1/23の質問に対する解答
光磁気記録に関するもの
Q: 熱磁気効果が起きる理由が分からない(H2椿井)→10mWのレーザを直径1μmに集光すると1MW/cm2ものエネルギー密度になります。熱伝導とのバランスで考えますと、1μmのスポットは容易に100度くらい昇温します。これによってキュリー温度を越えると磁性体は磁性を失うのです。
Q: キュリー温度が室温より高いことは分かりますが、具体的に何度くらいか。(H1小室)→A: 材料によりますが、室温より100 150゜くらい高い様です。
Q: レーザ加熱が冷却するまでの時間と、レーザのスキャンスピード(ディスクの送り速度)の関連が設計上問題になるのではないか。(H2金子)→A: 高密度記録の場合には確かに問題になりますが、今のところかなりのマージン(余裕)があると考えられています。
Q: 光磁気材料にアモルファスを使うのは特別な理由があるのか。(Good Question)(久松)→A: 1971年に最初の光磁気ディスクが発明されたとき、MnBi(マンガンビスマス)という金属間化合物の多結晶薄膜が使われていました。しかし、多結晶ですから結晶粒界(結晶の粒と粒の境目)によって光が散乱されるために、読み出された信号はノイズだらけでした。現在光磁気ディスクに使われているTbFeCo系またはGdFeCo系のアモルファス合金は、結晶粒の集まりではないので、境目がなく連続的です。このためCN比(搬送波対雑音比)は20 30 dBも改善されました。
Q: 記録する際の熱でアモルファス構造は保たれるのか(H2原嶌)→A: ガラス転移点がキュリー温度より高い様な材料を選んでいますから、加熱冷却による構造の変化はありません。
Q: 再生のところで、回転角のことを述べていたが、何がどう回るのか分からなかった(H1井上)何がどう2゜まわるのか→A: 回転するのはレーザ光の偏光の方向です。磁化の向きに応じて偏光の傾きが変化するのです。
Q: MOディスクは何に利用されているのか(H1小野寺、笠原)→A: 大容量のフロッピーという使い方が多いようです。最近のようにソフトウェアが大きくなると、インターネットからダウンロードしても、フロッピーが何枚も必要ですし、ハードディスクはすぐいっぱいになります。また、ハードディスクはヘッドクラッシュが起きやすく、あっと言う間にすべてのデータが破壊されますので、常にバックアップをとっておく必要がありますが、フロッピーでは間に合わないので、MOディスクが有効です。最近は画像を扱うことが多く、必要性が高まっています。MDもMOディスクの一種です。ディスクの回転速度が遅いので、データ転送レートが遅いこと、データの信頼性が低いことの難がありますが、原理的にはMOディスクとおなじです。2 3年のうちにカメラ一体型ビデオのテープの代わりにMDが使われるようになるでしょう。
Q: MOディスクの劣化の原因は何か(H1佐藤太)→A: 現在市販されているMOディスクは、10年以上経っても劣化しないように作られていますが、劣化がおきるとすれば、主として熱変形などによってディスク基板のプラスチックが反って、保護膜が剥離してMO膜が空気にさらされた場合です。従って、直射日光に当てたり、熱湯をこぼしたりするとだめになるでしょう。
Q: SiNxとはどういったものか、この保護膜が傷ついたらレーザ光が曲げられるのではないか(H1中井)→A: 窒化珪素SiNxは透明なアモルファスの誘電体で、粒界がないので、空気や水分の進入を防ぎしっかりとMO膜を保護しています。2枚のSiNxでMO膜を挟んでいますが、一方は基板側にあり、他方はアルミ膜で覆われさらに樹脂で封止されていますから、ひどく曲げたり、高温にして基板が反ったりしない限り傷つくことはありません。
Q: SiNxが磁気光学効果を強めるために使われるそうだがその利点は(H2新山)→A: 記録されたビットの読み出し信号の大きさは旋光角に比例します。従って、回転角を強めて大きな信号を取り出すのです。ただし、同時に反射率が減りますので、適当な妥協点があります。
Q: MOの記録再生の速度はフロッピーやCD ROMに比べてどうか(H1)→A: 現行のMOディスクでは、記録の際に、消去、記録、ベリファイという3ステップをとっているので、HDDより転送レートが遅くなっています。また光ヘッドが重いのでアクセス時間がCD ROMより若干長くなっています。アクセス後の再生時転送レートはCD ROM4倍速と同等です。
Q: 光磁気記録にはMOやMDがありますが、将来新しいものが出てくる可能性はあるか(H1有馬)→A: 近接場磁気光学効果を使った記録・再生が注目されています。これだと、MOの100倍以上の高密度になりますが、実現はかなり先のことになりそうです。
Q: MO, MDは何度も録音できるのか(H1松木)→A: 100万回以上書き直しても大丈夫です。
Q: MOではぎりぎりまで書き込むとデータの信頼性がなくなるというのは本当か(H1柳川)→A: 最初出た頃の5"のディスクの場合、広い面積にわたって性能を均一に保つのが難しかったので、そういう噂がたったことがありましたが、いまはそのようなことはありません。
Q: MDは繰り返し録音するのに限度があると聞いたが本当か(伊藤誠)→A: 根も葉もない話です。MDは重ね書きの精度も高く限度はありません。
Q: MOディスクの磁化を消失させるのに温度を使う以外の方法はあるか(H2小島)→Hc以上の強い磁界をかければ消えますが、磁界のあるところが全部きえてしまいます。
Q: レーザで熱したとき隣のビットまで熱せられないか(H2宮川)→A: そうならないようなトラック感覚が選ばれています。
DVD,CDに関するもの
Q: DVDの規格で企業間でもめているがそれは何か。(H1藤村)→A: DVD ROMについては、原理がCD ROMと同じなので問題がなく、すでに規格が固まっています。問題は、DVD RAM, DVD Rなどです。DVD RAMとして一応PC=phase changeを採用する事が決まっていますが、反射率が低く、CD ROMとの互換性がとれないことが問題です。DVD Rについても、どの波長を選ぶかの問題が、互換性と絡んで結構深刻です。DVD RAMについては、PCで話がまとまりつつあり、Orange book(CD系の規格) ver.0.9が3月頃リリースされる予定です。ただし、DVD RAMより容量の少ない2.7GB程度になるようです。
Q: CDは1回書いたら消せないのか。(H1鈴木大)CDの録音はできないのか(H1窪喜)→A: 普通のCDは、プラスチックに凹凸を付けて作るのですから、再生専用です。CD Rはユーザが1回だけ書き込むことができますが消すことができません。CD R/WというのはPD(相変化ディスク)を使っていますので1000回くらいは書き換えられます。ただし、反射率が低いので普通のCD ROMドライブでは読めないことがあります。
Q: CDライタはどうやって記録させているのか。(H2及川)→A: CDROMの場合は、原盤にレーザで穴(ピット)を書き込んだものを作り、それをもとにして型をとり、プラスチックを流し込んでコピーを作ります。CD Rの場合は、色素を塗布したプラスチック板にレーザを当てて色素を分解し、穴をあけたのと同じ効果を持たせます。
Q: 真夏の暑い日に保存状態の悪いCDが劣化することはないか (H1小室)→A: 基板のソリがあると、保護膜がひび割れし、そこに水分が入って、劣化することもあります。
Q: CD, MD, DVDそれぞれの性能、性質が異なるか(H2チン)→A: ディジタル記録という点では同じですが、CDと現在発売されているDVD ROMは再生専用、MDは録音、再生、消去が可能です。CDとMDは音声用またはデータ用ですが、DVDはマルチメディア(映像、音声、データ)用です。MDにおいてはオーディオ信号を、DVDにおいてはビデオおよびオーディオ信号を圧縮して記録しますが、CDではいっさい圧縮してありません。CD, DVD ROMは物理的なピットのあるなしで記録しますが、MDは本質的に磁気記録です。
Q: (PDの)記録再生の保証の10万回というのはどういう理由で出てくるのか(H1児玉)→A: 専門家に聞いたところでは、アモルファスを加熱して一度融解し結晶化するときに、流動性のためにビットの位置が動いてしまうことや、かなり高温にするので、ディスクに細かい変形を与えてしまうことなどが原因しているそうです。10万回というのは、流動したビットに合わせてずらして記録再生することによって達成していますが、それをしないと1万回でだめになるそうです。
Q: (PDで)記録の際違う場所を選んで記録すると言うが、何万回もどうやって変化させるのか(H1望月)→A: 正確には、上の質問のように、記録の際にビットが流れるので、その流れの分だけあらかじめ計算してずらして前のを消して書き直すという意味です。そうしないと、前の分をきれいに消せなくなって、ノイズだらけになるのです。
Q: CD, MO, DVDのレーザ波長はCDは780 nm, MOは680 nm, DVD ROMは635 nm
Q: DVDは2枚の板を張り合わせると聞いたがなぜか。(H2篠原)→A: 5"のディスクだと反りやすいので、2枚張り合わせて反りを防いでいるのです。
Q: CD, MDがテープより音質の変化がないのはなぜか(H2古谷)→A: アナログの場合テープは引っ張り力が働くのでのびて音が悪くなります。CD, MDはプラスチック板なので、余り変化がありません。その上、CD, MDともディジタルですから音質に変化がありません。テープもディジタル記録だとあまりのび縮みの影響をうけないようです。
その他
Q: MRIについてもっと知りたい。(H1小野)→A: MRIはmagnetic resonance imagingの略で、体を構成する水に含まれる水素の核磁気共鳴(磁界中に置かれた核スピンが外部からの電磁波を共鳴吸収する現象)の周波数が水の周りとの結合状態を反映して変化することを使って、病気にかかった部分を正常部と分離して観測する方法です。X線CTと違って磁界の勾配を付けることによって位置に関する情報を与えています。
Q: 講義中にエルステッド[Oe]という単位が使われていたが、Oeの定義は?(H2馬場)→A: Oeはcgs単位系における磁界Hの大きさを表す単位で、1[Oe]=79.6[A/m]です。比透磁率が1のとき1[Oe]の磁束密度は1[G]です。10000[G]がSI系の1[T]となります。
Q: レーザダイオードはどういう働きをするのか詳しく教えて欲しい(H2飯島)→A: 教科書のp214を読んでみてください。なお、詳しくは、「光電子デバイス工学」(3年前期、越田先生)の授業を受けてください。
Q: 青色レーザの仕組み(P勝又)→A: サファイア基板に成長したGaNの多重量子井戸を使っているだけで、構造的にはGaAs系の赤のレーザと何ら変わりません。