教科書:佐藤・越田著「応用電子物性」(コロナ社)
第6回の学習事項
非線形光学効果復習
光吸収スペクトルの測定法:透過スペクトルの測定→反射の補正→吸収係数の算出
透過率T=入射光強度Iout/出力光強度Iin → T=(1-R)2exp(-αd) →αd=-ln(T/(1-R)2)=2ln(1-R)-lnT
光の波長と光子エネルギーの関係 E=hν=hc/λ →λをnm単位で表し、EをeV単位で表すとE=1240/λ’
h=6.6×10-34[J/s] c=3×108[m/s] λ’=λ×109
従ってE=19.8×10-17/λ’ [J]=(19.88×10-17)/(1.6×10-19)〜1240/λ
第6回の問題:
- 波長500nmの光の光子エネルギーはいくらか [解答] E=1240/500=2.48 eV
- 透過率Tが10%(=0.1), 反射率Rが50%の物質の吸収係数αを求めよ。ただし、厚さdは0.1cmとせよ log102=0.3, log10e=0.4と近似せよ。
[解答]
α={2ln(1-R)-lnT}/d={2ln(1-0.5)-ln0.1}/0.1=ln(0.25/0.1)/0.1=10ln10/4=10{log10(10/4)}/log10e
=10(1-0.6)/0.4=10 α=10 cm-1
(黒板で下線部の式の誘導を間違えていました。)
第6回のQアンドA
- 光の吸収スペクトルとX線回折(ブラッグ反射)には関係があるか(替地)→A. 光の回折格子による回折とX線のブラッグ反射が同じ現象です。吸収は光学遷移が関与しますから、回折現象とは全く異なります。
- レーザ用保護メガネの原理は?(溝口)→A. レーザ光の波長を強く吸収することによってカットします。
- 光学や半導体の分野ではMKS(SI)単位系でなくcgs単位系を用いることが多いがなぜか(神田)農工大の先生方はcmを単位として使うことが多いがMKSより実用的だからか(小井)→A. 半導体ではcgs系が実用単位として定着してしまっているので、SIで表すと誤解されることが多いからです。例えばキャリア密度は1cm3あたりで表しますし、移動度はcm2/Vsで表しています。移動度が1000といえば1000cm2/Vsであると業界の人は理解しますから下手にSI系を使うと混乱するのです。
- 光のバンドパスフィルターの話で、高(長?)波長領域のカットオフの理由が分からない(神田)→A. 格子振動や分子振動の共鳴波長が赤外線の領域にあるのです。
- 赤外線を使ったコンロはガスコンロと比べ加熱時間はどれくらいか(山中)→A. 底が平坦でガラスにピッタリくっつくタイプの鍋を使った場合、火力はガスコンロとほとんど変わりません。
- ガラスに代わる新材質はあるか(大和)→A. 目的に合わせて代替品が開発されています。例えば透明のアクリル板などのプラスチックは、多くの分野でガラスの代用となります。しかし、プラスチックは高温にすることができません。高温を必要とする目的の場合には、セラミクスが代替え品として使われます。
- CDとDVDの違い(中山)→A. 原理は同じですが記録密度が大幅に異なります。
- DVD-RWは書き込める回数が制限されているという話を聞いたがそういうものを使っていけるのか(花田)→A. computer system用のcode file memoryとしては良くありません。しかし、video tapeの代わりならば3000回くらいのcyclabilityがあれば良いのです。
- ディスクのレーザはなぜ横から見えるのか(宍戸)→A. レンズがあるのでそこで散乱されるからです。
- UVカットの化粧品の原理(ヘルメダン)→A. 紫外線を吸収して皮膚まで通さない材料が混入されています。
- 元素によってスペクトルが違うのはなぜか。(中山)→A. 元素によって原子核のまわりの電子状態が異なり光学遷移のエネルギーや選択則や遷移強度が異なるからです。
- 太陽電池の効率は13%くらいと聞きますが、これ以上の効率改善は無理か (小松)→A. 13%というのはアモルファスシリコンの話です。単結晶シリコンでも構造を工夫すると24%位の大きな値をとります。化合物半導体ではGaAs系単結晶で30%を越える効率が報告されています。CuInSe2系薄膜太陽電池では19%という効率が報告されています。
- 回路のフィルターについての質問がありましたが、回路の教科書をきちんと復習して下さい。
- マイクロ波通信やマイクロ波エネルギー伝送は人体に影響はないのか(花田)→A. マイクロ波(SHF)はアンテナの設計次第で光と同様の指向性を持たせることが出来るので、見通し内通信用では、アンテナを高いところに設置するので人体に影響を及ぼすことはありません。エネルギー伝送については、まだ実用的なシステムがないのでよく分かりませんが、指向性を高めればそれほど問題はないと思います。。