光物性・光エレクトロニクス

光物性基礎

1.    光学吸収端とは何なのか→A. 半導体においてバンド間遷移による光の吸収が始まるエネルギーのことを言います。

2.    GaAsはなぜレーザをつくるのに都合がよいか→A. 直接遷移なのでフォノンの関与なく励起状態から基底状態に遷移でき、発光効率が高いからです。

3.    SiがレーザにならなくてGaAsがレーザになるのは、直接遷移・間接遷移の違いといったが、その違いはなにか→A. バンド構造がk空間で直接になるか間接になるかは簡単ではなく、結晶構造や格子定数がほとんどおなじでも元素がちがっただけで間接が直接になる例があるなど、微妙な話のようです。

4.    スペクトルとは→A. 分光された光の帯のことです。太陽光をプリズムにいれると虹色の帯が出来ますね。あれがスペクトルです。

 

色と光

5.    白黒という色は赤緑青のどのような組み合わせでみえるのか、黒は青緑赤がどれくらいの割合か(矢内)→A.白は赤緑青の視細胞が同程度ずつ刺激された場合です。カラーテレビのブラウン管でいえば、RGBの蛍光体がすべて光っているとき白く見えます。黒はどの色の光も出て来ない状態です。カラーテレビでいえばRGBともに光っていない状態です。ということは、TVのスイッチを切ったときのブラウン管の画面が黒なのです。灰色に見えるって?でもスイッチをいれて、光っていないところのコントラストが十分あれば、「黒く」感じるのです。

6.    人間が見ることによって色が生じるのか?人間が見ていないときは色はないのか→A.人間が見ようが見まいが物質固有の分光反射率を持ちます。それがどう見えているかは、生体によるのです。蝶やトンボは紫外線が見えるのでたぶん人間とは全く異なる色を感じていると思います。

7.    宝石の色は、金属と同じように自由電子の集団運動が原因ですか→A. いいえ、多くの宝石は絶縁物で自由電子はほとんどありません。ルビー(Al2O3:Cr3+), ブルーサファイヤ(Al2O3:Ti3+), グリーンサファイヤ(Al2O3:Fe3+), アクアマリン(MgAl2O4:Co2+)など透明でかつ着色している宝石の色は、Cr, Ti, Fe, Coなどの遷移金属不純物の配位子場遷移(酸化物イオンなど負イオンの配位子に囲まれた遷移金属イオンに束縛された3dn電子系の多重項における光学遷移)が原因です。(参考書に出ていますがきちんと理解するためには量子力学の知識が必要。)

8.    以前何かの講義で緑のノートは緑の光を吸収しているから緑なのだと聞いたことがあるが、今回の授業の反射の考えと矛盾する。どっちですか→A. 緑のインクや絵の具の色素は赤と青を吸収するので、緑色のみが色素を透過し、絵の具の媒質によって散乱されて緑に見えるのです。貴方は以前の講義で話を聞き間違えたのだと思います。

9.    この前Pentium(Intel社のCPU)をバラしたところシリコン上のチップが美しい光を放っていた。シリコンのインゴットの光とは違うように見えたがあれは何の反射ですか→A. たぶんSiO2の保護膜の厚みが半波長の整数倍になり干渉が見えたのだと思います。

10.水やガラスはなぜ透明なのか→A. 励起に要するエネルギーが可視光のエネルギーを越えているからです。

11.古くなった蛍光灯が白色でなく3,4色になるわけは?→A. 古くなって放電が十分に起きないと、紫外線の波長や強度が場所によって変わり、蛍光体の励起の仕方が変わるので色が変わるのだと思います。

光電子デバイス

12.青色レーザの話は聞いたことがあるが、めちゃ画期的なことだったみたいですね。どのくらいすごいことかよく分からないが。材料物性を理解できるよう頑張ります。→A. 青紫色レーザはサファイア(Al2O3)基板上にエピタキシャル[1]成長した窒化インジウム・ガリウム(In1-xGaxN)の薄膜結晶を用いて作ったpn接合ダイオードが基本になっています。サファイヤとInGaNは格子定数[2]や熱膨張係数などが異なるので良い結晶性をもつ薄膜を作るのが難しいかったのです。日亜化学の中村修二博士は有機金属気相化学堆積法 (MOCVD)に工夫を加えて薄膜成長に成功しました。また、その技術に基づいて高効率の青色発光ダイオードや青紫色レーザを作りました。

13.青色レーザの話があったが、青色にする必要は何か.→A: 授業で話したはずです。光を集光したとき、最小スポットサイズは回折限界のため、光の波長程度にしか小さくできません。従って、波長の短い光ほど小さなスポットを読み出せるのです。

14.発光ダイオードを直接見ると明るいのに、その光をものに当てて返ってきた光は暗いがなぜか。→A. 発光ダイオードは点光源に近く、輝度は非常に高い光源ですが、光の全パワーはせいぜい数100mWです。これに対し30Wの蛍光電球では輝度は低いが、光の全電力が数十Wもあるので明るいのです。

表示デバイス・液晶

15.液晶とはどのような状態か→A. 密度という点では固体ではなく液体に近いのですが、液体を構成している分子がある程度の平均的な規則性をもって配列しているのが液晶です。このことによって光学異方性が生じたり、配向分極を利用して電界で光学的性質を制御したりできるのです。

16.液晶はなぜ電圧をかけると光ったりするのでしょうか→A. 液晶は自発光しません。液晶は光をオン・オフするスイッチとして働きます。従って、透過型の場合光源がなければ表示装置として使えません。反射型の場合には外光が光源になります。

17.液晶がどのようにして映しだされるのかわからない。 字が浮かび上がるのがわからない。→A. 液晶ディスプレイはブラウン管と違って光るスポットが走査線で動いて行くわけではありません。画面全体が碁盤の目のようになっていてたくさんの画素から構成されています。各画素には縦横の番地があって、指定された番地のTFTトランジスタがonになると、液晶に電界がかかって分子が配向し、その画素が光を通すようになります。これでその画素が浮かび上がるのです。映像でも文字でも、たくさんの画素の点々から構成されているのです。もし興味がありましたら詳しい本を読んではいかがでしょう。たとえば、岩柳茂夫「液晶」(共立出版1984)岡野、小林共編「液晶、基礎編・応用編」(培風館1985)。

18.液晶分子が整列して字が現れるのがわからない。先生の図だと上から見て遮られないので何も表示されないのではないか。→A. 液晶にはネガ型とポジ型があります。偏光板の方向を90度かえてやれば選択されたところの表示は黒くなります。

19.液晶分子はどんな構造をしているのか。液晶は何から出来ているのか→A. フェノール基と末端基がくっついたものです。知りたい人は、岡野、小林共編「液晶、基礎編」(培風館)1章および11章を読んでください。

20.液晶ディスプレイで画像を出すことは、電気で配向を変えてやると言うことか→A. その通りです。

21.LCDにおける配向剤の役割がよく分からない→A. LCDでは液晶分子の並び方が重要です。TN液晶では、透明電極の界面に平行に液晶分子を並ばせる必要があります。このために界面分子配向を制御してやる必要があるのです。このためにPVA(ポリビニールアルコール)などの配向剤をスピンコート[3]してその表面をこする(rubbing)ことで上に付着した液晶分子を配向させます。この機構は複雑でまだ完全に解明されたわけではありませんが、表面張力、表面構造、分散力、水素結合などの様々な要因が絡み合っているのであろうとされています。(岡野・小林「液晶」(培風館)応用編第2章参照)

22.配向方向を決めるのに布でこするのが最良の方法とは意外だった。

23.液晶画面を指で軽く押すと波紋の様な円ができて不思議。分子配列が乱れるからと予測できる→A. 液晶の流れのメカニズムは複雑です。指で押すとたしかに分子配列に変化を生じますが、それ以外に、斜めに見た場合のように光路長が変化し、色が変わる効果もあります。

24.液晶画面はブラウン管よりも柔らかいか→A. 最近、携帯電話やポケット端末用にプラスチックの液晶が検討されていますが、これまでのものはすべてガラスを使っています。ブラウン管に比べれば、ガラスは薄いし平板なのでへこみやすいと思います。

  1. 配向剤を布でこするのは帯電させるためですか→A. 帯電ではありません。上に述べたように配向のメカニズムはよくわかっていません。なお、帯電するとTFTを壊すので、なるべく帯電しないように工夫しています。
  2. LCDでは一般に横よりも縦の方が視野角が狭いのはなぜか?→A. LCDにおいて斜めに光が透過する見えにくいのは、光路長が長くなり、リターデーション(2πdΔn/λ)がπ/2の整数倍からずれ、直線偏光が楕円偏光になるためです。実際のLCDではこれを補償するためのフィルムが使われています。横よりも縦の方が視野角が狭いのは、実用上横方向の斜め入射に対する補償を最適化しているためでしょう。

27.液晶テレビは見る角度で変な色になるがなぜか→A. 斜めから見ると光が液晶内をとおる距離が長くなり、光学遅延という現象を受けて偏光が乱れてしまうのです。

  1. STNはTNよりレスポンスが遅くならないか→A. 復元力が大きいのでむしろ早くなると言われています。

29.画面の彎曲で液晶の偏りは生じないのか→A. 液晶ディスプレイは偏光性を利用しているので、ガラスの彎曲があると、光弾性現象がおきて、複屈折を生じきれいに映らなくなります。

30.液晶がきれいと言うことは液晶分子が細かいと言うことですか→A. いいえ違います。分子の大きさは数ナノメートルです。画像の精細度は画素の細かさできまります。

31.液晶は温度が高くなると分子配列が崩れて使えなくなると言われましたが、高温で使える技術は開発されているのですか。→A. 液晶のブレンドの仕方でもう少し高温まで使えるものができます。冷却装置などは、技術的には可能ですが、コストの上から使われていません。

  1. 電界をかけると一様に並ぶが、電界をなくすと元にもどるのですか→A. Nematicの場合は元にもどりますが、強誘電液晶ではメモリ効果があるので、逆方向に戻す電気信号をかける必要があります。
  2. カラーにするためのフィルターがよく分かりません。RとかGとかって何ですか。→A. 人間が色を認識するのに赤(R), 緑(G), 青(B)の3つの視細胞があってという話は、金属の色のところでやりましたよね。そのときの授業に出ていなかったのならWebで見てください。(http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/z2000-5.html) 白い光を3つの原色に分けてそれぞれを別々にスイッチしているので、いろいろな色が出せるのです。
  3. 色の仕組みがRGBであるというのは、ブラウン管と原理は同じですか→A. そのとおりです。
  4. RGBのフィルターは縦に重ねてあるのですか、それとも横に並べてあるのですか→A. 横に並べてあります。ブラウン管の場合と同じです。

36.透明電極とは。→A. In-Sn-Oの化合物などは透明でいて電気をよく通します。

  1. 液晶を見過ぎると目が悪くなるというのは本当ですか→A. CRT(ブラウン管)よりちらつきが少ないので目にはよいといわれていますが…。キミのは画面が小さいせいではないですか?

 

TFT液晶

38.TFT液晶モニターを買ったが一部の画素の色が変化しない。欠陥のないものは作れないのか。→A. TFT液晶はあの画面の各画素ごとにTFT(thin film transistor薄膜トランジスタ)があって、それで液晶をとおる光をスイッチしています。こういう技術をgiant microelectronicsといって小さなものを大きな面積に並べる技術なので最も歩留まりの悪い製造工程なのです。コストが高くても良ければ、ほぼ完全なのを選び出すことができますが、秋葉原で売っている値段(14"で5万程度?)だと、少しくらいの欠陥は我慢して上げてください。

  1. 昔のカラー液晶に比べてTFTは明るく鮮明ですが、バックライトの性質以外に何か原因がありますか→A. 昔のは単純マトリクス方式なので液晶自身のしきい値動作特性を用いたので、光をフルに透過できるようにすることがdきませんでした。TFT方式では、オンオフともに十分な振幅をとれるのでコントラストが高くなりました。

40.TFTを使うと液晶をいきなり配向するのか、それによって支障は起きないのか→A. 単純マトリクス方式のものでは、縦と横のアドレス線に電圧がかかると配向の閾値を超えるという液晶自身のもつ性質を使っていましたが、それだと他の番地がonのときにもoffのはずの番地に半分だけ電圧がかかってしまい、十分なコントラストがとれないのです。TFTを用いたアクティブマトリクスの場合、そのような現象がなくon電圧、off電圧を画素毎に与えられるのでコントラストが高いのです。TFTだから無理をしているわけではないので支障はありません。

  1. つぶれたドットを隣とつないで修正するといったが、つながり損ねたのはありえますか→A. 安物のLCDではよくあります。山手線の電車の中のLCDでそういうのがよくあります。

42.高性能の液晶とはどういうものか→A.画素数が多いほどきれいに見えます。その画素のTFTのスイッチング特性がよいとコントラストがよくなります。

これからのフラットパネルディスプレイ

  1. 前にテレビでやっていたんですが、液晶ディスプレイに対して有機物のディスプレイがあるらしいのですが、どういう構造になっているのか教えてください。→A.液晶は光のスイッチに過ぎないので、自分では光を出しません。これに対して、自発光するフラットパネルディスプレイが求められていますが、現在最もよく使われているのがPDP(plasma display panel)で、放電でできたプラズマから放出される紫外線で蛍光体を励起発光させるものでこれは蛍光灯を画素数だけ並べたみたいなものです。また、最近FED(field emission display)というのが注目されていますが、これは真空中を電子が飛んでいって蛍光体に当たり励起発光するタイプでこれはブラウン管を多数並べたようなものです。これらは、気体または真空を使います。これに対してELD(electroluminescence display)というものがあります。これは全固体のディスプレイで、電界または電子注入によって発光するデバイスです。これまでに主としてZnS:Mnを用いた二重絶縁構造の無機EL(橙色)が研究され、その後カラー化のためにSrS:Ce, SrS:Eu, SrGa2S4:Ceなどが研究されています。これらに対して、革命的な技術が今から15年前に登場しました。これは有機ELと呼ばれるものです。有機物の発光材料を電子供給体(donor)と電子受容体(acceptor)ではさみ、電子と正孔の注入により発光させるものです。Kodakが最初でしたが、現在では、Pioneer, 出光などで製品が出ています。開発当初は寿命の短いことが問題でしたがいまでは1万時間を超えるものもでています。

44.プラズマテレビの構造。→A. プラズマディスプレーパネル(PDP)のことですね。気体の放電でできた紫外線が対向するガラス板に塗った蛍光体を励起してフォトルミネセンスにより発光します。いわば、蛍光灯が無数に並んでいるようなものです。

45.気体においてプラズマって何か。→A. 正の電荷の重心と負の電荷の重心が分離しているような状態です。岡田先生が理論的に計算している核融合の場合も、高温で電離してプラズマ状態になった原子を取り扱っています。

46.新聞にカーボンナノチューブを使った画面の話が載っていたがよくわからなかった。液晶の仕組みを勉強したらわかるようになるだろうかと思った。→A. カーボンナノチューブはFED(field emission display)の電子エミッタとして使われるのです。液晶とは異なります。

47.液晶ディスプレイに替わるものとしてはどんなものがあるか。 液晶以上のものは開発されていないか。→A 液晶では大画面のフラットディスプレイを作るのが難しいのですが、PDP(plasma display panel)といって、いわば蛍光灯を無数にならべたものがメートルサイズのディスプレイに使われています。また、真性ELで美しい画像を出そうという研究も長年にわたって続けられています。最近は有機ELの寿命と発光効率が高くなってきましたのでこれも注目株です。

光記録

48.ソニーがCDの6倍の情報を記録できるCDを発表したが従来のとどう違うか→A. Sonyが発表したsuper-audio CD (SACD)は松下・東芝を中心とするDVD-audioに対抗して投入した製品で、従来のCDより64倍も密度が増加しています。このため100kHzまで再生可といわれます。DVD-audioとの互換性はありません。

49.MDは信号をどのように記録するのか。→A. レーザ光を絞って局所的に加熱し、媒体のキュリー温度以上に温度を上昇させ、冷却の際に外部磁界の方向に磁気記録されるようになっています。詳細は磁性のところで。

50.MDはどんな物質でできているのか。→A. 授業でやりましたが、アモルファスTbFeCo薄膜が使われています。

51.フロッピーとMDは形が似ているが何が違うのか。→A. フロッピーは磁性媒体に磁気ヘッドを使って磁気的に記録し、磁気ヘッドを使って磁化状態を電気信号に変えて読み出します。一方、MDでは、磁性体に熱的に磁気記録し、光を使って磁化状態を読み出しています。

52.CDのディスクは7色に光っているがプレステのディスクは黒いが違いはあるか。→A. 7色に光るのは、たくさんの溝が1μm程度の間隔で並んでいるので回折格子のはたらきで、干渉色がついて見えるのです。裏が黒いと反射光が少ないので虹色が見えにくいだけで、よく見るとおなじです。

53.CDはなぜ7色に光を反射するのか。→A. CDには1.6μm間隔で案内溝が切ってあるので回折現象で着色するのです。

54.CDの裏面が傷ついても音が出るのはなぜ。→A. CDの記録面は奥の方にあり、レーザはそこに焦点を結ぶようになっています。盤面はレーザの焦点面ではありませんから、多少のキズやゴミがあっても平気です。

55.CD-R, DVD-R, DVD+RW(PC-RW)などは何を利用して記録しているのか。→A. CD-Rは青色をしていて、書き込んだところは白っぽくなっていますよね。青色は色素です。ビットを書き込むとレーザ光の熱で色素を分解するので、基板上の反射膜から光が帰ってきて白く見えるのです。DVD+RWはやはり相変化を使っています。材料として何を使っているかの詳細は発表されていないので不明です。

DVD

56.DVDの構造は既存の記録媒体とどう違うのか。→A. DVD-ROMはCD-ROMと基本的に同じ構造ですが、ピットのサイズが小さく、線密度が高く、さらにトラックピッチも大きくなっています。

57.青色レーザを使用したDVDの容量はどのくらいの大きさまで出来るのか。→A: 現在のDVD-ROMは波長650nmで4.7GBですが、波長が410nmなら、面積比で(650/410)2倍になります。自分で計算してください。MO技術を使うと磁気誘起超解像技術(MSR)が使えるのでさらにその5培になります。

58.DVDやPDは繰り返し回数が限られているのに、なぜMOや磁気ディスクは無制限なのか。→A. 普通の磁気記録は、磁性体の磁気のN,Sの状態を外から加えた磁気で書き換えています。光磁気ディスクでは、レーザ光で150-250℃くらいに加熱して磁気がその部分だけ書き変わりやすくしているだけで、基本的には磁気記録です[4]。磁気記録では、物質自身には何らの変化も加えないので半永久的に使えるのです。これに対して、相変化ディスクでは、物質そのものの構造をいじっているわけですから、何度も使っているうちに変化しない部分が出てきたりして使えなくなるのです。

59.DVDよりすごい記憶装置は生まれるか。→A: すでにハードディスクはDVDよりも高密度になっています。将来は、光アシスト記録といって、光で書き、磁気ヘッドで読むハードディスクが現れるでしょう。ホログラフィックメモリやフォトケミカルホーリバーニングなど桁違いの高密度記録も研究が進んでいます。

60.相変化ディスクの磁気相変化(光磁気?)ディスクに対する利点はあるか。→A. 相変化ディスクの場合データの読みとりは反射率の違いを利用していますから、読みとりのためのドライブ構成は簡単で、CD-ROMやDVD-ROMとの互換性を取りやすいという利点があります。これに対して、光磁気ディスクでは、磁気カー回転といって偏光の回転を利用しているので、ドライブの光ヘッドの構成が複雑で、しかも信号レベルが小さいので回路が大変です。DVDフォーラムがDVD-RAMに相変化を利用することにしたのは、ROMとの互換性がねらいだったのですが、実際には、コントラスト比の違いから、DVD-ROM専用装置でDVD-RAMを(カートリッジから取り出して)再生しようとしてもできません。DVD-RWの場合には、コントラスト比がDVD-ROMとほぼ等しく、そのままで再生できるようになっています。

61.D-VHSが次世代ビデオのスタンダードになりますか?DVDがより大容量になるのはいつ頃からですか?。→A. 市場が決めることです。DVD-ROMは青色レーザが安くなればいつでも大容量にできるでしょう。しかし、DVD-RWなどの大容量化には材料開発を含め、もう少し時間が必要でしょう。

 



[1] エピタキシャル(epitaxial)成長とは、基板結晶と一定の方位関係を持って結晶性の薄膜を成長させる様をいう。

[2] 格子定数(lattice constant): 結晶は原子が空間的に周期性をもって規則正しく配列している状態です。この繰り返しの周期を格子定数といいます。Siでは5.43Å、GaAs5.65Åです。詳しくは、基礎固体物性を聴講下さい。

[3] spin coating: 回転する円盤上に液滴を落下させ一様に広げて薄い膜を作る技術

[4] 佐藤勝昭:光と磁気(朝倉書店1988)参照