になるのではないでしょうか。また、可視発光だけでなく、赤外 発光も観測されることをお薦めします。さらにESRによるMn以外の不純物の同定 なども役に立つと存じます。
     20,000ppmというと2%ものMn2+ですね。Mnは比較的局在性が強いので、ZnS中で もこの程度の濃度まではMn2+の配位子場発光が室温でも強く観測されます。EL素 子には、この程度の濃度のZnS:Mnが使われています。CaCO3母体の場合になぜ温 度消光が激しいのか分かりません。時間分解スペクトルなどを調べる必要がある でしょう。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 9 Oct 2005 17:27:09 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭 先生

    早々に丁寧なご返事ありがとうございました。
    お忙しいところ恐縮しております。
    大変参考になります。
    もう少し詳しい測定を続けてみます。
    先ずはお礼まで
    ------------------------------------------------------------------------

    654. 超伝導体の永久磁石上における浮上

    Date: Wed, 5 Oct 2005 13:53:04 +0900 Q: 東京理科大3年 工藤真大です。
    HPを見ての質問です。

    今、超伝導体について勉強しています。
    そこで質問です。超伝導体のマイスナー効果における超伝導体に働く力のつり合いの 関係を教えていただけないでしょうか。どうも確信に至りません。できれば、永久磁 石の上に超伝導体を浮かべた場合でお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 11 Oct 2005 21:14:47 +0900
    A: 理科大工藤君、佐藤勝昭です。
    物理システム工学科において超伝導を専門に研究しておられる内藤先 生に回答していただきます。
    ----------------------------------------------------------
    (1)まず、「バークレー物理学コース、電磁気学(下)」の11.1節と 11.11節を読んで、磁性体に働く力について定性的に理解して下さい。
    (2)超伝導体の場合には、反磁性を示す物質と力の方向は同じで、磁 石から反発されます。但し、大きさは5-6桁違う。
    (3)定量的に考えるには以下のようにします。反磁場効果の無視でき る小さな超伝導体試料(質量m、体積v)を想定して、それを磁石上(磁 石の上端面をz=0とする)に置いたときの、エネルギーを考えます。

    全エネルギー=重力による位置エネルギー+超伝導体が磁場排除するこ とによる電磁気エネルギー

    第1項=mgz
    第2項=μ_0*H(z)*H(z)*v/2(μ_0は真空の透磁率)

    第1項はzの増加関数、第2項は、H(z)はz=0からzが大きくなるにつれ て減少しますから、zの減少関数です。よって、第1項と第2項の和は どこかで極小を持ちます。そこが、超伝導体が止まる位置です。
    ------------------------------------------------------------------------

    655. コランダムのヤング率の温度依存性

    Date: Sat, 15 Oct 2005 17:53:33 +0900
    佐藤様

    初めまして、T大学大学院修士課程2年のNです。

    HPを見ての質問です。

    ・「コランダムのヤング率、表面エネルギーの温度依存性」を教えていただけたら有難いです。
     というのも、私の研究で1μm, 10μmサイズのコランダム粒子を衝突させて、くっつくか跳ね返るかの臨界速度(系の全圧は10-6(atm)~10-3(atm))を求めようとしています。その臨界速度の式の中にヤング率と表面エネルギーが入ってきて、コランダムの融点付近 のそれらの値を知りたいからです。
    質問に対する答えが記述してあるような文献があれば、教えていただければ幸いです。

    お忙しい中、本当に有難うございます。
    Webにupする場合は匿名・大学名を伏せてでお願いします。

    それでは、お返事お待ちしております。失礼します。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 15 Oct 2005 23:46:47 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です
     コランダムのヤング率の77K~850Kの温度依存性については、
    Phys. Rev. 122, 1754-1759 (1961)[Issue 6 - 15 June 1961 ]に次の論文が 載っています。
    Exponential Temperature Dependence of Young's Modulus for Several Oxides J. B. Wachtman, Jr., W. E. Tefft, D. G. Lam, Jr., and C. S. Apstein National Bureau of Standards, Washington, D. C. Young's modulus was measured over the temperature range 77°-850°K by an accurate resonance technique. Data are presented for single crystals of aluminum oxide with various orientations of the crystallographic axes and for polycrystalline aluminum oxide, thorium oxide, and magnesium oxide. The results show that the range of validity of a T^4 temperature dependence predicted by theory must be quite small. The temperature dependence is very well described over the whole temperature range by Texp(-T0 / T), where T0 is an empirical parameter.
    ---------------------------------------------------------------------
    コランダムの融点は2050°C、軟化点は 1800°Cです。
    融点付近ではすでに軟化しているので、融点付近でヤング率を正確に測定するこ とは不可能でしょう。
     表面エネルギーの温度変化に関するデータは分かりません。
    「コランダム粒子を衝突させくっつく場合の臨界速度」の式は、どのような形 で、ヤング率と表面エネルギーと結びついているのでしょうか。専門が違うので よく分かりませんが、鉱物学や地球科学関係の文献を丁寧に調べれば、必要な データは見つかるかも知れません。貴大学には、伝統ある立派な図書館があるの ですから、ちょっと時間をかけてお調べになってはいかがでしょうか。
    ---------------------------------------------------------------------

    656. ITOの可視光の透過性について

    Q: 佐藤様

    初めてメールさせて頂くK(U機関所属)と申します。
    (Webへの掲載時には、氏名および所属はふせて頂けますようお願いします)

    当方で直面している問題の手がかりがないかとインターネットで調べている 中、佐藤様の研究室のホームページを拝見しました。
    広範囲に渡る様々な質問へのご回答の中には、ITOの特性に関わる件もあった ため、何か手がかりが掴めるのではないかと思い、メールをさせて頂くことに しました。

    さて、その当方で直面している問題ですが、以下のようなことです。

    サファイヤガラスの両面にITO膜を製膜(片面はヒータの役目として、もう片方 は温度センサの役目として)し、このITO膜が製膜されたサファイヤガラス越し にCCDカメラであるものを観察するというコンフィギュレーションで実験を行っ ていたところ、次のような現象が確認されました。

     ・上記のITO膜付きのサファイヤガラス自身の温度が高くなると(実際には、
      ヒータの役目のITOに電流を流して加熱)、観察対象物がはっきりと明るく
      見えるようになる。サファイヤガラスの温度が低くなるにつれ、暗くみえ
      るようになる。(温度変化の範囲は、室温から90℃程度) 
      ここでの画像の明暗は、CCDカメラで撮影した画像をみて判断していました。
      なお、画像の明暗については、画像の輝度レベルが異なるという言い方も
      できるかと思います。

    この現象が確認された際、サファイヤガラスに製膜されたITO膜の温度(あるい は抵抗値)が、可視光の透過率に影響を与えているのではないかと推測した のですが、何分そのようなことを示す情報に巡りあうことができませんでした。 (ITO蒸着時の基板温度の違いにより、透過率に差がでるという情報はありまし たが)

    そこで、お聞きしたいのは、上記の推測が正しいのか、それとも、違う原因で 上記のような現象が発生するのか、また、そのメカニズムについてです。

    多々勉強不足のところがあり、恐縮ですが、ご教授頂けると幸いです。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Oct 2005 14:02:40 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     ITOの透過率が温度、導電率に関係しているのではないかとのご指摘 ですが、おそらく次のようなことではないでしょうか。
    ITOには高濃度の伝導電子があり、フリーキャリア吸収により光の吸収 が生じています。吸収係数αは次式で与えられます。(山田興治、佐藤 勝昭ほか著:機能材料のための量子工学(講談社1995)p158-161参照)
     α=ωp2τ/nc{(ωτ)2+1}
    ωτ>>1の時は、
     α=(ωp2)/{ncω2τ}
    となります。温度が上がり、電子の散乱寿命τが短くなると、αは増加 します。抵抗率ρはρ=1/neμ=m/ne2τと書けるので、τが短くなると 抵抗率も高くなります。
     従って、K様のご推察は正しいと思います。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Oct 2005 17:50:57 +0900
    Q2: 佐藤様
    質問に対する回答として、ITOの光吸収係数αは、ITOの温度が上がることで、 大きくなる(抵抗率も、温度が上がることで、高くなる。)とお教え頂きま した。
    そこで、確認させて頂きたいのは、ITOの光吸収係数αが大きくなると、ITO を透過する量(透過率)は、小さくなるのではないかということです。
    当方での確認された現象としては、ITOの温度が上がると、ITOを通して見た 観察対象が明るく見えるということで、この明るく見えるという現象は、ITO を通過する光の量が多い(透過率が大きい)ということになるような気がする のですが。
    上記の現象とお教え頂いた内容が、反対のことを示しているような気が致しま すが、何かこちらの考え違いがありますでしょうか?
    お忙しい所、恐縮ではありますが、ご意見を伺わせて頂きたく、よろしくお 願い申し上げます。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Oct 2005 19:03:27 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭です。
     先ほどは、
     α=ωp2τ/nc{(ωτ)2+1}
    ωτ>>1の時は、 α=(ωp2)/{ncω2τ}
    としました。しかし、何らかの理由でτが短くなるとωτ<1となり得 ます。 その場合は、
     α=ωp2τ/nc
    となり、吸収係数はτが短くなれば小さくなります。
    実際の場合について見てみると、可視光(λ~500nm)では、
     ω=2πc/λ=(6.28×3×108)/(5×10-7)=3.63×1015rad/s
    ITOのHall移動度μ~30cm2/Vsから見積もった、散乱寿命は τ=μm/e~1.7×10-7s
    なので、ωτ>>1が成立します。

    従って、フリーキャリア吸収を考える限り、温度が上がって吸収が小さ くなる理由はありません。K様の実験結果は、吸収が小さくなったの ですから、ほかの理由を考えなければならないですね。

    一つ考えなければならないのは、ITO表面での反射のことです。温度が 上がって、屈折率nが変化したとすると、反射率はどうなるでしょう。 吸収を無視すると、反射率はR=(n-1)2/(n+1)2で与えられます。仮に、 室温でn=2だったものが300℃で1.5になったとしますと、Rは11%から4% に低下します。反射は両面で起きますから、透過光は(1-R)2で効いて きますから、透過率は79%から92%に増大します。
    実際には、屈折率の温度変化はこれほど急ではありませんが、明らかに 減少しています。
    たとえば、
    http://www.esrf.fr/UsersAndScience/Publications/ Highlights/2004/Materials/Mat5/をご覧ください。

    たぶん、K様が観測されたのは、この効果だったのでしょう。
    ----------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Oct 2005 09:40:25 +0900
    AA: 佐藤様
    U機構のKです。
    ご回答頂きまして有難うございました。
    確かに透過率を考える際には、吸収率と反射率を考慮する必要があるという ことを思い出しました。
    なお、本件については、少々簡単な確認試験を行うことを計画しており、佐藤 様からご教授頂いた内容を考慮しつつ、実施したいと考えております。
    また、質問させて頂くこともあろうかと思いますが、よろしくお願い申し上げ ます。
    -------------------------------------------------------------------------

    657. 炭素繊維の繊維方向と垂直の物性値

    Date: Thu, 20 Oct 2005 10:49:07 +0900
    J機構 のAと申します。(申し訳ありませんが法人名、氏名も匿名でお願いします)

    この度初めて質問させて頂きます。

     業務の都合でCFRPの強化繊維である炭素繊維の物性を調査しています。
     大手メーカーのカタログを見たり、一般の書籍を色々見る限りでは炭素繊維の物性 (機械的性質)は繊維方向の強度、弾性率、伸び、密度程度しか開示されていませ ん。
     しかし、複合則で長繊維型一方向強化複合材の物性を推定したりする場合、マト リックスの物性と強化繊維の繊維方向物性しかなければ、一方向材の繊維配向方向の みの物性しか求めることができません。
     確かに、目的とする材料の試験片を作って実測すれば良いのですが、様々な組み合 わせを検討するにはかなり手間がかかると思います。
     想像するに、上述のような材料試験片から得られたコンポジットの物性をベースに 複合則から逆算して推定しているのではないかと思います。
     しかし、実際どのようにして推定しているのか具体的な方法がわかりません。

     とりとめの無い質問となってしまいましたので整理しますと、
     ①炭素繊維等の複合材料用強化繊維の繊維方向以外の物性(繊維直角方向の弾性 率、ポアソン比、線膨張係数)を知る(求める)ためにはどうすればよいのか。
     ②また、炭素繊維の繊維方向以外の物性(繊維直角方向の弾性率、ポアソン比、線 膨張係数等々)を測定した論文、文献、図書等をご存知でしたら教えて頂きたい。

     宜しくお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Oct 2005 13:39:18 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     まったくの専門違いなので、きちんとしたお答えができませんが、一般論で私の考えを述べます。
    >  ①炭素繊維等の複合材料用強化繊維の繊維方向以外の物性(繊維直角方向の弾性
    > 率、ポアソン比、線膨張係数)を知る(求める)ためにはどうすればよいのか。
    ・繊維方向に直角な方向の物性は、繊維がどのような密度で並んでいる か、繊維と繊維との結合があるのか、絡んでいたり枝分かれしたりして いるか、など多くの場合が考えられますので、一般論で論じることはで きないと思います。やはり一つ一つの場合について、実測するほかはな いのではないでしょうか。

    >  ②また、炭素繊維の繊維方向以外の物性(繊維直角方向の弾性率、ポアソン比、線
    > 膨張係数等々)を測定した論文、文献、図書等をご存知でしたら教えて頂きたい。
    http://www.devicelink.com/mddi/archive/01/06/005.htmlのTable 1に
    物性      平行  垂直
    引っ張り強度 300 12.5(ksi)
    引っ張り弾性率 20 1.5 (msi)
    曲げ強度 290 20 (ksi)
    曲げ弾性率 18.1 1.3(msi)
    熱膨張係数 .15 x 10-6 17 x 10-6 (in./in./°F)
    という数値がでています。参考まで。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Oct 2005 16:03:59 +0900
    Q2: 佐藤先生
     余りに早い回答を頂戴し恐縮です。
     しかし残念ながら、頂戴した回答は私の質問の趣旨とは異なるような気がします。
     私が知りたかったのはコンポジット(CFRP)としての繊維直角方向の物性では無 く、炭素繊維自身の繊維直角方向の物性はどうしたら求められるのかが知りたかった 訳です。
     今回ご教示頂いた内容は一方向強化型の複合材料の強化繊維配向方向の直角方向物 性のことと思われます。
     提示頂いた参考資料もPEEK樹脂をマトリックスとした一方向炭素繊維強化型複合材 料の物性と思われます。
     このような複合材料としての物性評価は一般的によくやられているようですが、繊 維自体の全方位(特に繊維直角方向)の物性に言及している文献や図書は見つけられ ませんでした。

     くどくどと質問をしてしまった結果誤解を与えてしまったこと、お詫び申し上げま す。
     しつこいようですが、再度繊維自体の物性に関して何かヒントでも結構ですので、 ご教示頂ければ幸いです。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 20 Oct 2005 17:24:10 +0900
    A2: A様、佐藤勝昭です。
     専門外のためと、会議にでる直前でじっくり考える時間がなくピント はずれのお答えをして申しわけありませんでした。
     炭素繊維自身の繊維垂直方向の物性は、複合材料にして測定し、繊維 方向の物性値も利用して、あるモデルに従って推測するしかないのでは ないでしょうか。直接的には、顕微鏡下で何らかの応力を横方向に加え てそれによるひずみを顕微鏡観察する方法もあろうかと存じますが、極 めて難しい作業ではないでしょうか。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Oct 2005 09:56:11 +0900
    AA: 佐藤先生
     またまた、お忙しい中早速のご回答恐縮です。
     やはり、繊維物性の直接的測定は難しい(又は現実的ではない)と言うことが分か りましたので、今後の調査検討を進める上で方針の絞込みができました。
     有り難うございました。
    -----------------------------------------------------------------------

    658. 金属の誘電率の温度依存性

    Date: Fri, 21 Oct 2005 21:00:18 +0900
    Q: To:東京農工大学 佐藤勝昭先生

    はじめまして、N社のOと申します。
    (恐縮ですが社名・氏名は匿名でお願い致します。) 半導体デバイスの研究をしており、 日頃から先生のHPを参考にさせて頂いております。

    金属の誘電率の温度依存性について教えて頂きたくメール致しました。
    以前にHPの中で半導体の誘電率の温度依存性の話の中で、 バンドギャップの温度依存性が消光係数の変化に寄与するという解説が ありましたが、金属の場合はどのように考えたら良いのでしょうか?

    また、もし金属の誘電率の温度変化が載っているハンドブック等を ご存知でしたら教えて頂けないでしょうか?
    私が自分で調べた限りでは見つけられませんでした。

    お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 22 Oct 2005 00:24:10 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&A#480に書きましたように、金属の自由電子による誘電率は、 Drudeの式によって、
    ε'=1-ωp^2/(ω^2+1/τ^2)
    ε"=ωp^2/ωτ(ω^2+1/τ^2)
    で与えられます。
    ωp^2=ne^2/mε0ですが、金属ではキャリア密度nは温度変化しないのでωpも温度変化し ません。したがって、εの温度変化が起きるとすれば、キャリアの寿命τを通じてしか ありません。
    高温ではτはT^(-3/2)に比例するのでε"はT^(3/2)にほぼ比例して増加します。  金属の誘電率には、自由電子によるものと、バンド間遷移によるものがあります。 半導体と異なり、バンドギャップがないので、伝導帯のEf(フェルミ準位)以下の状 態から、Ef以上にある状態への遷移なので連続しています。また、キャリア数が温度 変化しないのでEfは殆ど移動しません。従って、半導体と違い大きな温度変化はない と思います。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 25 Oct 2005 19:20:49 +0900 Q2: To:東京農工大学 佐藤勝昭先生 N社のOです。(恐縮ですが社名・氏名は匿名でお願い致します。) 明快な御回答ありがとうございました。 以前のQ&Aに同じ質問がないか調べはしたのですが、 一部重複になってしまい申し訳ありませんでした。 重ねての質問よろしいでしょうか。 1.「高温ではτはT^(-3/2)に比例」とのことですが、
    これはフォノン密度がTに比例し、電子速度がT^(1/2)に比例するためだと思うのですが、 たとえば室温はここでいう「高温」に相当し、 この近似が成立すると考えて良いのでしょうか?

    2.「ε"はT^(3/2)にほぼ比例」の部分について、
    これはw^2と比較して1/τ^2が十分小さいということだと思いますが、
    たとえば室温の金、銀、銅、アルミではτはどのぐらいの値になるのでしょうか?
    Landolt-Boernsteinを会社で参照することができなかったので、
    厚かましいお願いですが、金、銀、銅、アルミにおけるτ,ωpの値を
    教えて頂けると幸いです。

    お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 25 Oct 2005 20:34:36 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     1.おたずねの件、室温は「高温」の場合に相当します。
     2.金、銀、銅のτは10^-14[sec]のオーダーです。
       キャリア数から計算した(真の)ωpは、9eV位でしょう。
    現実には#212に書いたように、ハイブリッドプラズマとなっています。
    Auでは2.2eV付近、Cuでは2eV付近、Agでは3eV付近でバンド間遷移が始
    まり、その結果、見かけのプラズマ周波数がほぼその付近のエネルギー
    に来るのです。 eVを周波数[Hz]に直すには、この値に2.4×10^14をか
    けます。ω(角周波数)に直すには、さらに2πをかけてください。
    (このことは、#194の答えにも書いてあります。)
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 31 Oct 2005 09:44:12 +0900
    AA:東京農工大学 佐藤勝昭先生
    N社のOです。
    お忙しい中、解説して下さり本当にありがとうございました。
    自分でも色々と調べてみようと思います。
    失礼致します。
    ----------------------------------------------------------------------------

    659. 金属表面の酸化による変化

    Date: Thu, 20 Oct 2005 14:25:04 +0900
    Q: はじめまして,K大学機械工学科学部4年のSと申します.
    HPを拝見いたしまして,答えられる範囲でお答え頂けないかと思います.
    なお匿名でお願いいたします. 金属を高温にした状態でのピーニング処理による研究を行っているのですが, その際の金属の酸化によって表面に起こる変化について教えていただけたらと思 います.

    具体的には,
    Ti-6Al-4V合金をβ変態点以上(1050度)まで加熱し,その後空冷し試験片の表面 から深さ方向に元素分析を行ったところ,表面近傍(0.5μm付近)でAlのピーク が現れ,その後は検出できずしばらくするとまた現れるという変化を示しまし た.

    0~1μmまでが酸化皮膜で,その後にまた検出されだすのは基材になったからだ ということだろうと思うのですが,酸化皮膜中の0.3μm付近でAlのピークが見ら れるのがいまいちよくわかりません.他のAl含有合金においてもこれと同じよう に表面近傍にAlのピークが現れるということがあるので,おそらく酸化のしやす さの違い(イオン化傾向?)ではないかと思ったのですが,それだとTiの方が酸 化はしやすいらしく,腑に落ちない感じになります.また同様に 900度まで加熱 し,空冷したものではこのようなAlのピークは現れませんでした.このことから もイオン化傾向では説明がつかないわけで,どのような現象が関係しているのか 教えていただきたいと思います.

    化学系のことに関しては周囲もそれほど詳しいわけではないので,お忙しいとは 思いますがお答えいただければと思います.
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Oct 2005 01:16:27 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
     酸化物の出来やすさは,イオン化傾向では分かりません。酸化物の生成のエンタルピー ΔHfからある程度判定できます。AlのΔHfは-1669.8kJ/mol、これに対しTiOのΔHfは- 518kJ/molです。#324「酸化しない金属」の項に書きましたが、ΔHfは、25℃におい て、元素の安定な形態から1モルの化合物(今の場合は酸化物)が形成されるに要するエ ンタルピー変化に等しいとされます。金属の酸化の生成熱は負で、exothermal(発熱反 応)であることがわかります。つまり、酸化して熱を出す(燃える)のです。マイナスが 大きいほど酸化しやすいのです。従って、チタンよりアルミの方が酸化物を作りやすい のです。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 21 Oct 2005 20:14:17 +0900
    Q2: 返信ありがとうございます。
    ちなみにそういった種々の金属や化合物の生成エンタルピーなどの物性値はどの ような分野の参考書にでているのでしょうか?他の酸化物などについても調べた いと思うのですが、文献などよりも計算から導くものですか?
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 22 Oct 2005 00:59:52 +0900
    A2: S君、佐藤勝昭です。
    化学便覧など化学系のハンドブックに載っていると思います。
    また、Al2O3などは理科年表にも載っています。
    生成エンタルピーΔHfについての解説は、(英語ですが)
    http://www.science.uwaterloo.ca/~cchieh/cact/c120/chemener.html
    を読んでご覧なさい。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 22 Oct 2005 09:19:25 +0900
    AA: ありがとうございます.
    化学系は1年のころにやったきりで深くまでやらなかったために今に響いてい て,後悔してばかりです.
    いろいろと参考になりました.お忙しい中ありがとうございました.
    -----------------------------------------------------------------------------

    660. 熱電対による温度測定のデータのばらつき

    Date: Mon, 24 Oct 2005 03:46:31 +0900
    はじめまして。T高校2年のBと申します。匿名でお願いします。
    WEBで調べているうちにたどり着きました。

     熱電対というもので温度を測りました。電圧計と起電力を温度表示してくれるもの で、マイナスの温度から自然放置で温度をメモして行ったのですが一つ困ることがあ りました。電圧計で表示される熱起電力は一方向に数字が進んでいくのですが、温度 表示の方では温度が上がったり下がったりします。例えば2℃になったときに電圧計 に表示される電圧をメモするのですが、温度が5℃になったり、-2℃になったりと 2℃のところをなんどか行ったり来たりするのです。
    熱電対は温度差によって起電力が一つに決まると教わったのですが、同じ温度差で読 み取る電圧が沢山あってこまりました。この場合どうやって起電力を決めるのがいい のでしょうか?平均ですか?僕は、温度表示をしてくれる機械のサンプリング周期を 0.5秒だったので、10秒にしてやってみました。サンプリング周期というのは適当に 決めてよいものなのでしょうか?何かルールのようなものがあるようでしたら教えて 欲しいです。

    よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 24 Oct 2005 11:56:11 +0900
    A: B君、佐藤勝昭です。
     通常、熱電対から出力される電圧は数mVと小さいので、様々なノイズ が乗っています。電圧計は、応答が遅いので、そのようなノイズを平均 化して表示しています。しかし、応答の早い測定装置で測定し、ディジ タル表示しますと、データがばらついてしまうのです。
     これを避けるには、ばらついたディジタル温度計データを早いサンプ リング速度で全部コンピュータに取り込み移動平均などの方法でデータ を平滑化方法と、積分型のディジタル温度計を使って、十分長い積分時 間を設定して、データを表示する方法があります。
     単にサンプリング周期を変えても、データ取り込み時間が一定であれ ば、やはりばらついた値が出るはずです。もちろん、メータによっては サンプリング時間の設定を変えると、データ積分時間も変えてくれるの もありますから、マニュアルをよく読んでください。
     高校2年なら、指導教員と相談して、コンピュータに簡単なデータ収 集ボードを取り付けて、ディジタル温度計のディジタル出力を取り込む インターフェースを作ってみてはいかがでしょうか。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Oct 2005 06:02:13 +0900
    Q2:回答ありがとうございました。
    マニュアルを見た限りでは積分型のディジタル温度計ではないようでした。平滑化方 法ですがタイムリーに温度と起電力と電流と電圧を手書きでメモしていたので後で処 理となるとちょっと無理のようです。そうなるとパソコンで処理・・・。簡単な実験 なのに、測定するまでの道のりが長いので、理系の人は大変だなぁと思いました。
    他に一人でできる方法はないでしょうか?
    これからもどうぞよろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Oct 2005 10:43:16 +0900
    A2:B君、佐藤勝昭です。
     まずは、測定時にノイズを拾わないことが大切です。
    熱電対の2本の線が広く離れていると、ループアンテナになって、蛍光 灯器具や冷蔵庫のモーターやいろいろの電磁ノイズを拾います。熱電対 の2本の線それぞれに絶縁のチューブをかぶせ捩り合わせてツイストペ アにすることでかなりノイズを減らせます。
    また、そのツイストペア全体をさらに網線でシールドし、アースすると もっとノイズを減らせます。
     あと、メータの入力端子の両端に100μF程度のコンデンサを並列に入 れるとノイズが減るかも知れません。ちょっと試してみてください。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 30 Oct 2005 06:56:57 +0900
    AA: 何度も回答ありがとうございました。
    アドバイス通り頑張ってみるとかなり良い感じです。
    身の回りのものがこんなにきいているとはちょっと驚きでした。
    親切にどうもありがとうございました。

    ----------------------------------------------------------------------------

    661. ドルーデ則、バンド間遷移と貴金属の色

    Date: Sun, 23 Oct 2005 22:13:34 +0900 (JST)
    Q: ”金色の石に魅せられて”を拝見させていただいた高知県在住の者(Y社S)です。
    疑問点がひとつあります。ドルーデの反射則に従って選択反射され貴金属の色が決まる ということですが、銅はどうなるのでしょうか。これは4sと3d軌道の遷移による色 なのでしょうか。また、貴金属の色にはエネルギーバンド間の遷移は関係していないの でしょうか。
    ご回答いただければ幸いです。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 24 Oct 2005 00:17:27 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
    なんでもQ&Aの
    #212「金属の吸収端とプラズマ振動数」をお読み下さい。
    Cu,Au,Agの色の元になっているプラズマ振動は、正確にはバンド間遷移 の影響を受けたhybrid plasmaによるものです。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 24 Oct 2005 07:08:49 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭先生
    早速のご返信ありがとうございます。Q&A212を読んで考えてみます。
    ---------------------------------------------------------------------------

    662. シリコンインゴットのρb値の計算法

    Date: Tue, 25 Oct 2005 00:35:52 +0900
    Q: 佐藤様
    A社のYと申します。(匿名でお願いします。)
    初めてメールいたします。私は太陽電池の製造に携わっております。
    いろいろな分野からのさまざまな質問について明解にご教示されている HPを非常に興味深く拝見させていただきました。私もご教示願えたらと思い、 メールせていただきました。

    質問ですが
    Siインゴットを作製する際にρb値をいくら狙いにするか決めるのですが、 このρb値の計算式はどのようにして求めることができますか?ブロックの 頭部と底部ではρb値の違いが出るのはB等の偏析によるものであるというのは 参考書等に載っていましたが、実際にρbを計算の仕方というものがよくわかりません。

    例えば、100kgのPoly Si(1000Ωcm)にB(20g)ドープした場合はブロックの底では ρb値はどのようになるのでしょうか?数式を教えてください。

    大学時代は電気、特に通信関係を専攻したのでこうした上記の様な問いは苦手でした。
    私の疑問にお答えいただけたら幸いです。よろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Oct 2005 12:34:15 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     私は専門外なので、シリコンなど融液成長の専門家である九州大学の 柿本浩一教授(kakimoto@riam.kyushu-u.ac.jp)にメールし て教えていただきました。参考にしてください。
    =====================================================================
     佐藤先生
     メール拝受いたしました。
     現在、私のグループでは太陽電池用シリコンの凝固プロセスを融解、凝
     固、冷却まですべてのプロセスがよそくできるコードを構築しています。
     来年春の応物のシンポジウムで発表いたします。
     簡単に不純物濃度を知るには下記の式を使えば半定量的に求めることが
     可能です。

     C(z)=C0(1-z/L)(k-1)

     ここで、C(z):高さzでの不純物濃度
        C0:初期不純物濃度
        L:メルト深さ
        k:偏析係数

     この濃度をもとにキャリアー濃度を計算すれば、キャリア濃度の高さ依
     存性がでます。
      もっとも、実際の結晶では酸素とのペアーによるキャリアキラー等が発
     生しますので、あまり頼りになる式ではありませんが。実際の結晶は凝
     固速度や界面形状、対流によって半径方向の分布も不均一になります
    。   あくまでも、目安としての値です。
     柿本浩一
    --------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Oct 2005 23:18:22 +0900
    Q2: 佐藤様

    早速のご返答ありがとうございます。
    参考にさせていただきます。
    お忙しい中ご回答いただきありがとうございました。

    お手数ですがもう一件お尋ねしたいことがあります。

    太陽電池ということでSiという物質についての物性であるとかその他 色々と知りたく、先日、「半導体シリコン結晶工学  志村 忠夫 著」という本を購入して 勉強しておりますが、何か佐藤様のお勧めの参考書・HPなどはございますでしょうか?
    このような質問で恐縮ですがお答えいただけたら幸いです。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Oct 2005 11:03:39 +0900
    A2: A様、佐藤勝昭です。
     シリコンの結晶成長に関しては、培風館から出ているシリーズものの中にある 信州大の干川先生の書かれた「バルク結晶成長技術」がおすすめです。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 27 Oct 2005 20:58:59 +0900
    AA: 佐藤様
    お忙しい中このような質問にもご回答ありがとうございます。

    早速、教えていただいた参考書を書店で探してみます。
    ----------------------------------------------------------------

    663. 田んぼのひび割れ

    Date: Thu, 20 Oct 2005 18:20:22 +0900 Q: いつも楽しく『物性…』を見させて頂いております。
    HPを見てからの質問です。
    N社のSです。所属及び名前は匿名にてよろしくお願いいたします。
    先日『水の最大密度』について質問させて頂きましたが、さらに調べているうちに興 味を持ったことがあります。
    早速それについて質問させて頂きます。
    田んぼ等を見ていると水が干からびて罅割れています。この罅割れのパターン(大き さや形状)は一体何に依存して決まっているのでしょうか?
    私が考えていることは、溶質(土)と溶媒(水)の構造、極性及び乾燥条件等が関係 していると思うのですが…。
    この手の論文等を御存知でしたらご紹介頂けないでしょうか?
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Oct 2005 12:25:38 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     おたずねの件、農学部の島田清先生(農業土木)に聞きましたところ、 次のようなお答えでした。
     ------------------------------------------------------------
     「田んぼのひび割れ」について,ご返事が遅くなって失礼しました.
     東京農工大学農学部の加藤誠先生が「土のはなしII」:技報堂出版
     1979で「土のひび割れ」という章を執筆しておられますので、参考にし
     てください。
     昔,何かの本で,寺田寅彦だったかどうか,田圃のひびわれについて
     書いていたような気がするのですが,その関係の本が倉庫の段ボールの
     中なので,すぐ見つけられません.
     試みに,インターネットを検索してみましたら,いくつかのページに
     記事がありましたので,参考に掲げておきます.
     http://www.granular.com/ISCM/971130.html
     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150502870/250-6812488- 8669841
     キリンのまだらは結局,粘土のひびわれとは異なる原理のようですが,
     メロンのひびは田圃のひびわれと同じ理屈と思います.しかし,この方
     面のことは,まったく不案内です.
     -------------------------------------------------------------
    ご参考にしてください。
    ------------------------------------------------------------------

    664. シロキサンの物質(金属・樹脂)に対する吸着率

    Date: Tue, 25 Oct 2005 16:24:52 +0900
    Q: はじめまして。P社 Iと申します。匿名でお願いします。
    WEBで調べているうちにたどり着きました。

    質問事項ですが、ガス(例:シロキサン)の物質(金属・樹脂)に対するの吸着率に ついて、データがないか調べてみたのですが、いいデータがありません。
    ガス種類&物質(金属・樹脂)の極性によって、違いはあるかと思いますが 例えば、シロキサンガス(シリコンオイル発生)の場合、
    金属(Ag、Cu、Au)や樹脂(PBT、ナイロン、ABS)のに対して ガス吸着率はどのくらいになるのでしょうか?
    文献等ご存知であれば、よろしくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 25 Oct 2005 21:05:46 +0900
    A: I様、佐藤勝昭です。
     私は、全くこの方面の専門家ではありません。
     シロキサンの金属への吸着の研究は、Univ. Alabama in Huntsville のMaterial Science Centerで研究されており、Weimerさんが、
    "Adsorption of Siloxane Adhesion Promoters on Metals", J. J. Weimer, R. Brewster, and S. Mishra
    "Fundamental Characterization of Siloxane Adhesion Promoters", S. Mishra and J. J. Weimer
    などを発表しています。学会発表らしく、論文にはなっていないようで すが、jjweimer@matsci.uah.eduにメールしてコンタクトをとられては いかがでしょうか?
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Oct 2005 09:39:59 +0900
    AA: 佐藤勝昭殿
     P社のIです。
     早速のお返事どうもありがとう御座いました。
     シロキサンガスのシリカ生成の文献は、いろいろあるのですが
     ガス吸着率については、色々調べてみたのですが
     見当たりませんでした。(↑車メーカーからの質問事項)
     お返事内容、参考にさせて頂きます。
     分析機器メーカーetc にも、問い合わせてみたいと思います。
     HP色々参考になっております。
     また、よろしくお願い致します。
    ----------------------------------------------------------------------

    665. ITOにおける格子定数のスズ濃度依存性

    Date: Wed, 26 Oct 2005 17:00:13 +0900
    Q: はじめまして。
    T大学3年のRと申します。
    申し訳ございませんが、匿名でお願い致します。
    HPを見て質問をさせていただきたいと思い、メールさせていただきました。

    学校で、
    「酸化スズを添加した酸化インジウム焼結体の結晶構造と電気特性」
    という実験を行いました。
    実験の内容は、
    酸化インジウムに酸化スズを数wt%添加(実験では0・1・2・5・8wt%添加)し、
    焼結後、X線回折法による結晶構造の同定、格子定数の算出及び電気伝導度測定を行い、

    ITOに対する酸化スズの添加量がその結晶構造および電気伝導度に及ぼす影響について検討する、 というものでした。
    格子定数と酸化スズの添加量依存性について、理論的にはどう変化するのでしょうか?

    実験では、各酸化スズ添加量の格子定数に変化はほとんど見られませんでした。
    (参考までに、0・1・8wt%は10.14Å、2・5wt%は10.13Åでした。)

    お忙しいとは思いますが、よろしくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Oct 2005 19:42:30 +0900
    A: Rさん、佐藤勝昭です。
     学生実験の不明部分は、指導教員に相談するべきもので、他大学の教 員に聞くのは本来は禁じ手です。ヒントを差し上げましょう。
     貴大学のHPに出ているITOの実験テキストによれば、In2O3とSnO2を混合し 焼成し、X線回折の結果から格子定数を求め、それと、4端子法で測定した 導電率との関係を調べることになっています。
     私の調べたところでは、
    O P Agnihotri et al : J. Phys. D: Appl. Phys. 11 643-647(1978)
    に、「In2O3にSnを加えていくと、In3+がSn4+で置き換わるので格 子定数が縮んでいく」と書かれています。(図書館で調べてください)
     しかし、あなたの結果では、格子定数にほとんど違いがなかったとい うことです。おそらく、乳鉢での混合が不十分であったか、焼成条件が 悪く、InをSnがきちんと置換せず、SnO2が偏析してしまったのではない かと存じます。おそらく、よく調べると、X線のチャートには、ITOに同 定できない結晶相が混じっているのではないでしょうか。
     テキストには、SnO2が混じっていないか調べるように書かれています。
    「その他、この4 本のピーク以外に回折ピークが見られるかどうか(特 に33.9o付近に未反応のSnO2 に帰属されるピークが出現する場合がある) 確認し、見られた場合それがSnO2 によるものと仮定して、SnO2 のどの ような面指数(hkl)に帰属されるピークであるか同定する。」
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 26 Oct 2005 20:47:35 +0900
    AA: こんばんは。
    T大学のRです。
    (匿名希望です。)
    早速のご返答ありがとうございました。
    図書館等でもう少し調べて、先生にも質問してみます。
    自分の担当した酸化スズ添加量1wt%のX線には、 未反応酸化スズのピークは見られなかったのですが、 他のデータには出ているかもしれません。
    自分の手元には他のX線測定結果がないので、明日他の人にも聞いてみます。
    また何かありましたら、よろしくお願い致します。
    ありがとうございました!
    ------------------------------------------------------------------

    666. 水の粘性の温度変化

    Date: Fri, 28 Oct 2005 22:07:06 +0900
    Q: 私は、江嶋 と言い。透析クリニックで働くスタッフです。職業は臨床工学技士で す。私どもは、水から逆浸透装置を使用し、RO水をつくっているのですが水温により、RO 水の伝導度が変わります。これは、温度によるRO膜の変化ではないらしく、水の粘性 と圧力との関係だそうです。しかし、明確な温度による水の粘性の変化が分かりませ ん。ぶしつけではありますが、よろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 31 Oct 2005 10:18:30 +0900
    A: 江嶋様、佐藤勝昭です。
     水の粘性の温度変化は以下の通りです。
    温度℃粘性(ミリポワズ)
    017.94
    1013.10
    2010.09
    308.00
    406.54
    新版物理定数表(朝倉書店1969)p.30から抜粋。
    間の温度については内挿してください。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 31 Oct 2005 16:45:04 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    大変ありがとうございました。この件を参考にしていきたいと思います。
    ありがとうございました。
    ----------------------------------------------------------------------

    667. 界面電荷の発生原因

    Date: Mon, 31 Oct 2005 16:09:09 +0900
    Q: 私は都立大学4年電気工学科の尾崎です。
    ホームページをみてメールをしています。
    界面電荷Qssの発生原因がよく分かりません。
    お願いします。
    ----------------------------------------------------------------------- Date: Mon, 31 Oct 2005 16:49:53 +0900
    A: 尾崎君、佐藤勝昭です。
     一般論でお答えします。一般に異種の物質の界面では、原子同士の結 合が切れたり変化したりするので、界面の部分に界面準位が生じ、フェ ルミ準位以下の界面準位には電荷がトラップされます。これが界面電荷 の原因です。
    -----------------------------------------------------------------------

    668. ランダウ準位から電子を取り出すエネルギー

    Date: Sat, 29 Oct 2005 01:06:51 +0900
    Q1: はじめまして。K大学1年の伊藤と申します。
    (大学名だけ伏せてください。よろしくお願いします。)
    将来は半導体工学の仕事に携わりたいと思っており、自主的に勉強しています。
    今回、いろいろと調べたのですがどうしても解決できない疑問点があり、メールさ せていただきました。
    質問は
    「状態密度が小さいところから電子を一つ取り出す時に必要なエネルギーは、 状態密度が大きいところから電子を一つ取り出す時に必要なエネルギーより も大きいか小さいか?」
    というものです。半導体関連の参考書に読者への課題として書かれていたものな のですが、どうしてもわかりません。状態密度についてしっかりと理解していれば、 直感的にすぐに答えられるものなのでしょうか?

    勉強不足で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 29 Oct 2005 01:50:07 +0900
    A1: 伊藤君、佐藤勝昭です。
     1年生なのに、半導体の勉強とは偉いですね。
    あなたの読まれている教科書がどのような文脈の中でこのような質問をしているのか分 かりませんが、価電子帯から電子1つを取り出し取り除くためのエネルギーは、磁性体の ような電子相関の強い系でない限り、状態密度が高かろうが低かろうが、その状態のエ ネルギーと真空準位のエネルギー差で決まり、状態密度によっては変わらないでしょ う。(状態密度などを理解するには、波数kの空間におけるバンド構造の理解が前提に なっています。その為には、量子力学による電子の波動関数の理解が必要です。1年生で は、このことの完全な理解は無理なのではないかと存じます。)
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 29 Oct 2005 14:59:34 +0900
    Q2: 佐藤先生、ありがとうございます。伊藤です。
    ご回答、ありがとうございます。
    「量子力学」、「物性物理」については勉強しています。
    さて、質問させていただいたことですが、説明不足で申し訳ありませんでした。
    詳しく説明しますと
    磁場をかけていくと状態密度はランダウ準位をつくります。このとき、
    フェルミ面が状態密度の極小(谷)となっているときに電子を一つ取り出す時に 必要なエネルギーと、
    フェルミ面が状態密度の極大(山)となっているときに電子を一つ取り出す時に 必要なエネルギーとでは
    どちらが大きいか?
    という文脈でした。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 30 Oct 2005 00:34:21 +0900
    伊藤君、佐藤勝昭です。
     ランダウレベルの話だったのですね。私はランダウレベルを深く追求したこと がないので、正確にお答えできる自信がありません。

     私が電子相関のある場合といったのは、磁性体などで局在したn電子系から1 つの電子を取り出すとn-1電子系になるときに電子間クーロン相互作用(スピン を考えると交換相互作用も)が変化するので、1電子のエネルギー準位図におけ るエネルギー差だけを考えては説明できないという場合です。まさに、伊藤君が 指摘している問題です。わたしは、ランダウ準位の状態密度と電子を取り出すた めのエネルギーの関係の問題は、もっとシンプルに考えてもよいと思うのです。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 31 Oct 2005 20:40:44 +0900
    伊藤君、佐藤勝昭です。
     農工大の物理システム工学科で半導体を教育研究している谷俊朗教授 に意見を聞きました。その答えです。
     -------------------------------------------------------------
     さて私も,元の質問の意味とその背景がよく解りません。何のために, 件のエネルギーの大小を比較するのかが判ると,答えようが有りそうに 思います。基本的には佐藤先生と同意見です。
     そこで,ランダウ準位の直感的な説明と,それによって生じるであろ う現象を述べてみます。
     直接の回答にはならないかも知れないが,量子力学や物性物理に対す る何らかのイメージを描くのにはお役に立てるかも知れません。但し, やはり質問者の知識レベルが気になります。
      
     自由に運動している電子は,そのままでは互いに衝突でもしない限り, 直線的に運動し続けますが,磁場Bがかかると,速度と磁場の両方に垂 直なローレンツ力を受けて軌道が変わります。例えば,Bをz方向とし てx-y面内の運動成分を考えると,磁場からの力はx-y面内にあって面内 の運動方向に垂直ですから仕事をせず,電子のエネルギーは変らず,従 って面内に円軌道を描くようになります。これをサイクロトロン運動と 言い,その円軌道はサイクロトロン軌道で,その半径をサイクロトロン 半径と言います。サイクロトロン半径はBの逆数の平方根に比例し,磁 場Bが強くなるほど小さくなります。
      
     ここまでは古典的に,電磁気学で考えたものです。z方向の運動成分 は,磁場から何も力を受けないので,取り敢えずそのままにしておきま す。あるいは,暫くx-y面内だけに動き回っている電子を考えてもい い。
     おさらいをすると,充分大きな磁場を用意できて,例えば時刻t=0で 瞬間的に電子に印加できるとします。直線的に走ってきた電子は,t=0 で磁場がかかった瞬間から円軌道に移り,あたかも山菜のゼンマイのよ うに,t>0ではその場にとどまってサイクロトロン半径でくるくるとあ る点の周りを回るようになる。
      
     ところで電子は,実際には量子力学的に扱うべき粒子です。そのこと により特徴的に起こる変化は,電子は何らかの形で限られた空間に捉え られると,そのエネルギーが離散的になることです。例えば,原子では 原子核の周りに電子がクーロン引力で捉えられ,離散的なエネルギー状 態を取るようになり,その結果周期律が生じ,発光・吸収スペクトルが 離散的な線スペクトルになります。半導体で聞いたことがあるかもしれ ない量子井戸や量子ドットなどの微細構造の中でも,同じです。
      
     磁場をかけた場合はどうかというと,実は同じ事が起こります。サイ クロトロン運動をすると言うことは,その大きさの円形の空間に電子を 閉じ込めたと同じ事と思って下さい。上記で,サイクロトロン半径に電 子の初期速度が入っていないのがポイントで,電子の初速度(=初期の エネルギー)に依らず一定の軌道を描きます。ということは,エネルギ ーが“一定の大きさ”に押さえ込まれると思ってよい。これがいわゆる 量子化です。なぜこんな事が起こるかというと,量子力学では電子に波 動の性質も持たせます。ぐるりと円軌道を描いたときに,波の腹と谷が 上手く会わないと,互いに打ち消し有って消えてしまいます。そのつじ つまがあって,定在波となったときのみ,安定な軌道とエネルギーを保 ち得ると考えます。これがランダウ準位という概念を,直感的にみたも のです。
      
     全部が一つのエネルギーに纏まるわけではなく,ぐるりとまわった円 周の長さが波長の整数倍なら成り立ち得るので,ランダウ準位は一つで はなく,エネルギー的にとびとびの離散的な値を取ります。そのエネル ギー間隔は磁場の大きさに比例して大きくなります。
      
     さて,状態密度という概念をどういう意味で使われているかが,私に は今一つ理解出来ないので,もう少しこの説明で展開してみます。見て きたような言い方をすると,一つのランダウ準位に存在し得る電子の数 は,いわばx-y面を円軌道の輪で重なりなく埋め尽くせるまでは入りま す。磁場Bが大きくなるとサイクロトロン半径は小さくなるので,それ がけ沢山の輪で埋められるようになる。これは各々のランダウ準位の縮 重度と言われるものです。これを状態密度でいえば,状態密度はランダ ウ準位の所にスパイク状に集中している,と言うことになります。実際 には,例えば半導体の中の電子はz方向にも運動していて,取り敢えず こちらは自由に動いているので,量子化は電子の状態のx,y2次元に ついてだけ生じ,z方向については生じません。そのため,磁場をかけ たときの物性の変化はスパイク状にはなりませんが,それでもある種の 周期性が表れます。これを,状態密度の山(谷)と言われたのであれば そうだと思います。
      
     フェルミ準位ないしフェルミ面は,金属のように自由に動き回れる沢 山の電子がいる場合に,考えやすい概念です。つまり,そのエネルギー まで電子がぎっしり詰まっていて,それ以上の状態は空いている。フェ ルミ面というのは,運動量空間でフェルミエネルギーを持つ点をつない でできる仮想的な面で,文字通り面であり,その内側の状態は電子が詰 まっていて,外側の状態には電子がいないようなものです。
      
     磁場がないときは電子の全エネルギーは一定の値ですが,磁場がかか って有る程度大きくなり,ランダウ準位が形成されるようになると,電 子の状態は上記のように2次元的に量子化されるので,エネルギー的に 下から電子を詰めていくと,一番上のエネルギー(即ち,フェルミエネ ルギー)は磁場と共に変化するように見えます。正確には,磁場Bの逆 数に対して概ね周期的に見えます。別の表現でいえば,磁場を増加させ てフェルミ面をランダウ準位が横切るたびに,電子の全エネルギーはの こぎり歯状に変化します。
      
     電子を一つフェルミ面から真空中に(つまり,金属の外に)取り出す エネルギーを仕事関数といいます。確かに上記に従えば,フェルミ面が 山に近い時には仕事関数が小さく,谷に近いときには仕事関数が大きく 見えると思います。
     質問の趣旨はこれでしたか?
     この様な電子状態の周期的変化が,磁化率に表れるものをド・ハース ‐ファン・アルフェン効果と言います。電気伝導度で見たものを,シュ ブニコフ-ド・ハース効果と言います。どちらも2人の人名で,金属に 特有な現象で,これを用いて磁場の方向も変えることにより,フェルミ 面の形状を知ることが出来ます。
      
     半導体では,大分専門的になりますが,電子が一杯詰まっている価電 子帯と,電子がほとんど空の伝導帯の間に禁制帯(つまり,エネルギー ギャップ)があるので,一寸これまでと状況が変わりますが,ランダウ 準位自体の考え方は同じです。こちらでは,フェルミ面の構造と言うよ りは,電子ないし正孔がいるバンド端でのランダウ準位間の光吸収遷移 や,価電子帯のランダウ準位から伝導帯のランダウ準位へのバンド間遷 移と言われる光物性への効果が興味の対象です。これからは,バンド端 の有効質量などが判ります。半導体物理の勃興期には,多くの実験が多 くの半導体に対してなされ,有効質量が決められました。
      
     質問にある,状態密度が大きいときには周りに電子が沢山いるはず, と言う点について少し述べましょう。質問の考え方は,「状態密度が大 きい=空間的により近くに寄っている」と言うことが正しければ言える と思います。しかし一般的には,状態密度とは,エネルギーEとE+Δ Eの間に取り得る状態の数がD(E)ΔEで表されるときの,D(E)のことを 言うので,そのことが必ずしも正しいかは何とも言えません。
      
     上で述べたランダウ準位の縮重度と言う考え方に,ランダウ軌道の輪 を敷き詰めたという例えをしましたが,これが即電子が側にいる事を意 味するかどうかは,筆者には直ぐには判りません。
      
     少なくとも仕事関数の大小を理解するためには,周りに電子が沢山い るということに直接つなげる必要はない様に思います。多電子系におけ る電子間のクーロン相互作用の問題は,電子相関とも総称され,固体物 理の中では大変重要な問題で,いきなりここに思い至るのはなかなかな ものと思います。私共は,出来るだけ自由で1電子状態の和としてで先 ずは理解しようと考え,それで出来ないときに,電子相関を取り入れて いきます。
      
     磁性体は佐藤先生の言われるように電子相関の強い系の例ですが,こ の説明では,磁性体までは行かず,パウリの常磁性としての話です。  また上記の説明は,この一電子の考え方で,電子がフェルミオンと言 うことだけを使って先ずはやってみたつもりです。もしかしたら,フェ ルミオンという考え方が未知なら,暫くは無視して頂いて構いません。 「下から順番に電子を詰める」というのと同意義です。
    ---------------------------
    というわけで、やはり、君の質問の意味がわからないようです。その教 科書の名前と出版社を紹介してください。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 1 Nov 2005 02:08:24 +0900
    AA: 佐藤先生、お返事ありがとうございます。伊藤です。
    また、詳細なご回答をしていただいた谷先生にも感謝の気持ちで いっぱいです。ほんとうにありがとうございます。

    > 但し,やはり質問者の知識レベルが気になります。

    私の知識レベルとしては、量子力学については、岩波書店「量子力学」原康夫先生 をざっと読みました。 物性物理については丸善「キッテル固体物理学」をわかりそうな章のみをつまみながら 読みました。

    > その教科書の名前と出版社を紹介してください。

    今、手元にないのですぐにお答えすることはできませんが、わかり 次第お知らせいたします。もしかしたら、質問の内容が私の思い 違いだったのかもしれません。そのときはお許しください。

    最近、「電子物性論~物性物理・物質科学のための」(培風館 上村先生・中尾先生) を勉強していて、ランダウ準位のところまできて
    「そういえば以前、そういうようなことが書いてあった本を図書館で  ちらっと読んだことがあったなぁ。電子を引き抜くのに必要なエネ  ルギーの大小がどうこう・・・」
    と思い出し、あれこれ悩んでいた問題です。

    ただ、先生方のお返事を読んでいると、どうやら変な質問をしてい るような気が私自身もしてきました。思い違いの質問をしていたら 申し訳ございません。
    ------------------------------------------------------------------

    669. SiO2へのSbの拡散

    Date: Tue, 1 Nov 2005 22:07:21 +0900
    Q1: 佐藤様
    はじめまして。
    いつもホームページを拝見させて頂いております。 私は、半導体メーカーT社に勤めているHというものですが、 ご質問があります。
    当社では、P型Si基板上に、酸化膜をつけて窓あけを行なった後、SOGをつけて、N+拡散処理 を行なっているのですが、十分に厚い酸化膜(SiO2)を、SOG中のSbが突き抜けてSi上を拡散 することがあるのでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 2 Nov 2005 08:54:23 +0900
    A1:H様、佐藤勝昭です。
     私は、この方面の専門ではありません。一般論で言うと、原子の拡散はプロセスの温度 やSiO2の密度等にも依存します。
    中部大学の内田秀雄先生がご専門ではないかと存じます。
    Elsevierから出ている
    RAPID THERMAL PROCESSING FOR FUTURE SEMICONDUCTOR DEVICES (ed., H.Fukuda)の中に、 次のようなタイトルを見つけました。
    Sb Pile-up at the SiO2/Si Interface during Drive-in Process after Predeposition using SOG Source (T. Ichino, H. Uchida, M. Ichimura, E. Arai).

    古い論文ですが、
    A. H. van Ommen, Diffusion of ion-implanted Sb in SiO2, J. Appl. Phys. 61, [3] (1987) pp.993-997
    も読まれては、いかがでしょう。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 2 Nov 2005 11:57:49 +0900
    Q2: 佐藤様
    迅速なるご回答いただきまして有難うございます。
    早速、文献等を拝見させていただきます。
    重ね重ねのご質問なのですが、SiO2が結晶化する場合、 結晶核となるものにはどのような元素が存在するのでしょうか?
    申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 2 Nov 2005 14:01:33 +0900
    A2:H様、佐藤勝昭です。
     水晶(SiO2)の結晶成長においては、種結晶として水晶を使っています。 アモルファスSiO2が結晶化する場合の核は何らかの元素が核になってい るのではなく、何かのきっかけでアモルファスより安定な結晶相のSiO2 ができて、それが種になって成長するのではないでしょうか。
     SnGeTe系の光相変化ディスク(CDRWなど)では、原子のわずかな displacementで結晶相ができ、成長して行くと考えられておりますから、 必ずしも異種元素が種になる必要はないと思います。
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 11 Nov 2005 20:11:22 +0900
    Q3: 佐藤先生。
    ご教授有難うございました。
    弊社の埋め込み拡散では、P-基盤上にH2、O2中で熱処理することで酸化膜を付け、 パターンニングした後に、Sb(OR)3、エチレンシリケート、IPA混合液であるSb拡散剤を塗布し、 1150~1250℃(N2、O2)中で、熱処理を行ない、Sbを拡散させた時に、 N+層上に、5um位の六角形のSiO2の失透したものが析出します。一般的には、 ローゼットと言われており、Si上の酸化膜中に、析出するもので、SiO2の結晶体の ことと言われています。
    当初Sb拡散剤は、SiO2-Sb2O3系酸化膜であり、それが熱処理中に結晶化してローゼット が発生すると考えていましたが、 それをモデルとすると、SiO2-Sb2O3系酸化膜が結晶化する理由がわかりません。
    私的には、ガラス中に金、銀、銅、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの異種物質 が微細な粒子として存在すると、 ガラスの結晶化はその表面から容易に始まる。
    と文献で読んだことがあるので、何かしらの元素が原因となっていると思うのです が。。。
    SiO2-Sb2O3系の酸化膜の結晶化のモデルはどのようなものがあるのでしょうか?
    お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 14 Nov 2005 02:10:00 +0900 A3: H様、佐藤勝昭です。
    酸化物結晶成長の専門家に伺ったのですが、上記質問は、プロセスの専門家でないと答えられない 高度の問題ではないかということです。申しわけありませんが、プロセス関係の専門家にあたって 見てください。
    ------------------------------------------------------------------------------

    670. FDTD法によるフォトニック結晶の解析

    Date: Sat, 29 Oct 2005 20:13:20 +0900
    Q: 初めまして。T大学M1のNと申します。この度、有限差分時間領域法について、 ご教授願いたくメールさせていただきました。
     先生は専門ではなさそうなので、できればお知り合いでFDTD法について詳し い方を紹介してもらいたいです。
     内容としては、私は2次元FDTD法を用いて、フォトニック結晶の バンド計算をおこないたく、計算領域の境界上にブロッホ型 の周期境界を配慮したいのですが、なかなかうまくできません。私の行った方法 としては、境界に周期的境界条件である式(φ{I +N(i)}=exp{-jk(i)・a(i)}・ φ(i) ,φ;E及びH, I = x , z ) を元に用いることで計算しているのですが、ま ず確認として、自由空間中において、境界にk(i)・a(i)=0の条件を課し、波源を ガウシャンパルスとして入射しているにもかかわらず、ある程度時間ステップが たちますと定在波の様になってしまい、フーリエ変換しますと、パルスに与え た、初期中心波長でピークが出るようになってしまいます。
     また、k(x)・a(x)=π/2,k(z)・a(z)=0等の条件を課すと、うまく計算できませんでした。 なにか問題点があるとすれば何が考えられるでしょうか?私の研究室にはそれについて 行ったことのあるものがおらず、先生方も分からないようです。論文など読んで もいるのですが、周期境界条件がブロッホ型とだけしか記述がありませんでし た。もしよろしければ、何かアドバイスがありましたら、ご教授願えませんで しょうか?
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 30 Oct 2005 01:00:57 +0900
    A: N君、佐藤勝昭です。
     ご指摘のように私は、この道の専門家でないので、よく分かりません。それ で、理論家でフォトニック結晶のバンド計算をやったことにある千葉大の中山隆 史先生にメールをしておきましたので、中山先生からコメントがあれば、お伝え します。なお、
    川上彰二郎監修:フォトニック結晶技術とその応用(技術情報センター)
    の中に、
    第3章 フォトニック結晶の電磁界解析法  大寺康夫
     1 はじめに
     2 FDTD法による2次元無限周期結晶のバンド構造の計算
      2.1 波動方程式の定式化
      2.2 計算手順と注意点
     3 影像パラメータの利用
      3.1 無限周期構造の解析法
      3.2 導波路の解析法
      3.3 変数分離型2次元屈折率構造の解析法
     4 変分表現式の利用
      4.1 変分表現式の説明と特徴
      4.2 Rayleigh-Ritz法
     5 まとめ
    というのがあるので、調べてみてはいかがですか。この本は68000円もする高い 本ですが、図書館にあるかも知れませんね。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 31 Oct 2005 08:16:38 +0900
    Q2: お返事ありがとうございます。
     私の研究室の教官にはフォトニックバンド計算を行ったことがある方がいません でして、いろいろ文献などを読んではいるのですが、行き詰ったのでメールさせ ていただいた次第であります。川上彰二郎監修:フォトニック結晶技術とその応 用(技術情報センター)については手元にあるので、参考にはしております。計 算法は同じように行ってはいるつもりなのですが、うまくいきませんでした。
     千葉大学、中山先生のご紹介ありがとうございます。何かアドバイス等が貰え ましたらご一報願います。お返事ありがとうございました。これからもこちらで は分かりきれないことがありましたら、どうぞよろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    以下は、中山先生からN君への回答です。
    ----------------------------------------------
    Date: Wed, 02 Nov 2005 22:21:41 +0900
    N君(Cc:佐藤先生)
    はじめまして。千葉大学理学部物理学科の中山隆史といいます。
    佐藤先生から、N君のFDTD法についての質問を受け取りました。
    私のところでも、フォトニックバンド計算を行いますが、方法は全く違います。
    また、むしろ電子系のバンド計算を専門にしているものです。
    しかし、Blochの境界条件はもちろん使いますので回答できる箇所もあると思い メールしました。

    さて、
    1.
    > 私の行った方法としては、境界に周期的境界条件である式
    >(φ{I +N(i)}=exp{-jk(i)・a(i)}・φ(i) ,φ;E及びH, I = x , z )
    >を元に用いることで計算しているのですが、まず確認として、自由空間中に
    >おいて、境界にk(i)・a(i)=0の条件を課し、波源をガウシャンパルスとして
    >入射しているにもかかわらず、ある程度時間ステップがた>ちますと定在波
    >の様になってしまい、フーリエ変換しますと、パルスに与えた、初期中心波長
    >でピークが出るようになってしまいます。
    >また、k(x)・a(x)=π/2,k(z)・a(z)=0等の条件を課すと、うまく計算できませ
    >んでした。なにか問題点があるとすれば何が考えられるでしょうか?

    ブロッホの境界条件と自由空間のガウスパルスとは、互いにmatchしない条件と 思われますが、いかがですか?
    ブロッホの境界条件を課すと言うことは、波の波数をブロッホ波数kに決めている ことになります。一方、ガウスパルスは、たくさんの色々な波数kの波を重ね合わ せて作られます。ですから、もしあるブロッホ境界条件を課して、ガウスパルスを 入れたら、プログラムがうまく動くか不安ですし、動いても最終的にはパルス波は 分散して、課したブロッホ波数kの成分だけが得られるように思われます。
    ですから、N君が最終的に見た定在波の波数は、課したブロッホ波の波数に なっているのではないですか?

    ブロッホの境界条件を課してのチェックでしたら、(1)課した波数kの定在波を入れて その波が変化しないことを確かめる、(2)課した波数kの進行波を入れて、実際に 進行することを確かめる、といったところでしょうか。
    自由空間を扱うなら、ブロッホ波の条件は適切ではなく、FDTD法では別の境界条件を 使うようです。

    次に
    2.
    >私の研究室にはそれについて行ったことのあるものがおらず、
    >先生方も分からないようです。論文など読んでもいるのですが、
    >周期境界条件がブロッホ型とだけしか記述がありませんでした。もしよろしければ、
    >何かアドバイスがありましたら、ご教授願えませんでしょうか?

    フォトニックバンドの大家の大高先生に聞きましたところ、FDTD法の境界条件は 自由空間の場合は難しいようで、この方法自身かなり特殊なところがあり、ノウハウを 得るには、本当にその方法のプログラムを作って、使っている人に聞くのが 最も話が早いようです。
     N君の専攻の近くにはF先生がいらっしゃいませんか?(もしかしたらN君はその研究室所属?) F先生のところを出られて現在NEC(?)に勤めている方がいるそうですが、その方は、 自身でFDTD法を開発し、プログラム・codeも組み、この方法のノウハウをよく知って らっしゃるそうです。
     F先生にお願いして、その先輩を紹介してもらうのが、最も良いと思われます。 ぜひお願いしてみて下さい。

    以上です。よろしく。
    中山隆史
    千葉大学理学部物理学科
    -------------------------------------------------------------------------

    671. 渦電流による電磁制動

    Date: Thu, 3 Nov 2005 18:40:49 +0900
    Q: 会社員、矢野です。
    渦電流による電磁制動について教えてください。
    電磁工学等の資料を見ましたが、現実の答えを知るとなると 十分ではなく困っています。
    是非、ご指導をお願い致します。
    磁束密度が0.5mTの一様な磁界中を 長さ1mの導体板(純銅)が磁界に対して直角に 10m/sの速度で通過した時、制動力は何Kgf 程度きたい出来るのでしょうか?
    以上 宜しくお願い致します。
    -------------------------------------
    Date: Tue, 8 Nov 2005 19:20:48 +0900
    A: 矢野様、佐藤勝昭です。
     私は、この関係は専門ではないので、本学電気電子工学専攻の宇野亨 教授に伺いました。ところ、
    ---------------------------------------------
    渦電流の流れ方やその大きさは板の幾何学的形状や銅板の物性値(導電
    率,透磁率)に極めて敏感であるため,電磁気の教科書程度の知識から
    では抵抗力を見積もることはできません.電磁界シミュレータによる精
    密な計算が必要です.無料ではないと思いますが,必要なら計算してく
    れる会社を2,3紹介します.そこから相談に乗ってくれそうな先生を
    紹介してくれるかもしれません.
    ---------------------------------------------
    という返事をもらいました。宇野先生(uno@cc.tuat.ac.jp)にご相談く ださい。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 8 Nov 2005 19:43:28 +0900
    AA: 佐藤様
    ありがとうございました。
    たいへん難しいと言うことが理解できました。
    最終的には、実験を必要とすると理解いたします。
    大変お手数をお掛けいたしました。 十分満足しています!
    -----------------------------------------------------------------------------

    672. 貴金属の色

    Date: Sun, 6 Nov 2005 11:32:37 +0900 (JST)
    Q: 佐藤勝昭先生
    先々週に質問させていただいたSと申します。ネット上には名前を伏せていただきたいと思います。

    花村先生の固体物理学という本を図書館から借りました。149ページにAgの場合のプラズマ周波数とバンド間の遷移による誘電率の変化が描かれ、更に合成した場合の曲線も記載されていてとてもわかりやすかったです。疑問なのですが、“金色の石に魅せられて”の本には貴金属の色の原因としてハイブリッドプラズマ状態による選択反射が挙げられていますが、厳密には卑金属も含めた金属全般に当てはまることと考えるのですが、違いますでしょうか。それとも可視光の波長で反射率の大きな変化が見られるのが貴金属という意味でしょうか。

    貴金属は、金、プラチナ、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミニウム、の8種の元素の総称と理解しているのですが、銅を貴金属に含める考え方もあるようです。

    お忙しいとは存じますが、ご回答いただければ幸いです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 06 Nov 2005 17:45:39 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     私が「金色の石に魅せられ立て」で取り上げ貴金属はAu, Ag, Cuのみです。
    これらは、d電子殻が10個の電子で満ちており、しかもフェルミ準位から2-4eVほ ど深い位置に存在し、3d→Efの光学遷移が可視域付近に存在していることが、ハ イブリッドプラズマの生じる原因と思います。
     Ru, Rh, Pd, Ir, Ptなどは、関与する4d(or 5d)→Ef遷移は赤外域に来るので、 着色に結びつかないようです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 6 Nov 2005 21:54:41 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭先生
    ご返信ありがとうございます。どうしても疑問だったので質問させていただきました。
    ”金色の石に魅せられて”の52ページに実際の金属では基本的にドルーデの法則が成り立つと考えられていると書かれている通りで、卑金属結晶でもプラズマ振動は起こっているが、バンド幅との関係もあってAuやCuのように可視域に反射率の変化が起こる金属結晶が少ないということですね。更に勉強してみます。

    懇切丁寧なご返信をありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 4 Nov 2005 16:54:41 -0800
    佐藤勝昭様、
    佐藤様の研究室のホームページを拝見して、初めてメールさせていただきます。
    私はA社でプロセス開発エンジニアをしているYと申します。 
    (お手数でもWebへ記載の際には会社名と氏名は匿名でお願いいたします)

    IPの関係上詳しい事が書けないので非常に曖昧な質問になってしまい申し訳ない のですが、現在活性な酸素原子を発生させる実験を行うためリサーチをしております。
    その中でよくO2(X Σ+/-g)、O2(X Δ+/-g)、O(1S)、O(3P)というような表記に出会います。
     文脈からそれぞれの分子または原子のエネルギーレベルを示してい ることは漠然と読み取れるのですが、表記の仕組みがわかりません。
     学生時代に習った電子配置の表記に似ていると思い教科書を出して読んで見ましたが、上手く 説明できません。

    そこでこれらが何を表しているのかの要旨を教えていただけないでしょうか?
     またこれらを理解するために適切な参考書を紹介いただけないでしょうか? 
    (ちなみに参考書の紹介を頂くにあたり、私のバックグラウンドはEEです。この職 に就いてから独学で半導体工学や物理化学は細々と勉強しておりますが、化学や量 子化学等は学生時代以来あまり進歩していない状況です。)

    よろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------------

    673. 原子と分子の電子状態の記号の見方

    Date: Sun, 06 Nov 2005 23:11:26 +0900
    A1: Y様、佐藤勝昭です。
     まず、原子の電子状態の記号について説明します。
    左肩に付く数字はスピン多重度2S+1を示しています。O(1S)の1はS=0 を意味し、この場合のスピン多重度は1です。O(3P)の3はS=1を意味 します。S=1だと2S+1=3ですが、Sz=1,0,-1の3通りをとれることを意味します。 S, Pは原子の軌道を表しています。軌道角運動量L=0,1,2・・に対応して、回転 群の既約表現であるS,P,D,・・という記号が与えられています。
     次に、分子の電子状態の記号ですが、原子は回転群ですが、分子は中心対称で はないので、2原子分子特有の対称性による記号Σ、Δが付けられています。 (私も量子化学の知識は不十分なので、間違っているかも知れません。)
    ========================================================================
    東京農工大学物理システム工学専攻の鵜飼助教授(原子過程工学 ukai3@cc.tuat.ac.jp)に詳しい説明を お願いしました。
    ========================================================================
    Date: Mon, 7 Nov 2005 15:52:21 +0900
    A2: Y様(Cc: 佐藤先生)
    「物性なんでもQ&A」@佐藤勝昭HPへの質問有難うございます。
    佐藤副学長多忙につき、代わってご回答申し上げるように依頼がありました ので、ご質問にお答えします。

    農工大の同学科の鵜飼と申します。原子分子物理学、物理化学反応論などを 専門にしております。
    ○ご質問の原子・分子の電子状態についての標記方法ですが、
     ・私のパソコンがフォントエラーを起こしていてギリシャ大文字と思われる
      ところが文字化けしていて申し訳ありませんが、ギリシャ大文字と解釈し
      ます。
     ・また+/-となっていますが、+と-が一緒に書かれることはないと思います。
     ・O(1S)、O(3P)の 1, 3 は上付き文字だと思います。
     以上のように解釈させていただいた上でご説明いたします。

    ○参考書ですが、大抵の物理化学の教科書(学部初学者レベル)に書かれて  います。たとえば手元にある教科書ですと
     ●アトキンス「物理化学第4版」千原、中村訳(東京化学同人)
      13章、原子構造と原子スペクトル
      14章、分子構造
     あたりをご覧になれば、大抵のことはご理解頂けると思います。
     ただ、量子化学の初学者への説明が含められていますので、波動関数や化  学結合の性質についての解説が煩瑣だとお感じになるのであれば(実は専  門家の立場からも、電子状態と反応性の関係を詳しく考えるような場合以  外は、単なる記号です)下記の解説論文が大変有用です。
     ●島内みどり,「分光便利帳, 分光学における記号」,
      分光研究(日本分光学会誌), 27巻(1), 43-49 (1978)

    ○一応の要旨を申し上げますと、
     ● O(1S)、O(3P) (1,3は上付き)
      ◎原子内の個々の電子の軌道は数字と小文字のアルファベットで書きます。
       1s, 2s, 2p, 3s, 3p, 3d,,,などなど。
       ・ここで1,2,3,,は原子の軌道集団にエネルギーの低いものから(束縛
        エネルギーが大きいものから)番号をつけた主量子数です。
       ・s,p,d,,,は軌道電子の回転の角運動量の大きさを量子化した方位量子
        数(角運動量量子数)で、sは0, pは1, dは2,,, です。
       ・角運動量はモーメントなのでベクトル量です。
      ◎原子内の全ての電子の角運動量をベクトル和したものの絶対値をとって、
       全軌道角運動量と言います。これが大文字のS,P,D,,,です。
       小文字の場合と同様に、Sは0, Pは1, Dは2,,, です。
      ◎上付き数字はスピン多重度と言います。
       ・電子は+1/2と-1/2のスピンを持ちます(やはりベクトル量)。
       ・全ての電子のスピンのベクトル和の絶対値をS(全軌道角運動量の
        S(=0)とは違う)と書くと、2S+1をスピン多重度と言います。
       ・電子の個々の軌道には+1/2と-1/2のスピンの電子が一つずつの2個
        入りますので、
          全部の軌道が2個ずつ詰まればS=0→2S+1=1
          全電子が偶数個で、同数の+1/2と-1/2スピンのうちどれか1個の
           符号がひっくり返っていればS=1→2S+1=3
       ・この数に合わせて、1重項、3重項、、、と読みます。
       ・これを全軌道角運動量の記号の左に上付きで書きます。

     ● O2(X3Σ-g), O2+(X2Πg)
      ◎2原子分子や直線分子の際にギリシャ文字を使います。
      ◎ギリシャ大文字の記号は、分子の全軌道角運動量です。
       ・個々の電子の軌道と全軌道角運動量の関係は原子と同じです。
       ・s,p,dは球対称の原子の波動関数の表記ですが、2原子分子や直線分子
        は軸対称です。角運動量はすべてベクトルの軸への射影成分で定義され
        ます。
       ・同じく全角運動量も、射影後のベクトル和の絶対値です。これを原子
        の場合になぞらえて、0(→S)→Σ、1(→P)→Π、2(→D)→Δ
          のようにキリシャ大文字で書きます。
      ◎ギリシャ大文字の左の上付き数字はスピン多重度です。原子と全く同じです。
      ◎その左のX,A,B,,, or a,b,c,,,は、原子の主量子数に対応します。
       ・一番エネルギーの低い(束縛エネルギーが大きいものをXとして、エネル
        ギーが上がるにしたがA,B,Cとつけます。
       ・X状態と同じスピン多重度を持つものに大文字を、異なるものに小文字を
        あてます。
       ・中性分子と一価イオン、ニ価イオンは別の系列にあると考えて、それぞれ
        X,A,B,,,a,b,c,,とつけます。
       ・ただ、電子状態の発見の歴史を引きずっていて、アルファベットをつけた
        あとで新しい状態がどこかの状態と他のどこかの状態の間に見つかってし
        まった、などと言う場合には混乱しています。
       ・最大の混乱は窒素です。中性窒素分子に限られますが、最低状態は1重項
        なのに、励起1重項には小文字が、3重項に大文字が充てられています。
      ◎下つきのg,u記号は等核2原子分子やCO_2のような重心対称分子にのみ用い
       られる波動関数の対称性を表す記号です。このような分子は軸対称であるだ
       けでなく、重心に対して反転対称性を持ちます。ある軌道の波動関数が、
       (x,y,z)→(-x,-y,-z)の反転操作を行うと波動関数の振幅の絶対値は同じは
       ずですが、波動関数の
       ・符号が変わらないとき→対称: g(erade)、
       ・符号が変わるとき →反対称: u(ngerade)   とつけます。
      ◎ + と - の記号は、シグマの全角運動量の状態にのみ使われます。ある軌道
       の波動関数に、分子軸を含む面に関する面対称操作(鏡映)を行った時に、
       ・波動関数の符号が変わらない→対称: +
       ・波動関数の符号が変わる →反対称: -    とつけます。

    ○3原子以上の分子は直線でなければ3次元立体構造をもちますので、角運動量量
     子数や全角運動量のアルファベットやギリシャ大文字を使う場合に、結晶場と同
     様の点群対称性の指標が用いられます。

    以上にてご回答を終わらせていただきます。
    農工大 鵜飼正敏
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 7 Nov 2005 07:23:29 -0800
    AA: 佐藤勝昭様、 鵜飼正敏様、
    早速のお返事ありがとうございます。
    また機種依存のギリシャ文字によるエラー等、お手数をおかけいたしました。

    軌道上の電子配置に関して私の学生時代の物理化学の教科書(今出張中のため著者 等は不明ですが)ではここまで詳しく解説していませんでした。
    現在活性酸素発生に使うエネルギーソースを検討する段階でこれらを理解しておく 必要があるため、お二人の要旨のご説明は大変参考になりました。
    また早速鵜飼様からご推奨いただいた教科書・論文を読ませていただき、勉強した いと思います。

    本当にありがとうございました。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 8 Nov 2005 20:17:43 +0900
    Q: こんにちわ。
    調べ物をしていて佐藤先生のHPを拝見させて頂きました。私は、日本大学生産工学部の 一年生で電気電子工学科で勉強をしている石井と申します。
    現在、通電性の良い無機材料とキャリア、通電性の無い無機材料とキャリアを調べている のですが、中々答えが見つかりません。
    お忙しい所大変申し訳ございませんがもしご存知でしたら教えて頂けないでしょうか?
    --------------------------------------------------------------------------------

    674. 無機材料の通電性

    Date: Tue, 8 Nov 2005 20:46:39 +0900
    A: 石井君、佐藤勝昭です。
     宿題で出されたものなら、授業でその関係のことを学んでいるはずで す。それとも、自分で、興味を持って調べているのでしょうか?
    電気電子の1年生だとあまり高度なことは要求されていないと思います。
    図書館で、電子材料関係のハンドブックを調べて導電性が高い(金属、 合金など)と導電性の低いもの(セラミクス)などの項を見てください。
    ただ、キャリアという質問の意味がよくわかりません。キャリアという のは電子かホールかということですか?
     金属のフェルミ面は電子面のこともホール面のこともあり、どちらが 電気を運んでいるか必ずしも明確ではありません。化合物半導体の場合 は、CdTeではp型(ホールによる伝導)、ZnSではn型(電子による伝導) になりやすい性質がありますが、Siなどは、nもpも作れます。一方、 絶縁物では、伝導機構そのものもそれほど明確ではありませんので、キ ャリアタイプを答えられないと思います。
     とにかく、あなたの質問の意味がよくわかりません。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 8 Nov 2005 21:16:36 +0900
    ありがとうございます。
    日本大学生産工学部の石井です。
    無機材料については興味があり調べていました。
    図書館で調べてみたいと思います。
    実はキャリアについてなのですが、無機材料について調べていたところ、 同学部の応用分子化学科の3年生の先輩がそのような課題をやっていたので 同じように調べていました。自分もよく理解していないのでこちらは無視してかまいません。
    変な質問を混ぜて申し訳ありませんでした。
    ----------------------------------------------------------------------------------

    675. 電磁波中の磁場の大きさ

    Date: Tue, 8 Nov 2005 23:26:46 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤勝昭先生:
    D社Fと申します(WEB公開時社名とも匿名でお願いします)。
    佐藤先生の分かりやすい懇切な回答をWEB上で拝見し、感銘を受けております。
    さて、誘電体中の電磁波の挙動について、教えていただきたいことがあり、 電子メールで質問をお送りしております。
    吸収がある媒質中(光学定数n、kでk≠0)を光が進行する状況を、 Maxwell方程式からシミュレーションしようとしています。
    このときの磁場の状態について、質問をいたします。
    1.消衰係数kは電場の振幅に影響する
    2.光の領域では、「比透磁率=1」
    以上のことは頭に入れているのですが、今の場合、磁場に関して 「媒質のnから決まる速度で伝搬する」と思っておりますが、振幅について どうなるかが分かりません。
    一方で、電磁波の振幅について、E=cB(E;電場振幅、c:真空中の光速、 B:磁束密度)なる式から、電場の振幅が圧倒的に大きいと思っています。
    以上、私の考えでよろしいでしょうか?
    考え違いなどのご指摘など、ご教示いただけると大変有難いです。
    どうぞよろしくお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 9 Nov 2005 12:42:26 +0900
    A: F様、佐藤勝昭です。
     電磁波は、電界と磁界が互いに助け合いながら伝搬しています。
    マクスウェル方程式は
      ▽×E=-∂B/∂t (1)
      ▽×H=∂D/∂t (2)
    ですが、電磁波がexp(-iωt+ikr)の形の振動であるとすると、各式は
      k×E=ωB   (3)
      k×H=-ωD   (4)
    となります。
    ((3)に|k|=ω/cをいれると、|E|=c|B|となるのはご指摘の通りです。)
    (3)の両辺とHの内積をとると
      (k×E)・H=ωB・H  (5)
    一方、(4)の両辺とEの内積をとると
      (k×H)・E=-ωD・E  (6)
    となります。
      (k×E)・H=-(k×H)・E (7)
    が成り立つので結局
      B・H=E・D    (8)
    すなわち
      μrμo|H|^2=εrεo|E|^2  (9)
    となり、電場と磁場は同じエネルギー密度で伝わることが示されます。
    電場の振幅が磁場の振幅より数値的に大きいというのは単に単位系の取 り方の問題でしょう。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 9 Nov 2005 13:17:42 +0900 AA: 東京農工大 佐藤勝昭先生:
    D社Fです(WEB公開時社名とも匿名でお願いします)。

    早速回答をお送り下さり、有難うございます。
    数式を使ってご説明いただき、私の間違いと電場と磁場の関係が飲み込めました。

    計算時、スケールのとり方には気をつけて進めます。

    どうも有難うございました。またの節にも、よろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------------

    676. 吸収性物質における多重干渉

    Date: Wed, 09 Nov 2005 06:37:14 +0000
    佐藤先生

    立命館大学の物質理工学を専攻しているM1の長瀬和也と申します。
    HPを見ての質問です。
    吸収のおこる媒質(いま、平行平板とします)での多光束干渉に関しての質問です。
    図書館で教科書等を探しても吸収が起こる場合については一向に見つかりませんでした。
    そこで佐藤先生にアドバイス頂けないかと思いメールさせていただきました。

    吸収が起こらない場合
    空気中から屈折率nの媒質に光が入射しました。
    そのときの透過率は、入射光E0、媒質の厚さをd、屈折角をθ、波数をk0、複素数としてi、
    空気中から媒質へ入射するときの振幅反射率をr1、媒質から空気中への振幅反射率をr2、
    空気中から媒質へ入射するときの振幅透過率をt1、媒質から空気中への振幅透過率をt2とする。
    平行平板内で反射が無限に起こるとすると、そのときの全透過光の電界は
    初項 E0×t1t2×exp(-ik0nd/cosθ)
    公比 r1r2×exp(-i2k0nd×cosθ)
    の無限等比級数で表されますが、吸収が起こる場合はどのようになるのでしょうか。

    公比のところに減衰分のexp(-αd/cosθ)を掛けるのでしょうか。
    それともそれは間違っていますか。
    また、そのときのと透過率T’は

    T’=[ { (1-R)2 + 4Rsin2Φ } exp(-αd) ] / { 1-R2exp(-2αd) }
    ただし、t1t2=1-R、r1r2=Rとしています。

    で、よろしいのでしょうか。
    大変お忙しいかと思いますが、よろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 9 Nov 2005 17:20:30 +0900
    A: 長瀬君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。下記の式を吸収のある場合に一般化するには屈折 率nのかわりに複素屈折率N=n-iκを使えばよいのです。ここにκは消光 係数です。消光係数κと、吸収係数αの間には、α=2ωκ/c=4πκ/λ という関係が成り立ちます。
     また、r1,r2,t1,t2はいずれも複素数になります。
    r1=(N-1)/(N+1), r2=(1-N)/(1+N), t1=1-r1=2/(N+1), t2=1-r2=2N/(N+1)
    1回目の透過光E1=E0t1t2exp(-iφ); φ=k0 N d/cosθ
    2回目の透過光E2=E0t1t2r2r1exp(-i3φ)
    j回目の透過光Ej=E0t1t2(r2r1)^(j-1)exp(-i(2j-1)φ)
    透過光の総和は
     E=E0t1t2exp(-iφ)Σ(r1r2)(j-1)exp{-i2(j-1)φ}
     =E0t1t2exp(-iφ)/(1-r1r2exp(-i2φ))
    従って、複素振幅透過率tは
     t=t1t2exp(-iφ)/(1-r1r2exp(-i2φ))
    光強度の透過率Tは
     T=|t|^2=|t1t2|2exp(-αd/cosθ)/|1-r1r2exp(-i2φ)|2
    として計算してください。
    ---------------------------------------------------------------------------------------

    677. マイカから発生する、白色の煙と、刺激臭の気体が何であるか

    Date: Mon, 14 Nov 2005 17:54:32 +0900
    Q: 初めましてAと申します。
    下記解りましたら、教えてください。
    現在、ポップアップトースターの初期通電時、マイカから発生する、白色の煙と、 刺激臭の気体が何であるか知りたいと思います。
    初回通電時のポップアップトースターでパンを焼き、食べたところ、暫くして、 気分が悪くなり、吐き気を感じたとの苦情がありました。しかしながら、このような 現象は初めて聞く事象です。年間数十万個のポップアップトースター売られており、 このような事は聞いておりません。
    おそらく、これらは、シックハウス症候群の如く特別な体質な人のみに起こる事象では 無いかと推定はしましたが自信はありません。
    -----------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 15 Nov 2005 20:26:52 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     申しわけありませんが、いただいたご質問だけからはお答えできる情 報をもっていません。貴社のすべてのトースターにおいて起きるのでしょうか?
     トースター用に加工する前のマイカそのものを加熱して同じ現象が起 きるのでしょうか?加工の際に、マイカあるいは電熱線に何らかの有機不純物が付着し、 初期加熱で分解して白煙を出している可能性はないのでしょうか?
    ------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 16:09:56 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様
    早速のご回答ありがとうございました。
    >  貴社のすべてのトースターにおいて起きるのでしょうか?
    その通りです。しかし、この仕様のトースターは約300万台/年の生産量であり、全世界に販売しています。
    生産累計は推定ですが5000万台以上と思います。

    >  トースター用に加工する前のマイカそのものを加熱して同じ現象が起
    > きるのでしょうか?
    平リボン形状のヒーター線は展造時シリコン系の油が使用されています。しかし、この油は微量であり、10m長さのヒーターをテッシュペーパーの間でシゴイテモ油の付着は観察出来ない範囲です。マイカその物を加熱しても発生します。

    >  加工の際に、マイカあるいは電熱線に何らかの有機不純物が付着し、
    > 初期加熱で分解して白煙を出している可能性はないのでしょうか?
    合成マイカのマイカ片を固めているバインダーが熱分解して、これらの臭い、白煙を発生していると推定しています。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 20:33:36 +0900
    A2: A様、佐藤勝昭です。
     おっしゃるように、合成マイカの製造方法に問題があると思われます。
    有害な不純物が層間に挿入されている可能性があるので、メーカーにお 問い合わせになってはいかがでしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------------------------

    678. 半田の融点における抵抗率変化

    Date: Mon, 14 Nov 2005 19:26:16 +0900
    Q: T大の電気工学院生1年のt.kです。棒はんだを溶かし抵抗率を測定しているのですが、なぜ固相か ら液相になる瞬間いきなり抵抗率が上がり、また下がっていくのでしょうか?
    ------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 12:35:26 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     さて、どのような方法で測定しているかわかりませんが、半田が溶け るとき、融点で密度が2.5%程度減少します。このため、原子間の平均距 離が長くなるので、融点付近で電気抵抗が高くなるのではないでしょう か。さらに温度を上げると密度はもっと低下しますし、分子振動による 散乱も増えるので、融点以上で抵抗が下がる理由はよくわかりません。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 14:49:51 +0900
    Q2:T大のKと言います。質問の回答ありがとうございました。もう1つ質問した いことがあります。今使用しているはんだはトタンなどに使用される棒はんだを用い て研究をしています。棒はんだには錫60%鉛40%(融点183~190℃)と錫50%鉛50% (183~215℃)があり、どちらのはんだも固相から液相になる瞬間抵抗率があがりま す。どちらの抵抗率の方が大きいのでしょうか?理論式はあるのでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 18:34:01 +0900
    A2: K君、佐藤勝昭です。
     半田の抵抗率そのものについてはJISに記載があると思います。
    融解時の抵抗率変化ですが、61.9:38.1の半田は共晶半田といって、固 相からいきなり液相に飛ぶのですが、組成がこれからずれると、合金状 態図において固相線と液相線が分離します。60:40のものは共晶組成に 近いので固液共存域が183-190℃と狭いのですが、50:50では183-216℃ と広いです。共晶組成からずれた組成の場合、固相から固液共存相に入 ると散乱が大きくなり抵抗率が上昇するが、液相線を越えると、液相だ けになるので散乱が減り、抵抗率は下がるでしょう。これが、いったん 抵抗値が上がり、また抵抗値が下がる原因でしょう。
    50:50の組成の方が、固相共存域が広いので、抵抗の上昇は大きいと思 います。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 19:15:04 +0900
    AA: 何度も質問にお答えして頂き有難うございました。またわからなくなりましたら質問 するかもしれませんがよろしくお願いします。
    --------------------------------------------------------------------------------------------

    679. 多結晶シリコンの抵抗率のばらつき

    Date: Mon, 14 Nov 2005 23:01:02 +0900
    Q: 佐藤様
    以前ご回答いただいた。A社のAと申します(匿名でお願いします。)いつも先生のHPを勉強の為拝見させていただいております。 現在もSiのρbについて調べているのですが、疑問点があり佐藤様がご存知であれば、教えていただきたいと思いメールを送信さ せていただきました。ご回答いただければ幸いです。
    ρbを4端子法で測定した場合の疑問点です。
    多結晶Siで粒界をまたいで4端子法で測定した場合にρb値が大きくばらついた様に感じました。
    (細かい粒界をまたいで測定した場合)
    大きな粒内を測定した場合にはばらつきは少なく比較的に測定値は安定していた。
    実際にこのような現象は起こりうるのでしょうか?
    又、結晶粒の大小でρbは変わってくるものでしょうか

    私なりに勉強不足な点はありますが仮説を立ててみました。
    以下のようなことはありうるのでしょうか?お答えいただけたら幸いです。
    ・測定面(ウェハ、インゴット)には不純物の分布は均一でない。
     特にρbを決めている物質(B等)の分布が不均一であるからρbにバラツキが生じる。
    ・結晶粒界をまたいだ場合には、隣接する粒界でも各粒界ごとに不純物濃度や
     欠陥密度が異なり電気的性質に違いが生じている。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 00:50:03 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     多結晶試料においても、結晶粒(グレイン)内は単結晶とほぼ同じ移動度をもってい ると考えられますが、結晶粒界においては界面準位の存在などのため、粒界にポテン シャルバリアが生じ、これを越えるために活性化エネルギーが必要となるため、移動度 はバリアの高低によって抵抗率がばらつきます。
     不純物の分布の不均一性によるキャリア数のばらつきもあるとは思いますが、ばらつき の主因は粒界のバリアによると思います。
    ----------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 17 Nov 2005 23:29:00 +0900
    AA: 佐藤様
    お忙しい中回答いただきありがとうございます。
    また、お礼の返信の遅れたこと申し訳ございません。
    ----------------------------------------------------------------------------------------------

    680. 水の誘電率はなぜ大きいか

    Date: Tue, 15 Nov 2005 13:19:13 +0900
    Q:はじめまして。私は京都工繊大の大場といいますが、このたびレポートの課題の1つに 水の誘電率が高いのはなぜかという課題が出たのですが、いろいろ調べてみても具体的 には載ってないものばかりで、困っています。もしよろしければ、水の誘電率が高いこと についておしえていただけないでしょうか?
    -----------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 16 Nov 2005 00:38:04 +0900
    A: 大場君、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aは、宿題やレポートに答えることはしません。
    ヒントは、なんでもQ&Aの#638にありますように、誘電率は含まれる電気双極子の密 度に比例しますから、水の高い誘電率は大きい電気双極子モーメントによります。
    他の液体に比べてどうかは、
    http://www.usm.maine.edu/~newton/Chy251_253/Lectures/Solvents/Solvents.html のTable 1をご覧下さい。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------

    681. デバイ温度と物理量の関係

    Date: Thu, 17 Nov 2005 19:51:18 +0900
    Q:佐藤様へ
    名大1年でデバイ温度と各物理量との関係を求めろという課題が出たのですがわ かりません。参考図書もないのです。どうか教えてください。ちなみに各物理量 とは、縦波速度、密度、電気抵抗などです。いろんなデータを集めて表にしたの ですが・・・・関係性が見えません。
    それではよいお返事をお待ちしております。
    --------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 18 Nov 2005 12:07:01 +0900
    A: M君、佐藤勝昭です。
     宿題に対しては、直接お答えしません。ヒントをあげます。
    この問題を考えるには、デバイ温度の意味を考えてください。
    KittelのIntroduction to Solid State Physics 7th edition (訳本が でています)の Chapter 5 Phonon II に詳しく書かれていますが、デ バイ温度θはデバイのcutoff周波数ωDと関係しています。
     θ=hbarωD/kB
    ここにhbarはプランク定数/2π、kBはボルツマン定数です。
    ωDはフォノンの状態密度のカットオフです。理想的なデバイ固体では 状態密度はフォノン周波数とともに放物線的に増加するので、ωDは (熱現象に関与する)フォノン周波数の重み付き平均といってもよいで しょう。
     従って、比熱、熱伝導率、超伝導(Kittel Chap.12, BCS理論)などフォノンが関与する物理現象 にはデバイ温度が関与します。
     一方、密度、音速はデバイ温度を決めるための式に入っています。 さきほどのKittelでいえば(28)式をごらんください。
    -------------------------------------------------------------------------------------------

    682. ニッケル酸化膜の用途

    Date: Fri, 18 Nov 2005 23:47:42 +0900
    Q: 佐藤勝昭様、
    佐藤様の研究室のホームページを拝見して、初めてメールさせていただきます。
    私はB社のエンジニアをしておりますBと申します。 
    (お手数でもWebへ記載の際には会社名と氏名は匿名でお願いいたします)
    ニッケル酸化膜の用途について教えていただきたく、メールいたしました。
    出来ることであれば、どこに使われていて、どのような方法で作成できるのか、また、将来の可能性についてもお教えいただければ幸いです。
    お手数だとは思いますが、宜しくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------------------
    A: B様、佐藤勝昭です。
    わたしは、酸化ニッケルの用途についてあまり知識がありません。Webで探したら、
    ニッケル酸化膜をELの透明電極に使うという報告がありました。紹介しておきます。
    G Wakefield, P J Dobson, Y Y Foo, A Loni, A Simons and JL Hutchison:
    The fabrication and characterization of nickel oxide films and their
    application as contacts to polymer/porous silicon electroluminescent devices;
    Semicond. Sci. Technol. 12(1997) 1304-1309.
    ------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 24 Nov 2005 19:09:44 +0900
    A2: 追伸:B様、佐藤勝昭です。
     あれからいろいろ調べていましたら、日本応用磁気学会のサイトMSJ
    技術情報に「NiOをRRAMに使う」という話があることを知りましたので
    おつたえします。RRAMというのは構造変化による導電率の変化をメモリ
    に使おうという技術です。詳しくは、
    http://www.wdc-jp.com/msj/information/050302/050302_02.html
    をお読みください。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    AA: 佐藤様
     お忙しい中、私の質問に答えていただきいありがとうございました。
     ぜひ、参考にさせていただきたいと思います。
     また、お願いをする時があるかもしれませんので、そのときは宜しくお願いいたします。
                               B社エンジニアB
    ----------------------------------------------------------------------------------------

    683. サイズモ式ピックアップ

    Q: 瀬戸口 和博(北九州市立大学機械システム工学科二年)です。
    1.サイズモ式ピックアップは振動数比λ>>1の条件で変位計になることを示すには どうすればよろしいですか!?変位を入力、相対変位を出力とするゲインを求めるら しいのですが・・。
    2.差動変圧器を使用した電気マイクロメータで前後の変位の方向を検出してSN比を 向上するためにロックインアンプを使用するらしいのですがどのように接続すればよ ろしいですか!?
    宜しければお答え願います。
    ----------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 23 Nov 2005 00:48:07 +0900 A: 瀬戸口和博君、佐藤勝昭です。
     私はこの方面の専門家ではないので、本学の小野理事の紹介で、小林理研の山本所長 にお伺いしました。お返事をいただきましたので転送します。
    ==============================================================================
    佐藤先生
    毎々お世話様です。サイズモ振動計の件ですが、小林理研の 山本所長に聞いてみたところ、下記のような返事でございました。
    転送いたしますのでご一読ください。
    =========================================
    では取り急ぎ。
    さて,サイズ振動計ですが,私も詳しいことは分りませんでしたので,元理研の
    研究者で現在リオンの技術顧問をされている伊達宗宏先生に問い合わせました。
    以下の通りです。

    > 1.サイズモ式ピックアップは振動数比λ>>1の条件で変位計になることを示
    すにはどうすればよろしいですか!?変位を入力、相対変位を出力とするゲイン
    を求めるらしいのですが・・。
    ■サイズモ系というのはバネとマスを使ったセンサーのことです。従ってその固 有振動数以下では加速度計、それ以上の周波数では変位計になります。
    >
    > 2.差動変圧器を使用した電気マイクロメータで前後の変位の方向を検出して
    SN比を向上するためにロックインアンプを使用するらしいのですがどのように接
    続すればよろしいですか!?
    ■作動トランスの入力信号(励磁用の交流電圧)をロックインアンプのリファレ ンスに入れ、作動トランスの作動出力をロックインアンプの入力に入れますが。
    ******************************************************
    伊達宗宏 date@estate.ocn.ne.jp
    ******************************************************
    山本貢平 2005-11-22
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 24 Nov 2005 09:31:50 +0900
    AA:瀬戸口 和博です。
    ご解答有難うございます。これを参考にさせて戴きます。
    ----------------------------------------------------------------------------

    684. スズの高温でのふるまい

    Date: Wed, 23 Nov 2005 15:46:26 +0900
    Q: さとう様(でよろしいのでしょうか?)
    初めてメールをさせて頂きます。O社のMです。

    23日というのに感謝する間もなく勤労しております(涙)
    ある現象について調べておりますが手元にある筈の理科年表が・・・無い!!!
    というわけでお問い合わせとなってしまいました
    よろしくお願い致します

    ①Snの酸化温度、炭化温度を教えて下さい
    ②Snの融点を教えて下さい
    ③400℃でのSnの振る舞いと1030~1080℃での振る舞い
     を教えて下さい

    条件として交流の高電圧がかかっています
    電流はたぶん数mA(実効値)だと思います

    (これって・・・アップされたらまずい気もしてきた・・・具体的な数字 特に電圧と電流については伏せて頂けるとうれしいのです)
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 23 Nov 2005 19:38:20 +0900
    A: T社M様、佐藤勝昭です。
     勤労感謝の日のご勤務ご苦労様です。教え子の結婚式のため留守にしており、 お返事が遅くなりました。
    ① スズが何度から酸化するかについては、
    R K Hart 1952 Proc. Phys. Soc. B 65 955-955-1 に
    Electron diffraction experiments show that when tin foil is thermally oxidized in air an amorphous oxide layer is formed at temperatures up to 130°c Above 130°c only crystalline SnO and SnO2 are formed
    と書かれています。
    炭化についてはよくわかりません。
    ② スズの融点は231.9681℃です。
    ③ 液体スズのどのような振る舞いが必要なのでしょうか。
    スズの沸点は2270℃ですから、1030-1040℃ではまだ液体状態です。
    液体金属に数kVのような高電圧を印加することは不可能ではないでしょうか。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 24 Nov 2005 10:52:56 +0900
    Q2: 早速のお返事有り難うございますm(//)m
    匿名希望のMです(すいません;汗)
    すてきなHPですね

    早速朝一で上司と激論(?)を交わしたのですが
    金属間化合物について見解の相違があり再度の
    ご質問をさせて頂きますことお許し下さい(ペコリ)

    金属間化合物について組成が金属原子のみの場合
    私は不導体にはならないと思うのですが上司はそうなり得る
    と言います。

    理化学事典を探そうとしたのですが別の者がそれを持って外出 してしまい(涙)今回のご質問となってしまいました
    あまり研究意欲をそそられない質問ばかりで申し訳ありません
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 24 Nov 2005 11:56:05 +0900
    A2: M様、佐藤勝昭です。
     金属のみからなる金属間化合物で不導体があり得るかというご質問で すが、Ga, In, As, Sbはいずれも金属ですが、GaAs, InAs, GaSb, InSb は半導体になります。Case by caseで考える必要があるでしょう。
     それから、老婆心ですが、ネットの気軽さで、m(//)m、(ペコリ)、 (涙)などを書かれるのは、社会人としての常識を疑われることになるの で、お気を付けになったほうがよいと思いますよ。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Nov 2005 21:37:45 +0900
    AA: 佐藤様
    ご忠告有り難うございます
    以後気を付けてまいります
    色々とアドバイスを頂き、現在手がけている現象の 発生のメカニズムに少しづつですが近づけている 気がしております
    -----------------------------------------------------------------------------

    685. 金メッキ端子と半田(錫)メッキ端子の接続部は腐食するか

    Date: Thu, 24 Nov 2005 14:10:56 +0900
    Q: 標記について調べていましたら、貴HPに当りましたので恐れ入りますがご教示願えた ら幸いです。

    私はO電機㈱Mと申します。DVDのメカニズムなどの開発に従事しております。
    申し訳ありませんがWebアップには匿名でお願い致します。

    最近鉛フリー化対応が必要となり、社の方針で金メッキ部品に変更していくことに なっています。しかしアフターサービスなどを考慮すると、金メッキ部品と従来の半 田メッキまたは錫メッキ部品との組合せが出てくると考えております。

    このような場合、色々調べると異種金属間腐食の危険性があるようなことが出ていま す。本当に腐食して導通不良など製品の信頼性を損ねるような状態になるのでしょう か?異種金属間腐食はその接触部分に電解液(水など)が存在するととなっています が、空気中の湿度レベルでも腐食が起こるのでしょうか?

    ご教示宜しくお願い致します。
    以上
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Nov 2005 00:25:18 +0900
    A: M様、佐藤勝昭です。
     添付ファイルにありますように、金属同士の接触における腐食は湿度が高いと きにも起きるようです。日本の夏の湿度は80%近くなりますから十分起きうると 思います。金自身はグラファイトに次いで腐食に強いので、相手の金属の方に電 解腐食をもたらします。Galvanic seriesを見ると、Sn、Pbはかなりanodicなの で金との接触による腐食がおきると存じます。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 25 Nov 2005 08:58:39 +0900
    Q2: 佐藤 勝昭 様
    >
    >この度はお忙しい中、突然のmail失礼致しました。頂きましたご見解を参考にさせてい ただきます。
    >
    >尚電気業界では普通に使用される金属(メッキ)ですが、具体的にこれらを使った部品 での腐食実験事例や事故例などご存知でしたら、恐れ入りますがご一報頂けますようお 願い申し上げます。
    >ありがとうございました。
    >以上
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 27 Nov 2005 01:44:05 +0900
    A2: M様、佐藤勝昭です。
     ご質問のような事例について、私は専門家ではないのでぞんじません。また、一般に このような問題を企業は外に出さないと思います。

    直接の役には立たないかも知れませんが、以下のサイトを紹介しておきます。
    メリーランド大学のWeb
    http://www.calce.umd.edu/articles/abstracts/1999/GoldFlashAbs.htm
    につぎの論文が紹介されています。
    Ming Sun, Michael Pecht and Marjorie Ann E. Natishan:
    A Comparative Assessment of Gold Plating Thickness Required for Stationary Electrical Contacts;Microelectronics Journal, Vol. 30, pp. 217-222, 1999
    このAbstractには、
    「動作状態にない金メッキ表面については、腐食による接点不良をシミュレートする多 くの研究が行われてきた。しかし、腐食過程や金メッキの厚みに対する電気的機械的負 荷の影響を説明するモデルは提示されてこなかった。この論文では、無負荷状態と負荷 状態の間の比較モデルを打ち立てることを目的として、負荷状態の電気接点の研究につ いて述べる。これによって、金メッキの厚みと、仕上げ材の選択に対する接触力と印加 電圧の影響をよりよく理解出来るであろう。」と書かれています。
    (WebにはAbstractしか載っていません。論文を図書室で取り寄せてお読み下さい。)

    また、フィルトランマイクロという会社のWeb
    http://www.filtranmicro.com/plating.html
    には、金メッキについて書かれていて、
    「・・エレクトロニクスに用いられるスズ鉛半田は金メッキと完全には両立性がない。
    金はスズ鉛半田と容易に合金化するが、金の濃度が数パーセントを超えると合金は熱サ イクルを受けるうちに強度が弱くなる。この現象を金脆性と呼ぶ。金メッキが 20-30 マ イクロインチという薄さの場合はあまり問題にならないが、100マイクロインチを越える 厚さの場合、半田接合の完全性を保つためにはスズ鉛半田よりインジウム半田を使うほ うがよい。」と書かれています。
    参考にしてください。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Nov 2005 08:14:07 +0900
    AA: 佐藤 勝昭 様
    ありがとうございました。
    以上
    ----------------------------------------------------------------------------

    686. 閃亜鉛鉱型GaNの熱膨張係数

    Date: Sat, 26 Nov 2005 12:39:55 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    M大学大学院工学研究科2年のAといいます.(匿名希望)

    只今,閃亜鉛鉱構造(ZB)GaNの熱膨張係数に大変頭を悩ませております.ウルツ鉱 構造(W)の熱膨張係数は文献では色々掲載されているのですが,ZBはどこを探して もありません.そこで,WからZBの熱膨張係数を大まかに見積もることは可能でしょ うか?素人質問ですみませんが,宜しくお願い申し上げます.
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 26 Nov 2005 21:24:37 +0900
    A: A君、佐藤勝昭です。
     閃亜鉛鉱構造(ZB)のGaNについての物性はほとんどデータがありません。
    ウルツ鉱構造については
    αc= 3.17x10^-6 K^-1
    αa= 5.59x10^-6 K^-1
    という値が知られているので、とりあえずはこの平均値を使っておくしかないで しょう。どうしても必要なら、閃亜鉛鉱構造(ZB)のGaNバルク結晶を作製し、 自分で測定するしかないと思います。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 28 Nov 2005 14:03:58 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    M大学大学院工学研究科2年のAです.
    早速のお返事有難うございます.
    私は理論系の研究室なので実際のモノを作製することはできませんが,なんとか頑 張ってみようと思います.ありがとうございました.
    -------------------------------------------------------------------------------

    687. Niの透磁率の周波数特性

    Date: Wed, 30 Nov 2005 17:58:55 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生:
    「物性なんでもQ&A」を拝見しましてメールさせて頂きます。
    C大のWともうします。(※Web上では匿名でお願い致します)
    Niの比透磁率の周波数特性を知りたいのですが、
    ご存じないでしょうか?
    -----------------------------------------------------------
    Date: Wed, 30 Nov 2005 20:45:36 +0900
    A: W様、佐藤勝昭です。
     ご承知かと存じますが、磁性体の高周波特性は、バルクのものか薄膜 か、どのような形状のものか、結晶か多結晶かナノ粒子かなどによって 変わってきます。最近は、ナノコンポジットで高周波特性を高めたもの やナノワイヤの高周波特性が注目されています。
    N J Tang et al.: Synthesis and complex permeability of Ni/SiO2 nanocomposite; Nanotechnology 15 (2004) 1756-1758 .
    G. Goglio et al.: Microwave properties of metallic nanowires; Applied Physics Letters -- September 20, 1999 -- Volume 75, Issue 12, pp. 1769-1771
    ------------------------------------------------------------------------------

    688. Si-Alコンタクト

    Date: Thu, 1 Dec 2005 18:31:38 +0900 (JST)
    Q: HP見させていただきました。お忙しいところ、すみません。標記の質問をご教示願えたら幸いです。
    私はD大学4年Mと申します。光センサーの研究をしております。
    申し訳ありませんがWebアップには匿名でお願い致します。
    @真空蒸着装置を用いてSiとAlを蒸着後、テスターで測定したところ、Al端子間が5kΩほどありました。リード棒の先で蒸着面を軽く擦ると抵抗値が下がり、1kΩ以下に変化しました。なぜでしょうか?私は、表面の酸化膜がとれたからと思っていますが、理由が良く分かりません。素人質問ですみませんが,宜しくお願い申し上げます.
    ご教示宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 1 Dec 2005 20:27:27 +0900
    A: M君、佐藤勝昭です。
    ・SiとAlは同時に同じ場所に蒸着したのですか?
    ・それとも最初にSiを蒸着し、マスクを付けて、Alを電極として蒸着し たのですか。
    ・Siはどのような基板に蒸着したのでしょうか?
    ・基板温度はいくらですか?
    ・テスターの針で擦ったのは、どの蒸着部分ですか?(Al? Si?)

     ここでは、一応、ガラス基板にSiを室温で蒸着し、マスクを付けてAl を電極として室温で蒸着し、マスクを取り除いた後、2カ所のAl電極に テスターをつなぎ、Al面をテスター棒で擦ったものとして説明します。
     
     おそらく、Si蒸着後自然酸化膜がSiを覆ったであろうと推察されます。
    そのときはAl/SiO2/Siというトンネル接合になっていて、抵抗が高かっ たのでしょう。テスター棒で擦ったときに、Alの下のSiO2の被膜が破れ、 Al とSiが直接触れて、ショットキー接合となり、抵抗が下がったので はないかと考えられます。
     工学部の4年生なのだから、もう少し、質問の仕方を工夫して、状況 をきちんと説明するよう努力してください。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Dec 2005 16:52:46 +0900 (JST)
    Q2: 佐藤勝昭先生
    D大学のMです。
    先日は、お忙しいところ質問に答えて頂き、ありがとうございました。
     前回の質問で説明不足が多々あったことをお許しください。今回、大学院生の先輩と相談して、質問をまとめました。御一読して頂き、ご教授頂ければ幸いです。
    wordexcelの質問のファイルを添付いたします。
    以上 お手数ですが、よろしくお願い致します。
    ------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Dec 2005 18:08:29 +0900
    A2: M君、佐藤勝昭です。
     ご質問のた研究は指導教員からテーマとして指示されてやっているの でしょう?本来は、指導教員に尋ねるべきものです。
     全体として気がつくのは、シリコン表面を紙ヤスリで研磨するという 荒っぽさです。そんなやり方でデバイスを作ったらはっきり言って「な んでもあり」です。
     シリコンのデバイスを作るのであれば、「清浄かつ平坦な」表面上に 作るべきです。シリコンウェハーをしかるべきエッチングプロセスで表 面の汚れと酸化膜を除去し、直ちに真空チェンバーに入れ、10^-8Torr 程度以上の高真空でAlを蒸着すべきでしょう。
     紙ヤスリで研磨すると、表面には数10-数100μmの凹凸ができます。 また、ミクロに見るとSiは結晶が乱れ転位や空孔などができるだけでな く、アモルファスシリコン(a-Si)さえ生じています。
     また、研磨直後はSiO2が除去されても時間とともにSiO2が形成されま す。その上にAlを蒸着した場合、Alも数原子層以上酸化されます。従っ てSi/a-Si/SiO2/AlO2/Alという構造になっているでしょう。
     酸化膜の膜厚も場所によって厚みが違うし、電極Al上からさわると凸 部のみ酸化膜が破れて導通またはトンネルするでしょう。

    各質問ですが、
    (Q1)試料の作成時にAlの蒸着前にサンドペーパーで表面を削るのですが、 荒く削るほど最初の抵抗値が下がります。これは表面積の増加もしくは 表面での格子欠陥の増加が考えられるのですがはっきりと原因がわかり ません。元の表面は残っていないように削っているのでSi酸化膜の影響 は少ないと思います。
    (A1) 凹凸の周期が荒い方が,細かい場合に比べAlとよく接触するのでし ょう。細かい場合、深い部分にAlが入り込みにくいということがあるか も知れません。

    (Q2) n型での電極Aに圧力を加えた時の、A-Bバイアスの抵抗は少量の 低下および電極BでのB-Aバイアスの抵抗の少量の低下についてですが、 これはpn接合の順方向抵抗よりn型-Al接合の抵抗の方が低いことでしか 説明が付きません。また、p型の抵抗値の減少については説明できませ ん。
    (A2) 室温で蒸着してAlが拡散してp型になるということはほとんどあり ません。結晶性が乱れた表面には界面準位ができているので、そこに空 間電荷がたまり、見かけ上p型のように振る舞ったのでしょう。

    (Q3) 抵抗値が真空内では変化せずに大気中に取り出してから上昇する ことについては、大気中の酸素もしくは大気圧のどちらかが原因と考え られるのですが、酸素については上で述べたようにAl表面の酸化が抵抗 変化に無関係であるとすれば、大気圧しか原因がありません。そうする とSiへのAlの拡散が室温で真空では起こらず大気圧がAlにかかると拡散 して行くと言う説明くらいしか出来ません。
    (A3) Al表面にも酸化膜はあります。薄いのでトンネル現象であたかも 導通しているように見えるだけです。しかし、Alの酸化膜は不動態をつ くりそれ以上の酸化を防ぐので、時間とともに変化するのはシリコンの 酸化の方です。紙ヤスリでできた凹凸の間を通って酸素はどんどん入り 込み、シリコン酸化膜がどんどん厚くなっていきます。

    いずれにせよ、紙ヤスリで研磨するのはお止めなさい。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 7 Dec 2005 20:54:03 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭様
    D大学のMです。
     詳しく解説してくださり、とても参考になりました。まだまだ勉強不足の部分が多々あるようです。 どうもありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------

    689. CrとITOの熱膨張係数

    Date: Mon, 05 Dec 2005 12:27:35 +0000
    Q: 佐藤様
    初めまして、N社のKと申します。(匿名でお願いいたします)
    CrとITOの物性を調べているうちにこのHPを知りました。

    質問なのですが
    CrとITOの熱膨張係数、もしくはそれらが記載されている文献等をご存知でしょうか?
    現在探しているところなのですがなかなか見つかりません。
    もしご存知であれば、よろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 06 Dec 2005 00:32:03 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
    Crの熱膨張係数は理科年表に載っています。安い書物ですから技術者なら個人で 持っておくべきです。
    Crの線膨張係数αは
    T=100K α=2.3×10^-6
    T=293K α=4.9×10^-6
    T=500K α=8.8×10^-6
    T=800K α=11.8×10^-6
    ITOは通常基板上に成膜されるので、基板の膨張係数の影響を受け、ITOだけの線 膨張係数はデータがありません。
    しかし、組成はIn2O3:SnO2=90:10なので、ほぼIn2O3の値と同じと考えておいて よいでしょう。
    K. D. Kundra and S. Z. Ali:J. Appl. Cryst. (1970). 3, 543-545
    に"Thermal expansion of In2O3"という論文が載っています。
    これは粉末試料の格子定数の温度変化をXRDで観測したもので、
    Δa/a= (7.20±0.06) x 10^-6 T+ (1.15±0.08)±10^-9 T^2
    となっています。低温ではT^2の項は無視できるので、
    α=7.2×10^-6
    としてよいでしょう。
    ちなみに、プラスチックの熱膨張係数は旭化成のHPによれば、
    Aramica(Type R) 2×10^-6
    Polyester(PET) 12×10^-6
    Polyimide    20×10^-6
    ----------------------------------------------------------------

    690. シリコン酸化厚膜の用途

    Date: Tue, 6 Dec 2005 12:40:25 +0900
    Q1:私はO大学四回生のYと申します。(匿名希望)
    現在シリコン酸化膜の低温高速生成について研究しています。もともとはTFT用の酸 化膜を作成していたのですがここにきて問題がでてきました。そこで、ある程度膜厚 の必要な酸化膜の用途が無いものかと思い質問させていただきました。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Dec 2005 14:37:22 +0900
    A1: Y君、佐藤勝昭です。
     どのくらいの膜厚までできるのですか。
    アモルファスSiO2ですよね。これはいわば溶融石英(石英ガラス)です。
    従って、十分な厚み(μm以上)があり光透過性がよければ、光導波路 などの光学的用途に使えると思います。
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Dec 2005 15:54:18 +0900
    Q2:返信ありがとうございます。では、石英ガラスではなく、シリコン基板上のシリコン 酸化膜の用途で思い浮かぶものありませんか?(膜厚10~100nm程度です)
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 6 Dec 2005 18:20:01 +0900
    A2: Y君、佐藤勝昭です。
     10-100nmの薄さでも膜質がよければキャパシタの誘電体としては使え るでしょう。また、透明電極を上に着けて高い電界を印加しSiO2の真性 欠陥や添加不純物による発光デバイスをつくることも考えられます。
     しかし、研究上のことは、指導教員と相談すべきでしょう。
    ------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 7 Dec 2005 13:22:07 +0900 AA: 返信ありがとうございます!ぜひ参考にさせていただきます!
    ------------------------------------------------------------------

    691. 遷移金属錯体の磁化率への軌道角運動量の寄与について

    Date: Tue, 6 Dec 2005 16:08:39 +0900
    Q: はじめまして。H大理学部化学科2年のSです。(匿名希望)物質の磁性について、 特に3d金属の錯体の磁化率について勉強しているのですが軌道角運動量の磁化率 への寄与がわかりません。常磁性物質においてどのようなときに軌道角運動量が消失し、 どのようなときに寄与するのか教えていただけないでしょうか? 磁性は不対電子によって起こり、スピン角運動量と軌道角運動量が関係して いるということはなんとなくわかるのですが。
    -------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 7 Dec 2005 10:14:19 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
     大学名を書いてください。NETでは匿名にしますから。
    3d軌道は配位子のp軌道と結合してもとの軌道ではなくなるため、も はや軌道角運動量はよい量子数ではなくなっています。このため、3d 遷移金属イオンの原子磁気モーメントはスピン角運動量のみで説明され ます。このことを「軌道角運動量の消失」といいます。
    希土類では4f軌道が結合に使われないので原子の軌道状態がそのまま消失しないで生 き残っているので、全角運動量J=L+Sがよい量子数になるのです。
    以上のことは、どんな磁性の磁性の教科書にもでています。
    このメールは返送されてきました。不誠実な質問は困ります。
    ------------------------------------------------------------------------

    692. ITOとAgペーストの界面の不具合

    Date: Thu, 8 Dec 2005 10:27:27 +0900
    Q: 東京農工大学副学長
     佐藤先生

     はじめまして。株式会社S社のUと申します。
     小職は、以下のようなITOのトラブルを経験し、webで検索するうちに 貴研究室のホームページを見つけまして、ご相談する次第です。
    (恐縮ですがweb公開時は匿名でお願いできますでしょうか)

     液晶セル(注参照)をしばらく(数百時間程度)使用しているうちに、 ITOとAgペーストの界面において何らかの変性が生じ、電気抵抗が1000 倍以上に増加す不具合が発生しております。この変性は、以下のような 特徴を持っています。
    ・同時には片側でのみ起こることが多いが、両方に発生することもあり、 また片方で発生する場合、発生する側は一定していません。
    ・異常の発生した方のAgペーストの界面は、色が正常側より黒っぽく (ガラス板,ITO越しに見える)なっています。
    ・異常側のAgペーストをはがす(カッターナイフで削る方法と、はんだ ごてを当てハンダ吸取線で吸い取る方法の2種類実施)と、肉眼でITO が付いていた痕が目視(若干白濁)できます。
     SEMで観察しますと、異常側ITO一面に、数umのAgの粒が食い込んでい るように見える部分、またAg粒が食い込んでいたのがとれた跡と思われ るくぼみが見えます。
     またEPMAで分析したところ、異常側ITOでは以下のようなことが起こ っていることが分かりました。
    ・ITOに「食い込んでいる」Ag粒周辺はIn濃度が高くなっている。  また食い込んでいたAg粒がとれた痕と思われるへこみ部分ではIn濃度 が低下している。
    ・剥離したAgペースト側にInが検出される。
    ・Ag腐食性の元素(S)は、界面付近では検出されない。

     このような状態になった原因については、ITOの物性が全く理解でき ておらないこともあって分からず苦慮しており、以下質問申し上げます。

    Q1:AgとITOが相互作用し、ITOが劣化する可能性はあるのでしょうか。
    Q2:ITOではSnが導電を担っているとのお話(No.609 ITOの電気分解によ る導電性の劣化)がありましたが、Inが減少しても導電率は低下しない のでしょうか。量の多寡にもよるのでしょうが、ITOの結晶構造が破壊 されたりしているのかななどと想像したりしているのですが。

    注:液晶セルについて
    (構造)2枚のITO付きガラス板(パターンは全面ベタ)間にTN液晶(90 度偏光)を封入し、2枚のITOそれぞれからリード線を出したもの。
     リード線はITO上にAgペースト(銀が主成分で、樹脂はエポキシである 以外詳細不明)を接着することにより取り出しいます。
    (駆動方法)交流電圧信号(1kHzの矩形波,振幅±25Vmax)を印加
    -----------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 08 Dec 2005 23:13:49 +0900
    A: U様、佐藤勝昭です。
     お困りのようですね。症状から見る限り、AgがITOに拡散し、ITOを食ったらしいです ね。わたしは、こういった現象の経験がありませんが、一般に銀は拡散しやすく、水分 が存在し、電界がかかっていると、電気化学的にAgが移動し、ITOの酸素と結合して酸化 銀ができるなどの現象が起きているのではないでしょうか。白いのは酸化銀かも知れま せん。

    観測された現象と関係があるかどうか分からないのですが、ITO上に銀を蒸着したとき、 水分の存在下では、小さな銀の粒子が消えて、大きな粒子が育っていくというOstwald ripeningという現象が知られています*。論文を読んでみてください。参考まで。
    ---------------------------------------------------------------------
    *Peter L. Redmond, A. J. Hallock, and Louis E. Brus:
    Electrochemical Ostwald Ripening of Colloidal Ag Particles on Conductive Substrates;
    NANO LETTERS Vol. 5, No. 1 (2005) 131-135
    によれば、
    「溶融石英スライドガラス、ITOコート石英スライドガラス、劈開直後の熱分解グラファ イト(HOPG)基板上に銀薄膜を10^-6Torrの真空中で熱蒸着した。
    ・・・
    1.5nm厚の銀を熱蒸着すると約20nmの銀ナノ粒子の列が生じ、15nmの場合は薄膜の破壊が 生じる。空気中で保存した場合は何らの変化が起きないが、純水に曝した場合、ITOおよ びHOPG基板上の銀ナノ粒子列は大きなファセットをもつ構造に成長する。透明なITO基板 上では暗い紫から透明へと変化する。EDX 元素解析では、純粋な銀であることが示され た。・・・」とあります。
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Fri, 9 Dec 2005 10:57:44 +0900
    Q2: 東京農工大学副学長
     佐藤先生

     お忙しいにもかかわらず、早速ご回答いただいた上に、論文まで紹介し ていただき感激しております。
     何のデータもお見せせずご相談し大変失礼いたしました。いただいた アドバイスを元に、今後以下のような点を調べてみようと思っておりま す。また何かアドバイスいただければ幸甚に存じます。
    (なお勝手なお願いで恐縮ですが、WEB公開時添付データは非公開にし ていただけないでしょうか)

    ①酸化銀が出来ていたか
     Agペーストを剥離し、ITO面をEPMAによって分析した元素分布マップ を添付(EPMA_42map.jpg)致します。
     左上隅の"COMP"像で、白く光っているのが銀粒子で、黒ずんでいるシ ミ状の部分は銀粒子があった痕と考えています。
     AgがITOのOを奪ったとすると、その痕でO濃度が低下すると思うので すが、2段眼左側の"O"のマップでは、痕では酸素濃度が逆に高くなっ ています。ただしこれは、EPMAは深さ方向の分解能が低く、情報として ガラス基板SiO2の情報を持ってきてしまうため、ITOが減った分ガラス の成分が強く出ている可能性も高く、何ともいえません。
    →SIMS(弊社は持っていません・・・)など、特定の深さの情報を得ら れる装置で、「痕」を分析することを検討しております。

    ②水分はあったか
     液晶は空調のある室内で使用しておりました。
     ただし、製造時・輸送時はどんな環境であったか不明で、特にAgペー ストの材質は液晶メーカーが開示してくれないこと、EPMAではHは検出 できないことなどから界面に水分があったかどうか判明していません。
     傍証としては、S(大気中のSOx由来と推定)はAgペースト表面には見 られましたが、界面では存在せず、SOxが侵入していないので製造時に なければその後水分が入ったことはないのかなとも考えております。
    →湿度100%の中での試験を考えております。

    ③銀粒子の成長は見られるか
     銀ペーストを剥いだところ(SEMx50_SE.jpg)、及び銀ペーストのSEM像 (SEMx500SE.jpg)をご覧下さい。
     SEMx50_SE.jpgはSE像であるため、導電性のあるITOは暗く、その中に 無数の白い粒子がありますが、この粒子は可視光では灰色に見えます。  銀ペーストは(どういう理由か不明)2層構造のようでSEMx500.jpg の右側に見えるフレーク状の大きな粒子の方がITOに接しています。  さて、EPMA_42map.jpgの"COMP"像にありますように、ITOに「食い込 んでいる」Ag粒子は数um程度で、接していたフレーク状の粒子がさらに 成長したということはなさそうです。
    --------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Dec 2005 13:11:56 +0900
    A2: U様、佐藤勝昭です。
     お申し越しの件はかなり具体的なトラブルの相談ですから、一般性が なく、「なんでもQ&A」の趣旨に沿いませんが、私の所見を述べてお きます。
     ①確かに酸素がどこから来たかを知るのは難しいですね。③によれば 銀粒子そのものがITOを破壊したとは考えられないので何らかの銀化合 物の形成などを考えるべきではないかと思うのですが・・。
     ②市場に出た後どのような条件下で使われるかはわからないので、最 悪の場合を想定する必要があるでしょう。日本の夏場の湿度は相当に高 いので、欧州で起きないようなこともしばしば起きると言われています から。ただ銀ペーストの場合、有機溶媒が浸透して悪さをする場合もあ るので、水分以外も考える必要があるかも知れません。銀ペーストの膨 潤や収縮にともなうITOの劣化や剥離も検討すべきでしょう。
     ③たしかにSEMを見る限り、接していた銀粒子がさらに成長したとい うことはなさそうですね。
    ---------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Dec 2005 19:36:56 +0900
    AA: 東京農工大学副学長 佐藤先生

     ご多忙なおり、また「物性なんでもQ&A」の主旨にあわないにもかか わらず、貴重なアドバイスを頂き、本当にありがとうございます。
     
    >  ①確かに酸素がどこから来たかを知るのは難しいですね。③によれば > 銀粒子そのものがITOを破壊したとは考えられないので何らかの銀化合 > 物の形成などを考えるべきではないかと思うのですが・・。
     銀粒子が、どういう化合物になっているかどうかを調べることも検討 いたします。

    >  ②市場に出た後どのような条件下で使われるかはわからないので、最 > 悪の場合を想定する必要があるでしょう。日本の夏場の湿度は相当に高 > いので、欧州で起きないようなこともしばしば起きると言われています > から。ただ銀ペーストの場合、有機溶媒が浸透して悪さをする場合もあ > るので、水分以外も考える必要があるかも知れません。銀ペーストの膨 > 潤や収縮にともなうITOの劣化や剥離も検討すべきでしょう。
     弊社の材料解析を担当した技術者からも、銀ペーストが乾ききってい ない状態があったのではないかとの意見がありました。何とか再現実験 を試みたいのですが、材質・塗布の方法などが不明で  とにかく今後調査が進展しなにか分かりましたら、またご報告させて いただきます。
     どうもありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------

    693. Fe-Ni合金の飽和磁束密度

    Date: Sat, 10 Dec 2005 09:48:48 +0900
    Q: A大学4年、Kと申します(匿名を希望します)。この度、貴HPを拝 見し、現在、私が抱えている疑問に関して、初歩的なものではないかと思いつつも、 厚顔無恥ながら質問をさせていただこうと踏み切った次第です。使用しているサーバ の関係上、フリーメールであることをご容赦ください。

    現在、Fe-Ni二元系合金の飽和磁束密度曲線(横軸、組成。縦軸、飽和磁束密度。試料 はバルク合金。1000度で熱処理後、炉冷のもの。印加磁界は120kA/m、1.6kA/m、 240A/m、80A/m、32A/m の5種類)について考えているのですが、

    1) 印加する磁界によって飽和磁束密度が変わるのは何故でしょうか? 単純に考え ると32A/mで試料が飽和するなら、それ以上に磁界を強めても飽和磁束密度は変わら ないと思うのですが。磁歪で形状が変わり、形状磁気異方性について考慮する必要が でるのでしょうか?
    2) Fe-30%Ni付近でbcc→fcc の変態が起こるので、この組成で見かけ上、飽和磁束密 度が落ちるのは納得できるのですが(印加磁界120kA/m の飽和磁化曲線で確認)、印加 磁界が弱まるにつれ、飽和磁束密度が落ちる組成がFe-20%Ni付近に移行するのは何故 でしょうか?
    3) 印加磁界80A/m、32A/m においてFe-63%Ni付近で飽和磁束密度が落ちるのは何故で しょうか? また、印加磁界120kA/m、1.6kA/m、240A/m において、それが確認でき なくなるのは何故でしょうか?

    の3点に関し、ご回答願えればと思います。回答を待つのに並行して、自分でも参考 書等読み進めるつもりです。宜しくお願いします。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 10 Dec 2005 20:41:47 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aはこのような個々の問題に答えるのが目的ではなく、一般性のあること にお答えするためのもものです。A大なら、I先生、S先生というこの道の専門家 がいらっしゃいますので、よくご相談されればよいのではないかと存じます。
    (1)理由ははっきりしないのですが、ヒステリシス曲線は、弱い最大磁界で測定したも のと強い最大磁界で測定したものとですっかり違うという話はよく聞きます(金研の高梨 先生がFePtでそういう話をしておられたように記憶します)。完全な単結晶ならともかく、 多結晶の焼結で作製された試料の場合、一様性のなさ、欠陥などの存在のため、磁気余効 などいろいろな現象があり、それによって最高印加磁界の大きさに依存してヒステリシス が変化する現象が現れているようです。ご指摘のように磁歪も絡んでいるかも知れません ね。
    (2)印加磁界によって変化するのは、やはり内部の結晶粒の組成や磁気的性質が一様で ないことに起因していると推測出来ます。1000℃という処理温度と処理時間に問題がある かも知れませんね。
    (3)強い磁界を加えると静磁的な相互作用が磁気異方性に打ち勝って、飽和するが、弱 い磁界では磁気異方性のため、十分に磁化の回転が起きないだけのことではないかと思い ます。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Sat, 10 Dec 2005 22:52:45 +0900
    AA: お早い回答ありがとうございます。
    申し訳ございません。貴HPについて、理解が足りませんでした。
    ぜひ、本学教員に相談してみるつもりです。

    今回、貴HPの趣旨にはずれた質問にも関わらず丁寧にご回答いただき、感謝いたします。
    回答を参考に、自身でも次いで様々な模索を行い、疑問の氷解に努めるつもりでいます。
    本当にありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------------

    694. シリコンと酸化チタンのマイクロ波誘電率と誘電損失

    Date: Mon, 12 Dec 2005 17:04:34 +0900 (JST)
    Q: 佐藤様
    物性何でもQ&Aを見させていただき、早速、質問を送らせていただきました。
    私はS高専専攻科2年生のHと申します。WEBには匿名でお願いします。

    私は現在、マイクロ波について卒業研究をしています。比誘電率のことで お聞きしたい事がございます。
    チタン酸バリウムや水などメインの比誘電率は調べることができましたが、 知りたいシリコンと酸化チタンの比誘電率はどうしても調べることができませんでした。
    比誘電率は温度と周波数によってことなります。私は電子レンジを用いて マイクロ波実験を行っています。なので、2.45GHzでのシリコンと酸化チタンの 比誘電率を教えてください。

    それと、εtanδ誘電損率につしても、シリコンと酸化チタンをお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Dec 2005 18:38:52 +0900
    A: H君、佐藤勝昭です。
     酸化チタン(TiO2)のマイクロ波誘電率については、
    Edward S. Sabisky and Hendrik J. Gerritsen:
    "Measurements of Dielectric Constant of Rutile (TiO2) at Microwave Frequencies between 4.2° and 300°K";
    Journal of Applied Physics 33 [4](1962)1450-1453
    に記載があります。
    「低温では, 比誘電率はc軸方向で極限値256、a軸方向で131という値を とる。4.2Kにおける純粋のTiO2のtanδは2.5×10^6であるが、0.12%Cr- ドープおよび0.2%Fe-ドープでは1桁増大した。」

     シリコンについては、Microstripについて書いたHP
    (http://www.ee.surrey.ac.uk/Personal/D.Jefferies/mstrip.html)
    に「比誘電率12, tanδ 5/1000 (高抵抗試料)

    なお、Siベースのマイクロストリップ線の実効的な比誘電率は、
    http://www.usmicrowaves.com/appnotes/usm_an_101.htm
    によれば、1GHzでは12付近ですが、100GHzでは2.5程度に低下すると書 かれています。
    ------------------------------------------------------------------------
    Date: Mon, 12 Dec 2005 23:06:06 +0900 (JST)
    AA: 佐藤勝昭
    とても早いお返事で驚きました。本当にありがとうございます。
    ご親切にHPのご案内していただき、早速、参考にさせていただき、勉強します。
    --------------------------------------------------------------------------

    695. 薄膜の誘電率の光学的決定法

    Date: Tue, 13 Dec 2005 19:29:22 +0900
    Q: はじめまして、N大学4年 W(公開時匿名希望)と申します。
    この度は貴HPの情報を聞き、現在抱えている問題についてのご質問をさせていただ きたく、メールさせて頂きます。

    現在、私の研究室では主に薄膜の作成と分析・応用をテーマとして活動しているので すが、分光光度計を用いた測定で得られる透過率曲線と膜の誘電率との間には関係が あるのでしょうか?
    以前、干渉縞から誘電率を求めることが出来るといった話を耳にしたことがあったの ですが、その方法についてお教えいただけないでしょうか?
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Dec 2005 09:52:29 +0900
    A: W君、佐藤勝昭です。
     透明物質であれば、薄膜の干渉縞から屈折率nを求める方法は簡単で、 薄膜関係のハンドブックに載っています。吸収のある物質では、エリプ ソメトリで屈折率nと消光係数κが求まります。
     光の振動数における比誘電率εの実数部と虚数部はそれぞれ、
      ε'=n^2-κ^2
      ε"=2nκ
    で与えられます。透明物質ならκ=0ですから、εは実数で
      ε=n^2
    です。
     この値が、直流(DC)での誘電率に等しいかというとそれほど簡単では ありません。一般に誘電体におけるDCの誘電率には、添付図のように
    (1)界面分極
    (2)配向分極
    (3)イオン分極
    (4)電子分極
    からの寄与があります。これらの寄与は、周波数によって異なります。 可視光領域では、(1)-(3)の寄与はないので(4)の寄与だけになります。 シリコンのような等極性の物質では(1)-(3)の影響はありませんから光 学的に見積もった誘電率は、DCの誘電率にほぼ等しいのですが、イオ ン結晶の場合は(3)の効果がかなり大きいですし、液晶のように永久双 極子を持つ場合には(2)の効果を、セラミクスのように粒界があるもの では(1)の効果も加わるので、光学誘電率とDCの誘電率は一致しませ ん。
    シリコンの例で言うと、DCの比誘電率はε=13, 一方透明領域での屈折率はn=3.55(1eV)なので、n^2=12.6とほぼ一致し ます。
    一方、NaClでは、DCの誘電率はε=5.9ですが、屈折率は1.54(2eV)なの でn^2=2.37で全く合いません。
    ---------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Dec 2005 10:34:29 +0900
    AA: N大Wです。
    迅速、且つ丁寧なご返答ありがとうございました。
    また不明な点が出来ましたらお世話になると思いますので、よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------

    696. なんでもQ&Aのファイルサイズを縮小して欲しい

    Date: Tue, 13 Dec 2005 20:13:09 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生:
    大阪大学工学研究科所属 (詳細は署名) の小林と申します.
    先生の書かれている "物性なんでもQ&A" はいつも参考にさせて頂いています.
    一つ困ったことがあるのですが,このページは情報量が多すぎて,ブラウザのフ リーズが頻発します.そこで,ページを分割するなどしてデータ量を軽量化して 頂きたいたいと思いますが,可能でしょうか?
    今後も多数の人が先生のページを訪れると思いますので,改善の方を是非ともお 願い致します.
    --------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Dec 2005 09:08:08 +0900
    A1: 小林君、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aをご覧いただきありがとうございます。
    ページ分割を考えなければならない時期に来ているのですが、副学長業 はびっくりするほど多忙で、現在は、会議と会議のはざまの時間を見つ けてメンテしている状況で、時間がなくて、・・。
    -------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Dec 2005 11:35:32 +0900
    A2: 小林君、佐藤勝昭です。
     あなたの提言を入れて昨夜作業をし、とりあえず、2003年12月以前の 分と2004年1月以降の分に二分割しました。
    これに伴い、五十音キーワードインデックスを別ファイルとし、2つのファイルを 参照する形に改めました。なお、本文同士の参照関係を修正していないので、リンク切 れが起きる可能性があります。また、不思議のページからの参照が一部リンク切れに なっています。どの程度軽くなったか、チェックしてみてください。
    -----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Dec 2005 18:48:06 +0900
    Q2:佐藤勝昭先生:

     大阪大学 伊東研の小林です.お忙しい中での更新作業は大変ですね.

     ページが修正されたということで確認してみましたところ,表示は軽量化され ましたが,ブラウザでのフリーズは発生しました.
     ただ,ホームページエディタでのフリーズが無くなりましたので,改善はされ ていると思います.ブラウザでのフリーズをなくすにはもう少し軽量化が必要だ と思います.
     あと,先生の編集されているページをホームページエディタでチェックさせて 頂いたところ (僭越な振る舞いで申し訳ありません),添付ファイルに示す箇所 にコードエラーがありました.
     ブラウザでフリーズが発生するのは,ページの情報量が重いこととコードエ ラーがあって解析が出来ないという二つの要因が考えられますので,修正された 方がよいかと思います.
     修正箇所は添付ファイル (画像形式) に示してあります.

     索引とのリンク,ページの分割の仕方は難しいですが,引き続き調べてみたい と思います.もしかしたらお力添えになれないかも知れません.

     WWWサイト内の日本語全文検索システム Namazu を利用する方法が一つの案と して考えられますが,私は利用したことがないのでよく分かりません.
    検索エンジン (Google,Yahooなど) をローカルで (大学のサーバー上) 構築する 手法のようです.

    <日本語全文検索システム Namazu>
    http://www.namazu.org/#news
    ----------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 15 Dec 2005 19:17:59 +0900
    小林君、佐藤勝昭です。
     早速のアドバイスありがとうございました。ホームページビルダでチェックしていただいた箇所、一応修正しました。
    -------------------------------------------------------------------------

    697. ルチルとアナターゼのマイクロ波特性のちがい

    Date: Wed, 14 Dec 2005 16:53:23 +0900 (JST)
    Q: 佐藤勝昭様
    先日、
    物性何でもQ&Aを拝見して質問させていただいた、S学校2年生のHと申します。前回と同じく匿名でお願いいたします。 私はマイクロ波の卒業研究をしています。物質として酸化チタンを使用しております。酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3種類の結晶構造があります。光触媒は3つの結晶構造の中で、バンドギャップが大きい、アナターゼ型が効果的であると報告があります。しかし、マイクロ波(周波数2.45GHz)に使用したところ、実験がうまくいきませんでした。
    そこでルチル型に変えたところ実験は成功とまではいきませんが実験データを得ることができました。光触媒ではバンドギャップの影響で異なることがわかりますが、マイクロ波では何が影響すると考えられますか?マイクロ波は注目されていますが、詳細は明らかになっていないものが多いので、調べてもこれといった参考になるものがありませんでした。よろしくお願いいたします。
    -----------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Dec 2005 18:02:38 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     ご質問の意味がよくわかりません。
    「マイクロ波(周波数2.45GHz)に使用したところ、実験がうまくいきませんでした。そ こでルチル型に変えたところ実験は成功とまではいきませんが実験データを得ることがで きました。」とありますが、「マイクロ波触媒作用があるかどうか」の話でしょうか?
    光触媒作用は、光励起された電子・正孔が空気中の酸素を活性酸素O2-に変えたり、水分 に含まれるOH-イオンをOH・ラジカルに変えたりすることによって起きると考えられてい るようです。マイクロ波照射によっては電子も正孔も生成しません。しかし、もし、何ら かの理由で初めからキャリアが存在するなら、それがマイクロ波の助けを借りて空気中の 酸素や水分と反応してラジカルを作る可能性があるでしょう。アナターゼは絶縁性が高く、 キャリアが少ないのに対しルチルは低抵抗でキャリア密度が高いのでマイクロ波による触 媒作用がでたとは考えられないでしょうか。私は、この方面の専門家ではないので、間違 っているかも知れません。あなたの指導教員とよくディスカッションして下さい。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Dec 2005 18:53:14 +0900 (JST)
    Q2: 佐藤勝昭様
    ご回答どうもありがとうございます。説明不足で申し訳ございません。
    マイクロ波の触媒作用の質問ではなく、ある発熱体と酸化チタンのペレット状にしてマイクロ波(2.45GHz)を吸収させました。このとき酸化チタンのアナターゼ型よりルチル型のほうがマイクロ波を多く吸収したのが原因か、温度が高温になりました。なぜ、ルチル型を発熱体と組み合わせたときに温度が高くなるかということです。指導教員と、ディスカッションしましたが、原因がわかりませんでした。そこで何か手がかりはないかと、質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 14 Dec 2005 19:49:57 +0900
    A2: H様、佐藤勝昭です。
     おそらく、ルチルの方がアナターゼより誘電率の虚数部ε"が大きかったのでしょう。 ε"が大きくなるのは、抵抗率が小さいこと、および、誘電損失が大きい場合です。
    先の回答にも書きましたようにルチルはアナターゼより低抵抗と言われています。 多分それが原因と思いますが、膜質が悪く誘電損失が高かったのかも知れませんね。
    --------------------------------------------------------------------------------
     

    698. 半導体における非線形電流電圧特性

    Date: Sat, 17 Dec 2005 16:48:23 +0900
    Q: はじめまして。O大学のM(三回生)と申します。
    なお、大学名、氏名等は公開時には匿名(イニシャル)でお願いします。
    早速質問なのですが、金属の常温での電流電圧特性は線形になっていますが、半導体ではそうではないのは何故なのでしょうか? よろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Dec 2005 00:31:30 +0900
    A: M君、佐藤勝昭です。
     低電圧または小電流の状態で測定すれば、半導体自身の電流電圧特性は本来線 形でなければなりません。しかし、次のような場合に非線形になります。
    ①金属電極との接触においてショットキー接合ができているとか、酸化物をはさ んで金属/絶縁体/半導体(MIS)接合ができているなどによる場合。
    ②絶縁性に近い半導体において空間電荷制限電流(SCLC)が流れる場合。
    ③高電界が印加され高い運動エネルギーをもった電子が有効質量の大きなバンド に遷移した場合。(例えば、GaAsに見られるガン効果)
    ④半導体内でジュール発熱し温度が上がってキャリア数が増加し、抵抗が下がっ た場合。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Dec 2005 15:08:19 +0900
    Q2: Mです。ご丁寧なご回答有難うございます。

    ④についてですが、ジュール熱で温度が上昇すると、キャリア数は増加するのですか?
    私は、キャリア密度はCT^3/2EXP(-E/2KT)に従って指数的に減少すると思っていたのですが。
    --------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Dec 2005 15:20:28 +0900
    A2: M君、佐藤勝昭です。
     キャリア密度はCT^3/2EXP(-E/2KT)に従うので、
    T→大なら(-E/kT)は0に近づくので、EXP(-E/kT)は1に近づき、キャリア密度は 増大します。熱的にバンドギャップを越えて価電子帯から伝導帯に遷移が起きる ので、伝導帯・価電子帯にキャリアが増加します。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Dec 2005 15:25:40 +0900
    Q3: 何度も申し訳ありません。先ほどの質問ですが、完全に私の勘違いでした。ご迷惑おかけしました。
    ③のめやすは、数千ボルト程度でよいのですか?日常的な電圧下では考えなくてよい効果なのでしょうか。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Dec 2005 19:24:12 +0900
    A3: M君、佐藤勝昭です。
    ガンダイオードに加えるバイアス電圧を増加したとき、電流は最初のうちは電圧 に比例して増加しますが、3.2 KV/cmの閾値電界において電流は最大値をとり、 その後電流は減少します。この電界を得るには、10μm(0.001cm)の薄い試料に たったの3.2V加えればよいのです。
    -------------------------------------------------------------------------------------

    699. 真空にするわけ

    Date: Sat, 17 Dec 2005 16:11:30 +0900 (JST)
    Q: 広島大学大野です。いろんな時に真空計がいるのはなぜか?真空にする必要があるのはなぜか?
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Sun, 18 Dec 2005 00:45:26 +0900
    A: 広島大学大野君、佐藤勝昭です。
     学科名と学年を書いてください。
    また、質問の状況が不明です。
    (1)真空度を測る必要があるからでしょう?なぜそんなくだらない質問をするのですか?
    (2)どういう状況でしょうか?とにかく空気があると、本来の機能が発揮できないことによるのでしょう。
    状況によって違います:
     食品を扱う場合:主として細菌・汚染物質などを防ぐため、
     ブラウン管など電子を走らせる場合:空気中では気体分子と衝突することを防ぐため、
     蒸着装置:蒸発させた金属が酸素と結びついて酸化物を作ることを防ぐため、
    ・・・等、状況に応じて理由が違います。
    従って、なぜそのような質問をするのか、状況を書いてください。
    -----------------------------------------------------------------------------------

    -----------------------------------------------------------------------
    物性なんでもQ&Aメインテキストに戻る
    #1-#299に移動
    インデックス画面に戻る。