光と磁気改訂版
長らく絶版となってご迷惑をおかけしていた「光と磁気」ですが、ようやく改訂版出版の運びとなりました。多くの方から、励ましの言葉をいただきありがとうございました。旧版同様かわいがって下さい。以下に「改訂版のはしがき」、「目次」を紹介します。
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正誤表
改訂版のはしがき
「光と磁気」の初版が出版されてから13年の歳月が経過した。この間の急速な情報技術革命の進行は、扱われる情報量の飛躍的増大をもたらした。初版刊行当時、発売されたばかりだった光磁気(MO)ディスクは、第2、第3、第4世代と進化を重ね、現在ではリムーバブル書き換え型記録媒体の主役の地位を確固たるものとしている。また、光磁気記録技術をベースにしたオーディオ用ミニディスク(MD)は、カセットを駆逐する勢いで普及した。また、光ファイバー通信の飛躍的な進展は、光磁気アイソレーターの需要を大幅に増加させた。磁気光学効果はまさに情報技術を下から支える基礎の1つとなっている。
初版の出版以来、数々の励ましのことばに加えて、多くの読者からさまざまなご意見をいただいた。特に、初版では紙数の関係で割愛した縦磁気カー効果、横磁気カー効果の表式などについての記述に対する要請や、磁気光学の量子論による説明が難解である、あるいは、式の誘導がフォローできないなど多くのコメントをいただいた。第2版では、これらの貴重なご指摘にできる限りお答えするように改訂した。
この13年の間に、実験面では、磁性体作製技術の飛躍的進展により、超薄膜、多層膜、人工格子、ナノ構造などが作製され、特徴的な磁気光学効果が報告された。また、計算科学の進展により、第1原理計算に基づき多くの物質の磁気光学スペクトルが計算され、実験結果を驚くべき正確さで再現した。これらのすべてを網羅することはもとより不可能なので特に著しい進展が見られたものに絞って加筆した。著しい進展のあった光磁気記録技術、光アイソレータ技術などの応用技術については、その詳細に踏み込むことをせず、大きな流れを紹介するにとどめた。
さらに、初版当時、ほとんど研究の進んでいなかった近接場磁気光学効果、非線形磁気光学効果、X線磁気光学顕微鏡など多くの新しい実験が行われた。これらについては、章を追加して紹介し、今後の展望をのべた。
本書が初版同様、これから磁気光学をはじめようとしておられる方、基礎に立ち返って磁気光学を学びたい方など、光と磁気の関わりに関心をお持ちの多くの読者のお役に立てることを祈っている。
2001年10月
目次
赤字は新しく追加したところ,
青字は大幅な改訂をしたところです。
第1章 光と磁気
第2章 磁気光学効果とは何か
2.1 光の偏り
2.2 旋光性と円二色性
2.3 ガラスのファラデー効果
2.4 強磁性体のファラデー効果
2.5 磁気カー効果
2.6 磁気光学スペクトル
2.7 その他の磁気光学効果
2.8 光磁気効果
第3章 「光と磁気」の現象論
3.1 円偏光と磁気光学効果
3.2 光と物質のむすびつき--誘電率と伝導率--
3.3 光の伝搬とマクスウェル方程式
3.3.1 マクスウェルの方程式と固有値問題
3.3.2 ファラデー配置の場合
3.3.3 フォークト配置の場合
3.3.4 誘電率テンソルと伝導率テンソル
3.4 ファラデー効果の現象論
3.4.1 左右円偏光に対する光学定数の差と誘電率テンソルの成分の関係
3.4.2 ファラデー効果と誘電率テンソル
具体例
3.5 反射と光学定数
3.5.1 波数ベクトルの境界条件
3.5.2 斜め入射の公式
3.5.3 垂直入射の反射の公式
3.5.4 クラマースクローニヒの関係式
3.6 磁気カー効果の現象論
3.6.1 垂直入射極カー効果
3.6.2 極カー回転に対するクラマース・クローニヒの関係式
3.6.3 斜め入射の極カー効果
3.6.4 縦カー効果
3.7 コットン・ムートン効果
問題
第4章 光と磁気の電子論
4.1 誘電率と分極
4.2 誘電率の古典電子論と磁気光学効果
4.3 誘電率の量子論
4.3.1 時間を含む摂動論
4.3.2 誘電率の導出
4.3.3 久保公式からの誘電率の分散式の導出
4.3.4 誘電率の分散式の物理的解釈
4.3.5 バンド電子系の磁気光学効果
4.4 磁気光学スペクトルの形(1)-絶縁性磁性体の場合
4.5 磁気光学スペクトルの形(2)-金属磁性体の場合
4.5 遷移金属の自由電子と磁気光学効果
問題
第5章 磁気光学効果の測定法とその解析
5.1 測定の原理
- 5.1.1 直交偏光子法
- 5.1.2 回転偏光子法
- 5.1.3 振動偏光子法
5.1.4 楕円率の測定法
5.1.5 光学遅延変調法(円偏光変調法)
5.1.6 絶対値の校正について
5.2 スペクトルの測定法
5.2.1 光源
5.2.2 偏光子
5.2.3 分光器
5.2.4 集光系
5.2.5 λ/4板
5.2.6 光検出器
5.2.7 電磁石と冷却装置
5.2.8 光学素子の配置
5.2.9 電気信号の処理
5.3 磁気光学スペクトルから誘電率テンソルの非対角成分を求める方法
5.4 コットンムートン効果の測定
第6章 磁気光学スペクトルと電子構造
6.1 局在電子系の電子状態と光学遷移
6.1.1 鉄ガーネット
6.1.2 ビスマス添加希土類鉄ガーネット
6.1.3 Co置換磁性ガーネットの磁気光学効果
6.2局在系とバンド系の中間の系
6.2.1 遷移元素カルコゲナイド
6.2.2 希薄磁性半導体の磁気光学効果
6.2.3 遷移元素ニクタイド
6.2.4 希土類カルコゲナイド
6.2.5 希土類ニクタイド
6.2.6 ウラニウム化合物
6.3 金属および合金の磁気光学効果
6.3.1 鉄・コバルト・ニッケル
6.3.2 ガドリニウム
6.3.3 希土類遷移金属のアモルファス合金
6.3.4 遷移金属と貴金属の合金
第7章 光磁気デバイス
7.1 光磁気ディスク
7.1.1 光ディスク概説
7.1.2 光磁気記録の歴史
7.1.3 記録および再生の原理
7.1.4 光磁気記録媒体材料
7.1.5 記録のメカニズム
7.1.6 光学系とサーボメカニズム
交換結合多層膜の応用
7.2 光アイソレーター
7.2.1 光回路素子研究の経緯
7.2.2 光通信技術と光非相反回路素子
7.1.3 光アイソレータ・光サーキュレーターの原理と構成
7.2.4 アイソレーター・サーキュレーター材料
7.2.5 光導波路形アイソレーター
7.3 電流磁界センサー
7.4 磁気光学効果のその他の応用
第8章 磁気光学研究の新しい展開
クリックして内容をちょっと覗いてみてください。(テキストのみ、式なし、図なし)
8.1 メゾスコピック系の磁気光学効果
8.2 近接場における磁気光学効果
8.3 非線形磁気光学効果
8.4 X線吸収端のMCDとX線顕微鏡
第9章 さらなる発展をめざして
付録 A 磁性体の分類
付録 B 技術的磁化
付録 C 誘電率の式の久保公式からの導出
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