/~katsuaki/
第8回(6/1)の講義内容(復習)
半導体中の局在中心による光学遷移
価電子帯→イオン化ドナー、イオン化アクセプタ→伝導帯、
励起子:半導体中で電子と正孔がクーロン力で互いに束縛された状態
自由励起子と束縛励起子、励起子の束縛エネルギー、励起子分子などの話をしました。
遷移金属イオンの光学遷移:宝石の色
第8回の問題:比誘電率εr=10, 有効質量μ*=0.1m0として、励起子の束縛エネルギーを求めよ。ただし、水素中の電子の束縛エネルギーEH=13.6eVとする。この励起子は室温で安定かどうか判定せよ。
[解答]EB=(μ*/m0)EH/εr2=13.6meV 室温は約25meVであるからこの励起子は熱的に解離する。不安定!
質問コーナ
- 半導体レーザと固体レーザではどちらが効率がよいか。それぞれの利点欠点はなにか(神田)→A. 半導体レーザと固体レーザではポンピング(反転分布を作るための励起方法)が異なります。半導体レーザは電子と正孔を注入することで反転分布をつくりますが、固体レーザでは、光によって励起して反転分布を作ります。半導体レーザは極めて効率の高いレーザです。一方、昔の固体レーザはスペクトル幅の広いキセノン光源などで励起したので効率が悪かったのですが、最近は半導体レーザで必要な準位のみを励起できるので効率が高くなりました。いまでは同程度になっています。
- 物質固有の波動関数はどうやって定義し、どうやって求めるのか(神田)→A. シュレーディンガー方程式においてポテンシャルエネルギーの項がありますが、ここに、物質特有の周期ポテンシャルが来ます。実際のポテンシャルがどうなっているかは、計算してみないと分からないのですが、LCAOの場合、出発点としては原子のポテンシャルと原子の波動関数を用いて計算をはじめます。計算して得られた結果の固有関数を用いてポテンシャルを構築し、ふたたび電子状態を計算します。この時の固有関数は、原子の波動関数の1次結合になっています。この操作を繰り返し、1回の計算の前後でエネルギー固有値がはじめに設定された誤差以内になるまで計算します。
- 電子が2つ以上、正孔が2つ以上のトランジスタは可能か(中山)→A. 意味不明の質問です。ひょっとする「単電子トランジスタ」のことを言っているのですか?
- 励起子線はなぜ吸収スペクトルでは見えにくいのか(中山)→A. 吸収が強く、吸収端のすぐ近くにあるためバンド間吸収との区別が付けにくいのです。
- フレンケル励起子は本当に双極子相互作用でエネルギーを伝達するか(中山)→A. フレンケル励起子は、局所的な励起子で、電子も正孔も結晶中を移動しませんが、励起のみが移動するのです。
- 間接遷移でフォノンを吸収するというのなら、太陽電池は温度が低下するか(花田)→A. 室温ではフォノンを吸収するだけでなくフォノンを放出します。温度が低下することはありません。
- ポラリトンという言葉がでてきて、さーっと終わってしまったが(宍戸)→A. 光学フォノンと光とが結合した状態をpolaritonといいます。山田・佐藤他著「機能材料のための量子工学」157ページを参照して下さい。
- 配位子場遷移の3つの例がよく分からなかった(井海)→A. もう一度話します。
- ルビー・サファイアの他に加工用としてどんなレーザはあるのか(高橋)→A. YAG:Ndレーザがよく使われています。
- フォトンカウンティングの話を聞いていて、NHKがすばる望遠鏡につけたCCDカメラに似ていると感じた。→A. 弱い光の計測では、何らかの形で信号を積分しています。フォトンカウンティングも積分の一種でディジタルに数えているのです。
- Fe, Auを一層ずつ重ねて人工格子を作る話があったが、どのように実現するのか(替地)→A. MBE(分子線エピタキシー)という方法で超高真空で、Feを蒸着し丁度1原子層積んだところでシャッターを切り替えて、Auを1原子層だけ蒸着します。これを繰り返すのです。どうやって丁度1原子層を判断するかというと、RHEED(電子線回折)の強度をモニターしていてそれが1層毎の周期で振動するのでそのタイミングで切り替えるのです。
- メルクマールとは何か。ラグランジュポイントとは何か(溝口)→A. メルクマールはドイツ語でMerkmalと書き目印、指標などの意味です。ラグランジュポイントというのは私は知りません。
第9回 発光(ルミネセンス)
発光のいろいろ
- フォトルミネセンス(photoluminescence) 蛍光灯:放電による紫外線で管壁の蛍光体を励起
- カソードルミネセンス(cathodoluminescence) ブラウン管:電子線により蛍光体を直接励起
- エレクトロルミネセンス(electroluminescence)
- 真性EL: 電界により加速された電子が、発光中心と衝突し励起
- 注入形EL: 半導体のpn接合を通じて活性層に電子と正孔を注入し励起
- 有機EL: 電荷移動錯体などを通じて色素を励起
- 化学ルミネセンス (chemical luminescence)